俺と愛バのマイソロジー   作:きさまさき

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塵骸魔京

 アア、口惜しい、口惜しい。

 アア、妬ましい、妬ましい。

 

 我は殺戮と破壊を司る神、破壊神サーヴァ・ヴォルクルスなるぞ。

 偉大なる神たる我をよくも・・・復活する度、何度も何度も何度も中ボス感覚で倒しよって!

 

 おのれ魔装機神ども!

 

 巨人族の王がやられた!?・・・マジか、あ奴らそんなに強くなってるのか・・・

 

 おのれ"マサキ・アンドー"おのれ"シュウ・シラカワ" おのれサキト・・このガキ誰?

 

 だ、だが我は滅びぬ!

 忘れかけられた頃に見事復活し、今度こそラ・ギアスを滅ぼしてくれよう!

 その時を震えて待つがいい!貴様らが老衰したタイミングを狙ってやるからな。

 

 何?奴らと同じ名を冠した存在がいるだと、なるほど並行世界か。

 フフ、フハハハハハ。いいだろう、前哨戦としてその世界を滅ぼしてくれる!

 

 ええい!止めるな。因果律の番人がいない今がチャンスなのだ。

 グラギオスもラスフィトートもすっかり腑抜けおって、我だけでもやってやるわ! 

 これは断じて八つ当たりなどではない!

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 異世界へ出張する「邪神・魔王・反英雄・その他ボス」たちで混雑する超々巨大謎空間。

 通称"ターミナル"ここへ来たのは久しぶりだ。

 人間どもが建造した大都市の駅と商業施設を元にデザインされていて、お洒落かつ機能的。

 転移条件を満たせず、スタンバったまま放置される者もいるため、売店や娯楽施設が充実しているのが特徴。 

 ここに何百年も寝泊まりしている猛者もいるのだという。

 

 多種多様な外見したヤバイ連中で賑わう中を進む。

 色々と便利になったものだとつくづく感じる。

 ターミナルが完成する以前のここは、廃棄物のたまり場であったはずなのに。

 異界門を造ってバラまいた迷惑極まる変態とターミナルの建造に関わった者よ、何者かは知らぬが褒めて遣わす。

 さて、女限定の亜人種がいる世界行きの門は・・・マップを確認しておくか。

 

 "超銀河破壊大帝ペコニャン様、準備が整いましたので受付までお越しください"

 

 館内放送(念話)で誰かが呼び出された。

 我のすぐ傍にいた者が「あ、自分だ」といった感じで総合受付へ向かう。

 ふん、ふざけた名前の奴・・ペコニャン怖っ!名前に反して姿怖っ!

 さ、さすが超銀河破壊大帝だな、我がいうのもなんだが、キモくてグロいぞ!

 どこからどうみても映画「エイリアン」のゼノモーフにしか見えぬ!

 

 ターミナル内での絶対ルール「ウザいから良識あるサイズで」というのがある。

 昔、巨大系ラスボスがうっかりで施設を半壊させた事故があったからだ。

 真の姿が我のようなビック系は皆「人型」か「小動物」に変身している。

 ※犬猫が人気なのでターミナル内はわんにゃんパーク状態である。

 人間に姿を変えるなど業腹だが仕方がない、今の我は壮年の男性「紳士」という奴だ。

 ペコニャンは外見を変える努力をした方がいいと思う。

 

 ようやく辿り着いたぞ、この門だな。

 文明レベル「B」要注意個体「馬を元にした亜人種」巨大ロボ(今のところはなし)

 む?「入界注意警報」だと弱小世界の癖に生意気な!

 

 【特異点崩壊が観測されました。理から外れた「何か」が誕生した形跡があります】

 【世界の転換期を迎えたため、大規模戦闘の発生確率が30%アップしています】

 【興味本位で転移した場合、存在の保証はできません。自己責任自業自得の精神でお願いします】

 【「何か」を・・・い・・け、行・・不明・・番人・・も・・・・・様で・・す】

 

 ・・・物凄く不穏な注意事項が、最後の方、文字化けしていて解読不能なのも怖い。

 

 ふん!この程度の警報がなんだと言うのだ。ほう、巨大ロボはなしか(思わずガッツポーズ)

 では参ろうか!フハハハハハハハ・・・・ハ?なんだ貴様は我の邪魔をするか。

 先客がいたのか?あまりに小さき存在故に気が付かなかったぞww

 割り込み禁止、順番は守れ?自分の方が先に並んでいただと、ハッ!知ったことか。

 雑魚は引っ込んでおればいいのだ、神の邪魔をするなど言語道断!

 

 我に楯突く愚か者のステータスオープン、ハハハ!笑わすな!ただの混ざり物か、身の程を知れぃ。

 なんと小さく脆弱なプラーナ、貴様はいわゆる「ゴミ」だ。

 場違いな所へ迷い込んでしまった哀れで愚かな者よ、消えたくなければそこをどけ!

 

 なっ!おいバカやめろ!「きゃーー!」系の甲高い悲鳴を上げるな!オスだろ貴様!

 ほら、警備員来ちゃった。何が「この人(神)痴漢です」だ!冤罪やめろ!

 

 "問題(痴漢)発生、警備主任「破滅の王」様、大至急現場へ向かってください"

 

 ふざけるなぁ!なんであの御方が警備主任やってんだよ。我程度などワンパンで沈められるぞ!

 うげ、もう来た。人間形態は初めて見るが、うむ、超ヤバいオーラが出ておる。

 待て、これはチャンスでは?我は神でこやつは所詮ゴミ!

 これだけの悪鬼羅刹魑魅魍魎が跋扈するターミナルでゴミに味方する奴などいる訳がない。

 さあさあ、破滅の王よ。その愚かなゴミを煮るなり焼くなりしてください。

 

 ガッチリ握手したぁぁーーー!肩を組んでめっちゃ笑い合ってるだと!こいつらマブダチか!

 そうか、この警備主任は我が知っている「破滅の王」ではないのだな。

 「破滅の~」とかここでは珍しくない二つ名だし、全然ポピュラーだし!

 あ、ダメだ、この方ご本人だ。ゴミが「ぺルさん」って呼んだの聞こえたもん。

 「ペルさん」・・・「ペルフェクティオ」のペルさんですよねー。

 終わった・・・転移も叶わずこのまま冤罪で・・それでも我はやってない!

 

 今なんと・・・「マサキ」だと。貴様はマサキと言うのか!

 散々煮え湯を飲まされた"マサキ・アンドー"こいつはその並行世界版だとでも?

 フフフフ、どうりで不快極まる存在だ。貴様と我はどのような世界であっても戦う運命に・・・

 

 ちょ、警備室連行はちょっと、待ってください!あいつも調べて、これは冤罪なんです!

 あいつ普通じゃないです、なんか色々混じってますよ!魂魄や霊基を散々弄繰り回された形跡が!

 そう!一時期流行ったチート神造兵器かも!世界の法則がみだれる前に始末した方がいいですって。

 

 くそー!聞いてない。携帯端末(スマホ)でペルさんと自撮りに夢中か!

 せめて一矢報いねば、腹の虫がおさまらぬ・・・スマホ・・・クフフフフ。

 我の千里眼(覗き見)で保存された画像を見てやったぞ!

 幼女の画像多くね?こいつが捕まるべきじゃね?

 ほう、貴様いっちょ前に好きな女がいるのか、いや、惚気話は結構。

 ウマ娘だと?低俗なる亜人種の女、しかも幼女!ゴミ同士お似合いだな。

 何だその目は?いいのかぁ~警備主任やこれだけの衆人環視の中で我を殴っても?ククク。

 ハハハハハ、できないよなぁ。所詮はその程度よ、だが案ずることはない。

 貴様がどうなろうと待つ者も帰る場所もすぐに無くなる運命だからだ!

 貴様の故郷は我が丸ごと消し去ってくれようぞ!この破壊神サーヴァ・ボルクルスがな!

 

 喜べマサキ!貴様の好いた女は入念にいたぶった挙句、我の贄としてころ・・・ぶぼぇぇ!

