俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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こいつエロいぞ!

 ずっと仮契約だったアルと正式に契約を結ぶことになりました。

 はい、緊張してます。

 

「お邪魔虫はいなくなったみたいですね。これで心置きなく契約できます」

「なあ、隣の部屋から物音しなかった?・・おかしいな、確か空き家のはず」

「幽霊かもしれませんね」

「や、やめろよ。そんなので俺をビビらせようだなんて、効果抜群なんだからね!」ガクブル

「ご安心ください。マサキさんを害する者は、例え幽霊だろうと蹴り倒してみせます」

「やだっ、カッコイイ////」ポッ

 

 なによ男前じゃないの。漢女とかいて「おとめ」と読んでしまうわよ。

 

 いよいよ契約だ、その前に筋は通しておかないと。

 仰向けに寝ていた体を起こし(大の字になっていた意味なし)ベッドの上に正座する。

 佇まいを直した俺に同調するようにアルも対面にちょこんと正座した。

 はい、カワイイ!身のこなしが一々カワイイよ!

 この子、俺の愛バ(仮)です。今から(仮)が外れるんですよ、エヘヘ。

 

 正座して向かい合い見つめ合う。これこそが、お見合い・・・ゴクリッ。

 

「メジロアルダン。俺と契約して正式な愛バになってくれないか」

 

 毎度のことだが、魔法少女を勧誘するインキュベータ―みたいなセリフだ。

 

「その契約、謹んでお受けいたします。私はあなた様の愛バとして共に歩むことを誓いましょう」

「凄く嬉しい」

「私の方が嬉しいですよ」

 

 誓いの言葉が告げられる。様付してくれるからゾクゾクしちゃう。

 

「アンドウマサキ様。どうか、私と契約して唯一無二の操者となってください」

 

 今度はアルからの申し出、言葉の応酬を重ね互いの意思を確認していく。

 

「答えはもちろんイエスだ。俺は君の操者になる。これからも仲良くやっていこう」

「はい。誠心誠意お仕えさせていただきます」

「そう硬くならず、ゆるくまったりでいいからな」

「わかりました。ゆるりと参りますね」

 

 さあ、ここからだ。

 マサキ、今から吸血されちゃうのー!

 

「それで、どこから吸う?」

「やはり頬っぺたから頂こうかと」

 

 アルがこちらの右頬に手を伸ばす。逃げたらアカン、ここは彼女の好きなようにさせてやろう。

 細くしなやかな指が俺の頬を撫で回す。ああ~くすぐったい、ゴロニャーゴ。

 

「チクッとしますよ」

「ひょ?」

 

 覇気を込めた爪で頬の皮を浅く裂かれた。下手なナイフよりいい切れ味ですね。

 ダメージ0.2ぐらいで痛みはほぼ無し。

 血はちゃんと出ている、お布団に血痕が!事件現場みたいだよぅ。

 

「勿体ないです。あ・・む・」指チュパ

「うわ、エロ。エッッッロッッッ!!」

 

 指に着いた血を舐めとるアルがエロい!俺の愛バ全員エロいです、最高です!

 

「直にいきます」

 

 顔を近づけるアル、フワッと鼻腔をくすぐる良い匂い。

 最初は頬に軽くキス、そこから流れる血を舌で丁寧に舐めたり吸われたりする。

 もうレロレロチュパチュパですよ!水音がエロい!吐息もエロい!

 夢中で頬をチュパるアル。例にもれず興奮状態になってしまったようだ。

 

「う、なんかくすぐったい」

「もう少し・・チュッ・・お願いします・・ん・・・」

「大丈夫、逃げたりしない」

 

 正確には逃げられない。本能で俺の体をがっちりホールドしていらっしゃる。

 契約時のウマ娘はみんな肉食系なのね。よいぞよいぞ、美味しく召し上がれ~。

 慣れたもんで儀式もそろそろ終わりだろうというのが、何となくわかる。

 

 

 ・・・こんな幸せが訪れるなんて、あの頃は夢にも思いませんでした・・・

 

 ・・・あなたに出会ったあの日から、ずっと幸せなんですよ・・・

 

 ・・・だけど、困ったことになりました。抑えが効かない・・・

 

 ・・・いけないことなのに。願ってしまう、望んでしまう・・・

 

 ・・・もっと欲しい!もっと強く、もっといっぱい、もっともっともっと・・・

 

 ・・・浅ましくて我儘で欲張りで恥知らず。これが私です・・・

 

 ・・・それでも、一緒にいることを許してくださいますか?・・・

 

 (許すも何もないんだがな)

 

 (お前たちは何でこう、変なところで自分に厳しいんだよ)

 

 (頼りないかもしれないが、少しは寄りかかってくれていいんだぜ)

 

 (俺だけで不安ならクロもシロもココもいる。もう全力でおぶさってやれ)

 

 (持ちつ持たれつだ。みんなで支えあっていこう、それって凄く幸せじゃね?)

