ガンダムSEEDが始まらない。   作:捻れ骨子

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閑話・ひがいしゃのかい

 

 

 プラント某所。

 査問会や何やらでこのところ缶詰に近かったクルーゼは、ある人物の前に立っていた。

 

「隊長から外ししばらくの謹慎、その後は国防委員会の預かりとする。それが貴様に下された処分だ」

 

 不機嫌な様子で言うのはパトリック・ザラ。国防委員長で実質的なザフトのトップである。

 

「オーブに感謝するのだな。奴らが自分たちの失態を理由に、ペナルティもなくアスランたちをアンドリュー・バルトフェルドへと託した。そのおかげで貴様の首は皮一枚でつながったぞ」

「申し開きもありません。己の未熟を恥じるばかりです」

 

 忌々しそうに言うパトリックに対し、殊勝な態度を装って頭を下げるクルーゼ。

 

「……貴様が持ち帰った交戦データは確かに価値のあるものだった。今技研で解析を行っている。これで我が方のビーム兵器開発も進もう」

 

 ビーム兵器の小型化という技術においてザフトは連合やオーブに一歩遅れていたが、クルーゼが持ち帰ったデータを解析し、急ピッチで開発が進んでいた。当然アストレイとハガクレそのもののデータも解析、研究に回している。そこら辺は流石に理事国の技術開発と生産を担っていただけはあった。

 

「その功績を差し引いても、これだけの処分があった。そのことをゆめゆめ忘れるなよ」

「はっ、肝に銘じます」

 

 正直パトリックとしては、目の前の男にもオーブにもはらわたが煮えくり返るような思いであった。クルーゼは半ばわざとオーブの新型艦を襲い、息子たちを危機に陥れた。そしてオーブはザフトと連合の双方にいい顔をしながら、その裏で自国の戦力を充実させていた。どちらも癪に障るどころではない。

 しかしクルーゼの功績は無視できない。今回のことだけでなく今までの積み重ねだ。この男はザフトの創生期から戦果を上げ続け、英雄視されている部分もある。簡単に処分するわけにはいかないというのがザフト上層部の総意であり、その技量はまだ利用価値がある。忌々しいが今しばらくは飼っておかねばならないだろう。

 そしてオーブだが、危険視はしていても未だ中立を謳っており、プラントにも便宜を図っているとなればそう容易く手出しは出来ない。たとえ公表された軍備増強計画が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()としてもだ。パトリックとしては早々に対策を練っておく必要があると考えているのだが、シーゲルを筆頭とする穏健派は難色を示している。かの国を刺激するのはプラントにも不利となる、と。

 この状況――()()()()()()()()()()()()()()()()()ことが、リョウガの策のうちであるのだが、もちろんパトリックは気づいていない。 対ザフトを意識した防衛計画だと()()()()()()()()()事を含めて。

 

「アスランとイザーク・ジュールはしばらくアンドリュー・バルトフェルドに預けておくことにした。中立国の船を襲撃し、その上返り討ちにあったなど、不名誉極まりないことだからな。ほとぼりが冷めるまで帰還させるわけにも行くまい」

「私のミスで彼らには苦労させることになってしまいました。申し訳なく思います」

 

 心にもないことを言いながら、クルーゼは考える。

 

(存外に軽い処罰だったな。それと引き換え、と言うわけではないが、オーブを巻き込むことは出来なかったか)

 

 アスランが死んでいれば話は違ったものをと、空恐ろしい思いすら抱く。オーブは思った以上に冷静で狡猾だ。理由にもならない理由、あるいは()()()()()()()()こちらに譲歩して見せたのかも知れない。今はまだザフトを敵に回すときではないと判断したのか、それとも敵としてみていないのか。

 クルーゼとしては面白くない展開である。誰も彼もが理性を失っていき、泥沼の殺し合いとなってくれるのが彼の望むところだ。そんな中、冷静さを保ち冷水をぶっかけてくるような行動を取るオーブの存在は邪魔であった。

 加えてかの国はこちらが手出しをしにくいような選択をしてくる。アスランたちの処遇しかり、今回の防衛計画しかり。恐らくは連合に対しても同様であろう。()()()()()()()()()()()()()()()、そんな不気味さがある。

 

