深夜、きらびやかなネオンが灯る歓楽街。
薄暗い路地裏で一組の男女が相対していた。
「よう。金は持って来たか?」
「先に商品を見せて、話はそれからよ」
短髪を金に染め、いかにもチンピラという風体の男は客である女に声をかけた。
フード付きの上着とマスクで顔を隠した女は頷いて返答する。
声や立ち振る舞いから女はまだ年若いことが見て取れる。
変装じみた服装からやましい事をしている自覚はあるようだ。
男は着ている服のポケットから金属製の小箱を取り出し中にある商品を見せる。
小箱の中には洒落たデザインのアクセサリが入っていた。
「ウマ娘用の耳飾りだ。ブローチやペンダント型もあるが、あんたにはコイツがいいだろう?」
「ええ……手に取っても?」
「もちろん、好きなだけ吟味してくれ」
耳飾りを手にした女は細部まで注意深く観察する。
裏返してメインの機械部品を操作し、液晶に表示される記号や文字、各種ボタンにつまみ部分の使い勝手も確認。
重要なのは見栄えよりこいつの性能だ。
「問題ないようね。いただくわ、支払いは…」
「現金オンリーで頼むぜ。スマート決済には対応してませーんw」
「わかってるわよ。ほら」
女は封筒に入った紙幣の束を男に手渡す。
受け取った男は札束をペラペラとめくり、軽薄な笑みを浮かべた。
取引成立だ。
「今からそいつはあんたの物だ、好きに使ってくれ」
女は男の方を
視線は手に入れたばかりの商品に注がれている。
「わかる……これはとてもいいもの……ああ早く試してみたい」
「一応言っとくが返品や交換には一切対応しないからなー」
「これで…これがあれば私はもっと……もっと上を目指せる。見てなさいよ……フフ、ウフフフ」
「聞いてないか……毎度あり~」
何事かを呟く女は、熱に浮かされたような顔つきでフラフラと路地裏を後にした。
男の言葉は一切耳に入っていないように見えた。
軽く手を振って女を見送った男は思う『ありゃダメだな』と。
取引を終えた男はタバコに火をつけ一服する。
吐き出した紫煙が夜空に漂う様を眺めていると、漆黒のスーツに身を固めた仲間が戻って来た。
スーツの男はガタイもよく顔もいかつい、修羅場をくぐって来た者特有の格を備えた人物だ。
「
「今、最後の一個が
「ふん…子供か……」
「お、子供だと罪悪感覚えちゃう系?」
「いや、客に大人も子供も関係ない。俺たちの大事な養分だからな」
「違えねぇww」
二人は今日の活動と成果を報告しあう。
この分だと所属している組織への上納金を差し引いても、自分たちの取り分はそこそこの儲けにはなっている。
「まったく、ルクス様様だな」
「奴の存在が世間の不安を煽り市場を拡大させた」
「商品の製造方法をばら撒いたのもルクスなんだろ?マジでリスペクトだわ」
謎の仮面野郎ルクスの登場で生まれたビジネスチャンスに裏社会は沸き立っている。
路地裏での会話はそんな場面の一端だった。
「しばらくはこの調子で稼げそうだな」
「いや、潮時だ。明日にはこの街を出て場所を変えるぞ」
「なんだ、商売敵でも現れたってのか?」
「北島組が動いている」
「ゲッ!あの武闘派どもと争うなんて御免だぜ」
「
「おいおいおい、阿修羅姫にサトノとくれば……まさかⅮか?」
「Ⅾだ」
『勘弁してくれよ~』とチンピラ男は天を仰ぐ。
この世には絶対に敵に回してはならない要注意人物がいる。
その中でも最上位に位置する存在が天級騎神。
そして昨今"要注意ランキング"を急上昇させ上位に躍り出た存在・・・それが"Ⅾ"である。
同類として語られる"阿修羅姫"に"雷帝"それから"デスラー?"も相当なものだと聞くが、Ⅾの悪評の前ではそれすらも霞んで見える。
血も涙もなく相手の最も嫌がる方法で、肉体的にも精神的にも社会的にも、なぶり殺しにするのが大得意だという。
「聞いた話じゃ、触手で散々弄ばれたあげく最後には丸呑みにされるって……ありえねぇ」
「ハッタリも多分に含まれているだろうが、被害者が揃ってPTSDを発症しているのは確かな情報だ。恐ろしい」
噂だけが独り歩きし、様々な憶測や妄想が入り混じった結果、Ⅾはとにかく恐ろしい化物だと言われており、今この瞬間にも大勢を恐怖のどん底に叩き落としている。
それとは別に、Ⅾを崇拝し褒め称える連中も少なくない。
信者たち曰くⅮとは、とても善良であり大層美しく女神の如く崇高な存在であるのだと言う。
その恐るべき力は悪人を裁くためにのみ振るわれる、神の御業なのだと・・・
どちらにしろ、裏社会に生きる者にとっては害悪でしかない。
「絶世の美少女だと言う噂もあるがな」
「それこそハッタリだろ?触手だぞ触手!美少女に生えて何の得がある?」
Ⅾの姿を想像して陰鬱になる二人。考えるのはやめよう、夢に出てきそうだから。
「逃げるか」
「それがいい。明日、大口の取引がある。それを最後におさらばだ」
「あーあ。この街、結構気に入ってたんだけどなー」
「観光する時間ぐらいならあるぞ。どこか行きたい場所はあるか?」
「マジで!じゃ、じゃあアレだ。あそこを見学してみたい」
「……はぁ……わかってるだろ。あそこに忍び込むのは不可能だ」
「中まで入ろうなんて思ってねーよ。外周をぐるっと回ってあわよくばウマ娘の学生に遭遇したい!手を合わせて拝みたい!」
「通報されるか制圧されるかの二択だな」
「制圧でお願いします!美少女ウマ娘に組み伏せられるなら本望よ」
テンションが上がったチンピラと違い、スーツの男は頭を抱える。
何が楽しくて騎神がうじゃうじゃいる場所を見学せねばならんのかと、深いため息をつくのであった。
この街のシンボル的建造物であり、憧れと畏怖の対象でもある魔窟。
「トレセン学園か……」
裏社会に生きる二人の男は肩を並べて夜の街に消えて行った。
翌日、学園の外周をうろつく怪しい二人組が発見され、たづなが眼力で追い払う一幕があったが誰も気に止めることがなかったと言う。
〇
幼女生活三日目。
トレセン学園のグラウンドで腕立て伏せをする幼女マサキの姿があった。
「ほらほら、頑張って。あと10回」
「ふんぎぎぎ……」
歯を食いしばり愛らしいと評された顔を歪めた姿からは必死さが伝わって来る。
そのすぐ傍では同僚のミオが『世話係』の腕章を付けてマサキを監督していた。