 

 な、殴ったな!ハーカーム様にも殴られたことないのにぃ!ま、ゴェェェ!ギュェェ。

 ちょ、まて、アボッ、誰かとめ、ンガァ、やめろ、やめ、ハゴッ!

 ペル様!警備主任!見てくださいこいつ公共の場で暴力を・・口笛?見て見ぬふりぃ!?

 ギニャァァァァァァァァァァーーーー!

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 ぐぅぅぅ、許さぬ、許さぬぞ。

 せっかく用意した紳士ボディの四肢を折り砕き、首をねじ切るとは!

 やり過ぎだろう!R指定バッチコイの邪神もこれにはドン引き。

 だが残念だったな。この体をどれだけ攻撃しようと我は・・・なんだこれは。

 

 傷が回復しない?それどころか力を吸われ・・貴様の仕業か。

 接触していな相手から力を吸い上げるだと!?ぐぬぬぬぬ。

 まだ慌てるようなときではない!神とゴミでは存在の大きさが絶対的に違う。

 どんな技を行使しようとも、神たる我は不滅!貴様ごときに。

 

 ダメダ・・・クワレル・・・アトカタモナク・・・ケサレルゾ・・・

 

 ヒッ!

 いや、バカなそんなはずない、そんなことができるはずかない。

 やめろ!そんな目でこっちを見るな。貴様ごときが我を見下ろすなぁぁぁ!

 

 ワカッテイルハズダ・・・ハヤクシロ・・・ハヤク・・・

 

 中ボスとして何度も倒された経験則故か、その後の顛末を予測した本能が警告を鳴らす。

 こいつのプラーナ・・・最初に見たときの数十倍だと!?どこにこれだけの力を・・はっ?

 警備主任!?それに、周りの野次馬からプラーナを奪っ・・・繋がっているだと。

 無理やりではなく対象の許可を得てプラーナを融通してもらっている(無線接続)

 ありえない、未だこいつの魂が弾け飛んでいないことがおかしい。

 ターナルにいる連中は全員、力の差はあれど厄災級の魔を宿した者ばかりなんだぞ。

 そのエナジーを循環させ、自分の力に変換?こいつの核(魂)はどうなっているんだ!

 

 ハヤク・・・ニゲルンダヨォォォ!

 

 う、う、う、うおおおぉぉぉぉぉぉっっっ!

 我が逃げるだと?

 魔装機神どもならいざ知らず、人間(絶対違う)相手に尻尾を巻いてにげるだと!

 そんな無様を・・・ん?なんだ、マサキだけでなく周囲の視線が痛い。

 

 "緊急事態発生!緊急事態発生!ターミナル内で巨大化を実行した不届き者が発生!"

 

 "ルールを破ったものに下される鉄槌は、お集まりの皆様でフルボッコの刑です"

 

 "空間強度上昇・抑制力場限定解除・時間は30分と致します。はいスタート!"

 

 テンパって真の姿に戻ってしまった・・・我、もしかしなくてもやっちゃいました?

 じょ、冗談。ちょっとした冗談ぎゃぁぁぁぁーーーーー!マズいマズいマズイ!

 ほとんどの奴が出待ち時間に飽き飽きしているからイベント事は大歓迎だ。

 そう、強者というのは大抵暇を持て余し娯楽に飢えているのである。

 このターミナルという場所、人間を模倣すること、全てがあえて不便さを楽しんでいるのだ。

 嬉々として襲い掛かってくる悪意の塊・・・マサキを先頭に突っ込んで来たぁぁ!

 我の偉大なる巨体が恐ろしくはないのか?ぐぇあ!こいつサイズ差補正無視か!

 嫌ァァァァ!奴に扇動された子犬と子猫の群れが全身をかじってるぅぅぅ!

 いだだだだ!この畜生ども一匹だけでも軽く国を滅ぼす力があるんだった!

 

 死ぬぅ!死ぬって言うか滅ぶ!犬も猫もなぜかマサキも我を殺しきる力を持っている。

 全員"直死の魔眼"持ってるとかおかしいだろ!

 やめ、がぁっ、我のチャームポイント(大蛇尻尾)を何かが噛みちぎろうと・・マサキィィィ!

 何でお前が一番ワイルドな戦い方するんだよ!そういうのはペコニャン様がやれよ。

 ペコニャン、回復と補助魔法で皆をサポートしてる!?その見た目で後衛ヒーラーかよ。

 30分、この集団リンチという名の地獄が30分も、無理だ肉体が無事でも魂が擦り切れる。

 うわぁ、ペコニャンあえて我を回復させてさらに苦痛を与えようと、見た目通りの鬼畜!

 

 どうしてこうなった?我はただ転移をしに来ただけなのに。

 こいつだ、この男だ、今も狂った笑顔で噛みついて来る、マサキに関わったからだ。

 お、恐ろしい、こいつに比べたら魔装機神など可愛いものではないか。

 神も魔王もエイリアンも味方につけて攻撃してくる、どんな固有結界だ!

 こいつのペースに巻き込まれた時点で詰んでいた。

 絶対に踏んではならない地雷に元気よく飛び乗ってしまったぁ!

 嘘、まだ5分・・・無理無理無理無理!絶対無理!

 

 「もっちゃらへっちゃらもけもけさ~」

 

 今のは?我を召喚する古代呪文、カッコ悪すぎて誰にも使用されないまま封印指定されたのでは。

 どこの誰だか知らぬがでかしたぞ!これで優先的に転移できる。

 

 ※召喚術式でお呼ばれした場合はゲートを優先的に使用できる。暗黙の了解!

 

 しかも、我が望んだ転移先ではないか。フハハハハ!我、幸運値高かったのだな。

 形勢逆転だな、貴様に受けた屈辱は、貴様の故郷とウマ娘とやらに万倍にして返す!

 ざまぁ!ハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!

 ぬわぁぁぁーーー!転移中で既に半透明な我をごく自然に殴ったぁ!

 なんだその結晶は・・・異界門の力に干渉した、番人でもない奴がどうして・・

 うわぁぁ!ペコニャンが謎の体液をかけてきた、アレ浴びたら絶対ダメなヤツだ。そういうところも鬼畜。

 結晶の巨腕で我を殴り、転移を妨害した上に溶解液を浴びせかける!最悪!

 なんでエイリアンと息ピッタリなんだよ!クソッあいつペコニャンとも友達だったか。

 

 ぐっ、転移は転移はまだか、早くしないとマサキ&ペコニャンの合体攻撃に敗北してしまう。

 オゴッ、早く早く早くしてーーー!ブベッ、溶けるーー!ガホォ、もう嫌だァァァーーーー!

 

 タスケテ・・・タスケテ・・・タスケテ・・・ダレカ、ワレをタスケテクレーーーー!

 

 ♦ 

 

 ふぇぇ、せっかく戻って来たのに"ヴォルなんとかさん"の回想が長いよぉ。

 

 

 大変長らくお待たせしました。

 みんな俺やで!アンドウマサキやで!

 こうやって帰ってこれたのもみんなの応援があったからこそでして・・・

 ううっ・・・ありがとう!どうもありがとう!シーズン2(仮)はーじまーるよー!

 

 え?アンタ誰だって?そんな!

 えっとですね、しゅ、主人公です・・・嘘じゃないです、信じてくれぃ!

 ここに至るまで聞くも涙語るも涙の大冒険があったのです。

 

 飛ばされた先で修行したり、遊んだり、バイトしたり、友達たくさん作ったり。

 ありがとうみんな!またいつの日か無限のフロンティアで会いましょう。

 目を瞑ると世話になった奴らの顔が思い浮かぶぜ。

 

 カウボーイ(キザ)、乳牛姫(ウシ娘?)、修羅(ちょんまげ)、妖精姫(117歳)、毒舌ロボ(クソムカつく)

 ウナギダンサー(へそ姫)、ペルさん(ラスボス系親父)、モンスター(仲魔)の皆さんたち。

 それと・・・見た目グロイけどみんな大好きペコニャン!(ゼノモーフ)

 

 フフフ、スマホの画像フォルダが人外魔境でパンパンだぜ!