(その中核となっているのはリョウガ・クラ・アスハ。かの人物を謀殺できれば良いのだが……ままならないものだ)

 

 裏の伝を使ってかの人物の情報を集めてみれば、すでにいくつかの勢力が彼の謀殺を図っていたという。その全てを退け、あるいは懐柔するという事をやってのけているようだ。今更自分の策略ごときでは始末できまいと、クルーゼは判断していた。

 だが()()だ。幸いにして自分は大した処分を受けないようだし、動きようはある。虎視眈々とオーブを――リョウガを陥れる策略を練りながら、パトリックの言葉に耳を傾ける。

 

「……以上だ。一息ついたら貴様には存分に働いて貰う。下がってよろしい」

「はっ! 寛大な処置に感謝いたします」

 

 心の中で舌を出すクルーゼには分からない。リョウガという最低最悪の相手に自分が――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という状況がどういうことか。

 我知らず底なし沼に踏み込んだことを知らない男は、沈みゆく己を自覚しないまま踊り続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 プラント某所の繁華街。その一角にあるオープンカフェで、ディアッカはドリンク付属のストローを咥え、ぴこぴことふるって見せた。

 

「休暇という名で体良く干されてるよなあこれ」

「不謹慎ですよディアッカ。アスランとイザークは無事だったから良かったものの、本来は国際問題になっていたんですから」

 

 ディアッカの言葉を咎めるのは、同じテーブルで同席しているニコル。双方ともに私服姿だ。

 彼らは先の騒ぎの後、部隊の解散と再編成までの休暇を申し渡され暇を持て余していた。件の襲撃が失敗に終わり、2人の仲間が未帰還のまま這々の体で帰還した彼らを待っていたのは、襲撃した相手がオーブの船であったという事実と、尋問じみた査問会であった。

 何が何だか分からないうちに嵐のような時間は過ぎ、結果部隊は解散、隊長であるクルーゼはその地位を追われ、自分たちは休暇の名目でしばらく放り出された。ザフトの中にとどまっていれば居心地が悪いだろうという配慮なのかも知れないが、正直こうして時間を持て余しているのも腰の据わりが悪い。親は無事に帰ってきたことを喜んでくれたが、まかり間違えば自分たちがアスランのような目に遭っていたかも知れないと思うと、何とも申し訳ない気分になる。

 結局、自宅にも居場所がないような気になってぶらぶら外に出かけてみれば、同じように暇を持て余している仲間と偶然出会ってしまった。で、流れでなんとなく2人で連んでいるわけである。

 

「一応箝口令が敷かれているわけですから、余所でべらべらしゃべったりしないで下さいね」

「わーってるよ。周りに人がいないことは確認してるさ。……にしても、オーブも太っ腹というか、随分とあっさりあいつらを解放したもんだ」

「ザフトと問題を起こしたくなかったから、だと思いますけどね。相手取るにしても、準備が整っていないと」

「それとも俺達(ザフト)なんざ相手にもならない、とか思ってるかもよ?」

「……笑えない話ですよね、それ」

 

 アスランたちが地上のザフト軍に引き渡されたという話は、彼らも聞き及んでいた。ほぼペナルティもなしにそれを行ったオーブに、余裕のようなものを感じる。

 実際オーブはプラントに便宜を図り、ザフトを支える一因となっていた。だが裏を返せば彼らにそっぽを向かれたら、その分ザフトの勢力が弱まると言うことである。ましてやディアッカたちから見ても脅威に映る軍備拡大を行っているかの国が敵に回ったりすれば……。

 面白くない想像が脳裏をよぎり、2人は黙り込む。

 と、そこへ。

 

「よう、お前たちも暇してたのか」

 

 いきなり声をかけられ、そちらを見てみれば、そこにいたのは自分たちと同じように私服姿のミゲルであった。彼は軽く手を上げて「ここ、いいか?」とか言いながら返事を待たずに2人のテーブルに相席する。

 

「おねーさん、アイスコーヒー頼むね。……しっかし平日の昼間とは言え、随分と寂しいもんだなここいら辺りも」

 

 ウェイトレスに注文してから周囲を見るミゲル。確かに周囲は繁華街とは思えないくらい閑散としたものだ。人影はまばらで、シャッターを閉めている店もちらほらある。

 