持参したアウトドアチェアに腰掛けたミオは時に厳しく時に適当に、マサキを叱咤激励している。
「はぁはぁ……お、終わった」
「次は腹筋だよ。ロリプニ腹から脱却せよ、目指せシックスパック」
「しゃぁー!やったるでー」
息を整えたマサキは仰向けに寝転がり腹筋運動を開始する。
「その調子だ。今、マサキの筋肉は新たな進化を遂げようとしている!」
「ふっ……ふっ……クロ……シロ……アル…‥‥ココ…‥‥俺を導いてくれ」
「情けない奴ッ!」
「なにがッ!苦しいとき愛バにすがって何が悪い!」
しょーもないやり取りをしながらも腹筋運動を終えたマサキは大の字になって荒い息を吐いている。
椅子から立ち上がったミオは肩や首を回しながら体を解し、マサキに手を差し出す。
「やる?」
「やる」
「ホントに?」
「やるったらやるの」
その手を掴んで立ち上がったマサキもストレッチを行う。
「手加減は?」
「もちろんしてよ。頼むから!」
マサキとミオ、両者互いにファイティングポーズをとる。
ミオの構えはオーソドックスな騎神拳、マサキの構えは騎神拳をベースにしながらも独自のアレンジが加えられた構えだ。
「ちょっと歩くだけでヒイヒイ言ってる幼女が、このアタシと組手をしたいとは生意気な」
「コツは既につかんだ。短時間なら問題ない」
マサキの体から覇気と幼女らしからぬ
やる気は十分、戦えるようになったのは本当らしい。
両者見合って・・・
「胸を借りるぜ。行くぞ」
「来いよ偽ロリ。遊んでやる」
一歩目の踏み込みから加速したマサキがミオに殴りかかる。
それを手のひらで簡単に受け止めたミオ。
思わず口の端を吊り上げたのは、今の一撃が予想以上に強かったからだ。
「いいパンチじゃん。楽しめそう」
「まだまだ、これからだ」
掴まれた拳をそのままに顔面狙いの蹴りを放とうとするマサキ。
させるか!とばかりに攻めに転じるミオ。
少女の姿をした教官と幼女の姿をした教官の組手は一撃ごとに激しさを増していくのだった。
「ヤンロン教官、あの…」
「あそこの二人は気にするな。適当にじゃれ合ってるだけだ」
「でも、なんか凄い事に」
「気にするなと言っている。今は自分自身を鍛えることに集中しろ」
グラウンドではマサキたちの他にも組手や修練を行う大勢の者たちがいた。
教官たちに引き入られた生徒たちだ。彼女たちは数人のグループに分かれて自由に戦闘訓練をしている。
マサキは万が一の回復要員として待機していたのだが、退屈なのでミオを誘って自分の修練を始めたのだ。
グラウンドの隅っこでやっているのは邪魔しないように配慮したつもりなのか?あれで?
二人の覇気と高レベルな格闘戦の応酬を繰り広げる少女と幼女がみんな気になって仕方がない。
その事にヤンロンはイライラしている。
ゲンナジーなどは『ほう』と感心した声を漏らしているが。
「なんだよあの動き、もう『お世話係』とか必要なくね?」
「そうでもない。見てみろ」
今回の修練に参加しているネームドたちもマサキたちの様子を伺っている。
自分たちの組手がすっかり止まってしまっているが、観戦モードに入っているのは皆一緒なので怖くない。
ヤンロン教官が深いため息をついているが少しかわいそうである。
「あれ?なんかまた休憩してない」
「マサキのスタミナが不足しているんだ。2、3分ごとに休憩を挟んでやっと戦闘可能と言ったところか」
「『すぐ疲れる』て言ってたもんね。それは治ってないんだ」
「貧弱な体に適応し戦う術を編み出した。でも、どうやって?」
「あ、あのね。マサキさん、全身を覇気で
目の良いネームドがマサキの状態を教える。確かに、よーく目を凝らすと薄っすら何かが見えて来た。
幼女の体を光の膜が覆っている。
「動かなくなった体を覇気で無理やり動かし、戦闘継続する術があったな。それに近しいものを感じる」
「フーン、ちょっと真似して……うげっ!こりゃ無理だ。覇気の消費量半端ない」
「休み休みでもやれるか普通?あ、あの人普通じゃなかったわ」
「アレを参考にしちゃダメだよ」
マサキの真似"クロース状態"はとにかく疲れる。
そして、全身にピッタリと覇気を張り巡らすことの難しいこと!
『ないわー』と皆が呆れる中、一人のウマ娘が小声で呟く。
「しかし、いい修練になるぞ」
「ブライアンさん本気!?」
「あいつに負けたままではいられないからな。今日はこのまま鍛える、誰か相手をしてくれ」
「自分を極限まで追い込む姿勢、なんてストイックなの!いいわ、付き合ってあげる」
ブライアンたち何名かのネームドたちはマサキの真似をして修練を開始した。
だが、彼女たちはしらなかった。翌日に地獄のような筋肉痛と疲労感に襲われることを・・・
後にこの"クロース状態"を維持したままの修練、通称"ドⅯ修練"は危険視され厳格なウマ娘以外には誰も挑戦しなかったという。
ミオと組手をしていたら結構時間が経っていた。思いのほか集中していたみたい。
今回の修練では大きなケガ人も出なかった。俺の出番ないのは良い事だ。
お、ヤンロンが騎神拳の形を実演披露している。一挙手一投足に気迫のこもった動きに生徒たちはウットリだ。
「(俺たちもいっちゃう?)」
「(いっちゃおう)」
ヤンロンの背後に音もなく忍び寄った俺とミオはヤンロンと全く同じ動きをする。
どや?イイ感じのシンクロ率でしょ!
三名の教官による一糸乱れぬ演舞はとても素晴らしい、一つ難があるとすれば・・・
少女と幼女が変顔をしている!?白目を向いたり出っ歯になったりしゃくれたりとレパートリーが豊富だ。
完全に見ているものを笑わせに来ている。
そのうち飽きたのかブレイクダンスや組体操までやり出す始末。
「そこの馬鹿ども!何をやっている!」
笑いを堪えたり吹き出す生徒たちの様子で、集中していたヤンロンもさすがに気付いた。
「私は嫌だったのに、マサキにやれって強要されました!」
「あ、てめぇ!自分だけ」
「マサキーー!こっちに来い、いつも以上に説教してやるぞ」
「何で俺だけ?キャー!パパが怒ったーー!」(≧∇≦)
「パパじゃないと言ってるだろ!!」
逃げ出した貧弱幼女はアッサリ捕まりましたとさ。無念である。
ミオは『私は無実』みたいな顔をして他の教官たちの輪に混じっている。裏切者め!
