俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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女体の神秘

 シャミ子との夢修練は鋭意継続中だ。

 今日も眠りに落ちた瞬間に夢空間に連れ込まれる。

 そんでシャミ子が『お帰りなさいませ!』と、満面の笑みで迎えてくれるってわけ。

 

「不定期開催なのどうにできない?ちゃんと曜日決めてやろうぜ」

 

 修練に付き合ってくれるのはありがたいけど、こっちは社会人で仕事をしている身なのよ。

 スケジュールは前もって伝えてほしい。

 

「おやまあ、この子ってば、私の気遣いが気に入らないと言うのですね」

「気遣い?」

「突発的に発情したマサキが"お楽しみ"を目論んでいる時は修練を中止に……」

「うわーい!シャミ子様最高ッッ!お気遣いの天才ですやんかーー!」

「フフン、私の偉大さをようやく理解したようですね。もっと持ち上げて!私の承認欲求を満たすのです」

 

 お気遣いの女神様が満足するまで褒めちぎった。

 やり過ぎると天狗になるので注意しないといけない。

 

「早速始めましょうか、前回の続きから」

「うっす。今日もよろしくお願いします」

 

 しゃあ!修練開始の時間だオルァ!

 

 シャミ子が用意した修練メニューは実にバラエティーに富んでいる。

 その一部を紹介するとこんな感じである。

 

 『巨大なオルゴナイト塊の精製と破壊を繰り返す』

 『限界までブラスターを吐き続ける。射程と発射時間延長目的』

 『高難易度フィールドアスレチックの制限時間内クリア"SASUKE"のパクリ!?』

 

 楽しみながらできるゲーム感覚の修練が盛りだくさんだ。

 

 今日なんて、オルゴナイトミラージュで多重影分身したシャミ子軍団と地獄の100人組手だったよ。   

 マジで死ぬかと思った。

 

「ぜー…はぁ…ゲホッ…ぜー」

「まあ及第点でしょう。後もう少しで完全勝利でしたけど」

「終盤の……が、強すぎ……る…」(*´Д`)

「あれこそシャミ子十傑衆(じっけつしゅう)!全盛期の私をイメージして創り出した、無慈悲な分身体たちです」

 

 大の字に倒れて荒い呼吸を繰り返す俺。

 衣服は既にボロボロで満身創痍の状態だ。

 シャミ子十傑衆……なんて恐ろしい奴らなんだ!あれで分身体だと!?

 強よすぎる。だけど!前回よりは動きが見えた。次に戦う時はもっとやれるはず!

 

「フフフ、今のマサキなら私には逆らえませんね」ニチャァァ

「な、こんな時に!」

「頑張ったご褒美に私が癒して差し上げましょうねぇ!」

「キャー―!痴女が出たわーー!痴女神様に襲われる―ッ!!」

「まだ叫ぶ元気がありましたか。しかし!助けなんて来ません。ささ、私に任せて楽にしてくださいね~」

「メルアーーー!テニアーーー!カティアーーー!お助けぇぇぇーーーー!!」

「覚悟しなさい!とうっ!」

 

 いつもタイミングよく現れる、三女神の助けが来ない!?

 終わった……ごめんな愛バたち……俺、シャミ子に汚されちゃう。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「はい。終わりましたよ」

「……ありがと」

「なんか不満そうですね?しっかりと全身をヒーリングしたはずですが」

 

 てっきり"うまぴょられる"と思っていたのに、シャミ子は懇切丁寧な治療を施してくれた。

 傷も癒えて疲れもぶっ飛んだ。夢の中なので衣服すら修復されるのには驚いた。

 だというのに……なんだこの、腑に落ちないというか、裏切られた気分になるのは一体。

 

「『なんだ、うまぴょるんじゃねーのかよ!』と思っていますね」

「いや、別に……」

「ちょっと残念だったりします?」

「そんなことない」

「なんだかんだ言って、私のことを気に入ってますよねー」(・∀・)ニヤニヤ

「くっ、悔しい!男心を弄ばれたぁーーー!ちくしょーー!」

「マサキがどうしてもと言うのなら、やぶさかではありませんよ」

「またそういうことを言う」

「けれど、そのお役目は愛しき末裔に任せることにしましょう」

 

 『これでも人妻ですから♪』とウインクを寄越すシャミ子。ムカつくけどカワイイ!

 認めよう。俺はこの面白女神様を気に入っているのだ。

 

「マサキが私に乗る時は必ず来ます。その日を楽しみにしていてください」

「え!?の、の、乗るって、おまっ」

「私は激しいですからね。振り落とされないよう、しっかり鍛えておくことをおススメします」

「激しいのか!?」

 

 イマイチ会話が嚙み合ってない気がするけど、まあいいや……

 『シャミ子は激しいのがお好き』このドスケベ元祖が!!

 

「シャナミア様~!マサキさーん!ご飯できましたよ~」

「はーい!行きましょうマサキ」

「うぇーい。腹減ったぁ~」

 

 夢空間内に建てられた女神たちの拠点。

 通称、女神ハウスからメルアが手を振って俺とシャミ子を呼んでいる。

 修練を終えた後は、女神ハウスでご飯を頂くのがルーティンである。

 

 夢の中なのに、修練するとめっちゃ腹減るんだよなぁ。 

 リアルで夕飯は食べたから、これは何だろう?夜食になるのか?

 

「ここで食べたものは、リアルの血肉にはなりません」

「じゃあ、無駄に太る心配はないな」

「だからと言って、食べ過ぎは禁物です。適度に美味しく召し上がってください」

「了解だ……うんめぇ!カティアとメルアは料理上手だな」

「えへへ、褒められちゃいました」

「ありがとう。作ったというより、念じて創造したが正しいけど」

「おかわり―!」

「昔からよく食べますねぇ。このパワフルイーターは…」

 

 料理は基本、カティアかメルアが担当する。テニアとシャミ子は食べる専門だ。

 で、このテニアさんがメッチャ食べる。女神一小柄なのに一番食べる。

 

「何?私の顔をじっと見ちゃって、このおかず分けてほしいの?」

「美味しそうに食べるなぁと思って」

「ご飯は美味しく楽しく食べるがモットーだからね!ほら、マサキもじゃんじゃん食べなよ」

「うっす。いただきます」

 

 テニアに負けないよう、俺もしっかり食べよう。夢で摂取したカロリーはノーカン!

 女神の食卓は今日も賑やかだ。こういうところ、うちの愛バたちと似ている。

 トーヤさんもきっと、微笑ましく思っていたんだろうなあ。

  

 女神ハウスは出入りする度にその形を変える。不思議のダンジョン仕様。

 今回はなぜか、サザエさんの家を参考にした間取りだった。

 食後はちゃぶ台を囲みまったりテレビを見る。これも恒例の習慣だ。

 最新型の50インチ、レトロな家具家電が多い中で、テレビだけはいいのを揃えている。

 

「まさか、百合百合ガンダムの時代が来ようとは……長生きするもんです」

 

 これもうグエルが主人公でよくね?と思うアニメをみんなで鑑賞した。

 仮面装備ママが毎回不穏すぎだよな……やっぱ仮面つけた奴は信用ならん!

 

「シャナミア様。水星の魔女は置いといて、やるべきことがあるのでは?」

「この後、鬼滅も見ます」

「違いますって、コレですよこれ」

 

 メルアがシャミ子に四角い何かをパスした。

 

「おお!すっかり忘れていました」

「何だこれ?」

 

 シャミ子が両手で持つのは50センチ四方の立方体だった。

 オルゴナイトでで生成された四角い物体?

 

「ちゃぶ台片付けるよ~」

「はい、マサキはコレを持ってください」

「お、おう」

 

 カティアとテニアがちゃぶ台をいそいそと片付ける。

 広くなった畳張りの部屋の中、シャミ子が立方体を俺に差し出す。

 思わず受け取ったけど、何が始まるんだ?

 咳払いしたシャミ子は、真面目な顔をして俺に向かい合う。

 

「マサキ、今こそ最後の試練をあなたに伝えます」

「あ、ああ。そんなのあったな、忘れてたわ」

「最後の試練…それはなんと!あなた自身が決めるのです!この"オルゴンダイス"でね」

「サイコロだったのか」

「6面にそれぞれ違う試練が描いてあるのですよ」

 

 このサイコロは、シャミ子がメルアに発注して作らせたものだった。

 『痛』『臭』『汚』とか嫌な漢字が見えた気がするのだが?

 こんなので最後の試練を決めるのか……この投げやり感、面倒なら試練自体やめろよ。

 

「ほら、早く投げて投げて」

「思いっきりやってしまいなさい」

 

 テニアとカティアはワクワクしながら見守っている。

 

「さあ、運命のダイスロールを!」

「いいんだな。投げるぞ……そりゃっ!」

 

 投げるというより転がした。

 オルゴナイトのサイコロは、不思議な力で床を何度もバウンドし中々停止しない。

 

「「「何が出るかな何が出るかな~」」」

 

 この三女神ノリノリである。

 

「「「何が出るかわ……」」」

「もうわかってまーす!!」(*´▽`*)

 

 最後はシャミ子が叫んでサイコロは止まった。

 何この茶番?わかってるならやらすなよ!!

 

 俺は上を向いたサイコロの面を見る……『変』?へん?

