俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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死ぬまでにコミケ行ってみたいけど、人混みが苦手っス。




へんたいがたいへん

 トレセン学園というコミュニティでは、裏ルートで様々な物品が取引されている。

 個人間での小規模取引に満足出来なくなった者たちは、ごく自然な流れで大規模なイベントを開催するに至る。

 これが俗にいう闇市の誕生である。

 

 生徒の自主性を重んじ、ある程度なら目を瞑るってのが学園の方針だ。

 だから、闇市の存在も半ば許容している節がある。

 

「今回は許容できない範囲だった訳だ」

「その通りっス。何事もやりすぎは良くないっス」

 

 闇市の一つ、無認可の同人誌即売会『魍魎(もうりょう)の宴』

 販売されている書籍のマニアックかつ過激な内容と、勝手にモデルにされた被害者の訴えにより、今回の取り締まり対象に選出された。

 

 その一斉摘発を手伝うことになった、俺たちチーム"ああああ"は風紀委員会と協力して現場に突入!

 バンメモを始めとする武闘派風紀委員の精鋭たちに、俺と4人の愛バが大乱闘……する必要は特になかった。

 俺たちが突入した段階で、宴のスタッフと客の戦意は喪失。多少の抵抗はあったがすんなり事が進んだ。

 

 宴の会場は旧トレセン学園時代に使用されていた小グラウンド、その隣に建つ旧体育館であった。

 ここも今は使われていない。

 現理事長の改革により新しい施設が建てられ、古い施設は解体される。その工事は今もなお継続中である。

 解体工事は後回しにされ気味なので、学園内にはこのような空き教室や未使用施設がたくさんある。

 学園で悪さをする奴が減らない訳だよ。集会を開いたり、潜伏できそうな場所がゴロゴロあるんだからな。

 

 おっと、仕事仕事。

 バンメモたちと一緒に薄い本や、フィギュア、妙ちくりんなグッズを箱詰めしなくては。

 宴に集った客やスタッフたちは、恨めしそうな視線を向けて来るが無視する。

 悪いな、こっちも仕事なんでね。

 

「よし、それも押収するっス」

「はい!ほら、もう観念しなさい」

「ま、待って!後少しで完売なのよ。私の自信作『ふんどしヤンキー×ツンデレ侍』がぁぁぁ」

「横暴だ!こんなこと認められない。せめて『教官フィギュアシリーズ・裸ヤンロン1/6』だけ買わせてくれ!」

「暴れるな、大人しくしろ」

「学園権力には屈しな……え、マサキ教官!?キャーー―!ご本人登場よ!!」じゅるり

「愚かなる風紀委員どもめ、ここで我らが滅びようとも『でじターン』がいる限り、魍魎の宴は何度でも蘇るのだ!」

「あ、アルダン様!それに、ファイン様も!?あばばばばば」

 

 往生際の悪いスタッフと客を連行しつつ、販売されていた物品を押収していく。

 段ボール箱に敷き詰められた、同人誌をリレー作業で運ぶのは中々に骨が折れる。

 肉体的疲労より、精神に来るな。男女の裸やら裸やら裸やら、誰得のプレイ内容とカップリングに眩暈がする物も多々ある。

 『リザードマンとアラフィフ男性の恋物語』てなんやねん。

 

 そういえば最近、漫画読んでない。

 ネットカフェで一日中だらだら漫画読んで過ごしたい、そんな社会人の俺です。

 ソフトクリームを何回もおかわりしちゃうんだよな~。

 

「見てアル!この本凄いよ!」

「え、きゃっ!この総受け主人公……どう見てもマサキさんです!!」

「凄い描き込み、絵上手~。ストーリーもいい、コレは買いだよ」

「買います!買わせていただきます!家宝にします」

「お前たち、仕事をしなさい」

「「ご本人登場!?」」

「何がじゃ!」

 

 この現場に踏み込んでからというもの、俺に『ご本人登場!?』と言って来る輩の多いこと多いこと。

 BLコーナーでサボっていた、アルとココにも同じことを言われる始末。

 

「背中に隠したその本も押収物だからな、ちゃんと風紀委員に渡しておけよ」

「そんな殺生な!」

「この本の素晴らしさを理解してくださらないのですか?少しでいいので、こちらを見てください」

「えー」

 

 筋肉ムキムキマッチョ教師たちと新米教師の男だらけハーレム!?