 合成写真やコスプレだって言われて誰も信じてくれないだろうなぁ。

 

「死ね死ね死ねシネシネシネシィィィネェェェーーーーッッッ!!」

 

 なんかうるさくて大きいのがいるな。

 思い出を振り返る事すら許してくれないの?もう何なの何なの?

 

「ようヴォルテッカ!」

「ヴォルクルスだぁぁぁ!」

「知らねーよ。でかいよ、キモイよ、こっち来ないでよ!」 

「マサキ・アンドー!どこまでも邪魔をするか!」

「その呼び方なんか変じゃね?俺はアンドウマサキですけど」

 

 そうだ、電話しないと。迎えに来てもーらお。

 

「あ、シュウ?オレオレ、俺だってばよ。ちげーよ、詐欺じゃないよ。は?証明してみせろ」

「マサキ、消え失せろーーーー!」

「ボンさん上から86・57・87、ライスは75・51・76、何で知ってるかって?ひみちゅ☆」

「通話をヤメロ!」

「そうそう、うん、ああ、わかった。うん、じゃあよろしく~」

 

 ええと次は・・・

 

「母さん?俺だオレオレ、違うよ詐欺じゃないよ!は?証明しろだって、うーん」

「ぐ、スマホ片手に我の攻撃を捌くだと!」

「昔庭に埋めたタイムカプセルに、学生時代やんちゃだった頃の母さんの写真が」

「なぜ当たらぬ?当たってもびくともせぬ!」

「え、うん、ネオさんに貰った、あ、ケンカはやめてね。遅かったか・・・」

 

 あの写真は今見ても十分可愛いと思う。マザコンの贔屓目とか思った奴、アカシックバスターな。

 

「はーい、わかってまーす。うん、ごめんね、ありがとう・・・じゃあまたね」

 

 これ以上話すと泣きそうなのでこの辺で切り上げる、会ったら絶対泣く。

 電話越しだったけど母さんもちょっとウルッと来ていたと思う。

 

 シュウが迎えを寄こすまでの間どうしようかな。

 荷物(異世界土産)の整理でもするか、あ、ペコニャンに貰ったお弁当があったんだった。

 重箱からフェイスハガー飛び出してきそう・・・こ、怖いからシュウにあげようかな。

 今何時だ?この世界の時間軸に設定・・・これでよし。

 いろいろあって修練の時間過ぎちゃってる・・・やるか!

 

「ふん、ふん、ふん・・・・ふんぬっ!」

「なぜ腕立て伏せを始めた?」

「したいからだっ!」

「そ、そうか、何なのだ、これは!どうすればいいのだ?」

「暇なら数えてくれる」

「よかろう、451・・452・・・453・・・って違う!」

「え、違ってた?400までは合ってると」

「そうではなくて、我と戦え!そのために追って来たのだろう」

「俺の気はすんだし、こうして無事帰ってこれたから、もういいかなって」

「貴様がよくても我はよくないのだ!」

 

 もう駄々っ子さんめ!

 

「じゃあ、やるか」

 

 腹筋を止めて立ち上がる。

 戦わないと納得できないのであれば仕方がない。戦ってやるが、後悔するなよ。

 武人として挑まれたからには、どのような勝負でも受けて立つ。そして正面から叩き潰すのみ!

 そうだよな、アレディ、シンディ師匠(腹筋が素敵)

 

「お前がどんな奴だろうと正々堂々真剣しょ・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「な、なんだ、アホ特有の発作か?」

「う、ああ、な、なんて恐ろしい姿だ!しかもでかい!怪獣?」

「今更驚かれても、ターミナルにいたときから、ずっと見ていただろうに」

 

 うわー、コイツこんな見た目だったんだ。

 愛バの悪口でカッとなっていたから、全体像をよく見てなかったわ。

 太陽の下でよーく観察してみるとですね・・・うーん、気持ち悪いよぅ。

 なんかドロドロベチャベチャする体液出しそうだよう・・触りたくなーい。

 

「お前を倒し、これまでの屈辱を晴らす!そしてこの世界を地獄に変えてやるわ」

「せっかく帰って来たのに、それはかなり困る」

「我にはわかるぞ、ターミナルでみせた強さは、力の供給元があったからこそ。現に貴様の覇気は著しく低下しておるわ」

「その通りですけど!でもここはホームグラウンドなのでプラス補正が入るかもよ」

「地元でも負けるときは呆気なく負けるものだ」

 

 実体験か?地元で戦った挙句にボロ負けしたことでもあるのか、この邪神。

 

「負けない、ここまで来て負けられない」

「本気になったか、だが我の千里眼(弱点サーチ)発動!ほう、そうか貴様・・・ククク」

 

 今何か嫌なものを感じた。こっちも相手をよく観察していかないと。

 あ、アレは・・・おぱーいの部分から腕が生えているだと!?なんて挑戦的なデザイン。

 ほうほう、その腕についた大鎌を地面に刺して・・・こっちに来ちゃうのね。

 わー、鎌が地面をジョーズみたいに進撃。よっとキャッチ!この程度じゃ俺は斬れませんね。

 

「どうした!"おぱーいアームカッターが"俺の弱点だってかぁ?効いてねぇぞ!!」

「ここからだ、貴様が苦手なのはこれだろう!」

 

 空気が変わった?なんだか寒気が・・・さっきまで快晴だった空が暗く!?

 嫌だな・・・なんか出てきそう、お?

 

 今半透明の何かみえ・・・か、囲まれ!

 ひゅ~どろどろどろ的な効果音が聞こえそう!ひ・・・ひぇ!

 

「きゃーーー!いやぁーーー!出たのおォォォォォォォォォッッッ」

「ハハ、ハハハハ、そうだ泣き叫んで許しをこえ!」

 

 お、お、お化けの大群だぁぁーー!ひぃ!地中からも、は、離せぇ!

 幽霊はアカン!モンスターもクリチャーもエイリアンも耐性が付いたけどゴーストはアカーン!

 多分俺、サイコパス殺人鬼には勝てる。でも、貞子には負けちゃう。

 物理効きにくそうな奴は倒しにくそうでさぁ・・相性っていうのかなぁ・・別に怖いとかじゃ。

 嘘です!存在そのものが怖いぃぃ!ホラー映画一人で見るの無理~サメ映画は割と好き~。

 くっ!フロンティアやターミナルでは霊体系の相手は防衛本能でスルーしていたから、まともに相手をしたことがなかったんだ!

 修練中「苦手を克服するのも修練です」って緑のポンコツがゴーストタイプの雑魚を何度もけしかけるからいけないんだ!それで余計に苦手になったら意味ないじゃん!

 お陰で駄猫商人から怪しいお守り(ぼったくり)買っちゃったよ。霊感商法やめーや!

 

「ハハハハハ、こんなものが怖いのか!最初からこうしておればよかったわ」

「悪霊退散悪霊退散悪霊退散・・・チラッ・・・退散しろや!」

 

 念仏唱えたくても詳しくないからわかんない!

 ぎゃーーーー!誰かぁ!ゴーストバスターズ呼んで!ゴーストスイーパー美神さんでもいいよ!

 多い!多いから!もういいから!怖すぎるから、やめてくださいよ。

 ぬかったわ、まさかネクロマンサーだったとは、邪神様なめすぎた。

 

 どんどん数を増やしていく幽霊軍団が俺を取り囲み動きを封じようとしてくる。

 半透明の癖に!普通に触ってくるなよ。

 

 (・・・さん・・・さん!)

 

 脳に女の声が!ひぃぃぃ、このままでは精神汚染されちゃう。

 気絶した方が楽なのに、修練の賜物か敵を前に意識が強く覚醒しちゃってる! 

 

 クッソ!帰還してからの第一戦はもっとこうスマートな大活躍をするべきじゃないの?

 ほらアレじゃん、機体乗り換えのお披露目戦闘?もしくは修行を終えた後の新技発表回みたいな。

 ヴォル何とかさんよう、マジで空気読めや。

 アンタのせいで俺のシーズン2、一話切りされたらどうすんのよ。

 

 おごご、む、群がり過ぎでは?お前らにモテても嬉しくない。

 幽霊団子の中心になってしまったじゃないか・・・な、泣いてないもん!