 

「あちゃ~、それ引いちゃいましたかぁ」(・∀・)ニヤニヤ

 

 最初から決めていた癖に白々しいシャミ子。

 

 変・・・変な女神なら目の前にいるな。

 

 三女神が手に隠していたクラッカーの紐を引っ張る。

 『パンッ』軽快な音が鳴り、紙吹雪と紙テープが飛び出す。

 紙テープのほとんどがシャミ子の頭上に降り注ぎ『ぐぁ!これ邪魔』と呟いた。

 

「厳正なるダイスロールの結果"変化の試練"決定しました!拍手~」

「「「わーわーわー!」」」パチパチパチ~

 

 変化の試練……もう嫌な予感しかない。

 

「変わるっていいですよね」

 

 お、シャミ子がなんか語り出した。

 

「生きるということは、すなわち変わること、変化なくして生は望めない」

 

 シャミ子は俺の周りを反時計回りにゆっくり歩きながら言葉を紡ぐ。

 

「来たるべき戦いで生き残るためにも、マサキ、あなたは大きく強く変わらなくてはいけません」

 

 ぐるぐるするシャミ子に足払いをしてみた。しかし、簡単に避けられてしまった。

 

「変化を恐れず、受け入れ、適応してみせなさい。あなたならきっとできます」

 

 ぐるぐるぐるぐるシャミ子がぐるぐる~。何の儀式だコレ?

 

「変化の試練とは、その練習だと思ってください。試練をクリアすることで、本番に向けて心身が整うことでしょう」

 

 ピタリと停止したシャミ子は畳の上に正座して、自分の膝をポンポン叩く『おいで』のサインだ。

 本日の夢もはこれで終わりらしい。

 よっこらせっと、毎度毎度失礼しまーす。俺はシャミ子の膝を枕にして横になる。

 シャミ子のそばで寝る、これが現実への帰還方法です。

 

「試練の内容は?」

「特別、何かをしろとは言いません。一週間、普段通り過ごしてください」

 

 そんなのでいいのか?簡単すぎると逆に怖いんだが。

 

「簡単だといいですね。なあに、すぐにわかりますよ…すぐにね…クフフフッ」

 

 何か企んでいることを隠そうともしないか。お手やらかに頼むぜ。

 

「今回の試練を乗り越えたときこそ、私の起動者として正式に認めましょう。準備はいいですか?」

 

 どうせ拒否権はないんだろ?いいぜ、やってやるよ。

 

「頑張れ~頑張った分だけ、ご飯がおいしくなるよ~」

「深く考えず付き合ってあげて、時には諦めが肝心よ」

「こんな試練、マサキさんなら楽勝です。私はそう信じていますから」

 

 三女神の心温まる激励を聞いていると、眠たくなってきた。

 リアルでは愛バに夢では女神たちに見守られながら、ウトウトすることが多い俺である。

 ほっぺをツンツンされても無抵抗だ。

 

 シャミ子の膝枕は相変わらず最高。

 高さも柔らかさも俺好みでちょうどいい、頭を撫でてくれる優しい手も好き。

 

「期待していますよ。どうか、面白き一週間を……」

 

 シャミ子……お前、ハプニングが起こることを期待してない?

 あ、俺が無抵抗だからってチューしようとするな・・・・・・・ねむねむ・・・

 

 〇

 

「あー、起きなきゃ…ふぁぇ」

 

 本日も目覚ましアラームが鳴る前に起きたぜ。朝一の勝った気分!

 起きたての寝ぼけ頭では夢の内容がよく思い出せない。

 

 (試練がどうとか言っていたような、何だっけ?)

 

 布団から這い出る前に隣を確認する。

 そこに、楽園があった。

 

「‥‥ん……ZZZ」( ˘ω˘)スヤァ

 

 天使の寝顔。

 夢で見た女神たちに引けを取らない、絶世の美少女が俺の隣で寝ていた。

 下着姿に俺が貸したサイズの合わないTシャツ着たウマ娘。

 鎖骨やお腹に太もも、その他いろいろが(あらわ)になった姿は垂涎(すいぜん)ものですよ。

 

「シロ……こいつマジクソ可愛いやんけ」

「ZZZ」( ˘ω˘)スヤァ

 

 柔らかなウマ耳に軽く触れると、ピクッと反応が返ってくる。

 フフ、ずっと撫でていられるな。

 

「ふへ…おまぇ……モンテスキュー……」( ˘ω˘)スヤァ

 

 寝言が意味不明、どんな夢を見ているのだろう?

 

 シロを起こさないように注意しながら布団から出る。

 彼女の引き締まったお腹が冷えないよう、布団をかけ直しておこう。

 

 なんか変だ、いつもよりやや目線が低い気がする。

 まだちょっと寝ぼけているんだな。

 洗面所に行って、トイレと、歯磨き、えーと……シェーバーは……

 

「はぁ?」

 

 俺の口から素っ頓狂な声が出た。

 それも仕方あるまい、だって俺の家に、見たことの無い人物がいたのだから。

 

「誰?」

 

 問いかける。なぜか向こうも同じ事を言った。聞いているのはこっちなんだが…

 耳までおかしいのかな?口から発生した音も高いソプラノボイスだ。

 

 (誰だこの女、不法侵入?)

 

 初見の女は呆けた顔で俺を見ている。

 女だ、女がいる、顔小さい、髪キレイ、色白で、可愛い寄りの美女だ。

 おい…ボーっとしてないで、なんか言えよ。

 とりあえず捕縛するか?あーもう、朝からトラブルなんて勘弁してくれよ。

 

 (試練だって控えているのに……ん?試練???)

 

 脳にかかった霞がようやく晴れてきた!

 思い出せ!夢空間でシャミ子は何と言った?試練、そう試練が始まったのだ。

 

 変化の試練!!!!

 

 洗面台の上にある鏡に飛びつく、そう鏡だよ鏡!

 俺が見ていたのは洗面所にある鏡だ。そこに映った女を『誰?』と思っていた。

 

 顔をペタペタと触る。鏡に映った女も顔を触る。

 アーッと口を大きく開ける。女も口を大きく開けた。

 変な顔をしてみた。女も変顔にチャレンジ……やだ、カワイイじゃん////

 

 おわかりいただけただろうか?

 認めたくないものだな。しかし、起きてしまった事実は認めねば!

 

「これが……俺…だと…」

 

 変化の試練で俺は確か変わったのだ。そう、性別がね!

 

 男から女へ『チェーンジッ!』しちゃった。

 

 ・・・・・・・・・・・・マジかよぉ(´Д`)

 

 はい、そういうわけでしてね。

 女体化ですよ。にょーたーいーかぁー!

 

「ヒゲを剃らないでいいのは楽チンだ」

 

 混乱しながらも、とりあえず歯磨きをすませた。

 寝間着として着ていたシャツとパンツが妙にブカブカだと思ったら、性転換とはね…

 いや~参ったねこりゃ。とんでもねぇ試練を与えてくれましたな。

 

 (シャミ子……次に会ったら泣かす!!うどんで泣かす!!)

 

 今頃、テヘペロしているシャミ子と三女神を少しだけ呪っておいた。

 

 いつまでもここで悩んでいるわけにもいかない。

 

「あったか~いシャワーでも浴びよう」

 

 体の確認前に寝汗を流してリフレッシュしたいと思います。

 潔く服を脱ぎ捨てた俺は、一糸まとわぬ姿になる。

 全裸だ……美女の全裸‥‥‥待て待て待て!何美女とか言っちゃってんの??

 コレ俺ですよ!体は女でもロリコンクソ野郎の精神はそのままだっつーの!

 照れてる場合か////サッサとシャワーだ、シャワ~。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・胸、結構あるな。

 

 シャワーを終えた俺は全身をタオルで拭き。隅々までよく確認した。

 

 縮んだ身長、今は恐らく165センチぐらい。

 手足は細くスラッとしていて色白のきめ細かい肌をしている。

 おぱーいサイズはココ以上クロ未満、B83ってところだな。ちょっと邪魔。

 割れていたはずの腹筋は、引き締まってくびれもしっかり、程よい若干プニモチ。

 お尻もいい形。こいつぁ美尻だ!

 なんだこの女?目力ヤバくない?エメラルドの如く輝く瞳は女体化しても健在だ。

 長いまつ毛は天然カールしている。

 顔面偏差値の高い愛バたちを見慣れた俺だけれども、これは美女と言ってもいいのでは?

 小顔で整った容姿。童顔らしく、まだギリギリ少女の幼さも残っているのがポイント高い。

 

「極めつけはこの髪だ」

 

 指通りの滑らか過ぎる、ツヤツヤ白銀のロングヘア、母さんそっくりの髪。

 異世界から帰還するときに発現した、限定バスカーモード状態の時もこんな髪色になった

 理由はなんとなく心当たりがあるけど、今はいいだろう。

 

 母さんに似ているのは、ちょっと嬉しかったりする。

 

「そうか。今の俺、母さん…それと姉さんに似てるんだ」 

 

 母さんと姉さんを、足して二で割った感じの美女が今の俺だ。

 いろんな意味で最強じゃない?

 

「ふむ。いい女だ」

 

 自画自賛だけどそう思った。

 おっと、全裸でいたら催してきましたよ。

 風呂で確認して『ひょぇ!』となったけど、最重要箇所をもう一度チェックしてみるか。

 失礼、ちょっとお花摘みに行って来るわ~。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ない。

 

「ふぅぅ―……マジでない」(;'∀')

 

 ないんだよね。

 

「なんだこの喪失感は……」(゜o゜)

 

 あんなに一緒だったのに~

 20数年間ずっと仲良く歩んで来た相棒!愛棒?

 

「ううっ……何も言わずにお別れなんて…」(´;ω;`)

 

 愛バになんて説明しよう。

 最早、相棒は俺一人のものではないと言うのに……

 棒を無くした俺をあいつらは許してくれるのだろうか?

 

 AIBOOOOOOOOOOぉぉぉーーー!!

 

 女体化したという現状を真摯に受け止め。相棒を失った悲しみにも耐えた。

 もう何も怖くない!

 風邪ひくのは怖いので、サッサと服を着よう。部屋に戻りクローゼットとタンスを漁る。

 とりあえず、シャツとパンツを履いて……ありゃサイズが合わねぇ。

 これは、愛バの服を借りたほうがいいかも、頼んだら貸してくれるかな?

 

「女物の服か…実はちょっとだけ、興味あったりして……」

 

 (ハッ!殺気!?)

