俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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とられてたまるか

 サトノとファインの両家に強盗が入った。俺は川でどざえもんになった。

 一方その頃、シャミ子には鼻うどんの刑が執行されていたそうな。

 

「マサキ、本ッッッ当にごめんね。この埋め合わせは必ずするから」

「急な用事じゃ仕方ないさ、気にすんな」

「ごめん、もう行かなくちゃ。また明日ね」

「おう、気を付けてな」

 

 放課後の学園正門前にて。

 申し訳なさそうに両手を合わせたココは、何度も俺に謝罪をした後、ファイン家の従者(黒髪ロングの美人)が運転する車に乗り込む。

 ココを乗せた車が滑らかに発進、そしてすぐに停車!?なにしてんのよ?

 降車したココが俺に駆け寄りって来た。

 

「どうした?」

「ちょっと忘れ物・・ん・・・」チュッ

 

 服の襟をグイッと引っ張られたかと思ったら、唇を押し付け・・・キスされてますやん。

 数秒後、突然の事に固まる俺から唇を離したココは可愛らしく笑う。

 

「エヘヘ、じゃあ今度こそ、行ってきます」

「あ、はい、行ってらっしゃい・・」

 

 ボーっとしたまま手を振り、走り去る車を見送る俺。

 車が見えなくなったところで、ようやく自我を取り戻した。

 

 今の何?今の何ぃぃぃ!?メッチャ可愛い!メッチャキュンキュンしたぁ!

 ヤバいヤバいヤバい!すんげぇ嬉しいんですけど! 

 こんなラブコメ漫画の1シーン的状況が俺に来たぁぁーーー!ひゃっほぅ!

 学園の正門前なので目撃者多数だけど、それどころじゃないんですけど!

 

 後でシュウに自慢しよう、絶対しよう!姉さんには秘密にしよう!

 おっと、三方向からピリピリした覇気を感じるぞ。

 俺のニヤケ面よ、早く戻りなさい。

 

 今日はココと過ごす予定だったのだが、急な仕事が入ってしまったらしいのよ。

 寂しいけど仕方ない。頭首のお仕事を頑張る彼女は立派だし、誇らしく思わないと。

 いいさ、全ては予定調和だ。これで俺たちも動けるってもんさ。

 残された俺は、気取ったポーズで指パッチンする。しかし、何も起こらなかった。

 下手くそ過ぎて音がでない・・だと!?やだ///超カッコ悪い!

 仕方ないので、体育の授業で使ったホイッスルを慣らすことにする。

 「これを、どうか俺だと思って受け取ってくれ」とゲンさんにもらったんだ。

 言い方がなんか怖い。現場に居合わせたヤンロンは若干引いていた。

 

「ピッ!」(はい、集合!)

「「「は!」」」

 

 物陰から、植え込みの奥から、電柱の上から、シュタッと馳せ参じる三つの影。

 ココを除いた、クロ、シロ、アルの三名が集合した。

 俺の前で恭しく片膝をつく姿は実に忍者っぽい!主を陰ながら守る忍者そのものだ。

 こういう"ごっこ遊び"を俺たちはよくやるのです。やって嬉しい、やられて嬉しい、みんな幸せ~♪

 ごっこと言えど、やるからには本気だぞ。

 

「車の現在位置は?」

「バッチリです。リアルタイムで追尾できます」

「上出来だ。では諸君、本日は最近様子のおかしいココを追跡調査する。ミッション開始だ」

「「「ラジャー!」」」ノリノリ

「行くぞ、小走りで!!」

「マサキさん。よろしければ、お運びしましょうか?」

「王子様抱っこの準備、いつでも出来てるよ」

「さて、我らが操者は誰に運搬されたいのか、もちろん私ですよね!」

「それはまたの機会に、今はお前たちと走り出したい気分。遅れずについて来な!」

「「「どこまでもついて行きます!」」」

 

 俺たちの脚力ならば車に追いつくなんてわけないぜ。

 トレセン学園のある市街地はウマ娘用のレーンが完備されている上に、民家の屋根、ビルの外壁や屋上を飛んだり跳ねたりすることも想定した家造りと、街づくりがされているのだ。

 建築基準法どうなってるのかしらないが、至れり尽くせりだ。

 

 走りながら愛バたちと会話する。

 

「先程の不意打ちキッス、クリティカルでしたね」

「あれはアカンよ。年甲斐もなくときめいちゃったわ////」

「さすが、チュー魔人。ココのああいうところは素直に羨ましい」

「ああいうの、いいですよね。勉強になります」メモメモ

「そのココが、まさかな・・・」

「次の分かれ道を右折です。少し速度を落としましょう、これ以上接近すると感づかれます」

「隠形しながらだと、結構気を遣うね」

「これも修練だと思うことにします。ココさん、信じていますからね」

 

 俺も信じている。どうか、信じさせてくれ。

 

 〇〇〇

 

 事の発端は数日前、ココの様子がいつもと違う気がした。

 授業の合間、休憩時間中の医務室にて、顔を見合わせた俺とクロシロアルの4人は同じ言葉を呟く。

 

「「「「あ・や・し・い」」」」

 

 違和感を感じていたのは俺だけじゃなかった。

 聞けば、愛バたちはもっと前から気付いていたんだと。

 

「やっぱりそう思うよな。俺の気のせいじゃないよな」

「なーんか、最近ソワソワしてるよ」

「よく電話をしている姿を見かけます。相手は誰か聞いても「内緒♪」だそうで」

「もしかして、アレなのでしょうか?」

「アレとは何よ?」

「パパ活」

「「「マジでか!?」」」

 

 ココに限ってそんな、援助で交際な活動をしているなんて考えたくない。

 昨今では、マッチングアプリ等で見ず知らずの男女が出会うなど珍しくないと聞く。

 花の女子高生が羽目を外して遊びたい気持ちはわかるが、ちょっとした火遊びのつもりが大火事になることもあるんだぞ。

 パパ活・・羽振りのいいおじ様から、お小遣いをもらってデートしているだとぉ!?

 操者の俺を差し置いてデートなんて!けしからん!けしからんぞ!

 

「許さぬ!絶対に許さぬぞ!」

「デートだけで終わるはずもなく、札束をチラつかせた成金おやじはココの肩を抱きホテル街へGO」

「盛り上がって参りました」

「盛り上がったらダメ!くそぉ!こうなったら成金おやじを,オルゴナイトバスターするしかない!」

「一人のおやじをバスターしても、次から次へと新たなおやじがマッチングするのであった」

「無限増殖おやじ」

「ココさんにはマサキさんをホテルに連れ込んだ前科があります。おやじ様ではなく、ココさんの方が誘っている可能性も・・・あ、私の拙い推理など、どうかお気になさらず」

「わざとだ、今の絶対わざとだ」

「ならば日本中のラブホをこの世から消す!三人とも戦の準備をしろ、出陣するぞ!」

「「「凄い命令きちゃったww」」」

 

 さすがにラブホ殲滅計画は却下された。我ながらアホな命令をしかけたもんだ、反省。

 

「もう直に問いただすしかない!手尾れになる前に行って来る」

「待ってください。ココに会って何と声をかける気ですか?」

「金なら俺が出す!だからデートしてくれ!でどうだ?」

「それは、なんか・・違う」

「完全に貢ぐ男ですね。いいように利用されて最後はポイされます」

「ポイされたら私が拾います。だから、安心して貢いでください」

「それも違う!マサキさんもアル姉も考え方ズレてるよ!ズレまくってるよ」

「「そっかぁ」」

「「ダメだこりゃ」」

 

 ズレているらしい俺は、同じくズレているアルの尻尾をお触りして現実逃避する。

 上手に触ると手に巻き付いて来るから楽しい、そして愛しい。

 

 一旦解散!!

