いきなりのクーデター。その情報はアメノミハシラに集った面々にパニックに近い混乱をもたらす。
それぞれの勢力がそれぞれの情報源から情報をもたらされ、予想外のことに困惑している。レセプションどころではなくなったので、それぞれの勢力ごとに控え室で待機して貰った。程なくそれぞれ今後どうするかを決めることだろう。
「いやはや、願ったり叶ったり……とお気楽に考えていられませんね」
とか思ってたら早々にアズラエル氏が顔を出した。
「随分早いな。もう結論を?」
「ええ、ひとまずは
そこまで言って、アズラエル氏はくすりと笑った。
「もっとも、
「抜け目がないな」
これを機会にできると踏んだか。便乗する気満々だった。とは言え俺たちが入手した情報は限定的なもの。詳しい話は
「リョウガ様、少々お時間をよろしいでしょうか」
幾人かを伴ってラクス嬢が現れた。こっちに顔を出している時間は無いだろうに、何か
「立て込んでいると思ったが、なにかあったのか?」
「はい、大体の状況が分かりましたのでお知らせをと」
「なるほど、聞こうか」
わざわざ伝えに来ただけではないだろうが、とりあえず話を促してみる。
「4時間ほど前、ザフトの拠点【ヤキン・ドゥーエ】が戦争強硬派の手によって占拠されました。彼らは駐留戦力を取り込み、独自に地球へ攻め込むと、先ほどプラントに宣言。ヤキン・ドゥーエそのものの移動を開始いたしました。……丁度というか、タイミングを見計らったのでしょうけれど、占拠当時ザフト上層部の幾人かが査察に訪れていて、彼らが人質に取られた形になっています。……その中には、
……は?
「えっと? ザラ委員長が人質に取られている、のですか?
半ば疑っているような虚を突かれたような何とも言えぬ表情となって、アズラエル氏が問うた。気持ちは分かる。
パトリック・ザラと言えばタカ派の最先鋒だ。血のバレンタインで妻を失い、連合に対して恨み骨髄に徹す態度をとり続けはばからなかった。俺はてっきり今回のクーデターの首謀者かそれに近い位置にいると思っていたんだが。
それを告げたラクス嬢にも、どことなく困惑した様子が見て取れる。
「わたくしにもよく分かっていないのですが、クーデターに加担していないのは間違いないようです。宣言メッセージの映像に、他の上層部の人間と共に捕らえられている様子があったようで」
クーデターは予想していたが、パトリックが捕らえられている方だとは予想してなかったわ。しかしなんでそんなことになったんだ? うむ、プラントには伝手が少ないからなあ。詳しい情報はどうしても探りにくい。
まあいずれにせよ、この後どうするべきかは決まっているがね。
「ラクス嬢は行くのだろう?」
「ええ、あまりにも無謀すぎる行いです。……プラント本土の守備力が格段に低下した今、我が父シーゲルは動けないでしょう。そうでなくとも混乱している状況です。心情的には強硬派と同調する方々も多いでしょうし、ヤキン・ドゥーエに向かわせる戦力の捻出もままならないのではないかと。ですのでバルトフェルド殿に協力を仰ぎ、赴こうと考えまして」
「……時間も無い。地上から戦力を上げる余裕はないから、地球近海のザフト勢力を集めるしかないが、そも貴女の行動に賛同してくれるかどうかも分からんぞ?」
「それでもやるしかないでしょう。行動しなければ結果はついてこないのですから」
うーんガンギマリ。彼女がこういう判断をして行動するのは予想通りだ。
であればこっちもそれなりの行動をさせてもらおうかね。
「では、貴女方の後追いをする形で、こちらからも戦力を出させて貰おう。私の名代としてユウナ・ロマ・セイラン特使を同行させる。戦うためではなく、説得させるために」
ユウナにとっては急な話で悪いが、俺が行くと警戒されそうなんでな。それにあいつは周囲から銃を突きつけられた状態から交渉を成功させた実績持ちだ。荒事には耐性があるし肝も据わっている。こういうときに説得を試みるのであれば、うってつけの人材といえる。
