俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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感想、誤字脱字報告ありがとうございます。




再会の時

 

 爽やかな風が心地よい、すがすがしい初夏の季節。

 日本ウマ娘トレーニングセンター学園では、今日も多くのウマ娘たちが切磋琢磨しつつ青春を謳歌していた。

 そんな中、半年ほど前に新築された真新しい寄宿舎の一室で、二人のウマ娘が雑誌記者の取材を受けている最中だった。

 

「新進気鋭と名高いお二人、やはり、やはり・・・素晴らしぃですぅぅぅ!」

「そんなに持ち上げないでください。照れてしまいます」

「私たちはまだ若輩の身、先輩方の顔を潰さないよう、今後も精進あるのみだよ」

「ご謙遜を!サトノ家の令嬢である、お二人の評判は学園内外でも聞き及んでおります」

 

 雑誌記者は鼻息荒く興奮しているようだ。

 時折「素晴らしいです!」と叫びながら昇天する芸を披露する姿に、ウマ娘たちが少し引く。

 美人なのにどこか残念臭がする女性記者は、瞳をキラキラ輝かせながら取材を続行する。

 

 彼女が興奮するのも無理はない。

 今日の取材相手は、ようやく表舞台に姿を現したあの「サトノ家」ご令嬢の二人だからだ。

 

 メディア露出の激しいメジロ家とは違い、サトノ家とファイン家の情報は驚くほど出回らない。

 運よく手に入れた情報ですら、どれも意味不明かつ荒唐無稽すぎる内容で、まともな記事にならない。

 苦労したところでフェイクニュースや質の悪いジョーク扱いされる始末。

 表のメジロに裏のサトノとファイン、マスコミ業界では「裏の家には深入りするな」という格言があるほどだ。

 しかし、タブーや秘密あるからこそ知りたい暴きたい!というのが世の常。

 

 トレセン学園が公式に許可をしている、学生騎神へ取材する権限はこういうときにこそ生きてくる。

 普段は取材NGの騎神でも学園を通してなら渋々OKしてくれる可能性はある。

 今回それは有効だったようで、了承を得られたときは小躍りしたものだ。

 今日の取材を足掛かりにして秘密のヴェールに隠された「裏の家」の情報を引き出せればいいと、記者は張り切っていた。

 

 もっとも少々前のめりな彼女の考えを、取材対象の二人はとっくに看破していたわけだが。

 

「続けます。尊敬する先輩を一人挙げるとしたら誰でしょう?」

「クストウェル」

「べルゼルート」

「えー、真名ですよね・・・そのような方の記録は・・すみません、学園に在籍されている方限定で」

「では、メジロマックイーン先輩で」

「じゃあ、トウカイテイオーさんで」

「な、なんか投げやりですね。「どうでもいいけどこう言っておくか」感がひしひし伝わってきます」

 

 穏やかな笑顔を崩さず受け答えする二人。

 質問によっては目が笑っていなかったり、適当すぎる回答があるのは気のせいだろう。

 

「デバイスの登場により、騎神間での契約が身近なものとなりました「操者を必要としない時代が来た」という意見が増加傾向にあるようですが、お二人の考えは?」

「どの様な手段で強くなるかは個人の自由だと思います。ただ、個人的には操者の力を軽んじる風潮には苦言を呈したいと考えております」

「私も、デバイスよりも操者の仲介能力が優れていると信じてる。人の可能性が機械部品に負けているとはどうしても思えないから」

「ふむふむ、二人とも操者肯定派・・・というよりも、既にご契約済みだと伺ったのですが」

「すみません、私たちの操者についてはトップシークレットなので、ご遠慮ください」

「なるほど秘密の操者ですね、ミステリアス!それでは、操者がいると宣言されたのにもかかわらず、契約の申し込みが後を絶たない現状をどう思います?」

「ありがたいことですが、私の一存で現操者との契約を反故にはできません」

「学園には他にもいい子がたくさんいるよ。私たちに拘らなくてもいいのにって思う」

「例えば、例えばの話ですが、もしも、今の操者より素敵な人と巡り会えた場合はどう・・・」

 

「「それはない!!」」

 

 一瞬だが明らかに怒気を孕んだ声を上げた二人に、記者は自分の迂闊さ後悔した。

 取材をするうえで相手との距離感は大切だ、間違えると手痛いしっぺ返しを食らう。

 たった今、自分は距離感を誤ったのだ。

 

「し、失礼しました」

「いえ、こちらこそ大きな声を出してしまい、申し訳ないです」

「まだ時間あるよね。次の質問をどうぞ」

「はい、でしたら・・・・」

 

 その後は何事もなくスムーズに取材は進み。

 和やかな談笑を交えた後で、記者はお礼を述べて退出していった。

 

 扉が閉まり、記者の足音が遠ざかるのを確認してからホッと一息いれる。

 

「ふー、やっと終わった」

「お疲れ様です。あなたにしてはよくやりました」

「面倒な部分任せっきりでごめんね~。これでも頑張ったから褒めてよ」

「はいはい、偉い偉い」

 

 編入試験を無事クリアした私とクロはトレセン学園での日々を過ごしています。

 実家で学んだお嬢様ムーブを発揮して何とか頑張ってます。

 

「記者さん変な人だったね。発作持ちだったし」

「す、素晴らしいぃですぅぅぅ!」

「モノマネwww上手いwww」

「騎神ジャーナルでしたっけ、さっきのインタビューが載るかと思うと憂鬱ですよ」

「「期待の新人特集」か・・・テイオーさんたちが余計な事言うから」

「テイオーさんにマックイーンさん直々のご推薦だったらしいですよ。後輩冥利に尽きますね」

「本音は?」

「いらん仕事増やすなよ面倒くせぇ!取材なら先輩たちだけで十分でしょうに」

 

 可愛がって貰えるのはいいのですが、面倒事は御免被る。

 学園に編入して以来、品行方正を心掛けていましたから、先輩ウケはいいみたいです。

 優等生で通ってる私たち、今では誰もが認める中の上ぐらいの騎神ですよ。

 いいですよね中の上!そこそこ認められた騎神で十分なのです。

 そこそこの騎神はオルゴナイトなんて出しません、尻尾が伸びたり増えたり、ロボット食ったりもしません。

 

 コンコンッ!ノック音が聞こえた。外交モードON

 

「失礼します」

「お邪魔します」

「まだ入室の許可はしていませんが」

「何かご用?桐生院さん、ミーク先輩」

「ごめん・・・またいつもの・・・」

「今日こそは良い返事を聞かせてもらいますよ!」

 

 毎度毎度暑苦しい女だなぁ、こちらとの温度差を感じてほしい。

 