 

 それから、ココに会った時に「最近、困っていることはないか?遠慮なく言ってくれ」と声をかけてみたのだが。

 「心配してくれてありがとう。何でもないから、気にしないで」と返答されてしまった。

 

 再び集合!!(ココを除く)

 

 頼りない操者でごめんなさいーー!明らかに何かあるのに相談してくれないの、悲しいです!

 成金おやじ並みの財力がないからか?もっと年上が好みだったのか?俺では満足できんのか!

 お、俺が、俺が悪い、俺がダメ男だったからココを繋ぎ止めておけなかった!

 

「時代や環境のせいじゃなくて・・俺が悪いんだよ」

「あらら、ヘタレちゃった」

「ココがパパ活に手を出したのは、俺のせいだ」

「まだパパ活と決まったわけではないですよ。気をしっかり持ってください」

「もう・・嫌なんだ・・自分が・・」

「これ最後までやるの?」

「俺を・・家に帰してくれ・・もう・・風呂入って飯食って早く寝たい」

「普通に仕事サボりたいだけじゃないですかww」

 

 愛バの胸で泣いた。柔らかかった、元気が出た。

 

「わからないことは調べるしかない。ココを調査するぞ」

「興信所に依頼しますか?うちなら、腕のいい業者を斡旋できますよ」

「待ってよシロ!こんな面白そうなこと私たちで調べないでどうするの」

「素行調査!探偵みたいでいいですね。是非やってみたいです」

「どうするかは、マサキさんが決めてください」

 

 操者と愛バ、俺たち5人は強い絆で結ばれたチームだ。

 チームの問題はなるべくチームで解決したい。

 外部にヘルプをかけるのは打てる手を出し尽くしてからでいい。

 

「俺たちでやる。3人とも力を貸してくれ」

「「「仰せのままに」」」

 

 ○○〇

 

 そんなこんなで今、車を追跡中です。

 最初は先頭を走っていた俺だったが、分かれ道で明後日の方向へ進もうとした為、大人しく愛バの後をついてくついてく。

 

「目的地周辺です」

 

 シロが抑揚のない言葉を継げる。今のめっちゃカーナビっぽい!

 車は立派な建物の正面ゲートに停車した。

 ココが下車する、その顔は若干緊張しているように感じる。

 

「ビルドンホテルか、でっけぇなあ」

「御三家の要人や海外のVIPも宿泊する高級ホテルですよ。スイートルームからの景色は中々のものです」

「調度品は趣味じゃないけど、スタッフの仕事は一流だよ」

「最上階にお洒落なバーがあるんです。今度、一緒に行きましょうね」

「なんか、庶民でごめん」

「「「????」」」

 

 今更ながら、愛バたちがお嬢様だったことを思い知る。これが格差か!

 3人とも、こういう場所に慣れている感が凄いな。カルチャーショック!ヤックデカルチャー!

 学生寮や俺の部屋に文句を言わないし、ファミレスや貧乏飯でも美味そうに食べてくれるから、実家が金持ちなこと忘れそうになるんだよな。

 きっと、親や周りの教育が良かったんだろうなぁ。

 

 ホテルに入ったココは、待ち構えていた支配人らしき人物に挨拶されている。

 会話は聞こえないが「過剰なサービスはいらない」と断りを入れているのだろう。

 その後、ペコペコのスタッフに案内され、一人になったココはラウンジのイスへと腰かける。

 運ばれて来たコーヒーカップに手を付けず、やや憂いのある表情をしたココ。

 

「いつもと違う・・・ファイン家頭首の顔?いや、あれは」

 

 俺の知らないココだ・・・何これソワソワするー!

 いやー!俺以外の男に見せるメス顔いやーーー!

 嫉妬力が溢れる、俺の中の嫉妬力がハイパー化しそうだ。

 

 今、俺たちはホテルに向かいにある、お洒落な喫茶店のテラス席に陣取り目を凝らしている。

 店員さんは「よくあることですから」と俺たちを一番良い席に案内してくれた。

 調査員行きつけの喫茶ってなんだかなぁ。

 注文したラテが美味しいのでほっこり。クロ、アイスコーヒーぶくぶくするのはやめなさい。

 

「よし、この位置ならバッチリ観察できます」

「誰かと待ち合わせかな?」

「相手もvipでしょうか?しかし、仕事モードのココさんとはまた違うような気がします」

「接近する人物あり!」

「外国人?」

「おやじ違う!おじいちゃんだよ。パパ活じゃなくてジジ活だった!」

「金は持っていそうですね」

 

 現れたのはおやじではなく、お爺さんと言っていい年齢に見える男。

 高そうなスーツをビシッと着こなした、英国風の老紳士だった。うーん、ジェントルマーン。

 護衛らしき男女のコンビを引き連れてのご登場だ。金の匂いがプンプンするぜい。

 

「傭兵を生業としている操者と愛バだ、たぶんギリ轟級」

「それなりの修羅場は潜ってそうですが」

「私たちなら、3分以内に無力化できます」

 

 自分たちの敵ではないことを看破する愛バ。それより今は、ココと爺さんだ。

 立ち上がりかけたココを手で制し、対面に座る紳士。

 紳士はココの姿を見て甚く感激しているみたいだが、ココの方は少々戸惑っている様子だ。

 

「護衛を遠ざけましたね。二人だけでどのような会話を?」

「こんなこともあろうかと。じゃーん、サトノ印の集音ガンマイク"耳ピト―"です」

「準備いいな。スピーカーモードにして、お、良く聞こえる。中々のクリア音声」

 

 どれどれ?どんな会話をしているんだ。

 「実は部屋をとってある。グフフ、今夜は返さないよ」だったら老紳士を処す覚悟だ。

 ガンマイクのスピーカから音声が聞こえてくる。

 

『この日をどんなに待ったことか、君に会えて本当に嬉しい』

『こちらこそ。お会いできて光栄です』

『写真とは比べ物にならない程に見目麗しい。その瞳、あの子に瓜二つだ』

『お褒め頂きありがとうございます』

『緊張しているのかい?そう堅くならず、楽にしてくれていい』

『そういうわけには』

『私と君の仲だ。遠慮などする必要ない』

 

 なんか馴れ馴れしいジジイだな。

 ココが可愛いのは分かるが、なんか不愉快だわ。

 

「マッチング相手が予想以上に可愛くて、テンション上げ上げなのでしょうか?」

「運よく当たりを引いて、ご満悦なハッスルジジイ」

「ココさんに随分とご執心なようで、瓜二つとは一体?」

 

 あのハッスルジジイを倒せば万事解決なのかい?みんなどう思うよ。

 

「突入はもう少し待ってください。相手が何者なのか知りたいです」

「ただの金持ちじゃなさそう、訳アリ臭がする」

「マサキさん、ここは我慢ですよ。精神安定に私の耳をお触りしてください」

「うん。ありがと」

 

 シロのウマ耳は極上の触り心地だ。

 イライラ解消にはもってこいで、シロのマッサージにもなる一石二鳥の優れもの。

 本人の了承も得たので遠慮なく触らせてもらおう。

 

「これは良き耳だ」もみもみ

「ふぃ~、耳のこりがほぐれますね~、ああ~そこそこ」

「あ、ジジイがココを舐め回すように見てる」

「なんだとぉ!」ぎゅぅぅぅぅ

「んぎゃぁぁ!みみしぼりぃーーー!」

「す、すまん」

 