「戦争が長引いてるせいか、どうにも余裕がないねえ。……おっと、上層部批判はまずいか?」

「聞かなかったことにしますよ。……ミゲルも時間を持て余しているようで」

「何もする気が起きなくてな。どうにも居心地が悪いもんさ。お前らもそうだろ?」

「分かるのかよ」

「顔に書いてあるぜ。納得いってない、ってな」

 

 運ばれてきたアイスコーヒーに口を付け、ミゲルは一息吐く。

 

「ザフトに入るときに色々と覚悟はしていたつもりだったが……今回みたいなのは予想外だよ。俺達ももう少し注意しとくべきだったな」

「……そうかも知れません。作戦中に相手が本当にオーブの船だったと気づいていれば、状況は違うものになっていたかも」

 

 ミゲルの言葉に少し沈み込むニコル。自分たちがもっと状況を見ていれば、そう考える部分も確かにある。隊長の言葉を信じ、目標から発せられてる信号や国籍マークは偽装だと思い込んだ結果がこれだ。

 そして彼らの部隊は解散となったが、隊員たちには降格などの処分は下されていない。政治的な配慮とか色々あるのだろうが、それがまた居心地の悪さに拍車をかけていた。

 

「そりゃそうかも知れないけどよ、たらればを考え出したらきりが無いぜ? 失態だと思うんなら、これから先どう挽回するかを考えた方が建設的じゃねえの?」

 

 肩をすくめて言うディアッカ。前向きな言葉だが、自分に言い聞かせているという面もあった。彼も思うところがないわけではないのだから。

 

 ミゲルは、少し遠い目をして見せた。

 

「今回のことは隊長を含む部隊の全員が油断していたから起こったこと……と思いたいが」

「? 何か気になることでも?」

 

 含むような物言い。訝しげにニコルは尋ねる。

 

「気になることって言うか、なあ。……クルーゼ隊長は、()()()()()()()()()()()()()()()()()、って思ってな」

 

 その台詞に、ディアッカは眉を寄せた。

 

「おいまさか……隊長は()()()()()()って言うんじゃないだろうな」 

()()()()()()、って話さ。そもそもどうにも今回の顛末、おかしなところが多いと思わないか? 隊長と俺達に対する緩い処分。オーブの反応。何よりお前ら……お偉方の子息が揃っているクルーゼ隊が監視しているタイミングで動きがあった。できすぎてると思うのは穿ち過ぎかね」

 

 タイミングは偶然の産物で、後はそれぞれの陣営の都合なのだが、ディアッカもニコルも、もちろんミゲルだって分かるはずもない。分からないからこそ、()()()()()()()()

 

「言われてみれば……」

「確かにおかしいと思えます」

 

 不安と疑念が場を支配する。しばしの静寂の後、ミゲルはぽつりと呟くように言った。

 

「……色々と考えなきゃいけないかも知れないな、俺達も」

 

 重い空気の中、からんとグラスの氷が鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 北アフリカザフト駐留地。

 赤道に近い位置での太陽光に辟易しながら、道を歩く2人のザフト兵がいる。

 

「気象コントロールがないってのは、こんなにつらいものだったんだな……」

「1日中重力かかりっぱなしっていうのも、しばらく無かったしな。地球で苦戦する意味がやっと分かった」

 

 野戦服を着込んでいる2人は、アスランとイザーク。かれらはバルトフェルド隊預かりとなった後、補充兵の扱いで現地の任務に従事していた。

 働かざるもの食うべからず、と言うわけではないが、ザフトはどこでも人手不足だ。自分たちを客人扱いしておく余裕などない……というのは分かる。

 しかしMSパイロットどころか、様々な用事を押しつけられる小間使い扱いされるのはどうなのか。なんか納得がいかない。

 ともかく現在彼らは駐留軍支配下の町を、徒歩でパトロールしている最中だった。こういった任務は多くの兵が持ち回りでやっている。預けられたばかりで乗るMSもない(あっても地上での運用訓練漬けになるだろうが)アスランたちは、自然とこういった役目に割り当てられることが多くなっていた。