 BL本か、ノンケの俺にはキッツイ内容だな……うん?この主人公どこかで見たような、どこだったかな。

 

「ここです!このゲンナジー教官似のキャラに組み伏せられた時の表情が最高に、はぁ……美しい////」

「確かに、このマッチョはゲンさんに似てる。こっちのキャラはヤンロンに、じゃあ、この主人公は???」

「そこまでだよアル!本人を前に腐海を広げちゃだめ」

 

 脳が腐りそうな本だが、絵は凄く上手い。このコマ割りとか躍動感があっていいな。

 俺にはわかるね、この作者は才能あるぞ。少年誌でラブコメとかバトル漫画とか描いてほしい。

 

 アルが絶賛している薄い本の作者を確認する。

 発行:サークル『オールラウンダー』 著者:『でじターン』

 

 デジ……お前だったのか……

 

「ははは、あの変態め!」

「マサキさん、そちらの本も証拠品として押収するっス」

「記念品として頂くことは」

「駄目っス」

「一冊ぐらい見逃して」

「駄目っス!!」

「二人とも諦めろ」

「「ぐぬぬぬ」」

 

 歯を食いしばりながら本をバンメモに渡すアルとココ。

 そんなに惜しいのかww

 

「勿体ないな~」

「はい、人類の損失です」

「はいはい、仕事に戻ろうな」

 

 ションボリするアルとココの肩に手を置き元気づけようと……。

 

「おい、俺の尻を撫でるのやめなさい」

「やっぱり本物がいいね」

「はい、組み伏せる役はゴリマッチョではなく、私がやります」

「風紀委員にしょっぴかれる前にやめてね」

「「はーい」」

 

 二人とも触り方がネチっこかった。俺の愛バ痴女説、あると思います。

 しかし、今はお仕事優先だ!

 

「バンメモ、『でじターン』は見つかったのか?」

「残念ながら、影も形もないっス。おかしい、今日の宴には絶対参加しているはずなのに」

「とっくの昔に逃げ出したとか?」

「仮にそうだとして、外を警備している、クロとシロが見逃すとは思えない」

 

 突入後、俺たちはチームを2つに分けた。

 俺、アル、ココの内部担当班とクロ、シロの外部担当班だ。

 

 どこだ、あの変態はどこに行きやがった。もう少し探してみよう。

 

「いたか?」

「ダメです。こっちには見当たりません!」

「隠し部屋や地下室は……ないか」

「索敵班、匂いや覇気を辿れ!」

「望みは薄いですよ。『でじターン』は隠形術の達人と言われてますから」

「ああくそっ、まるで痕跡が残ってない」

「運営スタッフたちの余裕ぶった態度、この事を知っていたからか」

 

 風紀委員にたちが慌ただしく動いているが、捜査は難航している。

 俺たちも一緒に現場の隅々まで探したが、何も出てこない。時間だけが過ぎていく。

 

「うーん。ここまでっスね」

「捜査打ち切り!?まだ変態を見つけてないのに」

「明日、教室で捕まえるのですか?」

「それは不可能だよ。学内クエストでは逮捕状なんて発行されない、現行犯逮捕が鉄則なんだ」

「疑わしきは罰せずの精神だな」

「悔しいけど仕方ないっス。チーム"ああああ"の皆さん、ご協力ありがとうございました。後はアタシらに任せてくださいっス」

「おいおい、諦めるのはまだ早いぜ」

「マサキさん、何か思いついたのですね」

「ああ、奴は『でじターン』は、まだこの現場にいるんだよ!!」

「な、なんだってッッッスーーー!」

「「やっぱりね」」

 

 バンメモはビックリしたが、アルとココは特に驚いた様子もない。

 

