俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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小さき者

 俺が女になって三日が経過した。

 周囲の理解もあってか特に何事もなく日常生活を送ることができている。

 

 唯一変わったことは、俺の部屋に寝泊りする愛バが複数人体制になったことだ。

 ルクスに対する備えだと言われてしまえば断るべくもない。

 彼女たちはいつだって俺を思って行動してくれる。

 俺はそれを信じてただ一言『よしなに』と指示するのみ。ディアナ様好き。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 今日は仕事帰りに寄り道しちゃいまーす。

 

 愛バたちは渋っていたが、上手く説得して何とか一人の時間を確保しての寄り道である。

 向かった先は"喫茶ヴァルシオーネ"またしても、待ち合わせ場所に利用させてもらったのだ。

 リューネは不在らしく、顔見知りの店員さんに『待ち合わせ』だと告げて席に案内してもらう。

 目的の人物はすぐに見つかった。

 

 ウェーブのかかった長髪の男がボックス席に座っている。イケメンオーラが半端ない。 

 女性定員や店内のお客さんがヒソヒソしがなら男の様子を伺っているのも当然だ。

 そりゃあ気になるよねー。何も知らなかったら俺だって『ウホッ』していたはずだもん。

 カジュアルなブランドスーツで身を包み、コーヒーを飲んでいる姿は、ファッション雑誌の一コマを切り抜いてきたかのようだった。

 

 その男の名は"フェイルロード・グラン・ビルセイア"

 

 先日、マッスルアリーナの企業展示会で偶然に再会した、高校生時代の生徒会長である。

 現在は治安局の次長というお偉い役職に就いているらしく、相も変らぬエリートぶりに感心しきりだ。

 そんな彼が俺と直に会って話がしたいと、オトナシさんを経由してコンタクトを取ってきた。

 快諾した俺は待ち合わせ場所にヴァルシオーネを指定、そして今日、会う約束をしていたのだった。

 

「お待たせ」

「!?・・・???」

 

 俺が声をかけるとフェイルは一瞬ビックリしような表情を浮かべた後、眉間に皺を寄せる。

 わかるぞ『お前誰やねん?』と言いたい気持ちはよーくわかる。

 自分がマサキだと説明するより先に、フェイルのほうが口を開いた。

 

「どこかでお会いしただろうか?失礼だが、私には心当たりがない」

「この間、偶然会ったばかりだな」

 

 思案顔をするフェイル。そして、何かを察したようだ。

 俺を見る視線が若干冷たくなったように感じる。

 

「今は大事な友人と待ち合わせをしている。すまないが、君とお茶をする時間はないよ」

「逆ナンじゃねーよ」

 

 フェイルのこの反応、普段から女性のお誘いを断っているとみた。

 モテモテイケメンめ!嫉妬マサキが非モテに代わって成敗してやろうか?と、数年前の俺なら思っていたことだろう。

 しかし、今の俺には愛バたちがいるんだぁ。(∀`*ゞ)エヘヘ

 

「君のように可憐な人からのお誘い、本来ならば二つ返事にて対応して然るべき。だが、今はマサキを優先せねば……いや待て、ちょっとぐらいならマサキも許してくれるか?」 

 

 ちょっと揺れてるじゃねーかww

 

「俺がそのマサキだよ。フェイル生徒会長殿」

「何を言って……嘘だろ!?」

「ホントよホント~」

 

 ここ最近で見飽きたリアクションありがとうございます!

 生徒会長と発言したことで、俺がマサキだと理解してくれたようだ。

 俺は優雅に微笑んでフェイルの対面席に座る。

 店員さんを呼んで、本日のおすすめブレンドを注文した。

 

「一体何があった?女装に目覚めるほどショックな出来事でもあったのかい?」

「違う違う、これは女装じゃないよ」

「では……手術したのか!?もうアレは取ってしまったというのか!」

「はい、そういう反応も想定済みでーす」

 

 ドン引きしているフェイルに女になった経緯を説明した。

 もちろんカバーストーリーの方をである。

 

「生徒の作った薬で女に……トレセンは聞きしに勝る魔境のようだな」

「一部癖の強い奴らはいるけど、それなりに楽しくやってるよ」

「だろうな。君の顔を見ていれば、充実した毎日を送っていることがよくわかるよ」

 

 あらら、顔に出ていたか。

 フェイルの言う通りだ。愛バに姉さん他にもたくさんの友人たちに恵まれて、教官として仕事ができる日々はとても充実しているのだ。

 

「そっちはどう?相変わらずエリート街道まっしぐらみたいだけど」

「『なすべきことをなす』その信念で行動していたら自然と出世していた、というのはどうだろう?」

「どうと言われましても」

 

 政府から治安局次長というポストに任命されるという偉業の達成。

 それすらもフェイルのとってはごく当たり前のことだと言う。

  

「まあ、実家のコネはフル活用させてもらったがね」

 

 冗談とも本気とも思える言動をして、いたずらっぽく笑うフェイル。

 彼はいわゆる財閥の出身でいろんな所に顔が利くのだ。

 だが俺は、フェイルが実家頼りの男だとは思わない。そんなコネを使わなくても自力で上の役職をつかみ取ることができる男だ。

 その片鱗は学生時代に散々見せつけてもらった。

 自身の高スペックを披露しつつ、それを嫌味に感じさせない男である。

 う~ん、さ・わ・や・か!

 

「治安局ってのは国防の要だろ?なんかすげぇよな」

「重責に胃をキリキリさせながら毎日頑張っているよ。週一の猫カフェで癒されていなければ、とっくの昔に倒れている」

「ストレス溜まっているみたいだな」

「頭の固い上役と高級クラブに行く暇があるなら、猫まみれの猫三昧でいたい」

「筋金入りの猫好きかよ」

「この間行った店ではテンションが上がってしまってね。全身に"ちゅ~る"を塗りたくったら出禁になってしまったよ」

「頭のおかしい猫好きだよww」

 

 みんなの憧れだった生徒会長は変態チックな愛猫家でした。

 『次はマタタビと煮干し粉末・・・』とボソボソ呟いていたので反省はしていないらしい。

 お仕事のストレスは出禁にならない程度に解消してほしいものだ。

 

「やはり、似ているな…」

「ん?ああ、この髪の毛ね。ちょっとだけ母さんに似ているよな」

「まるで親子の絆が顕在化したようだ。血の繋がりなど、君と先生にとっては些事と言う事か」

「その様子だと、フェイルはまだ母さんのファンなのか?」

「私にとってサイバスターは永遠の憧れだ。天級グッズ欲しさに、ふるさと納税もラ・ギアスに納めている!天級ファンクラブにそれなりの額を寄付したのも……」

 

 あー始まってしまった。こうなると長いんだよな。

 フェイルってば学生の時から母さんの大大大ファンみたいだったけど、その熱は未だ冷めていないらしい。

 俺はそういう人物をたくさん見て来たから、今更驚かないけど・・・

 知り合いの爽やかイケメンが、推しのアイドルを早口で語るオタクのように豹変する様は、結構衝撃的で引く。

 

 ふるさと納税の返礼品、天級グッズなの!?村長手広くやりすぎですよ。

 母さんたちのデフォルメぬいぐるみとかだろうか・・・やべ、ちょっと欲しい。

 おいおいwwファンクラブの運営をしているのはシュウだぞwww

 集めた金はシュウの天才的な資産運用によって何倍にもなり、これがシラカワ重工を立ち上げる際の元銭になったのを知っているのだろうか?

 最近は、ネオさんがウマチューブの広告収入で荒稼ぎしているとも聞いている。

 アカウント名"闇属性ママさん"のプラモデル作成実況、すげー人気なんだよなぁ。

 さすが、俺の尊敬するシラカワ親子・・・激ヤバだぜ。

 

 フェイルは母さんのことを『先生』と呼ぶ。

 何でも、母さんが日本各地を放浪していた時期、数ヶ月間住み込みで家庭教師の真似事をしたことがあるのだとか。

 その時の教え子がフェイルだったと母さんの口から聞いた。

 俺の知らない母さんを知っているフェイルにちょっとジェラシー。

 

 母さんの偉大さを長々と語っていたフェイルは、ようやく落ち着きを取り戻したようだ。

 

「おほん……マサキ、その、先生はお元気だろうか?」

「元気だぞ、気になるなら連絡してみろよ。今ならビデオ通話も対応してくれるはず」

「先生とビデオ通話など恐れ多い!私にできるのは、匿名で先生を讃えるポエムを手紙にしたためて郵送することぐらい」

「それ、多分届いてないぞ」

「なん・・・だと・・・」

 

 天級騎神たちに居心地良く暮らしてもらうため、村人一丸となって協力するのがラ・ギアス鉄の掟だ。

 ストーカーっぽい連中への対策もお手のものである。

 差出人不明の郵便物は中身を検閲され、母さんたちも下へ届くことはない。

 

「ポエムを送るのはやめとけ、『やだ気持ち悪い』って母さん引いちゃうだろ」

「そ、そうか……ならば、マサキから口頭で伝えて…」

「断る」( ゚Д゚)

「無念だ」(´・ω・`)

 

 母親を讃えるポエムを朗読しろと?絶対に嫌なのででキッパリ断っておく。

 

