俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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教官デイズ

 アイルランドからココのお爺さん(善)がやって来た。 

 パパ活と勘違いした俺は現場に突撃をした。土下座と惚気となんやかんやで勝利を掴み取る。

 これからも俺たちとココは一緒だ。

 

 トレセン学園は今日もウマ娘たちが切磋琢磨している。

 世界の未来を担うのは君たちの若い力だ、頑張ってくれたまえよ。

 教官としてその手助けになることが俺の仕事だ。う~ん、誇らしい!!

 

 広い学び舎は移動も一苦労だ。迷子になりやすい俺は逐一マップを確認しながら移動している。

 理事長の確認が必要な書類を届け「うむ。承認」の一言と共に印鑑をついてもらった。

 後は、これをウェンディ教官に渡せば任務完了だ。

 任務を終え、医務室に戻る途中でゴルシにエンカウントしてしまう。

 やだ、めんどくさい。

 

「よくぞ参った。伝説の勇者ロリコーンよ」

「なんか始まった」

「お主にこれを進呈しよう。ありがたく受け取るがよい」

 

 某RPG王様口調のゴルシから、魚肉ソーセージの束(一本食べかけ)を押し付けられる。

 どうしろと?

 

「では行くがよい。幼女の尻を追いかけるのは程々にするのだぞ」

「うっせぇ」

 

 余計な一言を告げてゴルシは去って行った。一体なんだったんだ?

 あいつの行動はいつも意味不明だ。したがって、考えるのは無駄だと結論付けることにする。

 もらったソーセージは一本だけ食べて、残りは医務室を訪れた生徒たちに振舞った。

 食べかけのヤツは腹をすかせたスぺが綺麗に食べてくれた。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 最近、調子の悪い仕事用パソコンに少々ストレスを感じていた今日この頃。

 ふらっと、医務室を訪れたエアシャカールが修理を買って出てくれた。

 

「直りそう?」

「待てよ・・よし、これでいいはずだ」

「もう終わったのか、さすがだな」

「この程度で褒めんじゃねよ。しかしまあ、こいつは悲しいぐらい低スペックだな」

 

 学園からの支給品だから仕方ない。

 最低限のオフィスワークが出来ればそれでいいんだよ。

 

「ムカつくから少し調整しておくぞ」

「助かるわ~」

「何だこの【癒し】フォルダは・・・ロリの写真だらけじゃねーか!!仕事用のPCに何してんだ」

「フフッ、小さい時のクロとシロだ。見ろよコレ、犯罪級の可愛さだろ?エヘ、グエヘヘへ」じゅるり

「お前は犯罪級にキモイけどな」

「やかましいわ」

 

 チビクロシロを見ていると自律神経が整い、仕事の能率が爆上がりするのだ!

 ※個人の感想です

 

 癒される~、はわわ///何度見ても可愛すぎる!

 コピーとかしないでよ。これは俺だけの癒し・・・ちょ、おま、何しとんねん!

 

「ゴミ箱にインするなんて酷すぎるだろ!戻して!今すぐ二人を元に戻して!」

「あ、手が滑った」 

「え、嘘、か、空に、ゴミ箱が空に!?なにしてんだよぉぉーーー!」

「写真が多すぎて容量圧迫してんだよ。これで動作が軽くなったはずだ」

「だからって、そんな・・・ごめんよクロ、シロ、マモレナカッタ」

 

 畜生め!だが甘いなインテリヤンキーよ。

 【癒し】フォルダは山ほどあるバックアップから、すぐにでも復元してやるぞ

 フフフ・・・フフフフフフフフ、フフフフフフフ・・・デッドエンドシュート。

 

 パソコンを最適化した後「じゃあな」と言ってシャカはクールに去っていった。

 

「お、凄いぞ。明らかに動作が軽くなってる」

 

 俺が使いやすいように設定をいじってくれたみたいだ。ありがてぇ。

 こいつで仕事が捗るってもんよ。えーと、次号の保健便りと授業で使うプリント、それから・・・

 

 ・・・・・・・・・・・

 

 お昼前にハゲ(ルオゾール)から電話がかかってきた(番号教えた覚えがない!?)

 ゴルシにシャカ、そしてルオゾール、全員ファイン家の関係者だ。

 もしかしなくても、これはココの一件でお礼をしているつもりなのか?もう、素直じゃないんだから。

 

 ルオゾールは俺とココの件を詳細に知っていた。

 やけに詳しいと思ったら、ビルドンホテルでの俺たちを見ていたらしい。恥ずかしい!!

 そうだよな、隠密活動に優れたファイン家が、俺と愛バの素人探偵ごっごに気付かないはずがない。

 あえて俺を突撃させたのね!まんまと利用されました。

 

「マサキ様の雄姿、固唾を飲んで見守っておりました」

「様はやめいちゅーに」

「トリプルアクセルキックでアイリッシュジジイを葬り去った時は、胸のすく思いでしたな」

「捏造やめて」

 

 葬ってないよ、謝り倒してお願いしまくって許してもらっただけだよ。

 

「1stでも2ndでも、ファインは多くを失いすぎた。アイルランドのご家族が傷ついた心を癒す一助になれば、こんなに嬉しいことはありますまい」

「そうだな。あの爺様たちなら、そうなってくれるさ」

「失くすことの恐怖を知っているが故に、誰かに期待し、頼り、大切に思うことを怖がっているのです。その心に踏み込むことは・・・我々にはできません」

 

 部下の皆さんを見ていれば、ココがファイン家の頭首として慕われていることは十二分に分かる。

 皆がココの力になりたいと、一所懸命な彼女を支えたいと思っている。

 しかし、ココは明確な線引きをしている「これ以上は入ってこないで」とやんわり拒絶する。

 「大丈夫」「私はまだ大丈夫」そう自分にも他者にも言い聞かせて、折れそうな心を守って来た。

 そんな彼女に誰が踏みこめよう。

 下手な憐憫や同情でより深く傷つけることになるぐらいなら、そっと見守るしかできないではないか。

 

「だが、あなたは違った。今のファインはあなたに期待し、頼り、大切に思い、甘えてさえいる」

 

 俺は今のココしか知らない。でも、前のココからいい方向に変わってきているなら嬉しい。

 

「ファイン家一同の総意としてお礼申し上げます。此度の件、そして、我らが頭首ファインモーションを愛バにして下さったこと、心より感謝致します」

「こちらこそだ。これからもココと俺たちをよろしくお願いします」

「はい、我らが命に代えても」

「やめて!」(/ω\)

 

 一部始終見られてセリフまでパクられる始末。(;´д`)トホホ

 

 ルオゾールも変わったよな。やっぱ頭丸めてサッパリしたのが精神的にも良かったのかな。

 邪教の神官が、今じゃファイン家の幹部で、ゴルシよりも多方面で活躍しているらしい。

 

「そうだ、ハゲゾーは三女神信仰に詳しいんだったな」

 

 ハゲたルオゾール略してハゲゾーと呼ぶことにした。ハゲ蔵と書くとチケ蔵と被ってるな。

 

「ええ、ヴォルクルスなんたらの前は、三女神を強く信仰しておりましたが何か?」

「シャナミア、機甲竜について何か知っているか?」

「ほう、竜姫をご存じとは通ですな。ファインから聞いたのですか?」

「本人に会った」

「な!?そのお話、詳しく」

 

 ・・・・・シャミ子について説明・・・・・・

 

「女神は実在した。なるほど、1stではベーオウルフたちの進撃が早すぎて、継承者の選定が間に合わなかったのですか」

「神様なりに、いろいろ制限があるみたいなんだ。それでも精一杯頑張ってくれている。だから・・」

「お気遣いありがとうございます。一度は信仰を捨てた身ですが、女神たちを恨む気持ちは最早ありません。真の悪はルクス、赤きオルゴナイトだとわかったのですから」

 

 ルオ蔵は1stを救ってくれなかった三女神たちを恨み、邪神ヴォルクルスに乗り換えた過去がある。

 今は吹っ切れたようでなにより。俺もシャミ子たちのことを悪く思ってほしくないからな。

 

「この間の強盗事件はご存じですかな?」

「サトノとファイン両家同時襲撃のヤツだろ、技術データをパクられて残念だったな」

「データはおまけ、奴らの狙いは機甲竜です」

「ああくそっ!やっぱりか」

 

 嫌な予感がしていたが、その通りだったみたいだ。

 ハゲゾーとにはどうしてそれがわかったか?

 

「以前より、ファイン家ではサトノ家と協力してある情報を流しておりました。御三家が"竜を模した戦略級の超兵器"を復活させた、その起動には"竜の欠片"なるアイテムが必要だと」

 

 その情報にルクスとその愛バが食いついたって訳か。

 

「今回襲撃された場所は、ファイン家「開かずの第七倉庫」とサトノ家「ダイヤちゃんのおもちゃ箱」の二ヵ所です。いずれも竜の欠片があるという、偽りの情報で指定された場所」

 

 サトノ家のネーミングセンスがヤバいのか、それともシロ自身がヤバいのか、両方だな。

 超兵器絡みの物もシロにとってはおもちゃかよ。

 

「嘘っぱちの場所にピンポイントで現れた。で、竜の欠片は今どこに?」

「そんなもの最初から存在しませんw」

「うはw酷いw」

 

 ルクスの奴、騙されてやんのwww。

 違うな、例え嘘であったとしても調べずにはいられない、その価値が機甲竜にはあるんだ。

 

「パパさんもココも人が悪い、俺たちにも知らせず情報を拡散させていたとはな」

「敵を騙すには味方からというものです」

「やっぱり、いるな?」

「ええ、おります」

「学園にもか?」

「恐らくは」

 

 学園、御三家、ギルド辺りには、既にルクスのスパイが潜り込んでいる可能性が大きい。

 ラ・ギアスやシラカワ重工、テスラ研にも注意して・・・そっちはシュウや母さんに任せよう。

 ホントGみたいにコソコソするのがうまい奴らだ。バルサンで一網打尽にしてやろうか?

