俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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終着駅と開拓地

 あの日、俺はルクスと戦い敗北した。

 ルクスに腹を刺され重傷を負った挙句、クロスゲートに放り込まれる事態になったのだ。

 不意打ちや仲間を狙うような手段を取られたとはいえ、負けは負けだ。

 勝つことができなかったのは俺が弱かったせいだ。悔しい・・絶対リベンジしてやる。

 奴の右手を噛み千切って一矢報いてやったが、あの程度じゃ足りない。

 次に会った時は徹底的にボコることに決めた。

 くそっ!クソクソクソッ!

 邪魔が入らなければ今頃、目覚めたクロとシロに会えていたはずなのに、ココにアルという素敵な愛バも増えて夢のハーレム状態だったのに・・・こんなはずじゃあなかった。

 戦闘で負った傷と力を限界まで使用したことで全身が悲鳴を上げている。

 俺の体はボドォボドォだぁ。

 寒い、腹が減った、苦しい、喉が渇く、寂しい、ルクス死ね。

 大きな疲労感と一人ぼっちの孤独感でネガティブな感情ばかりが募る。

 

 (あれからどの位経ったんだ・・・ここはどこだ・・)

 

 ホントなんだよここは、転移途中のワープゾーンとでもいうのか。

 黒をベースとした広大な空間に様々な色をした光が見える。

 上下前後左右いたるところで膨大な数の光が流動し、渦巻いている箇所もある・・・まるで、川の流れみたいだ。とりあえず、天の川と名付けよう。

 この世のものとは思えない天の川の中を俺は一人で漂っているのだ。

 一体何処に向かっているのだろう、流れに逆らうことは・・できそうにない。

 美しくも不思議な光景だ、非常時でなければもっとじっくり見ていたかった。

 

 (まだ生きてる・・だけど、このままだと・・)

 

 痛みのピークはとうに過ぎ去り、体温の低下と息苦しさが酷く不快に感じる。

 大量の血液と覇気を失った。そう、生命力そのものが今の俺には不足している。

 マズいぞ、出血を止めたがダメージを受け過ぎた。

 回復しないと、今のヒーリングでどこまでやれるか、何かエネルギーを補給しなければ。

 体が・・動かない。

 

 (ああ・・すごく眠たい・・このまま楽に・・なる・・わけには、いかないんだよぉ!)

 

 クロ、シロ、アル、ココ、あいつらが俺の帰りを待っているのだ。

 まだだ、まだ倒れるわけにはいかない。

 落ち着け、こういう時こそ冷静になれ。

 

 (止血は済んでる。生存に必要最低限な覇気だけ残して後は少しでも回復に充てる)

 

 血も覇気も栄養も、足りないものが多過ぎて不安しかないがやるしかない。

 無駄な足掻きだって笑うか?それでもいいさ、少しでも長く生きて突破口を見出す。

 諦めないぞ、こんなとことで死んでたまるか!

 

「そうだ、お前はまだ死なない、死ぬことは許されない」

 

 唐突に聞こえた声に驚く、このような場所に俺以外の存在がいたのか?

 いや、気配は全く感じない。そもそもこの声は頭に直接響いているんだか・・一体何者だ。

 

 (姿を見せろ・・・誰・・だ・・・どこに・・)

 

「生き残って使命を果たせ。死ぬのはその後だ」

 

 (し・・め・・い・・)

 

「終点にいる王に会え、無限の交わる場所へ導いてくれるだろう」

 

 (わけ・・わかん・・ねぇ・・)

 

「忘れるな。使命を果たせ、そのためのお前だ」

 

 (ああ・・もう・・・うるせ・・)

 

 知らないはずなのに、どこか懐かしい男の声が聞こえる。

 この声を聞いていると、大切な何かを思い出しそうだ。

 

 (頼んだぞマサキ。お前が終わらせるんだ)

 

 終わらせる・・・奴の凶行を止めて悲劇の連鎖を断つ・・・そのために・・

 

 (そのために、俺は生まれたのか)

 

 生きている意味を理解したと同時に体が引っ張られるような感覚が走る。

 光の渦、あそこへ飛び込めと?いいぜ、このまま流されてやる。

 

 (ねむ・・少し休もう・・愛バたちの夢が見れたら・・いいな)

 

 果報は寝て待てだ、意識を保つのにも限界が来たので落ちます。

 最後に声の主が「それでいい」と満足そうに頷いた気がする。

 偉そうにすんな!あのさぁ、誰の後始末するのかわかってんの?元はと言えば・・・

 もういない!・・・ちっ、逃げやがった。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「おい、おい・・・アカンか、もうコレ死んでしまうんかいな。勿体ないなぁ」

 

 う・・・あ・・・誰かいる・・俺の体を揺すっている。

 

「待て待てぇ!久しぶりの意思疎通できそうな廃棄物なんや、ワイが諦めたらそこで試合終了やないか」

 

 エセ関西弁?なんかうるさいのがいる。

 

「せや!こういうときは人工呼吸と相場が決まっとる。マウストゥマウスちゅうやっちゃな」

 

 あーこの流れは非常にマズい。

 声の主は十中八九男で間違いない!いやいや、例え美少女が相手でもマウストゥマウスはダメだ。

 俺には愛バたちがいるんだ、キスだめ絶対!

 

「な、なんやろう。なんか緊張してきたな////誰もおらへんのはわかっとるが、こう、ムラムラちゅーかな」

 

 おいおいおい!誰だが知らんが早まるな!

 くそっ!体がまだ、動け動け動け動けぇぇぇ!今動かなきゃ俺のファーストキッスが奪われてしまう!

 そんなの絶対嫌なんだよ、だから動いてよぉぉ!