 フェイルの母さん信者っぷりにも困ったもんだ。

 本人曰く"風の貴公子"という異名も母さんにあやかって『風の』部分を後付けしたらしい。

 そんなに思っているのなら、俺が母さんに頼んで電話なり直接会うなりしてもらえば・・・

 

「遠慮しておこう。今は先生の前に立つ時期ではないと思う」

「よくわからんけど、そういうもんか?」

「そういうものさ。先生にもマサキにも、もっと立派になった姿を見てほしいからね」

 

 おいおい、この男ってば、まだまだ出世する気ですよ。

 今でも十分立派だと思うけど、フェイル的には力不足を感じているのか、ストイックなイケメンである。

 

 母さんの話も一段落してからは、近況報告に続き高校時代の思い出話に花を咲かせる。

 数年前なのに懐かしい・・・俺たちは学生に戻った気分で語り合ったのだ。

 

「私の生徒会長就任演説を『ウンコに行きたい』という理由で中断させたのもマサキだったなww」

「その節は大変申し訳ございませんでした!」

「謝らなくていい。あの時、後輩の女子生徒が体調不良を訴えていたのだろう。君は、彼女を保健室に連れて行くために、あのような行動をしたまでだ」

 

 気付かれていたか、シュウには『もっと他にやりようもあっただろ』とたしなめられたっけ。

 俺の『ウンコに行きたい』発言で演説は中断して休憩を挟むことになり、フェイルの信奉者から恨みを買って何か大変だった思い出だ。

 後輩を保健室に届けた後、本当にトイレに行ったら予想以上の大物(ウンコ)とバトルすることになったから嘘は言ってないのにー。

 

「汚名を被ってでも他者を助けようとする心意気、尊敬に値する」

「ありがと」

「だが、時と場合をよく考えて行動したまえ。マサキの行動で汚名を被るのは、最早一人ではないのだから」

「肝に銘じておくよ」

 

 耳が痛い話だ。俺の評判が落ちれば家族や愛バたちのみならず、学園のみんなにも迷惑がかかってしまう。

 しっかりしないといけないな。女になってはしゃいでいる場合じゃねぇ!

 

 その後も、高校生だった俺の恥ずかしいエピソードを話題に上げてからかって来るフェイルであった。

 お前、人の黒歴史をほじくり返して楽しいか?楽しんでますね。やーめーろーよー。

 

 存分に語り合った俺たちは、すっかり学生時代の仲に戻っていた。

 数年ぶりの再会が嘘のように、今は気心知れた友人関係の復活である。

 おかわりのコーヒーを飲み干したしたところで、不意に会話が途切れた。

 そろそろ頃合いか、切り出すタイミングはここだろうな。

 

「で、思い出話をするためだけに呼び出したんじゃないだろ?」

「マサキと旧交を温めたかったのは本心だよ」

「嬉しいけど時間は有限だ。仕事モードになってくれ」

「了解した。ここからは治安局次長として話させてもらう」

 

 フェイルは姿勢を正して俺を見据える。空気が真剣なものに変わったのを感じる。

 仕事モードになったフェイルは、スーツの内ポケットから一枚の写真を取り出して俺に見せる。

 

「今、治安局全体がこの人物の行方を追っている。それこそ、血眼になってな」

「ルクス!」

 

 写真にはムカつく仮面を着けたあんちくしょう!因縁の相手ルクスを撮影したものであった。

 

「何を隠そう、私はルクス対策本部の責任者を拝命している。しかし、これといって成果を上げられていないのが現状だ。そこで君だよ、マサキ」

 

 ビシッと指を突き付けるフェイル。

 なるほど、俺とルクスの関係も調査済みってことね。

 愛バたちの予想通りの展開になってきた!

 

「君はルクスと接触し交戦した数少ない人間だ」

「逃げられた上に、異世界送りにされたけどな!」

「奴は君に執着していると我々は考えている。だから……」

「俺に囮をやれってか?」

「単刀直入に言うとその通りだ。今後、ルクスは君の前に現れる可能性が高い。手始めに治安局から腕利きを数名、学園内に配備することにした。この話は既に学園側の了承を得ている」

「根回し上手さんめ。言っとくが、生半可なレベルじゃルクスの相手はできないぞ」

「わかっている。上層部はともかく、私個人はマサキとルクスの戦いを邪魔するつもりはない。ただ、今の内に君と協力体制を築いておきたいのだよ。何かあれば我々治安局を頼ってくれて構わない」

「その代わり、ルクスについて情報が入ったら教えろってこと?」

「奴は複数の犯罪組織と関わりがある。治安局はルクスの正体を突き止めて、芋づる式に他の手柄も立てようと躍起になっているんだ。御三家よりも先にね……」

 

 疲れたように、やれやれと首を振るフェイル。

 しょうもない権力争いにルクスの首級を使う気とか、随分と余裕があるんだな。

 そんなことしている間にも奴が暗躍しているってのに、本当にやれやれだぜ。

 

「そっちからも情報はくれるんだろうな?」

「もちろんだ。治安局は君たちを利用する。そして君たちも我々を利用して、ルクスを退治すればいい」

「他には?」

「見事勝利した暁には、奴の身柄を引き渡してもらいたい」

「死体が残るかわかんねえぞ」

「その時は、治安局の協力で勝利したと、大々的に宣伝してくれたら満足だよ」

「ほう、それでまた出世するのですな」

「目の上のたんこぶが消えて君も万々歳だろ。憂いなく愛バとイチャつけるぞ」

「「フフ、フフフフフフ・・・・・・」」

 

 ニヤニヤと悪い笑みを浮かべる俺とフェイル。二人の利害が一致した瞬間だった。

 

「交渉成立だ」

 

 俺はフェイルに右手を差し出す。協力体制を取ることを約束する握手だ。

 フェイルは一瞬躊躇したが、すぐに俺の意図を察して握手に応える。

 両手をガッチリ握ってブンブンする珍しい本気握手だった。

 

 出世のためだろうが何だろうが、利用してくれて構わない。それでルクスを倒せるならお安い御用だ。

 

「手柄が欲しいのは否定しない。だが、それ以上に、私はルクスが恐ろしい」

 

 フェイルは少し顔を青ざめさせながら言う。

 

「感じるのだよ。奴の存在を許せば国どころか世界の存亡すら危ういと、そう思えてならない」

「いい感性だ。そいつは正しい」

「勝手な事を言っているのは百も承知しているが、どうか頼む。ルクスの野望を止めてくれ」

「ああ、任せろ」

 

 この日、俺は治安局という頼もしい組織を仲間にできたのであった。

 

「それでは、またいつでも連絡してくれ」

「ほいほい、そっちもルクスの情報よろしくな。母さんのことは本人に聞いてくれや」

「先生に会う覚悟が決まったらな。その時は君にも相談しよう」

「じゃあまたな~」

「ああ、また」

 

 話を終えたフェイルは颯爽と去っていった。

 ヴァルシオーネで注文したコーヒー代は奢ってもらっちゃった。

 何も言わず伝票をレジに持って行き、財布を出そうとする俺を笑顔で制するイケメーン。

 できる男は会計もスマートである。

 さてさて、スーパーに寄ってから帰宅しますか。

 

 治安局と協力体制をとることにしたと、愛バたちに報告した。

 フェイルに会うと告げたとき、恐らくそういう話をしてくるだろうと賢い愛バたちは見抜いており、俺と事前に相談をしていたのであった。

 治安局と手を結ぶことは、俺たちの中で決定事項だったのである。

 これでルクス包囲網も一層強化された。この勢いで追い詰められたらいいと思う。

 

 〇

 

 女体化生活三日目の夜

 

 まだ試練は終わっていないというのに夢空間に連れ込まれた。なんでや?

 

「来たわね」

「おー、見事な着地だ」パチパチパチ

 

 夢空間の空中に現れた俺は慌てず騒がず、三回転して地面にシュタッと着地する。

 いつもならシャミ子が出迎えてくれるのだが、今日はカティアとテニアの二人だった。

 

「あれシャミ子は?」

「あー、それが今、ちょーっとご機嫌斜めでさあ」

「不貞腐れてやけ食いしてるわ。メルアがなだめているけれど、あの様子じゃ、もうしばらくかかりそうね」

 

 あのドラゴン女神、感情の起伏が激しいから些細な事で不機嫌になるんだよな。

 こっちは女にされたことで、一言物申してやろうと思っていたのに。

 一体何なのよ?

 

「本当に女になってるwwしかも超美人www」

「こうして見ると凄いわね。私が男なら放っておかないわww」

「笑い事じゃないぜ。説明とか大変だったんだからね!」

 

 女神たちは現実世界の様子をある程度理解している。

 俺の神核を通して外界の情報が流れて来るらしく、それを受信しているのだそうだ。

 つまり、俺が女になったことも把握済み。そりゃあ首謀者なんだから知ってて当然だよな。

 

 やれやれ、不機嫌らしいシャミ子に会いに行ってやるとするか。

 

「そう急ぐこともないんじゃない。シャナミアはメルアが見てくれているし、少し遊ぼうよ」

 

 テニアがそんなことを言ってきた。

 それは修練のお誘いと考えてよろしいかな?