 

 殺気を感じた俺はその場から飛びのく。

 一瞬前まで自分が映っていた姿見が何かによって貫かれた。

 それは緑の結晶で作られた、見覚えのある触手…もとい、尻尾だった。

 

「シロ!?」

「……むぅ……避けた?…ふぁ」

 

 尻尾で攻撃してきたのは、寝ぼけ眼のシロだった。

 寝起きで覚醒しきっていない彼女は、目をこすりつつ小さな欠伸をする。

 俺が貸したTシャツはブカブカで、片方の肩が出るほどズレてしまっている。

 姿見から尻尾を引っこ抜くシロ、割れた鏡の破片がパラパラと床に散らばった。

 

 (この状況はマズい)

 

 たった今起きてきたであろうシロは、部屋で見慣れぬ女を発見し攻撃した。

 問答無用、最初から仕留める気満々の一撃。

 まだ頭の働いていないシロは、相手を問いただすこともなく、俺だと気付くこともなかった。

 とりあえず『殺っとくか』ぐらいの感覚でオルゴンテイルを放ったのだ。

 

「不審者……めんど…ねむ……目的…所属…言え……」

 

 追加のオルゴンテイルが鎌首をもたげる。

 6本に増えた尻尾はその先端を鋭利な刃物に変え、その全てを不審者(俺)へと向ける。

 後はシロの号令一つで狙った獲物を容赦なく引き裂くだろう。

 

「俺だよ俺!おれおれ俺だってば!」

「……詐欺?」

「目の前でオレオレ詐欺なんかするか」

「いいから、はよいえ……後、三秒だけ……待つ…3…2…1」

 

 無慈悲なシロがカウントダウンを開始する。

 このままではヤバい。目の前にいる女が俺だと何とか気付いてもらわなくては。

 愛バ相手に身分を証明する方法、最も確実で手っ取り早いものと言えば、これしかない。

 バスカーモード発動!俺の体から覇気粒子が放出される。

 室内は一瞬で大量の粒子光で埋め尽くされた。眩しい…俺は早朝に何やっているのだろう……

 女の体でどこまで覇気を扱えるか不安だったけど、バスカーモードは問題なく使えた。

 頼むシロ、気付いてくれ。

 

「0……ふぁ!?…これ……どうして?うぇ???」

「シロ!俺だよ。見た目こんな感じだけど、俺なんだ」

「マサキ……さん…」

「そうだ、お前の操者のアンドウマサキだ」

「そんな……では、私は…」

 

 何度か目を瞬かせたシロは驚愕の表情でプルプル震えだす。

 よかった、気付いてくれたみたい……

 

「ふんぬッ!」バチンっ!

「なにしてんの!?」

 

 いきなりシロがオルゴンテイルで自身の頬をビンタした。 

 何!自傷行為するほど混乱したの?

 

「こいつめッ!」バチンッ!

「また!おいやめろ、一体どうした?」

 

 2回目のビンタがヒットした。痛そう。

 まだ続ける気か?止めなくては、シロの綺麗な顔がおたふくになってしまう。

 シロに近づき、3発目をお見舞いしようとする尻尾を手で制して止める。

 

「止めないでください。寝ぼけていたとはいえ、操者に刃を向けた私には尻尾ビンタ100連でも生ぬるい!」

「シロは悪くない。俺が急に性転換したのがいけないんだ」

「ダイヤモンドが聞いてあきれますよ。今日から私はサトノ屑石(くずいし)に改名します」

「そこまで言わなくても。クズイシなんて呼びたくないぞ」

「さあ、マサキさん!クズな私奴をハードなお仕置きでメチャクチャにしてください」

 

 こいつ、俺にお仕置きされるのが目的じゃないよな?

 若干なにかを期待しているようなシロ、その両頬に手を添えてヒーリングをする。

 あーあ、赤くなっているじゃないか、結構本気でセルフビンタしていたようだ。

 

「あんま自分を責めるな。こうして俺は無事なんだし」

「うう……申し訳ありません」 

「朝起きて知らない女がいたら、誰だってビックリするよ。俺を攻撃したことは、不幸な事故だったてことで忘れようぜ。俺は全然気にしてない」

「でも……」

「いいな。この話は終わりだ」

「わかり……ました」

 

 罰せられなかったことに納得していない様子のシロ。すっかりしょげてしまった。

 元気づけてあげたい。こういう時は、こうだ!

 

「元気出せ、シロ」

「え、ええ!?」

 

 俺はシロを抱き寄せて、その顔を自分の胸に誘導した。

 突然の事態にシロは軽くパニックを起こす。

 

フオォォォ!マサキさんのおぱーいが私をぱふぱふしてますぅぅーーー!」

「しばらくこうしてやるから、元気出せ、な?」

 

 普段、愛バたちにしてもらっていることをやり返しただけ。

 こうされると気がでる!と俺は思っているんだけど、どうかな?

 

「あ~柔らけぇやわらけぇ!最高です……うぷぷぷぷぷ」(´▽`*)

「お前には負けるが、俺のおぱーいも中々のもんだろ?」

「ずっとここに挟まっていたい。マサキさんおぱーいは国宝級ですよ」スリスリ

「だったら、シロの胸は世界遺産だな」

 

 数分後、シロは元気を取り戻した。

 ヒーリングで頬の腫れも引き、肌ツヤも良くなっている。

 やはり、おぱーいは人類共通で元気の源なのだ。

 

「堪能しました。元気も勇気も100倍です」ツヤツヤ

「それはよかったな」

「延長をお願いしたいところですが、聞かせてください。一体全体何がどうなって、女性になってしまったのですか?」

「シャミ子の仕業だ。これも試練なんだとよ」

 

 夢空間であった出来事をシロに説明した。

 

「とんでもない試練を与えてきますね。さすがメジロの開祖……イカれてやがる」

「だよなー。説明もしてくれなかったし」

「‥‥‥それにしても、ふーむ。これは…」

「やっぱ変かな?」

「全然ッ!変じゃありません。女になってもマサキさんは最高です!下手なウマ娘より、よっぽど美しい!そして、メチャクチャ可愛いですよ!」

「バーカ、褒めすぎだってばよ///」

 

 お世辞だったとしても悪い気はしない。

 シロのような美少女に容姿を褒められたことは素直に嬉しい。

 

 シロと共に、割れてしまった姿見の破片を手早く片付けた。

 踏んだりしたら危ないからな。

 

「本当に申し訳ありませんでした。今日中に新しいものを取り寄せます」

「形あるものいずれ壊れる。気にすんな」

「それでですね、よければなんですが……」

 

 シロがモジモジしながら俺を見る。心なしか、その視線は俺の下半身に注がれている気がする。

 

「確認してみるかい?」

「是非に!」

「こういうのは同性にチェックしてもらうが一番だよな。頼めるか?」

「お任せください」

 

 俺はシャツを脱ぎ捨てた。シロが『うひょ』と歓喜の反応する。

 互いの裸は見慣れているので今更照れはない。しかも、今は同性なのだからな。

 先に一人で確認したけど、俺の体に変な所がないか客観的な意見が聞きたい。

 シロを交えて全身チェックの始まりだぁ!!

 

 ・・・・・しばらくお待ちください・・・・・

 

 全身をチェック中、シロは『うわぁ』『ほほう』とか終始ニヤニヤしていた。

 彼女曰く、俺の体は完璧な女になっているとのことだ。

 そして、下半身の重要部分についてだが・・・

 

「……ないよな」

「……ないですね」

 

 やっぱりか!じっくりたっぷり確認してもらったけど、ダメだったか!

 『いないいない、ばぁ!……なーんだやっぱりあるじゃんw』てな風にはならなかった。

 

「完全にロスト、見事なメス堕ちでございます」

「AIBO……寂しいぜ」

「マサキさんの()()にはもう会えないのでしょうか?」

「試練の期限は一週間だ。それが終われば元に戻るだろ」

 

 元に戻らなかったら・・・わかっているなシャミ子?

 鼻からうどんぐらいじゃすまさんぞ!

 

「それを聞いて安心しました。一週間程度ならば我々愛バも我慢できます」

「迷惑かけてすまんな」

「アル姉さん、ショック死しないといいですが」

「そんなことあるの!」

 

 相棒の消失にダメージを受けるのは俺だけじゃないのか。

 愛バたちのためにも、この試練を早く終わらせたいと思った。

 

 〇

 

 朝食には、最近ハマっているホットサンドを作って食べることにする。

 定番のハムチーズに夕飯の残りであるポテトサラダを挟んでドーンッ!

 シロと二人で『いただきます』してかぶりつく……(゚д゚)ウマー!!!

 

「ミートソースや餃子を挟んでもいけるらしい、今度試してみよう」

「サトノ製のホットサンドメーカー"挟んで熱いのぉ"が大活躍したようで何よりです」

「やっぱチーズは外せないよな~。うまし!」

「フフッ、マサキさん、チーズ垂れちゃってますよ」

「おおっと、すまん」

 

 俺のサンドから糸を引いたチーズを、シロが指で(すく)って自身の口に運ぶ。

 今の『ひょいパク』ですね。ご飯粒でやるヤツ――!

 こういうの自然にできるって嬉しいねえ。

 

 お腹を満たした後はシロが淹れてくれたコーヒーを飲む。

 

「今日はちょっと甘めに、コーヒー牛乳にしてみました」

「美味い……優しい甘さが身に染みる」

 

 ゆったりした朝の時間を愛バと過ごす、幸せだ。

 

「今日もいい一日になりそうだ」

「ですね……」

「さて、そろそろ準備をしないと、クロたちが来てしまう」

「マサキさん、出勤なさるおつもりですか!?」

「そうだけど、何か?」

「いや、何かって……」

 

 インフルエンザじゃあるまいし、女体化したぐらいで仕事を休んでられない。

 

「インフルエンザどころの事態じゃありませんけど……マサキさんが気にしないのなら、いいのでしょうか」

「今の体に合う服が無いんだよな。どうしたもんか」

「それでしたら!私のを使ってください。スカートでもブラジャーでも、お好きな物をどうぞ!」

「いいのか!助かるよ」

「フ、フフフフ、マサキさんが着用したヤツは洗わずに補完!若しくは自分で着てみるのもいいかも、うへ、うへへへへ」

「おーい。欲望が駄々()れやぞ」

 

 借りたヤツはちゃんと洗濯するか、クリーニングしてから返却しよう。

 シロは嬉々としてクローゼットのある部屋へ向かう、俺に貸す服を選んでくれるのだ。

 俺も続こうとしたところで・・・

 

 ピンポーン!

