1STEP 最愛との再会
俺は結局、湘南から離れて北海道へと戻った。毎日ちょこや電話で連絡はしているが、会えないというのは寂しかった。だが、大学の新入生歓迎会で俺は、驚愕する。
「の、ノエル……?!」
そう、彼女は同じ大学に入学していたのだ!!
「累さん……!」
そう、ここは東京である。
────高校の時と変わったことがいくつかある。まず一つ目、GBN? というプラモデルでバトルさせるゲームがあったこと。これは、俺たちが高校の時もあったみたいだが、その時は湘南には普及していなかったようだ。勿論、そのプラモデルの題材であるガンダムは、度々再放送で見ていたが、それくらいの知識しかなく、俺は一人でガンダムベースというGBNの筐体や、沢山のガンダムのプラモデル、通称ガンプラが売っている場所に行けなかった。だが、ノエルと一緒なら、行けるかもしれない。丁度半日授業の日だし、ノエルに一回誘ってみるか……。
「あのさ、ノエル。今日放課後時間ある? 一緒に行きたいところあるんだけど……」
「いいですけど、累さんが誘ってくるなんて珍しいですね。何かあるんですか?」
ノエルは少し疑いの目を向けてくる。
「いや、ちょっとね」
流石に一人で行くのが不安だから着いてきて、とは言えないのではぐらかす。
「じゃあ、下校の時に校門前で待っとくよ」
俺がそう言うと、ノエルは快く了承してくれた。
「はいっ」
「ありがとう。あ、もし遅れたりとかあったらちょこで連絡してね」
「それくらい当たり前ですよ。累さん」
あぁ、それもそうか。
そして、その日の放課後、俺は真っ直ぐに彼女が待っているであろう校門へと急いだ。
「はぁ……はぁ……ごめんノエル、待った?」
「待ってませんよ。それより、行きましょう」
ノエルは少しも疲れた様子を見せないあたり、結構早く来たのだろう。
「あ、ああ、そう、だな」
だが、一方の俺は息も絶え絶えで走れそうにない。
「急がなくてもいいですよ。合わせますから」
なんと優しい子……!
「で、どこに行くんですか?」
「うーん、言うか迷うんだけどなぁ……」
俺がアニメを見ているということを知られたら幻滅されるだろうか。いや、ノエルに限ってそれは無い。よし……!
「……ガンダムベースってところ」
「……ガンダム……ですか……」
何か嫌な予感がする……が、その予想は見事に外れた。
「もしかして、GBNですか? わたしはやってないので知りませんが、ナオちゃんが最近ガンダムというアニメにハマって、それでGBNというゲームをそのガンダムベースに行ってしているようですが……」
……寿奈桜ちゃんもやっているのか……。
「う、うん。そう、ガンダムベースだけど、ノエルって知ってるの? ガンダム」
「わたしはナオちゃんとウイング? というのと00? というのを一緒に見たぐらいですけど……」
なるほど、寿奈桜ちゃんはWと00が好き……それか、ノエルにおすすめと思って見せたかのどっちかだな……。
俺はその後、ノエルと一緒に電車に揺られながらお台場にあるガンダムベースへと向かった。
「す、すごい……!」
それは、実物大のエールストライクガンダム。生で見るのは初めてだったので、あまりの大きさに驚いた。
「累さん?」
「あ、あぁ、すまん。つい、な。じゃあ行こうか」
ノエルのお蔭で、本来の目的を思い出す。一応、一万円程は財布に入っているので、ふたり分のガンプラは買える……はず。
「あの累さん。お金、どうするんですか?」
「あぁ、それなら大丈夫。俺が払うから」
「そんな、悪いです」
「いいっていいって。一緒に行けるだけでそれ以上の価値があると思うよ。俺は」
俺の言葉にノエルは顔を赤くする。
「こ、こんなところで立ち話もなんですし、早く行きましょうっ」
ノエルに手を引っ張られて、俺はそのままガンダムベースの中へと入る。
「すごいな……この量」