 

「シャナミアに任せっきりなのも不安だし、私にも修練のお手伝いさせてよ」

「せっかく来たんだもの、付き合ってくれるわよね」

 

 俺が断ると思っていないのか、二人の女神は既にやる気だ。

 テニアは指先に力を集中させ覇気弾の準備を、カティアは拳を握り隙の無い構えをとった。

 射撃戦と格闘戦、シロとクロに似通った戦闘スタイル。相手にとって不足なし!

 シャミ子との修練がキツ過ぎて先延ばしにしていたけど、俺も二人と修練したかったんだよ。

 

「望むところだ。二人ともよろしくお願いします!」

「そうこなくっちゃ!楽しませてよ~」

「くれぐれも修練だってことを忘れないように。でも、私も少しだけワクワクしているわ」

 

 シャミ子の所へは修練の後に顔を出せばいいか。

 俺はカティアとメルアの女神コンビを相手に模擬戦を開始するのであった。

 

「いくぜっ!」

「「来なさい!」」

 

 ねえちょっと待って、まさか二対一なの!?

 だ、大丈夫だ。二人ともシャミ子よりは常識のある女神様…て、手加減してくれるよね?

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・ボコボコにされた。

 

 女神コンビの絶妙なコンビネーションにより、完膚なきまでにボコられた。

 俺との模擬戦で熱くなったクロシロより容赦ない攻めには恐怖を感じた。

 シャミ子……あれでもちゃんと手加減してくれていたんだなぁ。

 

「何だよあれ、曲がるレーザーとかアリかよ。しかも、追いかけてくるし…」

「ねえねえ!どうだった?アレこそ、私自慢の特殊覇気弾"オルゴノンレーザー"だよ」

 

 うつ伏せで倒れ伏している俺にテニアが感想を聞いて来る。なんでそんなに元気なの?

 どうだった?じゃねぇよ。

 撃ち過ぎなんだよ避けきれねぇよ痛てぇんだよ!レーザーで包囲すんなよ!

 

「テニアには困ったものね。これは修練だって言っているのに」

「楽しそうに俺をリンチした人が何か言ってる……」

 

 俺をヒーリングしながらカティアが『やれやれ』している。

 自分にレーザーが当たるのも構わず、嬉々として俺をタコ殴りにした黒髪の女神様である。

 クールに見えてその実情は狂戦士……そういうところ、うちのクロに似てますね。

 殴る蹴るのラッシュが早すぎて全く対処できんかった。

 

「殴り応えがあったわ」

「言いたいことはそれだけか?」

「蹴り応えもあったわ」

「もういい!二人とも何なのよ!俺をサンドバックにして(もてあそ)んだのね、いじめカッコ悪い!」

「あーあー、カティアのせいでマサキが()ねちゃったw」

「私のせい?ごめんなさい、そんなつもりはなかったのよ」

「謝罪がほしいのではない!膝枕をしてほしいのだ!」

「どさくさに紛れてなんか要求してきたww」

「別にいいわよ、おいで」

「わーい!」(*´▽`*)

「トーヤもこれぐらいスケベだったら、私たち苦労しなかったのかな」

 

 ダメ元で言ってみたら『おいで』されたのでカティアの膝をありがたく枕にする。

 おほっ!クールビューティーの膝枕最高やん。

 

「ヒーリングを続行しながら頭を撫でてくれると尚良し、そうそう、そんな感じでよろ~」

「注文の多い甘えん坊ね」クスクス

「二人だけ楽しそうなのズルい。ねえねえ、こっちの膝も空いてるよ~」

「やったー!」(*´▽`*)

 

 ついでにテニアにも膝枕してもらえた。

 うむ、健康的な元気娘の膝枕もいい仕事してますなあ。

 

 二人のヒーリングと膝枕を交互に堪能してしまったぜ。

 一緒に修練してスキンシップをすることで、カティアとテニアの二人と距離が縮まった気がして嬉しい。

 ボコられた甲斐があったってもんだ。

 

 膝枕いいよね。リアルに戻ったら愛バにもお願いしてみようと思った。

 

 〇

 

 女神二人のおかげで心身ともに回復した俺は、シャミ子に会うため女神ハウスに向かうことにした。

 カティアとテニアは修練中に壊した空間の修復作業をしてから戻るんだってさ。

 

「おそらくシャナミアが無理難題を言い出すはずよ。何とか挫けずに頑張ってほしいわ」

「付き合いきれないと思ったら、メルアに頼んでリアルに戻っちゃえばいいよ」

「二人ともありがとう。行って来るよ」

 

 心配してくれる二人にお礼を言って、いざ女神ハウスへ・・・・・・はい到着!

 

「ごめんください、お邪魔します!シャミ子、メルア、いるか~?マサキが来ましたよっと」

 

 勝手知ったる女神の家、俺は遠慮なく住居侵入を試みた。

 奥から若干疲れた様子のメルアが出て来て迎えてくれる。

 

「いらっしゃい、マサキさん。うわ、ホントに女性だ……似合ってますよ」

「どうも、勝手にお邪魔してるよ。メルアは何だか疲れてる?」

「シャナミア様がウザ絡みをして来てめんどくさいんですよね。申し訳ないのですが、代わってくれませんか?」

「いいよ。シャミ子の相手は俺に任せな」

「ありがとうございます。すぐにお茶をお持ちしますね」

 

 ヨロヨロとキッチンへ向かうメルア、その姿を見送ってからシャミ子がいるであろう居間へ行く。

 目当ての女は思った通りそこにいた。

 

「よ!シャミ子」

「・・・・」( ー̀ н ー́ )ムスッ

 

 不機嫌オーラを隠そうともしていないシャミ子は、ちゃぶ台の上に顎(あご)を乗せてブー垂れている。

 呼びかけに返事をすることなく、チラッと視線だを向け、頬を膨らませているシャミ子。

 女体化した俺を見てもノーコメントだと!?そっちが仕掛けておいてそりゃないぜ。

 本当に機嫌が悪いらしい。とりあえず奴の対面に腰を下ろして会話をする。

 

「どうした?えらく不機嫌だな」

「……マサキのせいです…」

「俺が何かした?何かされたのはこっちなんだけど、見ろよこの女体!」

「フンッ、なんだかんだで『俺って美人じゃん』と思って浮かれてる癖に」

「な、な、何を言うか!こんなになっちまって大変なんだぞ」

「へぇー、その割には女生活満喫してますよねー。もう女のままでもいいんじゃないですか?」

「棘のある言い方しやがって、何がそんなに不満なんだよ」

 

 口論になりそうなタイミングを見計らってか、メルアがお茶とお菓子を持って来てくれた。

 丁寧に配膳を終えた後、俺の隣に腰を下ろすメルア。

 このまま一緒にシャミ子の話を聞いてくれるのだ。

 シャミ子と二人っきりだと、ケンカになりそうなので正直ありがたい。

 ほらシャミ子、言いたいことがあるなら聞いてやるから、言ってみなさい。

 

「・・・つまんないです」(=_=)

「「はい?」」

「つーまーんーなーいーでーすー!!」( ̄д ̄)

「何がじゃい」

「今日はもうずっとこの調子ですよ。参ってしまいます」

 

 ちゃぶ台を両手でバンバン叩きながら『つまらない』と抗議じみた声を上げるシャミ子。

 もう駄々っ子のそれである。こんなのでも2000歳オーバーの伝説的存在らしいですよ。

 やめなさい、お茶が零れるからやめなさい!俺とメルアは早急に自分の湯呑を避難させた。

 メルアの淹れてくれた玄米茶を飲みながらアホの鎮静化を待つ、ちゃぶ台を攻撃するのに飽きたシャミ子がプリプリしたまま口を開く。

 

「せっかく女になったというのに何なんですか!何即行で馴染んでいるのですか!」

「変化に適応してみせろと言ったのはシャミ子だろ?俺はその言葉に従ったまでだ」

「そうですけど、そうなんですけどぉ!私が見たかったマサキとは違うんですよー!」

「えっと、シャナミア様が期待していたマサキさんとは一体?」

 

 メルアがおずおずと訊ねるとシャミ子は『よくぞ聞いてくれました』とばかりに回答する。

 それは頭の痛くなるような内容であった。

 

「お風呂やトイレの度に恥じらったり、不覚にも男性にときめいた自分に戸惑ったり、愛バに信じてもらえず戦闘に突入したり、スカートやブラジャーを身に着けて悶々とする。そんなマサキが見たかった!」

 

 ああ、そういうの最初だけだったよ。

 どうせ一週間限定だと割り切ったら平気だった。

 TSものの漫画じゃあるまいし、いつまでも照れていられない。

 

 シャミ子の語りはまだ続いている。

 

「三日目にして身も心も女になってしまったマサキはひょんなことから女の悦びを知ってしまい、後戻りできない耽美(たんび)で官能的なエロスの扉を開いてしまうのであった!グフフ、この後の展開は完全メス堕ちルートと百合地獄ルートに分岐します。両方のエンディングを見ると真ルートが解放されトゥルーエンドでは『シャミ子様最高!』と5分おきに祈りを捧げるマサキの姿が……」

 

 なんかいろいろとヤバいシナリオが用意されていた。どのルートにも救いがない!