 こんなことなら、恥ずかしがらずクロとシロに奪ってもらえばよかったぁぁ!俺のバカバカバカーーー!

 思い起こせばアルやココとだって、するチャンスはあったのに!変な意地張っちゃって大後悔!

 失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗したぁぁぁ!

 

 ※マサキは知りませんが、この時点でフォースキッスまで奪われてます。

  ファーストは赤ん坊の頃こ例の姉が勢いでチューしちゃってました。

 

「そんじゃいくでー、覚悟しいや~」

「やめろぉぉぉぁぁぁぁぁ!!!

「な、起きたんかいワレって、ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ふぅ、間に合った。何とか覚醒した俺は男の顔面にブラスターを吐きかけてやった。

 「そのときふしぎなことがおこった」が発動しなければ危なかった。

 謎の男の頭部は消し飛んだが、俺の唇は守られたからよし!

 

「よし!じゃあないわー!いきなり何すんねん!」

 

 なんと生きてる!?というかピンピンしてる。こいつただ者じゃないな。

 初対面の人に殺害未遂の無礼を働いてしまったのは事実なので、素直に謝罪しよう。

 人工呼吸という手段は勘弁してほしいが、助けようとしてくれた人になんてことを、反省します。

 

「誠に申し訳ございません、緊急事態につきテンパってしまいました。どうかお許しください」

「おおう、丁寧な対応されるとは予想外や。あー、なんや、元気になったならそれでええって・・・」

「が、ごふっ!?」

「ひょえ!吐血しおった!」

 

 ヤバい、無理にブラスターを発射したせいで腹の傷口が広がった。

 僅かに残った覇気も今ので消費し尽くした。もう無理ーーー!

 あ、ダメだ。せっかく起きたのにまた落ちる。

 

「こりゃマズい!君、待つんや、死んだらアカン!アカンで!」

「帰らないと・・・あいつらのところに・・・チューしてもらうんだ」

「喋らんでもいい、全部ワイが何とかしたる」

「そうだ・・声は王に会えって・・王はどこだ」

「王やと?王ならここにおるがな」

 

 謎の男が血反吐を吐く俺の腹部に手を当てて何かをしている・・・これはまさか?ヒーリング?

 そもそもここはどこだ?この男は誰だ?ああ意識が朦朧としてきた。

 

「あなたが王?なんの王?どんな王?教えてプリーズ」

「君、結構余裕あるな。聞いたら腰抜かすで、ええかワイはなぁ」

 

 ヒーリングをかけながら、男は真っ直ぐに俺にを見据えて名乗りを上げた。

 その風格はまさに王そのものだった。

 

「ルイーナを率いて宇宙を滅ぼす超越存在。"破滅の王"ペルフェクティオや」

「うわーすごーい・・・ガクッ」

「こら信じてへんやろ?・・・気絶したか。それにしても君こそ、何もんや?」

 

 傷口を治療を終えた男は気絶したマサキの全身を改めて観察する。

 人ならざる怪しい光を宿した瞳は、対象の内部構造や神核の情報も看破していく。

 

「人間なんか?いや、めっちゃ余計なもんが混ざっとるな。この神核どうなっとんねん」

 

 ひょいっと軽々マサキを担ぎ上げた男は自身の住処である建物を目指して移動していく。

 

「えらいもん拾ってしもうたなぁ。誰の仕業か知らんけど、君を造った奴は頭おかしいで」

 

 独り言を呟きながら男は天を仰ぐ、暗い空なのにどういうわけか周囲は真昼のような明るさが保たれていた。太陽も月も星も見えない空に浮かぶのは巨大なクロスゲートのみ。

 

「このワイを差し置いて、無茶苦茶やっとるアホがおるみたいやな」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「うーん。駄目だシロ、それはニンジンじゃない。刺激すると大きくなるから取扱注意な」

「なんちゅう夢を見とんねん」

「クロも来たか、よーし今日は俺が二人の体を洗っちゃうぞ。ぐへへへへ」

「煩悩まみれやな。ほら、起きんかい!幼女と風呂に入っとる場合やないで」

「いいところなんだから邪魔すんな・・・はっ!知らないオッサンが目の前に!クロとシロをどこへやった!」

「確かにオッサンやけど、命の恩人に失礼やろ」

「・・・あなた先程の、ペロリストさんでしたっけ?」

「そうそう、気に入ったもんを夜な夜なペロペロレロレロ・・・ってちゃうわ!」

「いい反応ですね」

「ワイはペルフェクティオや、気軽にペルちゃんと呼んでええで」

 

 ペルちゃんは呼ぶ方もキツイのでペルさんで妥協してもらった。

 「いけずやな~」と言っていたが特に気にした様子でもないようだ。

 ノリツッコミの感じからして悪い人じゃないと思う。

 どうやら俺はこのペルさん(本名?ペルフェクティオ)に助けられたらしい。

 

 見た目は長身細身で顔立ちの整った青髪の男だ。長い前髪で片目が隠れている。

 年齢は俺より上30~40代位、もっと上かもしれないが定かではない。

 ヘラヘラと柔和な笑みを浮かべているが、時折見せる鋭い眼光はただ者ではないことを主張している。

 恐らくかなり強い、纏う覇気の性質は今まで感じたことのない不気味さ・・・これ覇気か?なんか違うような。

 南極辺りで子供を放置して遺跡発掘に熱中する、インテリ研究者風ダメ親父かな?