「その件は何度もお断りしているはずですが」

「あなたたちが「うん」と言うまで何度でも来ると言ったはずです」

「しつこい・・・嫌われる」

「ミークは黙ってて!」

「なぜ中の上程度の私たちに拘るのでしょうか?」

「名門、桐生院家の操者様なら愛バになりたいと思う騎神には不自由してないはずだけど」

 

 この女の名前は、桐生院葵(キリュウインアオイ)

 数多くの優秀な操者を世に送り出した名門、桐生院家の跡取りであり。

 歴代最高傑作と期待されてる操者で学園の教官も務める若き逸材だ。

 

 その愛バの名は、ハッピーミーク

 どの様な環境下でも優秀な戦果を上げるオールラウンダーな騎神。

 桐生院の愛バとなったことでメキメキ実力を伸ばしている学園でも上位ランカーだ。

 無口で感情表現に乏しいが、のんびりした雰囲気に癒されると生徒たちの評判はいい。

 

「勿体ないからですよ!」

「「もったいない?」」

「あなたたちの力はまだまだ未熟。ですが、それは己の才に気付いていないだけです」

 

 言ってくれるなぁ。ここでムカついてはいけない。

 

「私の愛バとなり、適正な指導を受ければもっと上に行けます!私は、あなたたちの才能がこのまま腐っていくのを見ていられないんです」

「ご心配ありがとうございます。ですがお断りします」

「ごめんなさい、もう操者は間に合っているんだよ。これ毎回言ってるからね」

「ならば!その操者に会わせてください、私が直接交渉して契約を打ち切ってもらいます」

 

 あ?なんだとコラ?

 会えるもんなら今すぐにでも会いたいっつーの!

 ダメだ、ここは耐えないと。

 

「彼は今、長期出張中の身でありまして・・・」

「へぇー大事な愛バを放って出張ですか、何を考えているのでしょうね」

「・・・忙しい人だから仕方ないよ」

「言わせてもらいますけど、あなたたちの操者は碌な人間じゃありません!大した実力もない癖にいたずらに契約した上に傍にはいない!」

「アオイ・・・言い過ぎ・・」

「何故だがわかりますか?その人間はあなたたちを騎神ではなく都合のいいペットぐらいにしか思っていないからです。二人の容姿、そして御三家令嬢というステータスが魅力的だったから契約の真似事をしただけです」

「アオイ」

「目を覚ましてください!騙されているんですよあなたたちは!」

「「・・・・」」

「本格化を迎える前に契約した話が本当なら、ただのロリコンくそ野郎じゃないですか!そんな犯罪者はさっさと捕まるべきです。許せないんですよ!己の欲望を満たすためだけにウマ娘を利用するような男は、言ってくだされば私がその不届きものを断罪し・・・」

「シャラップ」

「おぼっ!・・・ミ、ミーク・・・なん・・で」ガクッ

 

 ミークが自らの操者に腹パンをかまし、続く言葉を断ち切った。

 この人は噂に通りの優秀な騎神だ、それに操者思いでもある。

 

「ごめん・・・アオイ、あなたたち気に入って、本気で心配してる。つい言い過ぎちゃう、許してあげて」

 

 操者を抱えたままペコリと頭を下げるミーク。

 

「気にしていません。いつもの事ですし」

「こっちこそ助かったよ。ありがとう先輩」

「そう言ってもらえると・・・助かる」

 

 危ない危ない、だからこの女と会話するのは嫌なんですよ。

 もう少しで、手ならぬ尻尾が出ちゃう所でした。

 ホントにギリギリでした、クロもよく耐えた!後でお菓子食べつ愚痴大会ですね。

 

「聞いていい?」

「何なりとどうぞ」

「どんな人間が好きか教えてほしい」

「ほう、恋バナですか」

「好きな人、そりゃあもちろん・・ねぇ」

 

 それ聞いちゃいますか!いいでしょうたっぷり教えて差し上げます。

 存分に語ってもよろしいですかな?もう我慢できない語るね!

 

「キタちゃん。お茶の用意を、ミーク先輩が私たちと語り合いたいそうです」

「了解だよダイヤちゃん。蕃爽麗茶でいいかな」

「あの・・手短でいいから・・・それと苦いの嫌」

「ささ、座って下さい。そちらの生ものはソファーの隅っこにでも置いてください」

「生もの?・・・アオイ、なまものwww」

 

 やぶ蛇だったかなと思ったのは後の祭り。

 嬉しそうな二人の惚気話たっぷり聞かされてしまうミークであった。

 「どんな人が好きか」を聞いたのであって、現在進行形で「好きな人がどういう人か」を聞いたわけではないのだが・・・まあ、いいか。

 

 ♦

 

 話を終えた後、アオイを抱えたミークは学園内を移動していた。

 

「はっ!ここは・・・」

「起きた?」

「ミーク・・・ミーク!あなた私に腹パンしましたね。どうして、いつもいい所で邪魔を」

「アオイのためだよ」

「愛バに気絶させられるのがですか?意味が分かりませんよ!」

「今日は特にヤバかった」

「ヤバイのはあなたですよ!」

「知らないとは言わせない、愛バの前で操者を侮辱するのは絶対NG」

「ですけど、あの二人の操者は」

「私が腹パンしなかったら・・・アオイの胴と首は今頃繋がっていないよ」

「じょ、冗談でしょ」

「私、下手な冗談嫌い」

「う・・確かに今日は言い過ぎました」

「反省して、次も助けられるとは限らない」

「むー、ですが私は諦めません!あの二人はきっと大化けする、正しい操者の下で立派な騎神になってもらわないと!そのためなら多少嫌われても問題ありません」

「その情熱、別の所で活かして」

 

 愛バの忠告を聞いても諦める気のないアオイ。

 少々盲目的だが彼女は彼女なりにウマ娘のことを大事に思っていた。

 二人の才能を一目で看破した実力はハッタリではなく、幼少期からの厳しい修練を積んだ優秀な操者であり、教官として多くの者に慕われている人格者である。

 そんな彼女だからこそミークも契約したのだ。

 

 もっとも、本当の実力は見抜けてはいないようだが。

 

「それで、二人が理想とするタイプついて何か聞き出せましたか?」

「バッチリ・・・嬉々として語ってくれた」

 

 二人の現操者は真っ当な人間ではないと判断する。

 あんないい子たちを、ほったらかしにしている時点でどうかしてると思う。

 私は一人の教官として彼女たち正しく導く義務がある。

 別に私でなくてもいいのだ、今よりも好条件かつ後ろ盾のしっかりした操者と契約してほしい。

 桐生院家に在籍する者の中から最高の人材を選んで見せる。

 そのためにミークに情報を聞き出してもらった。

 

 青春真っ盛りの子たちを夢中にさせるもの、即ち恋ですよ恋!