 こいつ、本当に碌でもねぇ女神だ。

 呆れる俺を置き去りにしたまま、シャミ子は自分の妄想を垂れ流していく。

 横を見ると、メルアは顔を両手で隠し『恥ずかしい、こんなのと同類だなんて恥ずかしい!』と耳まで真っ赤になってプルプルしていた。

 気の毒なメルアの背中をさすって励ましておく。

 泣かないでー、悪いのは全部シャミ子だってわかってるよ。

 よしよし、上司が変態だとマジで苦労するよね。

 

 つまり、シャミ子は自身の望む展開を期待してワクワクしていたのに、俺がアッサリ女体に馴染んでしまい、平穏な日常を送っていることが気に入らないのだ。

 

 めんどくせぇ奴だな。言い分はわかったけど、これ以上俺にどうしろと?

 

「テコ入れをします」

「は?」

 

 テコ入れとは・・・

 期待したとおりに進んでいない物事、停滞している状況などを、外部からの刺激や援助によって打開しようとする取り組みを意味する表現である。

 

 うわー不安しかない。

 

「テコ入れの内容ですけど……マサキには更なる変化をしてもらいます」

「嫌ですけど」

「シャナミア様、それはさすがに(こく)なのでは?」

 

 メルアの言う通りだ、何勝手に追加しようとしてるわけ?

 不完全燃焼なのはお前だけで、誰もテコ入れなんて望んでねーんだよ。

 

「では次の変化は・・・」

「勢いで話を進めてもダメ!お前のさじ加減で試練の難易度上げられも困るんだよ。女になったんだから、もうそれでいいじゃん」

「ちょっと追加設定するだけですから、これで最後にしますからぁ~」(´Д⊂グスン

「後付けも程々にしないと大変だそ。ほら、宇宙世紀のガンダムとかえらいことになってるから」

 

 シャミ子は泣き落としの姿勢に入った。それを見たメルアが『どうします?』と視線を送って来る。

 俺にしがみつき『テコ入れさせて』と懇願している姿からは神の威厳も竜の気高さも感じない。

 隙あらば俺のおぱーいを触ってくる辺り余裕はありそうだけど。

 

「次の変化は、マサキの好きなものにしますから」

 

 俺の好きなもの?ドーナツが好き!とか思っていたら、ポンデリングとかになるんじゃね?

 動けないところを誰かに発見され食われるんじゃね?嫌やわ~怖いわ~。

 

「食物ではなく動物に限定しますよ」

 

 動物ねえ・・・シャミ子のセンスで変な動物に変化させられるオチが見える。

 

「マサキさん・・・」

 

 メルアが心配そうに俺とシャミ子を見ている。わかってるよ。

 シャミ子の機嫌を損ねたままでいると最悪、機甲竜の助力を得られない事態に発展しかねない。

 ルクスとの戦いに向けて戦力アップしている中で、それは勘弁してほしい。

 

「小さくてカワイイ…マスコット的な小動物なら考えてもいい」

 

 凄く嫌だけど、ちょっとだけ譲歩してみる。

 そして、変化する動物の条件を先に指定させてもらった。

 これが通らなければ『もう試練やめますよ』という意思表示だ。

 

 俺が変化してもいいと思ったのはカワイイ系の小動物。

 魔法少女のお供的な奴をイメージしてもらいたい。アレなら十分許容範囲だろ。

 愛バの肩に乗ったりして『戦わないけど指図とセクハラはします』的なポジションに収まるのだ。

 具体的にはリスやモモンガみたいなプリティーアニマルで頼む。

 

「その条件を飲みましょう!」

 

 お、言ってみるもんだな。

 俺の言葉にシャミ子は表情を明るくさせて喜んだ。現金な奴だ。

 

「マサキさん、いいんですか?」

「いいよ。ここまで来たらシャミ子の好きにさせてやろう」

「愛してますよ、マサキ!あなたは本当にイイ男です」

 

 今は女だけどね。

 それより、わかっているんだろうな?

 

「もちろんです。更なるの変化をした後、残り四日間を乗り切れば……」

「マサキさんは晴れて機甲竜の起動者として認められ、シャナミア様を奴隷の如くこき使えます」

「私がマサキの奴隷に……『くっ殺』してもいいですか?即堕ちしてもいいですか!」ハアハア

「奴隷はいらん!」

 

 一緒に戦ってくれれば、それでいいんだよ。

 ピンチの時に駆け付けてくれたら嬉しいじゃん。

 

「話はまとまりましたね」

「そうと決まれば、早速追加設定を施しますよ。さあ、リアルに帰る準備を」

 

 後は俺が寝ている間にやってくれるらしい。

 リアルで目覚めた時には二段階目の変化が起こっている。

 少し不安だが、条件を指定させてもらったし、悪いようにはならないだろう。

 シャミ子はいつものように自らの膝をポンポンと叩いている。

 膝枕してやるから『おいで』のサインだ。

 通常ならここでシャミ子膝枕を堪能してリアルに帰るのだが・・・断る!

 

「メルア、膝枕してくれる?」

「え、あ、はい。いいですよ」

「なんで!?」( ゚Д゚)

 

 驚くシャミ子をスルーしてメルアに膝枕してもらった。

 うっひょぉー!金髪巨乳の膝枕・・・予想以上に心地よい。

 

「これで女神膝枕コンプリートだ!」

「あら、カティアとテニアにもしてもらったんですか?ホントに女神たらしですねえ」

「ちょっとちょっと!なんでメルアを選んだのです!?撲殺魔と暴食鬼にもしてもらったとか聞いてませんよ!許しませんよ!」

「うるさいですよシャナミア様。マサキさんが眠れなくなっていまいます」

「マサキは私の起動者ですー!返しなさい、返して!」ヽ(`Д´#)ノ ムキー!!

 

 シャミ子は激怒した。メルアはそれを涼しい顔で受け流している。

  

 リアルに戻る方法はシャミ子の傍で眠ることだと思っていたが、これは正確な情報ではない。

 カティアでもテニアでもメルアでも、俺を帰還させる力を有している。

 要するに四人から好きな女を選んでいいのである。

 その際、必ずしも膝枕でなくてもいい。添い寝でも何でもあり、密着していればオッケーだ。

 

「と、いうのが俺の推理なんだけど。合ってる?」

「全く持ってその通りですよ。シャナミア様は、すぐバレる嘘をつくんですから」

「ぐぬぬ。マサキの推理力を甘く見ていました」

 

 帰りたいならメルアに頼めとテニアは言った。それで思いついたんだが、正解だったようだ。

 

「今日はメルアに送ってもらう。シャミ子枕は、また今度ってことで」

「シャナミア様、振られましたねwww」

「振られてません!こうなったら、せめて掛け布団に立候補します」

「あーはいはい。来るなら来い」

「なんか慣れてません?」

「愛バ相手だといつもこんな感じだ」

「生意気にも女慣れしてやがりますよ。なるほど、女体化しても恥じらいが足りない訳です」

 

 甘く見ないでもらおう、愛バおかげで女体にはそれなりに詳しかったするのだ。

 

 メルア枕にシャミ子布団のサービスセットは快適そのもの、これならすぐにでも熟睡できそうだ。

 抜群の柔らかさに程よい体温、ほんのり漂う甘く優しい香りにもリラックス効果があると思う。

 そろそろトーヤさんに怒られたりしないか心配だけど、シャミ子が何も言わないのでセーフだと思うことにする。

 

「眠くなってきた……」

「お疲れ様でした。試練終了までの残り四日、気を抜かず頑張ってくださいね」

「りょ……シャミ子、ホント頼むぜ…信じてるからな……」

「任せなさい。大船どころか宇宙戦艦に乗ったつもりの安心感をお届けします」

 

 なんか不安だけど賽は投げられたのだ、信じるしかない。

 女神二人の温もりをと柔らかさを感じながら眠りにつく。

 

「で、どんな変化になさるおつもりですか?」

「それは起きてからのお楽しみ~」

「ちゃんとマサキさんの意向に沿うようにしてくださいよ。嫌われたくないでしょ?」

「わかってますよ。誰からも愛される、マサキ好みの小さくて可愛らしい動物にチェーンジッ!です」

 

 自信あり気なシャミ子の声・・・マジで頼むぜ。

 

 〇

 

「……さん……マサキさん!」

「起きて……起きてください」

 

 声が聞こえる。

 耳に心地よい愛バの声だ。

 俺に声をかけながら体を揺さぶっている?何やら事件が起きた様子だ。

 あと5分と言いたいところだが、起きなければならない。

 

「んっ…あー、よく寝た……おはよ…」

「あ!起きてくれました」

「よかった。心配しましたよ、マサキさん」

 

 目を開けるとそこには、シロとアルの姿があった。

 

 そうそう、昨夜はシロとアルの二人と一緒に寝たんだったな。

 風呂上りにシロがアルを異常なまでに警戒していたのは何だったのだろう?

