俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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さといも

 アレをなくしたらしい。

 

 

 家出の理由は探し物。

 実家は良家。

 軍資金は勝手に拝借。

 やっぱり無理だったので明日には家に帰り素直に怒られるつもり。

 アレってなんやねん?

 

「キタサンブラック、サトノダイヤモンド」

「急に真名を呼ばれるとびっくりしますね~」

「なになに」

「今更なんだが呼び方、クロシロでよかったのか?」

「私は元々、ママにクロって呼ばれているから全然違和感ないよー」

「本当に今更ですね、既に私はあなたのシロです無問題!」

「最初はキタちゃんダイヤちゃん呼びだったな」

「よく覚えてますね、もう登録済みなので、今また変更されると混乱してしまいます」

「登録?」

「この反応、まさか・・・ご存じないのですか?」

「あのね、人間がウマ娘に名前を付けるのは「あなたと契約したい」って事なんだよ」

「そうです。ウマ娘側が提案された名前を了承した時点で契約完了となります」

 

 聞いとらん。

 俺ってば何を契約したの・・・・。

 

「ウマ娘たちには一般常識の古くからある風習です。昨今はだいぶ形骸化してますが"サトノ家"では今も大事にしてますよ」

「ママから[名前を付けられそうになったらマジで注意しろよっ☆]て何度も何度も聞かされて育ったよ」

「クロちゃんのママは旦那様から名前をプレゼントされて結婚!憧れますね」

「離婚しちゃったけどねー」

「契約の内容を聞かせてくれませんか?」

「そんなに身構えなくても大丈夫ですよ。えーと、三国志の"桃園の誓い"がしっくりきますかね」

「死ぬときは一緒だよ」

 

 気づいたら運命共同体になっていた。

 

「契約のかいじょ・・・・」

「「できません!!!」」

 

 ですよねー、うん知ってた。

 この子達てばアタシの何を気に入ってるの?怖いじゃないの・・・。

 

「トレーナーと担当バの関係みたいなもんか?」

「そうそう、そんなに難しく考えないでねー」

「まあ、まだ仮契約ですから・・・一晩お世話になる私たちなりの"けじめ"と言うやつですよ」

「そうか、なんかゴメン・・・知らなかったとはいえ、カナブンの名を継がせてしまって・・・」

「もういいのですよ、そのような事を言っては先代たちが悲しみます」

「二代目として頑張るよー」

 

 見てるか初代クロシロ、お前たちの後継者はこんなにもいいやつらだぜ。

 次は君だ・・・・。

 

「さあ、絆ゲージを上げるためにもっとコミュニケーションしましょう!」

「めざせ友情トレーニング!」

「じゃあ、また名前の事なんだが周囲の人、学校の友達にはなんて呼ばれていたんだ?」

「私はキタちゃん、クロちゃんがやっぱり多いかな「ブラック」呼びは少数派」

「私はダイヤでしょうか、まあそれ以上呼びようがないですよね」

「何言ってるのシロちゃん?あるじゃない学校中に広まった例のあだ名前」

「その話やめましょうよ・・・トラウマなんですから」

「ねー、マサキさん当ててみてシロちゃんのあだ名~」

「唐突にクイズ来たな、それってすぐ連想できるもんなの?」

「うん簡単」

「やめましょう、やめましょうや・・・」

「サトノダイヤモンド・・・サトノ・・ダイヤモ・・サト・・イヤモン・・・サトイモ?」

「!?」

「ぷっ!wwwあはははははwww!そうだよねwww!やっぱり思いつくよね!正解wwww!あははっwwwwサトイモwwwwイモってwwwwあははははwwww」

「こらっ!笑いすぎですよクロちゃん!だいたい教室で私をサトイモ呼ばわりしたのはあなたでしょうが!!」

「先にシロちゃんが私に腹黒とか言うからだよー」

「あれからクラス中、気づけば学校中の生徒や教師までも私のことをサトイモサトイモと・・・」

「愛されてるねー」

「だな、かわいい響きじゃないかサトイモって」

「嬉しくないです・・・その無邪気さが、私にどれだけストレスを与えていたか・・・」

「子供って結構容赦ないからねー、大人の先生たちもちょっと悪ノリがすぎたんだよ」

「大変だったな、よしよし」

「う~、マサキさんもっと慰めてください」

 

