天災の問題児がヒロアカの世界で自由気侭にヒーローを目指す 作:びっくり葉加瀬
「八百万さん!百を(研究の為に)俺に(託して)ください!」
『ブフォオオオオオ!!!』
俺の言葉に紅茶を吹き出す父親達。
リゼがその醜態におやおやと静かに片付けを始めるのを背景に俺は更にまくし立てる。
「すごいですよ百の"個性"は!これならまだこの世界で作られてない技術はもちろん、まだ俺が構成段階だったあの研究も進められる。それに未来技術だってもしかしたら。それどころかあの世界の技術を再現できる可能性が……!」
「ゴホッゴホッ、落ち着きなさい唯我君。」
父親達はまたゴホゴホと咳き込んでいるようだ。そんな中、百が俺の裾を引っ張った感覚でようやく俺は少し冷静になった。
「けんきゅうしゃ……。それもいいですが、わたしはなりたいものがあるんですの。」
「なりたいもの?」
「それは『ヒーロー』、ですわ!」
「そういうことか……。そうだ。ウチの娘はヒーロー志望でね。キミの研究に役立つことは出来ない。」
『ヒーロー』ね。どつやってそのヒーロー志望から研究者志望にさせるか。齢4才の少女を説得させるその内容を考え始めたその時だった。
「それに"
「え!?…………はぁ、唯、お前……。」
その言葉に俺はようやく冷静さを取り戻す。
不味いことになった。失言に気づいたその時には、八百万さんは目配せをして、既にその場から去ろうとしている最中だ。
「その夢には危険がある。それに気づかない訳ではありませんよね。」
「何?」
八百万さんが俺の横を通り過ぎようとするその瞬間にボソリと呟く。
ギロリと睨む八百万さんに俺は静かに百に目配せをすると、それを察した彼は秘書に合図をすると百の頭に手を乗せてしゃがみこむ。
「百、先に帰ってなさい。」
「え、でも……。」
「また案内してやるから、次は色々と教えてやるよ。」
「はい!ゆいがさん!」
「……あぁ、そうだね。」
百が退室した時になったバタンという音を最後静まり返る部屋で誰かがゴクリと音を鳴らした気がした。
八百万さんは静かに元いた場所へ戻ると、俺を品定めするように俺を睨む。
「彼女がヒーローを目指すということは、その"個性"も大勢の前に晒される。それを知らない訳ありませんよね。」
「そうだ。だがその対策……別の"個性"だと説明させることも視野にいれている。まだ百には話してなかったがね。」
「それでも気づく人は気づきますよ。」
「……。」
「それに身内の安全だって保証出来ない。そうですよね。」
「どういう事だ?」
「金で裏切る人が今だって身内にいるかもしれないってことですよ。」
「そんなわけ……!!………………あぁそうだ。ここにいる人間全員味方の保証なんて無い。」
顔を覆うようにして目尻を抑える八百万さんがそう声を絞り出す。
「それで?何が言いたい?」
「最善は"個性"を偽装しながら普通の生活を送らせるしかない。ただそれが出来ないってことは彼女は4才ながらもうヒーローへの確固たる羨望がある。そうですよね?」
「……あぁ。自身の"個性"で人の役に立ちたいのだそうだ。まだ幼いだけあって、その人の役に立つのがヒーローなのだと考えを変えようしないんだ。だから君のいうような、研究者のように別の分野で人の役に立つ仕事も紹介できないと思うよ。もう少し年を取れば違うと思うが……。」
「そうですか。なら私が出来るのは1つです。」
「なんだい?」
「彼女に護衛術を教え込む。ただそれだけです。」
「4才の研究者の君に何ができる。」
「できますよ。護衛術の合気道に、攫われないような立ち回り、攫われた時の対処法、とかですかね。」
前世の記憶と経験だが、吸血鬼幼女に仕込まれたため今でもある程度の肉弾戦はできる自負がある。身体が違うので元のレベルまで仕上げるにはトレーニングは必要だが。
「ほう、そこまで出来るのか。ただの研究者ではないというのとか。」
「僕、初耳なんだけど……。」
「まぁ、俺自身トレーニングが完璧な訳では無いよ。」
「その年で完成されていれば驚きだよ。」
「それもそうですね。なんにせよ別の道を歩かせるプランを視野に入れているなら私に預けるのもメリットしかないですよ。"個性"を強化するのにも役立てますし、彼女自身の為にもなる。」
「ふむ……。」
これまでの事を吟味しているのか、考えこむ八百万さん。先程の険悪なモードからも少し落ち着いて、ここにいる父も安堵のため息をしている。
「それで……、君が百の"個性"を利用しようとしている、というのは変わらないのではないか?」
来た。
それが問題だ。
これは実際そうだし、反対できるようなものでもない。
「反論はしません。私の私利私欲の為に利用しようとしている。それに間違いはないです。」
「潔いな。」
「はい。ただ、悪用はしない。それは信じてもらうしかないです。」
「そうか。では聞かせてもらうか。なんの為に百を利用するのかを。」
百を利用する理由、そんなの……。
「全て彼女、リゼの為です!!」
「……は?」
片付けを終えて傍らに待機していたリゼがペコリを頭を下げる。
「全てはリゼの為!完璧なメイドガイノイドを完成させる為!研究や金はその副次効果に過ぎません、私の原動力は全て彼女の為です!今の世界の技術では完璧な素体は作れませんが、百の"個性"があれば別!まだ完成されてない技術だって俺の知識を合わせれば発明可能!それに……。」
「分かった分かった落ち着きなさい唯我君。」
おっとまた我を忘れて語り始めるところであった。
この癖も直さなければ……。
「ふふっ、なるほど。キミの行動の原動力は彼女か。面白い。面白いよ実にね。」
再び品定めするような目で俺を見据える八百万さん。俺の心を見透かすようなそのギラリとした目線に冷や汗が垂れる。
「まぁ、いいだろう。君に預けて見よう。どちらにせよ百は"個性"を活かしたがっていたからな。」
「おまかせください。彼女を立派な『ヒーロー』にして差し上げますよ。(俺のな)」
「ヒーローの裏に君に願望が見えるね。」
「おや、失礼しました。」
「言っておくが百がやりたくなくなったら、この話はなしだからな。百の意見が第一優先だ。分かったね?」
「勿論ですとも。」
その後は、危なくご破算になりかけた資金援助も無事締結し、八百万一家との関係は続くこととなった。
百も定期的にこちらに寄越すらしく、その時は世話をしてくれとのことだ。
ちなみに最後別れるとき八百万さんはと言うと……。
「ところで、嫁に出すわけではないからな。手を出すなよ唯我君!」
「4才児に言う言葉じゃないですよね。ていうか興味ないです。」
「なんだと!可愛いだろ百は!!!?」
「何言ってんだこのおっさん。」」
ただの親バカだった。