 

 (結論!アルは俺たちとずっと一緒にバカやってりゃいいんだよ)

 

 ・・・嬉しい嬉しい嬉しい・・・

 

 ・・・あなたこそ私の操者、私たちの王、身も心も魂も、私の全てを捧げます・・・

 

 (照れるな////)

 

 ・・・私、もっと幸せになりたい。あなたを幸せにしたい・・・

 

 (俺も同じ気持ちだ)

 

 ・・・約束ですよ・・・もっとずっと、最高に幸せになりましょう・・・

 

 ・・・誰一人欠けることなく、みんなで・・・

 

 (ああ、みんなでハッピーになろうな!)

 

 これにて契約完了!でいいよな。

 

 痛みも無く、気絶することもなく契約は無事完了した。

 俺の頬から口を離したアルは冷静になったのか、青くなったり真っ赤になったり顔色をコロコロ変えた後、しばらく土下座をしていた。

 復活したアルは俺の頬っぺたを濡れタオルで拭ってから丁寧に絆創膏を貼ってくれた。

 

「やはり消毒しておきます?」

「いいよ。こんな傷すぐに完治するさ」

「マサキさんの頬をベッチョベチョの唾液まみれにするなんて、なんという無礼千万!もう切腹した方がいいですか?」

「だから気にしなくていいって、アルにベッチョベチョにされるなんて本望さ」

「このままでは私の気が済みません!そうです、今からマサキさんが私をベッチョベチョにしてくだされば解決なのでは」

「ほう。ベッチョベチョになりたいと申すか」

「はい、それはもう。ベッチョベチョのグッチョグチョにしてくださって結構です!」

 

 なんだこの会話wベッチョベチョ言い過ぎや!

 

「ベッチョベチョは置いといて腹が減ったな」

「契約完了祝いです。今日は腕によりをかけて料理しますね」

「そいつは楽しみだ。そんじゃまあ、買い物行くか」

「お供します。ですが、その前に確認したいことがあります」

「何、遠慮せずに言ってみ」

「夕飯の後はいかがなさいますか?」

「風呂入って寝る」

「え、そ、それだけですか?」

「心配せずとも、アルは飯食った後にキチンと寮まで送っていく」

「そうではなくて!もう、察してください。今日は帰りたくないんです」

「ほぇ?」

「私・今日は・帰りたく・ないんですぅ!」

 

 帰りたくないだと?

 部屋にGが出たとか、汚部屋の中に足の踏み場がないとか、鍵を無くしたとか、ゴルシに不法占拠されたとかじゃないようだ。

 であるならば・・・・

 

「お嬢様、お泊りコースをご希望でございますでしょうか!?」

「はい////」

 

 照れながらもしっかり頷くのを確認。

 ほうほう、ほうほうほう、意外・・でもないか、俺の愛バは攻める時は攻める子です。

 

 部屋の隅にあるクローゼットとタンスをチラッと見る。

 いつの間にか設置されたそれには俺の衣服ではなく、愛バ(通い妻)たち4人の衣服が入っている。

 他の部屋にも歯ブラシやらお気に入りの私物やらが日に日に増えてきましてね。

 へへ、ここ俺が借りてる家なのに女の子の匂いがするんだぜ。

 やだー!お泊りの準備万端じゃないですかー!

 ホントは全然いやではないわー!同棲してるみたいでメッチャ嬉しいわー!