 

 こうなるとシャミ子がヤバい!本体がどこにいるのか聞いておけばよかった。

 

「竜の眠る場所はわかっております。というか、そこしか残っておりません」

「メジロ家か、そこだけはフェイクじゃなかったんだな」

 

 ご先祖であるシャミ子の存在を知っていた、アルやマックたちですら、機甲竜の安置場所は一切聞かされていない。

 場所を知っているのはメジロ家現頭首、顔の確認できないあのご老体のみ。

 

「ばば様は何と言っている?」

「知らぬ存ぜぬの一点張りです。あの者は秘密主義で有名ですから、素直に答えはしないでしょう」

 

 確かに、顔すらまともに見せてくれないからな。

 

「今後、ルクスはメジロ家を狙うでしょう。それに合わせてメジロ家では軍備増強の動きがあります。外部のものと提携したりと、何かと忙しい様子でして」 

 

 アルもそんなことを言っていたな。

 機甲竜を手に入れようとするルクス、それを迎撃するメジロ家。

 サトノとファイン家は、メジロに集中するルクスを後ろから強襲する、いい戦術だ!

 これはもう御三家の共同戦線だ。

 漁夫の利を狙ってルクスとメジロ家を両方潰そうとか、考えてないよね?

 

「御三家が協力すれば、何があっても大丈夫だよな」

「そうなれば良いのですがメジロ家は「手出し無用、ルクスは我らのみで仕留める」と息巻いております」

「あらら、やっぱそうなるか」

「いつものことです。サトノとファインは勝手にやらせてもらう、メジロには面倒な後始末をさせてやればよいのです」

「お主も悪よのう~」

「いえいえ、それほどでも」

 

 ハゲゾーの考えには、パパさんやココにシロとクロも賛同するだろう。

 アルは心中複雑だろうが、いざとなればサトノの意思を優先すると思う。

 

 いくつか情報交換をしてハゲゾーとの通話を終えた。

 いろいろ事態が動いているが、降りかかる火の粉は全部払うからな。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 戦闘訓練を行う学園では当然ケガ人も多い。

 少し前まで遠慮していた生徒たちも、今ではマサキを頼るのが当たり前になっていた。

 ケガをしたらマサキを探せ!鼻血を止めさせたら日本一の腕前!と生徒たちは言う。

 

「・・・うん。ちゃんと言いつけどおり療養していたな。随分良くなった」

「じゃあ!」

「明日から実技修練に参加してもいいだろう。担当教官には俺から言っておく」

「やった!こんなに早く治るなんて、教官のおかげです」

「力になれてよかったよ。テーピングと治療符は」

「お風呂上りに張り替えろ、ですよね。わかってます」

「やりにくかったら、友人か教官に頼んでやってもらうんだぞ」

「マサキ教官が一番上手ですけどね」

「一応、プロですから」

 

 ウマ娘は足をよく使う分、故障する部位も下半身が多い。

 当然、治療を施す箇所も足に腿に・・・とにかく際どい部位が多いのだ。

 照れていては仕事にならん、それより痛みに苦しむ生徒を救うことが優先だ!

 煩悩退散!女子中高生の生足!太もも!ひゃっほー!とか思ってないです、ハイ!

 日夜、愛バの体を見慣れている俺にの女体耐性をなめるなよ!

 だけど最近「どうぞ好きに触ってください」系の子が増えて来たような気がして、こっちがタジタジなのよ。

 

 電子カルテに施術した内容と経過を打ち込み記録しておく。

 よーし、この子の治療も終わった。

 

「お大事に」

「ありがとうございました。あの!ケガとは関係ないんですけど、ちょっと質問いいですか?」

「俺が答えられる範囲ならいいぞ」

「愛バの皆さん・・・教官的には、どの子が本命なんですか?」

「全員本命」

「えー、でもでも、その中で優劣つけるならですよ。どんな感じなのかなぁ~って?」

「やめとけ」

「何でですか?全生徒が気になっているんです。教えてくださいよぉ~」

「トレセンが瓦礫の山になってもいいのか」

「そんなにヤバい情報なの!?」

 

 無知は罪だな。君はまだ知らない正妻戦争の恐ろしさをな!!!

 今の4人が全力全開の本気で戦えば・・・うん、少なく見積もっても、学園は壊滅するな。

 

「この話題はタブーだ。わかったなら、教室へお帰りなさいな」

「ちぇ、わかりました。日を改めて、またお聞きしますね」

 

 渋々ながら引き下がってくれた、彼女は医務室を後にしようと扉を開けて・・・固まった。

 そこに能面のような顔をしたシロが立っていたからだ。まさか、ずっとそこに居たのか?

 

「ひっ・・でぃ・・さ・・」((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

「はい?私はダイヤモンドですけど」

「だ、だ、だ、ダイヤちゃん。こ、これはちが、違うの!みんなに聞いて来てほしいって言われたから」

「治療は終わったんですよね?」

「う、うん。終わった、もう終わった。元気元気~あははは」

「それはよかったですね。ダイヤも嬉しいです」

「あ、ありがとう」

「元気な内に出て行ってくれたら、もっーと嬉しいです」

「し、失礼しましたぁーーー!!」

「お大事に~」

 

 脱兎の如く退散していく生徒をシロは笑顔で見送った。

 あーあー、あんなに走ってケガがぶり返したらどうするんだ。

 逃げた生徒に向け「シッシッ」と尻尾を振るシロ。

 これは注意が必要だな。シロの頭に軽いゲンコツを当てる。

 

「あうっ」

「脅すような真似をするんじゃありません」

「すみません。お困りのようでしたから、つい」

「お前が学園で悪評を立てらるのは嫌だぞ」

「それはもう手遅れ・・・ゲフンゲフンッ!学園の皆様は仲の良いお友達ですわ、おほほほほ」

 

 俺に収集するあまり、周りを疎かにしてほしくないんだがな。

 シロのことだ、言われなくてもわかっているはず。

 琥珀色の瞳が俺を映す。全てを見通すような視線は少々むずがゆい。

 聡明なお前には俺の何が見えている?

 

「それで、何用かな?」

「甘えに来ました」

 

 単刀直入なのね、シロが抱き着いて背に手を回して来る。フワッとよい香りがした。

 俺の胸にスリスリしている顔は心の底から嬉しそう、普段より幼く感じる子供の顔だ。

 あらら、甘えん坊モードに入っちゃったか。

 

「おーい、学園だぞー、仕事中だぞー」

「今だけ・・・ダメ・・ですか?」

 

 ああズルい!

 上目づかいと、ペタンした耳、不安そうな表情、これは断れないわ。

 

「誰か来たら、すぐやめるんだぞ」

「はい♪」

 

 索敵範囲を広げたシロなら、イチャパラを目撃されるようなヘマはしないと信じよう。

 スリスリするシロは幸せそうだ。

 

「男の胸板なんぞ何がそんなに楽しいのかね?」

「この硬さ、匂い、体温、心臓の鼓動、全てがお気に入りです」

「俺は柔らかい方がいいな」

 

 形を変えながら、むぎゅむぎゅ当たっているおぱーいが幸せ!

 

「このクッションがなければ、もっと密着できますのに」

「それを捨てるなんてとんでもない!!」

「許可なく捨てたりしません。私の全身はあなたのものですから」

「すげぇもんもらっちまった」

「重い、ですか?」

「重いな。だが、それでいい!絶対に降ろさないし、何があっても背負い続ける」

「頑張り屋さんですね。でも、疲れたら降ろして休んでください。元気になってからまた背負って下されば、それでいいんです」

「そうだな。ゆっくりまったり、ずっと一緒に歩んで行こう」ヾ(・ω・*)なでなで

「はい///・・・・・・ちっ!空気の読めない奴・・・はぁ・・クロが来ます」

「そうか、じゃあイチャパラは終わりだな」

「見せつけてやりましょうよ~。クロが「ムキャ――!」て猿になるとこ見たいですw」

 

 この前似たようなことでケンカした挙句、姉さんに連行されたの懲りていないのか?

 説教部屋からお前たちをレスキューするの大変だったんだぞ。

 

 シロをたっぷり撫でて離れてもらった。

 しかし、やって来たクロに何をしていたかアッサリばれて、二人でくっついて来る始末。

 体は大きくなって精神も大人びているが、子供らしいところも残っている。

 そこがまた可愛いんだよなぁ。

 

 ○○○

 

 クラブハウスに来ております。

 

 部活動や各種ミーティングに使用されたり、更衣室や倉庫になっている場所もあるが、半数以上の部屋はチームの活動拠点として利用されている。

 申請さえ通れば俺のチーム「ああああ」も部屋がもらえるはずなのだが、連絡は未だにない。

 

 "カノープス"と書かれたネームプレートが掲げられた部屋の扉ノックする。

 「はーい。開いてるからどうぞ」と返答があったので入室する。

 

「お、お邪魔しまーす」

 

 恐る恐る部屋に入ると、小さなウマ娘が飛びついて来た。

 即行で抱っこ、見てから余裕でした!

 

「よく来たなマサキ!」

「おお、ター坊。元気にしていたか?」

「ター坊言うな。ターボはあれ、ターボはター坊?」

「大差ないし、どっちでもいいんじゃね?」

「うん。どっちでもいいぞ」

「「なははははははははははははは」」

 

 青髪にグルグルお目目のウマ娘、ツインターボを抱っこしたままグルグル回転する。

 やりすぎて俺の目もグルグルしそう。

 

「ターボさんがあんなに懐いて、小さい子の扱いはプロですね」

「たぶん精神年齢が一緒なんだよ」

「おーい、そこの小さい子供と大きい子供~。とりあえず、お茶にしないかい」

 

 大きい子供ですか?いろんな意味で大人の俺には当てはまりませんな!