 今のろくでなし操者を忘れるぐらい素晴らしい人間と恋に落ちて、新たに契約してもらえばいいのだ。

 私ってば天才ですね!

 え、女性が好きだった場合ですか?今のご時世、同性愛なんてよくある話ですから問題ありません。

 どうしてもというなら私を好きになってもらっても全然かまいませんよ/////

 ミークとも話し合ってまずはお友達からなーんて!きゃーーー私ってば罪な女/////

 

「アオイ・・・クネクネして気持ち悪い」

「焼きもちですかミーク?心配しなくてもあなたのことは大事に思ってますよ」

「心配なのはアオイの頭・・・脳外科か精神科どっちか行っとく?」

 

 もうこの子ったら照れちゃって。

 

「メモをとる準備はバッチリです、さあミーク教えてください」

「背が高い年上の男、髪の毛と目が綺麗、引き締まった体、笑顔が眩しい」

 

 ほほう、やっぱり女の子ですね~王子様に憧れるなんて可愛いところがあるじゃないですか。

 桐生院家の操者はイケメン揃いで有名ですからより取り見取りです。

 

「礼儀正しくて優しくてユーモアがあって、可愛いところもいっぱいある」

 

 ふむふむ、礼儀作法や人格も大事ですよね。

 フフフ、心当たりありまくりですよ~内面も素敵な男性をピックアップしてっと。

 

「身内がヤバイ、信じられないぐらいヤバイ、少々マザコン気味」

 

 しっかりした家の出身者なら身内に権力者がいても不思議じゃないです。

 マ、マザコンかぁ・・・まあ、探せばいるんじゃないでしょうか。

 大丈夫、まだクリアできる範囲の条件です。

 

「漏れた覇気だけで人を殺せる。マジ半端ない」

 

 物騒な例え話ですね。

 覇気はかなりのレベルでないと満足しないということですね、うちのエリート操者なら問題ありません。

 私の覇気もかなりのものだと自負してますが、二人の反応はイマイチなんですよね。

 

「泣き虫で、とにかく土下座がキレイ、全裸に抵抗が無い、暴走すると何をするか検討もつかない」

 

 く、雲行きが怪しくなってきました。

 いや、まだ大丈夫!桐生院家の人材はちょっとした異常者もカバーして・・いる・・かなぁ。

 

「小さい子が大好き、自他ともに認めるロリコン(ガチ)」

「犯罪者予備軍だろうがぁ!どうしてそんな最低男が好みのタイプなんですか!」

「世界一カッコイイロリコンでも、好きなんだって」

「世界一位のロリコンがカッコイイわけないでしょう!」

「まあまあ、後はえーと・・・いい匂いがするだって」

 

 世界一のロリコンて対抗できる変態操者・・・いや、いないだろ。いたらダメだろ。

 桐生院家にそんな奴がいたら、問答無用で破門してるわ!

 

 二人の理想が変態ってどういうことなの。

 サトノ家の闇を感じて余計に頭を悩ますアオイであった。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 ミークから聞いた情報を一応メモした後。

 今日の学内で行われる催しについて考えながら歩く。

 お昼前に全校集会が予定されているでした、その後は学生会館に寄ってそれから、えーと・・・

 

「すみません、少々お尋ねしたいことがあるのですが、お時間よろしいですか?」

 

 中庭を横切ろうとした所で見慣れない男性に声をかけられた。

 その人は仕立ての良いスーツを着こなした優しそうな顔立ちの青年だった。

 歳は私と同じぐらいか。

 

「はい、私でよければ」

「ああ、よかったぁ。生来の方向音痴が災いして道に迷ってしまったんです。助けてくれませんか」

「学園は広いですからね。いいですよ、どこへ行く予定なのか伺っても?」

「ありがとうございます。場所というより人を探しているのですが」

 

 私の了承を得ると安心したような笑顔を浮かべる青年。人の良さが顔に出ている。

 不審者ではないと思うが一応、覇気をチェックしておこう。

 うん、敵意の類いはない、肝心の覇気は・・おお、中々のものだ。ヤンロン教官の半分はある。

 変わった覇気だ・・傍にいると安心するような、それでいて荒々しい何かを秘めているような。

 記者?それとも他校やギルドの関係者・・・仕事の依頼もしくはスカウトかな?

 

「え、その二人ですか・・・失礼ですが行っても無駄だと思います。彼女たちは私の熱烈な勧誘だって無下にするんですよ、まったくもう!」

「ははは、それは大変ですね。でも、行ってみます。行かなくてはならないんです」

 

 やっぱりスカウトだったか。

 うーん、私を拒絶した二人が彼の覇気で満足できるとは思えない。

 いい人そうだから、二人が穏便に断ってくれることを祈りましょうか。

 トラウマになったらかわいそうだし。

 

「そこまでの決意があるなら止めません。ですが、彼女たちの操者になるのは私か私が選んだ相手ですから!あの子たちには幸せになる権利があるんです」

「幸せ・・あなたはいい教官ですね。だけど、私もこれだけは譲れないので!」

「なるほど、いい眼をしている。彼女たちはそこの奥を行った建物の中にいます。どうかご武運を」

「ありがとうございます。では、失礼します」

 

 深々と頭を下げて案内された方向へ駆け出す青年。

 アオイとミークはその後ろ姿を見送る。

 いい結果になるとは思えない。

 だけど「頑張って」と素直に応援したくなるような人間だった。

 

「初々しいですね。自分がこの学園に来た当初を思い出します。好青年というのでしょうか」

「・・・・ほー」

「どうしたんですミーク?彼が心配ですか、・・大丈夫ですよ、あの程度の覇気ならば騎神は攻撃対象にすらしません。二人も学園生ですからその辺はキッチリ線引きしているはずです」

 

 ミークは思う、不思議な人だったと。

 

 背高い、体ちゃんと鍛えてる人の動き、髪も目もキレイだった。

 礼儀正しくて、笑顔が素敵だった。年上だけど、ちょっとカワイイかも。

 覇気はもっと強くないと・・・いや、あれは抑えているだけだったのか。

 今まで感じたことがない異質な、でも凄く興味を惹かれる覇気。

 

 ああ、それと視覚情報よりも先に飛び込んで来たものがあった。

 覇気の次にウマ娘が重要視するもの、即ちフェロモン。

 

「いい匂い・・・だった」

「匂い?そうですか、私にはわかりませんでしたけど」

 

 人間にはわかんないだろうな~。あれ?・・・この特徴・・・まさか

 

 ♦

 

「あの女ぁ!好き放題言いやがって!」

「どうどう、暴れんなよ!寄宿舎壊したら事務員の鉄拳制裁がまってますよ」

「そ、それは困る。なんかあの人怖いよ、私たちを見る目に殺気がこもってる」

「確かに、アル姉とココも「奴には気を付けろ」と警告してくれましたし」

 

 さすがトレセン学園。ここの教職員はどいつもこいつも化物です。

 特に例の事務員はアカン!

