天災の問題児がヒロアカの世界で自由気侭にヒーローを目指す 作:びっくり葉加瀬
「百が危なっかしい?」
俺たちが小学生となり、堀須磨小学校という小学校へ通い始めた矢先の事だった。
「そうです。なんというか優しいを通し越してお人好しというか、将来悪い男に引っかかりそうな危うさというか……。」
「悪い男……キミの事じゃないのかね。」
「違います。」
違うったら違うもん!
八百万さんとの定期的な面談の際に百の危うさについて語る。父親の方針で小学校には文房具を作り出す"個性"として皆の前では騙っているのだが、そのせいか文房具を忘れた子に頼られるということが多発していた。
勿論百も叱るには叱るのだが、頼られて満更ではないのか毎回作ってあげていて、なんというか見ていて駄目男に騙されそうな雰囲気がするのだ。
「ふむ、キミがそういうならそうなんだろう。百の安全の為送り迎えは毎日しているからかな。友人との関係も百にとっては学校内での数少ない交友だ。」
「私からも言ってはいるのですが、今度は隠れて……。」
「そうか……。」
4才から歳を重ねたといってもまだ6才。"個性"の危険性というものについてまだ理解できない部分があるのだろう。
「どうすればいいと思う?」
「"個性"を使うことへのリスクが理解できればいいのですが……。」
「難しいかな?」
「誘拐される程の怖い思いをしたことないので難しいと思いますね。」
「うーん。実際に誘拐なんてさせたくないしなぁ。」
「狂言でもしますか?」
「それは本当に最終手段だね。」
俺的にはそういう経験もさせた方が、色々と為になると思うが娘馬鹿な八百万さんとってはそれも嫌らしい。
そんなことを話してから1年後、俺達が小学2年生のことだった。
『あー、箸忘れたー。』
『私が作って差し上げますわ!』
『え?八百万さんって文房具しか作れないんじゃ……。』
『あ、えーと、箸も学校で使うので文房具ですわ!』
『そっかー!ありがとう!』
「はぁ……。」
そんな学校での出来事の報告に、八百万さんは深い大きなため息をつく。
「これは本格的にやらないといけないかもね。狂言誘拐。」
「私は元より賛成ですよ。ただ計画は詰めないといけませんが。」
「当たり前だ。妻に似たのか百がここまでお人好しだとは……。世間知らずというのも困ったものだ。」
「"個性"が関係しているとはいえ、箱入り娘に育てようとしたのは八百万さんでは?」
「それはそうなのだが……。」
困ったような顔をする八百万さん。自分でも親バカ過ぎて百が箱入り娘化しているのは自覚はあったようだ。
結局狂言誘拐の案が採用され、俺(勿論リゼ付き)と八百万さん、それと何人かの使用人さんで計画を詰めていく。
流れとしてはこうだ。
世間を知るという目的で何度か俺と徒歩で下校させる(勿論ボディガードの尾行付き)
↓
何度目かの下校時になんかのリゼに離れて貰う
↓
強面の協力者に俺ごと誘拐してもらう
↓
誘拐された時に"個性"の便利さを話させる
↓
俺がボコされる
↓
ヒーローがやって来て解決
という流れだ。
最終的に百にはこれが嘘だったと話すつもりらしい。
だが、7才の少女にそれは大きなトラウマとなる可能性はありつつも自身の"個性"の危うさに気づく大きなきっかけにもなろう。
ちなみに俺がボコされるというのは勿論フリである。大事なお友達がこうなるかもということで千両役者並に芝居をしなければならない。
「最終確認だけど誘拐された時の対処はまだ百は取得してないんだよね?」
「はい。教えてはいますがまだ"個性"の使い方に慣れてないらしく複雑な物の生成は出来ないようです。」
「そうか。これを通して出来るようになってくれれば嬉しいのだが。」
やるからには為になって欲しいのだろう。この危機を乗り越えて娘にヒーローになる経験にして欲しい。
そんな希望を話す八百万さんと共に計画を詰めていくのであった。
「ちなみに護衛術に伴うトレーニングもまだ初歩で本格的に教えるのは中学校からですかね。成長に支障が出ますし。」
「百を大きく成長させてどうしようと言うのかね?ん?」
「だから何言ってんだおっさん。」
「帰りのお時間ですわ!唯我さん!」
何度目かになる徒歩下校の日。
百は最初は怖そうにしていたが、もう慣れたのか嬉しそうである。
