俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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にくたいげんご

「「あなたの首筋を本気で噛ませてくれませんか?」」

 

 二人に言われた事がすぐに理解できなかった。

 

「噛む?かむって・・・口で歯で?」

「そうだよ」

「こう・・・ガブっといきます!」

「痛いじゃん・・・」

「優しくするから大丈夫、すぐ終わるよ・・・たぶん」

「手加減しますから心配しないでください」

「血が滴る、傷跡が残る、本気でって言ったよね?」

「「・・・・」」

 

 無言になるな!こいつら本当に油断ならねぇ。

 ウマ娘じゃなくて吸血鬼だったの?

 

「あの・・・どうして距離をとるのかな?」

「身の危険を感じたからな」

「私たちあんなに一緒だったじゃないですか、気持ち通じ合ってましたよね?」

「そうだな、あの頃の気持ちのままでお別れできたら・・・いい思い出だったろうな・・・」

「「・・・・」」

 

 二人から距離をとる。

 物理的にも精神的にも二人から離れていく俺。

 にじり寄ってくるクロシロ・・・。

 

「おい!それ以上近づくな!俺は今から家に帰って、一人になった寂しさを感じながら黄昏るんだ!」

「記念、そうだ私たちと過ごした記念に一生消えない傷ができたと思えば・・・どうかな?」

「そんな記念嫌すぎるわ!それと今、一生消えないと言ったかコラ!」

「減るもんじゃないし、いいじゃないですか」

「減るわ!お前らに対する好感度なんか今まさにゴリゴリ減ってるわ!」

「好感度が0なら気にする事もないか・・・よし!力づくで行こう」

「合意の上が良かったのですが仕方ないですね、覚悟はいいですか?」

「本性表しやがったなこの駄バどもがあぁああああ!!!」

 

 強行手段に出ようとするクロシロ。

 なんでこうなるかな!二人の動きに注意をはらいつつ会話をする。

 

「朝のアレも噛みつく寸前だったのかよ」

「寝込みを襲う罪悪感で流石に躊躇していた所、起きてしまったものでして」

「あの時、一思いにやっておけばよかったね」

 

 先に動いたのはやはりクロ、こちらに突っ込んでくる。

 クロの動きの逆、または空いた隙をカバーするようにシロは立ち回る。

 子供とは言えウマ娘、それもコンビネーションに慣れた二人・・・流石にキツイ。

 しかも、昨日尻尾を掴まれた事を警戒してか最初から油断はなし。

 

 下がっても仕方がないのでこっちも攻める、攻撃は最大の防御!

 クロに合わせて突っ込むと見せかけてのシロ狙い、尻尾を掴もうとする仕草にフェイントも入れてっと。

 何度か攻防が続くがやはり手強い、二人がかなり手加減しているのがわかる・・・こっちは余裕がないっていうのに・・・これが根本的な種族差か。

 時間が経てば俺は負けるだろう。せめて、それまでにいろいろ聞かせてもらおうか!

 それに、こんな風に誰かと手合わせするのは久しぶり・・・あ、昨日やり合ったばかりですね。

 シュウはあまり組手とかしてくれないからなー、母さんとネオさんに会いたくなった・・・突然のホームシック!

 あれ?何だか楽しくなってきたぞ。今、脳内麻薬ドバドバ出てるわー。

 

「あは!やっぱりいい動きするね。それに楽しくなってきてるでしょ?わかるよ、だって私も今すっごく楽しいもん。あはははははは!さあ、もっと遊んでよ!」

「あーあ、うちのバーサーカーを刺激しちゃいましたよ。ねえ、ケガしないうちにやめません?それとさっきから、私の顔面ばっかり狙うのもやめません?」

「そっちは遊びでもこっちは必死だ!余裕なんかない、耳、尻尾、顔面、その他全てダメージが入りそうなら容赦なく狙わせてもらう」

「うんうん。カワイイ女の子の外見ってだけで油断したり、いらない気遣いする人多いんだよねー。それってさ身の程知らずすぎて本当に冷めちゃうんだ・・・。でも、マサキさんは全力で答えてくれる・・・最高に嬉しいよ!」

「なんかクロのテンションが危なくなってきてるぞ」

「血に飢えた獣の前に餌ぶら下げて飛び出すからですよ・・・て、あぶなっ!クロちゃん今、私ごとマサキさんを攻撃しましたね!」

 

 クロの動きにやっと慣れはじめたと思ったら、今度はシロが前に出るクロがカバーに回る。

 こいつら嫌なタイミングでスイッチしやがって・・・。

 シロはの攻撃はクロほどの鋭さはない、単純なスピードやパワーはクロが上。

 だけどこいつの動き本当に嫌らしい!今ここに攻撃されたら嫌だ、こう動かれてはマズいと思った所をピンポイントで狙ってくる。

 ブラフやフェイント、駆け引きもうまい、威力に劣る分からめ手が得意なタイプか?