 奴は隠形術の達人だ。

 恐らくこの部屋の何処かで、今も俺たちの様子を伺っている。

 風紀委員と俺たちが全員引き上げたところで、術を解除し悠々と現場を後にする腹積もりだろうが、そうはいかない。

 このまま根競べをしてもいいが、時間が勿体ない。

 

「向こうから出て来るように仕向ける」

「どうやるっスか?」

「簡単だ。(いぶ)しだしゃあいいんだよ」

 

 本当にシンプルで簡単な方法だ。

 

 ①大量のバルサンを用意する

 ②体育館から退去し、密室を作る

 ③バルサンを焚く

 ④変態が出て来るまで待つ

 ⑤変態を捕まえる

 

 ね、簡単でしょ。

 

 注意点は体育館を出入りをする際に、変態が一緒に脱出してしまう恐れがあることだ。

 入り口の扉は、人間一人がギリギリ通れるスペースのみ開ける等、工夫が必要だ。

 いかに完璧な隠形と言えど、接触されると術が解けるはず。他者に密着して出ていくとは考えられない。

 

 後、バルサンはプロ仕様の強力なヤツがいいな。

 体育館の隅々まで行き渡るように、量もたくさん必要だ。

 

「さすがの変態も、燻蒸(くんじょう)処理されそうになったら出て来るだろ」

「いい作戦だね」

「マサキさんは賢いお方」

 

 愛バのお墨付きをもらった。いける!

 

「というわけだ。バンメモ、バルサン用意できる?」

「……外道っス、ドン引きっス。Gと同列に扱うのは酷すぎるっス」

「変態に情けをかけるのか、バンメモは優しいな。だったらプランBでいくか」

「「「プランB???」」」

 

 そんなもんねぇよ!と思った?ちゃんと考えてあるんだ、これがな。

 バルサンも特別な道具も必要ない、愛バの協力があればいい。

 

「プランBとはな……」

「「ほうほう、なるほど」」

 

 奴に聞こえないよう内緒話。愛バたちはアッサリ了承してくれた。

 

「じゃあ、行って来るよ」

「上手くいくように頑張ります」

「頼んだ」

 

 そう言ってアルとココが向かった先は、使われていない体育倉庫。

 内部には、古いバスケットボールやバレーコート用のネットに、白いマットレスが放置されていて埃っぽい。

 そこへ二人が入って行き扉を閉める。一見すると意味不明な行動だ。

 

「な、何が始まるっスか?」

「まあ見てな」

 

 しばらくして、倉庫の中からゴソゴソ衣擦れ音と二人のくぐもった声がする。

 

「あ、アル、だめだよ。こんな場所で」

「ウフフ、そんなこと言って、ココさんも期待していた癖に」

「待って、私にはマサキが……」

「マサキさんには内緒です。さあ、素直になって、女同士でしか味わえない快楽を教えてあげます」

「い、いやぁ。そんなところまで////]

 

 ヤダ!なんか俺まで興奮して来ちゃった!

 あーーー!一体、あの中では何が行われているのだろうか!

 操者権限を発動して俺も参加したい!!!

 

「こ、これがプランB!?」ゴクリッ

 

 バンメモだけではなく、周りの風紀委員たちも"ゴクリッ"している。

 聞き耳立てとる場合か!おバカども!

 ここは俺に任せて、君たちは奴を探している振りを継続しなさいよ。

 

 おや、体育倉庫の様子が……

 

「アルってば、本当に綺麗だよね。もっとよく見せて」

「や、ココさん。急に積極的に////」

「フフ、アルが悪いんだよ。私をその気にさせた責任、体で払ってもらうから」

「ああ、マサキさんごめんなさい。私、私、もう////」

「ここかな?ここがいいのかな?ほれほれ~」

「だ、だめぇ////」

 

 いやーーー攻守逆転してる――――!!!

 クソがぁ!扉一枚隔てた距離がこんなに遠いと思ったことはない!

 おい、変態!!早く出てこいや!!

 このままじゃ、俺の愛バが……愛バが‥‥‥

 俺抜きで、ずきゅんばきゅんしてしまうじゃないかぁ!!