 

「俺はアンドウマサキと言います。ここはどこで、あなたは一体?いろいろ聞きたいことがあるのですが」

「待ちぃや。その前に腹ごしらえが必要やろ、立てるか?」

「はい・・大丈夫みたいです」

「大した生命力やないか感心感心。ほな、ついといで」

「あ、待ってください」

 

 腹の傷は塞がり痛みも薄れている。少々倦怠感はあるが動くのに問題ない。

 覇気も大分復活している、どうやら長い間眠ってしまったようだ。

 「こっちやこっち」と手招きするペルさんを追って室内を移動する。

 す、凄い散らかってるな。ゴミ屋敷とまでは言わないが用途不明の物が所狭しと部屋を占拠している。

 

「なんか混沌としてますね。収集癖でもあるんですか?」

「いつか使えるかもと思って集めだしたらこの始末や、ここまでやったら家が破裂するまで続行したろうかと考えとる」

 

 それはコンコルド効果というやつだろう。

 無駄とわかっているのに、つぎ込んだ資金や労力を惜しんで止め時を見失ってしまうんだ。

 

「随分時間を持て余しているようで、暇なんですか?」

「その通り暇なんやなこれが、だから君が来てくれて嬉しいわぁ」

 

 てっきりリビング的な部屋に行くのかと思いきや、出入り口からそのまま外に誘導された。

 さて、外の景色・・・は?

 

「砂浜?ここは島だったのか。いやそれよりも、う、海が・・海が赤い!」

「そうや、真っ赤かでビックリするやろ。慣れてしまえば、どうということもないわ」

「何故こんなことに、セカンドインパクトでも起こったの!?」

「起きとらんから安心しぃや。さあさあ、歓迎バーベキューの始まりや」

 

 家からすぐそばの砂浜にBBQセットが準備されている。

 家の外観はアレだ、亀仙人が住んでるカメハウスにそっくりだ。

 

「どんどん焼くから遠慮せずがっついてええで、あ、野菜もちゃんと食べなアカンよ」

「・・・あの、この食材はどこから調達したのでしょうか?」

「肉も野菜も君に合わせて創造したから心配ないで、ワイが釣ったヤツは小骨が多いので要注意や」

「創造?」

「ええから、食べよ食べよ」

 

 深海魚のようなグロい魚?は赤い海産の獲れたてピチピチだった。見た目に反して美味い。

 他はスーパーで売っている見慣れた食材そのもので不審な点は見当たらない、味も普通に美味しかった。

 お腹が減っていたせいもあってガッツリ食べちゃう。食える時に食っとかないとね!

 

「食事をするのも久しぶりやけど、ええもんやな。味覚もたまには刺激してやらんと宝の持ち腐れや」

「その口ぶりだとペルさんは食事を必要としていないと?」

「まあな、食事も睡眠もワイにとっては趣味の領域や」

「もぐもぐ・・破滅の王とかいうヤツなんですよね・・むぐむぐ・・それって」

「飲み込んでからでええよ。そうやな、いっちょ身の上話でもしたろか」

 

 ペルさんが語ってくれたのは、それはそれは壮大なお話でした。

 スケールがでかすぎて「へぇー」とか「ほぇー」とか「すごいですね」と相槌を打ってばかりだった。

 

 破滅をもたらすもの"ルイーナ"なる存在が、いつどこで何のために発生したのかは誰も知らない。

 かの者たちは門を介して次元を渡り歩き、知的生命体と接触し滅びを与える。

 それは宇宙が望んだ自浄作用か、はたまたアポトーシス(自殺因子)によるものなのか定かではない。

 

「ゲートを利用しとるちゅーことは、ゲートを造った文明連中と何らかの関係があるとワイは思うとる」

「えっと、あなたもルイーナなのにわからないんですか?」

「わからんなぁ。アンドウ君は人類という種がどうして今の形になって繁栄したか詳細を説明できるか?」

「進化論がどうとかではなく、もっと根本的な話ですよね。わかりません」

「そや、例え本人でも自分という存在が"何でこの生物をやっとるんか"は説明できへん」

 

 普通ならそうだよな。

 俺が人の形をしてアンドウマサキをやっているのには理由があるようだが・・・

 

 ある時、ルイーナの中に彼らを統率する王と呼ばれる存在が誕生する。

 王が門より現れるとルイーナもろとも宇宙は終焉を迎えることになる。

 一つの宇宙が終わると別の宇宙に新たなルイーナが発生し活動を開始する。

 善意も悪意もなく、これをただ淡々と機能的に繰り返してきた。何の疑問も抱かずに・・・

 いつしか彼は自身を"破滅の王"ペルフェクティオと名乗るようになり、そしてまた長い長い時が経過した。

 

「でな、前の現場がなぁ。もう、それはえらい抵抗すんねん!何度も退去させらた挙句に最後はもう囲まれてフルボッコにされたわ!スーパーロボット軍団とか反則やろぉ!」

「いきなり現れて「滅ぼすね♪テヘペロ」とか言われたら誰だって抵抗するでしょ。自業自得としか」

「そうやけど、こっちも仕事やからな。後もう一息やったのに・・・氷のラキたんが裏切ってしもうたんが痛かったな。風男はどうでもええ」

 

 ほうほう、部下の中から裏切り者が出たと。

 ブラックな上司と職場環境に不満があったのでは?と思ったが、なんと敵側の異性といい感じになったことが離反した原因らしい・・・やだ!ラブロマンスね。

 

「愛の力は偉大だなぁ」

「ほんまや愛ほど厄介なもんはないで」

 

 ウンウンと二人で頷き合う。俺も愛バたちへの愛で生きてるようなものだから、すごくわかる。

 

 それでスーパーロボット軍団?にボコられたペルさんはショックから自我に目覚めたらしい。

 今まで機械的に王として振舞ってきた、理由もなく滅びを与えることに何の価値も見出せなくなった。

 鬱だ・・・死のう・・・。あらやだ、ワイってば死ねないみたいww

 

 今までの自分に後悔はないし懺悔もしない。

 自分はただそういうものであっただけで、報いを受けろというのなら如何様にしてもらっても構わない。

 この死ねない体に宿った自意識という魂が消えてないのは、この世がワイにまだ何か仕事をさせる気ではないかと思っている。

 前向きにいかなアカン、どこぞの究極生命体とは違うんや!考えるのをやめたりはせぇへんで。

 さあ、これからワイの大冒険が始まるんや!いっくでぇぇーーー!

