天災の問題児がヒロアカの世界で自由気侭にヒーローを目指す 作:びっくり葉加瀬
「ユダの情報だと嬢ちゃんは通信機なんて作れないんだよな?」
「ヘイアニキ。そう聞いてます。」
「一応定期的に見て何か作ってたら殴ってでも止めさせろ。」
「ヘイ、分かりやした。」
「ヒッ!?」
「大丈夫だからねお嬢ちゃん。静かにしてたらおじさんも怒らないからね〜。」
「は、はい……。」
呼ばれた名前と声から状況の確認をする。
まずアニキと呼ばれている実行犯の主犯格の男が1人。
それに寡黙な運転手の男が1人。
パルスと呼ばれた機器類を察知できる"個性"持ちの男が1人。
電撃系の"個性"持ちが男が1人。
百の拘束をしていた気持ち悪い声の男が1人。
そしてユダと呼ばれたここには居ない男──恐らく裏切り者の人物が1人。
ここには5人いて、それに加え狂言誘拐の話から本当の誘拐へ繋げた人物の6人が
「ヒヒヒ。なぁ、アニキ……。嬢ちゃんの尋問は俺に任せてくれよ。」
「はぁ、ロリコンの変態が。それは最終手段だ。」
「チッ。イイ声聞けると思ったのによ……。」
「ヒッ!ウッ、ウッ……。」
「あーあ泣いちまったよ。可哀想に。」
「ヒヒヒ。泣き声も可愛いねぇ……。」
ゲスな話の内容を聞きながら打開策を考える。百は恐怖に支配されており、"個性"で通信機も作れない為、彼女に頼ることは出来ない。
ということは、俺の"個性"でどうにかするしかない。しかし、"個性"封じの為に手が封じられている今、何かしようとして身体を動かせば、不審に思われることは明らかだ。
縄抜けは可能ではあるが、それ相応の準備が必要だ。
俺"個性"の話は誘拐犯から出ていないが、ここまで用意周到に誘拐されているとなると、"個性"の概要は知られていると考えたいいだろう。
「目的は百の"個性"か?」
「あん?なんだガキ。」
「百の"個性"で金目の物でも作らせて儲ける気か?やめた方がいいよ。」
「何いきなり喋ってんだ?殺すぞ?」
縄抜けの為に男を挑発する。何か殴られでもして衝撃があれば自然と縄抜けしてもバレないかもしれない。
「おい。殺すのはやめろ大事な人質だ。」
「分かってますって。おいガキ、電流流されたくなかったら黙れ。」
「通信機取り上げただけで安心しきってる馬鹿の言う言葉聞かないよ。さっさと自首したグァアアアアアア!!」
「唯我さん!」
電流を再び流され叫び声を挙げてしまう。
最悪これでもいいかと縄抜けの準備を開始する。後1回でも何か衝撃がくれば縄抜け出来るところまで進め様子を伺う。
「挑発して何かするつもりか?無駄だ。お前の"個性"の個性は聞いてる。」
「グ……無駄だ、はこっちの台詞だ。もう追っては来てるよ。早く諦めたら?」
「テメェ……。ボコすぞ?」
「おいボルト。ガキの挑発に乗るな。頭がきれるって情報あっただろ。何もさせるな。」
「あ、あぁ、分かったよアニキ。……チッ。」
「グッウアアアア!!」
「これで終わりだ。何かしようとしてんなら残念だったな。」
「クソがよ。意外と冷静だねアニキさん。」
「……。」
だんまりか。
しかしこれで縄抜けはできた。このまま少しでも手のひらを出せれば車にAIを付与してGPS信号をリゼと通信されられれば……。
「おい、ガキの縄解けてるぞ〜。」
「何!?テメェ何かしやがったか?」
「……いや、手袋は脱げてないッス。」
「チッ、まぁいい縛り直しとけ。残念だったなガキ。お前の"個性"は触れてないと発動しないのもこっちは知ってのさ。」
「……。」
「アニキ?」
「いや手袋が脱げてないならいい。急ぐぞ。」
「おう。」
クソ、縄抜けしたが手袋は脱げなかった。
俺の"個性"は個性因子を物体に流すため、対象に触れてなければいけない。以前手のひら以外でも試そうとしたが、肌に触れているだけでは発動しなかったので、その方法も今は使えない。そもそも春の季節で長袖長ズボンなので試そうにも試せないが……。
いや、待て。
俺の"個性"は物体に個性因子を流すことでAI化する。