 シロは俺に背後に庇いながら、

 

『マサキさんにのそばに近寄るなああーッ!』

 

 と、ゴールド・E・レクイエムを食らった5部ラスボスのような絶叫を上げていた。

 ポージングも完全再現である。

 それに対してアルは、

 

『シロさんを仲間外れにはしませんよ。三人で……ね?……ウフフフ』

 

 といった反応で怪しく舌なめずりをしていた。

 一歩も引かない二人、これは長くなりそうだと思ったところまでは覚えている。

 

 愛バが睨み合っている間に夢空間に呼ばれた俺は急激な眠気に襲われ、二人を放置して先に眠ったのだった。

 それが昨夜の出来事だったはず。

 

 心配そうに俺を覗き込んでいるシロとアル。

『いいですか、落ち着いて聞いてください』という場面を思い出す構図だ、なんて思っていると。

 

「いいですか、落ち着いて聞いてください」

 

 言った!神妙な顔のシロが一言一句違わず言ってのけた。

 

「マサキさんのお体が大変なことになっております」

「突然光ったと思ったら、私たちの目の前でみるみるうちに変わってしまって」

 

 そうだった。シャミ子のわがままで更なる変化をしたんだった。

 悪いな二人とも、愛玩動物に変化してしまった俺にさぞや驚いたことだろう。

 さあて、どんな姿にチェンジしたのかな?

 ウサギかな?リスかな?イタチ系だったらオコジョは大当たり、小鳥ならシマエナガを希望する。

 手と言うか前足はあるのだろうか?自分のモフモフ加減を早く確かめたいぜ。

 動かすぞ・・・動いた。とても小さな手が見える・・・手?俺の手かこれ?

 小猿か何かに変化してしまったのか?どう見ても人間の手なんだけど・・・

 

「???俺、どうなって…」

「失礼します」

「わっ!」

「あ、ズルい。私だって抱っこしたいのに」

「後にしてください。まずは本人に鏡を見てもらうほうが先です」

 

 シロが俺の体をヒョイと持ち上げて移動する。

 愛バたちはみんな力持ちなので、普段の俺(男)を運ぶことすら造作もないが、今のはあまりにも簡単に持ち上げられた。体が小さくなっているのは確定だな。

 今の俺、シロの腕というか胸にすっぽり収まっている状態だ。ナイスおぱーい!

 

 三日前、オルゴンテイルによって破壊された姿見は既に新調済みだ。

 その前に立つシロの全身を姿見が映し出す。

 彼女が丁重に抱き上げている動物もバッチリ確認できた。

 

「うっわ!メッチャカワイイ!」

 

 なんと!シロは銀髪の大変可愛らしい幼女を抱っこしていたのだ。

 全く持ってサイズの合っていないTシャツ着ている?というか被っているだけ。

 襟元から大きく肩が出ているのはご愛敬。無防備カワイイ。

 

 サラサラの長い銀髪、パッチリと開かれた美しい瞳、庇護欲をそそる小さな体躯、白くプニプニしていそうなもち肌、ジュニアモデルも裸足で逃げ出すレベルの容姿、スッキリした目鼻立ちには今後の成長を期待せざる負えない。

 とんでもねぇ美幼女だ!もう、一種の神々しさすら感じる存在だ。

 おお神よ、あなたが神か?ロリ神様の降臨じゃーい!!守りたいその笑顔!!

 これは全力全開でお守りしなければ!

 とりあえず警戒されないよう、小粋なトークで親密度を上げてから従者の末席にでも加えてもらおう。

 

「やあ、お嬢さん。どこから来たの?一人?家族は一緒じゃないのかな?もし、時間があるなら俺と歴代プリキュアについて語り合わない?」

 

 い、今のはキモかったかな?ちょっと早口になっちゃったぜ!

 目の前のロリ神様も照れたような反応をしていらっしゃる。うほっ、かわええ!

 

「マサキさん、ご自身をナンパしないでください」

「現実逃避したい気持ちはわかりますが……シロさん、そろそろ代わってください」

「ねんがんの ロリマサキさんをてにいれたぞ!」

「殺してでもうばいとる」

「な なにをする どすけべー!」

 

 ストップストップ!朝から部屋の中で暴れないで!

 

 アルの言う通り俺は現実逃避していた。

 鏡に映った瞬間に全てを理解したのに、己の可愛さ故に自分自身に媚びるようなキチガイ行動をとってしまったのだ。

 己の!可愛さ!故に!

 

 『誰からも愛される、マサキ好みの小さくて可愛らしい動物にチェーンジッ!です』

 

 シャミ子の言葉が思い出される。

 

 うんうん。小さいね、可愛いね、俺好みだね!!

 

「シャミ子の奴めwこう来たかwww」

 

 もう笑うしかない。シャミ子は確かに俺の希望する条件を飲んだ上で変化を実行した。

 

 女の体はそのままに、低年齢化させるという変化をね。

 

 シロは俺を片手で抱いたまま、アルの攻撃をもう片方の手で(さば)いている。

 早朝から無駄に高度な格闘戦を繰り広げる愛バたち、俺の身を案じて両方とも手加減しているけどやめてほしい。

 何とか身をよじってシロの腕から脱出することに成功、床にベチョっと着地した俺は二人を制する。

 

「はいストップ。今はそれどころじゃないよ~こっち見て」

 

 シロとアルはバツの悪そうな顔をしてその場に正座する。

 俺のために争わないでー!とか言わせんなよ、恥ずかしい。

 

「二人とも、俺を見てくれどう思う?」

「「すごく……カワイイです////」」

「嬉しい事を言ってくれるじゃないの」

「またしても、シャナミア様のせいですか?」

「ピンポーン!アルの大正解~」

「本当にろくでもない邪神ですね」

「シャナミア様……もう擁護できません……」( ;∀;)

 

 鏡に映る自分を見る。そこにはロリ神になった俺がいた。

 自分じゃなかったらお持ち帰りせずにはいられない可愛さだ、と自惚れてみる。

 しばらく自分観察に勤しんでいると、ソワソワし出した愛バが挙手して発言を求めた。

 

「マサキさん、お願いがあります」

「申してみよ」

「今すぐにでも、ハグしてスリスリしてペロペロしたいです!」

「ほう。主らも好きよのぅ」

「主の可愛さに激しいスキンシップを熱望する、我らをどうかお許しください」

「欲望に忠実な愛バを持つと苦労するわい。まあ、よかろう」

「「で、では・・・」」ゴクリッ

 

 生唾を飲みこむシロとアル。

 フフフ、今にも俺を襲おうとギラギラしてやがる。

 だが、俺は受け身なだけの幼女ではない!

 スキンシップ上等!母さん相手に鍛えに鍛えた甘えん坊スキルが炸裂するぜ!

 俺は助走をつけて二人に飛びついた。

 

「シロー!アルー!どうか俺を可愛がってちょーだい!」(*´▽`*)

「「はーい。喜んで―」」(≧▽≦)(*^▽^*)

 

 しっかり抱き留めてくれる二人、もつれ合うようにして倒れ込むが問題ない。

 『朝から何やっとんねん』ですって?愛バとのイチャコラは全てに優先されるのですよ!

 そうして、俺たち三人は女同士心行くまでベタベタイチャイチャしたのであった。

 ああ、そうだこれだけ言っておこう。

 

「俺自身が幼女になる事だ!!」

 

 変化の試練四日目、新たなフォームチェンジで始まりを告げた。

 

 〇

 

「うわーうわー、小さいなあ、くぁわぃぃなぁぁ~」ぎゅー

「むぐぇぇ」

「こらクロ!マサキさんが潰れてしまいます!」

「クロちゃん代わって!次私の番だよ」

「思った通り大人気ですね」

 

 スキンシップを終えた俺はすぐに残りの愛バ、クロとココにも連絡した。

 詳しく事情を話すまでもなく二人はすぐに駆けつけてくれて、今は幼女化した俺にメロメロである。

 クロのハグで内臓が飛び出そう・・・タスケテ。

 

 体を調べてみてわかったのだが、今の俺は3歳児ぐらいの体形なのだそうだ。

 小さいとは思っていたけど、初めてあった頃のクロとシロよりも小柄で華奢な体だぞ。

 これ大丈夫か?覇気は使えるみたいだけど、バスカーモードになったら弾け飛んだりしない?

 バスカーするときは要注意だと覚えておこう。

 

 体が小さくなったことで困るのは服装だ。

 残り四日だけど、ずっと裸にブカブカTシャツってわけにもいかない。

 早急に子供服を準備する必要があったのだけど、これはクロが解決してくれた。

 北島組に子供服を扱う店と懇意にしている組員がいて、クロが連絡したところ早朝にも関わらず廃棄予定の衣類を譲ってくれたのである。

 段ボール箱一杯に詰められた服を無償でくれるとは、後ほどちゃんとお礼をせねばなるまいて。

 

「本当に廃棄品ですか?何気に全部有名ブランド服ですよ」

「いいって、どうせ金払うのはジージだし」

「これとこれもキープです。マサキさんは何を着ても似合いますよ」

「マサキ、次はこれを着てみて」

「どれどれ・・・うん、これがいいや」

 

 コーディネートはセンスのある愛バたちにお任せだ。

 いくつか提案された中から俺が選んだのは、シンプルな短パンにシャツの組み合わせ、上着に子供用のジャケットを羽織って完成だ。

 活発な雰囲気を出しつつも、女子の可愛さも失わない、何より動きやすいのがいい。

 フリフリのドレスとかもあったけど却下した。それを着るには心の準備が必要だ。

 

 朝食は時間がないので、シリアルに牛乳をぶっかけたもので手早く済ませる。

 ついでにクスハ汁を飲んで各種ビタミンを補給・・・!?!?