 

 室内にはターボの他にも見知ったウマ娘たちがいた。

 メガネをクイッとやるのが知的な印象を与える、イクノディクタス。

 鼻血ヒーリング回数がダントツトップ、マチカネタンホイザ。

 三位入賞が似合いそう庶民派代表、ナイスネイチャ。

 

 そして・・・

 

「来たね。うわwホントに白衣着てるwwその恰好、マジでシュウの子分じゃん」

「いつの話だ!で、なぜお前がいるんだよ、リューネ!!」

 

 今朝、出勤前に挨拶した大家兼幼馴染のリューネ・ゾルダークがそこにいた。

 疑問符を浮かべながらも、テーブル席に案内されて腰を下ろす。

 ネイチャに淹れてもらった温かいお茶、略してネイ茶が美味しい。ホッとする。

 

「店はどうした?学園は一般ピープルがズカズカ入っていい場所じゃないぞ」

「お店は定休日だよ。生徒の関係者、この子たちの操者なら出入りしても問題ないよね」

「ターボさん?みんなも・・・マジっすか?」

「「「「マジっすよ」」」」

「うそーん」

「知らぬはマサキのみってね」

 

 "カノープス"

 操者リューネに愛バのターボ、イクノ、マチタン、ネイチャ、5人で構成されたチーム。

 

 今日はターボたちに操者を紹介したいと、こちらにお呼ばれしたのだ。

 ほぼ毎日顔を会わせているのに、今まで秘密にしていたなんて酷いわ。

 

「ごめんごめん、私の許可証が発行されるまでは内緒って決めていたんだ」

「おお、これでリューネ、学園に来られる?」

「そうだよ。ターボたちの活躍を見る機会も増えちゃう」

 

 ターボの頭を撫でるリューネは慈愛溢れる操者の顔をしていた。

 

「店は?」

「優秀な従業員に頑張ってもらうさ。どうしてもって時は、マサキたちにも手伝ってもらおうかな?」

「勝手に決めんな。賄い飯は出るんだろうな!」

「結構乗り気じゃんw」

 

 べっつにー、従業員の制服が可愛いから愛バたちに着てもらおうとか思ってねーし!

 純粋に困っている友人をヘルプしたいだけっスよ。バイト代はしっかりもらうしー。

 

「従業員の制服は確かに良いデザインです」ウンウン

「安易なメイドじゃないところがポイント高いよ」

「わかる!メッチャわかる!正直メイドはもう、お腹いっぱいだよな」

「うちのリューネさん、センスある~」

「私じゃないよ、デザイン考えたのは親父www」

「ビアン博士が!?何やってんだあの人www」

 

 起動兵器だけでなく飲食店の制服まで設計しちゃう天才科学者!

 この分じゃ、娘のおねだりには未だに弱いらしいな。

 そんなんだから、母さんを倒せるロボを造れないんだよ。

 最近、"ヴァルシオン改28号ダッシュプラス"を粉砕したと母から連絡ありましたよ。

 ロボの生首持ってVサインする母さんの、笑顔が眩しい写真つきでな。

 背景で崩れ落ちたビアン博士と、それをツンツンするネオさんたちがなんか面白かった。

 

「あのダメ親父、サイさん相手にまだやってるのかい」┐(´д`)┌ヤレヤレ

「なあ?博士ってさあ、母さんのこと好きなん?」

「え!?初耳なんだけど」

「あ、違うならいいんだ」ホッ

「待って待って!もしそうだとして、親父が根性見せれば、サイさんが私のママになる可能性があるってこと?やったあ―――!サイさん親父と結婚し・・・」

あ゛?

「「「「ひぃ!!!」」」」

「するわけないよね!!あはは、冗談、冗談だって、覇気凄いことになってるから落ち着こう、ね、ね?」

「なんだ冗談か」

 

 ちょっぴりバスカーしちゃった。ごめんねターボ、もう怖くないぞ~。

 あんなマッドサイエンティストが母さんと結婚?そいつは、めちゃ許せんよなぁ。

 

 俺の母さんはマジでモテる、今も昔も命知らずの男から求婚されまくっているのだ。

 老若男女年齢問わず、母さん宛のラブレターを渡してくれって頼まれた回数は100どころの騒ぎじゃない。

 息子の俺を仲介役にするな!小学生の俺にガチの恋愛相談やめろ!あの頃、シュウがかばってくれなかったら、トラウマ確定だったぞ。

 因みに、ネオさんも超モテる。そして、シュウを恐れたネオさん狙い連中は俺の所に来るのであった・・・もうサイアクの思い出!!

 

 という過去もあってか、母さんたちに集る野郎にいい印象は皆無だ。知り合いなら尚更キツイわ。

 

「最低でも俺に勝てる男じゃないと、義父とは認められぬ」

「あちゃー、これはサイさん独身つらぬくわ」

「なんだと!母さんが結婚も出来ない喪女だと申したか!」

「誰も言ってないよ」

「母さんがその気になれば、アラブの石油王もウルクの英雄王も求婚してくるぞ」

「結婚してほしいのか、してほしくないのか、どっちだよ?」

「めんどくさいな、このマザコン」

「マザコン?マサキはロリコンではなかったのか?」

「マザコンでロリコン、そしてシスコンでもあるのよ」

「嫌な三冠だね」

「なんとも業の深いお人だ」

 

 もう!母さんのことはいいでしょ。

 カノープスの紹介は終わったし、俺はもう行っていいのかい?

 

「ああ待って、実はマサキにお願いが」

「ごめんなさい。俺、好きな子が4人もいるんだ」

「自惚れんなマザコン!告白じゃないから!」

「はい、すいません」(´・ω・`)

「うちの愛バたちにさ、ヒーリングを教えてほしいんだよね」

「お?治療術に興味がおありですかな」

 

 体育の授業とかで、戦闘技能を教えてくれとはよく言われるが、ヒーリングを教わりたいとは珍しい。

 

「わかっていると思うが、ヒーリングは・・」

「適正に大きく左右されるんでしょ。才能如何によってはまるで機能しないのも知ってる」

 

 その適正自体が、ウマ娘には備わっていないことが多い。

 ヒーリングは人間の担当で、ウマ娘は戦闘のため覇気を身体強化に振り分けているのが一般的だ。

 

「お願いできませんか?治療術の心得があれば、あらゆる局面で役立ちますから」

「オナシャス、マサキ教官殿」

「血を出す辛さはよく知ってます。私もえい、えい、むん、する側になりたいです」

「ターボも!ターボもヒーリングやってみたい」

 

 やる気は十分、適正は調べてみないとなんとも。

 それに俺はまだ素人に毛が生えた程度のぺーぺーだ、そんな奴が教えていいものやら。

 うーむ。

 

「うちの子たち、センスはいいと思うんだ。けど、ガチの戦闘では正直一歩劣る」

「そんな、愛バの力を操者が信じなくてどうする」

「明確な事実ですから、お気になさらず」

「あはは、悔しいけど。"リギル"の人たちなんかを見ちゃうと、私ら的にはキツイ~って感じだよ」

「リギルなんて知らないぞ、ターボはテイオーたち"スピカ"に勝ちたい!」

「アンタはお気楽だね~ウリウリ」

「あぅ、耳ひっぱるな~」

 

 "リギル" 

 ヤンロンとテュッティ先輩が操者と監督を務める強豪かつ大所帯のチーム。

 生徒会メンバーをはじめ、所属しているウマ娘は学園の顔と言うべき存在として一目置かれている。

 

「騎神として世に出るこの子たちには力が必要なの。今の内に、少しでも多くの力と技を身に付けさせたい」

「それで治療術か」

 

 戦闘技能は必須として、別のアプローチをするか・・・うん、その考え方嫌いじゃないわ。

 治療術って軽視されがちだけど、実際凄いんだぜ。

 ゲームやってるとわかるはず、回復するボスや倒しても復活する敵って相当厄介だろ?

 回復役の立ち回り一つで戦況を有利にできるんだ。とてもすごく大事なのよ。

 

「よし、わかった。俺でよければ力になろう」

「ありがとう!へへ、マサキならそう言ってくれると思ったよ」

「ただし、学園にちゃんと許可を取ってからだ。無許可で治療術講座なんて出来ないからな」

「わかってるよ。とりあえずよろしくね。ほら、みんなもお礼しな」

「「「「ありがとうございます。マサキ教官」」」」

「あんま期待すんなよ」

 

 許可が下りないとぬか喜びになっちゃうかもよ。

 カノープスのメンバーに治療術を教えることを約束(仮)した。

 さて、どうなることやら。

 

 ○○〇

 

「ふぅ」

 

 あー、デスクワークで肩が凝った。

 中庭のベンチにて、自販機で買った缶コーヒーを飲みながら一息つく。

 サボりではない、ちょっと休憩しているだけだ。

 カフェが入れてくれるコーヒーも美味いが、たまには缶コーヒーいいものだ。

 

 ボーっとしながら、学園に赴任する前、ラ・ギアスに寄った際の天級トークを思い出す。

 

 ある日、ガッちゃんがネオさんの顔をジト目で見ていた。

 例によって天級たちはアンドウ家に集まり駄弁っている。今、母さん不在なのにお構いなしだ。

 

『ガーさん?どうしたの、私の顔に何かついてる?おやつはさっき食べたでしょ』

『ネオ、あなた本当に、あのネオグランゾン?』

『他の何に見えるっていうのよ?』

『若作りしたアラフォー』

『あなたがそれ言う!?天級最年長の癖に!』

『マサキ、ネオがロリババアくたばれって、いじめる』

 

 ガッちゃんが手を伸ばして来たので、すがさず抱っこする俺。合法最高!!

 

『失望しましたネオさん。ファン辞めます』

『ちょ!マサ君を味方にするなんてズルいわよ、あなたはいつもそうやって誰かを楯に』

『私ヒーラー、タンク役に守ってもらわないと、死ぬ』

『そのタンクに選ばれたわしらは、本当ええ迷惑じゃったよ』

『グラはタンクとしてはゴミカス、ザムかサイじゃないと、楯にならない』

『存在ごと燃やすぞチビ助!!』

『おー、やんのかー、こらー』

 

 やる気のない「こらー」が可愛い!

 マズい、炎と水がケンカしちゃった!二人の覇気がぶつかり、熱と冷気で水蒸気が!?

 はわわわわ、母さんとミオは留守にしているし、ここは闇のお人に頼るしかない。

 いやぁーー!抱っこしているガッちゃんがどんどん冷たくなってるー!術を行使するため覇気を練ってるーー!

 

『ネオさん、何とかしてください』

『ファン辞めたんでしょ』イジイジ

 

 すねとる場合か!