 最初のうちは慣れない任務と環境にヒーヒー言っていたものだが、流石にエリートと言うべきか、しばらくしたら何とか形にはなってきた。それでも灼熱の太陽の下で歩き回るのは、相当に体力を消費する。1日が終われば疲労困憊で、ベッドに倒れ込むように眠りにつくというのも珍しくない。

 まあおかげで余計なことを考えずにすむ。自分たちの置かれた状況、プラントに帰ろうにも帰れず、しばらくほとぼりを冷ませと放り出された。あるいは帰還しても誤認で中立国の船を襲ったあげく返り討ちになったなどと知れ渡れば、肩身の狭い思いだけではすまないだろう。もしかしたらバルトフェルドはそういったことで思い悩まないよう気を回しているのかも知れない。

 

「……色々な人に気を遣わせているなあ、俺達」

「やってしまったことを考えれば、寛大すぎると言っても良い。本来ならば銃殺刑でもおかしくはない」

 

 間抜けを曝して意識を失い、気がつけば捕らえられていた。最初イザークは連合などに屈するかと気炎を吐いていたが、事実を知らされ流石に青くなった。その上で国家のトップとも言える人物が直接面談だ。肝を冷やしたどころではない。

 とんでもない経験だったが、これがもし単なる一般兵の立場であったら無事で済んだだろうか。最悪プラントは自分たちを切り捨て、オーブの手によって人知れず葬られると言うことになっていてもおかしくない。結局は親の七光りで助かったに過ぎないのだ、自分たちは。アスランも、そして己の能力に自信を持っていたイザークも、それを理解できるようになっていた。

 

「赤服を戴いたこの俺が、今じゃプラントの厄介者か。……笑える話だ」

 

 力なく笑むイザーク。死んでいた方がマシだったとは言わないが、ほとぼりが冷めるまで帰ってくるなと言う扱いを受けたのは、結構堪えている。山ほど高いプライドをへし折られる形になった彼は、微妙にやさぐれていた。

 そんなイザークを見るアスランの表情は複雑なものだ。

 この戦争で母を失い、それを成した連合を憎み、プラントの未来を背負って戦うつもりだった。しかし何も成さないどころか、自分たちのやったことがプラントの足を引っ張った。父は失望しただろうか。不甲斐ないと嘆いているのだろうか。婚約者であるラクスに、そしてその父であり評議会議長であるシーゲルに顔向けも出来ない。穴があったら入りたいとはこのことだろう。

 いっそ罪に問われた方が楽だった。だが現状はそれすらも許してくれない。状況と政治に踊らされる駒でしかないのかと、己の無力を噛みしめているのが今のアスランだ。イザークの気持ちは痛いほど分かる。

 それでも、ここで落ち込んだところで何かが解決するわけではないと、真面目に考えるのが彼であった。

 

「……今は一つ一つ与えられたことをやるしかないさ。せめて世話になっているバルトフェルド隊長の恩に報いる位はしておこう」

「分かっている。落ち込んでいても仕方が無いくらいはな」

 

 やさぐれていても、サボタージュなど思いつきもしないイザークは気を取り直す。2人はパトロールを続けようとした。

 そこで、騒がしい声が響く。

 

「あー! おかっぱのにーちゃんだー!」

「いたぞー! とつげきしろー!」

 

 わいわいがやがやと騒ぎながら駆け寄ってくるのは近隣の子供たち。ここしばらくテロやレジスタンスとの戦闘が下火になったため、彼らのような子供を含め一般市民は出歩くようになった。噂ではザフト駐留軍がレジスタンスと和平を模索しているとのことで、恐らくはその関係で襲撃が控えられたのだろう。町は活気を取り戻しつつある。

 まあそれはそれとして。

 

「きょうこそビームだせビーム!」

「そらとべよーこーでぃーだろー」

「あかふくもちっていったら、なんかおいしそうななまえだよな」

「そーだなんかおやつだせー」

「ええい貴様ら寄るな集るなくっつくな! コーディネイターをなんだと思ってるんだ!」

 

 なぜか子供たちになつかれ纏わり付かれるイザーク。多分からかうと一々反応するから子供たちが面白がっているのだろう。

 その様子を少し離れた位置で見ながらため息を吐くアスラン。そうしながらこっそりと手に持つサブマシンガンのセーフティを外して周囲を警戒している。子供たちに邪心があるかも知れないという疑いは未だにあった。そうでなくともこの状況を利用しようとするものがいるかも知れない。そういった用心は常にしておけとバルトフェルドから言い含められているということもある。根っから真面目なアスランは、それに反発する気も無かった。