 あの優しいアル姉が「やられる前にやれ!」と言うレベル。

 

 それより今はあのお節介女ですよ。

 桐生院め!会う度にこちらの神経を逆撫でする女だ。

 ヒトミミ風情にはマサキさんの良さがわからんのですよ!

 あーもうやってらんねー。こういうときはアル姉とココに愚痴って・・・

 メッセージアプリ確認。

 

 「元気?」「今日はニンニクマシマシやめた方がいいよ」「既読スルーやめろ」

 「身だしなみ注意!」「ブラッシングは完璧ですか?」「綺麗にしてないと後悔しますよ」

 

 面倒なので返信は後でいいだろう。

 今日はやけにしつこいな。心配しなくても、取材前には身なりを整えましたよ。

 二人ともなんだかんだで世話焼きなんですから・・・た、たまには甘えてあげようかな////

 

 学園生活にも慣れて来ましたが、やはり足りませんね・・・主に操者成分がね!

 

「誰か来る」

「はぁ、またですか・・・しつこいにもほどが」

「ちょっと待って!?何か変、この感じは」

 

 記者か?キリュウインか?はたまた身の程知らずの契約希望者か?

 もう今日は疲れたので、さっさと、お引き取り願おう・・・まだ午前中だってばよ。

 

 すっかり気を抜いていた。

 

 クロの警告も聞かず、外にいる者の覇気をよく確かめることもせず。

 ノックされる前に扉を開けてしまった。

 

「すみません、今日はもう・・・」

 

 だから・・・何の準備も覚悟も出来ていなかった。

 

「わっ!勝手に開いた。と、突然すみません。ここに、とある騎神がいると聞いてきたのですが」

 

 この声、この匂い、嘘っ!待って。

 

「キタサンブラックとサトノダイヤモンドという子たちです。今どちらにいるか・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

 

 何で、何でいつもこの人は・・・

 

「あのぅ、聞いてます?・・・・・・・( ,,`・ω・´)んんん?」

 

 何か言わないと。

 

「「「あ」」」

 

 絞り出した声が重なる「あ」って!他に言う事あっただろ。

 緊張し過ぎて言葉が続かない。

 

 彼が目をパチパチさせながら「呪いが解けた」とか呟いている。

 

「んん!あーその、なんだ、わた・・俺だ、アンドウマサキだ。わかってくれるか?」

 

 わかります!わかりますよ。

 どんなに姿形が変わっても、わからないはずが無い。

 

「待たせて悪かったな、本当に苦労をかけてすまなかった。俺はだな、えっと、だから・・・」

 

 私たちは動かない、動けない、なんてことだ。

 こんなはずじゃなかったのに。

 

「あークソッ!ダメだ、もっといろいろ考えていたのに、全然上手くいかんねぇ!クールでスマートな演出でカッコよくお前たちを迎えに来たぞ!って言いたかったのに、あーもう、なんでこう、俺のド阿保ぅ!」

 

 それは私たちもですよ。

 待ちに待った再会シーンは最高のものにするんだって決めていたんだ。

 もっとお洒落でロマンティックな状況とタイミングを選んで、思い出に残る最高の瞬間をにするつもりだったのに。

 100以上のパターンをシミュレーションして、ずっと・・・考えていたのに。

 それを、こんな突然に、何の準備もできていない、頭の中はとっくの昔に真っ白だ。

 

「いろいろあったが、俺が今ここにいるのはお前たちのおかげだ」

 

 私たち大人になりましたよ。

 泣き虫のあたなたを今度は私たちが「よしよし」してあげるんだって・・・。

 大人の余裕を・・・みっともない姿を見せないように、我慢して、我慢して。

 体だけ大きくなったのがバレないように、精一杯背伸びして・・・だから・・・

 

 泣いたらダメ、もう子供じゃいられないんだ、しっかりした一人前のウマ娘になった。

 

 そのつもりだったのに・・・

 

「帰って来たぞ、ただいま・・・クロ、シロ」

 

「「っ!?」」

 

 ダメだった。

 名前を呼ばれた瞬間に抑えていたものが溢れ出た。もう何も考えられない。

 彼に飛びついて、幻ではないと確かめて、力任せに抱きついた。

 大粒の涙を流し、子供みたいに泣き喚いて、感謝や労いの言葉より、溜まった鬱憤を晴らすように、酷い言葉を一方的に浴びせかける。

 被害者ぶって何をやっているのだろう、私たちのために彼がどれだけ苦労したのか知っているはずなのに、止まらなかった。

 最悪だ、本当にこんななずじゃなかった。

 恩を仇で返す、クソガキにも劣る態度をとってしまった。

 

 ほら、彼だって困ってる、私たちのせいだ、私たちが未熟なガキのままだったから。

 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。

 

 それでも、こんな最低の私たちを彼は・・・

 

「よしよし、もう大丈夫だからな、これからはずーっと一緒だぞ」

 

 別れる前の時よりも、もっとずっと優しく抱きしめてくれたのです。

 

 出会ってくれた、救ってくれた、戻って来てくれた、嬉しすぎてどうにかなりそう。

 

 私たちが悪い、でもやっぱり、こんな風にしたあなたも悪い。

 

 ねぇ・・・望んでもいい?

 

 もっと壊して!狂わせて!溺れさせて!もっともっともっと感じさせてほしい。

 

 "すべてをあげます"

 

 だからお願い

 

 "あなたのすべてをください"

 

 ♢

 

 少し前・・・

 

 どうも、俺ですアンドウマサキです。

 ようやくこの記念すべき日を迎えることができました。これも皆様の応援の賜物ですよ。

 

「もういいぜ、ここからは一人で行くよ」

「本当に大丈夫?学園内で迷子になっても知らないよ」

「その時は親切な人に道を聞くだけだ」

「決意は固いようだね。わかったよ、お邪魔虫の私はクール去るぜ」

「すまんね、じゃあまた後で」

「ほいほーい。全校集会の前に職員棟に寄るのを忘れないでよ~」

 

 途中まで案内してくれたミオ(人型にもすぐ慣れた)と別れて、とりあえず中庭を目指す。

 ふむ。前に来た時よりも施設がパワーアップしているな・・・おかげですぐに迷子だぜ。

 へへへ、やってしまった。方向音痴というか、もうただのバカだろ。

 今日からここの教官だってのに!初っ端からこの感じでやっていけるのだろうか?