 ミツバチが集団で敵を蒸し殺す「熱殺蜂球」を思い出した。

 あれ自爆技なんだよな、敵も死ぬけど自分たちも自分の熱で死んじゃうの・・・ミツバチすげぇ!

 

「死ね!」

 

 ヤバイ、幽霊は足止めか。下半身ゲロビームが来ちゃう!

 こいつさっきからシネだのコロスだのホロベだの、物騒かつ失礼ですわ!

 あまり強い言葉を使うなよ。弱く見えるぞ。今、弱くなってるのは俺ですけどね。

 やだぁ・・・俺の死因、幽霊ハーレム団子からゲロビのコンボを食らって死す!

 笑えない、このままじゃあいつらに顔向けできない。

 

 (マサキさんってば!)

 (幻聴!?)

 (私です!メルアですよ!)

 

 メル?・・・金色のガッシュという漫画に「メルメルメ~」と鳴くキャラがいてな。

 

 (ウマゴンじゃねーよ!)

 (いい漫画だよな。道徳の教材として推薦したいぐらいだぜ)

 (パートナーとのお別れシーンが泣けて泣けて・・・ちがーう!女神の私をお忘れですか!)

 (うん)

 (この男「うん」って、一瞬の躊躇もなくうんって言いやがった)

 (ごめん思い出すから待って!あーあー、アレだ金髪巨乳!)

 (そんな覚え方かよ!合ってますけど!)

 

 何か思い出して来た。

 そうそう、オルゴナイトを授けてくれた三女神のお一人でしたね。

 この会話も俺の脳というか心の中で0.3秒ぐらいで行われてるんだったな。

 

 (今までどこにいたんですか?急に連絡が途絶えたから心配しましたよ!)

 (かくかくしかじか)

 (な、なんですってー!異世界に?そうか、それで通信が途絶えて)

 (オルゴナイトは向こうにいた時も使えたぞ、感謝します)

 (それはもうあなた自身の力ですからね。ガンガン使ってもらって結構です)

 

 神様にも縄張りがあるらしく、メルアを含む三女神様も向こう側へはおいそれと行けなかったようだ。

 通信もNG、そもそもメルアは俺がどこの飛ばされたのか知らなかったようだ。

 

 (ずっと探していたんですから、とにかく無事でよかったです)

 (ありがとな。向こうでサボっていた訳じゃないから安心しな)

 (何があったかわかりませんが、相当な修練を積みましたね。先程の巨腕など大したものです)

 (褒められて超嬉しい!)

 (多くの助力を得られたようですね・・・彼には会えましたか?)

 (ああ)

 (黙っていてごめんなさい)

 

 会ったよ、自分のことが少しわかってスッキリ・・・しなかったなぁ。

 モヤモヤしますの!

 

 (あなたを後継に選んだのは私の意思。彼に言われなくても私は絶対にあなたを見つけた)

 

 わかってるよ、大事な約束だったもんな。

 

 (信じてくれますか?まだ私たちを頼ってくれますか)

 (当たり前だ。今までもこれからも、女神様には働いてもらわないと困る!思いついたら即神頼み)

 (あなたはそういう人でしたね。では、これからのためにも頑張りましょう)

 (おう)

 (目覚めた彼女たちのためにもね。二人とも無事に継承完了したようで、私もホッと一安心)

 (めざめた・・かんりょう・・それって)

 

 そうか、そうか、そうなのかーー!。

 あいつらが・・・あの二人が・・・ううっ・・うおおおお・・・お祝い、お祝いしないと!

 こういうときはケーキ、それともお赤飯ですかね?

 

 会いたい、会いたい、会える、会えるんだ、もう会っていいんだ!いやっほぅ!

 

 そうと決まれば早く帰って宴会の準備を、ああ、この日のために考えた1084通りの再会プランから最良のものを選び抜いて、待て待て、まずは身だしなみを整えて、やだっ!メンズエステ行った方がいいのかしら?

 げははははははは、楽しみ過ぎて最高にハイッッ!てヤツだぁ!

 

 (ちょ、バカ!集中を乱すと瞬間的超女神通信がきれ・・・ま・・)

 

「ん?ぎょぇぇぇーーー!幽霊団子絶賛継続中だったぁ!」

 

 せっかく帰って来たというのに、ここで・・こんな所で・・あいつらに会えないままで・・

 クロにもシロにもアルにもココにも、もう少し、もうすぐなんだ!やっとなんだよ!

 

 死にたくない、死ぬわけにはいかない、死んでたまるか!

 

「死ね!」

 

 ウルサイウルサイうるさいうるさい!

 幽霊たちに集られ身動きのとれない所に邪神のゲロビが迫る。

 

 死ねだと!何様のつもりだコラ、ああ神様でしたね。

 邪魔するな、邪魔すんなよ、邪魔なんだよ!

 俺じゃない・・・俺じゃない・・・・お前・・・おまえだ・・

 

「お前が・・・お前がぁァ!!死ねぇぇぇーーーーッッ!!!」

 

 全力全開手加減一切なしのオルゴンスレイブ!

 高純度超威力のオルゴンエナジー砲を口から発射した姿は、幽霊に散々ビビッていた男とは思えない。

 

 絶大な覇気の奔流、発射の余波だけで無数に存在した幽霊たちが消滅する。

 物理攻撃耐性を誇る霊体の軍団が成すすべもなく消した、それがどれほどのエネルギー量か検討もつかない。

 人の身で出していいビームでは断じてない!

 

「ぐぁぁァァァァァァァァ!!」

 

 邪神のゲロビをいとも簡単に飲み込んで押し戻す。

 撃ち返された自分のゲロビ+オルゴンスレイブの威力がまともに命中する。

 下半身が爆発し大きな傷を負わせることに成功。

 邪神の体が傾く、超速再生は間に合わず、倒れそうになる巨躯を必死に押しとどめる。

 

 (今のあなたなら呼べます!私の真名を)

 

 真名当ての試練、そんなこともありましたね。

 ああ、大丈夫だ。ぼんやりだけど浮かんできた。

 

 フィンガークリーブ!続けていくぜ!

 邪神の巨体に接近、女性っぽい部分の顔面に両手の指を食い込ませて握り潰す。

 グロッ!ぐちゅってなった・・・狙うところミスった。

 

「そらいけっ!」

 

 でも止めないぞ!結晶生成!体内にオルゴン・ブーストナックル!

 内臓あるか知らないが、ぶち破れ!

 

「こんなものでぇ!」

「はい、捕まえた」

「っ!?」

「もう逃げられないぞ☆」

 

 ハートさんっぽく言ってみた。

 一番目立つ上半身の顔部分まで駆け上がり接触。

 捕まえるも何も、これだけの図体だから触り放題ではある。

 大きすぎて直接掴むことはできないなら、俺の覇気で相手の全身を包んでやる。

 掴むのは本体ではなく袋になった俺の覇気そのものだ。

 これも異世界の修羅テクニックですよ!

 これなら大きさは関係ない!体の大きさだけで優位に立ったと思うなよ。

 

 押さえつけながら全力で押し出す。

 邪神の体を地面で削ってやるわ!ゴリゴリおろしてやるらぁぁーーーーー!

 

「はあああああああっ!!」

「がっ、ごが、ぬがぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 ある程度削ったかな、更にちょっと実験・・・今の俺なら、ふぬぬぬぬぬぬああああああ!!

 できたぁ!持ち上がった!覇気万能説を更新中。

 母さんたちが巨岩を持ち上げる時はこうやっていたのね。この感覚大事!忘れないようにメモ。

 覇気でコーティングしてからの~どっこいしょ。

 

「バカ・・な・・・我を持ち上げた?」

「これが本命だ!」

 

 巨大結晶生成!バスカーモード?ここに来る前からずっとやってますけど。

 髪の色と長さが変わってるでしょ、後、目がちょっと光ってるらしい(緑時々七色?)

 今だけこんな風になっちゃってるけど許して、それもこれも"あの男"のせいだ。

俺だって鏡みてビックリしたんだからね。

 

 悪魔みたいな黒い装甲?それはですね~ペルさんたち(仲魔)のせいですね!

 ゲートを通過する際の負荷から身を守ってくれる闇の衣(仮)だって、詳しくは知らぬ!

