俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

113 / 150
うどんを食らえ

 前回までのあらすじ

 

 夢で変な女に会う→女神集合→変な女(シャミ子)はメジロ家のご先祖様でした。

 

 思えばアルとシャミ子には共通点が多い、血が繋がりがあると言われても「そうですか」と特に反論もなく納得することができた。

 二人とも透き通るような青い髪色、優美で儚げな顔立ちをしており、所作の一つ一つに気品が感じられる。おとぎ話に登場する美しいお姫様を地で行っているんだ、これがな。

 それに反した大胆な行動力を持って周囲を驚かせるところ、酒好きでエロに積極的なところも似ている。

 2000年の時を越えて受け継がれるシャミ子因子が強い。

 

 三女神と竜姫のお喋りは尽きる様子がない。うんうん、楽しそうでいいわね。

 生きていた当時の思い出や、操者であり想い人(旦那)であるトーヤへの惚気話に花を咲かせている。

 神様だけど、やっぱり女の子なんだよなぁ。

 

 積もる話を邪魔しては悪いと思った俺は、シャミ子に出してもらったキングサイズベッドの上に寝転がり、ゴッドトークの成り行きをボーっと見守っていた。なるほど、おぱーいはメルアが一番でかいな。

 

 なぜだ、いつから俺の夢は女子のたまり場になったのだ?

 俺、要らないですよね?もう帰っていいですよね?帰らせてよ!

 現実世界の俺の体はちゃんと睡眠が取れているのか心配だ。

 もし明日、寝不足だったらシャミ子をケツバット、すると喜びそうなのでデコピン(強)をしてやろう。

 

 キャッキャしている4人を見ながら脈絡もない思考に耽る。

 率直な疑問だがそもそも寝るってなんだ?気絶とどう違う?いつもどうやって眠ってるんだっけ?

 実はこっちが現実で、現実だと思ってる方が夢だったらどうしよう。

 我々はどこからきてどこへ行くのか?意識とは心とは何なのだ。

 

「そうか、そうだったのか・・・生命とは宇宙とはゲッターとは」ドワォ

「ヤバい電波を受信して楽しいですか?お隣、失礼しますよ」

 

 虚無る一歩手前の俺を心配したのか、会話の輪を抜けてシャミ子がやって来た。

 そのままベッドに上がり、俺の隣へゴロンと・・・

 

「ていっ」

「ぎゃふ!」

 

 転がって来たところに蹴りをお見舞いして、ベッドから落とすことに成功した。

 やれやれだぜ。安全に配慮して手加減する俺ってば優しい。

 

「痛たた、蹴り落すなんて酷いです」

「誰の許可で添い寝ポジションに就こうとしてるわけ?トーヤさんに悪いと思わんのかい」

「別に、これぐらいでトーヤは別に怒ったりしませんよ」

「そうか?俺だったら愛バが別の男と添い寝していたら、三日三晩狂ったように号泣する自信あるわ」

「女々しい奴ですね」

「泣きたいときに泣いてなにが悪いか!とにかく、俺は間男にはならんぞ」

 

 俺には愛バたちがいるし、お前にはトーヤ大先輩がいるでしょ。

 シャミ子とは適度な距離間でお付き合いしようと思います。

 

「マサキ、あなたの愛バたちと、赤ん坊が戯れていたらどうします?」

「微笑ましい光景だと思って見守る、かな」

「それと同じです。今を生きるあなたたちは、私やトーヤにとって皆カワイイ子供たち」

「貴殿は人類の母だと申すか?」

「そうそう、ゴッドマザーシャミ子です」

 

 慈しみの目を向けてくるシャミ子が再び添い寝チャレンジ、成功!

 

「だから、こうしても平気」

「むぅ・・・」

 

 愛バたちがしてくれるように、ギュっとハグされる。

 顔を胸に押し付けられた。いわゆる「ぱふぱふ」状態である。

 くそぉ!シャミ子の癖に!シャミ子の癖に~、大変良きおぱーいでございます!

 

「ほら、何も問題ありません」

「本当に大丈夫なんだろうな?伝説の操者に恨み買うとか嫌だぞ」

「もしトーヤが怒るとしたら、マサキではなく私に対してですよ「コラ、よそ様の子を噛んじゃダメ!戻っておいで、散歩続けるよ」てな具合にです」

「扱いがペットなんだが」

「トーヤの前では竜な私も従順な犬でしかないのです。詳しくは・・」ハアハア(*´Д`)

「詳しくは聞きたくない」

 

 二人のプレイ内容とか教えられても困るので、キッパリとお断りした。

 

 そうか、寛大なトーヤさんには怒られないのか、器の大きい男は違いますなあ。

 でも、うちの愛バたちはどうだろう?

 シャミ子はメジロのご先祖様で三女神と同等の竜姫様だ。そして、自称みんなのゴッドマザー的存在!

 愛バたちがキレる案件ではない!と、俺は思うのです。

 ちっぽけな俺が、元皇女様で今は超兵器機甲竜のシャナミア様の命に背くなど、できるはずがございません。

 目上の人には逆らわず従順であれ。世渡りの基本です。

 したがって、これは浮気ではないのです。どう考えても悪いのはシャミ子です。

 俺は考えるのをやめた。

 

「すみませんトーヤさん。彼女お借りします」

「はい、レンタルされちゃいます」

「やわらけ~」(*´▽`*)

 

 癒される~。さすがメジロ家のご先祖様だ、高貴な方は包容力も抜群ですな。

 

「ムフフフ、マサキはいい匂いがしますね」

 

 愛バたちもよく言うが、実際どんな匂いなんだろうな?