 でも、フルフロンタルフィギュア(下半身キャストオフ可能)はいらないわーwww

 

「あの全裸男、誰が持って来たんだ?」

「シロさんがクレーンゲームでゲットしたのですよ。下半身のアレにちょうどクレーンの爪が引っ掛かりまして」

「いだだだだwwサイコシャードが発動しちゃうw」

 

 なんか可哀そうになってきたので捨てずに飾っておこう。

 

「お泊りは・・ダメ、ですか?」

「ダメじゃないけど。体の方は大丈夫か?契約の反動で一気に疲れが来るパターンもあるし」

「それが全く問題ありません。すこぶる快調でピンピンしてるというか元気が有り余ってます。マサキさんはお疲れですか?」

「いや、俺もなんか元気だ」

「私、調子に乗って吸血し過ぎましたか!?もう自害した方がいいですか!!」

「せんでいい!」

 

 契約の反動にも個人差があるのかね。

 今回、痛みは無かったし気絶もしなかった。

 疲労より空腹の方が強い。三大欲求が高まっている感じはするな。

 

「ガッツリ飯食って風呂入って爆睡だな」

「そんな、寝る前にやることやりましょうよ。そんな淡泊でこの先どうするんですか!」

「アッサリ風味の俺は嫌いか?」

「嫌いなわけないです!でもでも、今日はこってり濃厚なマサキさんがいいんです!」

「ネッチョリ?」

「ドッロドロのネッチョリです」

 

 さっきからアルの使う擬音がおかしい。

 どうしたもんかねと考えていると、背後からギュっと抱き着かれる。

 いつも以上に積極的・・・まさかこれ、契約の反動で発情しているのでは?

 それともただ単にアルがエロいだけか。

 

「マ・サ・キさん」

「密着されると幸せ、でも動きずらい」

「メジロの女に伝わる秘伝、試してみたいと思いませんか?」

「料理の?」

「エロのです」

「ハッキリ言うねwまあ、興味がないと言えば嘘になる」

「今の私、何だかおかしいですよね。ですが、このままの勢いでアレやらコレやら、やってしまいたいです」

「ど、ど、どんなことをする気だ。参考までに教えて欲しいかな、なんて」

「クスクスッ、例えば・・・あーんなことや・・こんなことも・・それから」

「なぁっ!なんだとぉぉぉーーー!」

 

 耳元で囁かれる奥義の数々を想像した俺は生唾を飲み込む。

 アレでコレでそれを!?この子がしてくれるだと・・・

 この綺麗で可愛くて穢れを知らない無垢で清楚なお嬢と思ったらドスケベがぁぁ!

 ええぞええぞ!そういうの大変いいと思います!!

 

「どうします?ご休憩コースで満足・・・できますか」

お泊りコースでお願いします!!!

「はい♪一名様ご予約承りました」

 

 ルンルン気分で買い物にレッツらゴー!

 制服着た生徒と仲良くショッピングしても皆「今日も仲がいいのね」で済ませてくれる。

 ご近所さんは空気の読めるいい人ばかりだ。

 人心掌握に優れた見目麗しい愛バたちによる、十分な根回しが功を奏した結果だ。

 こういうところはさすが御三家令嬢だなと常々思う。

 俺と愛バたちの関係は周知の事実ってことです。

 好きな女を連れて夕飯の買い出し、とても幸せやん。

 

 夕飯には麻婆カレーの他に牡蠣や鰻にアボガドを使った料理がずらりと並んだ。

 俺も手伝ったけどアルの手際の良さには感動しっぱなしだった。

 いい嫁になると言ったら「いい旦那様に釣り合うように頑張ります」と返された。

 ホント攻めるなぁ。

 

 いただきますして夕飯タイム。

 いや、マムシドリンクは遠慮し・・・スッポンドリンクならいいわけじゃねーよ。

 なんか恐ぇよ、どんだけ精をつけさせたいんだよ。

 美味しいからいいけどさぁ。納豆にオクラ・・ネバネバしたのも多いな。

 

「今、懐から何出した?酒だな!酒なんだな!」

「健康飲料メジロ水ですよ。これを飲まないと1日が終われません」

 

 気のせいかな?メジロ印のラベルが剥がれかけた瓶には別の文字が刻まれたラベルが。

 えーと、ス、スピ、スピリ・・タス!?

 

「メジロ水です」

「アッハイ」

「マサキさんは絶対、ぜーったいに飲んじゃダメです。冗談抜きで死んでしまいますから」

「あらやだ怖い」

「ああ~効くぅー、今日も最高に美味しいです」

「操者からのお願い。肝臓大事にしてあげてよぅ」

「その辺は心得ております。手足が震える前には止めますから」

 

 クロたちが言っていた「アル中のアル」とはこのことかいな。

 いざとなったら病院に放り込むとココが息巻いていたが、大丈夫だよね。

 

 メジロ水でほろ酔いのアルは妙に色っぽいが、タガが更に外れた感マシマシ。

 食後の風呂は一人づつ交互に入り、先に上がった俺はベッドで仰向けになりウトウトしていた。

 はう~、腹も膨れて体温もいい感じ、このまま眠りたいんじゃぁ~。

 

「ダメですよ、マサキさん」

「ん・・お・・・アル。上がったのか・・・」

「仕方ない人、これは私に対する挑戦と受け取ります」

「アル、今日はもう寝ようぜ」

「夜はこれからですよ。眠気なんて吹き飛ばしてあげます」

 

 あらあら、掛け布団のつもりかしら。

 マウントポジションから俺に覆い被さって・・濃厚なチューをされちゃいました。

 そのままキスの嵐が下の方へと!?