 ヤバい、手に力が入ってウマ耳を強く握ってしまった。

 ごめんよシロ「痛いの痛いの飛んでいけ~」ヒーリングをしたから許してね。

 軟骨が飛び出したりしなくてよかった。

 

「はぁ、はぁ・・クロてめぇ、私のイチャラブを邪魔したな」

「どうしたのシロ?自慢の耳を握り潰されてよかったね」(*‘∀‘)

「いつか泣かす」(#^ω^)

「ケンカは後にしてください。今はココさんとお爺さんの関係を調べる方が先です」

「「ごめんなさい」」

「はい。素直でよろしい」

 

 シロとクロの衝突をアルが仲裁して手早く解決した。

 俺が口を挟まなくても、愛バたちは上手くやっていけている。感心感心。

 さて、ココと爺さんはどうなった。

 

『それで、わざわざ日本まで来られた理由は?』

『わかっているのだろう。目的はただ一つ、君だ』

『その件は前にお断りしたはずです』

『一度断られた程度で、諦められる問題ではないよ』

 

 断られてるのにしつけぇ!ハッスルジジイが粘着ジジイに進化した。

 

『私にはファイン家の仲間がいます。あなたと共に行くことはできません』

『その年で頭首をやっているのだったね。大変立派なことだと思う』

『ありがとうございます』

『しかし、まだ子供の君が日本を牛耳る御三家頭首とは、その責、一人で背負うには・・・』

『小娘の身に余る地位だとは重々承知しております。ですが、決して一人ではありません』

 

 一人ではないと、ココのよく通る声が聞こえる。よく言ったと褒めてやりたい。

 

「もしかしてこれ、パパ活でもジジ活でもないのでは?」

「そんな気はしていました。しかし、お爺さんがココさんを狙っているのは確かなようです」

「やらしい雰囲気はしない。ココの身体が目当てなわけじゃなさそうだ」

「お金に困っているようにも見えないなあ。金じゃないとすると欲しいのは、ファイン家の権力?それも違う気がする」

 

 ココ、爺さんはお前の何なんだ?教えてくれよ。

 

『侮辱したわけではない、私はただ君が心配なだけだ』

『どうしてそこまで』

『祖父が孫を心配する。当然のことではないかね』

『母は父と駆け落ちをしたと聞いています。身勝手な理由で国と家族を捨て、縁切りしたのですよ。その母から生まれた私も、あなた方との縁は既に無いもとの思いますが』

『娘と喧嘩別れをしたこと、本当に後悔している。私だけではない、妻も兄弟たちも、一族の全てが"ココット"を失ったことを悔やんでおるよ』

『罪滅ぼしのつもりですか』

『そうだな、そうなのだろうとも。都合がいいと罵られるのは承知の上だ。しかし、しかしだ、まだ取り返しのつく君を放っておくことはできない』

『わ、私は・・』

『迎えに来たのだよ、ファインモーション。一緒にアイルランドへ帰ろう、これからは家族と一緒に暮らそうじゃないか』

 

「「「なんじゃそりゃぁぁ――――!!!」」」

「へ?え?は?何」

 

 爺さんの言葉で驚きの声を上げる愛バ三人。俺は頭の整理が追いつかない。

 店員さん、騒がしくしてすみません。客は俺たちだけなので、どうかご勘弁を。

 と、とりあえず。すっかり冷えてしまったラテでもを飲んで気を静めよう。

 

「な、な、何言ってるのかアッパッパーの俺にはもう、わけわからんのじゃけぇのう」

「混乱しているのは、よくわかった」

「びひゃぁぁーーラテおいちーーですぅぅーーー」ボドボド

「マサキさん、そこw目ですよww」

「目からラテを飲む、激レアマサキさん。頂きました!!」カシャ!パシャ!

 

 口と目を間違えてラテを飲む俺を激写するアル、見かねた店員さんがタオルを持って来てくれた。

 「よくあることですから」と告げてカウンターに戻っていく店員さん、あってたまるかいな。

 「冷めていてよかったですね」と顔を拭いてくれる愛バたち、本当にな。 

 

 目ラテのおかげか、ちょっくら頭が動くようになって来た。

 アイルランド?どこ?イギリスの隣?帰るって何?ココが帰る=日本からいなくなる。

 え、ええ?えええ?ちょっと、ちょっと待って、ええ?

 

「あのジェントルマン、ココのジージだって。うーん、似てない!」

「要約すると、ファイン家頭首を辞めて一緒に来いと言ってますね。私たちとの縁もこれまでですか・・」

「あら?あらら?確か、ココさんは祖父母様から酷い扱いを受けていたのでは?」

「させるかよぉ!!」ダッシュ!

「待ってマサキさん!幼いココに酷いことをしたのは、父方の・・・」

 

 シロの言葉も聞こえない、テラス席から飛び出す!

 ココの過去話は聞いている。クソジジババに好き放題されたんだったよなぁ!

 そんな奴が、また一緒に暮らそうだと?どの口が言うのか!

 

 人も車も障害物も、全てを躱し、すり抜け、ホテルのエントランスまで一気に辿り着く。

 マサキ少尉突貫します!※少尉ではない

 

「どらっしゃっせぇぇぇーーーィィ!!!」

 

 高級ホテルにダイナミックイン!!

 ガラスを突き破っココの所まで直行しようかと思ったが、ホテル側に罪はないので我慢した。

 覇気を使った長距離スライディングで、正面から堂々とお邪魔します!

 

「な、なんだ!?」

「うわっ、なんか来た!」

「キャー変な男が滑り込んで来たわ!キャー割と好みよー!」

「さすが、トレセンが近いだけある。ヤバいのが出るわ」

  

 一般ピープルの皆様お騒がせします!どうか、しばしのご辛抱をよろしくお願い致します。

 

「宿泊はしません!ちょっとラウンジでお話するだけですので、お構いなく」

「お、お客様!」

「アレを客認定していいのか!?」

「ど、ど、どうすれば」

「皆落ち着きなさい、お客様の前だ」

「し、支配人」

「当ホテルへようこそ、ワイルドなお客様。非戦闘員の方もおられます故、どうか穏便にお願い致します」

「ありがとう、できうる限り善処します」

 

 話の分かる支配人さんに感謝する。

 俺に気付いた爺さんの護衛二人には、覇気で威嚇して動きを封じる。

 これで邪魔する者はいない。悠々と二人に近づく。

 ココがギョッとした目を向け、ジジイがポカンとしているがどうでもいい!