 聞いてもバラバラな答えが返って来るから、相手によって感じ方が違うってのは知ってる。

 「おいしそうな匂い」て言われてもなあ。

 

「シャミ子もいい匂いだ」

「本当ですか、例えるならどんな?」

「消臭力」

「市販の芳香剤できましたか。もちろんプレミアムアロマですよね」

「トイレの」

「そこは、お部屋用にして!」

 

 お部屋の消臭力・プレミアムシャミ子ver.メジロ家公認で近日販売!するわけない。

 

「ちょっと目を離したら、添い寝してる!?」

「距離感バグってるのよね。仲良くなれそうと思ったら、ベッタリするところは昔のまま」

「シャナミア様ははかれない」 

「シッシッ、私とマサキのリラクゼーションタイムを邪魔しないでください」

 

 トークに飽きた三女神がやって来て、シャミ子の距離無し具合をからかっている。

 人知を超えた存在が四人・・・率直な疑問が湧いたの聞いてみることにする。

 

「シャミ子は女神ではないのか?」

「女神でもありますよ。ですが、私は機甲竜となった身です。女神としてよりも、竜の姫としての側面が強く後世に伝承されているようなのです」

「ハブられたのか、辛かったな」

「安い同情やめてくれます。べ、別にハブられた訳では・・ない、ですよね?」

「「「・・・・」」」プイッ

「三人とも目を逸らした!?まさか、いじめですか?いじめなんて最低!あなたたち超カッコ悪いですよ!」

「えーと、実は・・・」

 

 ポツポツと語り出すメルアたちによって、四女神ではない理由が判明する。

 およそ2000年前のことじゃった。

 シャミ子と出会う前からカティア、テニア、メルアの三人には既に多くの信奉者(熱狂的なファン)がいた。

 勝手に盛り上がる信者たちは、三人の偉大さと尊さを布教する目的で「三人が勢揃いした像(1/1)を造ろうぜ!」計画がスタートさせ、着々と準備を進めていた。

 シャナミアが加入した頃には、デザインに職人の手配や量産化の体制までが整っており、今更四人目を追加することは不可能、ぶっちゃけ「めんどいから諦めてくれ」であった。

 その為、四女神ではなく「三女神+竜姫」として語り継がれることになったのである。

 

「という、大人の事情があったんですよ」

「集合写真の撮影日に、運悪く休んだ奴みたいな扱いだ」

「あの職人連中め!「シャナミア様は御三方とは格が違いますからな」「単体で完璧なの憧れちゃうなあ」「御神体なら神竜があるじゃないっスか」と散々持ち上げておきながらこの始末」

「早い話、予算が足りなかったのよ」

「悲しいなあ」

「もういいです。どうせ今の女神像なんて「コレ誰?」レベルの造形で原型とどめてないですし、彫りが深すぎて「どこの最凶死刑囚だよw」と皆笑ってますよ」

「「「なんだと!!」」」

「確かにな、フルフロンタル像の方が親しみやすいと、もっぱらの噂だ」

「「「アレに負けたの!?」」」

「ざまぁですー、私をハブった報いです」

「「「むきゃーー!!」」」ヽ(`Д´)ノプンプン

「やる気ですか?竜姫と呼ばれる前は、武芸百般の「おてんば皇女」だった実力、久々に見せてやります」

「はいはい、ケンカしないでくださいよ。そぉーれぃ、唐突な全体ヒーリングシャワー」

「「「「うわーい、なんかポカポカする~」」」」

 

 大昔の世知辛い事情と、上手く伝わらなかった造形美に女神たちが一喜一憂している。

 愛バたちによく使う仲裁テクニックは、ここでも有効だった。

 

 たまり場は休憩所から俺たちが寝転がるベッドに移ったようだ。

 カティアとメルアはベッドの淵に腰かけ、テニアはシャミ子に体当たりするように横になる。

 キングサイズで正解だったな。

 

「試練その四、どんなのにしましょうか」

「簡単なのでお願い・・・ふぁ・・」

「時間切れのようね」

「シャナミア様、マサキさんがお眠です。そろそろ」

 

 リラクゼーション効果抜群のシャミ子(抱き枕)により、強烈な眠気が襲って来た。

 もうダメ無理、寝る、絶対寝る!

 そんな俺を三女神たちが指で俺をツンツンして、あぅ、やめて。

 

「名残惜しいですがここまでです。試練についてはまた後日、お伝えします」

「ふぁい」

「お疲れのところ、ありがとうございました。またお話しましょうね」

「うん。おや・・す・・み」

「あなたに女神と竜の加護を、おやすみなさい」

 

 頭を撫でてくれる、シャミ子の声は慈愛に溢れていた。

 母さんや姉さんみたいだ。

 自分が無条件で愛されているという、絶大な安心感で満たされ、俺は眠りに落ちていった。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 そっと身を起こしたシャナミアは姿勢を変え、眠るマサキに膝枕する。

 ずっと昔、大切な我が子にそうしたように、優しくその頭を撫で続ける。

 

「決めました。この子にします」

 

 厳かに告げるシャナミア。

 

「この子とは、マサキさんですか?」

「そうです。竜の力を託すのは、私の母性と性欲をくすぐりまくった、この子を置いて他にない」

 

 性欲は余計だろと思ったが、ツッコミはやめておいた。

 そんなことより、シャナミアは言ったのだ、マサキに自分の力を託すと。

 

 (やった!やりましたよ!おめでとうございます、マサキさん)

 (お?おおう!合格?これ合格だよね!)