 

「そうして辿り着いたのがこの場所、終点"サルガッソー"や」

「やっぱりここが終点か、大冒険はどうなったの?」

「決意を新たにしたワイやったんやけど、転移中ここを見つけてな。こらええ保養地やんけってな具合に療養を兼ねたバカンスと洒落込もうとしたんや。あれから数十年、まさか行き止まりで脱出できへんとは思わんかった。やってもうたわwww」

「行き止まり!?それに数十年!?困る困る!非常に困りますよぉ!」

「ワイを責めてもどうにもならへんよ」

「こんなことしてる場合じゃない、俺は元の世界に戻らないと。お世話になりました、さようならペルさん!」

「ちょちょちょ、待ちーや!話は最後まで聞きた方がええ。ワイ一人では脱出不可やけど、君が協力してくれるなら可能性はある」

「もう、それを先に言ってくださいよ。安心したら食欲が戻った、追加のお肉をお願いします」

「現金なやっちゃなぁ。ええで、A5和牛と金華豚も追加投入したる」

 

 すげぇ!空中から高級ブランド肉が出るわ出るわ、何その能力?めっちゃ便利じゃん。

 対価は何だ?等価交換の原則はどこへ?

 

「落ちぶれても破滅の王や、無から有を生み出す事など造作もあらへん。ノーリスクで好きなだけ食材どーん!ぐらい朝飯まえやな」

「注文いいっスか、スタバの抹茶クリームフラペチーノ、サイズはベンティ。パウダー、シロップ、ホイップ多めのチョコチップ追加で」

「はいな」(2秒)

「キャー素敵!美味い!間違いなく本物だぁ!ペルさん大いにリスペクトします」(゚д゚)ウマー

 

 望むだけの美味い食事にありつけて大満足のBBQでした。

 

 サルガッソーには日没というものはない、時間の感覚がおかしくなりそうだ。

 散歩がてら島をぐるりと一周するが1時間たらずで終わった気がする。

 今いる島は小さいが、やや遠くに見える島はかなりの大きさだ。

 空には見たことがないほど巨大なクロスゲートが浮かんでおり、ぼんやりと光っている。

 赤い海、暗い空、太陽が無いのに夜が来ない、閉ざされた狭い世界、これが終点。

 そして隣には破滅の王とかいうとんでもない経歴の持ち主がいらっしゃる。

 今は二人仲良くフラペチーノ(2杯目)をちゅーちゅーしてるところだ。

 

「あれ珍しいな、また門が開きおる。見てみい、廃棄物が落ちてくるで」

 

 言われるままに空中のゲートへと視線を向ける。

 リングの内側が光波打った後、何かが遠くの島に落下していった。

 

「なるほど、俺もああやって落ちて来たのか」

「せやで、生きとる廃棄部は珍しいんや。それが話のわかる知的生命やったから驚いたわ」

 

 廃棄物というのはゲートから落下してくるもの全般は指した言葉らしい。

 

「多分やけど、転移に失敗した物や強引な手段で門をくぐったイレギュラーな存在を破棄する場所なんやろうな。まさにゴミ箱や」

 

 心当りがある。

 ルクスが不正な手段で開けたゲートに入った俺は、終点に投げ込まれたゴミってことかよ。

 

「誰かと何かを共有したり話ができるって楽しいなぁ。ほんの数十年やったけど、ワイ思いのほか寂しかったんやな」

「ぼっちは辛いっスからね。俺でよければ、ここにいる間はいくらでも相手になります」

「ええ子やな。今度は君の事情ちゅーのを聞かせてもらおうか」

「いいですよ。どこから話そうかな」

「ああ、かまへんかまへん。口で説明するより手っ取り早い方法があるで」

 

 ペルさんが俺の額に手を添える。これはまさかミオがやった脳内スキャン?

 俺の記憶を読み取っているのか、恥ずかしいところは閲覧しないでくださいね。

 スキャン中に閲覧した記憶情報についてコメントしてくれるみたいだ。

 

「ウマ娘やと!?なんやメッチャかわええ生き物やんけ!」

「そうでしょうそうでしょう。俺の愛バ、これがホント最強に可愛くて」

「サイバスター、そんで君はマサキ・・・パラレルワールドの可能性とでもいうんかい」

「あ、もしかしてロボ軍団の中にいました?俺の世界では美人の母さんなんですよ」

「ルクス・・・こいつかぁ、君をこんな目にあわせた奴は・・・でも、こいつ・・まあええわ」

「絶対にぶっ飛ばします。やられた分は何倍にもして返すのが信条なんで」

 

 時間にしてものの数分、大体の事情は察してくれたようだ。

 

「好きな子が待ってるんやね。これは是が非でも帰らなアカンな」

「そうです。だから、協力をお願いします」

「ここから出るのはワイの望みでもあるし、願ったり叶ったりや。だけど、ええんか?」

「何か問題でも」

「ワイは破滅の王ペルフェクティオ。自分で言うのもアレやけど、こんなヤバい奴ここから解き放ってしもうてもええんか?」

「滅ぼすことに価値を見出せなくなったんですよね。それに、見ず知らずの俺を助けてくれました。昔のあなたがどんな奴かはしらないけど、今のあなたは悪さをしないと信じます」

「ほな契約や、王の力を望むのならこの手を取りいや」

「結ぶぞ!その契約!」

 

 俺はツイている。ゲート抜けた先のゴミ箱で新たな仲間を見つけることができたのだから。

 握ったその手はとても頼もしく感じられたのだった。

 

 今日はお開きにして就寝することに、ペルさんも俺に合わせて眠ってみるらしい。

 指パッチン一つで俺の部屋を構築し整理整頓したのはさすがだった。

 外が明るいので室内を暗く設定してくれる、細やかな気遣いも嬉しい。

 王というよりもう神じゃね。ペルさん最高かみぃぃぃぃぃぃ!