 

「マ、マサキ、え・・・なんで、いるの?」 

「ストーキングした」

「えぇぇ」(´Д`)

「突然なんだね君は!今、私たちは大事な話をしているんだ」

「しらん!過去の清算に俺の愛バを利用するな。反省も後悔も一人で勝手にやってろ」

「な・・・」

 

 俺の物言いに口をパクパクさせている爺さん。

 その隙にココの手を掴む。

 

「帰るぞココ」

「ちょ、待って、話を聞いて」

「後でな」

「待ちたまえ。孫娘をどうする気だ」

 

 どうするも何も、アンタから引き離すんだよ。

 手から伝わる覇気で分かる、ココは今もずっと困惑し動揺し狼狽えている。

 可哀そうに、ジジイからのストレスで心に傷を負ったんだな。

 

「私はその子の祖父だぞ!何の権利があって邪魔をする」

「操者権限だ。操者と愛バは近くにいるのがベスト、おわかりかな?」

「操者・・だと・・」

 

 ココから聞いていないのか?そんなことも知らないで祖父気取りとは、呆れるなあ。

 

「爺さんはアイルランドにココを連れ帰り、一緒に暮らしたいと思っている。間違いないか?」

「聞いていたの!?」

「盗聴していたことは謝る。で、どうなんだ爺さん?」

「その通りだ。祖国では家族が待っているのだよ、娘の忘れ形見である彼女のことを」

「・・・・」

 

 集音マイクの感度は良好だった。聞き間違いではなかったらしい。

 このジジイ、虐待クソ野郎の分際で、結構な眼力を飛ばして来おるわ。。

 ココは俺と爺さんの顔を交互に見た後、なんだか辛そうに頭を抱えている。。

 頭痛がするほど我慢していたんだな。俺が来たからには、もう安心だぞ。

 

「・・・・ませ・・ん」

「何?」

「ココは絶対に、あげませえええええん!!」

「「!?!?」」

 

 スペ風に言おうとして失敗した、これじゃビームマグナムを「撃てませえええええん!」だよ。

 バナージ、悲しいね・・・・

 

「血の繋がりは無いし、まだ結婚していないから夫婦でもない!でもな、俺は操者でこの子は愛バだ!」

 

「共に戦う仲間で、仲の良い彼女で、これからもずっと一緒に生きていく大切な女だ!」

 

「家族と言ったな!俺だってなあ、ココのことを本物の家族だと思ってるよ!」

 

「俺の大事な家族を、遠い国へ連れて行くだと?そんなことは断じて許さんぞ!」

 

 ぜえ・・ぜえ・・言った。言ってやったぞ。

 

 ホテルのロビー全体に響き渡る声で言ってやった。

 ん?ココがなんかプルプルしている。顔も真っ赤だし熱でも出たか?

 過去にトラウマを植え付けたジジイがいるんだ、それも仕方ないよな。

 

「ココと・・呼ばれているのか」

 

 ジジイはしみじみと愛称を呼んだ。気安いですぞ!

 

「そうか、そうか・・・どうやら私は勘違いをしていたようだ」

「あの、彼は大分おかしいというか、これが通常運転というか」

「ずっと一人で辛い思いをしているものだとばかり、そう決めつけていた」

「爺さん?何を言って」

「ファインモーション、なぜ彼のことを黙っていた?」

「だって、は、恥ずかしい・・し////」

 

 え?俺恥ずかしいの!?む、チクチク刺さる視線が痛い。

 あー、周りの人たちが、ホテルのスタッフや護衛に警備の人も集まって遠巻きに見られてる!

 これは確かに恥ずかしい!!

 ええい、ここまで来たら納得するまでやったらぁ!

 

「どうしてもココがほしいのなら、この俺を倒してからにしな」( ー`дー´)キリッ

「マサキ、もう、ホントやめて///」

「今日だってなあ、アンタに会う予定が無ければ今頃、イチャイチャパラダイスだったのに!」

「ほう、君は孫に手を出しているのか?」

「悪いか!双方合意の上だ!それより、いい加減に本性を現したらどうだ?ココを利用して今度は何を企んでいる」

「違うの、違うから」

 

 金は持ってないけど、愛バを守るためならコネも身内も女神もフルに使って戦う覚悟があるぞ。

 やんのか?表出るのか?バスカーの準備しておくぞコラ。

 

「やめてマサキ!この人は違うの」

「違うって何が?こいつが昔お前を虐待しやがった鬼畜ジジイだろ、万死に値するわ」

 

 腕にしがみつくココは首を振っている。何故止める、お前が許しても俺は許さんぞ!

 

「それは父方の祖父母!この人は、母方の祖父。直接会うのは今日が初めてなの!」

「初めてだぁ?お前の初めては既に俺がうば・・・むぎゅ」

「な、な、なに言い出してるのーーー!////」

 

 ココにヘッドロックされてしまいセリフが中断された。

 ココパイが頬に当たって幸せ、だからギブはしません。

 

「なあなあ、おぱーい少し大きくなった?」

「今それ聞く!?」

「後で測定させてね」

「黙って!もうホント黙って、お願いだから////」

「そんなに真っ赤になって、ジジイ!アンタのせいでうちのココが発熱したぞ、どうしてくれんだコラ!」

「マサキのせいだよ!!」

「煮え(たぎ)る俺の怒りが伝わってヒートしちまったかぁ。さすが俺の愛バだ」

「しまった!これマサキ空間だ、私が味わうことになるなんて」(;´д`)トホホ

 

 マサキ空間とは?

 マサキの言動により理不尽な精神的苦痛を与えられる異常事態、またその現場を指す。いわゆるアホの固有結界である。トレセン学園のネームドウマ娘たちは大体被害にあっている。

 

 なによこの解説?失礼しちゃうわ!

 

「くッ・・・フフッ、フゥーハハハハ!」

 

 俺とココのやり取りを見ていたジジイが突然の爆笑。老人特有の発作かしら?

 

「わ、す、すみません。お見苦しいところを」

「いやいや結構。先程の君たちは、まるでココットが戻って来たかのようだよ」

「お母様に?」

「ああ、結婚の挨拶だと男を引きずって来たかと思えば、人目も(はばか)らず惚気まくる。難色を示した私たちに悪態をついた後、実家を飛び出し行方不明。そのまま駆け落ちしたんだ」

「お母様、そんなにワイルドだったの」

「そう、元気な自慢の娘だったんだよ」

 

 あれ?なんかおかしいぞ、ジジイがココのお母さんの話をしている。

 ココママの話をするジジイはとても優しい顔で、ココも嬉しそうに聞いている。

 ジジイが悪い人に見えないし、ココとの関係も険悪ではない。

 過去ログを思い出せ、さっき何と言った?確か今日が初対面・・・あっ!

 

「わかったぞ、謎は全て解けた!」

「遅いよ!!」

 

 本当に遅かった。ジジイは、いや、素敵なおじい様は俺に向き直りこう言ったのだ。

 

「初めましてだな操者君。私はファインモーションの祖父だ、母方のな」

 

 母方・・・お母さんの実家ですね。えーと、

 

「悪いジジイではない?」

「良いジジイでありたいと思っておるよ」

「ココさん?」

「いじめられてないよ。もう一度言うけど、直接会うのは今日が初めてなの」

 

 そ、そうっスか。全部、俺の早とちりでしたか。

 

 ざわ・・・ざわ・・・

 

 遠巻きに見ていた、宿泊客並びにホテルスタッフが「やっちまったなぁ」という視線を向けて来る。

 ヒソヒソしている人も多いし、支配人は「あちゃー」と額に手を当てている。

 この野次馬どもが!見守ってくれたのに、こんな結果になってすまんの。

 

「仕方ないな」 

 

 いつものアレやりますよ、やればいいんでしょ!

 今回は事が事だけに気合を入れなければならんよな。天井の高さよーし!

 はい、いっせーのーで!

 

「すみませんでしたぁぁぁーーーー!!!」

 

 トリプルアクセル土下座しちゃった。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 俺はラウンジの床に額を擦りつけていた。そろそろ煙が出そうな勢いだ。

 

「もう頭を上げなさい」

「そういうわけにはいきません。もう、恥ずかしくて情けなくて、とにかく申し訳なくて」(´Д⊂グスン

 

 トリプルアクセル土下座を決めた後、高難易度技成功の余韻に浸っている暇はなかった。

 ココのじい様や、現場に居合わせた一人一人にマッハ土下座行脚したからだ。

 おでこがヒリヒリするほど擦ってもまだ足りん!