 (ふぅ、ようやくだわ)

 

 メルアは小さくガッツポーズ、テニアは目を輝かせ、カティアは大きく頷いた。

 

「試練はまだ残っていますが、よろしいのですか?」

「構いません。どうせ、形式的なものです。残りは、この子の修練になるような課題でも出すことにします」

 

 先程からマサキのことを"この子"と呼んでいる。

 シャナミアの地母神モードが発動するほどに、彼は気に入られてしまったようだ。

 

 オルゴンアーツの継承と機甲竜の起動資格者に足る者の選定は、その力の大きさ故に慎重を期すべきものである。

 そのはずなのだが、最終的には彼女たち女神に"気に入られるかどうか"これに尽きる。

 身分でも、才能でも、乗り越えた試練の数でも、顔でもなく、結局はその者に確かな"情"を感じることが重要だ。

 訂正、やっぱ顔は大事。カワイイとカッコイイは正義!生き様は顔に出るから仕方ない!

 マサキはしっかりとシャナミアの情を刺激してくれたようで、刺激しまくったようで、危うく夢ぴょい!・・・未遂だったけど。

 

 歴代の継承者に機甲竜の起動者となった者はいない、全てがシャナミアの面接に落ちた、というよりも、そもそも会ってすらもらえていなかった。

 誠に遺憾だが、シャナミアの格は三女神より上に位置する。

 三女神が了承しても、シャナミアが首を振ればボッシュートなのだ。

 まあ、生前から人を見る目は確かで彼女が「嫌、興味ない、会わない」と言った人物は素行に問題があったり、腹に一物抱えた者が多かった。

 今思えば、面接されなかった歴代継承者の覇気では、機甲竜を制御することはおろか、起動できたかも疑わしい。

 シャナミアは、そういう神がかり的な直感を持っている。神だから当たり前とか言わない。

 

 (今日の顔合わせこそが、最重要最難関だったわけだよ)

 (マサキさんは見事合格してくれました。やだ・・泣きそう、てか泣きます)(つд⊂)エーン

 (ここまで長かったわね。でも、これからよ)

 

「シャナミア様。起動者は彼、アンドウマサキさんで決定なのですね」

「はい。神竜■■■■■の名において、この子を、マサキを起動者と認めます」

「本当にいいのね。マサキ君を選んで"あいつ"に勝てるのね?」

「約束しましょう。私とこの子で必ずや、逆賊である"あの者"を討ち取ることを」

「そこまで言うなら異論はないよ。うん、よかったよかった」

 

 起動者の決定に沸く女神たち。それを合図にマサキの体が半透明になり、やがて消えていった。

 精神が現実世界の肉体へ帰還したのだ。

 名残惜しそうに見送ったシャナミアが立ち上がる。

 

「次に会う時が楽しみですね・・・ふぅ、どっこいしょ」

「どっこいしょってww久々に聞いたわw」

「はいはい。2000年もののババアドラゴンですよ~だ」

 

 自らババアドラゴン宣言、マサキに会えて機嫌がいいのだろう、起動者が決まって一番喜んでいるのはシャナミア自身なのだ。

 

「ねえ、起動者決定のお祝いをしようよ」

「いいですね!まずは、ここをキャンプ地とします。それから・・・」

 

 休憩所の座席に戻ったシャナミアたちは、一息ついてこれから考える。

 その中でメルアだけは、こちらに背を向けたまま何やらゴソゴソしている。

 はっはーん。きっと、お祝いのケーキでも準備しているんだなー。

 

「ババドラ様、お約束の、こちらをどうぞ」

「シャナミアですけど!?・・・うどん?なぜ、うどん?」

 

 眼前に置かれたどんぶりの意味がわからない。

 日本ではケーキの代わりにうどんを食べる風習でもあるのか?

 メルアは不自然なほど笑顔のままだ。何か怖い。

 

「正確には天ぷらうどんね。エビ天のサイズがご立派だわ」

「お祝いに天ぷらうどんとは、どういう趣向なのでしょうか?」

「都合の悪いことは忘れる、シャナミア様の悪い癖ですよ。ここへ来る前のことを、よ~く思い出してください」

「あれ?私、何かやらかしてます?・・・・・・・・あ゛」(;'∀')

 

 シャナミアは思い出した。

 今日に至るまで、自分がメルアにした発言の数々を。

 

『男!?ウマ娘でもない男を後継者に選んだのですか?ないわー、ありえないですわー』

『いやはや、騎士王グランティードも耄碌(もうろく)したもんですねぇ。あ、今はただのメルアさんでしたw』

『その彼と面談しろ?嫌ですよ、プレミアムな私が襲われたらどうしてくれるんですか』

『トーヤ以外のオスなんて皆等しくケダモノですよ。レイパーですよ』

『どうしてもと言うのなら「無駄なデカ乳でごめんなさい」と三回唱えるのです』

『うはww本当に言ったww』

『わかりました。無駄骨でしょうが、メルアの推しメン君に会ってあげます。┐(´∀`)┌ヤレヤレ』

『は?絶対気に入る?一発合格もありえる、ですって?』

『残念でしたね、私はそんな尻軽ではありません。あなたとは違うのですw』

『万が一、その者を起動者として私が選ぶような事があれば・・・』

 

鼻からうどんすすって完食してやりますよ!!

 

 

 はい、口は災いの元です。ちょっと前の私ってば本当に愚か者!