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 サルガッソー生活、多分三日目。

 豪華な食事で栄養を補給しながら、しっかり休息をとって回復に努めた。

 体の調子が良くなってきたので、今日から修練を開始する。

 協力者のペルさんも一緒だ。今は砂浜ランニングしながら会話中。

 

「これ覇気じゃないんですか?」

「何て言うたらええんかな。元は一緒で性質が違うエネルギー?ワイは霊気って言うとる」

「プラスの覇気にマイナスの霊気ですか、奥が深い」

 

 生命力や熱く燃える感情を基にした覇気と、残留思念や負の感情を基にした霊気であってるかな。

 

「霊気言うたら、死者の魂やドロドロした醜い心の力やと思いがちやけど、ちょっと違うんやな。霊気の本質は願いの塊や、人や物、生死を問わず込められた強い思いは時に覇気を超える力となる」

「なるほど、死んだ人の恨みや誰かを憎む心は確かに強そうだ。それが悪目立ちしているってことなんですね」

 

 俺の世界では覇気が主流となっているが、事と次第によっては霊気に頼る必要もありそうだ。

 いや~ペルさんの話はためになるなあ。

 

「修練に付き合ってもらってすみませんね」

「ええよ。格闘術なんてワイもド素人やから楽しみやねん」

 

 ランニング後には組手をやる。

 さすが超越存在、素人というわりには動きは一流の武道家クラスだ、ルクスよりもいい動きしてない?

 ルクス、赤いオルゴナイトやラースエイレムに翻弄されたが近接戦闘では俺に分があったように感じる。

 出し惜しみか、舐めプか知らんがあいつに勝つチャンスはあったんだ!それを俺が台無しにした。

 あーくそっ!自分に腹が立って仕方がない。

 

「騎神拳か、修羅の使う機神拳のパラレル版かいな。あいつらも覇気がメインエネルギーやったな」

「そういえば、ペルさんは巨大ロボと戦ったんですよね。真の姿はやっぱりカッコイイロボなんですか?」

「ワイの形は相手によって変化するからな。あん時は確か・・こんなやったかな」

 

 大きさはそのままに、姿形だけ変化させてみるペルさん。

 なんだこれロボですらない。

 

「うわぁ!超キモイっすね」

「そうやろう。なんか手に変な顔のお面ついとるし、最強技も妙に不気味でなぁ。そらな、親父のボディが毎回地面にビターンッ!したらジョッシュ君も笑うで」

「よくわかりませんが、大変だったんですね」

「味方にすら「あれ何?痛そうw」とか笑われ、娘らしき子に「親父キモ」って言われて辛かったわぁ。BGMがトロンべに勝ったのだけが心の支えやった」

 

 ペルさんの人型はとある研究者の体を依り代にしたものの名残らしい。割と気に入っているので今も使っているのだとか。その研究者の息子さんにトドメを刺されるとは因果なものだ。

 人型に戻ったペルさんとの修練、興が乗ったので赤い海を泳いで遠くの島にまで行っちゃうぞ。

 近づくにつれてもう一つの島の全貌が見えてくる。

 

「瓦礫の山だ」

「上のゲートからあらゆる廃棄物が落ちてくるもんで、積もり積もって島になってしもうたんや」

 

 上陸完了。うは、本当にいろんなものがある。

 ド、ドリームキャスト!?まさか、湯川専務もここに・・・いたらダメだろ。

 PCエンジンやワンダースワンも見つけた。シロが見たら絶対喜ぶよ。

 

「家にある家具家電は全部ここのもんを再利用しとるんやで、エコやろ?」

「リサイクル業者の天国ですね。なんかヤバそうなものもゴロゴロしてますが」

 

 ハザードシンボルがついた機械器具が多い!核?核なの?あっちのはゾンビ化ウイルスなの?

 

「一応全部検閲済みや。ワイがちょちょいのちょいで無害化しとるからな」

「さすが!」

 

 瓦礫で出来た島の通称"瓦礫島"にある開けた場所に到着、ここは長い時間をかけてペルさんが整備した場所だ。

 見慣れた円形の物体が等間隔に並べられている。おお、30以上はあるぞ。

 

「どや?これだけ揃うと壮観やろ」

「これ・・全部クロスゲートなんですか!」

「全部機能停止状態やけどな。ワイの霊気では起動できへんねん、だがアンドウ君の覇気ならばあるいは」

「そうか、ゲートは覇気が起動キーになってるんだ。早速試してみます」

 

 ゲートの一つに近づき覇気を込めてみる。動け、動いてくれ!

 

『エネルギーの充填を確認、再起動・・・本機は破棄されたゲートになります』

 

 アナウンスが聞こえた!