 

 偶然通りかかった教官らしき女性に助けてもらい事なきを得た。

 親切な人でよかった、覇気もかなりのものだったし、さぞ優秀な教官なんだろう。

 隣にいたのは恐らくウマ娘、認識狂いのせいで白い毛玉のゆるキャラにしか見えなかったけど。

 パターンは覚えた、妙な生き物が見えたらウマ娘で大体合ってるんだよ。

 この呪いとも今日でおさらばするつもりだ。

 

 道案内のおかげで迷うことなく到着。

 まだ新しい平屋建ての寄宿舎、ここにいるのか、なんだか緊張してきたぞ。

 落ち着いて深呼吸、まずはノックして・・・

 

「すみません、今日はもう・・・」

「わっ!勝手に開いた。と、突然すみません。ここに、とある騎神がいると聞いてきたのですが」

 

 ビックリした!自動ドアだと?

 驚いた勢いのまま、こちらの要件をまくし立ててしまった。

 お、落ち着きたまえよ俺、何をテンパっているのかね。

 予想以上に可愛い子が出て来たからって焦るなよ。

 

「キタサンブラックとサトノダイヤモンドという子たちです。今どちらにいるか・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

 

 開け放ったドアの向こうにいる二人がポカンとした顔でこちらを見ている。

 ヤバい、奥にいる子もメッチャ可愛い!

 

「あのぅ、聞いてます?・・・・・・・( ,,`・ω・´)んんん?」

 

 あれ?あれれ、どうして俺は、この二人をウマ娘だと認識したんだ。

 ウマ娘だ、確かにウマ娘がいる!そうそう、こんな感じの生き物だったんだよ。

 ううう、本物を見るのは久ぶりなんで素直に感動した!

 見れば見るほど美しい人型生命体だ、それになんだか他人の気がしない。

 あいつらが成長したらきっと、この子たちみたいな・・・

 

「「「あ」」」

 

 面影がある・・それに変化しているがこの覇気は確かに。

 いや、でも、そ、そんな・・・で・・・でかい!(いろいろと)

 

「呪いが解けたってことは、やっぱりそういうことだよな」

 

 おおおお、おおおおお!ちょちょちょ、ちょっと待って全然!準備出来てねぇーーーー!

 嫌ァァァァ!不意打ちよ不意打ちのエンカウントよ!

 何故だか向こうも固まっていらっしゃるが、ここは俺が上手いことやらないとイカンでしょ。

 

「んん!あーその、なんだ、わた・・俺だ、アンドウマサキだ。わかってくれるか?」

 

 あれー?反応がないぞ。

 もしかして、忘れられた?「あんた誰?」とか言われたら心がへし折れる。

 お、怒ってるのかな、そりゃあ散々待たせたからなぁ、どつきまわされても仕方がないとは思う。

 

「待たせて悪かったな、本当に苦労をかけてすまなかった。俺はだな、えっと、だから・・・」

 

 はーん!どうしよう頭がぐるぐるする!

 もう、あれだけ何度も練習したセリフが一つたりとも出でこない。

 台本!台本はどこへ?

 

「あークソッ!ダメだ、もっといろいろ考えていたのに、全然上手くいかんねぇ!クールでスマートな演出でカッコよくお前たちを迎えに来たぞ!って言いたかったのに、あーもう、なんでこう、俺のド阿保ぅ!」

 

 自己嫌悪ここに極まれり。

 泣きそう、どうしていつもいつも大事な場面でビシッと決められないの?キメさせてくれないの?

 落ち込んでいる場合か、ここに至っては長いセリフなど不要!

 見栄を張る必要はない、シンプルに俺の思いを伝えるだけでいいんだ。

 

「いろいろあったが、俺が今ここにいるのはお前たちのおかげだ」

 

 どんなに苦労してもお前たちのことを思えば頑張れた。

 生き甲斐そのものだったんだぞ。

 

「帰って来たぞ、ただいま・・・クロ、シロ」

 

「「っ!?」」

 

 これでいい、後は向こうの反応ぉぉぉっっふ!!

 

 いい体当たりだ!俺じゃなきゃ今ので気絶していたね。

 勢いが凄すぎて外に飛び出ちゃった。周りに人がいなくてセーフ。

 なめるなよ!愛バ二人を受け止められなくて、何が操者か!踏ん張って見せる。

 はい、ダメでした。無様に尻餅ついちゃったよ。

 えーと、二人とも元気だった・・・か・・・

 

「本物?本物だよね、本物なんだ、ホントにホントに本物の!うわあああぁぁぁん」

「夢じゃない、夢じゃない、夢なんかじゃないーーーー!ううぅえええうええええ」

「二人ともちょっと、おち、フゴッッ!」

 

 ドンッ!胸に二人の拳が叩きつけらた。心臓がビックリ跳ねちゃったぞ。

 これアレか「もう~バカバカバカ~」で可愛くポカポカしてくるヤツ?

 シャレにならない威力だ!「ポカポカ」ではない「ドカッ!ドゴッ!」が正解。

 俺の肋骨が悲鳴を上げそうになるほどの連打が撃ち込まれる。

 た、耐えろ、耐えるんだ、覇気で骨の強度を上げつつ痛みをやわらげ・・・

 

「なんで!なんで、なんで、なんで、なんで、なんでぇぇぇ!!」

「置いていった!おいていった、おいていった、おいてけぼりにしたぁぁ!!」

 

「遅いぃぃ、おそい、おそい、おそい、おそいんだよぉぉぉーーーー!!」

「嘘つきぃ、うそつき、うそつき、うそつき、うそつきぃぃーーーー!!」

 

「バカ!バカバカバカバカバカバカバカァァァーーー!!」

「ア、ア・・・アホォォォーーーーーーーーーーー!!」

 

「「あァァァんまりだァァアァ!!!」」

 

 どうしよう愛バがエシディシになってしまった。

 

 フー、スッとしたぜ。

 おれはアルやココに比べるとチと荒っぽい性格でな〜。

 激高してトチ狂いそうになると泣きわめいて頭を冷静にするようにしているのだ!