 

 ずっと微笑みを浮かべているメルア。ダラダラ嫌な汗が出て来たシャナミア。

 湯気を出している天ぷらうどんが、まあ!美味しそうですこと、普通に食べられるならば大喜びだけど。

 特大のエビ天トッピングが、メルアに溜まった怒りと憎しみの大きさを感じる。

 一瞬の静寂、身の危険を感じたシャナミアは迷わず逃走を選んだが、時すでに遅し。

 

「逃がすか!カティア!テニア!」

「「承知!!」」

「ぐがっ!?あ、あなたたち、放しなさい!腕!関節が決まってます」

「竜に二言はないですよね?シャナミア様」

「二言あります!逃げて隠れて嘘もつく、どうしようもない女です!許して!」

「暴れんな、暴れんなよ!」

「大人しくなさい。刑の執行は私たちの総意なのよ」

「どうして?メルアはともかく、二人に恨みを買った覚えはないはず」

「仕方ないのよ」

「うん。だって、私たち・・」

「「鼻からうどん超見てぇから!!」」

「ちくしょーーー!何が三女神だ!三外道の間違いでしょう!」

「さあ、シャナミア様。ずずっといってください、さあ、さあ、さあ、おらっ!いいから早くすすれよ!」

「ひぃ!メッチャ恨まれてる。ちょ、いきなりエビ天から!?ムリムリ絶対む、あづぅぅっ!!熱い!鼻、鼻ががジュッって、あちっ!あっちぃぃーーー!」

「「揚げたてwww」」

「温かいうちに召し上がれ。ギブアップは認めませんからそのつもりで」

「なんか麺太くね?」

「この日のために用意した超極太うどん"ごんぶとEX"です」

「ダメです!そんな太くて熱いものを穴にねじ込むなんぴゃアアアーーッ!!

 

 食べ物で遊んではいけません。良い子のみんなはマネしないように、三女神との約束だ。

 ※天ぷらうどんはシャナミア様が責任もって完食しました。

 

 〇〇〇

 

 深夜に差し掛かろうという時間帯、トレセン学園寮の一室では机に向かって作業をしているウマ娘がいた。マサキの愛バ、サトノダイヤモンドだ。

 デスク周り以外の照明が落ちた室内には、キーボードを弾く音と、ベッドを占拠した不届き者の寝息だけが聞こえる。

 ダイヤは広げた設計図らしき図面と、PCの画面に映った数値を見比べながら、作業に没頭する。

 思考し、アイデアを纏め、計算と検証を繰り返し行い、実現可能な物をに落とし込み、修正を加えていく。

 耳をぴょこぴょこ動かしているのは、彼女が頭を使っているときの仕草だ。

 

「リープ、チャクラム、ファングときてますから」

「しゅー・・・ウェへへ、シロ顔ブッサww・・・しゅー・・」

「寝ててもウゼェな」

 

 しゅーしゅー言ってるアホは「久しぶりに二人で寝ようぜ」と押しかけて来たくせに、サッサと一人で寝てしまったキタサンブラックだ。鼻と口を塞いでやろうか?

 

「スライダー・・スライダーがいいですね。T—LINKシステムとアレをコレして」

「貴様らにそんな玩具は必要ない・・・ふしゅー・・」

「それはストライダーだろ!こいつホントに寝てんのか?」

 

 ストライダー飛竜!懐かしいな。クールな忍者キャラはカッコイイですよ。

 

 我ながら「誰がこんなもん使えるねーん」な物を生み出そうとしている。

 コレの出番が来ないことが一番だけど、備えあれば何とやらだ。準備しておいて損はないだろう。

 思いついたアイデアをメモして、データを入力、最後にエンターキーを「ッターン!」しちゃう。

 うん、いい感じにまとまりそうだ。

 

「今頃、マサキさんは夢の中でしょうか、私が登場していると嬉しいですね」

 

 気付けばもうこんな時間、今日はここまでにして眠ることにしよう。

 夜更かしが過ぎると、マサキさんに心配をかけてしまう。

 優しい彼は私とクロが結晶化し長期間の眠りについた事を、今でも気に病んでいる。

 治療術を学び養護教官になる道を選んだのは、その時の無力感が少なからず関係していると思う。

 だから、愛バの健康状態には「母ちゃんですか!」というぐらい世話を焼いてくれる。

 それは本当に嬉しいことだけど、操者の手を煩わすなど三流愛バすることだ。

 自己管理も出来ない女だとは思われたくないですし。

 

「あー、ベッドにクロが・・・うぇ、今日は床で寝るの」

 

 クロ隣で寝ると高確率で奴の足が、顔面を襲ってくるから嫌なんだ。

 息苦しさに目を覚ましたら、クロの足に鼻を潰されていることが何度もあったのだ。

 一度「お前の足裏は私の顔に接してないと壊死するのか?」と聞いたら「は?何のこと、その年でボケた?」だとよ!

 

 こいつ、マサキさんと寝る時だけは寝相が良くなるから質が悪い。

 相手を選んでやっているとしか思えない。なめやがって!

 

 やれやれ、これでもいいとこのお嬢様なんだけどなあ。

 うんしょ、よいしょ、予備の布団があってよかった。

 何とか布団を敷いて、さあ寝ようと思ったタイミングでスマホが震える。

 アホに気を遣ってマナーモードにしていたんだっけか。

 こんな時間に、メッセージのやり取りではなく通話を希望とは何事か?厄介事か!