 

 インターホンが鳴った。

 

「はーい」

 

 クロたちが迎えに来てくれたのだと思い、いつものように玄関扉を開けた。

 

「おはよう。今日も時間通りだな」

「おはよ……え!???」

「誰?女の人……」

「嘘ッ!そんなことって……」

 

 外にいたのは思った通り、クロ、アル、ココの愛バたち三人だった。

 しかし、何やら様子がおかしい。

 こっちが挨拶したと言うのに、三人とも口を半開きにしたまま固まっている。

 鳩が豆鉄砲を食ったような顔か?何をそんなに驚いているのだ・・・・・・・・あ゛!

 

 (しまったぁ!今の俺は女だった)

 

 愛バの気持ちになって考えてみよう。

 玄関を開けたのは俺ではなく見知らぬ人間の女。誰やねん?

 しかも、そいつは俺(マサキ)の私服であるシャツを堂々と着用している。何やねん?

 

 女だとぉ?➡浮気!?➡ゆ゛る゛さ゛ん゛!!➡死刑じゃ死刑!!➡に゛か゛さ゛ん゛!!

 

 という流れになりそうだな。うん。

 俺は未だにポカンとしている三人に会釈をして・・・そっと扉を閉めた。

 さあて、シロに服を用意してもらわなくっちゃなあ。

 

 ピンポーン!ピンポンピンポンピンポンピンポン…ドンッ!ドンドンドンドンドン

 ドンッ!バンバンバンバンバン……ガチャッ、ガチャガタガタガタガタメキメキバキ

 

「何閉めてるの!あなた誰?マサキとはどういう関係!!」

「開けろ!おどれ、どこの組のもんじゃーー!」

「シロさんはどちらに?ハッ!まさか昨夜は三人でお楽しみにぃ!?酷い!どうして私を呼んでくれなかったんですか!!」

 

 うわぁ怖い。

 開かないように必死でノブを押さえる俺、インターホンと扉そものもを連打し、ドアノブを乱暴にガチャガチャする愛バたち。

 このままでは、外で騒ぐ三人に扉をぶち破られるのも時間の問題だ。

 もうやめてー!玄関扉のライフはゼロよ。壊したらリューネに怒られるー。

 

「シロ―!シロー!」

 

 唯一、事情を理解している愛バに助けを求める。

 シロはすぐに飛んで来た。

 

「サーヴァントライダー、サトノダイヤモンド。召喚に応じ参上致しました」

「令呪を持って命ずる。外の三人を何とかして!」

「御意!フンッ、頭の悪いバーサーカーが三体、軽く蹴散らしてみせましょう」

 

 シロは俺と場所を交代し、チェーンロックをしたままの扉を少しだけ開けた。

 その隙間からクロ、アル、ココの不満気に怒った顔が覗く。

 

「シロ!いるんなら早く出て来てよ。後ろの女誰?」

「近所迷惑です。お帰り下さい」

「その女を庇うの?マサキとどういう関係、ねえ、聞いてるの?」

「ここはラーメン屋ではありません。お帰り下さい」

「何回やりました?朝まで楽しんだのですか?詳しく聞かせてください!」

「朝からドスケベはキツイ。お帰り下さい」

「「「いいから、マサキさんを出せぇぇーーー!!!」」」

うるせぇーー!帰れって言ってんだろボケがぁ!!

 

 軽く蹴散らすのではなかったのか?結局、口論になってるじゃん。

 それにしても、家のドアって結構頑丈なのね。対ウマ娘仕様の特注品だったりするのかしら?

 

「シロ、ここは誤魔化さずに本当のことを言おう」

「わかりました。鎮まれぃアホども、今こそ真実を話しましょう」

 

 チェーンロックを外して扉を開け放つ。

 三人がなだれ込んで来たが、シロが俺の前に仁王立ち庇ってくれる。

 コホンと咳払いしたシロは仰々しい身振り手振りで話し始める。

 

「こちらの女性は我らが操者マサキさんですよ」

「「「は?」」」

「どうも、女になったアンドウマサキです」

「「「ふざけんなーー!」」」

「嘘じゃないのに」

 

 火に油を注いでしまったようだ。

 やはり言葉だけではわかってもらえない。

 シロにしたように覇気で己の証を立ててみせようぞ!

 バスカーモード・レベル1発動!覇気粒子放出!

 因みに、レベル2になるとオルゴンアーツが使えるようになります。

 

 三人の愛バたちは目がテン!ちょっとカワイイ。

 シロは俺の隣で決め顔(`・ω・´)フフン

 

「姿形がちょっと変わったぐらいで見誤るとは、それでも愛バですか?情けない奴らです!」

 

 シロが自分の事を棚の上にダンクシュートした。お前が言うな。

 

「クロ、アル、ココ。俺だ、俺なんだよ」

「「「………………」」」( ゚Д゚)( ゚Д゚)( ゚Д゚)

 

 三人は口をパクパクさせている。脳が現状を受け止めるのに時間がかかっているのだろう。

 

「あーおれ女になっちゃったよー」棒読み

「ハッピーバースデー、女マサキさん」棒読み

 

 俺が棒読みで適当に愚痴ったら、シロが棒読みで誕生を祝わってくれた。

 チラリッ・・・いつもだったら他の三人もノッてくるか、ツッコミが入るはずなのに来ないな。

 そんなにショックだったのか?

 

「嘘……だよね。こんなのって……」

 

 両手で口元を押さえ、嫌々するように首を振るココ。

 

「わ、私のせいです。私がマサキさんの()()を酷使し過ぎたから…」○| ̄|_モウダメ

 

 床に手をついて絶望するアル。

 

「あばばばばばば!マサキさんが、マサキさんが…」

 

 尻もちをついたまま俺を指差すクロ。

 どうしたことか?三人のリアクションがおかしいぞ。

 

手術して大事な()()を取っちゃったよぉーー!うわああああああああ

 

 叫び声を上げるクロ。

 アホか!手術なんかしていない!アレも取ってないわ!!

 

 〇

 

 早とちりと大きな誤解があったので、俺が女になった経緯を早急に説明した。

 物分かりのいい三人はすぐに納得してくれた。

 

「なーんだぁ。焦って損しちゃったよ」

「シャナミア様、マサキさんになんてことを…次に会ったら絞め落とします」

「でも、よかったあ。マサキが手術していなくて、マジでよかった!」

 

 余裕を持って起きたつもりが、女体化から始まったゴタゴタで時間をかなり消費してしまった。

 朝の準備を手早くすませたいのだが、そうもいかなかった。

 

「こんなんでどうかな?」

「イイ!とってもカワイイよ」

「サイズピッタリじゃないですか、やだー」

「似合い過ぎです。ちょっとそこでポーズを決めて、そうそうそのまま」

「この辺はね、もうちょっと気崩すと更にお洒落だよ」

 

 適当に服を決めて出勤するつもりだった俺を、愛バたちが引き止めた。

 今の俺は女の子なのでいつも以上にちゃんとしないとダメ!なのだそうだ。

 女性の身だしなみは大変だと存じていたが、実際にやる側になると面倒この上ない。

 なので、申し訳ないが愛バたちに手伝ってもらった。

 彼女たちは最初からそのつもりだったらしく、大層嬉しそうに世話を焼いてくれるのであった。

 

 ブラッシングで髪の毛を整え、化粧水をペタペタ(メイクは俺が拒否した)

 服選びに関してはものすごーく揉めた。全員が自分の服を着てもらおうと、おススメして来たからだ。

 このまま着せ替え人形にされていては遅刻すると思ったので、服は俺が決めた。

 選んだのはトレセン学園の制服である。愛バたちは予備に何着か持っているでそれを借りた。

 サイズの関係からクロとアルのを使わせてもらう、残念ながらシロとココのはやや小さかった。

 紺色の軍服にも似たデザインはカッコ可愛くて俺もお気に入りだ。

 旧デザインの可愛いセーラー服タイプだと、少し抵抗があったかもしれない。

 下着の上はポーツタイプのものを借りた。下はさすがに抵抗があったので自前のボクサーパンツのままいくことにする。短いスカートから覗いてしまったらゴメン。

 後は、いつもの白いコートを羽織って完成だ。

 シュウからのプレゼントであるこのコートは、オールシーズン使える上に、各種防御加護が付与されている高性能ぷりなのだ。

 学園に着いたら白衣に着替えるけど、毎日大切に使わせてもらっている。

 

「ちょっと大きいが、まあ大丈夫だろ」

「そのダボっとした感じがイイ!素敵な着こなしですよ、マサキさん」

「ありがと。みんな準備オッケーみたいだな。よし!学園に行っくぞぉーーー!」

「「「「はーい」」」」

 

 鞄を肩にかけて、いざ出発!……靴も大きいな、帰りにどこかで買っておこう。

 こうして俺たちは登校するのであった。

 

 〇

 

 歩きなれた登校ルートを愛バたちと進む。

 目線の高さ、歩幅、呼吸、筋肉の動き、違うな……なんだか体がフワフワする。

 一週間の限定だけどこの体に早く馴染まないといけない。

 力の入れ具合を考えながら、一つ一つ試して行こう。

 

「後でタキオンにでも診てもらうか」

「それ大丈夫?あのマッドが女マサキさんを見たら、実験だのサンプルだの騒ぐんじゃ」

「その時はその時だ。あんなのでも腕は確かだからな」

「女体化した理由も考えておいた方がいいですね。試練だのと言っても理解されるとは思えません」

「だよなー」

 

 いつもの出勤兼登校風景だ。

 学園が近づくにつれ道行く人々も増えて来ましたよっと。

 そうすると、毎朝恒例のアレが起きるのだ。

 

 (今日も人々の視線が飛び交っておるわ!)