 

「令呪を持って命じる。俺も混ぜてください!お願いします!」

「マサキさん!?アンタいつからマスターになったっスか」

「使うから!三区画全部使うから!聖晶石も砕くから!」

「その先は地獄っスよ!そもそもアンタ、令呪持ってないっス!」

 

 持ってるよ!人は誰しも心のなかに令呪持ってるよ!

 好きな女性サーヴァントのみでサポート編成して、フレンド登録してもらってるよ!

 俺のFGO事情はどうでもいいよ!!

 

「許さない!女同士なんて許さないわよ!」

「うわぁ、急にオネエになったっス」

「LGBTを差別する気はないの。ただね、アタイを除け者にしたのは許さないわ!」

「マサキさんがやれって言ったんスよ。演技だって理解してるっスか?」

「演技が本気になったらどうする!!」

「それは最高じゃないですかぁ、デュフ、デュフフフフフ」

「変態を罠にハメるつもりが、アタイの愛バが百合(ゆり)百合(ゆり)んだよ、畜生め!!」

「ゆ、ゆりんゆりん!?うひょーーーーー!!」

「アル、ココ、今行くわよ!」

「行ってどうする気っスか?事が始まっていたらどうする気っスか!?」

「知れたこと!!土下座して頼み込み、参加させてもらう!!」

「男のマサキじゃ無理じゃね。その大役、私に譲るのがベストな選択だと思うの」

「ばっか!お前じゃ二人のエロスに耐えられねぇよ。秒で昇天させられるのがオチだ」

「ならどうするの?あのガチレズ空間にどうやって対抗するの」

「フッ、だからこそのオネエ化だ」

「「なん・・・だと・・・」」

「今のアタイは体こそ男だけど、心は女。ガチレズ空間も耐えてみせる」

「もう意味不明っス」

「それでさっきから内股なんだね。たまげたなぁ」

大事なアレを挟んでいるからな。これで、万が一アレが"だっち"しても心配ない!!」( ー`дー´)キリッ

「「こいつバカだ!!!!」」

 

 うるせー!人間、少しバカなぐらいが丁度いいんだよ。

 そうこうしている間に、ガチレズ倉庫がクライマックス、かもしれない。

 もう一刻の猶予もないぞ。

 

「行くぜお前ら!アタイについて来な!!」

「死なばもろともぉ!楽園を目にできるなら、この命惜しくはない!」

「うぇ、アタシも行くんスかぁ」

 

 3、2、1、0、行くぞオラッッ!!!

 

 助走をつけて、グレートダッシュ!

 合体開始だ~ひとつになって~♪……待って!ひとつになったらアカン!!!

 

 早くあの扉の向こう側へ行かなくては…………およ???

 

「マサキ」

「マサキさん」

 

 扉が内側から開いたーーー!?愛バ二人が立ったまま俺を見ている。

 アル、ココ、もう終わったのかい、まさか最後までやっちまったのかい?

 あれ、服装は乱れてない、特に火照った様子もない。演技だけで済ませてくれたのか。

 なんだ、俺の早とちりか、あーよかったよかった……んん?なんだ、この禍々しい覇気は!?

 

びゅあふぁふぁふぁふにょんんこらしゃっせっっいいわほおおおおお

「「うわぁぁ!?」」

 

 俺とバンメモが心の底からドン引きする。

 涙と鼻水と涎を盛大に垂らしながら、血走った目でグレートダッシュする変態を見たからだ。

 

 (な、デジタル!?いつの間に!)

 (マサキさんがオネエ化した辺りで、しれっと登場してるっス)

 

 しまった!愛バの百合具合が気になって、変態のことがどうでもよくなっていた。

 変態だけでなく、操者の俺まで釣り上げるとは、愛バの魅力が恐ろしいぜ。

 奴が向かう先には俺の愛バたち、アルとココが!

 気持ち悪いのがそっち行ったぞ!!二人とも逃げてぇ!!