 

「はい。サトノ産の超希少ダイヤモンドとは私のことです」

「夜分遅くにごめんね、ダイヤちゃん。ちょっと、報告がありまして」

 

 通話相手はサトノ家頭首サトノドウゲン、私の父だ。サングラス常備のマダオである。

 経験則により、父が私のことをちゃん付けで呼ぶ時は、碌でもない事を聞かされる前触れだとわかっている。

 

「遂にハートさんと破局ですか?それとも、グラサンが本体だと皆にバレましたか?」

「違うよ。ママとは絶賛ラブラブ中だし、グラサンは顔の一部だけどあくまでオプションだよ」

「はいはい。それで、何があったのです?」

「うちにね、泥棒が来ちゃった」

「なんですと!」

 

 ほらー、とくでもねぇ話だよ。

 寝る前に聞きたくなかったー。ストレス溜まるじゃないですか、やだーもうヤダー。

 今すぐマサキさんの家に行って掛布団になりたい。

 決めた。明日はめいっぱいマサキさんに甘えよう、そうしよう。

 

 

 ●●●

 

 翌日、昼休憩の学園屋上。

 熱烈な構ってオーラを出してくるシロをたっぷり愛でていると、他の愛バも合流してランチ開始。

 カフェテリアでテイクアウトした、具だくさんサンドが美味し!

 

「うちに賊が入りました」

 

 夢で会ったシャミ子たちの話をしようした矢先、シロがそんなことを言った。

 

 族?族だと!?サトノ家にカチコミを仕掛けるとは、まったくどこの大バカだ。命が惜しくないのか?

 

「あーあ、ハードラックとダンスちまったな」

「マサキさん、それ暴走族。うちに入ったのは盗賊、泥棒さんだよ」

「どろぼう・・・怪盗!?予告状は来たのか!」

「予告なしの押し入り強盗です。情けない話ですが、正面から警備を突破されました」

 

 残念、神出鬼没の怪盗と知恵比べなイベントは無いようだ。

 武闘派揃いのサトノ家を狙うだけでも異常事態なのに、正面から突破した?何者だよ。

 

「ヤバいじゃないの」

「はい、実際ヤバいです。死人こそ出ませんでしたが、従者部隊十数名がダウン。二日酔いの軟派野郎も病院送りになったそうで・・・あーもう、全員まとめて基礎訓練からやり直しです!」

「おいたんのアホ―!従者部隊1番が聞いて呆れるってメッセ送っておいたよ」ヽ(`Д´)ノプンプン

 

 イルムという、従者部隊でも指折りの実力者が負けたらしく、憤慨するクロシロ。

 二人が小さい頃から懇意にしている人みたいなので、お見舞いとか行った方がいいのかしら。

 

「必要ないです。どうせ今頃、美人看護師を口説くのに夢中ですよ」

「うわ、やってそう」

 

 心配無用らしい、相当タフな人物のようだ。

 よし、報告を続けてくれたまえ。

 

「監視カメラの映像から賊はウマ娘が三人、力量から轟級以上の騎神と推定。ご丁寧にフェイスガードで顔を隠していました」

「どこかで見たことある。悪趣味仮面だよ」

 

 ほうほう、サトノの従者部隊を蹴散らす程の強者で、顔を仮面で隠した騎神たちかい。

 

「ルクスの手先だな」

「だと思います。サトノ家相手にここまで大それた行動が出来るのは、メジロ家かルクス絡みの連中、どっちもクソです」

「すみません。メジロは私の実家なんで、クソはやめてほしいです」

「アル姉はもう、サトノ家の一族だよ。仲間仲間!」

「気付いてないのですか?従者部隊入りした時点で、あなたの実家はサトノなんですよ!」

「手遅れだね。サトノアルダンwww」

「ひぃぃ!改名怖いです」

「フフフ、全人類サトノ化計画は着々と進行中です」

 

 全人類の名字がサトノだったら不便だし混乱するだろ。宅配の誤配が増えそう。

 それは置いといて、やってくれたな、あんちくしょうめ!

 

「何を盗られた?」

「開発部のデータと、保管庫の試作品を一つ持って行かれました」

「大丈夫?サトノ家からEOTが流出したとなれば世間様が黙ってないぞ」

「データには自壊プログラムを仕込んであるので、余程の凄腕でもない限り半分も抽出できないはず、試作品の方は使い手を選ぶので、そう易々と一般には流通しないと思いたいです」

 

 「楽観的に考えればの話ですが」とシロは付け加える。

 ルクス側に有能な人材が揃っていれば悪用されてしまうだろう。

 そのことを誰よりも理解しているシロは内心穏やかではないだろう。

 尻尾の揺れ具合でそれぐらい察せるぜ。よしよしヾ(・ω・`)シロは悪くないぞ。

 

「試作品、何で両方持って行かなかったんだろうねー?なんか気持ち悪いなあ」

「それは泥棒本人に聞いてみないと何とも言えません。あえて残した・・何の誰のために・・」

「ほぇ?シロ、私の顔になんかついてる」

「腹の立つ顔してるなぁ、と思っただけです」

「マサキさん、私の顔見てどう思う?」

「ムラムラします」

「ならばよし!マサキさん、好き~」

「俺も好き」

「「「貴様ズルいぞ!!!」」」

 

 「私は?私も!」こぞって聞いて来る愛バたちが、マジ可愛い。

 広い屋上スペースには他の生徒たちもいるが「まーたやってるよ」でスルーしてくれます。

 

「サトノ家も大変だったんだね」

「"も"って何ですか"も"って?まさか、ファイン家でも何か?」

「うん、うちにも来たよ。三人のウマ仮面が」

「「「それを早く言え!!」」」

「ごめんごめんwシロちゃんとネタ被りしてテンパってた」

「報連相は大事ですよ。ささ、マサキさんにご報告を」

「はーい」

 

 なんとまあ!ファイン家にも賊が入っていた。

 サトノとファインの二ヵ所を同時襲撃、マジでやってくれたな。

 

 ファイン家では、警備を任されていたルオゾールたち(ハゲ部隊)の奮闘で、人的被害は最小限に食い止められたらしい。

 

「1stの技術データをいくつかパクられた。悔しい~」

「「「あちゃ~」」」

「でも、来月発売予定『ファイン印ラーメン極旨』の㊙レシピは死守したよ!」(`・∀・´)エッヘン!!