 ああ、もう嫌や、おじい様にもココにも愛バにも顔向けできない。早とちり乙!

 俺は本当に大バカ者や、そんな俺にココは寄り添ってくれる。

 こんなええ子の前で大失態を演じた俺、もう自分が恥ずかしくて悶絶しそう。

 

「やめとけ、俺みたいな恥ずかしい男の傍にいたら、お前まで笑いものだ」

 

 恥ずかしい男、略して恥漢(チカン)のアンドウマサキです。

 

「私の為に怒ってくれた人を、恥ずかしいだなんて思わないよ」

「嘘よ!だって恥ずかしくて、おじい様に紹介しできなかったんでしょ。泣くわ!」

「それは、だって、大好きな操者がいるだなんて知られたら、根掘り葉掘り聞かれた挙句「一族総出のお祭りじゃー!」とか言い出しそうな雰囲気だったから」

「孫のフィアンセを気にするのは当然だろう」

「ホントそういうの困るから、やめて」

 

 最近、頻繁にかかってきた電話はアイルランドからの国際電話だった。

 お爺様やその一族が、どうしてもココと話をしたいと、何度も通話していたらしい。

 

「連日「彼氏は?」「結婚は?」と、ひっきりなしにかかって来て、それはもう大変だったんだら」

「ハハハ、許してやっておくれ。皆、君が生きていたことに歓喜し、絶賛フィーバー中だ」

 

 国とか一族で嫌な予感していたけど、この爺様というかココ母の実家は偉い人集まりなの?

 

「おじい様たちはね、アイルランド王家の末裔なんだよ」

「へ、へぇー」

「大したことはない。歴史と資産を人より多く有しているだけさ」

「リアルなお城に住んでるんだって、凄いよね」

 

 うん、凄いよねキミもね!

 またしても、またしても!身分違いを痛感させられたぁ。

 日本で御三家のファインの頭首、アイルランドでは王家の末裔って何だよ。

 

 アイルランドが「王国」だったのはせいぜい近世まで、政治に口を出す権限も今はないらしい。

 それでも、お爺様たちを「王族」として敬う人々は多く、国の代表がわざわざ挨拶に出向くほどなのだとか。

 インモーとか言った奴、不敬罪で処罰されたらいいのに。それだと、シロとクロがヤバいな。

 

 恥漢の俺はまだ頭を上げない、このまま自分の要求を伝えよう。

 

「身分違いは重々承知しております。ですが、俺はもう、お孫さん無しではいられません!どうか何卒!何卒!俺とココの関係を認めてください」

「マサキ・・・おじい様、私からもお願い」

「ふむ・・・」

 

 今日は頭を下げてばっかりだ。そういう日もあるある。

 やってることが同じだって?さっきのは謝罪、今しているのはお願いだ!

 

「お願いします。俺からココをとらないでください!」

「孫のことを、愛しておるのだな」

「はい」

「大事にすると誓えるか?」

「はい、我が命に代えても」

「その言葉に偽りはないな。信じてよいのだな?」

「はい、我が命に代えても」

「君、そのセリフ気に入っておるな。言いたいだけだな」

「はい、我が命にかえても」

「マサキってば////お茶目さん」

 

 お爺様に届け俺の真心~我が命に代えても。

 

「モーションの方は・・・フッ、その様子では聞くまでもないか」

「うん。私、彼のことが好き。何があっても一緒にいたいの」

「血は争えんか、ココットと同じことを言うのだな」

 

 (ココ、我が命に代えてもが抜けてるぞ)

 (それ言わなくちゃダメなの!?)

 

「二人の気持ちはよくわかった。互いの心が通じ合っているのならいい、それが一番だ」

「では!」

「認めるしかあるまい。認めないと言ったところで二人は止まらない、そうだろう」

「よくお分かりで」

「孫娘フィーバーで要らぬお節介が過ぎたようだ。すまなかったね、モーション」

「ううん。おじい様の気持ちは嬉しかったよ」

 

 イイ感じに話がまとまった!いよっしゃぁ、しゃしゃしゃぁーーー!

 周囲を見渡す余裕が出て来たぞ。支配人をはじめ聞き耳を立てて見守っていた人たちが、サムズアップしてくれる。

 野次馬この野郎!照れるじゃねえかよ(/ω\)でも、ありがとうありがとう!

 

 緊張が解けると一気に喉が渇いて来た。

 察したココが「飲み物頼んで来るね」と席を立ち、俺とお爺様の二人だけになる。

 わざと置いて行かれた。

 

「君と話をする許可が下りたようだ」

「ですね」

「聞かせてくれないか、普段のあの子の様子を」

「はい、ココの魅力たっぷりでお届けしましょう」

 

 お爺様にココの話をする。

 ラーメンが好きなこと、ファイン家で頑張っていること、学園での様子や他のウマ娘とも仲良く出来ていること。

 1st関係のことは伏せておいたが、どの話も頷きながらしっかり聞いてくれた。

 

「モーションの母、ココットのことは聞いているかな」

「はい、確か事故で亡くなったと」

「少し話をしてもいいだろうか?」

「どうぞどうぞ」

 

 ココの母親、ココットさん。

 類まれなる容姿と、明朗快活にして自由奔放な性格で多くの者に愛されたウマ娘。

 家族内でもアイドル的存在だった彼女は、学生時代に短期留学で日本に訪れた。

 箱入りの彼女にとって日本という国は全てが新鮮で、大いに魅力的だった。

 ある日の晩、護衛を振り切り、ふらりと立ち寄ったラーメン屋で運命の出会いを果たす。

 出されたラーメンなる未知の食料に悪戦苦闘していると、隣の若者が声をかけてきたのだ。

 

『君、外国の子?ラーメン食べるの初めて?』

『らー?めん?』 

 

 それが自身の夫になり、後にココの父親となる男性だった。

 

 二人は瞬く間に恋に落ちた。

 その関係は留学期間が終わってからも続き、国と国との距離などは障害にならない程、仲睦まじかった。

 帰国してからもココットは何かと理由をつけて、何度も日本へ渡ることになる。

 さすがに怪しんだ両親に問い詰められ、日本人の恋人がいると白状。

 両親のみならず親類縁者一同は激怒した。

 自慢の可愛い娘、一族の宝物が見ず知らず男に奪われた。

 しかも日本人?サムライ、ゲイシャ、フジヤマ、変態的で未来に生きている人種だと聞くが。

 

 大反対されたココットは、めげることなく根気強く両親たちを説得しにかかる。

 だが思うようにいかない日々が続く。

 彼に会ってくれさえすれば、そうすれば首を縦に振ってくれる。

 そう信じたから二人はアイルランドにて顔合わせの機会をセッティング、どうか結婚を許してくださいと、精一杯頭を下げた。

 それでも両親は許してはくれなかった。そればかりか、両親は彼に罵詈雑言を浴びせ家から追い出そうとする始末。

 鬼の形相で怒鳴り散らす両親に随分酷いことを言われたが、彼は笑みを崩さず堪えてくれた。

 「元気な人だね」と空気の読めない発言をしていたので、単に言葉がわからなかったのかもしれない。

 両親の心無い言葉に、今度はココットが激怒する番だった。

 

『そんなに言うならもういい!私はこの家から・・国から出ていきます』

『お父様たちが心の底から彼に謝罪するその日まで、私が祖国の地を踏むことはないでしょう!』

 

