天災の問題児がヒロアカの世界で自由気侭にヒーローを目指す 作:びっくり葉加瀬
基本的週1更新で無理なく投稿していこうと思っています。
天災が産まれ変わった日
始まりは中国で光る赤ん坊が産まれたことだった。
それを境に超常は増え続け、その超常は普通となった。
"個性"。
それが超常に付けられた呼称。
現代では産まれてくる人類のほぼ全員が"個性"持ちである。その"個性"は例外なく4歳までの間に発現するが、4歳になった途端に発現する事例もあれば、産まれてくる瞬間、産まれる前に判明する事例もある。
出産時、"個性"の発現で驚かれることも少なくなり、驚いてもそれは精々その場限りのものである。
しかしある時、病院の関係者、居合わせた両親が驚愕し、ニュースに取り上げられ、"個性"研究の第一人者達がこぞって囃し立てる大事件が発生する。
「もうすぐですよ!吸ってー、吐いてー!」
「うっ、はぁ、はぁ、ううぅ!」
「頑張れ理香!」
「はい、
この日、
出産前検査は問題無し、赤子の状態、体勢も問題無し。葉加瀬夫妻の息子は
「頭が見えて来ましたよ!もうひと踏ん張りです!」
「う、うううぅうー!」
もうひと踏ん張り。そう聞いて理香は我が子の産声を想像して更に力む。そして――
「頭が出て……えっ……。」
聞こえて来たのは我が子の産声ではなく、助産師の小さな驚きの声であった。理香は一瞬呆けるが、祐の疑問の声によって現実に戻される。
「な、何かあったんですか!?」
「え、いえそのご無事なのは確かなのですが……。」
何か言い淀んだ助産師の声。自身達の子供に何か障害があったのか、それとも検査で分からなかった"個性"の発現でもあったのか。
「と、とにかくこのまま止めるのも危険です!もう頭は出ています!最後頑張りましょう!」
そう聞いて、我が子が無事なら何があろうと愛すだけだと再び力む。困難や不幸があろうと、自分達親だけは我が子の味方であり続けようと、そう思って覚悟を決めた。
「産まれました!今から抱っこする準備しますね!」
半年以上あった感覚が無くなり、我が子が誕生したというのに、やはり期待していた産声はない。流石に疲れて分娩台の上で脱力する理香の頭を撫でる祐と目が合う。
「頑張ったね、理香。」
「はい、祐、さん……。それより赤ちゃんを……。」
コクリ、と頷く祐に疲れた身体を休ませるように、そして祈るように目を閉じる理香。そんな妻を確認すると、産湯で身体を洗っている助産師達に近づく。
「あの……息子は、無事なんでしょうか……?」
「旦那さん。無事ですよ。ただ……、」
助産師は赤ん坊を洗っていた自身の身体を移動させ、その父親に見せるように移動する。そして我が子を見た父親も驚いた。
何せ赤ん坊は自分たる父親の目をじっと見つめていたのだ。祐は泣きもせず、どこか達観したような
そうして見つめ合う中、助産師はある事に気づく。父親が赤ん坊と睨めっこのようにしている中、手の中の赤子は身動ぎ1つしないどころか、自分の手を支えにすらしていないことに。
まさか、と思い、いつでも対処出来るようにしながらゆっくりと手を放す。すると、先程まで手の中に居た赤ん坊は、他人の手を借りずとも座っているではないか。
0歳児で首が座っている。
異形型ならまだしも、そんな赤ん坊など今まで見たことが無かった。共に赤ん坊を産湯で洗う担当をしていたもう1人の助産師もこれには驚く。これは"個性"のおかげであろうか、と考え父親を見る。父親は首が据わっていることにさら気づかず、未だに我が子のことに夢中になっていた。手を振ったり身体を移動させたりして、その視線が自分に向いていることを確認している父親を見て思わず苦笑する。
「祐さん……。赤ちゃんは……?」
「あっ、だ、大丈夫だ。泣いていないが、俺を見たりすることは出来ている。」
「そうですか……、無事でよかった……。」
「あぁ。無事だよ。もしかしたら"個性"のせいかもしれん。でも悪い"個性"じゃないだろう。」
そんな会話を行い、漸く我が子の誕生に喜びの感情が湧き出てくる。心配そうな理香の手を取り、抱きしめてやると、嬉しそうに抱きしめ返す。
そんな夫婦を微笑ましく思うと、彼等の元へ早く赤子を抱かせてやろう。そう思った助産師は産湯に浸かっているはずの赤ちゃんへと目線を向ける。
しかし、そこに赤ん坊はいなかった。
傍にいた彼女は何をしているのかと目を向けると、驚愕で目を見開き、手に両手を当てている。
何が起こったのか、と彼女の目線の先を確認する。
すると、そこには立ち上がりながら両親の元へと自力で歩いている赤ん坊の姿があった。
赤ん坊が歩き出す直前。妻を抱きしめながら祐は考えていた。明らかに達観した息子は第一子である為、子育ての経験のない自分達では苦労するかもしれない、と。
"個性"『深層学習』を持つ大学教授の理香と"個性"『付与』を持つ研究者の自分達は他人に比べ知識量が多いことは自負していた。なにせ、なまじ知識がある為、ことある事に論争になり喧嘩が勃発するからである。なお、喧嘩してもすぐ仲直りをする為、周囲の人物からは完全にバカップル認定されているのは今でも納得出来ていない。
そんな自分達の息子である。何か知識関連の"個性"が発現するだろうと、妊娠期間中に何度か話題に出たことはあった。妊娠中の検査で"個性"が異形型であることは除外され、更にその可能性は高くなった。
しかし、流石にこれは予想出来ていなかった。
泣かない息子。確かに存在していると見れる意思。"個性"に名前を付けるなら、『天才』『早熟』『瞬時理解』などであろうか。もしかしたら『神子』『賢者』でもよいかもしれない。多少親バカな気もするが、この世に誕生した途端に見せるその落ち着きは子どもではありえない。
だからこそ安心した。赤ん坊らしくない赤ん坊など些細なことだ。無事に産まれてきてくれた。それだけで妻と息子には感謝することしかありえない。
そう考えながら自身の妻を抱きしめて撫でる。
と、次の瞬間、彼の足に衝撃が走った。決して強いものではない。固いものでもない。何らかの攻撃のようなものではない。
何か柔らかく、暖かく、そして小さなもの。何だ、と疑問を浮かべる前に反射的にその足を見た。
そして驚愕する。
そこに息子がいた。先程、生をうけて間もない赤ん坊。産湯で洗われ、綺麗になっていた、何も纏わない小さな身体。そんな身体で既に歩き、自分の足に手を掛け立っていた。
その様子を妻も目撃していた。自身の身体わ痛めて産んだ赤ん坊。その自覚は男である夫よりも強いだろう。そして彼女は無意識に赤ん坊へ手を伸ばした。
自身の赤ん坊。0歳児で自ら歩くことなど驚愕であるが、そんなものより自らの赤ん坊に早く触れたかった。
そして彼女の手を取る赤ん坊。
まるで彼女が自身の母だと理解しているかのようにその手を掴む。掴んで――、
「てんじょーてんげ、ゆいがどくそん!」
舌足らずであるが確かに聞こえた言葉。
その場にいる全ての人間が固まったのは言うまでもない。
2話目は明日投稿します