 

「成功や!これでハッキリしたなゲートの起動には霊気だけではアカンのや、霊気2と覇気8ぐらいの割合でチャージせな動かへんねん」

「やった!これで元の世界に帰れるぞ」

 

『ナビゲーションを起動、付近に存在するゲートを確認、情報にアクセス・・・殆どが使用不可になっております』

 

 故障中なの?何とか修理できないのか。

 

『自己修復までの時間はゲート一つにつき、平均135年を・・・』

 

「長い!今動くヤツを教えてくれ」

 

『52番、66番、247番は転移先の宇宙が既に存在しません。現状で確実な転移先が見込めるものは』

 

「多分アレしかないやろ」

 

 ペルさんが指を差したのは一番奥に鎮座する一際巨大なゲート。

 

『ゲートナンバー777番、未開領域への転移可能。成功確率87%』

 

 未開領域?それってゲートを造った超文明連中でもよくわからん場所なのでは?

 

「アレをくぐるのか?なんか気乗りしないんだけど」

「ワイの感は絶対アレやと言うとるよ」

 

『未開領域に転移した後、もう一度ここ終着駅"ターミナル"にお越しください』

 

「なんやサルガッソーやなくて、ターミナル言うんが正式名称なんか」

「一旦別の世界に転移してまた戻ってこいだと?なんでそんな手間を」

 

『ご利用者様の生命維持のためです。未開領域で躯体を調整しなければ負荷により命の保証は致しかねます』

 

「負荷って何よ?」

「ああ、あれのことかいな。たまに来るデロデロの死骸」

「なんスかデロデロの死骸って、嫌な予感が」

「うーん。アンドウ君の知識で近い例えは・・・メイドインアビスの上昇負荷やな!」

「ミーティー!?いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 上昇負荷はマズいですよ!なれはてになったら愛バたちもドン引きされるわ!

 可愛い絵柄に残酷なグロ描写、でもなんか視聴しちゃうアニメなのぉ!ナナチをモフりたいのぉ!

 

「ゲート777番をお願いします」

 

『了承致しました。覇気の充填をお願いします』

 

 霊気の方は既にペルさんがチャージしてくれていたようだ。

 777ゲートに触れて覇気を注入~。いいかな、これでいいかな。

 

『充填完了。ゲート起動、5分後に転移を開始します』

 

 は?え、ちょ、何でいつも唐突なのよ。心の準備が・・・

 

「思い立ったら吉日や。覚悟決めて、行って来いやアンドウ君」

「行って来いって、ペルさんも一緒に行くんでしょ」

「ああ、その予定やったけど変更や。ワイはここに残る」

「どうしてですか!ずっと脱出したいと思っていたんですよね。大冒険するんでしょう」

「ワイは碌でもない廃棄物や、永遠に一人ぼっちでここに取り残されるままやと、それが破滅の王をやっとった自分に対する罰やと思うとった」

「ぺるさん・・・」

「せやけど、君におうてな、こんなワイでもやりたいことが・・夢ができたんや」

「夢、それは何ですか?」

「サルガッソーにはこれからも君みたいな奴が来る可能性がある。ワイはそんな連中のためにここを憩いの場所にしたい、かつて終着駅ターミナルと呼ばれた中継地を復活させるんや」

 

 ターミナルの復活、それがペルさんの夢。

 話している間にもゲートが動き出している。ペルさんの意思は固い、そんなもうお別れなのか。

 

「そんな顔せんといてや。こっちまで泣けてくるわ」(´Д⊂グスン

「ペルさん。もう、泣いてるじゃないですかぁ」(もらい泣き)

 

 たった三日間の付き合いだが濃密な時間だった。

 命を助けられて、いろんな事を教わった、楽しかった。孤独ではないことの幸せを再認識した。

 この出会いは必然だったと今なら言える。

 

「さあ、行くんやアンドウ君!新たな世界が君を待っとるで」

「はい!必ず戻って来ます。その時にはまたフラペチーノをご馳走してください」

 

『転移開始10秒前・・9・・8・・めんど・・5・・4、3、2、1、0。では、よい旅を』

 

「ちょ、なんか投げやりになったぁぁぁイテキマース!!」

「気いつけてなぁ。お土産話、楽しみにしとるでー」

 

 こうしてまたもや俺は転移したのだった。

 前から思ってたけど、ゲートのナビ造った奴ヤベェよな。

 

 マサキが転移した後、一人残ったペルフェクティオは首をゴキゴキと鳴らして伸びをする。

 

「行ったな。やれやれ、これでまたしばらく一人かいな」

 

 咄嗟に思いついたことを口走ったため目標が出来てしまった。

 まったく我ながらどうかしてる。破滅をもたらす存在が、何かを創造しようなどと・・・

 創造といえばワイが出した飯を美味い言うて食べとったな。

 人のために何かをしたのはアレが初体験だったのだ、誰かに喜ばれるというのは中々悪くない気分だった。

 

「そうか、ラキもウェントスも自分以外の誰かのためを望んだんやな」

 

 これから忙しくなるでー!やることは山ほどあるからな。

 まずは瓦礫島を整備して、各ゲートの修理もせな、うーん、やはり人手がほしいなぁ。

 

『ゲートオープン確認、上空より来訪者来ます』

 

 どうやらゲートのナビはこのまま使用できるようやな。

 警告通り、空の巨大ゲートが動き出している。

 

「来訪者か、廃棄物よりよっぽどええ呼び方やな」

 

 たった今からこんな所に来る大バカどもはみんな来訪者や、これ決定な。

 

「さて、物か生物か、ターミナル整備に役立つ人材なら文句なしやけど」

 

 そして、ペルフェクティオの願いは叶うことなった。

 

「キシャァァァーーー!!!?」

「うあぁぁぁ!なんやこのキモグロいのは!どう見てもエイリアンやんけ!」

 

 破滅の王ペルフェクティオ、宇宙破壊大帝ペコニャンと出会う。

 この日、瓦礫島は二人の戦闘によって3分の2が消滅した。

 何故か友情が芽生えた二人がターミナル建造し発展していくのは、また別の話。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 というわけでして、アンドウマサキ再びワープゾーンを流されております。

 

「なんか流れ早くない?激流川下りも霞むぐらいの勢いじゃない。ライフジャケットないんだけど」

 

 止まらない、そもそも止め方がわからないからどうしようもない。

 いつまで続くのだろうか、ゴールはまだ先でしょうか?