 

 もっとだもっともっと大きく!そうそうそれぐらいで。

 俺の胸部中心から円錐状のオルゴナイト(特大)が発生!高速大回転!

 ドリルですよドリル。漢のロマンですよ。これを問答無用でぶっ刺したらぁぁ!

 名付けて・・・

 

「オルゴナイト・バスター!」

 

 防御障壁から火花が、貫通して抉られた肉片が、飛び散るがきにしない!

 回れ、もっと強く早く邪神の体をその魂ごとゴリゴリ削ってみせろ!

 

 あ、メルアの真名わかっちゃったかも。

 

 砕け、俺の敵を、邪魔する奴らその全てを!砕け、砕け、砕け!

 

 (さあ!呼んで下さい!)

 

「砕けぇ、グランティィィィィドッ!!」

「!?!?!?」

 

 (ハイッ!正解です)

 

 "グランティード"それが女神メルアの真名。

 「グランなんたら」系の名前カッコいいじゃないの。ロボ名としては割とポピュラー。

 グランゾード、グランカイザー、グランシグマ、他にもいろいろ。

 天級にグランヴェールのグラさんもいるしね。

 

 体に風穴を空けたヴォルクルスは苦悶の声を上げる間もなく爆裂する。

 胸から生やしたオルゴナイト(巨大ドリル)を最後にパージしてぶつけてやった結果だ。

 

『一気にやってしまいましょう、マサキさん!』

「おう!」

 

 メルアの声をより身近に感じる。これも真名を呼んだ効能ですか。

 

『エクストラクター、出力最大』

 

 例のアレやっと言えるぜ。あー長かった。

 武器の選択?うーん・・・棍棒的な鈍器が・・・ダメ?・・・じゃあ剣以外で。

 

『「オルゴンマテリアライゼーション!!」』

 

 結晶生成!手にしたのはちょっと長めの手持ちドリル。

 

『槍です』

「いや、これ多分ドリ・・」

『ヤリです』

「ウッス、これはヤリっす」

 

 しゃぁーー!いっくぞぉーー!と、その前に・・・

 背中に余剰覇気の出口を用意してっと、こうすると体内のエネルギー効率が上昇する。

 見た目も派手になっていいしね。

 

『本来はマントみたいになるはずですが、羽?』

「イメージはウイングゼロ、天使の羽根・・・どう?」

『うーん、超劣化版光の翼(V2)でしょうか』

「ですよねー」

 

 天使の羽根はまだ無理だったんや!イメージが足らん!光の翼もカッコいいからいいの!

 ドリ・・槍を握りしめて突撃開始!

 

「おらっ!」

 

「せぇぇぇぇぃっ!!」

 

「まだまだぁ!」

 

「でやああっ!」

 

 アカン、俺ヤリ使うの初めてだった。

 よくわからないので剣の要領で振り回して相手を打ち回し、空中に跳ね上げた!

 メルアが何も言って来ないので、これでいいんだよね。もう、好きにしろってことだよな。

 

『今です!決めてください!』

 

 槍が回転した・・・やっぱりドリルだったじゃん。

 わかってます槍ですよね、ランサーですよね。

 

「テンペストォォ・・・ランサァァァァーーー!!」

 

 回り込んで、回転させた槍で貫く!

 

「くらぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 突き刺した勢いのまま地面に激突、その間も槍は元気よく回転中だ。

 ちょ、待て待てまて、勢いがおかしい!

 掘ってるヴォルクルスごと地中にトンネル掘ってる!地底旅行する気はねぇぞ!

 

 ヴォルクスの体が崩れて行く、散々痛めつけてやったから、その核(魂)にもダメージが入ったようだ。

 

「オマエは・・本当に・・ナン・・・ナノ・・ダ・・・」

「ただのアンドウマサキだよ!!」

「アンドー・・・マサ・・・キ?」

「アンドウな」

 

 最後伸ばさなくていいよ。

 

 なんか光ってないっスか。

 そっかそっか、致命傷を負ったことで大爆発を起こすんだね。俺を巻き込んでかい! 

 うおぁ!なんか噴き出したぞ!

 

『あの、逃げた方が』

「わかってる!そーれぃ!」

 

 地中からの華麗なる脱出!

 今の俺、ジャンプ力だってすご・・・少々飛び過ぎましたね。うわーいお空キレイ。

 

『力加減は今後の課題ですね』

「すみません!カッコよく決められなくてすみません!」

『謝らなくいいですよ。外野からは滅茶苦茶凄い動きにしか見えませんから』

「それっぽく取り繕うのは得意だから許して」

『はいはい、着地態勢急いで!』

 

 ・・・2・・・1・・・0・・・はい着地!

 

「どっこらっせいィィィ!」

 

 あああああああ、衝撃がジーンときたぁ。我慢我慢!

 敵にトドメを刺した後の大爆発をバックに悠然と立ち上がる俺です!決め顔☆

 フッ、ゲームなら今頃バリバリのトドメ演出カットインですな。

 ひゃーー!思ったより凄い爆発だ!んべ、髪が口に入った。

 衝撃波すんごい。光の翼が!もげそうなぐらいブリュンブリュンのバッサバサ!

 もげ・・噴出口をちょっとづつ消せばいいだけだった。ふーびっくりした。

 

「・・・もういい?終わった」

『はい、お疲れ様でした。これにて引き継ぎは完了となります』

「よし!任務完了ってな」

『歴代後継者の中でも今回が一番苦労しました』

「できが悪くて申し訳ないッス」

『でも、間違いなく歴代最強です。私よりもずっと強くなれますよ』

「急に褒めるなよ~嬉しいじゃない////いろいろありがとうな、グランティード様」

『真名はゴツいのでメルアでお願いします。そうだ、次はカティアちゃんとテニアちゃんを紹介します』

「なら俺は愛バたちを自慢しちゃおうかな」

『楽しみにしていますね。ではでは、女神通信終了しまーす』

「はいよ。またな~」

『言い忘れました!シャナ=ミア様がお会い・・した・・・い・・と・・心臓ぅぅぅおお』

「しんぞう!?何、捧げればいいの?どこに、調査兵団なの!」

 

 心臓で最後締め括るってなんだよ。怖いし不安すぎるわ!

 シャナ?灼眼のシャナは好きですよ。悠二さんが終盤で・・くぎゅぅぅぅぅ!

 

「あーかなり地形が壊しちゃったな・・・地主が現れる前に逃げるか」

 

 地面がボコボコの割れ割れでエライことになってる。

 地震でもあったのか?

 俺がやらかした分以外の破壊痕があるんだが・・・。

 

「クロスゲートは・・シュウと御三家がなんとかするか」

 

 ヴォルクルスが消滅したであろう爆心地の大穴。

 覗き込んでみてもあの巨体は確認できない、完全に消え去ったか。

 覇気とは違う霊気?みたいなものが周囲に漂っている。

 この中には邪神に囚われた生贄たちの魂も混じっているのかな、成仏しろよ。

 しばし合掌して、黙祷!

 

 俺の足元をコソコソ移動する妙な虫?発見。

 

「キャッチ!」

「あ゛なぜバレた。は、離せ!」

「お前が本体だな。この世界にお前の居場所は無いぞ・・・きっしょ!」

 

 手の平サイズのカブトムシ(雌)かフンコロガシかと思ったら。

 髑髏顔のパンデモニウムさんでした。えんがちょ!ってこういう時使う言葉であってる?

 

「なぜだ、なせだ、なぜだ、神である我がどうして・・・」

「そういうのいいから。見た目をもうちょっマイルドにしてくれる?」

「こ、これでよいか」

 

 おめでとう、パンデモニウムはカマキリに進化した。

 まあ、これならいいか。

 

「なぜこの世界に来た?お前は俺の何を知っている、さあ、全部ゲロっちまいな」

「・・・・」

「ハリガネムシって知ってる?カマキリに寄生して最終的に入水自殺させ・・」

「わかった!喋る全部喋るから待て」

 

 邪神への尋問開始・・・ほうほう、魔装機神、地底世界ラ・ギアスとな・・・

 そこには似て非なる俺や、俺の知っている奴がいるのね。

 そして、敗北を繰り返したこの邪神様は八つ当たりのために、俺の世界を狙ったと。

 小者か!そんなんだから勝てないんだよ、小っちぇなぁ!