 

 羨望、憧憬、嫉妬、恋慕、服従、畏怖、色欲、いろいろな感情を秘めた視線を感じる。

 それが向かう先はもちろん、俺の可愛い愛バたちだ。

 ホント目立つからしょうがないよな。

 愛バたちを一目見たいがために、朝から待ち伏せする奴までいるらしい。

 そこまでするのか?と思うが、気持ちはわからんでもない。

 美しいもの、可愛いもの、カッコイイもの、そして強いものに人は誰しも惹きつけられるのだから。

 見てる見てる、ジロジロ見てますね~。

 

 ただ、今日は若干いつもと違う。

 俺に向けられる『もげろ!』とか『ウホッ!』みたいな負の視線を感じないのだ。

 これは女体化の恩恵であると言っていい。悪い事ばかりじゃないのね。

 今日から一週間は怨嗟とホモの目で見られるこがない。なんとも清々しい気分だ。

 気分がいいのでスキップしながら登校しちゃたりして。

 

 (それにしても、愛バたちの人気は凄いなぁ。みんなガン見してるもんなぁ)

 

 マサキがそんな風に思っている頃。

 愛バたちは操者の考えを正確に読み取っていた。マサキがわかりやすいとも言う。

 

「マサキさん、わかってない。わかってないよ!」

「いつも申し上げているのですが、一向にご理解下さらないのです」

 

 好意的な視線と感情は、なにも愛バ四人のみに向けられているのではない。

 普段のマサキ(男)にも大いに向いているのだ。

 自己評価が低いのか、ただのアホなのか、マサキ自身はそのことに気付いていない。

 

 トレセン学園の教官にして特級レベルの治療師資格を持つ。

 それだけでも好物件なのに、御三家との強いパイプを持っており、育ての親はあの天級騎神だ。

 放っておけと言う方が無理だろう。なおかつ……

 

「単独で超級騎神を圧倒する戦闘能力、操者としても非常に優秀でリンク時のデハブも凄まじい」

「無尽蔵に湧き出る強力無比な覇気、これがマジでヤバい」

「謙虚で人当たりが良くて面白い、ちょっとおバカなところもカワイイよ」

「全身を鍛えているし顔も好みです。匂いはずーっと嗅いでいられます」

 

 小声で話していた愛バたちは顔を見合わせる頷く。

 機嫌よくスキップしているマサキは気付いていない。

 

 (うちのマサキさん!超ハイスペック過ぎじゃーー!!)

 (わかっていたけど。羅列すると凄まじいなwww)

 

 そんな男に恋慕する輩が湧かないはずはない!

 マサキは知らないが、愛バたちはいつも周囲を牽制するのに大忙しである。

 自分たちが愛バだからと胡坐(あぐら)をかいている暇などない、隙あらばマサキをどうこうしたいと思う不届き者は今も湧いているのだから。

 

 そういうわけで、朝の登校時にはマサキ狙いの人たちもわんさかいる。

 もうホント、鬱陶しいぐらいにいる。全部蹴散らしてやりたい!

 

 だが、今日のマサキは女なのだ。

 

 男マサキの不在に、あからさまにキョロキョロしたり、ガッカリしている人々がいる。

 そうかと思えは……

 

 (女マサキさん。メッチャ見られとる!アレはもうガン見を超えて視姦の領域!?)

 (私たち目当ての人たちですら惹きつけています)

 (こうなることはわかっていた。だって、女マサキさんは……)

 

 愛バたちの心は一つになった。心の中で吠える!

 

 ((((超最高に綺麗で美人で可憐で激烈カワイイんだもーん!!))))

 

 愛バの贔屓目フィルターを取り払ったとしても絶対にそう思う。

 

 煌めく白銀の長い髪、白磁のような美しい肌、均整のとれたプロポーションに強い意志を感じさせる瞳。

 少女と大人のいいとこどりをした美貌には目が離せない。

 匂いは普段の5割増しでクラクラムラムラするし、覇気は男だった時のままの強大さを維持している。

 

 ホントにもう、むしゃぶりつきたくなるほどの魅力に溢れている。

 

 美男美女といわれる存在を何度も見てきた御三家出身の愛バたちですら、このレベルの美女には数えるほどしか会ったことがない。

 近しい例を挙げるとすれば……天級騎神たちがそれに該当する。

 

 天級美女になってしまった操者を守らねば!

 愛バたちは密かに決意を固めるのであった。

 

 (一週間、マサキさんの警護を強化したいと思います)

 (((異議なし!!!)))

 

 男であろと女であろうと、我々は愛しいあなたを守ります。

 ええ、何があっても絶対に・・・

 

 〇

 

 学園の校門にたどり着いた。

 

 学園内でも大人気の愛バたちは、ここでも注目の的である。

 クロとシロが『シャーッ!』と威嚇音を出しているのは何故?猫でもいたのだろうか。

 アルとココはいつも以上の笑顔を周囲に振りまいている。

 でも、彼女たちが顔を向けるとみんなコソコソと去って行くのは何故?眩しすぎたか。

 

「たづなさん。おはようございます」

「はい。おはようございます……て!そこのあなた、ちょっと待ちなさい」

「え、何か用でしょうか?」

 

 校門前で門番をしている姉さんに挨拶をして学園内・・・入れなかったよ。

 慌てた様子の姉さんが俺を呼び止めたからだ。はて?

 

「制服を着ているけど、生徒ではないようね。だったら」

「俺は教官ですよ。ちゃんとIDカードも所持しています、ほら」

「新任の教官だったの。どれどれ……これマサキのカードじゃない!なんであなたが持っているの!?」

「何でと言われても、俺がマサキですから」

「私の前でマサキを語るとはいい度胸ね。学園に侵入しようとした不審者め!警察に引き渡してやるわ」

「ああもう、またかよ」

 

 めんどくせー!いちいち俺を証明するのがめんどくせー!

 今日はずっとこんな感じになるのかと思ったら憂鬱だ。

 

 こんなところでバスカーするわけにはいかないので、俺は覇気を込めた指先を姉さんの額に当てる。

 

「何の真似……よ…?」

 

 姉さんが俺の覇気を感じ取り首を傾げる。同時に思念通話を開始。

 

 (姉さん俺です。目の前にいる女はあなたの弟、マサキです)

 

何ですってぇ―――ッッ!!

 

 驚いて白目になり叫ぶ姉さん。ちょっと何ですかぁ、怖いしうるさいですよ。

 ほら、みんなが何事かと注目しているじゃないか。

 黒目を取り戻した姉さんは、持ち前のパワーで俺を担ぎ上げると校門前から逃走した。

 学園の校舎方向へダッシュである。

 

「マサキさん!?」

「ひ、人さらいーーー!だれか警察、いや、軍隊呼んで―――!」

「あの小姑!本性表しおったわ!」

「いくら姉でも拉致するなんて許せません!」

 

 愛バたちが追いすがって来るが、もうすぐ始業の予鈴が鳴る時刻だ。

 

「心配するな。こっちは何とかするから教室に行ってろ」

「しかし!」

「大丈夫だから、遅刻はダメだから~早く行きなさーい」

「くっ、マサキさん、どうかご無事で」

 

 俺の命令に従い、愛バたちは教室へと走って行った。

 学生の本文は学びである。今日も勉学に修練に励んでくれたまえよ。

 

 そして、姉さんは人気のない校舎裏に俺を連れ込んだのだった。

 

「本当にマサキなの?」

「残念ながら」

「直接たしかめるわ」

「ご自由にどうぞ」

 

 覇気で俺がマサキだと認識しているはずだが、急な女体化が信じられないのだろう。

 こちらとしては、確かめたいならご随意にといった感じだ。

 姉さんは俺の周囲を回り、全身を凝視した後に目線を合わせて来た。

 綺麗だけど鋭い目が俺を射抜いている。

 猛獣は目を逸らした相手を弱者とみなし襲うという、ここで目を逸らしたらアカン。

 今度は匂いを嗅ぎ始めた。俺の首筋辺りを入念に嗅いでいく姉さん、なんか照れる。

 そして最後に・・・ベロンッ!??

 

「ひゃぁ!何しとんねん!」

 

 生暖かく湿り気を帯びた感触が頬を伝う。

 何を思ったのか、姉さんはいきなり俺の右頬を舐めたのだ。

 

この味は!………ウソをついていない『味』だわ

 

 この姉、ブチャラティのような真似を…急にやられるとビックリするからやめてほしい。

 

「マサキなのね!ああ、マサキ……こんなになって」

「気持ち悪いかな?急に女になるなんて、変だよね」

「そんなことないわ!弟が妹になったぐらいで、私の親愛は揺るがない」

「ね、姉さーん」

「マサキ!」

 

 校舎裏で抱き合う仲良し姉弟・・・今は姉妹か。

 俺が妹になっても、姉の愛は優しく包み込んでくれるのだ。

 

「妹…弟が妹に……可愛い可愛い妹……フフ、グフフフフ」

「姉さん?」

ブホォェ!!」( ´゚Д゚)・;'.、

「キャーー!姉さーん!」

 

 姉さんが吐血した!?なんで?

 

「ハアハア…心配ないわ、これは鼻血が口を伝って出ただけ…」

「確かに鼻血も出てる。いつも以上に出てる!」

 

 口から血を吐いたかと思ったら鼻血だったらしい、一安心していいのかコレ?