 アッちぃ!グラさんの熱で空気が火傷しそうなんですけど、熱いのと冷たいのでキツイんですけど!

 この人たち、相対する属性がぶつかって対消滅とかしないだろうな?ええい、仕方ない。

 

『ネオ母さん、助けて』

『もう一声』

『ぐっ////ネオママン助けてぇー―!このままじゃ家がぶっ飛んじゃう!』

『愛する息子の頼み!引き受けたわ』

 

 友人のお母さんをママン呼びするのクッソ恥ずかしい!!

 シュウがいなくてホントよかった。

 

『そこの二人、ケンカ両成敗よ!ディストリオンブレイク(極小)』

『『『ぎゃぁぁぁーーーー!!!』』』

 

 空間歪曲で収束されたビームを撃たれ庭まで吹っ飛ぶ俺とグラさんとガッちゃん。

 なんで俺まで撃ったんですか?あ、ガッちゃんを抱っこしていたからか・・・やりすぎですよママン。

 

『ごめんねマサ君、ちょっと力んじゃった』テヘヘ

『ママン可愛い!じゃなくて、グラさん、ガッちゃんも、ケンカ駄目ですよ』

『す、すまんのじゃ』

『めんご』

 

 部屋が荒れていると母さんがキレてもっと荒れるので、手早く片付ける。

 綺麗にした床の間にちゃぶ台と座布団をセット、テレビを見ながら腰を下ろすスタイルで団欒する。

 ガッちゃんは何も言わなくても俺の膝に乗って来る。ハイ可愛い!これもう世界一可愛いアラフォーだろ?ギネスに載せようぜ。

 おやつに用意した激辛せんべいをつまみながら、グラさんがガッちゃんに問いかける。

 

『ガの字はなぜネオを凝視しておったのじゃ?』

『なんか、丸くなった、と思った』

『え・・・私、太ってる』Σ(゚д゚lll)ガーン

『そんなことないです。ネオさんはずっと女子中学生の見た目ですって!』

『あらそう、マサ君がそういうなら大丈夫よね』ホッ

『性格の話、昔のネオは、切れすぎたナイフ』

『確かにのう、あれは酷かったわいw』

『黒歴史!やーめーてー、マサ君に聞かれたくない!』

『すんません。武勇伝の数々は母さんから聞いております』

『終わった』_| ̄|○

 

 ネオさん、相当荒れていたんだよな。

 もう、手の付けられない乱暴者で、何度も母さんたちと戦ったと聞いている。

 ガッちゃんが「誰こいつ?」と思うほど、昔と今の性格が違うらしい。

 

『初対面、ブラックホールクラスター、ザムが即死』

『え、ミオ、一回殺されたの?怖いです』

『アインストなのが幸いしたのう。時間はかかったが復活したよ』

『ごめんなさいー、だって見たこともないキモイのがいるって思って』

『二回目、サイが間に合わず、グラが虫の息』

『なんということを、怖いです』

『あれは今も夢に見るわい・・・真っ白に燃え尽きるところじゃった』

『ごめんなさいー、炎使い?温暖化促進ウゼェ!と思ったから』

『三回目、私だけを集中攻撃、左半身を完全に潰され、グチャ、ベコッ、ボキゴキ』

『う、グッッロッ!!怖いです』

『超痛かった、痛覚遮断する暇ない、脳の神経、焼き切れる寸前』

『ごめんなさいー、でも、目障りなヒーラーから潰すのは定石よね?』

『四回目、サイがキレた、ネオもキレた、みんな全力全開、アレとコレとソレが消し飛んだ』

『ラグナロクですね。怖いです』

『黄昏というか、まさに地獄じゃった。そのせいで、当時を知るものはわしらを神扱いじゃ、カッカッカッww』

『この後、騎神に級位制定、天の誕生』

『ごめんなさいー、サイさんったら「お腹減ったから帰る」なんて理由で勝負をお預けしたのよ!非常識よね!』

『今となっては、まあ、いい思い出』

『うむ。大変じゃったが、楽しくもあったのう。青春のメモリーちゅうやつじゃて』

『いや、なんかもう、マジ怖いです』

 

 随分とバイオレンスな青春があったもんだ。呆れを通り越して恐怖しかない。

 非常識ですよねー、あなたたち全員が!

 当時は大変だったろうな~、母さんたちではなくて、周りの人たちが!!

 

 膝上のガッちゃんが、俺を気遣うように問いかける。

 

『私たち、怖い?』

『うん、怖いな。ちょっと、いや、かなり引いた』

『嫌い?』

『嫌いなもんか。俺はガッちゃんたちのこと大好きだよ』

『そう、よかった、嫌われたら、へこむ』

『本当によかったわ。マサ君に嫌われでもしたら、ショックで縮退砲が暴発するところだったもの』

『そういうとこじゃぞ』

 

 強くて怖くて行動も思考もぶっ飛んでるけど、母さんたち天級を嫌いになることはありえない。

 この人たちがどれだけ優しく愛に溢れた存在であるかを、俺は身をもって知っているのだから。

 

 いろいろヤバいけど、本当に素敵な人たちなんだ。

 全員がもうね、ありえないぐらい美人てか、冗談抜きで可愛いのよ!

 俺をマザコンだと笑ったな?母さんと、このママ友たち見て同じ言葉が吐ける奴がどれだけいるのか知りたいわ!

 あー自慢したい、強さだけじゃないこの人たちの魅力を、外見も中身も素晴らしいこの尊い存在を自慢してドヤりたいぃぃ!

 

『ガッちゃん、修練の続き頼むよ』

『んー?休憩、終わり』 

『なんじゃ、急にやる気になったの』

『いいことじゃない、頑張ってねマサ君』

 

 ああ頑張りますよ。

 ここには最高のお手本で先生の、あなたたち天級が揃っているから大丈夫です。

 

 学園の教官になる、治療術も勉強する、そして・・・

 

『もう少し、待っていてください』

『マサキ?』

 

 母さんたちの神核は自身の覇気に耐えきれない、故に短命なのだ。

 それを防ぐには特定の場所、龍脈が豊かな土地にて暮らすしかない。つまり、ラ・ギアスから出ること叶わず。

 もし、無理をして外に出れば・・・その先は考えたくもない。

 

 希望はある。シュウの開発しているデバイスと俺のエナジードレインが組み合わされば理論上いけるはず。

 もっと修練が必要だ。今よりもっと覇気を感じる、操る、そして支配する、俺の望む結果を導けるほどに。

 

『俺が必ずあなたたちを外に出します!その時は、トレセン学園まで遊びに来てください』

『『『・・・・・・』』』

 

 学園まで来てだって?俺はアホか!

 教官試験まだ先だよ!試験勉強中だよ!まだ採用されてもいないのに、大見得を切ってしまった。

 俺が?いやいやいや、ほとんどはシュウの手柄だってばよ。何言ってんだ俺!

 うあ、恥ずかしい~。

 

『す、すみません!まだ何も出来てないのに、ははは、何言ってるんでしょうね』

 

 焦って立ち上がろうとした俺にガッちゃんが力強く抱き着く。

 この人、後衛の癖に力強くない?おまけに今はロリなんだぜ。

 

『やっぱ、マサキはいい子、いい子は私の子供にする』

『ズルいわよガーさん!マサ君は私の次男になるんだから!』

『わしの次男でもええぞ、ヤンロンも喜ぶじゃろうて』

『ちょ、みんな、きゃーーーー!』(≧∇≦)

 

 ネオさんとグラさんも抱き着いて来た。ちょっと目が潤んでいるのは気のせいか?

 天級たちに揉みくちゃにされる。こ、これが可愛がりか・・・ゴクリッ。

 みんなスキンシップ大好きですよねー。

 シュウとヤンロンが淡泊野郎なので、俺に向かって来るんですよねー、わかります。

 これはヤバいな。このままじゃ、年上の魅力に目覚めちゃう!外見が若ければそれでええんか?ええんやで♪

 待て待て!血迷うな!ママ友はアカンでっしゃろ!

 愛バたちよ、そして世界中の幼女たちよ、オラに力を貸してくれい。

 俺はロリコン、ロリコンなんだ!年下スキーな男なんだ!

 

 帰って来た母さんとミオに、揉みくちゃ現場を見られてお説教された。

 母さんも参加したかったですって?まったく、そんなのだから俺はマザコンになるんですよ!!

 何だミオ?言いたいことがあるなら言えよ「キショイ」だってさwwwはははwwww(´Д⊂グスン

 

 回想終了。

 

「キショイかなぁ」

 

 みんな、こんなキショイ男を愛してくれてありがとうございます!!

 

 ちょっとかけてみるか・・・お、1コールで出た。

 

「オレオレ俺だよ俺」

「はい?どちら様ですか?」

 

 え!?女の声???シュウのスマホにかけたのになんで?