 

ブェッフォンッッ!!」`。*:`( ゚д゚*)ガハッ!

 

 盛大にむせて吐いた!

 

「マサキさん!?大丈夫。何か拭くものを」

「毒ですか?アル姉さんが精力剤を仕込んだのですか!」

「人聞きの悪い!クスハ汁に仕込んでバレるようなヘマはしません」

「仕込んでるんかーい!!」

 

 マッッズッ!マズすぎる。なんだこれ賞味期限切れか?

 いつも飲んでいるのに、こんなにクソマズいと思ったのは、初めて飲んだとき以来だ。

 

「まさか、味覚がお子様になっているのか!?」

「なるほど、それでしたら納得です」

「ただの女体化以上に気を付けないといけない点がありそう」

「お酒は絶対に控えてくださいね」

 

 クスハ汁お子様用とかあったかな?

 とにかく、苦いものや辛いものには注意しておこう。

 

 今日も今日とて出勤しなくてはならない。社会人は大変なのです。

 

「さすがに休んでもいいのでは?」

「幼女化したぐらいで仕事に穴を開けるわけにはいかねぇ。俺は行くぜ!」

「『ぐらい』てレベルの事態じゃない気がするけど」

「無理しないでくださいよ。子供の体だと急な発熱や体調不良に見舞われる可能性も、大いにありますから」

「わかってるよ。準備も出来たし、出発進行~」

「「「「はーい」」」」

 

 いつものように仲良く歩いて登校する。うぐっ、なんか鞄が重い。

 

「お持ちします」

「ありがとう」

 

 シロが鞄を持ってくれた。

 明日以降、荷物を減らすか子供用の鞄を準備する必要があるな。

  

 な、なんか大きいな、視界に入るもの全てがやたらと大きく見えて怖い。

 幼女化した俺、世界の広さを認識してビビる。

 解っておりますとも、周りが大きくなったのではない、俺が小さくなったのだ。

 目線だって、ものすごーく低くなって落ち着かない。

 "不思議の国のアリス症候群"という、物が大きく見えたり時間の間隔が狂ったりする病気があるそうだが、今の俺はまさにそれをリアル体験している感じがする。

 

「マサキさん?」

「あ、いや、何でもない」

 

 この体に慣れるのには苦労しそうだ。

 先頭を歩く俺のスピードが遅いので、愛バたちの歩みも自然と遅くなる。

 よちよち歩きですんません!このままじゃ愛バたちが遅刻しちゃう。

 

「ごめん、先に行ってくれ。何か先頭は疲れるわ」

「大丈夫?」

「平気平気、俺は小走りでお前たちについて行くぜ」

「手、つなぐ?」

「もうちょっと頑張ってみるよ。どうしてもしんどかったら、その時は頼む」

「心配です」

「ですが、マサキさんの意思は尊重すべき」

 

 愛バは渋々納得してくれた。

 先頭をクロにしてシロ、ココ、アル、俺の順番で隊列を組んで歩く。

 

 歩く、歩く、歩く、ついてく、ついてく、つい・・・て・・・く・・・ハアハア。

 

 おいおいマジか?学園までの道のりを半分も消化していないのに、息切れしているだと!?

 愛バたちについていくのがやっとで、景色を見たり会話を楽しむ余裕なんてない。

 俺だけ朝からフルマラソン状態、三歳児ってこんなに虚弱なの?

 自分がイメージする三歳児って、元気に走り回ってる感じなのだけど。

 この体、思った以上に体力がない。HPが男だった頃の10パーセント以下に設定されている。

 

 俺が遅れ出したことで愛バたちが心配そうに振り返る。

 ごめん、今行くから・・・あっ!?

 

ぎゃんっ!」(゚Д゚;)

「「「「マサキさん!?」」」」

 

 コケてしまった。お手本のような転倒である。

 子供の頃はよくコケていたけど、大人になってからはご無沙汰だった。

 結構痛いし、何より恥ずかしい////

 愛バたちが慌てて駆け寄って来る。

 すぐに起き上がって無事をアピール、顔から行ったけど擦り傷一つないようで安心した。

 体力はないけど、それなりの耐久力はある?変な体だ。

 

「ご無事ですか?」

「誰の仕業?犯人見つけたら地中深く埋めてやる」

「誰のせいでもない、俺がひとりでに転んだんだ。いや、お恥ずかしい」

「ちょっと、マサキ」

「さあ、先を急ごうぜ」

 

 気恥ずかしさもあって俺は走り出す。

 慣れない体で急に走ると危ないですよね。それも3歳児の弱々ボディなら尚更だ。

 結果として、

 

ぎゃぷらんッ!」(゚Д゚;)

「「「「マサキさん!?!?」」」」 

 

 二回目の転倒である。

 先程より強かに打ち付けたため、痛み倍増で悶絶する。

 いたぁーーいッッ!もうヤダこの体、子供ってなんでこんなにコケやすいの?

 恥ずかしいより情けない。ちょっと涙出てきた。

 

 女体化にアッサリ馴染んで慢心し『今回もまあ楽勝でいけるっしょww』とか思ってた自分をぶん殴りたい。

 甘く見ていた俺が悪いのだけど、幼女化は結構キツイぞ。まさしく試練である。

 テコ入れ・・・大成功だよ、シャミ子君。

 体が小さくなっただけでなく、体力やその他のステータスも減らされている可能性がある。

 ヤバい、今ルクスにあったら瞬殺されてしまうぞ。

 あのワガママドラゴン女神、なんてことしてくれたんや。

 

「もう見ていられません!」

 

 アルが我慢できないとばかりに俺を抱き上げる。

 俺は一瞬で彼女の腕の中、見慣れた美しい顔が近くにあって照れる。

 アルは無理してコケた俺に少し怒っているようだ。

 

「マサキさんが何と言おうと、このまま私がお運び致します」

「ごめん、アル」

「先を越されました」

「下校するときは私だからね!」

「マサキ、ケガしてない?ヒーリングするからちょっと見せて」

 

 ココのヒーリングで治療してもらい、アルに抱っこされたまま登校再開。

 おお、こりゃあ楽チンだわ。

 

「なんかすまんね」

「私は最初から言っていましたよ。無理なさらないで、と」

「ごめん」

「謝らないでください。操者のお世話は愛バの義務であり喜びですから、役得万歳です」

「そうそう。もっと私たちを頼ってよ」

「マサキさんのためなら、例え火の中水の中」

「そのための愛バだよ」

 

 う、嬉しい。朝から涙腺に来ちゃうぐらい嬉しい。

 そうだよな、何も一人で抱え込む必要はない。俺たちは運命共同体だ。

 もっと愛バたちを頼っていいんだよな。

 というわけで、今はアルのおぱーい、略してアルパイを堪能しよう。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 マサキが女体化してからというもの、トレセン学園の通学路は様変わりしていた。

 とんでもない美女がとんでもない愛バを引き連れて登下校していると、噂になったことが全ての始まりだ。

 四日目の今日ともなると、多くの人がその姿を一目拝見しようと詰め掛け、通学路は空港で海外スターの到着を待ちわびるかのような様相だ。

 スマホだけでなく、望遠レンズを装着した高級カメラを構える者までいる始末。

 ベストショットを狙うために、場所取り争いをしている声もチラホラ聞こえる。

 

「来た!おい、道を開けろ」

「この瞬間を待っていたんだ!」

「わかってるな。登下校の邪魔をしたら『悪・即・斬』だぞ!」

「トレセンの守護神を敵に回すバカはいねぇよ」

「今日も楽しみね」

「私、初めてなんだ。麗しの"お姉さま"に早くお会いしたいわ」

 

 人々の待ちわびた瞬間が訪れる。

 曲がり角からやって来た五人組に注目する一同。

 大きな存在感を持つ美しい四人のウマ娘が登場し、人々のテンションは爆上がる。

 しかし、お目当ての人物がいない。

 どこに行ったのだろう?今日は別行動なのか?

 残念に思いつつも、せめて四人をカメラに収めようとした男は気付く。

 それを皮切りに、他の者も気付き始める。

 青い毛並みのウマ娘が、とても大事そうに何かを抱えていることに。

 

「「「「は、はいぃぃぃ???」」」」

 

 "お姉さま"が消失し"ロリ神様"降臨なされたと、噂が広まるのに時間はかからなかった。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「うおっまぶしっ」 

 

 一斉にカメラのフラッシュが焚かれてビックリした。

 ムスカ大佐になる前にアルパイに顔を埋めて緊急回避だ!