 昔を思い出し落ち込むシロの頭を撫でてやる。

 こちらに頭を押し付け"もっとして"とせがむシロ・・・あらカワイイじゃないの。

 些細なことからいじめに発展するパターンだな、きっと悪気はないのだろう・・・。

 だが悪気がなくとも傷付く人はいるのだ、誰かいじるときは皆注意してね。

 後はアレだ好きな子をわざとからかってしまうやつかもな。

 シロはウマ娘でもあるし、同世代の中でもかなりカワイイ部類に入るのだろう。

 そんな子の気を引きたい仲良くなりたいで、ついやっちゃうんだ!的なね。

 

「で、後に今もなお語られる事件が起こるの」

「・・・・・」

「サトイモ事変」

「サトイモ事変とな!?」

 

 あ、クロの回想入りまーす。

 

【半年ほど前クロ視点】

 

 サトイモが学校中に広まって数日、ダイヤちゃんは目に見えて元気がなくなった。

 最初は言われるたびに訂正したり反抗していたけど、あまりにもしつこいので、放っておくことにしたみたい。

 反応が悪くなったダイヤちゃんを余計にいじったりする輩もいるので、まだこの件は沈静化しそうにない。

 私は知っている。ダイヤちゃんがこのまま黙っているウマ娘ではない事を、ウマ耳の角度と尻尾の動きは沈んでいるようでひどくイラついている。淀んだ瞳の奥では「今に見てろぶち殺してやる」という意思の炎が燻っている。

 ああ、この爆弾はいつ起爆するのだろうか・・・その時が楽しみでしょうがない。

 

 

 今日は半月に一度の全校集会。

 全校生徒の前で違和感のあるヅラを被った校長が、ありがたいどーでもいい話をする。

 苦行でしかない、誰得?

 うちの学校は一応私立の名門進学校。

 生徒は人間、ウマ娘問わず権力者や金持ちのボンボンが大多数を占める。

 集会も体育館やグラウンドではなく専用の講堂を使って行う。

 全生徒、教師その他もろもろを収容できる広さがあり、趣味の悪い美術品が多数展示されている。

 シャンデリアとか必要か?無駄な金使って本当にバカみたい。

 周囲の柱や壁、あらゆる所に謎の装飾が施され「この建物全てが価値ある物なんですよ~ドヤァ」と訴えかけてくる、マジうぜぇ。

 そんな居心地の悪い空間で苦行の始まりを待っていると、ついにサトイモが動いた。

 

「キタちゃん・・・私いままで頑張ったよね」

「どうしたのダイヤちゃん?」

「もう、ゴールしても・・・いいよね」

「どこに?もう集会はじまっちゃうよ」

「いくぜ!今がその時だ!!!」

 

 ダイヤちゃんが顔を上げる、目はいつになくギラついて凶悪な笑みを顔に浮かべる。

 

「ちょ!ダイヤちゃんww顔!www顔がwwチェンゲのww流竜馬wwwみたいwwwww」

「教えてやるよ!サトノ家とウマ娘の恐ろしさをなぁ!!!!」

 

 人混みをかき分け飛び出して行く姿を見送る。

 どうやら私の親友はゲッター線に侵されてしまったようだ。

 いいね!いい仕上がり具合だそのまま征け!!!

 

 講堂の中央には校長お気に入りの石膏像があり、この建物の主として君臨していた。

 仮面をつけた下半身まる出し男、通称「フル・フロンタル像」その頭が少女の飛び蹴りで爆散した!!