 

「よし起きた!起きたからぁ!心の準備だけさせて」

「こっちは朝からずっと我慢していたんです。もう誰にも止められません♪」

「キャー!アルさんのエッチ!ドスケベサキュバス!愛してるぞ・・・おほぉ!?」

「私も愛してますよ。フフッ、ここが弱いんですね」

「ひぎぃ!待って、そこはぁぁぁんん」

 

 しまったぁ!マムシでもスッポンでもいいから飲んどくべきだったぁ!

 干からびた俺の死体が発見されでもしたら大変なことになる!

 死に方としては悪くないと思った。けど、やっぱり死にたくない。

 そうこう言ってる間にもアルがアレしてコレして、何?何が起こっているの?

 もうわけがわからないよ。

 

「マサキさん可愛い・・・感度3000倍にしてあげますね」

「う、うわあぁぁぁすんげぇぇぇーーー!マジどうなってんだコレ!?」

 

 なんという超絶技巧!このマサキ、心底感服いたしましたぞ!

 

「あ、あ、ああ、うひぃ、それヤバ、もムリ・・・アッーーーーーーー!!!

 

 たっぷり弄ばれちゃった////(/ω\)イヤン

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「スー・・・スー・・・」

 

 規則正しい寝息が聞こえる。

 掛け布団と化したアルが俺の体にしがみつくように寝ているのだ。

 こんな男の胸板を枕にして楽しいですか?

 おぱーいやらアレコレ当たってる俺は楽しい嬉しい、思わずニッコリです。

 

「幸せそうな寝顔しちゃってまあ」

 

 昨夜はあれだけ暴れたのに、こうなると年相応の美少女だ。

 外からスズメの鳴き声がする。

 朝チュンタイムと言うことは朝6時前後か、アルが起きるまでもう少し寝ていよう。

 指通りのいいアルの髪を撫でながら二度寝する俺に、フルフロンタルフィギュアが優しい眼差しを向けていた。

 見てんじゃねーよ。後で飾る場所を変えようと思った。

 

 ♢♢♢

 

「それで、寮に帰ると不法侵入したシロさんたち3人が私の部屋でお釈迦様ばりの座禅を組んでいたんです」

「なにそれ怖い」

「唖然と立ちすくむ私を見た彼女たちは、薄ら笑いを浮かべてこう言いました」

 

 もう大体想像できるよ。

 

「「昨夜はお楽しみでしたね」と・・・暇なのでしょうか?」

「アホなんだろうな」

「ムカついたので鼻で笑って見下すと「か、勝ったと思うなよ!」と捨て台詞を吐いて逃げ出しました」

「強くなったなアル」

「もう正式な愛バですから、いつまでも嘗められたままじゃいられません」

 

 その3人は俺の所に逃げて泣き喚いたから大変だったんだぞ。

 一夫多妻のギネスでは確か妻が130人、子供が203人の93歳男性がいたらしい。

 そう考えると4人の愛バで右往左往している俺はまだまだだな。

 

 アルの正式契約が終わって数日後。

 医務室にて行われた健康診断はどの数値もいたって良好。

 反動も出ていないし他の愛バにも悪影響は無し、今は5人の間で上手く覇気循環出来ている。

 今後も油断せず定期的なチェックは行うが、ひとまずは安心していいだろう。

 

「もういいぞアル」

「???」

「首を傾げてないで服を着なさい」

「あの、医務室ですよ?今二人きりですよ?」

「それが何か?いいから、サッサと服着ろ」

「こんな絶好のシチュエーションを逃すなんて!もしかして、焦らしプレイしてます?」

「してねーよ!ここ学園!俺仕事中!いくら両想いでも節度守るべし!」

「ダメですか?」

「上目づかいカワイイ!けどダメ!気持ちは非常に嬉しいが時と場所をわきまえなさい」

「わかりました。我慢して我慢して、解放した方が燃え上がりますよね」

「ああうん。もうそれでいいや」

 

 あの日から一皮剥けたというか、頭のネジが外れたアルであった。

 それに釣られて他の愛バも・・・だめだ、あいつら既にネジを止める穴が無い!