 愛娘のキレ散らかした姿と絶縁宣言に呆然とする両親、それを無視してココットは実家を飛び出す。

 両腕に愛しい彼をしっかり抱いたまま走り去る後ろ姿・・・駆け落ちしたのだ。

 それが今生の別れになろうとは、この時は思いもしなかった。

 

 そうして、ココットは国を出て日本で暮らすことになる。

 二人は結婚して、子供が生まれて、後の顛末は以前ココから聞いた通りだ。

 

 懺悔のような告白をして、老紳士は目を伏せる。

 愛する娘とケンカをしたまま、二度と会えなくなってしまったのだ。

 その悲しみを推し測ることは、若僧の俺にはできそうにない。

 

「ココットの旦那君は、本当に良い男でね」

「ウホッ!的な意味でしょうか?」

「立派な人間だったという意味だ。駆け落ちしてからすぐ、ココットに内緒で連絡して来てくれたのだ」

 

 そう言って、おじい様は古い写真を俺に見せる。

 結婚式の場面だろうか、タキシードを着た男性とウエディングドレスを着たウマ娘が写った写真だ。

 

 旦那さんは写真を添えて定期的に連絡してくれたのだという。

 そのことはすぐに嫁バレし「国には帰らないが定期連絡はする」とココットさんも了承したのだ。

 

 それからしばらく、月に一度の手紙に孫娘が生まれたと記されていた。

 アイルランドではお祝いのパーティーが開かれたのは内緒だ。

 孫の成長と共に連絡の頻度は増え、週一になった電子メールには吉報が書かれていた。

 

『今度、娘と旦那を連れて里帰りします。歓迎の準備はよろしいですか? byココット』

 

 王族たちは一気に沸いた!

 ココットが帰って来る、旦那君にも謝らないと。

 写真でしか見たことがない孫娘も一緒だ。絶対愛らしいに決まっている!

 リハーサルのパーティーが開かれ、みんな首を長くしてその時を待った。

 家族の絆を取り戻し、幸せの絶頂を迎える・・・はずだった。

 

『事故で息子家族は全員亡くなった』

 

 あまりにも簡素な、たったそれだけの知らせだった。

 悪い冗談か?何かの間違いだと思い、日本まで腕利き調査員を何度も派遣した。

 結果は知らせの通り、交通事故により一家は全員死亡。旦那方の親族とも、そのうち連絡が取れなくなった。

 

「いや、待ってください!ココは生きているじゃないですか?」

「ああ、故意に隠されていたのだよ。調査員たちは旦那君の両親、旧ファイン家から金を受け取り、我々に嘘の報告をするように丸め込まれていたのだ」

「なんだよそれ。マジで腐ってやがる」

「調査員の話を鵜吞みにした我々も愚かだった。そのせいであの子には辛い思いをさせた」

 

 ようやく再開できると思った矢先の訃報で、心身共に疲れ切った状態だ。

 信頼していた者の言葉を疑う余裕などなかった。

 王族たちは嘆き悲しみ、あの時、素直に結婚を許していれば、こんな事にはならなかったと悔やみ続けた。

 

 後悔と自責の念に苦しむこと幾年。

 そして先日、旧ファイン家を名乗る老夫婦が訪ねて来た。

 

「わざわざアイルランドまでですか?」

「そうだ、急に押しかけて何事かと思ったら、開口一番こう言ったよ「金を寄越せ」とな」

「どこまでも、ふざけてる」

 

 自分たちから関係を断っておきながら「一度は親族になったのよしみ」「出来の悪い娘を嫁にもらってやった恩は無いのか?」「息子が死んだのは嫁のせいだ」と言いたい放題だったらしい。

 勝手な言い分に腹は立ったが、頭のおかしい連中のあしらいは王族スキルで習得済み。

 聞きたくもない話を要約すると、日本を出てからの豪遊で豊富にあった財産を数年で使い果たしてしまったということだった。

 

 その金は、1stからやって来たファイン家からの手切れ金だ。

 ココの身柄とファイン家を手放す代わりに、一生遊んで暮らせる金を手に入れたはずでは?

 それを数年で溶かすとか、度し難いにも程がある。

 

「もちろん、お断りされたのですよね?」

「当然だ。しかし、叩き出されるとわかったあの者たちは、顔を歪めてこう叫んだ「孫は生きている」と」

「・・・・」(# ゚Д゚)

 

 怒髪天を衝くとはこういうことか、顔も知らない鬼畜ジジババどもに腸が煮えくり返る。

 死んだことにしていた孫を、金を引き出す材料にしやがった!

 

 息子夫婦亡き後は、孫を都合のいい道具にして私腹を肥やすため、死を偽装して母方親族と絶縁。

 利用価値が無いと分かれば虐ぬき、厄介者扱いをする。

 1stファイン家に高値で売れた事を喜び、孫との別れを惜しむ素振りすらない。

 そして、金が尽きれば母方親族に接近、切り札として孫の生存を告げる。

 「自分たちに金を払えば孫と会える」とでも抜かす気だったのかよ?

 

 貴様らそれでも人間か?このゲスがぁ!!!

 ゆ゛る゛さ゛ん゛!!リボルクラッシュで爆殺してやるわ!!

 

「そいつら、どうなりました?」

「モーションの情報を洗いざらい吐かせた後、警察に引き渡したよ。投資詐欺や借金の踏み倒し等、余罪はたっぷりあったからな。どうやら、危険なマフィアに相当な恨みを買っているらしく、刑務所で余生を送れたらマシな状況だろう、奴らは終わりだ」

「納得はできませんが、スカっとしました」

 

 ゲスどものざまぁな末路で溜飲が下がったぞ。悪は滅びたのだ。

 これでまだ野放しだったら、俺が直々に制裁を加えに行くところだったぜ。

 

 そういう経緯でココの事を知り、今日は良爺と孫娘がやっとのことで感動のご対面だったのだ。

 俺はそれを邪魔したのか、あわわ・・・とんでもないことしちゃった。

 

「邪魔してすみません。俺、ココがどうしても心配で、あなたにとられると思ってパニックに」

「孫のことを思ってくれて、ありがとう。君のような男がいるなら安心だ」

「あなたのようなおじいちゃんがいて、ココもきっと嬉しいはずです。操者の俺が保証します」

 

 年齢を感じさせない若々しい笑みを見せるおじい様。

 差し出された手を握り、男同士の固い握手を交わす。

 手を通してこの人の思いが伝わる。よかった、本気でココを大事に思ってくれている人だ。

 

「マサキ君だったかな。今度は君のことを教えてくれ、孫が好いた男の話が聞きたい」

「語る程の者ではございませんが、それでも良ければ。俺はトレセン学園で養護教官をしています」

「おお!あの名門校で教官を、さぞや優秀なのだな」

「操者も兼任しており、いずれ悪い奴と決着をつけなければならない身の上です」

「なんと!大いなる使命を背負っているのか、益々気に入った」

「4人の愛バたちにいつも助けられていますよ」

「はっはっはっwww恋多き男だな・・・・・・・・・・4人?」

「はい。ココの他に、アル、クロ、シロ、で4人です」

「孫以外の愛バとは、仕事上のみの付き合いか?」

「いえ、仕事もプライベートも深い付き合いです。全員本命です」

「深い付き合いとは、どこまでだ?」

「そこまで話すんですか。えー、裸見ても平気なレベルっスかね、あっちの方もお世話にな・・・」

 

 握ったままだった手にギリギリと力が込められる。

 おじい様!?子の力、被戦闘員の握力じゃないのですが、一体どうしたんです???