 といういう感じでもなさそうだぞ。

 

 駄々っ子だ、二人の子供が癇癪を起して喚き散らしている。

 俺のせいで女の子を泣かせてしまっているというのに、少し安心した自分がいる。

 体は大きくなっても子供のまま、俺の知っているお前たちのままでいてくれたことを嬉しいと思ってしまった。

 悪い奴やでほんまに。

 

「悪かった、本当に俺が悪かったよ。よしよし」

 

 泣き止めとは言わない、気が済むまでいっぱい泣いたらいい。

 愛バの涙を受け止めるのも操者の務めだ、誰にも譲らねぇぞ。

 ずっと我慢していたんだな。うんうん、このままじゃ俺までもらい泣きしそう。

 

「待ってた、まってった、まって、ずっとまって、待ちくたびれて、帰ってこなくて」

「信じてるのに、信じたいのに、ふ、不安になって、そんな自分が嫌で・・・」

 

 苦しかったよな、悲しかったよな、いっぱいモヤモヤしたよな。

 わかるぞ、その気持ちは痛いほどわかる。

 

「「 怖かった!怖かったよぉぉーーーーッッ!!!」」

 

 ああ、本当に俺も怖かった。

 もう二度と会えないかもと悲観して絶望して不安に押しつぶされそうになって、眠れぬ夜を何度過ごしたことか・・・この世の何よりも辛くて怖ろしかった。

 

 こんな気持ちを、まだ子供のお前たちに味合わせた。

 俺は本当にダメ男だよ。

 殴られて、罵られて、唾を吐かれても当然だ。それだけのことをした自覚はある。

 

 でも許されるなら、いや、許されるまではいくらでも頭を下げよう。

 お前たちに嫌われても付きまとってやるかなら!(ストーカー的思考)

 

「もう、どこにも行かないで・・・」

「傍にいて、傍にいさせて・・・お願い・・・」

「ああ、もちろんだ。俺だって同じ気持ちだぞ」

 

 一度は失った、もう二度と失う者か。

 俺と愛バたちの絆は誰にも断ち切れはしない。

 守り抜いてみせる・・・それが俺の・・・

 

「よしよし、もう大丈夫だからな、これからはずーっと一緒だぞ」

「う~う~う~!」

「む~む~む~!」

 

 やだっ!今の泣き声?それとも鳴き声?可愛いから許す!

 おー?このままマーキングしちゃう。ハハハハハ、スーツがしわしわのヨレヨレだぜぃ!

 まあいいや、この二人のためならスーツの一着や二着ダメになっても気にしない。

 スーツは犠牲になったのだ。

 

 よーし、よしよしよしよしよしっ!

 気のすむまで泣くがいい!その分俺も泣いちゃう。

 

 もうダメ、涙腺決壊!

 

「クロ、シロ・・・あ゛いだがったよおぉぉ~!」

 

 泣き顔キモくても今だけは許してください。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 あのまましばらく三人で抱き合って号泣した。

 

 まだ不安なのかクロとシロは俺にしがみついたままだ。

 逃げないから安心しなさいな。

 

「マサキさん」

「何だクロ」

「なんでもない」

「マサキさん」

「どうしたシロ」

「言ってみただけです」

 

 クッソ可愛い!あーもう魂が浄化されていくじゃあ~。

 

「クロ」

「何?」

「確認しただけだ」

「えへへ」

「シロ」

「ここにいます」

「それならいい」

「はい、ずっとお傍に」

 

 これだ、これが欲しかったんだ。

 ありがとうありがとう!応援してくれた全ての人に感謝します!ありがとございました!

 アンドウマサキ、大切なものを取り戻すことができました。

 ああ、この喜びを叫ばずにはいられない!

 

「「マァァァサァァァキィィィーーーさあぁぁぁんんんーーーッッ!!」」

 

「クゥゥゥロォォォーーー!シィィィロォォォーーー!」

 

「「「シィィザーーァァァッ!!!」」」

 

 途中でわけがわからなくなって、三人でとりあえず絶叫してみた。

 さっきのエシディシといい、なにか混入したけど気のせいだろう。

 うむ、このノリと呼吸・・・それでこそ俺の愛バだ!!

 

「ごめん、そろそろ立ってもいいか」

「うん、取り乱してごめんね」

「どうぞ、掴まってください」

 

 体当たりされてからずっと地べたに座ったままでした。これもうスーツ完全に逝ったな。

 二人に手を引かれて立たせてもらう。

 よいしょっと、これで・・・おお!

 

 立ってみると二人の成長具合がよくわかる。すっかり大人になってまあ。

 

「大きくなったな」

「「っ!?」

「いや、ホント見違え・・・」

「「あ、あの!」」

 

 二人の表情が一気に曇ったぞ、女性に大きくなったはダメだったか?

 どこか怯えたような感じでおずおずと声をかけてくる。

 

「やっぱり、ち、小さい方がよかったかな・・ごめんなさい、どうか捨てないで!」

「急に成長したことは謝ります。お気に召さない所は努力して改善しますから、だから」

「「ロリコニアの建国だけは勘弁してください!!」」

 

 せっかく泣き止んだのに、目を潤ませ必死で懇願してくる二人。

 二人が何を言っているかわからない。だか、どうしてだろう・・・

 

「ロリコニア、初めて聞いた言葉だがオラもの凄くわくわくすっぞ!」

「「だめぇぇぇ!!」」

「教えてくれロリコニアとは何だ?超古代文明の遺産か何かか」

「知らない方がいいよ」

「そんな!隠されると気になってしょうがない」

「どうしても知りたいなら、ロリコニアか私たちか、どちらか選んでください」

「お前たちに決まってるだろ!」

「即答!超嬉しい!」

「当然ですね。信じてましたよマサキさん」

「で、ロリコニアとは?」

「「教えない!!」」

 

 頑なに拒否されたので諦める。シュウなら何か知ってるかも、後で聞いてみよう。

 

「うん、でも本当に立派になって・・・ううっ」

「泣かないでよ、よしよし」

「よしよしです。フフッ、身長があるので前より楽にできますね」

「お前たちの成長過程を見逃した・・・もうサイアク・・・」

「それは誰も確認できなかったみたいだよ」

「結晶化して出て来た時には成長完了ってな訳でしたからね」

「マジか・・・勿体ないよう・・・」

 

 盾の勇者もこんな気分だったのだろうか、ラフタリア可愛いよね。

 たぬき娘なのかな、あのモフモフ尻尾はポイント高いですよ。

 まあ、うちの愛バはもーっと可愛いですけどね!!

 

「よーし、成長した姿をよく見せてくれぃ・・・ほう、いいね!とってもいい!」

「フフッ、照れるね////」

「気のすむまでどうぞ、全てあなたのものですから」

 

 二人とも身長が大きく伸びている。

 あのチビだった二人が、今では立派な女に成長した。

 顔もスタイルも一級品、出るところは出て引っ込む所は引っ込んでいる。

 二人の成長具合を比較したい方は是非アニメ(2期)とアプリ版の彼女たちを見比べてくれぃ!

 

 やった、やったぞ!はは、あははははははは!