 姉さんは今も鼻からボタボタと異常な量の血を垂れ流し、地面を血だまりに変えている。

 治療師である俺の出番だぜい!そりゃ、ヒーリング~。

 

 数分後

 

「やれやれ、出血多量で死ぬところだった。助かったわマサキ、さすが私の妹ね!」

「注意してよね。姉が鼻血ブーして死んだとか笑えないから」

「あなたが可愛すぎるから悪いのよ」

「俺のせいっスか」

「そうよ~。お姉ちゃんを喜ばせるアンタが悪いの」

 

 姉さんに愛情たっぷりのハグをされる。妹化した俺のことをお気に召してくれたようだ。

 こんなところ誰かに見られたら・・・姉さんがそいつを消すだろう。

 

「サイさんたちにも知らせないとね。きっと驚くわ」

「えー、やめておいたほうが……」

「こんな面白イベント、知らせなかった怒られて泣かれるわよ?」

「確かに」

 

 母さんならブーブー文句言いそうだ。

 信じる信じないは別として、後でさり気なく連絡入れておこう。

 

「さあ、行くわよ。まずは理事長に説明しましょう」

「了解~」

 

 〇

 

「驚愕ッ!女神の試練で女体化とな」

「理解が早くて助かります」

 

 理事長室にて、姉さんと理事長のやよいに事の経緯を説明した。

 理事長は特に疑うでもなく、俺がマサキだと信じてくれた。ええ子やね。

 

「一週間か、教官としての業務に差し障りはないな?」

「はい。問題なくいけると思います」

「ならば承認ッ!女になろうとも、マサキ君は大事な学園の教官である」

「ありがとうございます」

 

 最悪、出勤停止を食らうかと思ったけど、普通に仕事ができるようで一安心だ。

 

「しかし、なんと説明したものか……」

「急に試練と言われても、納得する人のほうが少ない気がするわ」

「それなんですが、いつもの手でいこうと思います」

「ふむ、それしかあるまい。カバーストーリーは()()()()で周知させるように」

「「かしこまり!」」

 

 誠に判断の早い理事長である。

 お礼におぱーいを触らせてやったらちょっと喜んでいた。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「という訳なんで、よろしく頼むわ」

「ホントさぁ、マサキといると飽きないというか、頭がおかしくなるというか」

「はぁ?女体化の先輩、ミオさんともあろうお方が随分な言いぐさですねえ!」

 

 あれから、理事長とたづなさんによる『マサキ女体化の件』が教職員一同に通達された。

 みんなは最初『何言ってんだコイツ?』みたいな顔をしていたが、俺が登場してあの手この手でマサキだと証明すると、ちょっとパニックになってなんやかんやで、今ようやく落ち着いたのだった。

 

 

 俺は教職員室の自席で事務処理をしながら、ミオたち仲の良い同僚と喋っていた。

 その間にも皆俺を気にしてチラチラしているが、愛バの操者として身に着けたスルースキルで凌ぐ。

 

「私はすっごくイイと思うわよ。今のマサキ、とっても可愛いわ」

「さすが、テュッティ先輩はわかってる。ヤンロンもそう思うよな?」

「いや、僕は別に……」

「何だよぉ!褒めるか(けな)すかしてくれよ~俺とお前の仲だろう~」

「ええい、まとわりつくな!や、やめろ////」

「照れてるね」

「照れているわ」

「お、ヤンロンは今の俺にムラムラしちゃう系?」

「するか!!」

 

 ヤンロンったら、俺が女になったから意識しちゃってるのね。少しぐらいなら触ってもいいのよ?

 あ、ごめんなさい調子に乗りました。この制服は借り物なの、燃やしちゃらめぇ!

 

「実際、凄い美女になったから見方が変わってる人も多いんじゃない?」

「そういや、さっき飲みに誘われたなあ。飲めないの知ってる癖に」

「あらあら、狙われちゃってるわ」

「そいつは中身がマサキだと理解しているのか?」

「どういう意味だよ!」

 

 外見がよければ何でもいいのか?そんな男なんてお断りよ!

 

「ねえねえ、ゲンちゃんは今のマサキをどう思う?」

「ん?いつも通りのマサキだと思うぞ」

「どこが!?」

「いつも通りの可愛いマサキだ」

「ゲンさん////」ポッ

「マサキ////」ポッ

「またこれか!男女で絵面は正しいけど、やっぱり気色悪いーーー!」

 

 ミオは俺とゲンさんの仲にすぐ嫉妬するんだから、困った奴だよ。

 

 〇

 

 以前、カノープスの連中に治療術を教える約束をしたのを覚えているだろうか?

 放課後とかに時間を作って、空き教室を借りて細々と教えていたのだが、これが他の生徒たちにバレてしまった。

 『不公平だ』『自分もやりたい』という声が上がったため、学園側は俺に教鞭をとらせることにした。

 サポートや飛び入り参加ではなく、俺が主体となって行う授業枠が作られたのである。

 

 ということで、俺はターボ、イクノ、ネイチャ、マチタンの四人以外にも授業をしなくてはならないのだが、そもそも必須ではない俺の授業を選択するようなもの好きなど少数だと甘く見ていた。

 授業希望者めっちゃ来た!10人ぐらいだと高を括っていたら、教室の全席が埋まって立ち見までいる始末・・・足が震えたわ。

 ネームドだけじゃなくて中高等部問わずいろんな生徒が来てるじゃない。

 あびゃーみんな期待しすぎ~俺が教えられることなんて、そんなにないのよ?

 『授業内容はマサキ君に一任しよう!』とは理事長のありがたいお言葉だ。

 ロリの素晴らしさについて熱弁してもいいのかしら?

 

 それが一月前ぐらいのこと、まだ未熟だけれど多少は授業するのにも慣れてきたかな、と思う。

 

「席について~。授業を始めるよ~」

 

 教室に入って生徒たちの顔を見る。今日も満員御礼だ。

 

 ざわ・・・ざわ・・・  ざわ・・・ざわ・・・

 

「えーっと、前回の続きから、テキストの38ページを」

 

 ざわ・・・ざわ・・・  ざわ・・・ざわ・・・

 

「はーい、ざわざわやめなさい。もう授業はじまってるよ~。質問があるなら挙手してくれ」

「ハイッ!」

「ツインターボさん。何かな?」

「お前、本当にマサキか???」

 

 ターボの質問に皆もウンウンと頷いている。

 

「みんな、その年でボケたか?どう見ても俺だろ、アンドウマサキだろ?」

「「「「どこがだよ!!!!」」」」

「えぇー」(´Д`)

 

 俺が女になったことは教職員に説明した後に、全校放送で伝えたはずだけど聞き逃したのかい。

 今だって俺がマサキ本人だとわかるように、粒子漏れを起こさない程度に覇気を出しているのだ。

 覇気に敏感な君たちが気付かない訳あるまい。

 

「昨日会った時は男でしたよね?それがなんで」

「今日から一週間は女の子の日だから////」(n*´ω`*n)

「意味不明な上にキショイ!?」

「さっきの放送、何かの冗談かと思ってました」

「バーロ―、冗談で女になるかよ。常識的に考えろ」

「なんでこっちが間違ってるみたいに言うかな」

「『マサキ教官が女装に目覚めた』と噂になっていましたが…ここまでのクオリティとは」

「女装ではない、女体化したのだ」

「何が女体化だ、証拠見せろ!どうせ胸パットが詰まってるんだろ?」

ほらよ」ボロン

 

 服を捲り上げブラを外し、堂々と"生おぱーい"を見せつけてやった。

 教室には俺も含めて女しかいないので大丈夫だろ。

 

 シーンと静まり返る生徒だち、そして・・・

 

「「「「う、うわあああああ!おぱーいだぁ――!!」」」( ゚Д゚)(≧▽≦)(゚Д゚;)(/ω\)

 

 教室どころか校舎を震わす程に響き渡る大絶叫、椅子から立ち上がり大興奮する生徒たち。

 うるさいぞー。

 お前ら全員、自前のヤツを毎日見てるくせにリアクション過剰なんだよ。

 

「何なら触って確かめてみるか?」

「「「「いいんですかっ!??」」」」ガタッ

「減るもんじゃないしな。誰か~俺の期間限定おぱーいにタッチしたい奴はおらんかね~」

「では、失礼して」

「あ、イクノ!ズルいぞ」

「乱暴にしないでよね!」

「善処します。ほう、これはなかなか……」

 

 眼鏡を指先でクイッと上げた、イクノディクタスが率先してパイタッチに挑戦した。

 『いい仕事してますね』と某鑑定士のような呟きをしつつ、おぱーいを調べるイクノ。

 やっていることは乳揉みだが、彼女は真剣に鑑定している様子だ。

 

「どうよ?」

「整形手術や変装術の痕跡なし……正真正銘、天然ものおぱーいですね」

「デジタルの隠形を見破った、イクノの鑑定眼が認めた…だと…」

「じゃあ、あれは」

「女体化というのは、冗談ではなく…」

 

 再び静まり返る生徒たち、ワナワナと震え出したかと思ったら・・・

 

「「「「う、うおぉぉぉぉ!ホンモノだぁ―ー!!」」」( ゚Д゚)(≧▽≦)(゚Д゚;)(/ω\)

 

 だからうるさいってば。

 "おっぱい鑑定人イクノさん"の協力もあって、俺の女体化は信じてもらえたようだ。

 生乳晒した甲斐があったぜ。

 

「やっと信じてくれたな……くそ、このブラどうやって着けるんだ?誰か手伝って!」

「はいはーい。じっとしてー」

 

 ブラジャーの装着に慣れない俺は助けを呼んだ。

 世話焼きのネイチャがヘルプに応えてくれる。

 

「これ買ったの?ちょっとサイズが合ってないよ。それに何で制服着てんの?」

「パンツ以外は全部愛バに借りた」

「なるほどね。はい、これで大丈夫」

「ありがと、助かったよ」

「あはははは!マサキのおぱーいバインバインだぞ」

「ターボさんや…人のおぱーいで許可なく遊ぶんじゃありません」

 

 ターボが俺の乳首めがけて16連射を行おうとしたところでストップをかけた。

 ホント自由すぎる奴である。

 

「無事ブラジャーを装備できたところで、授業を始めます」

「授業なんかできる雰囲気じゃないですよー」

「せめて、そうなった理由を聞かせてください!」

「「「「そうだそうだ!!」」」」

 

 なぜ俺が糾弾されねばならんのか?謝罪会見じゃないつーの。

 理由か、理由ね・・・誰もが納得する理由は準備済みだ。

 

「俺が女になってしまったのは……」

 

 神妙な顔で話始めた俺に生徒たちが『ゴクリッ』唾を飲みこむ。

 一体どのような理不尽でバカバカしい理由があったのか、皆が期待している。

 

タキオンに怪しいお薬を盛られたからだよ!!