 

「誰か来ます」

「察知早いなってコラ、なんで机の下に潜り込もうとする?」

「周囲に悟られないように行うスリルと興奮。これも鉄板のシチュですよね」

「なんか最近、シロみたいになったな」

「またまたご冗談を、あそこまで堕ちてません・・よね?」

「五十歩百歩だな」

「私、シロさんと同レベルなんですか!?ちょっと心療内科に行ってきます」

「そこまでするほどか!」

 

 愛バたちの間でシロがどういう扱いを受けているか心配になってきた。

 あいつ滅茶苦茶頭いいのになぁ。バカと天才は紙一重を地でいく存在、それがシロだ。

 たまにビックリさせられることはあるけど、カワイイ奴なんですよ。

 

「マサキいる?よし、いたね」

「ノックぐらいしてもバチは当たらんよ」

「あら、ごきげんようシチーさん」

「アルダン?あー、もしかして取り込み中だった?」

「取り込む気満々だったのですが、マサキさんが素直になれなくて」

「アル、お口チャック」

「はい」

 

 医務室の扉を勢いよく開け放ったのは、ゴールドシチーだった。

 現役モデルと騎神の両立お疲れ様~。この前、雑誌で見た写真カッコ良かったぞ。

 

「で、何用?医務室はサボり魔たちの避難所じゃないと言ってるのに」

「今日はちがーう。ケガ人が出たの、訓練中にケガした子がいて」

「それを早く言わんかい!俺の患者様は何処だぁ!」

「張り切るマサキさん、可愛いです」

「連れてきてるから、さあ入って」

「し、失礼しますぅ」

「何回見ても白衣似合わねーしwヤブの匂いするし」

「へぇ、医務室ってこんな感じなん。ウケるw」

 

 最初に入って来たのは足を怪我したのか、肩を借りて歩く生徒(モブ)この子が俺のクランケ(患者)か。

 患者だけでなく心配そうに付き添う生徒たちもゾロゾロと入室して来た。

 医務室のキャパオーバーしているので数人を残して、後は外で待機してもらうことにした。

 

「これぐらい大したことないのに。もう、なんで今日に限ってウエンディ教官いないの」

「まあまあ、マサキはちゃんと資格は持ってるし、噂の半分はデマだから」

「半分は真実ってことじゃない。ヒーラーなのも嘘なんじゃ・・・」

「そったらこと言うもんじゃねぇよ。マサキさんの手当は天下一品だべ」

「ユッキー、フォローありがとう」

 

 付き添いの中に見知った顔がチラホラしてる。

 その中の一人、ユキノビジンが患者を励ましながら俺をフォローしてくれる。

 

 ユキノビジン

 雪国出身で都会オサレ女子に憧れるウマ娘。訛りがとてもカワイイ!

 スぺとはまた違った魅力のある純朴田舎娘ええぞ!

 シチーを筆頭に学園所属のギャルウマたちに可愛がられている様子だ。

 例の旅の途中、雪山で遭難した彼女を救助するべく行動して、二重遭難したのが出会いだったな。

 あの時はかまくらを作ったり、やけくそ雪合戦をして救助隊が来るまでしのいだっけか。

 

「組手中にちょっと捻っただけで、こんなの放っておけば治る」

「いいから、まずは患部を見せてくれ。ふむ、ちと腫れてる。触るぞ」

「いたッ!?」

「悪いが我慢して、ここはどうだ?こっちは・・・」

 

 触診と同時に覇気の流れ具合もチェック・・・これはただの捻挫じゃないぞ。

 

「飯ちゃんと食ってるか?最近、睡眠時間も足りてないだろ」

「え、何でわかるの」

「疲労が蓄積した結果、なるべくしてなったケガだな。覇気の流れも滞ってる」

 

 前にテイオーが無理していた時とよく似た症例だと判明。

 

「今回は捻挫ですんだが、下手をすれば疲労骨折もあり得たぞ」

「そ、そうだったんだ。ホント参ったな」

 

 足は騎神の商売道具であり、主武装であり、アピールポイントだから大事にしないとな。

 強い脚力こそがウマ娘の持ち味だ(腕力が弱いとは言ってない)

 