今も満面の笑みで俺の席へと近づいてくる。
「八百万さんと葉加瀬くんまた一緒に帰るってー!」
「むむむこれは感じるよ、アレの波動がね!」
「ちちちちち違います!彼はその使用人みたいなものなので!」
初耳だが。
まぁお嬢様に色々と教えている立場と考えれば講師兼使用人というのも間違ってはいないか。
そんなことより今日は狂言誘拐の実行日である。
着いてこられると多少面倒だが……。
「じゃあな、野暮な私らはクールに去るぜ。」
「ねぇ何キャラそれ?」
全然野暮じゃないがな。
まぁ邪魔は入らないようで安心である。
「今日は何かお買い物しますの?」
「今日は野菜でも買って帰ろうかと。スーパーかな。」
「スーパー!あのお札がなくても物が買えるというリーズナブルで噂の!」
「いや、別にスーパーだけじゃないでしょそれ。」
「そうなのですか?」
「そうそう。」
如何せん世間知らずは継続中であるため、こうした一つ一つの俺の行動で庶民の暮らしを少しずつだが教えている。
お嬢様に付き合うのも楽じゃないぜ。
そして、スーパーで寄り道をして野菜は買ったはいいものの、百はお菓子コーナーが気になっていたようで目をキラキラとさせていた。
「なんか買う?」
「わ、わたし大きなお金しか持っていなくてっ!」
「まぁーそれでも買えるけどな、つか30円くらいなら俺が買うわ。」
「えっ!よ、よろしのでしょうか……。」
「まぁこのくらいなら余裕だしな。」
「……!」
奢られたのも初めてなのか物凄い笑顔を見せる百。たった30円のお菓子でこれくらい喜んでくれるなら男は皆楽だな。
「これが30円……。いつものケーキの予算なら500個は買えますわね!」
「そんないらんでしょ、ほら早く食え。一応買い食い禁止だからな。」
「買い食い……しちゃいましたね……フフフ!」
何この子可愛い。
買い食いしたお菓子をハムハムと食べながら隣を歩く百に庇護欲的な感情をおぼえる。
この後狂言とはいえ誘拐させるのは心が痛むが、彼女の"個性"の危険性を知ってもらうためには仕方がない。
「あ、やべ。買うもの忘れてたやつあるわ。」
「あら?じゃあもどりますか?」
「いや、リゼに行かせるからいいよ。頼むリゼ。」
「はい、かしこましましたマスター。」
自然な流れでリゼに離脱してもらう。と言っても勿論完全に離れた訳ではなく遠く離れた所から見守っている筈だ。
後はこのまま誘拐の流れになるはずだ。
リゼが離れて少し経った頃、1つのワンボックスカーが俺たちの横に止まる。
瞬間ドアが開き、顔に袋を被せられると乱暴に口を塞ぐように顔と腕を掴まれ、車の中に引きずり込まれた。
「入れたぞ!出せ!」
「おう。」
狂言にしては少々強引だと思いつつ、静かに待つ。百はんーんー!と叫ぼうとしているのか、俺と同様に口を塞がれ声を出せないようだった。
その間にも俺は縄で縛られて拘束される。次いでにとばかり手袋のようなものもはめられ、"個性"対策もされてしまった。
随分本格的だと、本当の誘拐のようではないかと思ったスグのことだ。
「嬢ちゃん、静かにしないとお友達殺しちゃうよ?静かにしようか?」
「んーんー!!」
「アニキ。」
「あぁ、やれ。」
「ングゥウウウウウ!!!!」
その瞬間、俺の身体に電流が走り、思わず叫んでしまう。俺がボコされるのは想定内だが、本気過ぎないだろうか。
というかこれは……。
「
「嬢ちゃん2度目はない。お友達が殺されたくなかったら黙ろうな。」
「ン……、グスッ。あい……。」
「よし良い子だ。」
俺の叫び声を聞いたのか百は静かになる。
すると、アニキと呼ばれた男が続けて指示を出す。
「パルス、見ろ。」
「ヘイ。……あ、やっぱ持ってやすぜアニキ。携帯含めて4つッス。」
「やはりか。用心するもんだ。適当なところで捨てろ。」
「ヘイ。アニキ。」
パルスと呼ばれた男がなにやら"個性"を使ったのか俺の身体をまさぐり、携帯と隠し持っていた通信機を取り出す。同様に百にも持たせていたものも没収されたようだ。
その後、窓を開ける音がしたので本当に捨てられたのだろう。俺の絶叫まではリゼも聞こえていた筈なので、追ってきてはいるだろうが、通信機を捨てられた以上ここからは追跡することはできなくなった。
間違いない。これは……
本物の誘拐だ。