 

「うそんwww母さんたちロボなのwwwいや、納得だわwww」

「うむ、サイバスターに乗った向こうのお前に何度やられたことか」

 

 ロボ・・パラレルワールドの母さんたちロボ・・・超見てぇ!

 

「はい!こっちでの母さんたちは、こんな感じです」スマホ画像をカマキリに見せる

「・・・ふつくしい////」

「は?今なんて」

「い、いや。フン、亜人の小娘に成り下がったか!そっちの方が全然よいと我は思うぞ///」

 

 やだ!母さんたち邪神も照れるぐらいの美人さん!息子として鼻が高いッス。

 しばし邪神と情報交換・・・ルクスの手引きではなかったか、ならいいけど。

 

「それでどうする?帰るだけの力は残っているか」

「もういい、なんか疲れてしまった。虫のいい話ですまぬが、終わらせてくれ」

「いいんだな・・・さらば、ヴォルテッカさん」

「ヴォルクルスな」

 

「「お待ちください!!」」

 

 おお?なんだなんだ?

 ヴォルクルスを苦しまぬよう消そうとした瞬間ゲートからなんか飛び出てきた!

 小さな光る・・・トンボとバッタ・・・また虫だ。カナブンじゃダメだったの?

 

「グラギオス!ラスフィトート!どうしてここに」

「知り合い?神友と書いてしんゆう?」

「すみません!この者の処遇はどうか我らに任せていただけませんか?」

「勝手な言い分だとは重々承知。ですが、こんなのでも一応・・・長い付き合いですので」

「お、お前たち」

 

 何コレ、トンボとバッタがカマキリを庇って頭下げて来るんだけど。

 俺にどうしろと?

 異世界で散々奇妙な冒険したと思ったが、まだまだ未知との遭遇がまってるんだなぁ。

 

 はっは~ん。こいつらペルさんに言われて来たんだな。あの人?変なところで気が回るな。

 危険を顧みず友達を助けに来るとか・・・ダメ!俺こういうの弱い・・泣かせるじゃないのよ。

 この世界を侵略、というか滅ぼしに来た・・許されることじゃないけど・・まだ死人はでてないし。

 

「裁きを申し渡す!」

「「「は、はいっ!」」」

「邪神はキッパリやめろ、いい神様になって迷える誰かを正しく導いてやれ」

「・・・それだけでいいのか」

「それだけ?大変だぞ、いろんなお願い事をされるし、理不尽に悪態つかれるし、助けてやっても必ず感謝される訳じゃない、自分より弱くてバカな連中を見捨てないで、見守り続ける忍耐と根気が必要だ・・・辛いな」

「見守る」

「もちろん罪を犯した奴にはやり過ぎないよう天罰を与えてもいい。どうせ神様やるなら、恨まれるより感謝された方が仕事のモチベ上がるだろ。そうだな・・頑張って神殿造ってもらったり、お祭りをやってもらえるぐらいになれ!それが今後の目標な」

「「「・・・・」」」

「あ、向こうの俺たちにもう手出しするなよ。それと・・・」

 

 抵抗すると思ったがカマキリは俺の提案をすんなり受け入れた。

 奴なりに何か思うところがあったのかね、本音では戦いばっかで疲れていたのかもしれないな。

 これからは、まだ発展前の知的生命体を見守りつつスローライフするんだとさ・・・ちょっと羨ましい。

 三柱はそれぞれ、破壊神・創造神・調和神でよくある三すくみ関係だったんだと。

 元々は大昔に滅んだ巨人族の怨念がどうたらこうたら・・・巨人ねぇ・・・。

 

 最終的に凄く感謝された。いやいや、俺は特に何も・・・虫に褒められちゃった。

 

「もう戻ってくるなよ」

「「「お世話になりました」」」

 

 刑務所から出所した元囚人か!お前ら神でしょ?腰が低くなっちゃってまあ。

 

「ペルさんによろしく、お、ゲートが起動したぞ。向こうからも呼んでくれているんだな」

「ありがとうございました。あなた様の今後にどうか幸あれ」

「噂にたがわぬお方で感服しました。どうかお達者で」

 

 トンボとバッタがゲートに入って行った。

 

「じゃあな、まあ短い付き合いだったが・・・元気で」

 

 最後はカマキリ、殴り合ったり殺した合った奴だけど・・もういい許した。

 多分こいつ以上にムカつく存在がいるからかだな!ルクスとかルクスとかルクスとか!

 

「忠告だアンドウマサキ、この世界は」

「ストップ!それは言ったらマズイやつだろ、大丈夫、俺とあいつらで何とかしてみるよ」

「そうか、大きなお世話というやつだな・・・自分の正体には気付いているか?」

「・・・それでも俺は俺だ」

「フッ、ならばどこまでも先へ進むがいい!己が使命を果たした後に何が残り、どの様な結末を迎えるか、別次元で吉報を待っておるぞフハハハハハ!」

「へいへい、お前に「ざまぁ」されないよう精々頑張るよ」

「さらばだ!アンドウマサキ、願いの申し子よ」

「さよならだ、サーヴァ・ヴォルクルス」

 

 カマキリが颯爽とゲートインした。

 これは勘だが、あいつ案外いい神になりそうな気がするぞ。

 荒々しい破壊神が、恵みをもたらす豊穣神にチェンジするなんてよくある話だしな。

 

 願いの申し子ね・・・そんな大層なもんじゃねぇですよ。

 とある奴に言わせれば俺は"代わり"にすぎないらしいからな、ちくしょーめ。

 

 今回はどんな悪人にだって罪を償い改心する余地がある!というのを学んだ事件だったな。

 

「ただしルクス、てめーはダメだ!」

 

 あーなんか思い出したら腹立ってきた。

 あいつ、俺の愛バに手を出してないだろうな。もしあいつらに何かしていたら(# ゚Д゚)

 

「どこにいようとも必ず探し出し後悔させてやる!異世界で学んだ鬼畜芸の数々お見舞いしてやんよ!」

 

 げひゃっ、げひゃははははははははwwwげぼぼぼぼぼぼwwwえっふん。

 

 失礼、聖杯の泥より汚染された感情が決壊した。主に恨み辛み嫉み!

 アヴェンジャー「マサキ・オルタ」が誕生しても知らないわよ。

 

 シュウまだかなー。ちゃんと俺の現在位置わかってるのかな、GPSは有効なはず。

 そういえばさっき人を見かけたな、ちゃんと避難してくれただろうか。

 こうしているのもアレなので、周囲を探してみよう。

 

 荷物を確認、よいしょっ・・・・はっ!殺気!

 

「せいやっ!」

「ちょ、マサ・・なんで・・ぐぇ・・」

「俺の後ろに立つな!!」

 

 油断も隙もあったもんじゃねぇ、俺の故郷2ndはいつから野盗が出るようになったんだ?

 正確無比な裏拳を顔面にヒットさせてやったぞ!

 

 体に染みついた感覚は帰還してもそのままだ。

 

 フロンティアではな、人の背後に忍び寄った者は問答無用で殴り飛ばしていいんだよ!

 いや、ホントに危ないのよ。ヒャッハー!な奴らがそこら辺中にいるんだもん。

 俺も駄猫とか毒舌ロボとか魔改造おばさんとか、その他諸々に背後から襲われたんだぞ。

 

 あ、でも乳牛姫の可愛いいたずらで「だーれだ」された時は甘んじて受け入れた。

 だってさ、背中にあててんのよが凄いんだぜ!

 本当にさぁ、キザカウボーイが素直に羨ましく妬ましくて、お幸せにって祝福した!

 妖精姫?ああ、そんなのいたな・・・

 俺のことド変態のド畜生って言ったから、おぱーいをド派手にド揉みしてやったぜ!

 初心なアレきゅんが真っ赤になって仲裁してくれたね。

 あらら、この二人、そういうご関係?かなりの年上ですがいいの?(100歳差)

 ふ~ん、俺は年下好きなんでわかりませぬなぁ。

 

 え?人の女のおぱーいを触るな?事故です不可抗力ですよ!