 

「詐欺ですか?詐欺ですね、通報します」

「お待ちになってください!俺です!アンドウのマサキです!友人の社長のスマホにかけたつもりでアンタ誰や!?」

「わかってますよwwマサキさんwww」

「・・・・・・・ボンさん?」

「はい、ミホノブルボンがお相手してます」

 

 何だよ焦ったーー。ボンさんか、愛バが電話にでることも、ま、そりゃあるわな。

 今日、ボンさんとライスは学園をお休みしている。シュウのお仕事について行ったんだな。

 

「シュウいないの?」

「先程、サドマゾ女と一緒に会議室へ向かいました。私とライスさんは、待機モード中です」

 

 サドマゾ女・・・言われてますよサフィーネさん。

 

「あのシュウが、よくスマホを貸したな」

「たまたまライスさんがマスターにぶつかり、たまたまその手にスマホが滑り落ちたのです」

「・・・・あ(察し)」

「そしてたまたま、私がセキュリティを突破し、たまたま電話に出て現在通話中です」

「シュウからスマホをスッて、ロックを解除、今勝手に触っている。で、おK?」

「たまたまです」

 

 たまたま言いすぎだ。ボンさんたちもやりますなぁ。

 うちの愛バたちも・・・いや、俺、見られて困るもんないですー。

 

「どうしてそんなことを?」

「今週の定期チェックです」

「うわぉ」

 

 毎週スマホ調べられてるwww大体想像つくけど何をやらかしたwww。

 

「ブルボンさん、他のメスウマ画像削除できた?」

「今はマサキさんと通話中です。画像の削除は後にしましょう」

「ホント!かわってかわって」

「ここに居たのですか二人とも、私のスマホ知りませ・・・ん・・・か」

「「・・・・」」

「ブルボン、それをこっちに渡しなさい」

「ふんっ!!」

 

 ブチッ・・・・ツー、ツー・・・・・。

 

 破壊したぁ!今のはボンさんがスマホを破壊したに違いないwww

 あいつも大変だな。

 あ、知らない番号から電話来たwww

 

「ようwwもう機種変したのかwww」

「機種変じゃなくて、予備のスマホですよ。こんなこともあろうかとってヤツです」

「二人は?」

「逃げました。最近、言うことを聞かなくなって困りますよ。反抗期?いや倦怠期なんですかね?」

「知らんがな。でも、お前のことが心配なんだろうよ、あんまり叱らないでやってくれ」

「わかってますよ」

 

 近況報告と惚気と世間話、いつものやり取りだ。

 

「アレはどうなった?」

「捗ってますよ。これもあなたが生成した結晶のおかげです」

「数は足りるか?」

「できれば、もう二、三個ほしいですね。実験用のサンプルが足りないので」

「わかった。ボンさんかライスに渡しておけばいいんだな」

「ええ、助かります。もう少しですよ」

「ああ、お前の望みが叶うな」

「我々のでしょう?」

「そうだな。引き続きよろしく頼む」

「任されました」

 

 通話終了。

 

 母さんたちの秘密を知った時、俺は狼狽えることしか出来なかった。

 だがシュウは違う、あいつは自分の才能を余すことなく使い、母さんたちを自由にする方法を模索した。

 シラカワ重工はその土台だ。豊富な資金と研究場所を確保するために会社を立ち上げたにすぎない、本当に凄い奴だよ。

 その努力がもうすぐ形になる。俺はちょっと応援しただけ、ほとんどはシュウがやったんだ。

 

 幼馴染を信じて後は待つのみ。

 飲み干した缶コーヒーをゴミ箱に入れ、その場を立ち去る。

 追加のオルゴナイト造らないと・・・クロシロにも協力してもらうか。

 

 ○○○

 

 学園で一番高い場所と言えば鐘楼である。

 今日は気分がいいので、探検がてらここまで来ちゃった。

 か、勘違いしないでよね!迷子になって辿り着いたわけじゃないんだからぁ!

 ほう、決められた時刻に鳴り響く音の出所はここか。今鳴ったらビックリするからやめてね。

 

「・・・空、綺麗だわ」

 

 バカと煙は高い所が好きらしい、高すぎると足が震えちゃう俺はバカでも煙でもない。照明終了。

 見晴らしがいい。

 ククク、ここは狙撃ポイントにはピッタリだぜ。やらないけど。

 

 せっかくなので苦手な索敵の練習でも・・・サーチ開始・・・むむむ~ん。

 

「いた!うん、さすがに愛バの位置は大体わかるな」

 

 愛バの反応は一際強く感じる。クロとシロは食堂、アルは教室、ココは講堂にいると思われる。

 他にも、理事長室の大きい反応は姉さん、生徒会室にはルルたちが、妙な動きをしているのはゴルシだ。

 クラブハウスにいる変なのはミオだな。ヤンロンやテュッティ先輩は・・・お、いるいる。

 

 しばらく索敵に夢中になっていると耳に微かな駆動音、風の流れが変わった。

 飛行物体が接近!ルクス・・・じゃないな。

 向こうも俺を確認したようで速度を緩めながら鐘楼までやって来る。

 

「サボってる教官はっけーん!たづなさんにチクっちゃおうかな?」

「サボりじゃない。ここで風を感じていただけだ」

 

 そのウマ娘は空を飛んでいた。

 装着されたデバイスの各部から覇気の粒子光を散らしつつ、ホバリング状態を維持している。

 

「学園でのデバイス顕現は基本NGなんだがな」

「えー、学園の敷地って上空も含まれるの?」

「屁理屈言うな、燃料が切れる前にこっち来い」

「はーい。ランディング~」 

 

 ウマ娘は肩部と腰部に展開された翼を折り畳みながらこちらに近づく、スラスターの駆動も緩やかに停止する。

 着地したそいつはデバイスを解除し、敬礼らしきポーズをとる。はい、かわいい!

 

「マヤノトップガン、ただいま戻りました!」ビシッ

「任務ご苦労だ、マヤ二等兵。食堂にて補給物資(はちみー)を受け取るがいい」

「ゴチになります教官殿!」

「バカのも!自腹に決まっておるだろうが!」

「ケチ―」ブーブー

「大佐から頼まれているんだよ。あまり甘やかすなってな」

「・・・はちみー・・飲みたいよぅ・・」(´Д⊂グスン

「うっ、こ、今回だけなんだからね!」

「そう来なくっちゃ!エヘヘ、チョロ甘マサキちゃん。愛してる~」

「はいはい」

 

 マヤを連れて食堂に到着、時間帯のせいか人はまばらだ。

 クロとシロはもう別の場所へ移動したみたいだな。

 

 はちみーを二人分購入して、座席を確保しているマヤのもとへ。

 

「へいお待ち」

「やったー!仕事の後はこの一杯だよ」

 

 LLサイズのドリンクを美味そうに飲むマヤ、俺はSサイズで十分です。

 はちみー、俺にはちょっと甘すぎるぜ。

 ちょ、吸引音が凄いんだがwwレディがはしたないですよ。

 少しずつ味わって飲んでよね!

 

「ぷはっ、おごりだと余計にうまうま~」

「よかったな。航空技研の方は今どんな感じ?」

「マヤの大活躍で順調そのもの。シリーズ77のデビューまでは、あとちょっとかな」

「お、遂にデバイサー候補が決まったのか」

「それなんだけど、上の方針で"緋色"ほうは無人機にするんだって。"銀色"の方は、もちろんマヤが担当するよ!」

「トントン拍子に進んだな」

「マサキちゃんたちのおかげだね。パパも喜んでいたよ「教官に飽きたらうちに来い」だって」

「ははは、嫌ですけど」

 

 "マーベリック航空技術研究所"

 マヤの親父さん通称「大佐」が代表を務める研究機関。

 飛行技術に特化した研究所で、航空機や戦闘機の設計と開発に定評がある。

 現在は新型テスラドライブを搭載したAMや、それを元に発展させた空戦デバイスを造っている。

 

 以前、愛バたちを連れて見学に訪れた際、実験に協力した(させられた)ことがあった。

 俺の頑丈さを見抜いた大佐により、新型デバイスのテスターをやらされた時は死ぬかと思ったぜ。

 何度、急上昇して錐もみして墜落したことか・・・半分以上は俺の覇気で暴発したけどね。

 見かねたシロが設計を一からチェックして、ミスを指摘し修正を加えなかったら、どうなっていたことか。

 

「ダイヤちゃんがいなかったら、今頃、マヤがバビューン!してチュドーン!だったねw」

「笑い事か!愛娘に試作機のテスターやらすなんて、父親としてどうなのよ?」

「どうもこうも、普通だよ。ふつうー」

「マヤ、たくましい子」

「パパのお仕事手伝って、お小遣いも貰えちゃう。一石二鳥で大ハッピー。丈夫なウマ娘でよかったって思うよ」

「ええ子やね。そういや、クロとシロもサトノ家でテスターやってたな」

「そうそう、せっかくウマ娘に生まれたんだもん。自分の長所は活用しないとね」

「無理すんなよ。出席日数足らずに留年なんて結果にならないようにな」

「心配ならまた手伝ってよ。あ、そうそう、クエストとして正式に依頼出すことにしたから、よろしくね!」

「本気なんだな」

「そうだよ。マヤもパパも技研のスタッフさんたちも、みーんな本気なの、だって、あんなの見ちゃうとね・・・悔しいよ」

「ガリルナガンか」

 

 ルクスが電波ジャックをしてヒュッケバイン大虐殺が中継されたあの日。

 黒いデバイスを装着したウマ娘が自由に空を飛ぶ姿を多くの人が目撃した。

 有人飛行型のデバイス開発に尽力していた航空技研の人員は、テレビに映った奴を見て開いた口が塞がらなかったという。

 飛行型デバイスは、自分たちが心血注いでようやく形になってきた段階だというのに、あのガリルナガンというデバイスは遥か先を行っている。

 技術レベルが違いすぎる。まさにオーバーテクノロジー"EOT"の塊、アレに追いつくのは無理だ。

 皆のモチベーションが限界まで下がり、ルクスに賛同しておこぼれに預かる案も出ていたところ、頭を悩ます大佐の前に愛娘であるマヤが現れた。

 

『パパ、見てみて!マヤちょっとだけ飛べるようになったよ~』

『ああそうか、マヤは凄いな・・・・・・・・・・ん?マヤ、どうして浮かんでいるんだい、それは新手のトリックかな?』

『よく見てパパ、種も仕掛けもないよ。マヤ、自分の力で飛んでるの、これもマサキちゃんに覇気をあげたお礼だね』

『本当に飛んでる、覇気にこんな使い方が、いや、サイバスターの前例も、これをああして応用すればあるいは、それには・・・』ブツブツ

『パパ?せっかく娘が遊びに来たのに放置プレイ。もう、ワーカーホリックも程々にしてよね』

『でかしたぞ、マヤ!!』

『ひゃい!ビッックリしたぁ、急に大声出さないでよ』

『今日からお前は、我がマーベリック航空技研の名誉テスターに選ばれました!おめでとう!!』

『はい?』

『これからは毎日テイクオフできるぞ!嬉しいだろう?』

『いえ、自分まだ若いっスからよくわかんないっス』

『なんだその口調は、はっはっは、緊張しているんだな。何も心配することはない、ちょっとバビューンしてチュードンするかもだけど、頑張ろうな!』

『断固としてNO!』

『ん?そこはいつものアイコピー!でいいんだぞ。おーい皆聞いたな、マヤが危険なテスターに志願してくれるってよ。さすが俺の娘だね』

『『『『うぇーい!マヤちん最高ーーー!!』』』』

『では、さっそくいってみよう!まずはマヤの耐久性を調べないとな。連れて行け!』

『嫌だぁーーー!クラッシュ前提の実験体はイヤァァーーー!』ドナドナ~

 

 マヤの回想終了、この話聞くたびに思うのよ。いろんな父親がいるんだなぁってさ。

 何やってんだよ大佐ぁ・・・この鬼畜おやじ!知り合いの研究者、ヤバい奴ばっかりだ!!