 素手で助かった。こいつが何かしらの武器や罠を使いだしたら、手が付けられなくなると予想。

 何度か打ち合った後、再び距離をとる。フゥー、ちょっと休憩させてお願いだから!

 

「拳で語るのもいいが、もう隠していること全部話せ!ここまで来たら秘密がどうこう言うレベルじゃねーぞ!」

「暴力沙汰になりましたからね(今更)、いいですよ遊んでくれたお礼に情報開示しましょう」

「どこから聞きたい?」

「最初から全部」

 

 いいかげん秘密主義に付き合うのもうんざりだ。

 

「私たちが家を出た理由は探し物、でも探し物は一つじゃなかったんだよ」

「一つはなくした家宝、もう一つは私たちの"操者"になってくれる人間です」

「操者(そうしゃ)?」

「パートナー、盟友、相棒、伴侶・・・今風に言うならトレーナーもそうだね」

「とある事情で早く操者を決めろとうるさいんですよね、この年でもうお見合いみたいな事させられましたよ」

「どの人も何ていうかビビッと来ないんだよねー、あーこの人じゃ私を抑えるのは無理だーてわかっちゃう」

「まさに人生の今後を左右する運命の相手ですからね~、ただ待ってるだけなのも癪ですし」

「ねー。自分で「この人だ!」て見つけてこそだよねー」

「おそらくですが、簡単に家出できた事と一日自由に過ごせたのは、父たちがあえてそのようにしてくれたのでしょうね」

「でもたった一日で見つかるわけない・・・もし出会えたならそれこそ運命」

「それが俺だってか?・・・んなアホな」

 

 操者として二人に見初められたらしい。

 

「なんで俺?ただお前たちに親切にしたってだけじゃないだろ」

「優しいだけの男なら吐いて捨てるほどいますよ、もちろん打算的な観点からもあなたを評価しています」

「親切にしてくれたのは素直に嬉しかったけどね」

「マサキさん、あなた"覇気"の質も量も凄まじいです。しかも、その覇気を周囲にまき散らしています。もうダダ漏れです、大洪水ですよ」

「こんな異常な量と濃度の覇気を出してる人間、はじめて見たよホントびっくり」

「・・・・」

 

 "覇気"(はき)生命体が持つ生体エネルギー。

 ウマ娘は生まれつき覇気の量とコントロールに優れており、人間以上の身体能力もその恩恵。

 人間の中には覇気に恵まれた者もいて、ウマ娘と同等かそれ以上の力を発揮する可能性があるらしい。

 全部、母さんやシュウからの受け売り。

 俺は自分の覇気を感じた事はないし、凄いとか言われてもピンと来ない。

 

「ご自身の覇気を認識していない・・・いや、できないようにされている・・・」

「本当に何も気づいてない、何かおかしな事はなかった?例えば・・・ウマ娘からドン引きされたりとか」

「トレーナー養成校の適正試験で何回も落ちたのは・・・・」

「その状態で受験しに行ったんですか?私が試験監督なら速攻でお帰りいただきますよ!」

「あちゃ~、やっちゃたね。試験会場ざわついてたでしょ?」

 

 受験失敗の理由ここで判明した。

 

「トレーナー適性検査では覇気もチェックされてますよ。トレーナーになる人の覇気は一般人より上です」

「強い覇気を持つ人はとっても魅力的なんだよ、特にウマ娘は覇気の強さを重視して人を見てるね」

 

 どう見てもキモオタな奴がウマ娘にはモテたという話・・・作り話じゃなかったのかよ。

 ウマ娘にとって覇気の強い人間は是非とも欲しい人材なのだが、強すぎる人間はお断りらしい。

 何故か?それは争いの火種になるから、強力すぎる覇気にあてられたウマ娘の暴走で多くの大事件が起こったらしい。

 一人の人間を取り合って殺し合いからの、一族郎党を巻き込んだ戦争にまで発展したケースもあるとか。

 

「普通マサキさんみたいな人は保護されて監視下に置かれるはずだけど・・・」

「きっと、ご家族にウマ娘の裏事情に詳しい方がいるのでしょうね。初対面で私たちの尻尾を掴めた、手加減しているとはいえ二対一でやり合ってまだ立っている・・・普通じゃないです」

「訓練受けてるよね?対ウマ娘を想定したやつ。それとも、ウマ娘が先生だったのかな」

 

 母さんとネオさん、ついでにシュウ・・・三人とも、どういうことなの。

 こういう事態を予測していたのか?もう!後で問いただしてやるんだから!待ってなさいよ!!!ホントにもう!!!