「終わるまでこいつを見ておいてくれ」
「ハーイ。お安い御用デス」
「マサキさん。こっちで大人しくしていましょうね」
ヤンロンは自身の愛バであるエルコンドルパサーとグラスワンダーを俺の監視につけた。
エルに抱き上げられて逃げるに逃げれない。
ヤンロンは愛バに俺を託児して生徒たちの所に戻って行った。演舞の続きをやるのだろう。
「ムフフフ~。エルのこと、ママって呼んでもいいんデスヨー?」
「ママー!覆面とっていい?」
「ダ、ダメ!これはエルのトレードマークで…引っ張るなァァァ」
「コンドル仮面破れたりぃ!!」
「あら的確に本体を狙ってますね~」
「グラス、見てないで叱ってくだサイ」
「めっ!ですよ」デコピン
「痛ぁ!エルじゃなくてこの幼女を叱れよ!!」
覆面で遊んでいたら『めっ!』されてしまった。
すまんすまん。エルに出会ったら覆面をいじらないと気が済まないのよ。
素顔は美少女なのに勿体ない。
覆面がエルにとって自分を勇気づけるお守で手放せないのは知っているが、執着がすごいな。
「そのマスク何着ぐらいあるの?」
「10セットぐらい常備してマス。もしかして欲しいデスカ?マサキがどうしてもって言うなら一つぐらい譲っても」
「抹茶パフェとほうじ茶パフェ、どっちにするか悩みますよね」
「店によっては黒ゴマやらきな粉もあったりするよな。この間、愛バたちと行った店なんて━━」
「興味なしデスカ!」
俺とグラスは"和カフェ"や"和スイーツ"好きという共通点がある。
気になるお店やおすすめメニューの話で盛り上がったり情報交換したりするぞ。
今度また仲の良い奴らを誘ってお店に行こうな。
「グラスばっかりズルいデス。美味しいメキシコ料理のお店ならエルだって知ってマス」
「俺、辛いの苦手なんだよな」
「辛くないものありまってば!ブリトーなんて、とろとろのチーズが糸を引きマース」
「何それメッチャ美味そう!」
「罠ですよ。マサキさんが食べようとした瞬間に激辛チリソースをぶっかけるつもりです」
「なんと卑劣な!?」
「そ、そ、そんなことしまセン!」
「私の納豆を真っ赤に染めた奴が何を言う」
「前科ありかよ」
「あの時はすみませんデシタ!美味しいから良かれと思っテェェ!ただ仲間が欲しくテェェ!」
激辛料理の良さを共有したいならシロを誘ってみたらどうかな?
あいつたまに『刺激がほしいです』とか言って辛い物を食べているからな。
エルは許しを請いながら俺をグラスに差し出した。抱っこ交代デース。
俺を受け取ったグラスは柔和な笑みで見せてくれる。はいカワイイ!
ふむふむ。ラテン系もいいが、大和撫子もいいですな!
「でも、グラスはアメリカ生まれのアメリカ育ちデスヨww」
「うそやん」
「ふふふ、バレてしまっては仕方ありません。そう!私は日本を愛してやまない米国産ウマ娘だったのです」
なんだってー!グラスは日本びいきの面白外国人枠だったのか。
綺麗な所作で和食を召し上がり緑茶で一服している、あのグラスが?・・・意外!
「英語はもちろんペラペラ、USJやコストコに行くとホッとします」
「
「指がつるほど練習しました」
「ハンバーガーもピザもガッツリ食べてマース」
「事あるごとにコーヒーを飲み、コーラは特大サイズが基本」
「うわーとってもアメリカーンだぁ!!」
「お恥ずかしい限りです///」
偏見だけど、ジャンクフードのドカ食いはアメリカっぽいと思ってしまう。
「生まれや育ちがどうだろうと、俺はグラスに宿る大和魂を信じるぜ」
「マサキさんなら、そう言ってくださると思っていました」
「好感度上がった?」
「はい。大きく上昇しましたよ」
「むー、二人の世界が妬ましいデス。エルの好感度も上げてくださいヨ~」
「その覆面似合ってる。めっちゃカッコイイ」
「えへへ、それほどでもありマス!よくわかってるじゃないデスカ」
「チョロいなあ」
「安定のチョロカワですね」
感謝と相手を褒める言葉は口に出して伝えましょう。
誰だってそうされると嬉しいからな。みんなで幸せになろうよ~。
「そういえば青龍と白虎は?今日は姿が見えないけど」
「テスラ研で定期検診中デース。夕方には迎えに行きマスヨ」
超機人は未だに謎多き半生体兵器。検査とメンテナンスは欠かせないのだ。
「リュウちゃんもトラちゃんも、今のマサキさんをすごく気にしていましたよ。帰って来たら是非、遊んであげてください」
「オッケー。その時は背中に乗せてもらおうかな」
「主人のエルたちより懐いているのが複雑デス」
「あの子たちによると、マサキさんは特別なんだそうです」
おやつ代わりによく覇気をあげているから、それ目当てかな。
超機人をすっかり餌付けしてしまったようだ。
二人と会話しながら神核のチェックをしていく。
うん、大丈夫そう。
エルと比べグラスの神核はすごく解りやすい、細部まで把握できる気がする。
ネームドの中には俺の覇気との親和性が特に良い子が何名かいる。グラスもその一人だ。
「相性というヤツなのか」スリスリ
「くすぐったいです」
「エルのおぱーいをスルーして、グラスの胸で満足しているだと……」
「なんか落ち着くんだよねー」
「マサキさんを抱っこしているとほっこりします」
「ああ、二人が縁側で日向ぼっこする老夫婦のような顔をしてマス」
「待てぇい!!グラスと夫婦になりたいなら、僕を倒してからにしてもらおう」
来たのかヤンロン、急に現れたと思ったらめんどい事言い出したな。
「演舞はもう終わったのか?」
「今回の合同修練は終了したので皆は解散している。それよりもマサキ、僕の愛バを誘惑するとはいい度胸だな」(#^ω^)ピキピキ
「ふぉっふぉっふぉっ、良かったですのうグラス婆さんや。この若僧はいっちょ前に嫉妬しておるようじゃ」
「もうお爺さんたら///年甲斐もなく照れてしまいますね~」
「ヤンロン、このボケ老人どもは放っておいてエルと結婚しまショウ」
「い、今はそれどころでは」
ヤンロンの奴、エルに迫られてタジタジじゃないか。
「いいのか?あんなこと言ってるぞ」
「相思相愛ならば祝福しますよ。誰と夫婦になるか決めるのはヤンロンさんの意思です」
「アッサリだな。嫉妬渦巻くドロドロ劇を期待したのにー」
「エルに負けるつもりは毛頭ありませんが」ゴゴゴゴ
「静かにキレていたのね。あ、腕に力がこもって…グラスさんや、俺がバラバラになる前に抱っこ解除してもらっていいっスか?」
グラスに本気で絞め付けられたら俺の幼女ボディがもたないぞ。降ろしてオロシテ・・・
「エルは学生結婚する覚悟もありマス。学園で挙式するのいいカモ」
「在学中はマズい!せめて卒業してから、マサキ!お前のせいだぞ何とかしろ」
「ふふ、うふふふふふ」ぎゅ~
「助けてタス…ケ……テ」( ゚Д゚)
失神しかけたところをミオによって救われた。
積極的なエルを相手にしていたヤンロンは役立たずでした。
式には呼んでよね。
〇
仕事が一段落したら食堂で休憩をとるのが日課になりつつある。
スぺとスズカが食事をするというのでご一緒させてもらえることになった。
「バラバラにならなくてよかったですね。あ、これおかわりで」
「まったくだ。まだ食うのかよ」
「スぺちゃん。こっちも美味しいわよ」
「そうやって、スズカが甘やかすからアカンのや」
「わーい、いただきます。もぐもぐむぐむぐもっ、がっがっがっもにゅ、ズルズルズル~、クチャッくちゃっ」(´~`)モグモグ
「スぺちゃん、咀嚼音が非常に汚いわ!でも、可愛いから許す」
「このテーブルだけ一人大食い選手権…うぷ……見てるだけで吐き気が」
俺とスズカは既に自分の分を食べ終えている。
未だテーブルに広がる数々の料理は全部スぺが注文した物だ。支払い大丈夫か?