だったら俺の手のひらとAIを付与したい物体。その間にあるものにも
俺はまず1度家の電化製品に付与しているAIを解除してから、手袋へとAIの付与をする。
今の俺の"個性"の発動上限はリゼを含めずに7。年齢が7なので歳を重ねる毎に付与できるAIの数が増えるようだった。
今は研究所で5つ、家で2つ使用していた為、そのうちのどれかを解除する必要があった。母さんには済まないが……。
なお解除は遠隔でも可能だ。
機械でもなく動作機構をもたない物でもない手袋にAIを付与しても意味は無い。しかし……。
「(そして車へAIを付与!)」
"個性"が発動した感覚が分かる。
俺の"個性"が付与されていれば間接的にも"個性"の発動が可能なようだ。
検証は必要だが……。
「(今はそれよりも……!リゼへ通信!GPS情報を送信!返事は無しで!)」
車ほどの機械であればカーナビや音楽再生機能で返事が可能なので、それは却下させておく。
しかし、その返事がなくともリゼと1度でも通信ができればあとはリゼから各方面へ指示や情報が拡散されるだろう。
更に、誘拐犯の人数、特徴、コードネームなども通信させ突撃の準備のための情報も伝えておく。
そんな中、寡黙な運転手が声を挙げた。
「アニキ、もうすぐ着きます。」
「あぁ分かった。着いたら地下室にガキ共運んどけ。」
「「「ヘイ。」」」
誘拐事件は次の段階へと進むのであった。
「グッ。」
「キャア!」
地下室へと運ばれた俺たちは頭の被せ物も縄もそのままに転がされる。
「ガキは、チャカ、テメェが見張ってろ。」
「へ、ヘイ、分かりやした。」
声の数と指示から見張り用の誘拐犯が1人だけいる事が分かった。この情報も勿論車からリゼへと通信する。
これで後はヒーローを待つだけだ。
狂言ではなくなった以上、リゼは情報を伝達する役目のみに徹して貰うしかない。
この世界では基本的に"個性"の使用は禁止だ。
今の俺の"個性"は緊急的に許されるだろうが、救出の為に俺の"個性"であるリゼは参加出来ないだろう。
面倒な法律だ。
いっその事ヒーロー免許でも取るか。
百もヒーローを目指しているし、研究の為だけの"個性"使用許可だとこのような万が一の時に"個性"を十分に発揮出来ない。
ヒーロー免許を取った者が必ずしもヒーローとして活躍する訳でもないし、それもありかと思ってきた。
そうこう考えていると、ドタバタとなにやら上が騒がしくなってくる。いきなりガチャリとドアが空いたと思ったら、アニキと呼ばれていた男が入ってきて焦ったように口を開いた。
「ヒーローが来やがった!おいガキテメェの仕業か!」
アニキはそう幕下たてると俺の胸元を掴んで持ち上げた。その拍子に被せ物が取れるが、いきなり目の前に顔を近づけたおっさんがいるのは勘弁してほしい。唾が飛んで汚いし。
「クソ!直接触らないと"個性"発動しないんじゃなかったのかよ……。おい!チャカ!テメェもお嬢様人質にしとけ!
「へ、ヘイ!」
そう言ってチャカが百に近づこうとしたその時だった。
「そうはさせないよ!」
ニンジャのようなヒーローがやって来て2つのクナイを投げると男達の動きが止まる。
「忍法!影縫の術!これでもう動けまい!」
「くっ!」
「無駄なんだよ!」
ヒーローの"個性"、名の通り恐らく影を捉えることて動きを止めるのだらう。百へ向かった
「何ッ!馬鹿な!"個性"は効いているはずだぞ!」
「俺の"個性"は『無効化』!俺を対象とした"個性"は効かねぇんだよ!」
「なんと強力な"個性"か……!」
強力で相性が悪い。この間にも忍者ヒーローの後ろに何人かヒーローが駆けつけるが俺を人質に取られて動ける"個性"は持ち合わせて居ないようだ。
「ほらガキ殺されたくなかったら全員どきな!」
「子供を離せ!これ以上罪を重ねるな!」
「うるせぇ!黙ってろ!」
ヒーロー、
ここで俺が"個性"を使えれば突破口になるかもしれない。
俺の"個性"が手でなくても発動出来れば……!