 な、なんスか、その目は?正直に答えたのに汚物を見る目になってますよ。はっはーん、さては老眼だな。

 

「いたたた!おじ、おじい様!手が痛いっス!」

「やはり日本男児は油断ならん!君とはじっくり話し合う必要がありそうだ」(#^ω^)

「俺を疑っていますね?いいでしょう、愛バのみならず、母と姉と幼女+その他諸々にも炸裂すると評判の我が愛を語ってあげますよ!!」

「何だそれは!貴様とんでもない爆弾を抱えておったな!」

「安心してください、ちょっと、マザコン、シスコン、ロリコンで浮気者と言われる程度ですから」

「安心できるかぁぁぁ!!」

 

 お怒りになられましたか?そんな大声出したら血圧が上がりますよ。

 お、いいタイミングでココが戻って来た。

 

「もう仲良くなったんだ。さすがマサキだね」

「モーションよく聞きなさい!この男は、マザコン、シスコン、ロリコンの三重苦だそうだ」

「そんなの知ってるよ」

「えぇ」(´Д`)

「それでも好き、大好きなの////」

「えぇぇぇ・・・」(´Д`)

「俺も好きだ。傍にいてくれるな?」

「うん。あなたと一緒がいい、一緒じゃなきゃ嫌だよ」

 

 お爺様の握手解除!ココの手を取って見つめ合う。もう二人の世界っスよ!

 支配人さん「ヒュー熱いぜ!羨ましいぞこんちくしょう!」の感想ありがとうございます。

 キャラが変わってますよ。

 

「こ、これが若さか・・・」_| ̄|○

 

 膝をつき項垂れるお爺様。それを見て俺たちは勝利を確信したね。

 

「「勝った!!」」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 俺とココの愛により、おじい様の野望(アイルランド行き)を阻止した。

 というより、おじい様はココに好きな人がいた場合は、素直に本人の意向に従う気だった。

 愛娘の結婚に反対したこと、今も引きずっているんだなあ。

 

 俺がヤバい男だという、悲しい行き違いがあったものの、ココの説得で何とかなった。

 最終的に折れたおじい様が「もう、好きにしなさい」と言ってくれた。やったね!

 

 お騒がせしたホテルにお礼を言って外に出る。

 アル、クロ、シロのすがたが見えないと思ったら、俺がおじい様と相対している間にホテル側と話をつけてフォローに回ってくれていた。できる愛バで嬉しいよ。

 

「本当にいいのかい」

「うん。道中、アイルランドのお話を聞きたいな」

「わかった。空港までお願いしよう」

 

 ココはおじい様を空港まで送って行くことになった。おじい様ちょっと嬉しそう。

 さすがにこれ以上は遠慮しておく。短い間だが、祖父と孫の水入らずで過ごしてちょーだい。

 通信網が発達したご時世だ。離れていても、これからは好きな時にリモートで話せるな。

 おばあ様や他の親族もその日を心待ちにしていることだろう。

 本当に良かったな。ちょっと目が潤むぜ。

 

「マサキ君、孫のこと、くれぐれもよろしく頼む」

「はい。我が命に代えても」

「それはもういいw君さえ良ければ、いつでも国に招待しよう。永住権を用意して待っておるぞ」

「わー、それも楽しそうだね」

「ココ!お爺様も!」

「はっはっはっ。ではな、また会おう、孫娘を射止めた幸運なる男よ」

「はい。どうかお気を付けて」

「じゃあマサキ。今日はありがとう」

「ああ、しっかり送ってやりな」

 

 vip用の車が発進したのを一礼して見送る。ホテルマンさんが「ナイスお辞儀」と褒めてくれた。

 

 ココパパさんはいい人なのに、その親はマジキチだとはな。

 鳶が鷹を産んだってヤツなのだろうか、それとも毒親を反面教師に育った故か。

 家族かあ、俺は孤児院にいた頃も、今も本当に恵まれているんだなと、しみじみ思った。

 園長、今頃どうしているかな?なんか母さんにも会いたくなっちまった。

 

 ホテルを出て歩いていると3人が合流した。歩調を合わせてのんびり帰るか。

 

「これにて任務完了ですね」

「そういうことだ。いろいろフォローありがとう。俺が先走ったせいで迷惑をかけた」

「いえいえ、マサキさんは正しい行いをしたのですよ」

「そうだよ。もっと誇っていいと思う」

「かなり恥ずかしい奴だったけどな」

「トリプルアクセル土下座www凄かった!」

「決定的瞬間はバッチリ動画撮影済みです」

「やーめーろーよー」

「個人的に楽しむ分にはいいでしょうw」

 

 やれやれ、トリプルアクセルでしばらく弄られるのは覚悟だな。

 

「いいな~ココが羨ましいな~」

「爺様相手に一歩も引かずあの主張!愛バでなくても痺れますよ」

「私も、あげませえええええん!!されたいです」

「やーめーてーよー」

 

 褒め殺し?ああもう、今になって恥ずかしさがぶり返して来た。

 からかい上手の愛バたちには適いません。

 愛バたちは俺の大事な家族だ。家族の為と思えば、多少の無茶は承知の上だ。

 今日みたいなことがまた起こったとしても、恥も外聞も無く突撃するぞ。

 

「ということで、家族に遠慮するのは無しだ。俺に要望があれば何でも言ってくれよ」

「そのサービス精神、素敵です。では早速ですが、王子様抱っこさせてください」

「あ!ズルいよ。私がやりたいのに」

「私なら自宅までの送迎最速理論を実践できますよ?」

「ならば後は任せる。安全走行でお願い」

「「「任されました!」」」

 

 今日の恥は掻き捨てということで、試しに運んでもらうことにした。

 話し合いの結果、3人で運ぶことにしたらしい。

 おい、王子様抱っことやらはどうした、1人づつ順番に運べばいいのに。

 クロが頭を、シロが胴体を、アルが足を・・・何これ?捕虜なの?生贄なの?

 どう見ても捕まった得物を「えっさ、ほいさ」と運ぶ未開の原住民スタイルです。

 「ママ―、あの人たち何してるの?」「シッ、見ちゃいけません!」のテンプレ親子目撃されてしまった。

 どんな羞恥プレイでも、愛バが満足なら良しとする。

 ま、待て、速い!速いから!スピード出し過ぎだ。安全走行でって言ったのにー!

 

 案の定、ウマ娘が人間を拉致していると通報され大事になった。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ふぃ~、今日は大変でごぜえましたよ」

 

 1人でバスタイム。読者様へのサービスシーンですぞ、想像してもいいのよ(´∀`*)ウフフ

 温かい湯船に浸かると、体の芯か疲れが取れていく~。

 

 リラックスしなが今日を振り返る。

 

 ココのパパ活疑惑に始まり、アイルランドから爺様来襲、俺たちラブラブ家族でフィニッシュ!

 帰り道でまたひと悶着、追いかけて来た制服警官(ウマ娘)とデッドヒートを繰り広げるとは思わんかった。

 走りながらテンション上がった愛バたちが、中々止まらないから苦労したぜ。

 俺が操者で3人が愛バだと説明すると、お巡りさんは注意だけで解放してくれた。

 お仕事ご苦労様です。お騒がせしてサーセンしたぁ!

 

 ココとお爺様は今頃、どんな話をしているんだろうなあ。

 悪しき父方祖父母は成敗され、善き母方祖父母とは今後ともよろしくと相成った。

 終わり良ければ総て良しだ。

 

「雨降ってジジイが固まるとはよく言ったもんだ」

「それを言うなら、雨降って地固まるだね」

「・・・・」( ゚д゚)ザバッ

「・・・来ちゃった」

 

 なんでいるのよ?ビックリして立ち上がったじゃないの。

 お風呂に侵入された!?ならば、お約束を叫ぶのみ!