「「「それはどうでもいい」」」

「なんでさ!メッチャ美味しいのに!!」

 

 またデータを盗まれている。

 ルクスたちは、オーバーテクノロジーを集めて何かを企んでいる?

 EOT、人知を超えた、神の如き力・・・まさかな。

 

「ファイン家の賊も三人、うちに来たのと併せて六人ですか」

「わかった。そいつら全員、ぶっ飛ばせばいいんだね!」

 

 信じたくはないが、ルクスにも愛バがいる。

 六騎・・・それが奴の愛バだってのかよ。

 

「数で負けちゃってる。けど、こっちは質で勝負だから」

「敵なら倒す。それだけです」

 

 愛バたちのやる気は十分だ。俺も負けてられない。

 

「わざわざ正面突破を選んだのは、意思表示つもりでしょうか」

「サトノもファインも「いつでも潰せんぞ」てこと?大きく出たね」

「ルクス本人がいない、愛バの仕上がりチェックに利用された・・・とか?」

「ちょっとした修練感覚で大事なデータ盗まれたら、堪らないよ」

「再発防止対策はどうなってます?今回のことでメジロ家も警備が強化されたそうで」

「それは・・・アレで・・・」

 

 愛バたちが話し込んでいる。

 こういう時は、下手に口を出さずに任せるのが一番。

 全員、実家にて組織運用等の上に立つ者の知識と経験を学んでいるはず。

 偉いなぁ、僕にはとてもできない。

 

 ふむ。ルクスの愛バが出て来たか、こりゃあ、近い内接触して来るぞ。

 わかっていると思うが、各自注意しておくように、何かあれば即刻報連相よろ。

 盗人事件についてはこんなところか。

 

「俺からも大事な報告がある」

「なんでしょうか?」

「夢に三女神と+αが出た」

「わお、何かご神託でもされたの」

「シャミ子と夢ぴょい未遂でノーカンそしてご先祖」

「「「「夢ぴょい!?もっと詳しく!」」」」

「えっと、あれは・・・」

 

 ・・・・・・マサキ説明中・・・・・・

 

「何なんですか!そのふしだらな女は!!」

「説明した通りだ。シャミ子はアル、お前のご先祖様だ」

「認めません!あのシャナミア様が、そのような方であるはずないです!!」

「メジロの血だよwww」

「ドスケベの血族ですwww」

「おまけにアル中でアホwww」

「ゴリラの要素は?」

「つつけばその内出て来るんじゃないw」

「メジロの開祖シャナミア様は、身も心も美しく強くて清楚で可憐で愛に溢れた、まさに女神の中のスーパー女神!どれだけ言葉を尽くそうとも、彼女を褒め称えきるには至れない。ずっと、そう教わって来たのです。それが、それが・・・だだの痴女だったなんてぇぇーーー!」

 

 ショックを受けたアルが頭を抱えて蹲る。辛いよな、でもこれが現実なんだ!

 

「痴女の先祖は痴女」ボソッ

「「ブフッ、あはははははははwwwひゃははははwww」」

「しゃぁぁっ!!」

「「「あぶねっ!?」」」

「ストップだアル!三人も笑いすぎだぞ、め!!」

「「「さーせん」」」

 

 弧を描く鋭い蹴りを繰り出すアル、のけぞって緊急回避する三人。

 今の、命を刈り取る一撃じゃない?マジで危ない。もう少しで、クロシロココの首が落ちるところだったぞ。

 大乱闘が始まるまえにアルを羽交い絞め、どうどう、落ち着け~落ち着いてくれー。

 耳の付け根を中心に撫でてリラックスさせる。

 アルは俺の胸に顔を埋め「違う、違うんですぅ~」とシクシク泣いている。

 尻尾がペシペシしてくるのは好きにさせておこう。

 

「シャミ子はいい奴だったぞ。何だかんだで立派なご先祖様さ」

「でもでも、マサキさんを騙して襲うような、恥ずかしい人なんでしょう」

「面白くて、俺は好きだぞ。アルに似てるしな」

「う~、素直に喜べません~」( ;∀;)

「泣くな。先祖がアレでも愛してるぞ、アル」

「その一言でメンタルが少し回復しました。もっと言ってください!情熱的に!」

「似てるんだよなぁ」

 

 アルを宥めている最中、他の三人は無理な姿勢での回避ポーズで硬直していた。

 

「ノーモーションからの首狩りはないわー」

「今の結構ヤバかったよね。私の首、ちゃんと繋がってる?」

「ねえ、ノーモーションとファインモーションて似てない」

「どうでもいい。く、首がグキッて・・あだだ」

 

 イナバウアーをもっとこう妙な感じにした、三者三様の意味不明なポージングだ。

 ヤバい周りが引き始めた「うわ、また何かやってる」ですって、またって何よ!

 俺たち5人はいつもこんな感じでは・・・またですね、はい、わかってまーす。

 そそくさと退散!そして解散!午後の授業も頑張りなさいよ。

 

 〇〇〇

 

 今日の俺は現役の養護教官が集まる勉強会というものに参加していた。

 流行の疾病対策や、最新の治療技術、学生患者との関わり方等を中心に学んだぞ。

 他校の教官たちやベテラン治療師との意見交流は為になるね~。大人になっても勉強は続くのです。

 一応、仕事ということで出勤扱いなので、お給料貰って勉強したと思えば得した気分だ。

 学園に寄らず直帰していいというのも、ありがたい。

 

「~♪」

 

 勉強会は意外と早く終わったので散歩がてら徒歩でのんびり歩く、鼻歌も自然と出ちゃいます。

 そんな訳で、お昼過ぎの街を帰宅中の俺です。ちょっと時間に余裕があるな。

 ご近所の定番ランニングコースにもなっている川沿いの道を選んでみました。

 早朝に超スピードぬりかべが出ると噂があるが、本当だろうか?妖怪怖いですね、誰か鬼太郎呼んで来い。

 ほうほう、都会にしては綺麗に整備されておるわ。川の中に目を凝らすと小魚の魚影が見える。

 小魚にしては大きい奴もいるな、水面から突き出た背ビレが陽光に反射して・・・

 

「背ビレ?・・・うぇぁ!」

 

 なんかいるーーー!?