 

「「「「それなら仕方ない!!」」」」

 

 満場一致で納得してくれた。

 いつもの手とは『タキオンに薬を盛られたことにする』というものだ。

 学園内限定であるが大抵の人からは同情と憐憫(れんびん)を集めることが可能である。

 今回の事態のように、俺や愛バに何か不都合があった場合『タキオンのせい』にすることで乗り切って来た。

 普段の行いが悪い、マッドサイエンティストにも利用価値があるのだよ。

 

「マサキさんは被害者だったのですね。心中お察しします」

「今度は性別を変える人体実験か、いつものことだが酷でぇな」

「あのマッド、教官を女にするとか何考えてんだ」

「狂気の天才アグネスタキオン…ヤバすぎんだろ……」

「だが、よくやったと褒めてやりたい気もする」

「うんうん。マサキ教官とっても美人だもんねー」

 

 案の定、タキオンの株が大暴落したが、一部の人たちからは指示されているようだ。

 さすがに少しだけ悪い気がしたので、後で何か差し入れでもしてやろうと思った。

 しなびたニンジンでいいかな?

 

「来週には薬の効果も切れるはずだから、みんなも気にしないように」

「なんでそんなに落ち着いてるの」

「慌ててもしょうがないからな」

「悟ってるなあ。でも、本当に綺麗です~」

「ウケるwwマジめちゃクソかわいいんだけどwww」

「ヤベェ、惚れた////」

「もうずっとコレでいいよ」

 

 女の俺は結構好評である。

 愛バたちの反応が良かったから少しは自信があったけどな。

 

「はい、今度こそ授業開始だ。みんな集中集中~」

「「「「はーい」」」」

 

 少々遅れたが授業開始。

 しばらくざわついていたが、授業が始まるとすぐにみんな集中してくれた。

 なんだかんだで優秀な生徒たちである。

 授業から得られる知識や技能をモノにしようとする本気度が伝わって来る。

 教える方にも自然と熱が入るぜ。

 

 ヒーリングとは覇気を使った特殊な治療方法である。

 その効力は使用者の適性に大きく左右される。

 重症患者を治療するのであれば、とんでもない才覚が必要である。

 けれども、ちょっとした打ち身や切り傷などの治療は適性のあるなし関係なく習得可能だ。

 ヒーリングについて学ぶことで覇気の操作技能が上達したり、別の派生スキルを習得する者のいる。

 何事も覚えておいて損はない。

 

「ここからは実技だ。ペアになって簡易ヒーリングから始めてくれ」

「「「「はい!」」」」

 

 座学で知識を叩きこんだ後は実技修練だ。

 二人一組になってヒーリングをかけ合うのだ。

 ケガをしていなくても『なんとなく気持ちいい感じがする』で、効力のあるなしを判断している。

 もし戦闘修練中に負傷者が出たのなら、こちらに回してもらいたいぐらいだが、そう都合よくいかない。

 

 実技に取り組む生徒たちを見り回り、時にアドバイスしたり褒めたりする。

 一人一人の個性が垣間見えて楽しい。

 

「できだぞ!」

「お、やるじゃないの。まさか、ターボにこんな才能があったとはな」

「ターボを甘く見ちゃダメってことだぞ」(`・∀・´)エッヘン!!

「そうだな。これからも精進するように」

「私はどうですか?」

「マチタンもイイ感じだ。もう鼻血ぐらいなら自力で治せるな」

「えへへ、そうですか。もっと褒めてください」

 

 いち早く俺に治療術を教わっていた、カノープス四名の習熟度は群を抜いている。

 

 ターボとマチタンの二人は特に優秀だ。

 燃費は度外視だが高速で一気に相手を回復できる、ターボ。

 ゆっくりだが確実に全身を余すところなく治療してしまう、マチタン。

 このまま鍛えれば強力な回復役として、どこに行っても重宝されることだろう。

 

「二人に遅れを取るとは、ネイチャさん面目丸つぶれですよ」

「私もです。ヒーリングとは思いのほか奥が深い」

「焦らずいこう。お前たちにも、それぞれの良さがあるからな」

 

 ネイチャは複数人をまとめて回復可能。

 一人ひとりの回復量はターボたちに劣るが、広く浅く大人数を癒せるアドバンテージは大きい。

 

 観察眼に優れたイクノは覇気の消費量を抑えながら、患部をピンポイントで治療できる。

 前線で戦闘をこなしつつ、負傷者の回復もこなすなんて器用な真似ができそうだ。

 

 それもこれも、現状に甘んじることなく真面目に研鑽を積めばの話だけどな。

 

「うわー、期待という名のプレッシャーがキツイ。でも、やるしかないか」(;´д`)トホホ

「私たちが大成することを信じてくれるのですね。ありがとうございます」

 

 カノープスの四人はやる気十分だ。

 まさか四人全員にヒーラー適性があるとは思わなかった。

 偶然じゃないな。リューネの奴は最初からわかっていて俺に頼んできたのだ。

 ホント、やり手の幼馴染である。

 

「教官!こっちもお願いします」

「あー上手くいかんし。マサキ、うちらもよろ~」

「はーいはいはい。順番だからお待ちなさい」

 

 適性の無い子でも、自己回復力を高める目的で俺の授業を受けてくれる生徒もいる。

 俺の教えが生徒の未来を切り開く一助となるなら、こんなに嬉しいことは無い。

 

 今日もイイ感じに授業ができたと思う。

 

 〇

 

 午後、トレセン学園カフェテリア

 

 愛バたちはクエストがあるため、学園外に行ってしまった。

 学園に残された俺は医務室で通常業務をこなした後、一服しようと食堂に訪れていた。

 ここはカフェメニューも充実していて居心地がいい。

 生徒も教官も入り浸っている者が結構いる。

 

 今の俺は一人ではない。

 

「ボンさん、何飲む?」

「"ニンジンジュース一番搾り"でお願いします」

「ライスはどうする?」

「えっと////じゃあ、ブルボンさんと同じものを」

「オッケー。俺はロイヤルビタージュースにしよう」

 

 御覧の通り、ボンさんとライスの二人が俺のお供をしてくれている。

 クエストに行く前、愛バがどうしてもと頼んだらしい。

 学園内に危険は無いはずだけど、一体何を警戒しているのだろう?

 

「あの、マサキ教官ですか?」

「そうだよ。マサキだよ~」

「本当に女になって……あ、握手してください!」

「はいはーい」

 

 レジカウンターの店員が握手を求めて来たので、快く応じる。

 今日はどこに行ってもこんな感じなので慣れてしまった。

 医務室の来訪者がしきに身体測定をススメてきたりもした……俺のだけど。

 

 注文した商品を受け取り、テーブル席を確保してくれている二人の下へ。

 何やらお供ではないネームドの姿も見えるが、たまたま休憩が被ったのだと思うことにする。

 ボンさんとライスの前にドリンクを置く。

 お供をしてくれる二人へのお礼を兼ねているので、当然俺の奢りだ。

 

「ありがとうございます」

「ありがとう////」

「気にせず飲んでくれ」

 

 『ゴルシちゃんの分忘れてない?』という雑音が聞こえた気がしたので、お冷をそっと隣のテーブルに置いた。『水かよ!うめぇー!』とバカが一人ではしゃいでいた。

 

 俺が飲んでいるロイヤルビタージュース、味が酷いのでウケは悪いと思いきや、疲労回復成分たっぷりなので意外にも人気なドリンクメニューである。

 うーん。クスハ汁に勝るとも劣らないエグみと苦味……愛バたちも苦手だと言っていた。

 ボンさんとライスはストローを使ってニンジンジュースをちゅーちゅーしている。カワイイ。

 

「マサキさん。お綺麗になられましたね」

「ありがとよ。お世辞でも嬉しいぜ」

「本心のなのですが」

 

 ボンさんったら、嬉しい事を言ってくれるじゃないの。

 

「マスターに話したら、腹を抱えて笑っていましたよ。今日中にビデオ通話をご希望のようですが?」

「了解了解。シュウにも今の俺を見てもらおう」

「よろしくお願いします」

 

 俺の姿を見る前に笑うとは失礼な奴だ。美女化した俺を前に恐れおののくがいいわ!

 母さんたちにも報告しなきゃだし、今夜にでもまとめてリモート会議しちゃいますか。

 

「……////」ポッ

「体温の上昇を確認。ライスさん、熱でもあるのですか?」

「どうしたライス?俺、やっぱり何か変?」

「変じゃないよ!マサキさんはとっても……様みたいで…」

 

 ライスが俺の顔を見てモジモジしている。

 確かに何か熱っぽいというか、ずっと照れているというか?

 ボンさんと二人で『?』マークを浮かべていると、意を決したライスが話しかけてきた。

 

「マサキさん。お、お願いがあるんだけど…いいかな?」

「いいぞ。おぱーいタッチぐらいなら今すぐにでも…」

「そうじゃなくて!」

 

 シュウにはお世話になっているし、その愛バの頼みならできうる限り叶えてやりたい。

 隣席から『金貸してくれよ』と聞こえた気がするが、俺が手を下すまでもなく、バカは他のネームドに鳩尾をどつかれていた。

 

「マサキさんのこと…お、お、お姉さまって呼んでいい?