すでに宇宙軍はギナが指示を出し、艦隊の編成が始まっている。そこにユウナをねじ込み、ラクス嬢の手助け、場合によっては助勢するのが目的だ。ただし大戦力は送り込めない。クーデター勢力を刺激するだろうし、この機に余計なことをしでかしそうな連中もいる。アメノミハシラに所有するコロニー群、そしてオーブ本国に戦力を残しておかねばならない。少数精鋭で事に当たるしかなさそうだ。
「そう言うことで出せる数は少ない。できればザフトの穏健派と協力できれば良いのだが」
「いえ、助力をいただけるだけで心強いことですわ。プラントの穏健派との交渉は、わたくしが行います。オーブの方々には万が一のために後方で控える形にしていただければ」
「そう言うことでしたら、我々も協力できると思います」
言葉を継いだのはアズラエル氏。少し考えながらだが、彼は話す。
「ハルバートン提督に助力をお願いしようと思っていたのですが、いずれにせよ動き出すのは少し遅れるでしょう。その間に大西洋連邦の穏健派、和平を模索している議員に話を持ちかけます。現在継戦派のタカ派勢力が揺らいでいますので、議席を稼ぐ良い機会だと協力してくれるのではないかと」
「時間差を利用する気かな?」
「その通り。オーブやラクス嬢と歩調を合わせれば内通を疑われやすいでしょうが、こちらの手のものが遅れれば、最低でも意見に齟齬があると見られるでしょう。その方が便利な場合もあると言うことです」
あくまで連合……と言うよりアズラエル勢力は、一歩引いた位置から圧力をかけると言うことか。悪くはない……が。
「向こうがただヤキンを中核として攻め込んでくるだけなら、問題は無かろうが……それだけではないだろうな。ヤキンそのものを地球に落とすならば、集った自軍戦力を全て使い潰せば不可能ではない。しかしそれだけか?」
もちろん俺はザフトが開発している切り札、大規模ガンマ線レーザー砲ジェネシスの存在を知っているが、ここで口にすることはできない。それにジェネシスが完成しているのであれば、ヤキン・ドゥーエを
ジェネシスが完成しておらず、ヤキン・ドゥーエを地球に落とすと言う手段を取った。破れかぶれと考えれば分からない話じゃないが、そこまで考え無しにやらかすだろうか。……やらかすかも知れんが、それにしても稚拙に過ぎる。何かまだ隠し札があると見たほうが良いな。
「ラクス嬢とオーブ軍、そしてアズラエル氏の
多分彼らは
最低でも熟考した挙げ句の計画的な行動ではない。考えが理にかなうもので勝算が高いのであれば、パトリックが賛同し指揮を執っていただろうから。そうでないと言うことは、
そう言った連中だから、あまり多くの状況に対応はできまい。それぞれ別方向から時間差でアプローチを行えば、注意が削がれ隙も出来ると見た。あとは。
「ラクス嬢、ヤキン・ドゥーエで何か新兵器などの開発を行っていなかったか? いや、軍機に触れることは重々承知だが、少しでも情報が欲しい。知っていることがあれば聞きたいのだが」
その問いに、ラクス嬢はかぶりを振る。
「申し訳ありません、わたくしにはなにも。ヤキン・ドゥーエはプラント防衛の要、その情報はおいそれと手に入るものではございませんので」
当然だな。そこら辺の情報管理はしっかりとしているだろう。ならばなぜそれを聞いたのかと言えば、
そうでなくとも何らかの目算(勝算ではなく多分ろくでもないもの)があってのクーデターだろう。用心はしておくに越したことはない。
「何があるのか皆目見当も付かないと言うことか。迂闊に距離を詰めず、即応できる程度に戦力を散らしておいた方がいい」
「そうした方が、良いのでしょうね……」
「ふむ、確かに不意を打たれて全滅などと言う事になっては面白くない。依頼先に進言させていただくとしましょう」
それぞれ大体の方針を決めていく。細かいところは各々引き連れてきた人間や、関係者各位と相談しての事になるだろうが、何らかの形で動かなければならないのは確定している。
それでは各々……といったところで、何やら会場の外が騒がしくなった。
「ご注進! ご注進んんんんンっ!!」
「お待ちを! お待ちを! ヴァレリオ殿ご乱心っ!」
複数の職員に組み付かれてなお部屋に飛び込んできたのはヴァレリオ。そしてなぜだか彼に首根っこ捕まれて引っ張り込まれてるキラ君。一体何事だ?