 あ、あれってジョーズ?にしては小さいな。新種発見か!

 川に鮫っているの?と、とにかく写真、写真を・・あ、逃げる。

 こんな時に限って周りに人がいない。

 

「未確認生物発見の功績ゲットだぜ!」

 

 よっと。川原まで下りて背ビレの目撃ポイントへ、ちっ、見失ったか。

 慌てるな、目をつむり意識を集中して覇気サーチ・・・下?いや、正面か!

 

「て、うおおおお!?」

「ク―?」

 

 目を開けたら眼前ゼロ距離に銀色の何かがぁ!

 「ク―」てなんじゃい!鳴き声ですか、そうですか!

 後ろに飛びのく、銀色の何かは首を傾げるような仕草を見せる。

 

「鮫っぽい魚?でも、浮いてる。覇気を感じる、これは・・どこかで」

「ク―」

 

 複数のヒレがある魚型のロボットが空中に浮いている。

 羽ばたいているように見えず、飛んでいるというか泳いでいるみたい。

 銀色の体の各所に青い宝石が埋め込まれていて、目ん玉や口は無い。

 機械で構成されていながら生物のような覇気を感じる。

 こいつの特徴は・・・

 

「お前、あのメカ鳥、カナフの仲間か?」

「ク―!」

「おお!マジか、写真、写真撮るから!今度こそ証拠を残して」

 

 正解というように跳ねる鮫(仮)にスマホのシャッターを何度も切る。

 よしよし、これで俺の薬中疑惑は払拭されるな。あ、今のポーズいいよ!

 俺の周りを旋回する鮫、カナフと同じく不思議な奴だな。動力はなんだ?

 

「そうだ。覇気食うか?」

「ク―!!」

「ははは、待て待て。少しづつな」

 

 指先から覇気を出すと鼻先に当たる部分で、指をツンツンして来る。

 うむ、ちゃんと覇気を吸収できているな。燃料としてお気に召したようだ。

 カナフの時と一緒で、心を許してくれたのか脳裏に名前が浮かんで来た。

 

「け?ケ、レ、ン」

「ク―」

「ケレン。お前の名前はケレンだな」

「ク―ク―」

「川で遊ぼうって?いや、泳ぎは苦手でな。水着もないし」

「ク――――!」ブシャーー!

「ギャー――!」

 

 こいつ!俺の顔に水鉄砲を噴射しやがった!

 鼻にモロに入ったじゃないか・・・なんだろう、今、無性にうどんが食べたくなった。

 熱っ、じゃなくて、冷たい!それに勢い強すぎだろ、高圧洗浄機かよ!

 フ、フフフフフ、やってくれたな。

 

「くぉらぁ!ケレンーー!」

「ク―www」

 

 びしょ濡れの俺を笑ったケレンは身を翻し川へ元気よくダイブする。

 くそ、地形効果では奴に有利とみたが追うしかねぇ!

 なるべく浅い所をぉっぉぉっあ!ズルっと滑って転んでドッボンですよ。

 あーもう、顔だけじゃなく全身濡れ濡れですわ。

 

「ク―ク―ク―www」

「笑ってんじゃねーよ。くらえ!」

「ク―!?」

 

 再び空中に姿を見せたケレンを、今度は俺の水鉄砲で撃ち落とす。

 ウルトラ水流だ!(ただの両手水鉄砲を覇気で強化した技)

 小さい頃、母さんが庭の植物にこれで水をやっていたのを覚えている。

 水を溜めたバケツに手を突っ込み噴射!バケツ→噴射を繰り返していたな。

 

『これなら縁側から水撒きできるわね。よっ!はっ!それ!』

『横着なだけでは?』

『もっと精度を上げてネオの顔面を狙ってやるわ』

『やめたげてよぉ。また二人がケンカして地形が変わったら村長が発狂しちゃう』

『大袈裟ね。さあ、マサキもやってみて、こうやって手を組んで・・・こう!』

『母さんほど飛距離がでませぬ』

 

 シャワーホースを買うという発想はなかったのだろうか?我が母ながら謎な人だ。

 

「ク―ク―!!」

「お、やるか!」

 

 「やったなぁ」と反撃してくるケレン、俺も負けずと撃ち返す。

 謎の鮫ロボと水鉄砲の撃ちあいバトル勃発!!

 やだ、メッチャ楽しい!童心に帰ってエンジョイしちゃうわよ。

 

「あははははは、楽しいな!」

「ク―、クー!」

 

 ケレンの正体とか、もうどうでもよくなって来た。

 時間を忘れて楽しめるのっていいよね。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「・・・フゥー・・・」

「・・ん・・あ゛・・・かほっ!」

 

 何か温かいモノを吹き込まれて目が覚める。

 今のは、少し甘いような、ずっと吸っていたいような、すごく優しい空気?