厨房はたった一人の生徒のために大忙し、時々『うおおおお!』と料理人たちが自らを鼓舞する雄叫びが聞こえてくる。
オグリがベルゼブブだとしたら、スぺはアバドンだな。
食って食って食いまくって世界滅ぼす系の悪魔たち、迷惑極まりないわ。
アバドンは勝手に食っていたらいい。それよりも・・・
「スズカさんや食後に幼女を抱っこしてみないかね?」
「散々バカにした貧乳族の私に抱っこをねだる……一体何が狙いですか?」
「つべこべ言わずにやれよ!幼女な俺は甘やかしポイントが減ると死ぬんだぞ!」
「唐突にキレて押し通そうとしないで」
「もぐもぐ…スズカさん、抱っこぐらいいいじゃないですか、もっきゅもっきゅ…別に減るもんじゃないし、ぷはぁ~」
「食べながらしゃべんな」
スぺに言われてスズカは渋々承諾してくれた。
とりあえず膝に座らせてもらおう。抱っことは違うけどスズカは後ろから抱きしめてくれる。
これだけくっ付いていれば神核チェックもできらぁ。
「もう……セクハラしないでくださいよ」
「俺にセクハラされるぐらいの女になってみろよ」
「どこからも上から目線!?」
「撫でたまえ」
「偉そうなロリですね。ぐびっぐびっゴクゴク」
「うわぁ、どんぶりで味噌汁飲んじゃってる」
「味噌汁じゃないわ。よく見て、アレはかつ丼よ!」
「飲むな!ちゃんと噛めよ!一気飲みはマジでやめろ」
「ズズッズズズズズズズ~」
「「
かつ丼を飲むな!そして啜るな!
北海道のお母ちゃん様・・・よく噛んで食えってスぺに教えなかったのですか?
見るに堪えないので姿勢を変えて目を逸らそう。振り向くとそこには壁が・・・
「壁?」
「胸ですよね!わかってまーす。わーい、スズカめっちゃいい匂いするんじゃー」
見上げると青筋を浮かべたスズカさんがそこにおったんですわ。
「グラスさんにできることは私にもできますけど、試してみます?」ギリギリギリ
「ひぃぃ潰される。お助けー」
幼女プレス機と化したスズカの腕がゆっくりと狭まってくる。
本日二回目、逃げ場のない恐怖はすごかったです。泣いて許しを請いました。
やぶ蛇で怒らせなければイイ女のスズカさん。
文句を言いながらもしっかり甘やかしてくれるので、会話も弾むってもんよ。
「この前、隣町の激坂を往復中に足がつりかけました」
「気を付けろよ。スズカはただでさえ無茶するから」
スズカは走っていると周りが見えなくなる傾向がある。
自身の疲労も現在位置も関係ねぇ!と、ばかりにかっ飛ばすからな。
「早朝に一人で走っていたら結構なピンチだよ。そういう時に限ってスマホを忘れるとかな」
「逆立ちで走って帰ろうかと本気で悩みました」
「新たな妖怪の誕生秘話」
逆立ち猛スピードで走るウマ娘とかホラーでしかない。夜道で見たら漏らすわ。
スズカと雑談していると、ようやくスぺが食べ終わった。
積み上がった食器もホラーでしかない。
「ふぅ……ごちそうさまでした。マサキさん、私も抱っこしてあげますよ」
「大丈夫?その腹が落ち着くまで待ったほうが」
「腹八分目に抑えたので平気ですよ。げっぷぅ!」
「ゲップしてるけど?」
「平気です。さあ、スズカさんヘイパス!」
スズカを見るとやれやれといった感じで首を振っている。本当に大丈夫なんだろうな?
スズカから俺をパスされたスぺ、丸々と膨れた腹がこの上なく邪魔だ。
ボテ腹の上に座るような恰好になったよ。
「頼むからゲロすんなよ」
「せっかく食べたご飯に失礼ですから、リバースなんて絶対にしません」
「妊婦に抱っこされているみたいね」
「今こいつの腹に詰まっているのは赤子じゃなくてメシだけどな」
「でへへへ、褒めてもゲップしか出ませんよ」
「褒めとらん」
太鼓腹スぺの神核チェックも終了した。今日も順調順調~。
「あ、スぺちゃんとスズカさん。それに」
「どうも俺です」
「わー、マサキさんだ。抱っこさせてー」
「待て待て、順番にお願いします」
駄弁っていると他の生徒たちがわらわら集まって来た。ネームドたちの姿も見える。
こいつはいい。神核チェックの大盤振る舞いと行こうじゃないか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
疲れた。
最初はとても楽しかったはずなのに、生徒たちに揉みくちゃにされすぎて疲れた。
猫カフェで労働に勤しむ猫たちの気持ちが少し理解できた気がする。
「ぼぇー……」
「マサキさん。ぐったりしてます」
「どうする?こんな時に限ってマサキの愛バは留守にしているし」
「ちょっとかしてみい。よっと」
また誰かにパスされた・・・お?なんだこれ。
「抱っこ上手くね?ストレスが緩和されたぞ」
「実家におるチビたちのめんどうを見てたのはウチやからな。どや?慣れたもんやろ」
「ヒュー!タマちゃんが来てくれたぜ」
タマモクロスの抱き方は本人が言うように手慣れたものだった。
体の支え方と揺らし方どれも絶妙なり、非常にリラックスできるのだ。
他のネームドと違い、弟や妹の実践で培った経験値の差が如実に出ている。
「これは"抱っこ上手ランキング"上位に食い込むこと間違いなし」
「なんや、そんなランキングがあったんか。一位が気になるところやな」
多くのネームドたちを抑えて現状一位を独走中なのは・・・
「ゴルシだな」
「「「「私たちアレに負けたの!?!?」」」」
『納得いかねぇ!』と抗議の声が上がる。
気持ちはわかる。でも、あいつ何でもそつなくこなすんだよ。
奴に抱っこされている時の安心感はマジ半端ないから、愛バと同等レベルだから。
「フッ、ウチもまだまだってことやな。これからも精進せなアカン」
「やれやれ。トレセンは育児レベルを競うところじゃないのに」┐(´∀`)┌ヤレヤレ
「オイッ!誰のせいでこうなったと思ってんねん」
タイミングばっちりのツッコミをもらって嬉しいぜ。
ところで・・・
「なあ?あいつはどこにいるんだ。というか、何で俺の所に来ない?」
「ん?誰の話や」
「俺が幼女になったと知ったら、すぐさま突撃して来そうな奴いるじゃん」
「・・・・」
「母性が有り余って『でちゅね遊び』とか考案しちゃうスーパーな彼女だよ」
「「「「・・・・」」」」
タマちゃんもみんなも一斉に目を逸らしたのは何故?