 からかわれながらも、いいか知らない人について行ったりするんじゃないぞと言い含めているイザーク。なんだかんだで邪険にする気は無いようだ。自分が注意を引きつけてアスランに警戒させておくという意図もあったが、あるいはこれが彼の本性であったりするのかも知れない。

 

「じゃーなーにーちゃん! つぎはビームだせるようにしゅぎょーしてこいよー」

「しても出せるか! ……ったく、早く家に帰れ」

 

 しばらくして飽きた子供たちが去り、イザークはしかめっ面でそれを見送った。

 

「お疲れ様。随分となつかれたな」

「全く子供は遠慮が無い。俺に構って何が面白いんだか」

 

 鼻を鳴らすイザーク。一々反応するからじゃないかなあとアスランは思ったが、言わないくらいの情けはあった。

 

「あいつらはコーディネイターやらなにやらお構いなしだな」

 

 イザークの言葉に、何とも気まずげな思いを抱くアスラン。子供たちにとっては()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだろう。精々怖くて迷惑なこと、位の認識でしかないのかも知れない。プラントの都合も、連合の意思も、彼らには遠い世界の話だ。

 ()()()()()()なのだ自分たちは。そこにコーディネイターだからナチュラルだからと言う区別はない。誰がやったかではなく()()()()()()()()。結果が同じなら何だって一緒だろう。

 イザークも同じなのか、どこか遠い目をしてぽつりと呟く。

 

「……何なんだろうな、コーディネイターとは」

 

 昼下がりの町中に、その言葉は染み入っていくようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どいつもこいつも好き勝手して!」

 

 どん! とマホガニーのデスクに拳をたたきつけるのは、反コーディネイター団体ブルーコスモスの盟主にして国防産業連合理事、ムルタ・アズラエル。彼は自室にて己の仕事やその他のことを確認していたのだが。

 

「なんで勝手にテロを起こす! 反撃作戦の前に警戒を強めてどうするんだ!」

 

 彼が憤っているのは、ブルーコスモス過激派の行動についてだ。彼らはザフトの支配地域にて、()()()()()()()()()()()()()テロ行為を頻繁に起こしている。同じブルーコスモスといえど、規模の大きい組織の宿命でいくつかの派閥に分かれている。アズラエル自身もどちらかと言えば過激派だが、不用意なテロ行為などは容認できないたちだ。やるのならば最大限の効率を求める。散発的なテロなど人材と資源の無駄遣いとすら思っていた。

 ともかく()()()()()過激派の先走り早●野郎どもが勝手した尻拭いをやらなきゃいけなくなったわけだが、今回は相手が悪い。相手というか()()()()()()()()()()

 連中がちょっかいを出したのはアフリカ共同体。いずれ兵力を送り込む必要がある場所だが、アズラエルはそのために()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 だが中途半端にテロ行為を行った連中のおかげで、彼らは()()()()()()()()()()()()()()()。何しろ協力関係も何もなく勝手に要人を狙ったり無差別テロを行っていたりしたのだ。レジスタンス関係者が被害を受けたこともある。また連中は一々ご丁寧にも「青き清浄なる世界のためにー」とか自己紹介しながらやらかしてくれたもので、誤魔化しも出来なかった。

 そのおかげでブルーコスモスは、ザフトだけでなく()()()()()警戒され、排斥され始めた。加えてその隙を突いた形でオーブと繋がりのあるクーロン商会の介入を許してしまった。こうなると共同体は国力と戦力を向上させ、ザフトと連動することによって攻略の難易度が跳ね上がるだろう。とんでもない大損だ。

 幸いにしてと言うか、まだ連合が所持するマスドライバーは()()()()()()()()()。しかしこれまで理事国が独占していたプラントの恩恵を受けようと、複数の国が親プラントに鞍替えし、彼らに協力している。アフリカ共同体ほどではないが、それらの国も着々と国力と戦力を向上させつつあった。そのほとんどにクーロン商会の影がある。

 