 は?もし、愛バのおぱーいを別の男が触ったら?・・・両手を切り落とすけど何か?

 

 地面に伸びている奴を確認する・・・こいつ、ウマ娘か?

 どこかで見た気がする・・・くそ・・これじゃわからん!

 

「マサキ!」

「ああ、よかった」

「本物、本物のマサキ・・よね」

 

 ウマ娘らしき人物が駆け寄ってくる。さっき見かけた人たちだな・・・俺の名前を呼んだ?

 

「・・・・」

「ねえ、何でゴルシちゃんを攻撃したの?背後から忍び寄ったのは悪かったけどさ」

「ゴルシ・・・こいつゴルシだったのか!」

「だったのかって・・・」

「ああ、えっと・・ですね」

「マサキ」

 

 凛とした力強い声を発したウマ娘(仮)がおれの顎をクイッと持ち上げて顔を覗き込む。

 ち、近い近い近い!この人、相当できるぞ!一瞬で間合いに入いられた。

 

「その目、どうしたの?」

「あの・・・」

「目だけじゃないわね、五感全ての認識に錯誤が起こる何かをされているわ、そうでしょう」

「それは、どういう」

「まさか・・・」

 

 俺の顎から手を離した人は、頭もいいみたいですね。

 

「マサキ・・・あなたには私たちがどう見えているの?」

 

 俺の知り合いらしいな・・・誤魔化すのは不可能か。

 

「まずは謝らせてください。ごめんなさい、今の俺にはあなたたち、ウマ娘の姿を正しく認識できないのです」

 

 そう、そういう風に処置してもらったのだ、生きるために。

 

「嘘・・・」

「そんな、そんなことって」

「愛バに会えない禁断症状で生死の境を彷徨った、俺を見かねた人物が術(呪い)を施してくれた。症状を和らげる代わりに・・・ウマ娘の姿も声も匂いも全く別のものにしか感じられない」

「・・・はぁ、なんてことを」

「だから、あなたたちが誰なのか、わからないのです。本当に申し訳ない」

 

 精一杯頭を下げる。今の俺にはこんなことしかできない。

 三人は愕然とした表情を浮かべて後に悲しそうな顔をする・・・うっ、すみません。

 

「私だよ!ココだよ!あなたのファインモーションだよ!」

「ココ!?お前ココなのか!ああ、そういう・・・ココ、心配かけたな、今帰ったぞ」

「ああ、そういうって何?と、とにかく、おかえりなさい」

「あ、うん、会えてうれしいぞ、ははは」

「なんか変・・・」

 

 うーん、本来なら感動の再会なのにギクシャクしてしまうな・・・だって、ねぇ。

 

「マサキさん、私、アルダンです。あなたに助けていただいたメジロアルダンです」

「アルダン!ああ、元気になったんだな・・・ホント元気に、うん、見違えた」

「ちょっと引いてませんか?・・おかえりなさい、この日を待ちわびていました」

「うん。ただいま・・それから契約のことだが、すまん!後でもいいか・・今は気持ちの整理が」

「え、ええ。その方がいいでしょう。後ほどよろしくお願いします」

「ホントごめんな・・・」

 

 がぁぁぁぁ!悲しませてるーー!わかってるけど、あーーー!俺ってば罪作りぃぃ!

 ペルさん!アンタなんてことを・・いや、俺のためにしてくれたけど・・やっぱつれぇわ。

 

「それで、あなたは・・・その」

「その前にいい」

「はいどうぞ」

「私の姿がどう見えているか答えてくれる?」

「・・・言っていいのなら」

「構わないわ」

 

 お許しが出たので言っちゃうぞ。もう、ずっとツッコミたかったんだよ!

 

「侍です」

「サムライ?どんな」

「ガタイのいい男性の侍です、自分の武器に「武神装甲ダイゼンガー」とか名付けちゃうぐらい豪胆な漢。声もすごく勇ましくて素敵っス。なぜか日本人ではないっぽいですが・・・」

「そう、それで、私は誰だと思う?」

「これ当てても、外しても怒られるパターンや!・・・お、お姉さまですか?」

「正解よ。へぇーマサキは私を痛々しいサムライダンディだと思っているのね、へぇー」

「思ってない!痛々しいとか、カッコイイおに、お姉さまでございますですよ」

「まあ、いいわ。よく帰ってきたわね・・ホント、あなたは・・世話が焼ける・・」

「うん。ただいま姉さん」

 

 そっと抱きしめてくれる姉さん。くっ!いい場面なのにいい場面のはずなのにぃ!

 俺には筋肉質のサムライダンディにハグされているようにしか、感じられぬぅ!

 ウホッ!いい漢!斬艦刀があればとりあえずぶった斬って勝利する漢!

 我に断てぬもの無しぃぃぃぃ!

 

「私は!私はどう見えているの?」

「ココは、ラーメンの食い過ぎで肥満体系かつ脂ぎった中年のおっさんだな」

「いぃぃやぁぁぁぁぁ!何よそれーーー!そんな認識なのかよ!ひど過ぎるよ」

「「あぶらwww中年wwwオヤジwwwアハハハハハハwww」」

「そこの二人ぃ!笑いすぎだろう!アルはアルはどう見えているの?」

「わ、私はいいですよ。というか発表しないで!大体わかってますから」

「ごめんな・・・筋骨隆々のゴリラだ」

「「予想通りwwwwwざまぁぁぁwwwww」」

「不思議なことに、頭頂部に電球が刺さっててそれがピカピカしてる変なゴリラだ」

「「電気のwww要素wwwそこwww電球ゴリwwwアハハハハハハハハwwww」」

「笑いすぎです!電球って!白熱電球ですか電球型蛍光灯ですかそれともLED電球ですかぁ!」

「「知らねーよwwwどうでもいいだろwww」」

 

 豆電球だなんて言えないwww

 うーん、メスゴリラが美少女に進化するなろう系があったような・・・。

 見た目もなんだか声と匂いもなぁ・・・ココからはちょっと加齢臭と日頃の不摂生臭が。

 アルダンからは獣臭が、姉さんはダンディなプレミアムなムスクの香りです。

 

「そこで気絶してる奴は?」

「ゴルシだろ、全体的にオレンジ色の丸くてトゲのついた・・・首領パッチだな」

「ドン?パッチ?」

「ボボボーボ・ボーボボを読みなさい」

「ハジケリストだからね。妥当なところでしょ」

 

 はぁ、みんなには悪いことをしたな。

 本当は抱き合って再会の喜びを・・なんだけど、もう、そんな空気じゃない!

 姉さんとだけはちゃんとできたので良しとしよう。

 

 (マサキ!そのふざけた呪い解いたら、改めて再会のハグをしてよね!絶対だよ)

 (すまんココ。約束するよ)

 (マサキさん!私もその時にお願いしますね)

 (うんうん、もちろんさぁ)

 

 よかった、二人とも許してくれた。見限られたらペルさんを逆恨みするところだったぜ。

 ナチュラルに念話を送ってくる二人がちょっと怖い、これも操者と愛バの絆なの?

 

「その認識狂い、解呪する方法を知っているの?」

「ああ・・・方法は一つ、あいつらに会うことだ」

「クロちゃん、シロちゃん、そういうことね」

「少し妬けてしまいますが、三人の絆こそが呪いを解除する鍵・・・素敵です」

「そういうことだ、だから、一刻も早くあいつらに会いたいんだが」

 

 このままじゃ、ウマ娘みんなも俺も困る。

 だからというわけじゃないが、俺はあいつらに会うために・・・ここまで来たんだ。

 

「そういうわけにはいきませんね」

 

 来たか、久しぶりだな。

 だが、会って早々なぜ俺の邪魔をしようとする?

 

「どうしてだよシュウ?」

「あなたにはまだやるべきことが残っています」

「うん。あいつらに」

「マサキ、今後の事を考えていますか?」

「えー、あいつらに会って、愛バみんなとキャッハウフフ三昧して、ルクスを倒す!」

「そうですね。その間、マサキの肩書、職業は何でしょう」

「操者?」

「それ一本で食べていける者はごく一部です。大抵は操者と何かしらの仕事を兼業しているものです」

「俺に就活をやれというのか?」

「はい」

 

 こ、ここまで来て現実の壁が立ち塞がっただと!