 

「ふひょぉぉぉぉアルさまぁぁぁモーさまぁぁぁあ~りがたやぁぁぁぁぁ」

「怖いっス!」

「マジきめぇ!!」

「いっしょにゆるゆりしゃせてくだしゃぁぁぁいぃぃぃんんんんんん」

 

 暴走した変態は限界を超えて疾駆し、アルとココへ迫る。

 いろんな汁を出しながら、二人に飛びかかる姿は見るに堪えない!!!

 そして……

 

「「滅ッッ!!」」

「ぎょべじ!?」

 

 愛バ二人の鉄拳が、無防備な変態の体にめり込んだ。

 クリティカルヒット!か~な~り、いいのが入ったな。

 一撃で崩れ落ちた変態は白目を向いて痙攣している。汁がきめぇ。

 

「アル!ココ!大丈夫か」

「うん、全然平気だよ」

「これにて『でじターン』捕獲成功ですね」

「そっちはどうでもいい!二人はどこまでやったのか聞いているんだ!」

「何もやってないよ!?」

「ただのお芝居です。アレやらコレやらは誓って致しておりません」

「よかったぁ、二人が本気になったかと思って焦ったぜ」

「マサキ、滅茶苦茶動揺していたね。笑いを堪えるのしんどかったよww」

「それだけ私たちのことを思って下さるのですから、光栄の極みです」

 

 ホッとした。俺の愛バは百合道に落なかったのだ!

 

 ブランB、変態の好物である百合空間を演出し誘い込み、出て来たところを捕まえる計画だったのだ。

 愛バの熱演により、俺も一緒に釣られてしまったのは誤算だったが、作戦は成功した。

 

「魍魎の宴の元締め『でじターン』その正体はなんと!アグネスデジタルだったっス!」

「「「うん、知ってた」」」

 

 俺たちだけでなく、その場に居合わせた風紀委員たち全員が頷いている。

 

「実はアタシも気付いていたっス」

「ペンネームからしてバレバレだったからな。よいしょっと」

 

 変態にヒーリングを施す。

 これから尋問と折檻を受けるのだ、意識を取り戻してもらわないとな。

 

 こんなんでも、さすがウマ娘。耐久力は高いらしく骨折はしていない。

 神核にも異常な……え??前にチェックした時より強くなっとる!?

 こいつ、変態の癖に真面目に修練積んでいるんだな、変態の癖に!!

 

「起きろ、起きろってば」

「‥‥‥‥」

「アル、今日は一緒にお風呂入ろっか?」

「はい、是非ご一緒させてください」

「魅惑のバスタイムがキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」

「嘘だボケ」

「マ、マサキ……あなたは……」

「君はいい変態であったが、君の性癖がいけないのだよ……フフフ、ハッハッハッハ!」 

「マサキ、謀ったなマサキ!」

「「ガルマ・ザビwww」」

 

 死んだ振りを決めていた変態は、アルとココの策略にアッサリ引っ掛かった。

 

「起きたっスねデジタル『魍魎の宴』でR—20指定の書籍及びグッズの無許可販売!並びに、同人誌モデルへの肖像権侵害容疑で逮捕するっス」

「くっ、同志たちと私の夢が、こんなところで」

「アンタに黙秘権はないっス、今から説教部屋に連行するんでそのつもりで」

「い、嫌っ!たづなさんの教育的指導は嫌ッッッ!!」

 

 この怯えよう、姉さんは一体何をしているのだろう?怖いので聞くに聞けない。

 

「反省した!反省したから助けて!マサキ、私たち友達だよね?せめて、たづなさんに減刑してもらえるようにお願いして!弟からの口添えならあの緑の悪魔も……」

「シャラップッッッ!!」

「むぐっ」

「おと?今なんて言ったスか」

「なんでもない、変態が苦し紛れの戯言をほざこうとしただけだ」

 

 デジタルの口を咄嗟に塞ぐ。

 俺とだずなさんが実の姉弟だということは、基本的に秘密なのだ。

 

 (コラ、バラすなよ)

 (なんでさ!遅かれ早かれバレるんだらいいじゃん)

 (だとしても、それは今じゃない。姉さんには手加減するように言っておくから、頼むわ)

 (ホント!わかったよ。ヨスガる姉弟のことは秘密だねww)

 

ヨスガってねーわ!!