 

「撮り鉄か!」

「ここまで酷くなるとは、いい加減ウザくなって来ました」

「面倒だけど、たづなさんに相談して蹴散らしてもらったほうがいいね」

「マサキさんが眩しいと言ってますのに、やめない人は通報します」 

 

 野次馬とカメラ小僧たちは愛バたちの威圧に怯み、そそくさと解散していった。

 それでも、下校時と明日には復活しているのだからたくましいと思う。

 

「あと少しです。もうしばらくご辛抱を」

「アルがしっかり支えてくれるから問題ない。それより疲れてないか?」

「全く疲れてません。今のマサキさんは驚くほど軽いですよ」

 

 愛バたちと同じ制服を着たウマ娘たちが増えてきた。

 もうすぐ学園に到着だ。

 

「なーんだ。マサキ教官いないの?」

「アルダン様///今日もお美しいですわ……えぇ!?」

「子供???なんで???」

「すっごくカワイイ!どことなくマサキ教官に似て……そういうことなの!?」

「か、隠し子・・・」

「アルダン先輩いつの間に」

「マサキ教官やっちまったな!」

 

 好き放題言われております。

 いやいやいや、勘違いだから!そういうのはちゃんとしているから!

 生徒たちのヒソヒソにアルはご満悦なのだが、他の三人は超絶不機嫌になる。

 

「アル、最初からこれが狙いだったの」(# ゚Д゚)

「外堀から埋めるなんて、見損なったよアル姉!」(# ゚Д゚)

「いやらしい!さすがアル姉さん、いやらしい!」(# ゚Д゚)

「いやらしいは褒め言葉ですよ」( ̄▽ ̄)

「違うと思う」

 

 俺の冷静なツッコミをアルは笑顔でスルーした。

 いやらしい愛バも大好きです。

 校門が見えてきたところで、黒塗りの高級車が停まっていることに気付く。

 運転手が(うやうや)しくドアを開けると、思った通りの人物たちが下りてきた。

 

「あら、みなさんごきげんよう」

「マック院!」

「院ではなく、イーンですわ」

「お、マサキの嫁たちじゃん」

「おはようございます。今日も筋トレ日和ですよ」

「あいつがいない?珍しいわね」

「ふぁ……まだ眠いです~」

 

 マックイーン、パーマー、ライアン、ドーベル、ブライトの五人。

 メジロお嬢様御一行の登場である。

 うちの愛バたちも『おっは~』だの『チーッス』だのと挨拶をしている。

 

「ごきげんよう。定例会と言う名のパーティーご苦労様です」

 

 アルが身内のお嬢様たちに声をかける。

 メジロ家の御屋敷では昨日パティ―が開催されていたらしい。富裕層ですなあ~。

 

「あなたの抜けた穴は大きいですわよ、アルダン」

「気になるなら出席しなよ」

「姉さんが造反したなんて誰も思っていないから」

「『アルダン様は?』と、毎回聞かれる身にもなってほしいわね」

「居眠りするぐらい退屈でしたけど、お料理はそれなりに美味しかったですわ~」

 

 ちょっとした嫌味にもアルは動じない。

 『私はもうサトノ家の一員ですから』と躱してみせる。

 本音は『パーティーなんかやってられっか!こっちはマサキさんの相手で忙しいの!』だろう。

 

 (サトノとファインもパーティーとかすんのか?)

 (何回かあったよ。北島組でも宴会とかあるけど、したい人が勝手にやればって思う)

 (無駄と判断したら即断ります。私が出る必要性を感じた場合は嫌々出ます)

 (右に同じ、ファイン家はパーティーを情報収集の場と割り切っているかな)

 

 興味の無い事にはドライな愛バたち。

 そんなことを言っているのに、いざ出席したら完璧な立ち振る舞いを見せるから大したもんだ。

 そんなことは無いと思うが、もしパーティーに出る機会があれば、礼儀作法のスキルは彼女たちに教えてもらおうと思う。

 

「ところで……その子は一体?」

 

 マックが俺について訊ねてきた。

 最初から気付いていたけど、タイミングを見計らって聞いたと言う感じだ。

 他のメジロシリーズも『あなたは誰?』と言う視線を送って来る。

 そんなに見つめちゃイヤン(/ω\)

 

「もちろん、私とマサキさんの子です」

「「「「「なん・・・だと・・・!?」」」」」

「全て嘘です」

 

 アルの当然だと言わんばかりの発言、コラコラ何を言い出すのかね。

 その嘘はシロが即座に訂正した。

 

「ふぅ…危うく騙されるところでしたわ」

「でもでも~、アルダン姉様ならもしかして、なんて思ってしまいます~」

「そ、そんな////姉さんが、ご懐妊だなんて////」

「ムッツリライアンには刺激が強すぎたみたいww」

「教師と生徒の乱れた性活……同人誌のネタとしては少しマンネリかしら」

 

 メジロ家内でもアルの評価は"ドスケベ"なのだろうか?

 そこのところ詳しく聞いてみたい。

 

「聞かなくていいです」

「そうっスか。アル、皆を困らせるような嘘は感心しないぞ」

 

 先程の嘘がメジロのお偉方や俺の母さんの耳に入ってみろ、どんな吊るし上げを食らうか・・・想像したくない。

 

「そのうち、嘘も本当になりますよ」

「おっふ」

「甘いですねアル姉さん、マサキさんの第一子を宿すのは私ですよ」

「サトイモが戯言を抜かすな。畑に埋まって子イモでも量産してろ」

「妊活かあ。マサキが望むならいつでもいいからね♪」

「おふっふ」

 

 『私が!』『いや、私だよ』と口論を始める愛バたち。全く以って気の早い連中である。

 グイグイ来る愛バたちに俺は『おっふ』することしかできない、ヘタレっぷりである。

 

 抱っこされた幼女が俺であることをアピールするために、ちょっとだけ覇気を解放する。

 聡明なメジロお嬢様たちはすぐに気付いてくれた。

 何だね、その『またかよ』みたいな顔は?俺だって困ってるのよ。

 

「……マサキさん、なんですの?」

「そうでーす。俺がマサキでーす」

「ち、小さいですわ」

「チビで悪かったな。笑いたければ笑え!」

「笑ったりしませんわ。女性になったり子供になったり、苦労が絶えませんわね」

「幼女好きが高じて自ら幼女になってしまったのね。本気で恐ろしいわ」

「ちょ、ドーベル!本当のことを言ったらダメだよ!」

「あははははははwww女になってww今度は幼女にwwあはははははwww」

「なんて愛らしいのでしょう~。一緒にお昼寝したいです」

 

 こいつら・・・パー子めっちゃ笑っとるやんけ。

 こうなったのはお前らのご先祖のせいなのにー!

 

「シャミ子のせいでご覧のあり様だよ!」

「シャミ子?失礼ですが、頭の悪そうな名前ですわね」

「「ですよねーwww」」

 

 俺とアルは吹き出した。マックwwwよく言った。

 今夜辺り祟られて夢空間に招待されるかもだけど、よくぞ言ってくれました。

 

「今、何か悪寒がしたような?気のせいかしら」

「いい夢見て下さいね」

「困ったら『うどん』と唱えろ。それで邪神は悶絶するはず」

「意味がわかりませんわ!」

 

 メジロシリーズと合流して校門を目指す。大所帯になってしまった。

 御三家お嬢様連合の登校風景が完成してるー。

 当然目立つのだが、慣れっ子のお嬢様方は有象無象の存在など歯牙にもかけず、大変堂々としておられます。場違いな俺はアルに抱っこされ人形のように固まってるけど。

 メジロのみんなは身内のアルだけでなく、他の愛バたちも仲良く交流しているみたいで微笑ましい。

 口ではメジロ家を目の仇にしているクロシロも、今は大人しくしている。

 俺が赴任して来るまで、学園では猫を被っていたらしいからな。大っぴらに本性をさらけ出す気は無いということだろう。最近はそのメッキも大分剥がれているようだけど、まあいいか。

 

「ねえ、メジロの一番偉いおばあちゃん。ファンネル使えるって本当?」

「どうかしら?おばあ様なら、オールレンジ攻撃も(たしな)んでいそうですけど」

「失礼ですよクロ、うちの駄バが申し訳ありません。ですが、いい機会なのです。謎に包まれたメジロ家頭首様の事をお聞きしたいですねえ。個人的には真名"キュベレイ"であってほしい」

「ハマーンじゃないよww声似てるけどさw」

「顔が見えないのは認識阻害の術だとして、年齢も不詳なんだよね」

「ぶっちゃけ、孫の私たちもよく知らないのよ。噂では三桁オーバーだとか」

「おばあ様は"大魔女(ウィザード)"の異名を持つ騎神、寿命を延ばしていたとしても驚きませんわ」

 

 ばば様ってのは想像以上に謎多き人物のようだ。

 ここで、うつらうつらしていたはずのブライトが思いもよらない発言をした。

 

「ばば様は~、先祖返りなんですよ~」

「先祖返り?」

「メジロ家の開祖である"女神の如く尊きお方"の血を濃く受け継いでいるのです~」

「それってシャミ……シャナミア様か?」

「あら~マサキ様はよくご存知ですね。シャナミア様の因子を継承した者は~、一族の中でも特に強い力を有するのです。寿命が長いのはその副産物ですね~」

 

 ばば様はシャミ子因子の継承者だと!?