「じゃあ治療を開始する。じっとしてて」

「え、もう、うわ、すご!?」

 

 手のひらに覇気を集中して腫れた患部を手当していく、ウマ娘の生足を趣味で撫で回してるわけじゃないのです。

 

「手つきがやらしーし。存在がやらしーしww」

「何なんそれwwメッチャ光ってるんですけどーwwマジヤバたんw」

「そこのギャルウマ二人、邪魔だから出ていけ」

「怒んなし、ちょっとした冗談なのわかれ」

「ジョーダンだけにww」

「それなw」

「あはははははははwww」

「シチー、死人が出る前になんとかしろ」

「はいはい、二人ともちょっと黙ろう。アルダンの殺気わかるっしょ」

「「すみませんでしたマサキ教官殿!どうか殺さないでください」」

「わかればよろしい。アルも抑えて、ミニスパークやめなさい」

「お優しいマサキさんに感謝してくださいね」

「「かしこまり!!」」

 

 笑顔のアルを前に震えながら謝罪するギャル2名。

 ダイタクヘリオスとトーセンジョーダン、一見チャランポランだがトレセンに入る実力がある以上そんじょそこらのギャルとは違う、戦闘能力を有した強ギャルだ。

 

 この二人との出会いもひと悶着あったな。

 電車で移動中に痴漢冤罪容疑をかけられ涙目の俺。

 偶然居合わせたヘリオスとジョーダンが哀れに思ったのか、目撃証言と弁護をしてくれて容疑は晴れたのだった。

 

 ダイタクヘリオス

 笑顔の絶えない元気娘でパリピ。「ウェーイ!」系のノリはよくわからんが、いい子だと思う。

 ギャル語?を多用し、ゴルシ以上に何言ってるかわかんない時がある。

 確かメジロのパー子とも仲いいんだっけか。

 

 トウセンジョーダン

 ネイルをバッチリ決めたパッチリお目目の子。爪は女の命なんだそうだ。

 この子もね、見た目や態度こそはギャルだが、さり気ない気遣いのできるいい子なんだよ。

 何故かゴルシによく絡まれている。

 

 二人とも冤罪女にマジギレして、情けない俺のために怒ってくれた。

 当事者の俺を放置して罵声を浴びせ合う姿はちょっと怖かったけど・・・

 あの時、ギャルも捨てたもんじゃないと思わせてくれたのが彼女たちなんだ。

 最初「うわ!DQNかよ」とか思ってゴメン。

 因みに、自称被害女性は示談金目当てで冤罪をでっち上げる常習犯であり、自分が呼んだ警察にお持ち帰りされていた。ざまぁぁぁぁぁwww

 

 その二人がアルのデススマイルに怯えておる。調子に乗り過ぎたな

 

 (雷様がいるなんて聞いてないし)

 (ウェイウェイウェーイwうちら完全に目ぇつけられたーww)

 (シッチ―とユキノン、他人のフリしてんじゃんwおせーよw)

 (ヤバwカミナリ様マジ怖すぎ、リアルに泣きそうww)

 (こんなん後三体抱えてるとかwマサキもクッソヤベェーし)

 (マジそれなwww)

 

 (反省が足りないみたいですね)(#^ω^)ピキピキ

 

 ((うはっw雷様激おこwww))

 

 アルとギャル(アホ)二人が無言のまま目線だけで何やら会話しているが、放って置く。

 シチー、ヘリオス、ジョーダンのギャル系3人が一か所に集まると、なんか気後れするのは俺だけか。

 興味のないライブハウスに連れて行かれたような、下戸なのに酒豪だらけの宴席に招待されたような気がするんだよなぁ。ツラたん(´;ω;`)

 こういうとき純朴田舎少女のユキノがよい中和剤になって・・だめだこの子、ギャルを信奉してる。

 ギャルが嫌いなわけではない、俺の陰キャ魂が「ウェーイ」に拒絶反応をしてしているのだ!