「代表首長補佐官殿! このヴァレリオ・ヴァレリご注進したきことがあって罷り越した! どうかお耳を拝借いたしたい!」
未だにこの人、俺がロン・ヤアと同一人物だって気づいてないっぽいんだよなあ。いやどうであろうと気にしてないってのが正確なところか。己の趣味に邁進することしか興味が無いので、細かい人間関係はどうでも良いと思っている節がある。そのくせ成果を出すところが質が悪い。
まあそれはともかく。俺は職員達を手で制し、ヴァレリオを解放させた。だってほっといたら勝手にやらかすぞこいつ。
「良いだろう。話を聞こうか」
「おお! 感謝を! して早速であるが、この私とこちらのヤマト助手を、
いきなり何を言い出したこやつは。ラクス嬢に同行するって事は、クーデター勢力の真正面に立つのと同意だぞ? 分かってるとは思うが半分正気が疑わしいからなあ。
そう思って聞いてみたらば。
「なにクーデターを沈静化させるためである! このヴァレリオ・ヴァレリであればそれが可能であると断言しようっ!」
ばさりと彼は白衣を翻し、両手を広げ高々と宣った。
「我に秘策ありっ! なのだよっ!」
多分、俺の顔はチベットスナギツネとなっていただろう。当然周囲はドン引きしていた。あのラクス嬢ですら、笑顔に一筋大汗を流している。
股間殴って無理矢理止めることはできた。が、俺の感覚はヴァレリオを送り込んだ方が
結局、俺は彼を同行させることにした。被害が増えるよりがっかりする方がまあ、いいんじゃないかな。多分。
それはそれとして。
「では我々も動くか。
客人を送り出した後、俺たちは地上へ降りるべく動き出した。全く、レセプションやり直すのは大変だってのに、余計な騒動起こしてくれたもんだよ。
「俺は首長達を招集し対策を取る。チヒロ、君は商会を通じて情報の収集とコントロールを頼む」
「はい。各国および主要な勢力に対してですね。承知しました」
「リシッツァはCSSで傭兵の募集と選別を。詳細は任せる」
「商会周辺の警護に当たらせるのですね? 承りました」
「マティス、君の情報網で裏を探って欲しい。特に一族残党をな」
「一番疑わしい黒幕と言えばそのあたりだろうな。分かった。十分ではないかも知れないが」
「尻尾でもつかめりゃ御の字さ。無理はするな。姫さんは……」
「殿下からはお許しをいただいています。好きにやれ、と」
「自由すぎるなオイ。……まあいい、いざというときのために準備を頼む。いつでも動けるようにな」
「分かりました。頼りにしてください」
フンスと胸を張る姫さん。多分彼女は好きに動いて貰った方が良い結果が出る。
決してコントロールできないから諦めたわけではない。自分で言ってて説得力は無いが。
「それはそれとして
そう言って姫さんは、
「使う機会が無くて良かったと心底思う」
俺は本心からそう言った。
おまけ
※この世界のオーブがスパロボ世界にあった場合
「ロンドベルに金突っ込む。最新鋭機をフル改造でガンガン送り込んで、補給も人員もたっぷりとな」
「はい経済戦争どーん。札束ビンタ通じるところはこれで押さえようねえ。破嵐万丈君、手伝ってくれるよね? あとアナハイムとビスト財団、分かってるよね?(にっこり)」
「量産型ヴァルシオンをオーブでライセンス生産しよう。変なシステムは取っ払っとけ。あ、鹵獲したライグ・ゲイオスも解析して量産体制に持っていくように。なに金ならある」
初手から手加減無しの代表首長補佐官。
「シズラーじゃなくてガンバスター量産したらいいんじゃね?」
「被弾率の高いヤマトにはアルミューレ・リュミエールとディストーションフィールドとナノラミネート装甲を追加で。あとビームサーベルの応用で波動砲をビームラムとして使えるようにしておくのはどうだろう」
「ゼーレとか紫唇とか、その辺のやらかしの情報集めて公開な。そんで連中には賞金をたんまりかけよう。なに金なら有る」
自重しろ。
「ガンダムフレームを基にGNドライブとサイコフレーム突っ込んだら無敵じゃね? ついでにミノフスキードライブも加えてスピードと慣性制御も向上させておこう」
「……どうしよう、勢い余ってフォールドドライブ完備のデススター作っちゃったよ。……まあ拠点になるから良いか」
「誰だよ量産したエクセリオン級に相転移砲積んで
誰か止めろこの外道。
結論。経済力と政治力で殴りに来るぞ。
……なんだ本編と変わらねえじゃん。
やりたい放題すぎるなジークアクス。こんなことが許されて良いのか良いゾもっとやれ。二次創作感がむしろ面白いまである個人的には。どうも捻れ骨子です。
はいまたまた遅れておりますが更新です。いきなりクーデターってぶっ立てたけどどうしよう。ノープランで突き進んだ結果がこれだよ。アメノミハシラに攻め込んでる連中を引かせるにはこんくらいするしかなかったんや。多分クーデター起こした連中も後先考えていませんが、捻れ骨子はもっと後先考えていません。どないすべ。
加えてなんかパトリックさんが人質になってます。なんでや。でもうちのパトリックさん考え無しにクーデター起こすとは思えんのよなあ。やるんだったらしっかり準備すると思います。
だがなんで人質になったかまでは考えていないっ! ……いやどうするんだよホントに。また更新が遅れたら展開に悩んでいる物と思ってください。一応クライマックスのはずなんだがなあ。
そんなぐだぐだ感満載ですが、今回はこのあたりで。