 

「俺を散々ロリコン呼ばわりした奴らめ、見るがいいそして驚け!もうロリコンなんて呼ばせない!二人と肩を並べても全然不自然じゃなかろう!「年下の嫁さんもらったの(* ̄- ̄)ふ~ん」ですむはずだ」

「嫁だなんて////」(12歳)

「年齢的にはアウトですが、言わないほうがいいでしょうね」(12歳)

「よくやったぞ二人とも、GJグッジョブよ!」

「喜んでもらえてよかったー。一つ目クリアだね」

「このままロリ卒業まで何とかもっていければベストなのですが」

 

 なんだよ、ロリじゃなくなった二人を俺が見限るとでも思っていたのか、信用ないな俺。

 勘違いするなよ。

 

「俺は確かに小さい子が好きなのかもしれない」

「中々恐ろしい宣言を急にどうしたの?」

「堂々と口にされると、もういっそ清々しいですねw」

「だけどな、そこらのロリとお前たちは比べるまでもない!それぐらいお前たちが大事なんだ!」

「じゃあ、ロリな私たちと今の私たちなら?」

「え?・・・それは、悩むな」

「「悩んじゃダメでしょ!!」」

「はい!すみません!」

 

 怒られちゃった。

 そうだよな、今のクロとシロに失礼だもんな。気持ちを切り替えて行こう。

 ロリのクロシロは俺の心の中で永遠なのさ。

 クソッ、俺がもっとしっかりしていたら・・ロリのこいつらとのイチャイチャ期間を堪能できたものを!

 許さんぞルクス!とりあえずお前が悪いんだ!(逆恨み)

 

「まあまあ、大きい方がいい事もあるんだよ」

「例えば、こんな風にですね」

 

 アッーーー!おぱーいが当たってるーーーー!うっひょぉぉぉーーーー!

 子供の頃からの夢、また一つ叶っちゃった。「両サイドあててんのよ」を達成しました。

 ここが楽園だったか・・・なんて素晴らしい感触なんだろう。

 さようなら「ちっぱい」こんにちは「ビッグボイン」今後ともよろしくお願いします。

 スカウターの故障か?これが中学一年生の戦闘力!・・バカなまだ上がるだとぉ。

 ちょっと前までランドセル背負っていたおぱーいじゃねぞコレ!

 

「クスクスッ、気に入ってくれたみたい」

「直に確認してみますか?」

「是非!お願いしま・・・今は・・やめ・・とく・・ぐぐぐ」

「ち、血の涙は出さないで!」

「チャンスはこれから無限にありますから!そんなに残念がらなくても」

「その言葉忘れるなよ。嘘ついたら血涙だけじゃすまんぞ」

「もうバカだなぁ、焦らなくてもいいんだよ」

「いつでもウェルカムですからね」

「幸せすぎて死にそう」

「「死んじゃダメ」」

 

 死なねーよ、少なくともお前たちを残して死ねるかよ。

 

 美人!可愛い!でかい!

 性格もノリも良く、柔らかくて、あったかくて、いい匂いがする。

 そして・・・強い、隠しているが覇気が著しい成長を遂げているのは明らかだ。

 俺といろんな奴らの覇気を食らい、女神の力を受け継いだんだもんな。

 

「撫でてもいいか?」

「もちろん」

「待ってましたよ」

「ああ、この手触りだ、落ち着く・・本当によく目覚めてくれたな。急成長以外で体に異常はないか?」

「ちょっと、おぱーいが重くて邪魔」

「肩こりしそうですね」

「その発言、持てる者の余裕だな」

「オルゴナイト、まだちょっと不慣れ、練習場所も相手も苦労するよ」

「学園では当然使用していません。ネタバレするのは、マサキさんが帰還してからと決めていましたから」

 

 なるほど、二人は学園で大人しく振舞っているんだな。

 うん、それが賢明だ。いきなり結晶出したらビックリされるというか、引かれるだろう。

 

 ネタバレか、そのうちお世話になったみんなにお礼と愛バの紹介行脚しに行かないとなぁ。

 くくく、二人、いや四人を自慢してドヤ顔決めてやるわ!うちの子たち凄いのよってね!

 

「マサキさんはどうしてこちらへ、それにその恰好」

「おっと、そうだった。俺は今日からここで働くんだよろしくな」

「「へ?」」

「教官試験受かったんだよ。今日からお世話になる新人教官のマサキですってな」

 

 ビシッと下手くそな敬礼をしてみる。敬礼って右手?それとも左手か?わかんないぞ。

 俺の回答が意外だったのか、一瞬呆けた後すぐにはしゃぎだす二人。

 

「凄い!すごいすごい!マサキさんはやっぱり最高~あーーー好き!」

「愛バを喜ばせるの上手すぎます!フフフフ、夢の学園ラブコメが始まってしまいます!」

「アルやココと同じ反応だな。それでその~・・・二人とは」

「心配なさらず。アル姉さんとココには話をつけてあります」

「何だかんだで四人上手くやってるよ。自分でも意外」

「そ、そうか・・・ホントに悪かったな、お前たちがいないのをいいことに・・・」

「「ストップ」」

「んぐぅ」

「別に起こってません。その話はまた後にしましょう」

「五人揃ってからの方がいいよ。楽しみだな~」

「そう言ってくれると助かる。マジで助かった!」

 

 危惧していた愛バ間の戦争は回避できた。

 事前にアルとココにも聞いていたが、自分たちだけでしっかり話し合ったのだとか。

 まだ子供のままと思ったけど、精神面はしっかり成長してるのね。嬉しいような寂しいような。

 いや、二人の精神年齢は出会った時から俺の遥か上だったな。

 ガキなのは俺だけでした・・・呆れられないように頑張らないとな。

 

 もっといろいろ話たいところだが、いい時間みたいだし。そろそろ切り上げるか。

 

「そういうわけで、これから職員棟で同僚の皆さんたちに挨拶してくる」

「あ、スーツに泥が」

「プラス私たちの涙と鼻水でぐしゃぐしゃですね」

「安心しろ、こんなこともあろうかと」

 

 漫画スパイファミリーを読んでいる俺に抜かりはない!アニメの出来も良好でなにより。

 替えのスーツは2着用意は基本ですよ。

 カバンからちゃっと出してサッとお着替え完了。

 うん、最初のよりこっちの方が色も落ち着きがあっていい感じがする。

 

「どう?これでイケそうか」

「「・・・/////」」

「正直に言ってくれ。黙っていられると不安!」

「ごめ、カッコ良すぎて惚れ直した」

「後で写真撮らせてください。永久保存します・・」

「ははは、大袈裟だな。でも、ありがとな」

 