 はい、どうでもいいですね。

 

 何考えてんだ俺、そんなことよりヒーリングに集中集中。

 

「どうかな?」

「嘘みたい、痛みが消えた」

「これぐらいでいいだろう。何事もやりすぎはよくない、それは修練にも言えることだ」

「全部お見通しか・・・私、先月の試験結果がよくなくて、どうにかしなくちゃって、それで・・・」

 

 ポツリポツリと胸の内を吐き出す患者、カウンセリングは専門外だけど親身になって話を聞いてあげることはできる。

 トレセン学園は入学するのも一苦労だが在籍してからも大変だ。

 完全実力主義の上に回りは全国から選りすぐられた怪物の如き力を持った者だらけ。

 その中で結果を出し続けることは並大抵のことではないだろう。

 彼女のように悩み葛藤し、オーバーワークをした結果にケガをしてしまう子も珍しくはない。

 うんうん、わかるよ。

 

「凄げぇ奴が近くにいると焦るんだよな。おいて行かれた、自分はこのままでいいのかって、な」

「教官にもそんな経験が?」

「俺の幼馴染に「貴様嫌味かっ!」て位の男がいるんだ。イケメンで博士号持ってる天才で大企業のトップやってる癖に操者で愛バいて、仕事もプライベートも満喫してるって奴がな!」

「そんなパーフェクトヒューマン相手にどう対処したの?」

「結局、俺は俺でしかない。一人でヤキモキして自分を追い込んでもしゃーなしだなって思うことにしたら楽になった。要は気の持ちよう・・・フッ、人生なんて所詮気分次第なのかもな」

「「「キモwww」」」

「DOQギャルどもは黙れ」

「そうです!マサキさん、とても良いことを仰いましたのに」

「あはは、そっか、気の持ちようだね。うん、私一人でテンパってたみたい」

 

 頑張ってたんだよな。えらいえらい。労いの意味を込めて頭を軽く撫でてやる。

 トレセンはただでさえ無茶苦茶な環境だ。

 同じ魔窟で苦楽を共にする仲間や教官に、愚痴なり相談なりぶちまけることをお勧めする。

 頑張ることはいいことだ。でも、頑張れなくなるまで自分を追い込んだらアカン。

 君を心配してこれだけの生徒がここに集まってる、1人じゃない、そのことを忘れないで。

 口に出すとまた「キモ」って言われるので覇気を通して伝えた。伝わったかな?

 

 治療を施した箇所にテーピングを巻いて終了。これでよし。

 ここ最近、修練後の愛バの他には鼻血出したマチタンと鼻血吹いたデジタルと鼻血垂らした姉さんぐらしかヒーリングしていなかったけど、無事に成し遂げたぜ。

 鼻血ばっかじゃねーか!もう耳鼻科行けよ。鼻粘膜はデリケートだから気をつけなはれや。

 

「全治一週間だな。急な運動はせず、二、三日は安静にしておくこと。一応、湿布出しておくけど、痛みが酷いようならまたここに来い」

「はい、ありがとうございました」

「「「「「おお~」」」」」パチパチパチパチ

 

 一連の治療風景を見守っていた連中から拍手が起こる。大袈裟な!恥ずかしいじゃないの。

 外で待機していた生徒たちも途中から中の様子をバッチリ見ていたようだ。

 

「マサキさん。お医者様みたいだったべ~」

「そう?俺ちゃんと医療関係者らしく振舞えてた」

「はい!さすが私の操者です。メジロの主治医も太鼓判を押してくれますわ」

「よせやい///」

「てれんなてれんな!実際大したもんだったし」

「ウェーイよくやったマサキン!ハイタッチしよ、ハイタッチウェーイ!」

「う、ウェーイ」

「ここに連れてきて正解だった。アタシの目に狂いはなかったってこと」

 

 やった!ワイはやったで!養護教官としてまともな仕事ができたんや。

 

「マサキ教官がいてくれてよかったです。本当にありがとうございました」

「ああ、お大事に」

 

 ヒーリングを施した生徒はスッキリとした表情で医務室を後にした。

 肩を貸してくれる友人たちと仲良く談笑している姿を見て、もう大丈夫だなと思う。

 

「お、お、おだ、おだいじに~」(´;ω;`)ブワッ

「「「何で泣く!?」」」

 

 うるさいな。知り合い以外の治療が出来た上に感謝までされて、感極まったんですー!