 

「それでもお前たちは俺を操者に選んだ、なんでさっ!」

「これでも私たち結構というか、かなり強力で優秀なウマ娘だ思うんだよね」

「ソシャゲで言う所の限定SSRですよ、良かったですねマサキさん!」

「操者候補としてパパやママが選んだ人も、とっても優秀で覇気も強力だったけど・・・」

「ダメです!全然ダメ!足りないんですよ、あれっぽちの覇気じゃ満足できません!容姿、性格、家柄、財力、経歴等がどんなに優秀でも無理!無理なんです」

「覇気が合わない人と契約しても、不幸になるだけだし」

「人間とウマ娘が契約をかわし"操者と愛バ”の関係になると、お互いの覇気が両者を循環します」

「相性が良ければ二人ともパワーアップ!操者も愛バもメチャクチャ強くなるし、その他にも特典がいっぱい」

「逆に相性が悪ければ二人とも弱体化、契約しない方がマシ・・・一方の覇気に引っ張られ、肉体と精神に深刻なダメージが残る場合もあります」

 

 深刻なダメージ・・・おい、待てやコラ!

 聞いてよ、せめて「同意しますか?」て聞いてよ!同意してたまるか。

 

「相性のチェックは完了済み、安心だね」

「仮契約・・・名前つけてくれましたよね?その時点でちょっとだけ覇気の循環が始まるんです、それで不快だったり嫌な感じがしたら・・・ご縁がなかったという事です」

「先代がカナブンでも名前を受け入れたのは・・・俺にはその、ご縁があったと?」

「気に入らない人間のシャツを着たり、ブラッシングさせたりはしないよ。後はわかるね」

 

 覇気やら操者やら何だかめんどくさくなってきた。

 要約、俺は覇気が強い→クロシロは強い覇気の人間を操者にしたい→選んだのは俺だった→噛ませろ!

 

「説明も済んだ事ですし、さあ本契約と参りましょうか」

「ガブっといちゃおー」

「お前たちの事情は分かった。で、操者になって俺になんかメリットあるの?」

「?・・・えっと、何度も言ってるのですが、伝わってないのでしょうか?」

「全てを捧げるって言ったよ・・・鼻毛出してたじゃん」

「ズッ友でいてくれるって事?」

「それ以上」

「また一緒に遊んだり、お泊りしたり?」

「当然」

「俺がトレーナーになったら?」

「トレーニングでも何でもやります。あなたに優勝カップの山をプレゼントします」

「風呂・・・」

「次からは一緒に入ろうね」

「寝る時は・・・」

「川の字の真ん中にしてあげます。腕枕の準備はいいですか」

「・・・・・・」

 

 え、ちょっと、まて、まてまてまて・・・・えー、いや嬉しいよ!嬉しいけどね!ひゃっほーい!!

 冷静になれ・・・いい所だけで判断するな・・・何かしらのデメリットが必ずあるはず。

 座ろう、一旦座って落ち着いてからよく考えて・・・。

 

「それだけでいいの?もっとしたい事あるんじゃない」

「肝心な所でヘタレますね。マサキさんの最重要目標・・・例のやつですよ」

「それって"うま"で始まって"ぴょい"で終わるやつですか」

「全部言っちゃってますけど、それで合ってます」

「期待には応えるよ」

 

 ・・・ガタッ。

 座ってられるかぁぁあああああああああああああああああああ!!!!!!

 いいの?ホントにいいの?マジで?本気にするよ。

 これで"嘘ぴょーい"とか抜かしたら、刺し違えてでもお前らをコロス!

 

「疑ってますねぇ~。"お前を殺す”あなたが言うと生存フラグでは?声的に」

「あと一押しかな?かなり揺れてるし」

 

 ああああ・・・俺が・・・クロとシロと・・・まさか・・・そんな・・・。

 

「お願いします。きっと後悔はさせません」

「私たちが愛バになるよ。ずっと一緒だよ」

「・・・・・」

「操者になってくれたら・・・私たちのこと・・・」

 

 いつの間にか接近していたクロシロ。

 二人は蠱惑的に微笑んで、トドメの一言を告げた

 

「「好きにしてもいいんですよ//////」」

 

 殺されたのは俺でした。

 

「クロシロ」

「「はい!」」

「優しくしてね////」

 

 上着を脱いで二人に首筋を晒す・・・しっかり噛めよ!

 

 

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