あいつならランキング一位も夢じゃないだろ。
そう言えばオグリにも会っていない、何かトラブルでもあったのか。
一方的思念通話で呼びかけてみようかな。
「やめとけや」
「え?」
「悪い事はいわんからやめとけ言うとるんや。これはお前のためでも━━」
ブーッ!ブーッ!ブーッ!
タマの台詞を遮るようにしてけたたましい警報音が鳴り響いた。
何?敵襲?こんな音始めて聞いたぞ。
『緊急警報!緊急警報!』
『生徒指導室に隔離していた生徒が脱走しました』
『彼女の目標は間違いなく今話題の
『保護対象の付近にいる生徒は警戒態勢を強化してください。戦闘になった場合は━━』
脱走?なんか怖いこと言ってるけど、この学園の闇というかヤバさの深淵はどこまで・・・
「今の聞いたな!予定通りマサキを守るで」
「「「「やるぞー!おおー!」」」」
「勝手に盛り上がってるところ悪いけど、一体何が始まるのか説明してよ」
「タマ先輩!来ます」
「ちっ!想定よりも早いな」
来るの?何が来るの?
皆が警戒を強める中、俺は事態にまったくついていけない。説明求む!
食堂の入口に誰かが来て・・・あれは・・・
「オグリ?」
負傷したのか肩を押さえ、ふらつく足取りでオグリキャップが食堂に入って来た。
腹ペコでここに来た感じではなさそうだ。
「すまない、タマ……ぐふっ…!」
力なく倒れ伏すオグリ。
オグリは轟級騎神でクエスト達成率も優秀な学園を代表するウマ娘の一人だぞ。
そんな実力者が誰にやられた!?
「救護班~!誰かーオグリの治療をしてやってくれ」
「俺がいるじゃん」
「せやったな。頼めるか?」
「もちろん、それが仕事だからな。さっとくヒーリングを━━」
「アカン!?治療は後回しや、下がるでマサキッ!」
「うぇあ」
治療のためオグリに近づこうとしたのだが、タマに首根っこを乱暴に掴まれてしまう。
そのまま後方の仲間たちがいる所まで飛びのいた。
タマや他のネームドたちは俺のことを隠すようにしてくれる。
また誰か来た。
「見ぃつけたぁ。こんな所にいたんですね~」
ねっとりとした侵入者の声に戦慄が走る。俺もなんかブルっちゃった。
皆一様に警戒態勢を強める。
「タマちゃんもみんなも意地悪なんですから、私だけ除け者にするなんて……」
「何の用や?クリーク」
現れたのは"抱っこ上手ランキング"一位を目指せる逸材、スーパークリークその人であった。
どうも様子がおかしい、今のクリークにはとてつもない迫力がある。
有り体に申しますと、鳥肌が立つほど怖いのです。
「留守のたづなさんに代わり、オグリちゃんを配置したまではよかったですね。それでも私の障害足り得ませんでしたが」
「見張りを全員突破してオグリも倒したやと?何パワーアップしとんじゃボケェ!」
「全ては私の計画通り……タマちゃんたちは最初から手のひらの上」クスクスッ
「まさか、マサキが幼女化した初日に大人しく捕まったんは……」
「マサキさんのガードが堅いのは最初から読めてました。だから、私は待ったんです。たづなさんと愛バ四名が学園にいない時を……そして『でちゅね』を禁欲することにより私の力が何倍にも膨れ上がるその時をねぇ!!」
「なんちゅー奴や。そこまでして…」ゴクリッ
「ええ、私は本懐を遂げる。一目見て気に入った『ロリマサキさんとでちゅね遊び』をする!夢を叶えるために、ここまで来たの!」
「あー、そういうこと」(´・ω・`)
クリークの目標が俺だったのは理解した。そして思った・・・・・・しょーもな。
一触即発の空気を醸し出す皆には悪いけど、争う理由がしょうもなさすぎる。
俺を決死の覚悟で守ろうとしてくれるネームド、その一人に小声で話しかけることにした。
なんだお前スぺじゃねーか、もう腹が引っ込んでる。どういう内臓しているんだか。
「俺が出て行けば万事解決じゃね?ちょっとぐらいなら『でちゅね遊び』に付き合ってもいいぞ」
「ダメですよ。今のマサキさんがクリークさんに捕まったら、少なく見積もっても一日中解放されませんよ?そうなったら……」
クリークとでちゅね➡解放されない俺➡姉さんor愛バの帰還➡おいコラ何やっとんじゃワレ!!➡いてこましたるわー!戦争じゃぁぁー!!!
「こらアカン!」
「でしょ?だからマサキさんは私たちの後ろで大人しくしてましょう」
「これだけの人数ですもの。守り切ってみせます」
スズカもいるじゃん。呆れて帰ったのかと思ったぜ。
ふざけているようで、この状況は学園を巻き込んだ戦争に発展しかねない。
そりゃあ皆が緊迫するはずだよ。軽く考えてごめんちゃい。
「やっぱり。そこにいたんですね」二ヤァ
ひぃ!向こうから見えていないはずなのに、俺の位置がバレた!?
「マサキを守れぇぇーー!」
タマの叫びでネームドたちが身構える。
それを意に介さず、クリークは前傾姿勢になり走り出した。
「え!ちょ」
「うそ、早ッ!」
「止まらない」
この覇気、
今年度から必修技能に追加された
熟練を感じさせるこの速度・・・禁欲で一時的にリミッターが外れていると言っていたが、本当にそれだけか?
「どいてください…邪魔です」
「「「「のわぁぁぁーーー!!」」」」
クリークは速度を維持したまま軽く手を払っただけに見えた。
おいおい、今のでタマと勇敢(無謀)なモブが数人まとめて吹っ飛んだぞ。
秒殺されたけど頑張ってくれたタマちゃんに敬礼!
俺の所まで一直線に突き進んだクリークは跳ぶ。俺に手を伸ばしながら・・・うわーやっと会えたみたいな顔をしてるー。
「ああ、私の大切な・・・・さあ、ママと一緒に帰りましょうね~うふふふふ」じゅるり
なんて残念なママなんだ!二日酔いになったうちの母さんといい勝負だ!
「「させない!!」」
スぺとスズカが割り込んだ。ええぞええぞ!やぁーっておしまい!
「二人だけで今の私を止める?覇気を超えた未知のパワー"でちゅね
「嘘でしょ!?」
「そんな!」
スぺスズのコンビが回転しながら飛ばされていった!?今のは合気道?
一瞬で二人の呼吸を読みとり完全に合わせた・・・だと。
スーパークリーク、彼女もまた怪物か!