 

「素敵でしたよ、マサキさん」

「アル~。俺、養護教官としてやっていけそう。これからも頑張るよ」

「はい、応援してます」

「うっわ!アタシら無視してイチャつき始めたし」

「はわ~、これが都会っ子の余裕だべか。たまげたな~」

「ヤババw二人の世界ヤバババww」

「このままおっぱじめそうな雰囲気なんだけど、止めた方がいいのかな」

「君らもう帰ってくれる」

「そうです。私たちは今から軽めの運動するんで出て行ってください、ほらはよ」

「アルも教室に戻ろうな」

 

 アルを含むウマ娘たちを医務室から追い出し一息つく。

 あれがとうございましたか・・・お礼、感謝の言葉、言われて凄く嬉しい。

 よし!やる気が出て来た。書類仕事もガンガン片付けちゃうぞ。

 

「すみません、マサキさん!急患なんです」

「どうしたカフェ!急患とは穏やかじゃないな」

「それが、タキオンさんが七色の鼻血を噴射して」

「耳鼻科行け」

 

 せっかくいい気分だったのに、自分を実験体にしたアホにヒーリングするハメになった。

 何なのかねコレは、カフェには悪いがやる気がでんよ!

 マチタン流のティッシュでも詰めとけばいいか、えい、えい、むん!!

 はい終了ーはい解散ー!

 

 この日以降、医務室を訪れる生徒の数は目に見えて増加した。

 学園内でそこそこの影響力を持つギャル連中をはじめ、今日の治療風景を見ていた者たちの口コミによりマサキの評価が上昇したためだ。

 そんなことはつゆ知らず、マサキは忙しく充実した日々を送るのだった。

 

 ♦♦♦

 

 某掲示板の養護教官スレでは概ね好評な意見で溢れている。

 

 『ヤバすぎる、ヒーリング超キモチいいんですけど!』

 『本当に丁寧にやってくれる。優しくて話も面白い』

 『あのヒーリングが普通だと思わない方がいい』

 『普通にやってるけどアレ一回数十万円クラスのヒーリングだからな』

 『マジで!?』

 『マジマジ、専門機関でもあのレベルのヒーラーは数えるほどしかいない』

 『もしかして、アンドウ教官って凄い人』

 『御三家令嬢の操者だぞ。もしかしなくても凄いよ』

 『よく見るとカッコイイよね////』

 『匂いが最高にいい!』

 『『『『わかる~』』』』

 『毎回違うマーキングメッセ書かれてるのウケるw』

 『結構エグイのあるよねww愛バ以外の子もやってるみたいだよ』

 『へぇー、私も今度やってみようかな、なーんて』

 『おいバカ!やめろ!その発言はマズい!!!』

 『奴がクレイジーDが来るぞぉぉぉ!』

 

 『アカウントを特定しました』

 『まったく、多少の発言は許そうと思いましたが、おいたが過ぎたようですね』

 『美浦寮の○○号室のPCからですか、今から行きます・・・そこを動くな

 

 『ぎゃぁぁぁ監視されていたぁぁぁ!」』

 『Dじゃ!D様の祟りじゃぁーー!((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル』

 『え、え、え、何?ひぃ!インターホンが鳴っ・・連打されてる!!』

 『待て!絶対に出るんじゃない』

 『誰かルドルフ会長かたづなさんにヘルプを!』

 『扉ガンガン叩かれてるよぅ。やだ、凄い唸り声が、外にああ外に何かいるぅぅ!』

 『もうマサキ教官を呼ぶしかない!』

 『早まるな。他の三体に気取られたら最後、状況が悪化するぞ!』

 『だったらどうしろっていうんだよ。アレらを相手するなんて無理ゲ―すぎる』

 『嫌、何か入ってき・・しょ、触手?しょくしゅがぁぁぁぁぁぁあああああああああああ』

 『・・・・・』

 『・・・・・』

 『・・・・・』

 『・・・落ちるわ』

 『私も』

 『そうそう早く寝ないとね』

 『いや~今日も平和だったな』

 『うんうん。みんなお疲れちゃーん』

 

 『ワスレルナ』

 『Dハイツモオマエラヲミテルゾ』

 

 『『『『はい肝に銘じておきます!!おやすみなさいD様!!!!』』』』

 

 このスレは終了しました。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「シロ、どこに行ってたんだ?」

「ちょっとコンビニまで」

「バスカーモードを使っただろ、何があったか言いなさい」

「身の程をわきまえない不審者に遭遇しまして、オルゴンテイルでちょっと威嚇してみました」

「ふーん。あ、俺のパソコン触った?悪さしてないだろうな」

「自作のセキュリティソフトをインストールしただけです。ルクスがサイバー攻撃を仕掛けてくるかもしれませんから、念のため」

「気が利くな。さすが俺の愛バだ、よーしよしよし」

「フフフ、もっと褒めてください~」

「風呂入るか」

「はい、お背中流しますね♪」

 

 今日も俺の愛バは優秀でカワイイのです。何の問題もありませんな!

 

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