「マサキさん!?急に叫んでどうしたっス?ヨスガ???」

「なんでもない、ちょっとヨグソトースに呼ばれた気がしただけだ」

「あの、SAN値チェックした方がよくないっスか」

「マサキのSAN値は元々ゼロだよwww」

「うるせー変態、デモンベインぶつけるぞ!」

「そこはリベル・レギスじゃないの?声的に」

 

 貴公は余を誰かと間違えておらぬか?

 余はアンドウマサキ。愛バとのイチャイチャパラダイスを求道する者なり。

 マスターテリオン?そんな奴知らん!マジ使えねぇな貴公。

 

「もういいっスね。さあ、連行するっス」

「くっ」

「年貢の納め時だな。しっかり、お説教されて来い」

「くっ、クックックッ・・・黒マテリア」

「なんか余裕ぶってるよ?」

「気が振れたのでしょうか?」

 

 逃げられないよう、両サイドから風紀委員たちに拘束されたデジタル。

 しかし、彼女は不敵な笑みを浮かべて俺たちを見回す。

 

「魍魎の宴が!この程度で終わると思わないでね!」

「「「「なん・・・だと・・・」」」」

「この『でじターン』が滅んでも、私の意思を継ぐ者は必ず現れる。既に、その種はまかれ花開こうとしているのだ。アッーハッハッハッハ!!」

「まさか、後継者がいるのですか」

「察しがいいな、エロスの(いかずち)よ。その通りだぁ!」

「聞いたマサキwエロスのいかずちだってさwww」

「しっ!アルにピッタリとか思ったらダメだぞw」

「デジタルさん、ぶっ飛ばしますよ」(#^ω^)ピキピキ

「あ、ごめんなさい調子に乗りました殺さないで殺さないで殺さないで」早口小声

「おい、その後継者は誰だ。吐け!」

「仲間を売ることはできない。だけとペンネームは教えてあげる」

「はよいえ」

「その子の名は『ベル(リン)』男同士の濡れ場を描かせたら、彼女の右に出る者はいない!」

「ベルリンねぇ」

「この胸騒ぎはなんでしょう、非常に嫌な予感がします」

 

 元締めであるデジタルを捕まえても、魍魎の宴は続くらしい。

 これじゃイタチごっこだな。せめて後継者のベル鈴とやらも一緒に捕まえることが出来たら。

 その時、体育館の出入り口付近が騒がしくなった。外から誰かがここへ来る。

 

「ちょっとちょっと、一体何の騒ぎなのよ?」

「勝手に入らないで下さい。今は我々風紀委員会のガサ入れ捜査中です!」

「うっさい!私はここにいる奴に用があるのよ。いいからどきなさい」

 

 止めに入った風紀委員たちを押しのけてズカズカと体育館に入って来た人物は、俺たちの知っている奴だった。

 外を警備していたクロとシロが、ひょっこり顔を見せる。こちらに来る気はないようだ。

 目で会話を試みる。

 

 (なぜ止めない)

 (めんどい)

 (そっちの方が面白そうなので)

 (二人とも職務怠慢だぞ。後でお仕置きだな)

 ((望むところだぁぁぁ!!))(*´▽`*)

 

 喜ぶんじゃありません!お尻ぺんぺんしてやるからね。

 

「あ、いたいた。デジタル、コレ頼まれていた原稿‥‥‥うげ!?」

「ドーベル。なぜ、あなたがここに来たのですか?説明しなさい」

「あ、あ、アルダン姉さん。これは、その」

「俺たちもいるぞ」

「ベルちゃんハロハロ~」

「マサキ!?ファインさん!?え、え、何?何が起こってるの」

 

 メジロ家のお嬢様、メジロドーベルが俺とアルとココを見て動揺する。

 周囲を見渡した彼女は、バンメモと風紀委員たち、そして取り押さえられたデジタルを見て何かを悟った。

 