 だとすると、今俺を抱っこしているアルも長寿ということになる。

 俺がヨボヨボの爺さんになってもアルはずっと若い頃のまま、嬉しいような悲しいような。

 俺の墓前で手を合わせるアルを想像して切なくなった。葬送のフリーレン・・・(´Д⊂グスン

 

 (心配には及びません。私の命はマサキさんのもの、あなたの生が終わる時、私も・・)

 (アル!その先は言うな。後追いとか絶対に許さんからな!)

 

 例え俺がいなくなった後でも、愛バたちにはしっかり天寿を全うしてほしい。

 最後の最後まで生き抜いてこその生命だと思うから。

 

 (わかりました。では、マサキさんの寿命を延ばす方法を考えておきます)

 (やだ、この子ったらメッチャ前向き)

 

 何というポジティブシンキング、初めて会った時のアルが嘘みたいな前向き具合。

 あの時、死の立体パズル攻略を頑張ってよかったと心底思う。

 

「く、詳しいねブライト。先祖返りだなんて初めて聞いたよ」

「うふふ、ばば様に頼んで書庫を漁った甲斐がありました~。文献を読み進めながら寝落ちするのがマイブームなのです~」

「それって門外不出の禁書なんじゃ」

「意外……ブライトって、ばば様とそんなに親密だったんだ」

「逆だと思いますよ~」

「どういう意味ですの?」

「一族の中で私の存在など取るに足らないということです~。そんな私が何処で何をしようと無関心なのでしょう」

「そんなことは」

「お気になさらず~。私は今の自分に満足していますから、それに……ばば様に関心を持たれる事はプレッシャーですから……ふぁ~」

 

 ブライトは欠伸をしながらアルを見た。

 まるで『あなたならわかるでしょ?』と言っているような・・・

 俺の事も見ていた気がするのは、さすがに自意識過剰だろうか?

 

 ばば様から始まったトークは微妙な空気になってしまった。

 それを作り出したブライトは、素知らぬふりで舟をこいでいる。

 もうすぐ学園に着くから寝ないでほしい。

 

 空気を読んだのか読みたくなかったのか、シロが『鮫映画の話しようぜ』と持ちかけて、話題の転換に成功した。

 御三家令嬢たちは"シャークネード"と"シャークトパス"のどっちがクソかで議論していた。

 どっちもクソです。好きな人がいたらごめん。

 

 〇

 

 学園に到着した。

 たくさんの生徒が校門を通過して行く中、姉さんの姿を発見する。

 今日も門番お疲れ様です。

 

 メジロシリーズの五人に先行してもらい、俺と愛バたちはその後に続く形になる。

 

「おはようございます」

「はい、おはよう。今日はまた大勢なのね……マサキは?」

 

 『姉さん俺やで!』と言いかけたところをアルに邪魔された!?

 姉さんの視線から俺を隠すようにして、力強く抱きしめる。

 むぎゅむぎゅ・・・アルパイに溺れちゃう。

 

「何を持って……子供!?……あんたまさか…」

「バレてしまいましたか、この子は私とマサキさんの愛・・・」

「「「それはもういい!」」」

 

 『見せなさい』と言って姉さんは、アルパイで窒息しかけた俺の顔を強引に自分の方へ向ける。

 いたた!く、首が『ぐきっ』て鳴ったぞ。幼女はもっと丁寧に扱ってよ!

 

「・・・・」(T_T)ジー

「お、おはよう……です」((´д`)) ぶるぶる

 

 探るような姉の目がとても怖い。

 ビクつきながら挨拶をした直後、我が姉は動いた。

 

「その子を渡しなさい」ガシッ

「嫌です!」ぎゅー

「キャーッ」

「子守する暇があるなら学業に(いそ)しみなさい」

「子供を(さら)う暇があるなら、お仕事に励んだらどうですか?」

「二人とも冷静に、ここは冷静になるべきだと思うの」

「いいから寄越せ!」

「断固拒否します!」

イヤーッ!裂けるーー!マサキ裂けちゃうーーー!

 

 俺の片腕を掴んだ姉さん、絶対に離すまいと、もう片方の腕を掴むアル。

 助けを呼ぶ暇もなく、幼女(俺)を使用した綱引き大会が開催された。

 いだだだだだ、さける!裂ける!ザケル!

 あれ?なんだろう、過去にも似たような事があったような?

 あの時はどうなったんだっけ・・・

 

「何やってるんですか!」

「ちょ、あれヤバいって」

「助けなきゃ!」

「皆さん、力を貸してくださいまし」

「そこまでだドスケベ!」

「ついでに小姑もやってしまおう」

 

 悲痛な叫びを上げる幼女と、それを引っ張り合うウマ娘。

 どう見ても力自慢ウマ娘による幼児虐待現場である。

 愛バとメジロシリーズのみならず、通りがかった多くの生徒たちが救出に乗り出してくれた。

 

「ハア…ハア…助かった」(´Д⊂グスン

 

 何とか無事救出されました。

 こ、怖かった。また脱臼とかしたら嫌だしな・・・ん?また??

 アルは愛バたちから説教を受けて反省中、そして姉さんは・・・

 

「隙あり!」

「あっ!」

「たづなさん!?くそっ、またこのパターン!」

「この誘拐魔!マサキさんを返せ!」

「ほら見た事ですか!ずっと私が抱っこしていればよかったのに」

「はいはい。アルは反省しようね~」

 

 反省して意気消沈な振りをしていた姉は、一瞬の隙をついて俺の奪取に成功した。

 そのまま逃走を開始する。三日前のデジャヴを感じるぜ。

 

「例の如く俺のことは心配するな。みんな遅刻すんなよぉ~」

「「「「マサキさん、どうがご無事でーー!」」」」

 

 姉さんに連れてこられたのは、案の定、人気のない校舎裏でした。

 

「マサキ、一体何があったの」ブー

「あ、やっぱ気付いてた。シャミ子のわがままでさぁ」

 

 かくかくしかじか説明した。

 

「それでこんなに小さく」ブー

「変な体質でごめん。期間限定だから許して」

「許すも何も!夢にまで見た小さなマサキ、それが今私の前にいるのよ。感謝したいぐらい」ブー

「姉さんが喜んでるならいいけど」

「あなたの成長を見守れなかった事、ずっと後悔していたの」ブー

「姉さん……」

「神様の粋な計らいってやつね。シャナミア様さまだわ」ブー

「ただのワガママだと思うよ」

「くふふ、弟が妹に……そしてロリに!やってくれる、やってくれたわね!」ブー

「あの、そろそろ」

「出血多量で死ぬ前に激カワ妹を味わい尽くさないと!」ブー

「鼻血、止めませんか?」

「あ、はい」ブー

 

 会話している間、姉さんの鼻血は大きな血だまりを作っていた。

 垂らすと言うより勢いよく噴射していたな、ブーブーうるさかったな。

 

 それではヒーリング~のお時間です。

 もし、"姉の鼻血を止め選手権"があったら優勝してしまうかも。それぐらい手慣れてきた。

 

「ありがとう。今回も助かったわ」

「本当に気を付けてよ。ここ殺人現場みたいになってるからね」

「大丈夫よ。後片付けは理事長がやってくれるわ」

 

 雇い主であり操者でもある理事長をこき使ってるー。そんな姉さんも素敵。

 

「さすがマサキ、幼女になっても最高に可愛いわね」スリスリ

「そんな俺で綱引きした人がおるんですわ」

「誰よその不届き者は!見つけ次第斬首ね、さらし首よー」

「鏡を見て下さい」

 

 姉さんは俺を"抱っこ"して"おんぶ"して"たかいたかーい"して"頬ずり"している。

 子供のようにあやされてしまった。

 姉が幸せそうなので、しばらくなすがままです。

 赤ん坊だった頃にも、きっと、こうしてくれていたんだなあ。

 頬ずりし終わった姉さんは次の行動に・・・い、いかん!

 

「ペロペロはやらなくていいです」

「えぇ、なんでよー」

 

 間一髪、姉さんの腕から脱出する。

 この姉、まーたペロペロしようとしたよ。そう何度もやられて堪るかい。

 ペロリストは愛バたちで間に合ってまーす。

 

「もう俺が嘘付じゃないってわかってるよね。舐める必要なし!」

「そんなぁ。ちょっとだけだから、ブチャらしてよ。お願い!」

 

 『頬舐め』を『ブチャる』って表現するのやめてくれませんか?

 初登場のインパクトが強いけど、ブチャラティはめっちゃカッコイイ男なんだぞ。

 

アリーヴェデルチ!(さよならだ)

 

 マサキはにげだした。しかしまわりこまれてしまった。

 

「知らなかったの?姉からは逃げられないのよ」

「ちっくしょー」

 

 よちよち歩きで自由への逃走を図り、いとも簡単に捕まってしまう俺。

 この体の不自由さを思い知った。何とかして体力と運動能力を取り戻せないものか・・・

 "ブチャる"のは勘弁してもらい、代替案の"ほっぺにチュー"で我慢してもらった。

 

「じゃあ、理事長室に行くわよ」

「はーい」

 

 姉さんに抱っこされ理事長室へ向かう。

 

 こんな感じで更なる試練は開始された。

 姉に運搬されながら、どうか何事もなく終わりますように、と俺は願うのだった。

 

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