 

 最初は嫌がっていたマヤも、今では航空技研の人たちと一緒に邁進している。

 将来的にはシリーズ77という新型を足掛かりに、量産型を造る予定らしい。

 飛行型のデバイスは戦闘だけではなく、災害救助支援にも有用だとシュウも言っていた。

 航空機が入れない場所や、不安定な陸路に頼らず、現場に騎神が急行できれば大助かりだ。

 安全性はまだ発展途上なので、今のところは騎神が装着すること前提にしている。

 俺?俺は例外なんだと。

 

 ともかく、新たな有人飛行型デバイスの完成は大佐たち航空技研の夢なのだ。

 

「シリーズ77はマヤの夢でもあるの。いつか、みんなで飛べたらいいな~」わくわく

 

 遠くない未来の夢を語る若人は希望に満ち溢れている。眩しいのう。

 

「クラッシュしない程度に頑張れよ。陰ながら応援している」

「ありがとうマサキちゃん。あ、はちみーのおかわりお願いしまーす」

「お腹壊すぞ」

 

 二杯目のLLサイズも難なく飲み干すマヤだった。

 見ているこっちが胃もたれしそう・・・うぇっぷ・・・

 

 ○○○

 

 サトノとファインの両家が会合を開くことになった。

 ルクスへの対抗策やメジロ家の動きに今後どう対処すべきかを話し合うのだ。

 愛バたち全員がその会合に参加するために、今日は学園を休んでいる。

 学業とお仕事の両立、大変だけど頑張って!帰ってきたら労ってやらねばな。

 

 一人だからと怠けているのは勿体ない。

 愛バ不在の時だからこそ自分磨きをするのだ。

 

 人気の無い校舎裏で俺は汗を流していた。

 

「せいっ!やっ!とりゃっ!!」

 

 練習用の木の棒(六尺棍棒というらしい)を一心不乱に振るう。

 握り手に力を込め、脳天から四肢の末端まで全神経を集中し、教わった形の通りに打つべし!

 

 (それからここで、払う!・・・今のはいい感じだ。このまま最後まで)

 

 腕組みをしながら見守っているヤンロンの視線を感じる。そんなに見つめちゃ(/ω\)イヤン

 仮想敵はルクスだ。奴の頭を仮面ごと棒で叩き割る!そのつもりで振るっている。

 一連の動きを終えて一呼吸つく、礼をして残心も忘れない。

 チラッとヤンロンを伺う。嘘やろ、目を瞑ってらっしゃるーー!?

 

「ナゼェミテナインディス!!」訳:なぜ見ていないんです?

 

 ちゃんと見てろと言ったのに!寝ているなんて酷いじゃない!

 

「寝てはいない。前回の動きを思い起こしていただけだ」

「そ、そうか。で、どうでしたか?」

「まだまだ未熟だが、確実に良くなって来ている」

「やった!褒められた」

「"すごく下手"だったが"普通に下手"ぐらいにはなった」

「結局下手くそなんかい!」

 

 わかっていたけど辛いっス!

 俺に甘い母さんたちや姉さんすらも、俺が木刀の素振りをしていただけで「凄く下手ね。才能がないわ」と一蹴したからね!!ちっくしょめーーー!

 

 ううっ、下手くそなのは卒業出来ていないみたいでショック。

 挫けそうな時は愛バのことを考えろ・・・エロいな~可愛いな~、エロ可愛いな!

 はい回復した。鋼のメンタルはこうして保たれているのです。

 

 メルアから受け継いだオルゴンアーツ、必殺のテンペストランサーは槍だ。

 使い方は即座に脳内ダウンロードされたが、ちゃんと槍の修練を受けたわけではない。

 こんな感じかなぁと、力任せに振り回しているのが現状だ。

 いい機会なので、槍に限らず武器を使った戦い方ってヤツを学んでみようと思い立ち、今に至る。

 武術の達人であるヤンロンに教えを乞うことにしたのだ。

 

「先生に事欠かない環境でラッキーだぜ」

「槍ならボクよりテュッティが適任だと思うがな」

「先輩の前だと、照れと見栄と緊張が先走って修練にならんのよ」

「面倒な奴だ」

「自覚してまーす」

 

 ヤンロンを先生に選んだ理由は簡単。

 幼い頃から両親と共に武術の修行をしていた彼は、素手のみならず剣も槍も、その他いろんな武器を使いこなせるからだ。

 それに元来の教員気質なのか、人に何かを教えるのが好きなタイプだ。必死にお願いする俺を見捨てないでくれてありがとう。

 どんな得物がいいか相談したところ、素人の俺は「棒術からやってみろ」だそうで。

 今頑張って棒をブンブンさせてるって訳さ。長柄の武器っていいよね。

 

「次は模擬戦だ。どこからでもかかってこい」

「おっし。今日こそ一本とってやる!」

 

 同じ棒を構えたヤンロンと相対する。向こうに隙がないのはいつものことだ、恐れず行く!

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ここまでにしよう」

「ねえ、手加減って知らないの?もうボッコボコやぞ!」

「お前には必要ないと判断した。ヒーリングで回復すればいいだろう?」

「簡単に言ってくれる」

 

 わかってないな、自分に向けてのヒーリングはまた勝手が違うんだよ。

 俺は他者への治療が得意なタイプなの!自己回復もできるけどね!

 

 ヤンロンが使うと棒が生きているみたいな動きをする。めっちゃしなるし!

 達人の攻撃を"普通に下手"の俺が捌き切れるはずもなく、滅多打ちですよ。

 あー、俺も早く槍を無駄に回転させてカッコイイポーズ決めたい。

 それで、敵の飛ばしたナイフとか弾くのやってみたい!

 

「千里の道も一歩からだ」

「わかってるよ。次は"やや下手"を目指すぜ」

「フッ、情熱だけは一人前だな」

 

 なにわろとんねん。ふんだ、今に見てらっしゃい!

 

「キューキュー」

「ガウ―」

「お、青龍に白虎。よしよし、お腹が減ったのかな?」

「迎えが来たようだ」

「もうそんな時間か」

 

 特徴のある鳴き声の主は人間でもウマ娘でもない。

 二体の超機人、青龍と白虎が俺たちの前に現れてじゃれついて来る。ウフフ、可愛いじゃないの。

 テスラ研が造った自立行動型デバイスということになっているので、学園での自由を許されている二体。

 通常サイズで学園内を闊歩する姿も見慣れたもんだ。

 

「こちらでしたか。マサキさんも、ごきげんよう」

「迎えに来たデスよヤンロン!あ、マサキもいるデース」

「よう二人とも。大事な操者をお借りしてすまんね」

「ホントですよ。次からレンタル料取りマスよ?」

「こらエル、すみません冗談ですから」

 

 超機人の主である、グラスワンダーとエルコンドルパサーもやって来た。

 

「ヤンロンさん。そろそろお時間ですよ」

「久々の合同修練、エルの力を皆に知らしめるチャンス!早く行きましょう、ヤンロン」

「二人とも、学園では教官と呼べと・・・」

「ええー、操者と愛バなんですから堅いのはナッシングデース」

「エルもたまにはいい事言いますね~」

「しかしだな」

 

 おうおう、あのヤンロンが女子に攻められて困っとるやんけ。イチャイチャしやがって!

 お気づきになられましたか?そうです、グラスとエルはヤンロンと契約をしたのです。

 なんでも、青龍と白虎がめっちゃ懐いたのがきっかけだったとか。

 

「なんでなん?出身が中国つながりだから?」

「キュ」

「ガルル」

「なんとなくかよ。君たちは、ご飯(覇気)をくれる男なら誰にでも懐くのね」

「キュー」

「ガウガウゥ」

 

 心外だと言わんばかりに首を振る龍と虎。

 ちゃんとグラスとエルに合った操者を見つけたつもりだって?

 ヤンロンが愛バとイチャイチャしている最中、俺は超機人と遊んでいた。

 顎の下辺りをくすぐってやると二体とも喜ぶんだ。おーよしよしよし。

 操者と愛バの空間から一歩引いた俺は空気を読める男です。も、もういいかい?

 俺もこんな感じなのかなあ、これは割って入れないわー。

 

「では、先に行ってますね」

「ああ、二人とも日頃の成果を発揮して来るといい」

「お任せください!暇ならマサキもエルの雄姿を見に来てくだサーイ」

「キューキュー」

「ガウ~」

「はいよ。いってらっしゃい」

 

 グラスはペコリと一礼して、エルは元気よく去って行った。超機人もその後を追いかけて行く。

 男二人に戻ってしまった。

 

「一緒に行かなくてよかったのか?」

「最初はテュッティたちが指導を担当する。僕の出番はまだ先だ」

「そうですか・・・・グラさんにはもう紹介した?」

「口頭ではな「ようやくか」と一応、好意的ではあった」

 

 ほほう。うちと違って嫁姑の顔合わせはまだですか。これからが大変だな。

 

「今後の関係についてお悩みですか?」

「わかるか・・・悩むというより少々面食らっている。この僕が、また生徒と契約するとは思わなかった」

「ははは、これで俺たちは仲間仲間~・・・また?」

「お前と会う以前の僕は愛バを持つことに否定的であった。だが、あの時のお前に敗れてから、自分の中で何かが変化した。愛バと共に歩む人生も悪くない、そう思ってしまったんだ」

「あの、またってどういうことか説明求?」

「言ってなかったか、グラスとエル以外にもう一人と契約済みだ」

 

 聞いてないよ。

 待てよ、えーっと確かどこかで・・・・ちょっと思い出してみる。

 

 ○

 

 廊下を歩いていると興奮気味のフクキタルが話しかけて来た。

 

『マサキさんマサキさん!聞いてくださいよ』

『またおみくじか?この前引いたヤツ意味不明だったぞ』 

 

 「うどんで苦しむ奴がいる」てなんだよ。俺も愛バたちも、ここ最近うどんは食ってないよ。

 

『あちゃー、そんなの混じってましたか。たまに変なのが・・・そうじゃなくてスズカさんが!』

『スズカなら今日もスピードの向こう側に行こうとして、走り込み中では』

『「愛バにしてくれって」ヤンロン教官に直談判したらしいです!!』

『大胆不敵!!そ、それで結果は?』ゴクリッ

 

 ドキドキ・・・溜めないで早く教えて。

 

『ん~~~・・・・・敗訴!!!』

『きゃぁぁーーー!スズカさーん!』

 

 あばばばばば、これどうするのどうなるの?