「ベルりぃぃぃぃんんんん来ちゃダメだぁぁぁーーーー!!!」

「っ!?」

 

 デジタルが絶叫し、ドーベルが踵を返して逃走しようとしたが、時すでに遅し。

 瞬時に状況を判断した風紀委員がドーベルを取り囲み、その腕をアルダンが捻り上げる。

 

「そう、あなたが『ベル鈴』だったのね」

「いたたた、何の事?私はただ、デジタルに届け物があっただけで」

「原稿と言いましたね。ちょっと見せてもらいましょうか」

「だ、ダメ!ダメダメダメ!ちょ、姉さんやめて!お願いだから後生だから!」

 

 ドーベルが大事そうに抱えていた茶封筒を奪い取り、その場の全員で確認する。

 

「こ、これは!?」

「ウホッ!やらないかwww」

「おと、男の裸祭りっス!うわぁ、公衆便所でそんな事まで////」

「おやおやおや~。私の知ってるドーベルは、メジロ家随一の男嫌いではなかったかしら?」

「~~~/////」

 

 とんでもねぇBL超大作原稿の数々でした!!濡れ場というかハッテン場が多いこと多いこと!

 はわわ、目が腐りそうよ。

 それを凄まじい画力で描き上げた、ドーベル大先生は両手で顔を覆い、しゃがみ込んでしまった。

 

「終わった、私の学園生活。ううん、メジロ家でのキャラ付けが完全に崩壊する」

「私を散々ドスケベ呼ばわりした報いです。後、あなたがBLガチ勢なのはメジロ一族全員が知ってますからww」

「い、イヤァァァぁぁぁ―――――!!!!」

「子気味良い断末魔だね、マサキ」

「そうだな。お、このシーン凄いな、腹筋の割れ具合がなんとも」

「そうでしょうそうでしょう!ベル鈴は男体のプロだからね。この間もクエストでボディビル大会パンフの表紙を依頼され」

「もうやめてーーーー!私のライフはとっくにゼロよ」

 

 こうして、闇市『魍魎の宴』は終焉を迎えた。

 しかし、これで終わりだとは思えない。

 やがて第二第三の宴が開催されるであろうことは、誰がどう考えても明白だったからだ。

 うん。まあ、程々にな。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ご協力ありがとうございましたっス!」

「こちらこそ。目と脳が腐ったけど、いろいろ勉強になったよ」

「では、私たちはこれで、デジタルとドーベルの二人を説教部屋に連行っスよ~」

「「ひぎぃぃぃ!!」」

 

 バンメモたちが『でじターン』と『ベル鈴』を引きずって行った。ちょっと可哀そうだ。

 しかたねぇ、姉さんに減刑を嘆願しておいてやるか。

 

「クエスト完了!みんなお疲れ様」

「「「「お疲れさまでした」」」」

 

 チーム最初のクエストは無事達成だ。これからも頑張るぞい。

 

「お恥ずかしい、まさか、身内が関わっているとは‥‥‥」

「まあまあ、ベルちゃんが筋金入りの腐女子なのは、今に始まったことじゃないし」

「メジロ家ですからねwww」

「うう、何も言い返せません」

「ねえねえ、裸多めの本は?私も見たいんだけど」

「バンメモたちが全部持っていったぞ。残念だったな」

「ええー」

「あんなのクロは見なくていい。腐っちゃやーよ」

「アル姉さんとココが、ガチレズ淫乱女子というのは本当ですか?」

「「違う!!」」

「隠さなくてもいいのです。お二人は、女同士で思う存分濃厚接触してください」

「だから違うってば!」

「あれはデジタルさんをおびき出す演技だったんです!」

「ついでに、クロも混ぜて3Pなんてどうですか?その間に、私はマサキさんと濃厚接触しまくります!」

「殺るか?」

「うん、殺ろう」

「遺体は里芋畑に埋めてあげます」

「三対一とは大人気ないです。これだから百合くそウマは嫌なんですよ」

 

 あーあーあー、またこのパターンかよ。

 仲がいいと思ったら、すぐにケンカしちゃう愛バたち。

 シロがボコられる前に仲裁仲裁!