「なん・・・だと・・・」

 

 お姉さま・・・俺が、お姉さまだと・・・!?

 ボンさんが『何言ってんだこいつ』という顔をしている。

 

「あ、ごめんなさい!急に変なことを言って、今の忘れてくれていいから…」

 

 自分の発言で場が固まったのを感じたライスは、慌てて今のをなかったことにしようとする。

 その隙は逃さん!俺は素早くライスの隣に移動した。

 

「フフッ、ライス、耳が曲がっていてよ」

「はぅ!……マサキお姉さま////」

 

 ライスの瞳を見つめながら耳を優しく撫でた。俺の祥子(さちこ)様ムーブ完璧だ!

 望んだ通りの展開にライスはウットリしている。

 俺とライスのやり取りを見ていたボンさんは、もの凄いジト目になっている。

 やだ『ボンさまが見てる』じゃない。

 

「おいでなさい」

「お姉さま~////」

「・・・・・・」(T_T)

 

 俺の胸に飛び込んでくるライスを受け止めて二人で『キャッハウフフ』しちゃう。

 俺は決して妹萌えではないのだが、これはこれで楽しい。

 ゆるゆりな空気が食堂を満たしていく。

 

「ズルいですよライスさん」

「ちょ!ブルボンさん。ライスとお姉さまの邪魔をしないでよ!」

「マサキさんは私の準マスターでもあります。独占禁止法違反です」

「ライスからスールの座を奪おうって言うんだね。やらせない絶対に!!」

「"あざといメカクレ米"を発見。迅速に処理します」

「はい、そこまで。二人とも仲良くしないとシュウが悲しむぞ」ギュ~

「「お、お姉さまぁ~」」

 

 ボンさんとライスを二人まとめて抱きしめてやると、すぐに大人しくなった。

 和解した二人は『お姉さまイイ!』と悦に浸っていた。

 二人とお喋りしながら過ごしていると、他のネームド連中も絡んで来る。

 

「ごめんマサキ、ちょーっと動かないで」

「デジタルいたのか」

 

 隣のテーブルから、スケッチブックにデッサンを描き込んでいるデジタルがいた。

 こいつ、隠形術で気配を消して近づくからビックリするんだよな。

 

「うん、いいモデルだよ。次回作のキャラデザに使わせてもらうね」

「好きにしろ‥‥‥お前、なんで俺にはいつもの『デュフフフフ』ってならないの?」

 

 可愛い子を見ると涎を垂らしてハアハアするのがデジタルではなかったのか?

 

「はぁ~」( ̄д ̄)

 

 『わかってねーなコイツ』みたいなため息つかれた。ムカつく。

 

「あのねぇ。私がハアハアするのはウマ娘ちゃんであって人間ではないのですよ」

「ほーん」

「覚えておくがいい!マサキがいくら美人で可愛くなっても、このデジタルが欲情することはないのだぁ!!」

「大口を叩いたな。もし俺に欲情したらどうする気だ?」

「その時は、いつぞやの奴隷契約を復活させてもいい。ウマ娘ちゃんたちに捧げる我が愛!見くびらないでもらおうか」

「その言葉、後悔させてやる。ゴルシ!」

「へいお待ち!ご注文の品だ」

 

 ゴルシの名を呼ぶと同時に奴からある物をパスされる。

 アホの気配を察知して売店まで走ってくれたことに感謝するぜ。

 

「マサキの髪色に合うヤツは珍しいからな、探すのに苦労した」

「サンキュ。後でブラッシングしてやるからな」

「それより、早速着けてみろよ」

「待て、何をして……そ、それは!?『ウマ娘なりきりセット』だとぉ!??」

 

 デジタルの言った通り。これはウマ娘なりきりセットという玩具だ。

 装着型のウマ耳と尻尾を人間が着けることで、ウマ娘になれるというコスプレアイテムである。

 学園内の売店や近隣のお店でも販売されていて、お土産にハロウィンに大活躍である。

 開発にはシラカワ重工が関わっており、ハイクラスのものだと脳波を感知して耳や尻尾が連動するヤツまであるのだとか。

 ゴルシが買って来てくれたものは、スイッチ式で耳と尻尾が動くリーズナブルなヤツだ。

 カチューシャの耳とスカートに引っ掛ける尻尾を装着して・・・・・・これでいいかな。

 

「どう?」

「おお!似合うじゃねえか、みんな見ろよ"ウマ娘マサキだぞ"www」

「「「「キャーー!カワイイーーー!」」」」(≧▽≦)(≧▽≦)(≧▽≦)(≧▽≦) 

「俺、大人気だな」

「・・・」

「デジタルはどう思うよ?」

「・・・」

「感想ぐらい言ったらどうだ、ん?」

 

 なりきりセットにより、白銀の毛並みを持つウマ娘となった俺。

 しかし、肝心のデジタルは無反応だ。

 あれ?これではダメだったかしら。

 

「デジタル、おい!」

「・・・」

「デジ・・・タル・・・」

「・・・」パタリ

「こいつ、心停止してやがる!?」

「・・・」白目

「「「「デジタル―――ッ!!!」」」

 

 デジタルは既に昇天していた。

 なりきりセットを装着したマサキ、その照れたような顔とウマ耳に尻尾・・・

 偽物とはいえ、息が止まる程の美しさに多大なショックを受けるデジタル。

 実際に止まったのは心臓だったわけだが。

 

「ヒーリングナッコゥ!!」

「ごぱぁっ!??」

 

 慌てず騒がず。

 心臓マッサージとヒーリングを兼ねた正拳突きをデジタルに叩き込む。

 

「げぼっ!…がほっ!わ、私は、ここは一体?」

「おかえり、今回はどこまで行った?」

「えーと、多分、川の中ほどまで」

 

 こいつ三途の川を毎回泳いで渡っているのか?

 向こう岸にたどり着いたらターンして帰って来そう。

 復活したデジタルはキラーンと目を輝かせ、俺の前にひざまづく。

 

「デュフ、デュフフフフフ」ハアハア

「ハアハアしてんじゃん」

「完敗であります。この卑しいデジタルは、これよりあなた様の忠実な(しもべ)となりましょう!」

「ならば命ずる。愛バが帰還するまで貴様も俺の供をいたせ」

「お安い御用です。デッサンは続けても?」

「好きにしろ。完成したら見せてね」

 

 ボンさんにライス、ゴルシやデジタル、他にも暇を持て余しているネームドたちがいてくれる。

 いい生徒であり、いい友人たちだ。俺は本当に恵まれていると心底思う。

 

「なぜだ…なぜ…元男にすら負ける」

「この声は!?」

「ぬりかべ!」

「スズカです」

 

 幽鬼のようなオーラをまとったスズカが恨みがましい目で俺を見ていた。 

 正確には俺のおぱーいを仇の如く睨みつけている。怖いよぉ。

 

「マサキサン。とてもビューティフルになりまシタね」

「女難の相が出ていましたが、こう来ましたか」

 

 タイキとフクキタルも一緒だった。

 この三人は学園に来る前からの旧知ということもあって仲がよろしい。

 

「タキオンさん。豊胸薬とか作れないかしら?」

「やめとけ。どうせ、おぱーいが七色に光って終わるだけだ」

「クソっ!どうせ私は性転換ロリコンにすら胸で負けるウマ娘ですよ!絶望の壁ですよ!」

「お、ぬりかべが絶望の壁にクラスチェンジしましたよ」

「空気抵抗が無くて羨ましいデス」

「こちとら空気抵抗がほしいんじゃボケぇ!」

「スズカは疲れているんだよ。ほら、こっちおいで~」

「やめろぉ!憎きおぱーいで私のメンタルが癒されると…でも……」

「気に病むことは無い、世の中には絶壁が好きな奴だって沢山いるさ」

「そんなクライマー……いるわけないじゃない」

「いるさ、スピードの向こう側にな」

「スピードの……向こう側……」( ˘ω˘)スヤァ

 

 暴走しかけた絶壁を宥め眠りについてもらった。

 俺のおぱーいにはリラックス効果があるらしいので、イチコロである。

 

「スピードの向こう側ってドコデス?」

「知らん!」キッパリ

「知らないんですかww」

 

 スズカが好きそうな言葉を適当に言ってみただけだ。

 『アクセルシンクロォォッ!!』てな具合にきっと何処かにあるよ。

 

 女になっても、俺の学園生活は変わらず賑やかでした。

 

 〇

 

「マサキさんが心配だ。早く戻ろう」

 

 無事クエストを終えた愛バたちは学園への帰還を急いでいた。

 今この瞬間にも女になったマサキさんが、いろんな連中にちょっかいをかけられているだろう。

 ウマ娘用のレーンを自動車を超えるスピードでひた走る。

 

「アル姉さん、大丈夫ですか?」

「何がです?私はこの通りピンピンしていますけど」

「いえ、マサキさんが急に女体化したことでショックを受けているのではと思って」

「ご心配には及びません。女性になってもマサキさんは素敵ですもの」

「さすがのアルでも、一週間ぐらい我慢できるよね」

「はい。ものすごーく辛いですけど我慢します。それに・・・」

「「「それに???」」」

「メジロの秘奥義には"女同士で楽しむ方法"も網羅済みですもの。フフフフ」

「「「うわぁ」」」(´Д`)(´Д`)(´Д`)

「待っていてくださいね、マサキさん。私が女の悦びを教えて差し上げます♪」(´▽`)

「いや~きついっスわ」

「アル姉、涎垂れてる…‥」

「脳内がピンク色にただれているんだよなあ」

 

 このドスケベからもマサキを守ろうと、クロ、シロ、ココの三人は思うのであった。

 夜にアルとマサキを二人っきりにしないよう、一週間は二人体制でマサキを担当すると決まったのである。

 

「つまり!三人で楽しみたいのですね!?まったく///みんな性欲旺盛なんですから////」

「「「お前が言うな!!」」」(゚Д゚;)( ̄д ̄)(゚Д゚)ノ

 

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