 静まり返る場内、しばし間をおいて・・・

 祭りがはじまった。

 

「え!?」

「何!いったい何が・・・」

「きゃー!!!」

「┌(┌^o^)┐タイサァ……」

「サトイモ・・・?」

「サトイモだ!」

「サトイモが乱心したぞー!!!」

「いやー!助けてだれかー!」

「みんな落ち着け・・うお、こっちに来やがった」

「逃げろ皆にげるんだよぉおぉぉぉおぉ!」

「囲め!相手は1人この人数でかかればウマ娘と言えど・・うぼあー!!!」

 

 阿鼻叫喚とはこの事か。

 勇敢にも現場の指揮を取ろうとした上級生を片手で投げ飛ばすサトイモ・・・無慈悲!

 私はそれを受け止めて、気絶した彼を安全圏に寝かせる。

 流石に死傷者を出すわけにはいかない。

 フォローはしてやる、だからもっと私を楽しませろサトイモ!

 

 壁に穴をあけ、床を蹴り砕き、値打ち物であろう展示品を悉く破壊してゆく。

 生徒、教師関係なくの抵抗する者は身ぐるみを剥がされた。何やってんのwwww

 「もうやめてー!」と泣き叫ぶ校長のヅラを奪い、逃げようとする教頭のヅラも奪い取る。

 最後に死んだフリをキメている担任のヅラをぶんどってまとめて踏みつぶす。

 

「「「あ゛ーーー!!!」」」

 

 相棒(ヅラ)を踏まれた三人は泡を吹いて崩れ落ちる。なんでだよwww

 てか教頭と担任もヅラだったのかよ!よく気づいたなwww

 

 なかなかに酷い現場になったが死人はゼロ、ケガ人は・・・気絶した人と逃げようとして自ら転倒した数人ぐらいか?命に別条はないからセーフ!これだけの人数でほぼ損害なし?なんだかんだで手加減してるんだねー。

 私フォロー頑張った!戦意喪失した人たちの保護と避難誘導、吹っ飛ばされた人を安全にキャッチしたりとかね。

 手伝ってくれたウマ娘その他友人たちに感謝!私の親友がすまんな。

 

 しばらくして。

 半壊した講堂、教師と全校生徒の半数が気絶もしくは半裸な状況下で、何処からかマイクを取り出すサトイモ。

 普段とは違うドスの利いた声で言葉を発する。

 

「たった今、この瞬間から私の事をサトイモと侮辱するやつは・・・消す」

「・・・・・・・・・」

「ウマ娘の力で物理的に消されたいか、サトノ家の力で社会的に消されたいかは選ばせてやる」

「・・・・・・・・・」

「わかったか?」

「・・・・・・・・・」

「返事ぐらいしろやぁああああああ!!!カスどもがぁああああああああああ!!!!!!!!!!」

「「「「「はい!わかりました!!!(だから殺さないで!!!)」」」」」

 

 生き残った全員が発する必死の返事(命乞い)聞いてマイクを投げ捨てるダイヤちゃん。

 さっきから私もサトイモ言い過ぎたねゴメン。

 楽しくなってくると、どうにも抑えられないんだ悪い癖・・・。

 

 その日から数日は臨時休校となったが、学校は何事もなかったかのように再開した。

 おそらくはサトノ家の力が働いたのだろう、ダイヤちゃんも元に戻ったみたい。

 講堂は更地になり、ヅラ三兄弟は隠すことをやめ眩しく輝いている。

 サトイモという言葉は現在でもブロックワードとなり、新入生には注意喚起がなされる事となった。

 

 お祭りが終わってしまうと寂しい・・・。

 機会があれば是非また味わいたいものだ。

 期待してるねダイヤちゃん。

 

 クロ回想終わり。

 

 【現在マサキのマンション】

 

「ひでぇ話だ・・・」

「・・・私も余裕がなかったものでして・・・反省してます」

「あー楽しかったなー」

 

 

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