くっ!俺はこのまま母性という名のでちゅね海に沈むしかないのか。
「そこまでだ!全員止まれ!」
鋭く凛とした声が食堂にこだました。
その声で俺に王手をかけようとしたクリークも他の皆も動きを止めた。
「来てくれたのね、グル
「なんだその呼び方は!この騒動の元凶はまたしても貴様だろ」
生徒会副会長のエアグルーヴの登場だ。ナリタブライアンも隣に控えている。
ルドルフは・・・来てないか。
「ふぇぇ」
「私の娘を泣かすなんて、副会長さんでも許しませんよ」
「いい加減にしろ。そいつはお前の娘ではなくアンドウマサキという変態だ」
失礼しちゃうわ!娘でも変態でもないぞ。
「何があったかは推測できるが、詳しく説明してもらおうか?」
「母親から娘を引き離す非道な事件が起きたんですよ~」
「違うやろ!」
「クリークは黙っていろ。説明してくれますかマサキ教官殿?」
「簡潔に言うと、でちゅね力が暴走した」
「呆れるほど意味不明な単語を使うな!」
でちゅね力は一般には広まっていない。これからも多分一生流行らない。
グル姐さんと、ついでにブライアンにもアレコレ説明した。
二人ともため息をついていた気もするが・・・俺が悪くないのわかってくれたよね?
生徒会の介入で今回の騒動は終わりを告げたはず。
「ウフフ……いい子、いい子~」ナデナデ
「結局捕まっとるやないかい!」
俺は今、クリークに抱きしめられ撫で回されている。
クリークが禁断症状で暴走することを危惧したグル姐さんは、俺を彼女に売り飛ばしたのだ。
ブライアンを残しグル姐さんは足早に食堂を去って行った。こめかみを押さえていたのが気になるな。
医務室に来てくれたら頭痛に効くヘッドヒーリングしてやろう。
スぺとスズカ、他の皆も俺がクリークに甘やかされるのを『何だかなぁ』という表情で見ている。
「クリークもしばらくしたら飽きるやろ。もう少しだけ付きおうたってや」
「マサキさんは本当にいい子ですね~。それでいて恐ろしく可愛いなんて……」ナデナデ
「こいつが可愛い?……よくわからんな」
「ハハハ、カイワレ咥えたウマには俺の良さがわからないか」
「豆苗だと言っているだろ」
「どっちでもいいわ!」
「ブライアンちゃん、もしよかったらおしゃぶりを咥えてみませんか?」
そっとおしゃぶりを差し出すクリーク。そんなもん常備するのやめて。
「全然よくない」
「(アカン、ちょっと見たいと思ったわ)」
「(右に同じ。姉のヒデさんにも見せたい)」
「(マサキさんとタマちゃんの期待をヒシヒシと感じます。ブライアンちゃんには力づくでも!!)」
「((やめて!!))」
さてさて、愛バが帰って来るまでにはクリークを満足させないと。
ブライアンにも抱っこしてもらって、逃げたグル姐さんは後回し。
クリークの神核・・・問題ない。この子の覇気も馴染むなぁ。
「ん~?私の顔に何かついてます」
「美しくも可愛い顔面パーツがついてるぞ」
「フフ、お上手ですね~」
更に馴染む、俺を信じてくれている証拠。これ以上は気付かれるので深入りは禁物だ。
神核チェックはここまでにしよう。
ここからは真剣にクリークおぱーいを堪能するぜ!いーーっやっほぉっ!
「マサキ教官!!マサキ教官はいらっしゃいますか!!」
何だね騒々しい!今、いいところなんだよ、邪魔しないで!
食堂に息を切らせたながら女性職員が駆け込んで来た。
おや?この人はウエンディ教官の助手をしている方では?
おぱーいに持って行かれそうな意識を戻して紳士的に訊ねる。
「ここにいます!その様子、緊急事態ですか?」
「生徒が急に倒れて意識不明に」
「クリーク!」
「はい。行きましょう」
「場所は練武場です。どうかお急ぎを」
俺の意図を汲んだクリークが駆け抜ける。速いな、めっちゃ速い。
もしや俺の愛バ並み?すげぇ。
緊急時なのでパルクールも加速技も有りで走る。それなのに抱っこされた俺に一切の負担がかからないとは。
なるほど、走りながらさりげなく覇気の防護膜を展開してくれているのか。
「やるじゃん」
「いえいえ。それほどでも~」
現場にはすぐ到着した。何故かブライアンとタマ、他の暇ウマたちもゾロゾロついて来ていた。
倒れている生徒は三人。意識が無いのは遠目にもわかる。
ウエンディ教官や治療術を使える者たちが必死にヒーリングをかけているが、芳しくないようだ。
クリークの腕から飛び降りて患者の下へ。
「ウエンディ教官!」
「マサキ教官!ああ良かったわ」
「マズい。
「代わります。場所を開けてください」
治療の前に覇気でサーチをかける。その間にウエンディ教官たちは状況を説明してくれた。
練武場での修練、複数人同士の模擬戦中にチームを組んでいた三人が突然倒れたのだという。
原因は不明、模擬戦中のケガや病気の兆候もなかったらしい。
「この子たちの操者は?」
「いません。ただ、この三人は普段からチームを組んでいて、ここ最近は大変目覚ましい成長を見せてます」
倒れている子たち三人がリンクした形跡がある。
操者がいないのだとすると、デバイスを使っているはずだ。
あった、この子が着けている耳飾りがリンクデバイスだ。すごく嫌なものを感じる。
原因は十中八九こいつだ。何とかして外さないと。
「待ってください。そのリンクデバイスはまだ稼働中です。無理に外そうとすれば装着者に何が起こるか」
「大丈夫、任せてください」
無理に外すとマズいのはわかっている。というかコレ、普通に引っ張っても外れねぇぞ。
デバイスの方が持ち主から覇気を吸い取って、三人に無茶な覇気循環を強要している!?
誤作動にしては危険すぎる。とんだ欠陥品だなオイ!
まずはヒーリングで体の負担を減らし痙攣を抑える。
それから原因のこいつを・・・あー、力づくで壊そうとすれば、持ち主ごと道ずれとかやらかしそうで怖いな。
俺の覇気を流してスイッチを切れないかな?シュウみたいにスマートにはやれはしないが、できうる限り慎重に精密に・・・
神核を探るのと一緒だ、中枢まで覇気を伸ばしてその大元を停止させるんだ。
止まれ、止まれ、止まれって言ってんだろ!