 飲んでいたのか、少量の水が口から零れてむせる。

 

「よかった、マサキさん!・・・もう、心配したよ~」

「えほっ、あ、あれ?クロ?何で、何が」

「こっちが聞きたいよ。何があったの?」

 

 俺の体は全身ずぶ濡れ、抱き着いて来るクロの体もずぶ濡れだ。

 えーと、俺はそうだ!水鉄砲バトルの真っ最中で。

 

「ケレン!ケレンは?水空両対応のメカシャークは!」

「メカシャークなんいないよ。この間の鳥?だっけ、あれと同じ・・・ヤバいお薬使ったの!?」

「ちがーう!あの時も今回も本当にいたんだ!信じてくれ、写真、今回は写真を撮ったんだ」

「どれどれ・・・何も写ってないよ?」

「そんな!マジかよ」

 

 写真にはケレンの姿は全く写っていなかった。川原の風景写真がいっぱいだぁ!いらねぇ!

 断じて薬はやっていないと、ケレンは本当にいたと言うと、クロは半信半疑ながら信じてくれた。

 うう、本当だもん。嘘ついてないもん。

 

「マサキさんを狙う、敵なのかな?」

「うーん、友好的だったけどなあ」

「友好的な奴が二度もトリップ中のマサキさんを放置する?」

「何が事情があったんだろう、門限があるとか?」

「確かに、前の時もこれぐらいの時間帯だったね。謎だねぇ」

「謎だなぁ」

 

 ま、俺に用があるならまた来るだろう。

 一応要人しておいて、チャンスがあれば捕獲しよう。三度目の正直だ、次こそは!

 

 俺もクロも水に濡れてしまっている。

 それに、さっきのは息を吹き込まれて・・人工呼吸だヒャッホイ!

 

「助けてくれたんだな。ありがとうクロ」

「どういたしまして。ビックリしたんだよ、こんな浅い川でどざえもん発見騒ぎ!?と思ったらマサキさんだったんだから!」

「それは確かにビックリするな」

 

 常時リンク中の俺と愛バたち、誰かに命の危機があれば絶対にわかるはずだ。

 しかし、クロ以外の愛バは来ていない、クロも俺を発見するまで気が付かなった。

 ということは、トリップ中に死の危険はないのかも?うーん、わかんね。

 

 うつ伏せの状態で水面に突っ伏していた俺は、通りがかった人たちとクロに救助されたらしい。

 クロが偶々通りがかったのは僥倖だった、これも操者と愛バの絆かね。

 

「危なかったんだよ」

「そんなにか」

「そうだよ!一緒に救助した人たちが急に揉め出してさ」

「何で?」

「ガチムチ水泳部員数名(屈強な体育大学生たち)が、誰がマウストゥマウスするかで大乱闘だよ!」

「俺超ピンチぃぃぃ!」

「全員叩きのめして、その権利は私がゲットした!」(^_^)v

「ありがとう!よくやった!本当によくやったぞ!」

「喜んでくれてなにより。愛バの私を前にして、ホント何やってんだかなあ」

 

 その辺に転がっている男たちはそういう経緯があったのか、理解した。

 なぜか全員、水中眼鏡に水泳帽とブーメランパンツ装備だ。上着やズボンが見当たらないだと!?この格好でここまで来たなら、十分変態だと思う。

 この人たち川で泳ぐ気だったのか、水深が足らないような気がしますけど?変態の考えることはわからん。

 まあ、人工呼吸の件はともかく、俺を川から引き上げてくれたことには感謝しいる。

 ブーメラン男たちを川原に並べて、こう、抱き合うように絡み合うようにしてと。

 ふぅ、こうすれば互いの体温で暖がとれるだろう。俺って天才だな。

 後は警察に電話だ「川原で水着のホモたちが宴を開いています」と、これでよし!

 

「くしゅんっ!」

 

 可愛いくしゃみが聞こえた。

 クロの体がすっかり冷えてしまったようだ。

 ここからだと学生寮より俺の家が近い。

 

「よっしゃ、帰って風呂だ風呂。うちに寄っていくだろ?」

「お言葉に甘えちゃう。さあ、早く帰ろう」

「制服が濡れちまったな」

「クリーニングすれば平気。マサキさんの家に予備も置いてあるし」

「いつの間に・・・ふぁ、ふぁ、ぶぇっくしょーーーい!ああーーちくしょうッッッ!」

「くしゃみwwwうるさいwww」

「ごめん、思い切りが過ぎたwwwほら、早く乗ってくれ」

 

 クロをおんぶ出来るようにしゃがむ。来い「当ててんのよ」の時間だ。

 

「自分で歩けるよ?急にどうしたの」

「制服が透けてる」

「こんなの気にしないよ」

「俺が気にするんだよ。他の奴にクロのスケブラ見られてたまるか!」

「スケブラてw・・へへ、ちゃんと考えてくれて嬉しいな。紳士なマサキさん、大好き」

 

 大好きと言っておぶさって来るクロ。

 はーん!スケパイが当たって背中が幸せだ。

 

「バーロ―、俺の方がもーっと好きだぜ」

「えー、私の方が好きだよ」

 

 はい、完全にバカップルです。

 家に帰ってしっかり温まったので風邪はひかなかったぜ。

 温まる方法はみんなのご想像にお任せするZE。( ー`дー´)キリッ

 

 クロを背負ってお持ち帰りしたのは、結構な人数に目撃されていたみたい。

 翌日、シロアルココに「外で濡れ濡れプレイ!?次は私の番ですよね」と問い詰められた。

 外ではやりません。家の中では・・・検討します。

 

 あの後、川に立ち寄った際「遊泳禁止!ここは発展場ではありません!」の看板が立っているのを見た。

 へぇー何か事件でもあったのか。おお、怖い怖い。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。