拳銃にAIを付与拳銃にAIを付与拳銃にAIを付与……!!
「おい!早くしろ!」
「……『無効化』なんて強力な個性だね。なんで
「あぁ!?んだガキ!答えるわけねぇだろ!」
挑発して時間を稼ぐ。
少しでも時間を稼げば相性のいい"個性"を持つヒーローが現れるかもしれない。そっちの可能性も視野に入れて……!
「どうせ時間稼ぎだろ。頭の良い奴のすることは分かってんだよ。次喋ったら撃つぞ。」
「……。」
「唯我さん……!」
『ゴリッ』と拳銃を突きつけ、アニキはトリガーに手をかける。ピンチになったがこれはチャンス。
この"個性"社会、"個性"が成長するには鍛錬の他にもう1つあった。良くヒーローインタビューで"個性"が急成長したと発言するその条件。
それは……ピンチや死の直前だ。
発動した……!
「銃の発射を止めました!今なら取り押さえられます!」
「何!いやしかし……。」
「何言ってんだお前の"個性"じゃ……。」
"個性"の発動を確認した瞬間、俺は拳銃のAIに安全装置をONにするように念じる。
俺の発言でヒーローから銃に目線を移動させたその時がチャンスだ。
「安全装置が……!クソッ動かねぇ!グッ!?」
それに
腕を縛られているため威力はなく意識を奪うことは出来ないが、状況を打開する一手にはなる。
「!!取り押さえろ!」
「クソぉおおおお!!!」
全てが終わり、俺は念の為1日入院することになった。
その間に見舞いに来た八百万さんに事の顛末を聞く。
リゼは背後でシャリシャリと見舞いのリンゴを剥いている。
どうやら誘拐の犯人はやはりというか使用人の1人だったらしい。目的は金で、どうやらギャンブルでだいぶ借金があったとのことだ。八百万家の使用人で満足以上の給金がありそうなのにやる人は際限なくやるのだなと教わった。
「今回は済まなかったね。」
「いえ、結果オーライなら俺も身体張った甲斐があるってもんですよ。」
「結果が良かったかというと微妙だけどね。」
「……何かあったんですか?」
その言葉に八百万さんは苦笑して答える。
「自分の"個性"が原因でキミに危害が加わったことを気にしているのと、ヒーローへの憧れが強くなってしまったようでね。」
「あー。そちらは逆効果でしたか。」
「まぁ、不用意に"個性"を使うことは控えるようになるだろうけど、百の夢を変えることはできなさそうだね。」
「上手くいかないものですね。」
「そこでだ。」
手をパンと鳴らして俺の事をジッと見つめる八百万さん。その目からは俺への申し訳なさと期待が滲み出ているように思えた。
「キミもヒーローを目指さないか?」
「良いですよ。」
「キミがヒーローになってくれれば、百の隣で切磋琢磨するとの同時に……って良いのかい?」
「はい。今回みたいに俺がピンチの時にリゼ使えなかったり、自分の身を守る装備付けれないのは、少々不便ですからね。ヒーローになれば合法的に装備を身につけることもできますし。」
「そうか。そう言ってくれるなら助かるよ。ありがとう唯我君。」
そう言って感謝をのべる八百万さんを見ながら、俺はヒーローへ成るための1歩を歩み始めるのであった。
なお後日──、
「心配しましたのよ唯我さん!」
退院した俺に抱きつく百の後ろで眉をヒクつかせる八百万さんの親バカは暫く治らなそうだと感じるのであった。
原作前の原作キャラを含めたオリジナル展開終了。
主人公の"個性"の発展とヒーローを目指す目的を説明する話でした。