 確かに今の俺は・・・世間一般でいうところのニートだ・・・アレ、これヤバくない。

 

「ニート操者のままでよいのですか?」

「プ、プロの操者になればいいのでは」

「あなたの覇気をみて仕事を回すギルドがいくつあるでしょうね?まともな人物なら、あなたに関わることは揉め事を増やす原因だと気づくはずですが」

「そ、そんな!おれはプロになれないのか(´・ω・`)」

「だったらうちに!ファイン家に来ればいいよ!役員待遇、ううん、頭首の全権を譲ってもいい!」

「ココ、いや、でもそんな」

「あまり操者を甘やかさないように、愛バのコネを使って就職とか恥ずかしくないのですか?あの操者はコネ入社のクソ野郎だと未来永劫陰口を言われるのですよ」

「それはメンタルやられるな」

「今のあなたは奇跡的な状態でバランスを保っています。御三家の令嬢たちを愛バにしながら、どの家ともそれなりの関係を築けている。この宙ぶらりん状態が一番面倒事がなく動きやすいのです」

 

 シュウの言うことも一理ある。

 俺がどこかの家に深入りすれば、他の家が気を悪くするだろう。う、自惚れじゃなければだけど。

 もうどっぷりサトノとファインにはお世話になってるが・・・就職ぐらい自力でやらないと。

 

「ココ、凄く魅力的な提案だがやめておくよ。お前に甘えすぎたら自堕落なダメ人間になってしまいそうだ」

「むぅ、ヒモでも全然いいのに・・・むしろ養ってあげたいのに」

「わ、私もその気持ちわかります」

「嬉しいけどやめて!二人の優しさが俺をクズに変えちゃう!」

 

 うー、だったらどうすればいいのだろう。

 そもそも、俺は何になりたかったのか?操者に、あいつらに出会う前の俺は何を目指して・・・

 

「トレーナー、そう、子供のころ俺はトレーナーになりたかった」

「まあ、素敵な夢ですね」

「そして"うまぴょい"したかった」

「それ言わなくていいよ!言わない方がいいよ!」

「確かに動機は不純極まるものでした、だがそれだけでしたか?あなたは自分が愛するウマ娘たちを応援したかった。彼女たちの行く末を大事にしたいを思った。その手助けをすることが己の本懐だったはずです」

 

 そうだった、思い出した。

 俺は母さんみたいな、強くてカッコよくて可愛いウマ娘たちが大好きで、その子たちの一生懸命を支えてあげたくて、ほんの少しでいいんだ・・・俺の人生を救ってくれた、変えてくれた彼女たちに恩返しがしたかったんだ。

 

 うまぴょい・・・したいです!

 でも、それだけじゃなかった、ああ、この気持ち最近すっかり忘れていたなぁ。

 

「わかったぜシュウ!トレーナー王に俺はなる!」

「海賊王みたいに言わないでいいです。王ってなんですか」

「そこは勢いだ!よーし、名トレーナーとして頑張るぞー、担当バになってくれた子を必ずトゥインクルシリーズ優勝まで支えてみせる!」

「「担当バだとぉ!?」」

「ひぃ!ふ、二人の殺気が恐ろしいぞ!」

 

 ココとアルの殺気がヤバイ・・・おっさんとゴリラからの殺気でも怖い。

 

「ふぅ、未来に夢を馳せているところ申し訳ないのですが、あなたはトレーナーにはなれません」

「は?今まで散々煽っておいてそんなこというの、泣くぞ」

「あなたがトレーナーなったところで担当バが潰れるのがオチです。レース業界ではあなたの力を生かしきれません、というか持て余してしまいます」

「だったらどうしろと?」

「あなたが目指すべきはトレーナーではなく、騎神養成校の指導教官です。教官を目指しなさいマサキ!」

「俺が教官」

「騎神たちの教官、これ以上ないほどベストな選択だと思うのですがどうでしょう」

 

 教官、ヤンロンみたいな教官に・・・戦う彼女たちの力になれる。俺でも役に立てる!

 うぉぉぉ!なんか急に視界が開けた感じがするぞ。教官・・・いい響きだ!

 

「ならば、うちの採用試験を受けるべきですね。さっそくやよいに連絡しておきます」

「ちょっ!姉さん待って!トレセン学園みたいな名門はさすがに敷居が高いよ!」

「何を言ってるの?やよいだって歓迎してくれるわよ。それにあなたの実力は折り紙付き、他のボンクラ学校にとられるぐらいなら、うちがもらうわ」

「いや、でも、結局コネじゃ」

「勘違いしないで、歓迎するとは言ったけど、試験には一切手心を加えないわ。むしろ、あなた用に難易度を上げに上げた特別試験を用意してあげる。他の教官たちがぐうの音も出せないほどのね」

「身内でも容赦ない姉に戦慄を覚える今日この頃」

 

 トレセン学園か、そりゃあ願ったり叶ったりの職場だ。

 ヤンロンや姉さんたちと一緒に働ける、それに、あそこには知ってる子が集まっている気がする。

 

「いいよ!それすごくいいよ!マサキが教官、学園でも一緒にいられるなんて夢みたい」

「はい!学園生活がより充実してしまいます。ああ、今から楽しみで仕方ありません!」

「その様子だと、二人は学園生なのか」

「もちろん!ファイン家頭首と二足のわらじだよ」

「私もサトノ家従者部隊で仕事をこなしつつ、通わせていただいてます」

 

 凄いなこの二人、ただでさえ仕事が忙しいのに名門の学園に通ってるなんて。

 きっと、周りの部下や大人たちが支えてくれているんだな。

 そうだよな、まだ子供だもんなぁ・・・学園で青春するのも若者の権利だよな。

 ん?アルダンはサトノ家の従者部隊に入ったの!お、思い切ったことをするな、後で詳しく。

 

「決まりましたね。それでは」

「ああ、クロとシロに会って、教官を」

「違うでしょ。教官に見事合格してから二人に会うのですよ」

「バカを言うな。そんなに待てない、これ以上おあずけ食らうとマジで死ぬぞ」

「あの二人に会った後で、勉強に身が入るつもりですか?ずーっと愛バにくっついて試験勉強などせず、ニート一直線になるのが目に見えてるのですが」

「うっ!」

「そうだね。ニートのままで再会してもねぇ」

「ううっ!」

「いい大人なんだから、ちゃんとした仕事をもってほしいわね」

「うううっ!」

 

 グサグサ刺さる言葉の数々・・・ち、ちくしょう、その通りだよ。

 クロ、シロ、俺は・・・俺は・・・

 

「皆さん言い過ぎです!マサキさんは社会不適合者のゴミクズニートでも素敵な男性なんです!クロさんとシロさんに汚物を見るような目を向けられて「キモっ!」「うわぁ、契約解除して」と言われても・・・私はマサキさんをずっと養っていきます。ええ、私の稼ぎをあてにして、昼間から酒浸りのパチンカス&多重債務者に堕ちようとも添い遂げてみせますとも!!!」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん、決めた。

 

「シュウ」

「なんですか?」

「俺、トレセン学園の教官になる」

「ほう、覚悟が決まりましたか」

「それまでは・・・二人に会わない、会えない、クズにはなりたくない!!」

「フッ、そういうと思ってましたよ。そうと決まれば早く帰りましょう、道すがら合格までの最速プランを構築してあげましょう」

「ああ、頼りにさせてもらう」

「私もコネ呼ばわりされない程度には協力するわ。学園でのマナーや注意点ぐらいなら教えても問題ないでしょう」

「姉さん!愛してます!」

 

 よし、やぁぁぁってやるぜ!

 待ってろよ、クロ、シロ、ニートを卒業して必ずお前たちを迎えにいくからな!

 

「マサキさん、急にやる気全開になられて・・・何があったのでしょう」

「アルが語った未来に絶望したんじゃないの?」

「はて?」

「このゴリラ、無自覚かよ!なんか怖い」

 

 こうして次なる俺の試練は幕を開けたのだった。

 


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