 

『超機人の主、グラスさんとエルさんを知ってますよね?』

『ああ、愛バ共々仲良くさせてもらってる』

『スズカさんの直談判結構時、ヤンロン教官はちょうどお二人と契約していたのです!』

『ひぃぃぃぃ!めっちゃ気まずい!』

『あ、契約は書面で行いましたよ。どこかの誰かと違って吸血させたりしてませんので』

 

 それでもだよ、そんな場面に遭遇したらショックだろう。

 俺まで悲しい・・慰めに行った方が、いや、余計なことはするまい。

 スズカほどの有望株を袖にするとは、ヤンロンの奴めどういうこった?

 

『ヤンロン教官の覇気も独特ですからね。相性をよく考えて愛バを選んだと思いますよ』

 

 そうだな、生真面目なヤンロンがその場の勢いとかで契約を結ぶはずがない。

 悲しいが、スズカにはご縁が無かったのだ。

 

『失恋スズカはどうなった?』

『左回りに高速回転していたところを、ミオ教官とゴルシさんが拾ったそうです』

 

 拾った?拉致したの間違いでは?

 ほうほう、それでスピカのチームメンバーになったのか。

 

『今はスぺさんに依存することで、何とか立ち直ったそうですよ。めでたしめでたしですね』

『めでたいか?』

『うひょ、失恋からの百合ルート来た』(*‘∀‘)

 

 ニヤニヤした何かが近寄って来てるけど無視。

 あの二人、やたら仲がいいと思っていたらそういうこと?本人たちに聞いたら否定しそう。

 スぺ×スズ、テイ×マク、ダス×ウォカ、と・・・意外なところでゴル×ミオか?

 なんだコレ、チームスピカは百合百合なのかい!?

 

『デュフフフ、そ、そのお話、もっとくわし・・・・・・・あっ』尊死

『『またデジタル殿が死んでおられるぞ!!』』

 

 いつの間にか聞き耳を立て接近していた変な子にヒーリング。

 医務室の常連、アグネスデジタルさんです。ウマ娘の絡み合いが大好物の変態です。

 

『いつもすまないね、マサキ。ぐふふ、スピカの動向は今後も要チェックですね~』じゅるり

『デジたん。ヤンロンの契約については?』

『すぐに広まるね。校内新聞には一面トップで掲載予定』

『前回も凄かったですから「ヤンロン教官、遂に落ちる!」と話題沸騰でした』

『そうそう、いや~彼女は今回のこと知っているんですかね?』

『遠距離恋愛の辛いところですよ』

 

 遠距離?フクとデジタルは誰のことを言っているのか?

 

 ○

 

 そんな会話があったことを思い出した。

 

「わかったぞ、遠距離恋愛中の愛バだな!」

「れ、恋愛などでは////」

「愛が無いと言い切れるのか!もっと素直になれよぉぉ!」

「わかった、わかったから叫ぶな。お前程ではないが、僕も愛バたちに好意を持っていることを認めよう」

 

 それでいいのよ。あんな可愛い子たちに好き好き言われて無反応なら・・・ホモ確定だな!

 グラスにエル、そしてもう一人。ヤンロンには合計三人の愛バがいる。この情報マサキ覚えた。

 

「遠距離の子はどんな感じ?写真見せて、見せてよぉ~」

「後にしてくれ、合同修練に間に合わなくなる」

 

 そんな事言って、愛バについて惚気トークしたかったんじゃないのか?このこの~。

 もう、照れちゃって。今度、嫁自慢大会しような!

 

「最後にコレだけ教えてくれ?」

「何だ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・した?」

「するか!!!」

 

 いや、しろよ!普通するだろ?硬派なのも程々にしないと愛バが可哀そうだ。

 これはどっちだろう、照れ隠しか?本当に手を出していないのか?

 

「なんだその顔は」

「べっつに~、この話は今後も定期的にやろうな」

「勘弁してくれ」

 

 恋愛マウント楽しい!とか思ってしまった。

 シュウ以外でこういう話題が出来るのも嬉しいな。

 その後の追及はのらりくらりと躱されたが、進展があれば報告すると一応頷いてくれた。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 グラウンドに多くの生徒と教官が集まり、わちゃわちゃしている。

 学年やクラス、チームの垣根を越え、みんなで研鑽を積む"合同修練"が執り行われているからだ。

 合同修練は基本自由参加でチームに所属していなくてもOKだ。

 他者と自分の現実力を確認でき、名のある騎神や教官とも修練出来るとあって参加者は多い。

 普段接点のない者同士の交流会にもなっているようで、中々よい企画だと思う。

 

 スピカにカノープスの子たちも来ているな。

 それとは別に、大勢の中でとても目立つ集団がいる。なんかあの辺だけ空間がキラッキラしてるもん。

 

「あれが"リギル"か」

 

 "リギル"

 テュッティが先輩とヤンロンが二人がかりで見ているチーム。

 

 シンボリルドルフ、エアグルーブ、ナリタブライアン、マルゼンスキー、フジキセキ

 ヒシアマゾン、テイエムオペラオー、メイショウドトウ、タイキシャトル、マチカネフクキタル

 グラスワンダー、エルコンドルパサー 

 

 ルドルフと契約を結んだテュッティは操者として一目置かれる存在になり、芋ずる式に実力者たちが集まってチームになったという話だ。

 アグル、マルさん、フジ、ヒシアマ姉さん、頼れる姉御的連中はどのチームに所属しても、リーダー格としてやっていけそうな感じではあるがリギルを選んだ。

 彼女たちは一方的に慕われるのでなく、対等な存在たちと肩を並べ合いたいと思ったのだ。

 その結果、過剰戦力ともいえるリギルが誕生した。/(^o^)\ナンテコッタイ

 

 ヤバいよヤバいよ、このメンバーはヤバいよ。アニメ版より二人増えているのもヤバい。

 単純計算で操者一人が6人を担当しているのことになる。俺は4人で手一杯です。

 

「それは違う、僕が担当しているのは愛バの二人だけだ」

「うぇ?じゃあ、先輩一人で10人の騎神を!?」

 

 俺が言うのも何だが、テュッティ先輩の覇気量も大概だと思う。

 さすが水を司る天級騎神の一番弟子。二番弟子はガッちゃん曰く、俺だそうです。

 

「テュッティのサポートをしていたら、いつの間にか僕もリギルに入れられていた。愛バたちもなし崩し的にだ」

「そういうこともある」

 

 ヤンロンは集まった生徒たちの指導に入った。

 残された俺はリギルの修練を見学してみる。紳士たるもの邪魔にならないようにそっと見守るぜ。

 あんま得意ではないけど、ちょこっとだけ気配遮断。

 

「会長の私は今日も快調だ。フフフ、クッフフフフフ」

「「・・・・・」」

「カ、カイチョーだけに、ブフッ、ブホホホホホホwww」 

「なあブライアン、バファリンを持っているか?」

「やめとけ、今日はもうオーバードーズだ」

「ナロンエース・・でもいい・・一錠だけにするから、頼む」

 

 一人ダジャレを楽しんでいる生徒会長のルル。副会長が頭痛薬の中毒になりかけているの気付いてあげて!

 問題児だったはずのナリブが一番まともに見える不思議~。

 トレセン学園を代表する超級騎神がこの様です。

 誰か教えてくれ、騎神は強さに比例してアホになるのでしょうか?

 

「はーはっはっはっ、栄光の舞台リギルの星とは僕のことさ!」

「はわわ~、オペラオーさん。舞台と部隊をかけているんですね。クッソ伝わらないです~」

 

 マイペースなオペは勝手にリギルへ参入したっぽい、ドトウはそれに引きずられた感じだな。

 

「ナンデショウ、今日は肌寒いデス」

「きっと、ぬりかべが絶対零度の視線を向けて来るせいですね」

「オウ、スズカもスピカで頑張ってマス。負けてられまセンネ」

「ダメ元で受けた選抜試験に我々が受かるとは、これはシラオキ様も予測不可能でした」

 

 タイキとフクは追加メンバー募集の選抜を実力でくぐり抜けた。あの二人、結構強いからな。

 その時、スズカは「スぺちゃん」にドハマりして選抜どころではなかった。アホか!

 アホのスズカは「裏切り者~」みたいな視線を二人に向けている。完全に逆恨みですね。

 

「あ!やっぱり見に来てくれまシタ。こっち、こっちデース!」

「よそ見はいけませんよ、エル」

「フギャッ!」

 

 俺を見つけたエルが手を振る。

 組手の最中だったらしく、隙を見せたエルをグラスが脳天チョップで沈める。痛そう。

 手を軽く振り返して先輩の下へ到着。

 

「あらマサキ、見学かしら?」

「ちょっと生徒たちの視察でも、と思いまして」

「みんな~、マサキが来てくれたわよ。多少のケガは即行で治してくれるから、思い切って修練しちゃいなさい」

「「「「はーい!!」」」」

 

 リギルのみならず、他チームの騎神たちも元気のよい返事をしてくれる。

 

「多少つっても限度があるからな」

「どのくらいまでなら大丈夫デスカ?」

「骨折はいける。完全にもげた場合は・・・神経の接続には自信がないなぁ・・」

「怖いよ!」

「頭部は絶対に守れ。首チョンパはともかく、脳が破壊されたらどうにもならん!!」

「だから怖いですって!!」

「ちょっと待て、暗に首もげても治せるって言ってね?」

「うちの養護教官がヤバすぎる件」

「頼むぜみんな、俺を働かせないでくれよ」

「なんかムカつ言い方だな」

「みんながケガしたら、俺がワンワン泣いちゃうんだからね!」(^_-)-☆

「「「「キモいーーー!www」」」」

 

 大勢でのキモいコールはやめてくださいよ。今泣きそう(´Д⊂グスン

 出番のない事を祈りつつ、見守りと見回りを再開する。

 目が合うと頷いてくれたり、手を振ってくれる可愛い生徒たち・・・女子中高生最高ッッ!!