 

「未開領域だって言ってたな。恐竜がいるような時代ってこともありえるぞ」

 

 そもそも地球と似たような生態系だとは限らない。

 エイリアンのゼノモーフみたいなやつが潜んでいるかもしれん、まっさかぁwww

 とにかく警戒を怠らないようにしないと、この先の世界が天国かそれとも地獄なのかは行ってみないとわからない。

 

「ちゃんと話ができる人型生物がいますように、中世ヨーロッパ風世界で無能認定、迫害追放からの~真の実力無双で俺を見下した連中にざまぁしたです!」

 

 ギルドに冒険者として登録して、奴隷の女の子を買って、受付嬢と仲良くなって、エルフの姫を助ける位ならいけるんじゃね?やれやれ、目立ちたくないよぉスローライフしたいよぉと言いつつ派手に暴れちゃう。俺何かやっちゃいました?黙れドン太郎!!

 

「夢が広がるなあ・・・お、あそこがゴールか・・・飛び込めーーー!」

 

 出口っぽい渦が見えたので頭から堂々と突っ込んでみる。さあ、俺の冒険がはじま・・え?

 

「がばぼぼぼぼぼぼ」(まさかの水中!?)

 

 予想外だ!せめて空中なら覇気ガードで落下の衝撃を無効化することが出来たのに。

 待って・・これ、ヤバ・・・深いぞ・・息が・・・

 俺ってば田舎の山育ちなんですよねー、学校のプールでちょっとは泳いだけど得意というほどじゃない。

 ペルさんと赤い海を泳いだのだって平泳ぎでのんびり(ペルさんの絶対溺れない補助効果付与済み)だったから可能だったわけでね。

 いきなり水中に放り出されて即泳げなんて無理~!

 とにかく上、上を目指さないと酸素が息がヤバァァイ!

 うぇ・・バタ足してるのに全然進まない・・こうなったら!

 

 (発射するぞ、おるらぁぁぁぁぁぁ!!)

 

 口からブラスター発射!その勢いで一気に上を目指すのだ。気圧差で潜水病になりませんように。

 かくして作戦は上手くいった。俺の体は水中から飛び出し空中に放り出される。

 

 (青い空、さっきまでいたのは青い海。ここが未開領域)

 

 よかった。俺の世界と共通点が多い所だとみた。

 発射角度を調整する暇はなかったので高く上がり過ぎた。姿勢を制御して着地に備えないと。

 う、何だ?上に何かいるぞ。

 

「クケェェェェ!!!」

「おわぁぁぁぁぁぁ!なんだてめぇは!?」

 

 空を舞う大怪鳥!?俺が知ってる鷹や鳶を10倍以上の大きさにしたモンスターが急降下して来る。

 そのかぎ爪で何をする気ですか?ほうほう、俺はあなたのご飯ですかそうですか。

 冗談じゃねーぞ!

 ここは異世界、モンスターとの戦闘は望むところよ!やってやる!

 

「バスカーモード!行くぜぃってアレ・・・」

 

 覇気の出力が、嘘?こんな弱くなって・・サルガッソーでは特に問題なかったのに。

 この世界特有の縛りでも働いているのか?

 ヤバい!怪鳥の爪が俺の体をかすめる。浅いがダメージを受けた。

 奴の攻撃は覇気コートの上からでも十分俺を殺せる。

 バスカーモードが使えない今、着地にも不安が残るぞ。

 どうする、どうすればいい。

 

「ケェェェェ!」

「やかましい!飛べるからって偉そうに、そうだお前に乗ってやるよ」

 

 直接俺をついばむつもりだった怪鳥の攻撃を体をひねって回避する、そのまま奴の首に取り付いてしがみつく。

 

「今日からお前の名前はラーミアにする。さあ、ゆっくり丁寧に着地したまえ」

「クェ?クェェェェッェ!」

「暴れんな!暴れんなよ!うわわ、お、落ちるぅ」

「グェェ・・・カ・」ガクッ

「え、ちょ、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」

 

 やらかしたぁ!力を入れ過ぎてしまったため、ラーミアの首を絞め落としてしまった。

 落ちる落ちる落ちる!地面との距離まだ結構あるよ?この高度はアカンでしょ。

 出力の安定しない覇気コートでも無いよりましだか、コレで何とかなるか?激しく不安!

 初っ端からこれかよ!/(^o^)\ナンテコッタイ

 仕方ないからラーミアをクッションにしよう。先に仕掛けたのはそっちだからな、悪く思うなよ。

 クロ、シロ、アル、ココ、俺を導いてくれーーーー!

 

 空の上から見た未開拓領域・・・お城に塔に桜の木?ピラピッド?アレは巨大戦艦か?

 またとんでもない所に来たもんだ。

 

 森の木に突っ込んだところで凄まじい衝撃が走る。

 やっぱり覇気のコートが甘い、ダメージを殺しきれない・・・がはっ!