 

「キャー!のび太さんのエッチ!」

「のび太違う!私だよ、あなたの愛バのココだよ」

「キャー!ココさんがエッチ!」

「今更でしょ。両手で胸隠すの腹立つからやめて!どうせなら下のガードを優先しなよ」

「もっともなご指摘だ。下を守るのが先ですね」

 

 おぱーいガードを解除し、今度は両手でヒップをガードする。

 フッ、こいつらよくホモに触られるから、しっかり守ってやらねぇとな。

 

「尻じゃなくて前!股間からぶら下がってるヤツを守れ!」

「股間とか、ぶら下がってるとか、いやらしいわね////」(/ω\)

「そう思うなら言わせないでよ」

「君は隠さないのかい?」

「減るもんじゃないし、見たいならご自由にどうぞ。まずはシャワシャワ~♪」

 

 女性にフルフロンタルで堂々とされると調子狂うな。

 尻のガードをやめて、再び湯船に沈む俺はシャワーを浴びる愛バを見て目の保養。

 髪を下ろしたココ・・・キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!ヒュー!可愛いィィィ。

 

「隠形を使って風呂覗きとはやってくれる。全然気づかなかった」

「覗きじゃないよ。一緒に入ろうと思ってのサプラーイズ」

「じい様はどうした?」

「ちゃんと離陸するまで見送ったよ。その後、私は全力疾走で帰って来たの」

 

 それにしても速い、これは相当無茶したな。

 リンクした俺に気取られないように、覇気の調整をし隠形で気配遮断までやってのけた。

 此度のお風呂乱入にどれだけの技巧と労力を駆使したのか、やれやれ嬉しいねぇ。

 

「お待たせ。そして、お邪魔しまーす」

「きゃ、お湯が溢れちゃうのー」

「このザブンッ感が堪らない。うんしょ、もうちょっと・・これでよし」

「狭いっス」

「だがそれがいい!でしょ?」

「まったくだ」

 

 入浴スペースを空けてやり、二人で湯船に浸かる。

 ココを後ろから抱きしめるような体制だ。この密着感、最高じゃないかぁ!!

 スベスベの素肌が、解いた髪が、一糸纏わぬ女体が、ゼロ距離にあるんじゃーーー!

 しかも!触っても怒られない!!!楽園はここにあった・・・ココだけに。

 

「上手くいってよかったな。うん、よかった」

「マサキのおかげだよ。私一人じゃ、もっとぎこちない感じに終わって、おじい様とは疎遠になっていたかも」

「俺は勘違いで突撃しただけ、引っ搔き回して悪かったな」

「そんなことない。全部、全部あなたのおかげ、本当に感謝しているよ」

「愛バの助けになれて、操者冥利に尽きるぜ」

 

 労いを込めて細い肩を揉む、別の所も揉んでいいの?やったぜ!

 ・・・・・・・やっぱ大きくなってね?

 

「嬉しかったなー。大切な女だ、家族だって・・・ホント、泣いちゃうぐらい嬉しかった」

「それでプルプルしていたのか」

「照れと怒りと恥ずかしさも十分あったよ」

「マジさーせん」

 

 ココがじい様と会うことを黙っていた理由、今ならわかる。

 もし、母方の祖父母まで鬼畜だった場合、俺に迷惑がかかると思ったんだろう。

 父方の祖父母も最初は善人面していたらしいから、ココが警戒したのも当然だ。

 それはまったくの杞憂になったわけだが。

 

「内緒にしていてごめんね」

「こちらこそ、ストーキングしてごめん」

「サプライズはともかく、隠し事はダメだよね」

「時と場合によるな。1人で抱えるのが無理なら、すぐに頼ってくれ・・・俺も、そうする」

「秘密・・・あるの?」

「どうだろうな。俺も知らない自分の秘密か、わかったら即刻暴露するぜ!」

「クスッ、なら安心だ」

 

 後頭部をグリグリ押し付けて来るココ、あぅ、鼻が潰れちゃう。

 

「アイルランドの王族だなんてビックリだな」

「ホントだよねー。お父様もお母様も教えてくれなかったから」

「向こうに行ったら「殿下」なんて呼ばれたりして」

「殿下の我を愛バにするとは不敬だぞ~わかっておるのか貴様~♪」

「恐れながら殿下、混浴している時点で不敬もクソもないですぞ!」

「是非もなし」

「殿下、それは尾張のノッブです」

 

 いつの日か、ココがアイルランドに行くときは一緒に行きたい。絶対ついてくついてく。

 俺と愛バ全員でのりこんでやるからな。待ってろよ、モハーの断崖。

 

「あ・・・」

「どうした?お湯の温度上げる?」

「当たってる」

「何が?」

「マサキの・・・バリカタが当たってる////」

「バリカタ言うな」

 

 麺の硬さで例えるのやめろ。

 仕方ないでしょう!好きな女とお風呂で密着しているんだぞ!

 硬くならない方が、男としてどうかと思いますけどねえ!!

 お許しください、これは男としての性なのです。ルクスを見たらボコるぐらい、当然の帰結なのです。

 

 ニヤニヤしながら振り返ったココは立ち上がり、こちらに向き直ってから腰を下ろす。

 うわーい、いろいろ丸見えだぁぁーーー!そして対面だぁぁぁーーー!

 

「謝らないでいいよ。私でそうなってくれて、嬉しいんだから」

「寛大な御心に感謝します」

「そうだ、おじい様からマサキに伝言というか、注文があるの」

「俺にか?大したことはできないぞ」

「マサキにしかできない注文だよ。もちろん私も協力するから」

 

 注文とやらを聞いてみないことには、何とも言えないな。

 対面で抱き合うココは笑顔で告げる。

 

「「ひ孫の顔を見せてくれ」だってさ」

「お、おう////」

 

 あの欲張りじいさん!何を予約注文しとんのじゃい!お急ぎ便は無理です!!

 せめて、せめてルクスを倒すまでお待ちを!

 

「今すぐじゃなくていいよ。でも、そうやって新しい家族が増えたらね・・・凄く幸せだなって、思うの」

「同意します」

「というわけで、今夜はリハーサルと参りましょうか」

「やはりこうなったか・・・知ってた、ちょっと期待してた」

「正直でいいね。今日、大活躍したマサキには、いつも以上にサービスしちゃう」

「イィィィヤッッフォォォッッーーー!」魂の叫び(歓喜)

 

 そうと決まれば、はよせな!

 互いの体を洗いっこした後、熱めの風呂でしっかり温まってから上がる。

 

 風呂上りのドライヤーとブラッシングも、最早手慣れたもんです。

 ベッドの上でブラッシング中、しな垂れかかり甘えて来るココが耳元で囁く。

 

「幸せな未来までエスコートしてくださる?」

「ああ、我が命に代えても」

「・・・無上の時を分かち合いましょう。私の手を取って、Darling(ダーリン)?」

「我が命に代えても」

 

 今日は「我が命に代えても」で乗り切るぜ。

 カッコよく「OKだぜHoney(ハニー)!」と返せない俺ってばヘタレ。

 キザな台詞は練習不足、もっとハーケンから学んでおくべきだったぜ。

 

 お前たちもう寝なさい。ハイ!暗転しまーす。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・バリヤワにされちゃった(/ω\)キャッ

 

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