 ホントいい所に就職出来ました。ありがとうありがとう!

 

 ミオたちスピカやカノープスにも挨拶をして、おや?あの集団は・・・

 

「たづなさん」

「マサキ?ああそう、今日は小娘どもがいないのね」

「いい加減仲良くしてくださいよ」

 

 愛バたちを小娘呼ばわりする姉さん。今日もキレッキレですね。

 姉VS愛バの争いは胃がキリキリするのでやめてください。

 

「それはあの子たちの出方次第よ。まずは義姉を敬うことを覚えてもらおうかしら」

「義妹(予定)たちに優しくしてあげてください。俺からのお願いっス」

「む~、一応考えておくわ」

 

 優しいお姉さんは大好きです。愛バたちと仲良くしてくれたらもっと好きです。

 

「ここにいる子たちは?」

「"ハダル"よ」

「ハダル?」

「操者を持たず、リンクデバイスを使用せず、チームにも所属していない子たちを、そう呼ぶの」

 

 リギルが学園の顔ならハダルはその裏側の存在かな。

 価値観は人それぞれだし、単独で活躍する孤高の騎神は結構いる。

 ハダルは蔑称ではなく「アウトローかっこいいですね」という称号だと思っていい。

 生徒の3分の1はハダル、今日ここに集まっているのはその一部だ。

 知っている子もチラホラ見かける。

 

「ハダルをたづなさんが監督しているんですね」

「これも仕事よ。ハダルの戦力を腐らせてておくのは勿体ないから」

「ですよねー。強そうな子が結構いますもん」

「じゃあ、私は行くわ。負傷者が出たらお願いね」

「はい。任せてください」

 

 姉さんは監督業務に戻って行った。

 遠くでサボり気味の生徒を叱咤激励するのに忙しいようだ。抜刀はやめたげてよぉ!?

 

「あー、マサキさんだ!」

 

 元気いっぱいのウイニングチケットが駆け寄って来る。

 ビワハヤヒデとナリタタイシンも一緒だ。

 仲良し三人組は健在、君らハダルだったのね。

 

「三人とも、おいっすー」

「やあ、マサキ君。見回りご苦労様だね」

「暇なの?」

「愛バたちが実家のお仕事に行っちまってな」

「振られたの!?・・・うおぁぉぉん、捨てられたマサキさんかわいぞうだよおぉぉぉぉ」

「早とちりすんな!捨てられてない!」

 

 チケ蔵の奴、相変わらず失礼な号泣しやがるぜ。

 ヒデさんとタッちゃんも、ヤレヤレと首を振っている。

 

「操者は募集してないのか?お前たちの実力なら、引く手数多だろうに」

「見ればわかるでしょ。まだ決まってないわ」

「三人セットで契約希望なのがネックらしい。やはり、個別に募集すべきだろうか」

「嫌だぁぁ――!ハヤヒデとタイシンと一緒がいいよぉぉぉうわぁぁぁぁぁぁんんん!!」

「操者が決まらない原因コイツじゃね?」

「「やっぱりな!」」

「いわぁおあぁおうぇうあおうえあぁーーーー!!」

「うるせー!!」

 

 この泣き上戸に引いて、逃げ出す操者がたくさんいるとみた。

 それでも見捨てないヒデさんとタッちゃんが偉い。

 

「じゃあ、リンクデバイスは?使ってないの」

「アレ、嫌いよ」

「なんかね、あのデバイス・・・なんて言うか、気持ち悪い」

「どうやら我々は体質的に装着不可なようでね」

「ハダルにはそういう子もいっぱいいるんだよ」

 

 "リンクデバイス"

 ルクスが技術情報を流失させてから、各企業がこぞって開発するに至ったデバイス。

 装着することで操者を介さずに覇気循環を行い、戦術リンクを可能にする一品だ。

 一般に広く普及しており、軍関係者のみならず学園生たちも普通に使用している。

 操者がいないチームは大体これでリンクしてから戦闘を行うのが常識だ。

 耳や腕に装着するアクセサリーの形状しており、武装デバイスより安価で神核への負担も少ないらしい。

 

 ヒデさんが言うように、このデバイスを装着することで体調が悪くなるウマ娘もいる。

 発熱、頭痛、吐き気、倦怠感と風邪によく似た症状に始まり、二日酔いと船酔いの不快感が一度に襲ってくる等の被害報告が上がっている。

 既に操者が決まっている者ほど、症状が出やすいようでアレルギー反応の一種では?と考えられるが、今のところ原因不明だ。

 お試しで使用した、うちの愛バちの感想は「これ嫌い」「ゲロ吐きそう」と大不評だったな。

 一応、同封の説明書には「体に異常が出た場合は直ちに使用を中止すること」と注意書きがあるにはある。

 

「無理に使わなくていいよ。リンクしたところで、ゲロ吐きながら戦えないだろ?」

「そうね。戦術リンクと引き換えに、嘔吐を繰り返すなんて絶対嫌よ」

「リンクしなくても、アタシたちの絆はいつでも繋がってる」

「チケット、君はいつも突然にいい事を言う」

 

 戦術リンクの有用性は認めるが、劇的に強くなれるかは本人とリンク相手次第だからなあ。

 心と体のエネルギーである覇気を機械で数値化して、強引に結びつけようってんだろ?

 当然合わない子も出て来るよ。

 

 これだけ普及して今更使うなとは言えないが、養護教官としての見解ではお勧めできない、それがリンクデバイスだ。

 人類にはまだ早いというか、未知の部分が多すぎると思うんだよね。

 

 デバイスの事はもういいだろう。せっかくの合同修練だ、みんなでレベルアップしようぜ。

 

「マサキさん、暇なら相手してよ~」

「ほう、チケ蔵が俺に勝負を挑むか?」

「ハンデは必要だろう、私たちも参加していいだろうか」

「やるなら本気でいくから」

 

 BNWの三人が俺と相対する。

 一対多数の戦闘は愛バたちとよくやっている。他の騎神相手にどれだけ通用するか、試してみるか。

 

「わかった。かかって来なさい!」

「やったー!みんな~マサキさんが全員相手にしてくれるってさ!あ~つ~ま~れ~!!!!」

「「「「わーい!ぶっ飛ばしちゃうぞー!!!!」」」」

「バカ!何やってんだチケ蔵」

 

 チケ蔵は仲間を呼んだ。たくさんのウマ娘(凶暴)が現れた。

 ひぃぃ、安請け合いした俺のバカバカ!

 

「行きますよーー!バクシーン!!」

「何だ?マサキに勝ったらおかわり自由なのか、ならやる」

「そんなん誰も言うてへんやろ。おもろそうやから、うちらも行くで!」

「私が勝ったら、赤ちゃんになってもらいますよ~」

「また変なことやって、ホントバカなんだから」

「乗るっきゃない、このビッグウェーブに」

「ウェイウェイうぇーい!」

「みんな~待ってけろ~」

「一生懸命戦うとご飯も凄く美味しくなるよ。ゴーゴー」

「わ、私もいいでしょうか」

 

 ギャー!なんかいっぱい来た!

 これが戦闘民族ウマ娘の本能だ、血に飢えた獣の群れが牙をむいて突撃して来る。

 自分、逃げていいっスか?漏らしそうなくらい怖いんだけど。

 こいつらってば愛バと違って遠慮が一切ない、これは真面目にやらないと負けるぞ。

 

「落ち着くんだ俺、夜のあいつらに比べたらこの程度・・・ウェヘヘ」じゅるり

 

 戦闘中に思い出すような事じゃないですね。こんなことしてると・・・

 

「隙あり」

「あぶっ!・・・何でお前がいる!スズカ!」

「誰の挑戦でも受けると聞きましたけど?」

「俺は了承しとらん!」

 

 一瞬で背後に回り込んだスズカが顔面に貫手を放って来た。首を捻っって辛うじて躱す。

 こいつのスピードはマジで恐ろしい。

 マズい!今のでスピカの連中がこっち見た。ひぃ、カノープスとリギルにも見られてる。

 見ないで!あっち行って!これ以上増えたら物量で潰される!!

 

「おい、来んな!来るなよ!いやーー!来ないで!」

「「「「「逃がすな!やっちまぇーーー!!!」」」」」

「キャァァァーーー―!!」

 

 戦いは数だよ兄貴!

 一対多数の戦闘は安請け合いしちゃダメってことがよくわかりました。

 ヘルプ!ヘルプミー!素敵な同僚たちよピンチな俺を助けてください!

 

「ナゼェミテルンディス!!」訳:なぜ見ているんです!?助けろやボケェ!!

 

 結局、姉さん以外誰も助けてくれなかった・・・うぬら、マジで覚えておれよ。

 

 集団を相手にした結果、衣服はボロボロになり伊達メガネがお亡くなりになった。

 バスカーモードは禁止だから仕方ないね。

 

 その日の夜、帰ってすぐ風呂に入らなかったことを後悔した。

 気付かなかったが、一連のどさくさに紛れてマーキングをされていたらしい。

 会合が終わって家に寄った愛バたちが超不機嫌よ!お、怒らないで!

 誤解だ!みだれてまじわるパーティーなんかに出てない!

 そんなの興味ないんだ。お前たちがいてくれたら十分なんだ、信じてくれ――!

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・対ウマ娘用の消臭グッズを通販で頼んでおこう。

 

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