「くそ、面倒な連中だ。……だが排除するのも問題か」

 

 クーロン商会。【東アジア共和国】出身と言われる謎の投資家フェイ・クーロンが創設した新興の企業。宇宙を中心として活動していた彼らは、その実オーブの息がかかった者達であるとアズラエルは睨んでいる。かの国の動きと連動した様子を見せ、戦争で生じた経済的、政治的な隙を突いて介入し、利益を上げていた。連合勢力内でも()()()()()()()()()()相当のシェアを得ている。

 目障りではある。が、彼らのおかげで経済が持ち直したという事実もあった。オーブが軍を送り物資や技術支援を行った地域で事業を展開し、経済産業を活発化させる。そのおかげで助かったという部分は多分にあった。

 何より彼らは()()()()()()()()()()()()。現在連合が所有する数少ないマスドライバーを何とか守れているのも、彼らの援助があってのことだ。クーロン商会がなければ、戦況は現在より悪くなっていたことは間違いない。そういう意味でも手出ししにくい存在である。資本家の中には、かの商会の後ろ盾と思われるオーブに資産を移し始めている者も少なくない。

 これはプラントへの対処で躍起になっていた己のミスでもあると、アズラエルは歯噛みする。かの企業は決して味方とは思えないが、さりとて敵に回して排斥するには影響が大きくなりすぎていた。臍をかんでいるのは自分だけではあるまい。

 それに、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「アフリカ共同体、いやN()J()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。これも厄介だが……」

 

 大幅に株価の下がった地域で株を買いあさり、そして経済が回復して株価が上がったところで売り払い()()()もの。まるで未来を予測したかのような手並みだったが、それを成したものの正体はつかめていない。無数のダミー企業を窓口とし、そしていくつものサーバーを経由して株式に介入し利益をかっさらい、そして潮が引くようにダミー窓口を消し去りながら去っていった。追跡しても捕捉できたのは末端だけ。株式市場からかっさらわれた莫大な資金はどこへ消えたのか、とんと見当もつかない。

 あるいはクーロン商会の別働隊かとも思われたが、彼らの動きとは連動しているようでしていないという微妙な関係にあった。正直クーロン商会の手によるものか疑わしい。あるいはクーロン商会と関係があるように見せかけた、何者かなのか。

 まさか()()()それを成したから商会と微妙に動きが合っていなかったのだとは、さすがのアズラエルも気づかない。いいようにどっかの誰かさんに踊らされていた。

 

「ともかくかの介入者は経済が安定してから動きがない。動くとすれば戦況が大きく動いたとき、か。……クーロン商会も軍需産業へと参入し、その力を利用してオーブは軍事力を拡大させ、最早乗っ取りも難しい。サハク家やセイラン家から情報も得ているが、介入は難しいだろうな……」

 

 頭の痛いことばかりだ。ただでさえプラントの阿呆どもが好き勝手やっているというのに、次々と対処せねばならない事柄が押し寄せてくる。アズラエルは現在の地位に就いたことを若干後悔し始めていた。

 家に帰れるのは一体いつになるだろう。実は妻子を持つ夫でありパパであるアズラエルは、死んだ魚のような目でため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 連休も休みがなさそう。むしろ連休邪魔。
 オリンピックやっても良いけど変なところ休みにすんな。こっちゃ稼ぎ時なんだよ!
 多分お盆も同じ事言ってる捻れ骨子です。

 はい閑話2回目です。誰かさんの被害を受けた人たちの話~。ひがいしゃのかい、と言うことで会と回をかけております。誰が上手いことを言えと(ry
 狂うぜさんは大体自業自得です。そしてクルーゼ隊は巻き添えです。あるいはアスランたちは原作よりマシ……と思わせといてもっと酷い目に遭うかも知れず。まあ最低でもニコル君はことあるごとに死亡シーン流されることはないんじゃねえですかね。(適当)
 そして登場しました盟主王。彼は多分ひたすら可哀想です。もしかしたら原作の方がマシになるかも知れません。
 なお経済周りとかクーロン商会の動きとか、その辺りは適当です。現実でこんなに上手くいくわけないじゃない。ないじゃない。
 ……あの世界では分からんけどなー。

 と言うことで今回はこの辺りで。次回をお楽しみにー。
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