自分の覇気がデバイスの制御装置に干渉して機能停止に追い込んだのを確認。
ははは、このポンコツめ!俺の勝ちだ。
「よっしゃ、外れた。後はちょっと強めにヒーリングをかけまして」
バスカーモードレベル1発動。
ホイミじゃ間に合わないから、ベホイミをかけるイメージだ。
三人同時だとベホマラーになるのかね。
俺の治療風景にウエンディ教官たちが唖然としているが無視して集中する。
バスカー中はキラキラ覇気粒子が出ちゃうので、そっちに目が行っているんだろう。
眩しくしてごめんなさいね。
三分ほど続けていると痙攣も治まり三人とも顔色が良くなってきた。
「マサキ教官?」
「もう大丈夫です。しばらく休むことになるでしょうけど」
「救急車来ました!こっちです、こっち」
「ありがとうございます。私一人では対処不可能でした。やっぱりマサキ教官は頼りになるわ」
「いえ、俺が来るまでウエンディ教官が処置してくれたおかげですよ」
手配した救急車まで三人が担架で運ばれて行くのを見送って、やっと安心できた。
何日か入院することになるが大事には至らないと思う。
付き添いにはウェンディ教官が行くようで、俺は学園にいてほしいんだと。
美人な同僚にものすごく感謝されてしまった。気分がいい!
「今の何やったん?めっちゃ光っとったで」
「三人同時のヒーリング、それもあんな強力な……」
「いい子すぎて怖いですね~。そこがまた魅力ですけど」
痙攣を起こしていた生徒から外した耳飾り型のリンクデバイス、コレどうしようか?
「面白い物を手に入れたようだね。ミニカピバラ君」
「いたのかタキオンか、気付いていたけど面倒だから無視してたわ」
「私ならそのデバイスを解析できるがどうする?」
「どうもしない。デバイスに詳しい奴なら他にもあてはある」
シロやシュウに頼めばバッチリ調べてくれるはず。
「私に頼むのが最短最速最良の選択だと思わないかね?」
「思わんな。お前に頼んで貸しを作るの嫌だしー」
「悠長な事を言ってる間に新たな被害者が出るかもしれないよ?君の判断が遅れたせいでね」
チラチラ見て来るタキオンがウザい。
要は俺が回収したリンクデバイスの解析をしたいから"寄越せ"と言っているのだ。
「自信があるのか?」
「今日中に全てを解析し、明日にはカピバラでも解るようにまとめた詳細なレポートを提出すると約束しよう」
「わかった、これはお前に預ける。即行で調べあげて学園に報告しろ」
「任せたまえ。くふふ、暇つぶしにはちょうどいい案件だ」
「片手間じゃなくて真面目にやってくれ」
俺からデバイスを受け取ったタキオンはニヤニヤしながら研究室に戻って行った。
「さあ、生徒諸君は解散だ。ここは教職員に任せて、授業に出るなりクエストに励むなりしなさいな」
手を叩きながら解散を指示すると、事の成り行きを見守っていた生徒たちは小声で会話しながら練武場を後にして行く。
幼女の俺がどこまで役に立つかは知らんけど、教職員たちと協力して後片付けをしましょうかね。
「クリーク。ありがとな、すごく助かったよ」
「お礼はまた今度"遊び"に付き合ってくれたらいいですよ~」
「考えておく」
ここまで高速で連れて来てくれたクリークにしっかりお礼を言っておいた。
野次ウマたちには『散れッ!』と言っておいた。
生徒が病院送りになった事件が学園中に広まるのは早かった。
学園側はすぐさま調査委員会を組織して原因究明に乗り出だすことになる。
希望者にはカウンセリングを実施するなど生徒へのケアも手厚い対応をするらしい。
医務室に戻った後、治療を担当した俺も事後処理に追われることになった。
ともかく、クリークが暴走した件はコレで有耶無耶になることだろう。
しかし、あのリンクデバイスは何だったんだ?タキオンの腕を信じて待つしかないか・・・
〇
【修練中に生徒三名が突然のダウン!原因不明の症状に現場は大混乱】
【颯爽と駆けつけた幼女がヒーリングを施し、あっという間に治療完了!】
【なお、幼女は直前まで"でちゅね遊び"に興じていた模様】
女学生ネットワークの情報伝達速度をなめてはいけない。
校内新聞と公式ネットニュースの作成スピードは異常だと思うのは俺だけか?
午後には学園中で事件の話題が上がっていた。幼女のことはマジで忘れてください。
学外クエストに出張中の愛バたちにも伝わったようだ。
『マサキさんの活躍シーン拝見したかったです。録画とかしてませんか?』
『さすが私のマサキ!愛してる』
『でちゅね遊び!?誰とやったんのですか!私ともやってください!』
『ベホマラーかけた生徒に治療代請求しないの?北島組の取り立てマニュアルが有効だよ~』
この様なメッセージが送られて来たので『んばば』とだけ返信しておいた。
意味不明な言葉を送ることで相手が勝手に『忙しいのかな?』と解釈してくれるを期待しての返信だ。
スマホをしまい気持ちを切り替えてから教室の扉を開ける。
俺の授業は必修科目ではないのに今日も満員御礼のようだ。
「はい座って座って、授業はじめるよ~……ふぁお!?」
珍しい生徒の姿が目に留まったので変な声が出た。
疲れてるのかな?我らが生徒会長シンボリルドルフの幻が見える。
教室の中央席に陣取って俺をニコニコ見ているのだ。
「本物か…ゴルシが化けてるとか?」
「本物だよ」
「アルミ缶にあるミカン」
「ブフッww!」
定番のダジャレに反応したので本物認定。
多忙なルドルフがわざわざ俺の授業を受けに来た理由は何だ?まさか抜き打ち検査か。
俺がまともに授業をしているか、生徒会長自ら審査する腹積もりなの?
最近、いろんな意味ではしゃぎすぎたので上層部にクレームが入っていてもおかしくない。
キリュウインさんとか俺のこと悪く言ってそうだもんな・・・(´・ω・`)
「な、なぜ。俺のような奴の授業を受けるのでしょか?」ビクビクッ
「マサキ君の授業はとても面白いと聞いているよ。前から受講してみたくてね、それが今日叶ったという訳さ」
「そうですか、ははは」
どの選択授業のを受けるかは生徒の自由。
生徒会長とて例外ではない。ルドルフが俺の授業を受けても問題なし。
だが、それは建前で審査が目的なんだろう?俺の教官としての力が今試されている!
「マサキ、今日はどんなことを教えてくれるんだ?」
ターボが今日の授業内容を聞いて来る。
いつもはその日の気分で決めているが、今日はそうもいかない。
今から行う授業でルドルフに『素晴らしいですぅぅ!』と思ってもらわないヤバいのだ。
やってやろうじゃないの。優秀な彼女を満足させるハイレベルな授業のスタートじゃ!
「今日は東京大学理科三類(医学部)の過去問を解いてもらいます」
「「「「おい!!!」」」」
「ほぇ?」
「ほう」
偏差値77を誇る日本で最難関学部の問題を解けと言ってみた。
俺は問題文見ただけで吐きそうになったけどな!
大多数の生徒がツッコミを入れて来る中、問題のヤバさがわからないターボは首を傾げ、ルドルフは
どうです?ハイレベルでしょう?さあ、生徒たちよ。どうかレベルを落としてくださいと懇願するのだ。
これで仕方なく、生徒たちのために授業レベルを下げた俺を演出できるって寸法よ。
オホホホホ!