 複数の愛バを持つ操者として、彼女たちのケアは大事な義務であり使命だ。

 

 まずは、睨み合う愛バたちの注意をこちらに向けよう。 

 その辺のベンチに腰掛けて、上着のボタンをいくつか外し、はだけさせる。

 

「おーい。そこのお嬢さんたち!」

「「「「????」」」」

 

 よしよし、こっちを見たな。

 おはだけ具合をさらに増加、伊達メガネを取っ払い、流し目を送る。

 今だ!!

 

や・ら・な・い・か

 

「「「「やります!!やらせていただきます!!!!」」」」

 

 一斉に駆け寄ってくる愛バたち。ヤダ、まっしぐらじゃないのさ。

 

「ていっ」

 

 すかさず立ち上がった俺は加速技(アクセル)で愛バの眼前に移動、4人のおでこに軽くチョップをする。

 

「あう!」

「おごっ!」

「きゃ!」

「あいたっ!」

 

『やらないか』に興奮した愛バたちは反応が遅れ、俺のチョップをモロに受ける。

 

「お前たち。俺との約束、第38条を言ってみな」

「「「「ケンカしてもいい。でも、直ぐに仲直りすること」」」」

「そうそう、仲直りできるな?」

「「「「‥‥‥できます」」」」

「うん、偉いぞ。よーし、よしよし」ヾ(・ω・*)なでなで

 

 愛バたちは大人顔負け実力を備えている。だけど、まだ子供だ。

 年長者であり、教官であり、操者でもある俺が導いてやらないといけない。

 もっとも、俺の方が逆に教えられる事の方が多いんだけど。

 え?その子供に手を出した不届き者がいるって?知らね。

 

「ごめんなさい。言い過ぎました」

「ホントだよ」

「私、ノンケだからね。勘違いしないでよ」

「マサキさん一筋ですから、同性の相手をしている暇はありません」

 

 基地に帰るか。

 その前に、ギルドにも顔を出して次のクエストも選んで、それから…‥‥

 

「先に戻ってろ。ちょっとギルドに寄って、クエストの完了報告してくるわ」

「一緒に行くよ」

「ええ、お供しますとも」

「そう?じゃあ一緒に行くか」

 

 愛バを連れだって歩くと目立つ。それは学園の外だろうと中だろうと関係ない。

 御三家令嬢にして、それぞれが際立った美貌を備えているから仕方ないわな。

 最近やっと、不躾な視線にも大分慣れて来た感じがするよ。

 

「よかったのか、ホイホイついてきて。俺は愛バだってかまわないで食っちまう人間なんだぜ」

「・・・私・・・マサキさんみたいな人好きですから・・・」

「うれしいこと言ってくれるじゃないの。それじゃあとことんよろこばせてやってやるからな」

「えーと、すごく・・大きいです?でいいのかな」

「そのセリフはまだ早いです」

しーましェーン!!

「ちょ、おバカwww発音がww」

「「「「あはははははははははははははwww」」」」

 

 アレな本を読んだ影響から、変なやり取りをして笑い合う俺と愛バたち。

 もうすっかり仲良しさんだな。

 

 …とこんなわけでチームの初めてのクエスト体験はクソミソな結果に終わったのでした…

 

 (アル、あの本は?)

 (根気よく脅迫ンンン、説得した結果、悔い改めたドーベルから、快く在庫を譲って頂きました)

 (やった!後でじっくり読もうっと)

 (悪だくみ中なのかな、アル姉、ココ?)

 (マサキさんにバラされたくなかったら、私らの分も寄こすのです)

 (そう言うと思って、全員分用意させてます)

 (アル姉最高!このエロ!)

 (フフフ、マサキさん似の主人公がヒイヒイ鳴く絵だけで、ご飯三杯はいけますよ!)

 (ホント、ドスケベですね。だがそこがイイ!)

 

「おーい。何やってんだ?置いていくぞー」

「今、行きます」

「待って~」

「アル……みんな一緒で、楽しいね」

「はい、毎日とても幸せです」

 

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