 枝や幹に散々体を打ち付けてから地面を転がる。

 頭を強く打ってしまったようで、仰向けに倒れた俺は起き上がることができない。

 ペルさん、どうやら前途多難なようです。

 クラクラする視界の中、聴覚がガサガサと揺れる草木の音を捉える。

 何かこっちに向かって来る。またモンスターだったどうしよう。

 おお、マサキよ。死んでしまうとは情けないとか言われちゃうのだろうか。

 足音、大きい、人間じゃない、ヤバいぞ最悪なことにモンスターっぽい。

 来た!もう俺を見下ろして・・・なん・・だと・・。

 

「・・・・」

「・・・は、はははは。何でお前がいるんだよ。もしかして、ここって天国だった?」

 

 そいつの姿を確認した俺は緊張の糸が切れたのか、またまたブラックアウトすることになる。

 最近、気絶が多い今日この頃です。

 あら、持ち上げられて運ばれてる?更に誰か来たような気がするが知らね。

 

 ♢♢♢

 

 その青年は森の中を走っていた。

 木々をかき分けながら疾駆する姿は修練を積んだ強者の動きだ。

 試運転中だった相棒が突如暴走し、何処かへ走り去ったのは数分前のことだ。

 仲間を置いて先行した自分は確実に目標の覇気を追跡している。

 また以前のような事件が起こらないとも限らない、逃がしてなるものか。

 

「見つけたぞ!」

 

 どうやら青年の心配は杞憂に終わったようだ。

 黒の巨体を誇る相棒は自分のいる方へと何事もなかったように戻って来た。

 

「何があったのだ?先程感じた大きな覇気に関係が・・待て、何を持っている?」

「・・・・」

 

 物言わぬ機体は片腕に何かを持っていた。それは傷ついた人の体。

 

「人だと!?もし!しっかりしてください。今お助けしますから、お気を確かに!」

「あ・・ア・・なんで・・」

「喋ってはいけない!酷いケガだ・・・ハーケン殿たちに連絡せねば」

「なんで・・・アルクオンが・・バラバラにした・・はず・・」

「アルクオンを知っている?あなたは一体」

 

 傷だらけの男は気を失ってしまったようだ。

 羅刹機の存在を知っている人は多かれど、アルクオンという名称を知っている人物は顔見知り以外にいないはず。それにバラバラにしたとは何の事だ。

 

「お前はこの方を存じているのか?」

「・・・・」

 

 アルクオンは答えないがその瞳はじっと気絶した男を見ている。

 そこで青年は気付く、男の覇気とそれを生み出す神核が尋常ではないことに。

 

「消耗しているが、なんだこの覇気は!微量だがアインストの気配すらある」

「アレディ?そこにいるのアレディ」

「ネージュ姫様、こちらです!」

「いたいた。アルクオン、見つかったのね・・・てっ!?どうしたのその人、ケガしてるじゃない」

「私にも何がなんだか、とにかく治療をしなければ」

「いいわ。ツァイト・クロコディールが近くまで来てるからドっ早く運びましょう」

「はっ!先行しろアルクオン。邪魔するものは蹴散らして行け」

 

 アレディと呼ばれた青年は男の体を抱える、そして理解した。

 何度も修練を行ったもの特有の体つき、体の傷は今しがたついたものだけでなく過去の戦闘にて刻まれたものが多数ある。

 この男は、壮絶な命のやり取りを経験し生き残った者に間違いない。

 

「この方も、もしかしたら修羅なのかもしれません」

「そうかしら?そんな風には見えないけど」

「では、ネージュ姫様はなんと考えますか」

「そうね。ロリコンを貫いてここまでやって来たド阿呆かしら」

「ロリ?なんですと」

 

 ♢♢♢

 

 また知らない天井かよ。

 生きているようで安心したが、こう何度も何度も気絶してたら癖になっちゃいそう。

 

「フカフカのベッド、手厚い待遇を受けているようだな」

 

 見慣れない部屋だ。なんだかサトノ家所有ヒリュウ改の船室に似た近未来的な造りをしている。

 どうすっかな、勝手に出て行くのはよくないかも。

 今後の行動を悩んでいると、電子ロックが解除され一人の男が入室してくる。

 

「起きたかい、アンノウンボーイ」

「ボーイって年でもないが、助けてくれたようで感謝するよカウボーイ」

 

 男は珍妙な恰好をしていた。

 黒い鍔広帽子にロングコート、腰には見たことがないカスタム銃を携えている。

 カウボーイだ、カウボーイのコスプレしたイケメンがおる。

 

「アレだけのケガをもう治したのか、タフな男だ」

「回復力には自信があるのよ」

「俺の名はハーケン。ハーケン・ブロウニングだ。賞金稼ぎ兼、今いるここ陸上戦艦ツァイト・クロコディール2代目艦長をしている」

「なんかカッケー!俺はアンドウマサキ。クロスゲートを通ってやって来た者だ。俺は自分の世界に帰らなければならない、ここへはその途中に寄ったって訳」

「オッケー、アンタの事情は理解した。ここには似たような連中がわんさか訪れるから慣れたもんさ」

「そうなん。なら話が早い、ここで体を慣らしてペルさんの所に戻らなければ」

「焦るなよ。まずはマサキが来たことを歓迎するぜ」

 

 いい人みたいだけど、少々キザなのね。

 ここの住人はみんなこんな人たちなのだろうか?それはそれで面白い。

 

「ようこそエトランゼ、ここは無限の交わる場所エンドレスフロンティア。楽しんでいってくれ」

「エンドレスフロンティア・・・無限の開拓地」

 

 未開領域だったのは昔の話みたい、開拓されとるやないかい!

 こうして俺たちの世界は交わった。それってどんなプロジェクトクロスゾーン?

 

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