 愛バの贔屓目ってヤツだろうな。嬉しいことを言ってくれる。

 さてさて、愛バのお墨付きをもらったことだし、行きましょうかね。

 

「じゃあな、また後でゆっくり話そうぜ」

「うん!いってらっしゃーい」

「お気をつけて!あ、帯刀した事務員にはくれぐれも注意してくださいね」

 

 大切な愛バに見送られての出勤初日、気合が入るってもんですよ。

 よし、社会人として頑張るぞい。

 

 ♦♢

 

 マサキが去った後、残された愛バ二人はヘナヘナとその場に座り込む。

 

「すごかった」

「刺激がちょっと強すぎ」

「あれはアカン」

「ヤバすぎです」

 

 顔を見合わせて、お互いが同じ結論に達したところで彼女たちは絶叫した。

 

「「ぎゃァァァーーー!!予想以上にカッコよくなってるゥゥゥッッーーーーーー!!」

 

 甘かった、自分たちは甘すぎた。

 体が成長したことで驚くのは向こうの方だろうと決めつけていた。

 勘違いも勘違いだ、まさか、あの最高だと思い続けた人物が・・・・

 

「「ズルいぃぃーーーー!!パワーアップしすぎぃぃぃーーーー!!」」

 

 更なる進化を遂げていたなんて。

 会えない期間、自分たちの中で彼がどんどん美化されているのを実感していたが、今日ここに現れた実物は想像していたものの何倍も上をいっていた。

 

「なんだアレ!なんだアレ!何なのよアレーーーー!」

「あ、危なかった、鼻血を出さなかった自分を褒めてやりたいです」

「私、あのまま押し倒しそうになった」

「無意識にお金払おうとしていた自分がいました」

「「・・・・」」

「えへ、えへへへへへへへへへ」

「うふ、ふふふふふふふふふふ」

「「あはははははははははははははははははは!!」」

 

 勝った!勝ったな!完全勝利だ!

 私たちの目に狂いはなかった!あの人こそ、世界最高の操者だ!!

 

「大人の余裕?貫禄っていうのが出ていた、そっちこそ成長してるじゃん!まーたでっかい男になってるし、もう!どれだけ先を行くんだよ。もうったらもう/////」

「それより覇気ですよ!アレだけ漏れていたのに、今じゃ全くと言っていいほど感じません!完全にコントロールできてましたよ。あの覇気を完全制御・・・はう・・・素敵/////」

 

 離れている間に彼も成長していた。

 いくつもの出会いと別れを繰り返し、更なる高みに上り詰めていてくれた。

 期待を裏切らない、それ以上の結果をはじき出してくれる。

 それでこそ私たちの操者!あなたこそ私たちが全てを賭けるに相応しい男だ。

 

「「はぁ~////好きぃ!!」」

 

どんな経験を積んだのか、人相やいろいろな所に変化がみられた。

   

 鍛え上げられた肉体、より精悍になった顔つき、頬そして額の傷ですら愛おしい。

 煌めく髪の毛はダークグリーンで、額の傷を隠すように前髪のひと房だけ白銀に染まっている。

 素敵な笑顔はそのままに、優しい眼差しを向けてくる瞳は吸い込まれそうなほど綺麗で力を感じる。

 足運びや細々とした所作、呼吸すらも洗練され、匂いは前にも増してこちらの感覚をくすぐってくる。

 

「えへへ、前髪おそろい・・・やった」

「悔しいです、なぜひし形メッシュじゃなかったのですか!」

「えー、前髪にひし形つけてるのってアホみたいじゃん」

「お前ずっとそんな風に思ってたのかよ!」

 

 内包する覇気は数値化するもの馬鹿らしい領域に達していることだろう。

 それを全く感じさせないことが何よりも恐ろしい、あの凶暴な覇気を完全に制御下においた。

 そこに至るまで、一体どれほどの修練を積んだのだろうか検討もつかない。

 

「今リンクされたらどうなっちゃうの?ちょっと怖いけど絶対いい気分になるはず」

「フフフ、今から味が楽しみです」

「そこかよ」

「きっと、私たちを気遣って適量を少しづつ注いでくれますよ・・・ぐはっ!もうあなたの覇気で上書きしちゃってくださいぃ!あなたのものにしてぇ!」

「そうか、上書き・・・されちゃうんだ、えへへへへ」

 

 操者の凶暴な覇気で全身を神核ごと上書きされる。

 これはもうアレと同義じゃね・・・操者版マーキングですよ「俺の女」にされちゃう!

 

「「キャァァーーー!!もう好きにしてぇ!!」

 

 ニヤニヤが止まらない。

 ちょっと再会しただけでこのザマだ。

 これからどうなっちゃうの私たち、お気に召すままどうにでもしてください!!

 

「うわぁ、学園内で発情してる後輩発見した私はどうしたらいいの?」

「う・・・ううっ・・・よかった、本当によかったですね・・・ううっ・・」

 

 ちっ、出てきやがったな。

 

「覗き見ですか、趣味悪いですよ」

「いたんだ、アル姉、ココ」

「今来たところだよ、これでも気を遣って遠くから見守るだけにしたよ」

「マサキさん、とっても嬉しそうで・・お二人もあんなに泣いて・・・ううっ・・グスッ・・」

「何はともあれ、再会おめでとう。念願が叶った感想はどうかな?」

「「もう最高」」

「それは良かった。ほらアル、もう泣き止んでよ」

「お、おめでとうございます!これまでの苦労が報われた瞬間・・感動じましたぁぁーーー!」

「アル姉さん、どんどん泣き虫になりますね」

「マサキさんの覇気に影響されたのかな」

 

 というか、この二人はマサキさんが今日ここの来るのを知っていたな。

 サプライズは大成功だよちくしょう!

 

「さあ、ここからが本当の勝負だよ」

「お、正妻戦争開始のゴングならしちゃう?」

「それもですが、敵・・ルクスのことです」

「このまま、何もないとよいのですが、そうもいかないでしょうね」

 

 敵?マサキさんが帰って来た今、何を恐れる必要があるのだろうか。

 大丈夫、彼さえいればもう大丈夫。

 根拠はあります。

 だって、マサキさんは私たちが選んだ最凶無敵の男ですから!

 

「「「もう、何も怖くない!!!」」」

「それフラグだからやめてね」

 

 フラグなんて折って潰して消してやるよ。

 

「とりあえずは、学園生活を楽しみましょうか」

「そうだね~」

「操者と愛バ、そして教師と生徒・・・何も起こらないはずが無く・・・グフフ」

「「やったぜ!」」

「そ、そんな////放課後の教室でなんて!恥ずかしい////」

「「「このドスケベが!!!」」」

 

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