俺はそのガンプラの量に圧巻される。俺は、今まで一つもガンプラどころかプラモデルを作ったことがないので、どれにすればいいのか迷ってしまう。好きなシリーズや機体を買えばいいとネットには書いてあったが、俺が見たのは確か……鉄血のオルフェンズと、それと再放送でやってたSEED Destinyぐらいなんだよな……。
「ノエルって、欲しいのとかってある?」
「うーんと……これ、かな」
彼女が手に取ったのは、HGAC ガンダムヘビーアームズ。確かガンダムWに出てきたような……さっきW見たって言ってたからな……。
「お、いいんじゃないか? その機体、Wのやつだったっけ」
「はい、ナオちゃんに見せてもらったとき、カッコイイなって思ったので」
カッコイイからか……いいな、その選び方。じゃあ俺は……。
「これにするよ」
そう言って俺が手に取ったのは、HGCE フォースインパルスガンダム。
「うーんと、ですてぃにー? に出てきましたっけ、そのシリーズも、ナオちゃん好きって言ってましたよ」
「あと作るのに必要な道具ってなんなんだろう……」
「店員さんに聞いてみればいいのでは?」
ノエルが口を開く。
「あぁ、そうか。あのすみません。俺たちガンプラ作るの初めてなんですけど、道具とかって必要なんですか?」
すると、髭をふたつに分けた店員さん。名札を見るに、ケンさんというそうだ。その人が、道具の場所まで案内してくれる。
「君たち、初めて作るんだよね?」
「「はい」」
同時に言葉を発する。
「だったら、このニッパーだけで十分だと思うよ」
そう言って店員さんが手に取ったのは、エントリーニッパーというニッパーだった。
「色は沢山あるから、好きなのを選ぶといいよ」
並んでいるところを見るに、赤青白グレーピンクがあるようだ。
「じゃあ俺は青で」
「じゃあわたしはこれ」
そう言ってノエルが手に取ったのは赤色。ピンクだろうと思っていた俺は少し驚いた。
「よし、じゃあ払おうか。ノエル」
「はい。累さん」
そう言って俺たちは会計を済ませて店を出ようとする。すると、さっきの店員さんが引き留めてくる。
「君たち、初めてなんだろう? だったら、ここに作業スペースがあるから使うといい。今日はヒロトくんもいるし、教えて貰えるかもしれないよ」
ヒロト? 誰だそれ。
「……折角だし、行ってみるか。あ、無料ですよね?」
「もちろんさ」
「よし、じゃあ行こうか、ノエル」
「はいっ」
こうして俺たちの、最初のガンプラ作りが始まった。
「ヒロトくん。少し教えて貰えないか? この子達に」
店員が声をかけたのは、恐らく高校生であろう男子。そして、その男子は俺たちの方へと向かってきた。
「えぇっと、よろしくお願いします。クガ・ヒロトと言います」
……直感した。この子は、俺に似ている。
「クガくんか。よろしく」
「よろしくお願いします」
俺たちは挨拶をする。いくら年下でも当たり前の行為だ。
「初めて、なんだよね? 作るの」
クガくんが問いかけてくる。
「そうです。GBNに興味があって、それで」
「GBN……」
その言葉にクガくんの拳に力が入ったのを見た。
「まず、箱を開けて、ランナーっていう、パーツが着いてる板みたいなものを確認して」
「で、そうしたら説明書に書いてある通りにする」
俺たちはクガくんの言う通りにする。
「パーツを切るのって、どうすればいいんですか?」
「まず……ちょっと貸して」
俺はランナーとニッパーをクガくんに手渡す。そして、切ってる様子を俺とノエルのふたりでじっくりと見る。
「まず、パーツから離れたところを切る。で、その後に、パーツと刃先を密着させて切る」
クガくんの説明はとても丁寧で、しかも分かりやすかった。
「ありがとうございます。クガくん」
「ありがとうございます、クガさん」
「はい、ではこれで」
クガくんは立ち去る。
「よーし、クガくんに教わったし、ここからは俺たちでも出来るかもな」
「はい。累さん」
────四苦八苦すること数十分。俺たちはついに、二体のガンプラを完成させることに成功した。
「やりましたね、累さん」
「あぁ、そうだな……」
こうして、俺たちの初めてのガンプラ制作は、無事成功という結果を収めた。