「お手本として先にマサキ君が何問か解いてみせてくれ」
「すみません無理ですごめんなさい!マサキ見栄張っちゃいましたーー!!」
「「「「だろうと思ったww」」」」
俺のくそつまらなメッキは即行で剝がされた。さ、さすが生徒会長やでぇ。
ちくしょう、始まる前から笑いものになってしまった。
「私がいるからといって特別な事をしなくてもいい。普段通りの授業を見せてくれないか」
「わかった、自然体でやってみるよ。どうしようかな……何かリクエストとかある?」
授業内容は生徒と相談して決める事もある。
フリーダムかつ突拍子もない提案が新鮮で結構面白いのだ。
これまでに採用された授業は、紙飛行機作り、昆虫採集、ブラッシング講座、セクハラギリギリマッサージ、ジョジョ立ち選手権とかだな。
「マサキ、あれだアレ…えーっと、チンチンについて教えてくれ!」
ターボォォォッ!!おバカ!てめぇ会長様の前でなんてことを抜かすんだ!
ネイチャたちは何やってんだ!監督不行き届きも甚だしい!そういうのは操者のリューネにでも聞いてくれや!
いや、違うんですよ。チンチンは授業で教えてませんってばよ。いつもこんな感じだと誤解しないで!
落ち着け、まだ慌てるような時間じゃない。幸いルドルフはチンチンのショックでフリーズしているのでまだ修正が効く。
挽回しろマサキ!卍解はメッチャしてみたい!
「チンチンとはフランス語で「乾杯」を意味する Tchin Tchin から名付けられた。バラの一品種である」
「おー、バラだったのか。マサキは物知りだなぁ」
「バ、バラ……そうか植物の話か…私はてっきり////」
「てっきりなんでしょうルドルフさん!あなたが想像したチンチンが何だったのか俺に詳しく教えてくれ!」
「あ、いや、君は酷い男だな////」
「セクハラやめろー!」
「会長を穢すな!」
「ダイヤちゃんたちにチクるぞ!」
ヒャッハ!うまくいったww
俺の博識さをアピールしつつ、ルドルフに羞恥プレイを仕掛けてやったぜ!
赤面するカイチョ―かわええ~。
これ以上やるとグル姐さんとかテイオーあたりにボコられる。愛バにも軽蔑されたらへこむ。
ホント何すっかなぁ。せっかく集まってくれた皆のためになる授業がしたいぜ。
そうだ!ルドルフもいることだしアレをやってみよう。
「この中でリンクを経験したことがある奴、手を挙げて」
教室にいる生徒のおよそ半数が手を挙げた。
「操者を介したリンクならどうだ?おー、少ないな」
更に問うと、手を挙げているのは数人にまで減った。
今はリンクデバイスを使った方法が主流だ。わざわざ人間と契約するのは時代遅れと言う奴もいる。
しかし、何事も経験だよな。
「今日はみんなに戦術リンクを体験してもらいます」
「おお!……いや、それって大丈夫なの!?」
「私、リンクデバイス苦手なんだけど……」
「心配ご無用。この俺が未経験者も安心安全なリンクをお届けするぜ」( ー`дー´)キリッ
「ふ、不安だ」
「最初の一人目行ってみよう!チケ蔵、君に決めた!」
「はい!」
授業にはウイニングチケット、ビワハヤヒデ、ナリタタイシンの三人組も参加していた。
ウザいくらい元気なチケ蔵を指名して壇上に手招きする。
何の警戒もせずひょこひょこ近寄ってきたチケ蔵を椅子に座らせて、俺はその隣に立つ。
「今から俺とチケ蔵でリンクしてみる。準備はいいなチケ蔵!」
「いつでもいいよー」
「いや、そんな簡単に言いますけど…」
「愛バでもない子のリンクするのは難しいというか、ほぼ不可能と聞きますけど」
と、思うじゃん?
チケ蔵と握手して、ワン、ツー、スリー!上手にできましたぁ!
視覚的にわかりやすいよう、ちょっとだけ覇気粒子を出して・・・。
こうすることでチケ蔵の体からも緑の粒子光があふれ出す。
生徒たちから『おおっ!』と驚嘆の声が上がった。
「どんな感じだ?みんなに教えてやれ」
「うーポカポカだよぉ。今なら何でもできそうな気がする」
「ね?安全でしょ」
「す、すごい。私にもできるの?」
「キラキラ~。これ全部がマサキさんの覇気…」
チケ蔵で安全性をアピールしたことでリンクすることへの不安を和らげる。
これでみんな参加してくれるかな?
「次、ヒデさんとタッちゃん。二人同時にやるとこんな感じ」
「久しぶりだな。この感覚は」
「随分と雑ね」
チケ蔵の次はヒデさんとタッちゃんの二人にリンクする。
軽く触れるだけで一発リンクよ。
「は、早すぎませんか?相手の神核に合わせた調整はいつやってるの?」
「前に一度でもリンクした奴には接続が容易なんだよ。あとは、なんとなく?フィーリングでやってると言ったらいいのかな」
「なんとなくって……」
初めてだとちょっと時間かかる。愛バなら一秒の半分もいらない。
今は四人で覇気循環をしている。本番はここからだ。
「次行くぞ次。どんどんリンクしちゃおう」
「え?それって」
「今日はこの場にいる全員でリンクするから覚悟しとけ」
「「「「は、はぁぁぁぁ!?!?」」」」
はあはあ言っても決定事項は覆りません。
教室にいる生徒は40人、俺を含めて41人でリンクしてみよう。
それが今回の授業じゃ。
「41人……いくらマサキさんでも無理ですよ」
「俺一人ではな。そこでルドルフの出番、だよな?」
「君が望むなら応えよう。ただし、私を笑わせてからだ!」
「難問が何問もある」
「ブホォッwww」
簡単に笑ったな。力を貸してもらうぞ、ルドルフ会長!
「皇帝の下へ集え、我が軍団よ!」
「キャー!素敵!抱いて」
ルドルフが決めポーズでかっこいいセリフを言った。
威風堂々とした態度にテンションが上がる俺。
この人、教室の真ん中で何やってんの?とか思ってはいけない。
今のはリンクを開始する前の呪文詠唱みたいなもんだ。
元々ルドルフはウマ娘でありながら仲間とリンク可能な希少能力者だった。
彼女のような存在がリンクデバイスの開発と発展に大きな貢献を果たしたともいえる。
修練の末に、ルドルフのリンク能力はベテラン操者を超える勢いで強化された。
手伝ってもらえれば数十人でのリンクも夢じゃない。
テュッティ先輩とヤンロンが率いる、チームリギルは12人の騎神を有する大所帯だ。
チーム全員をリンクさせる場合、操者の二人だけでは手に余る。
それを可能にしたのはルドルフの能力が仲介役を果たしているからだと、先輩から聞いたのを思い出したのだ。
今回はその力を利用させてもらおう。俺とルドルフが協力して41人のリンクを達成するのだ。
ルドルフと俺は手を繋いでリンク状態に入る。よしよし、これなら十分に行けそう。
「接触していた方がやりやすい。このまま全員手を繋いでいこう、目指せ41連結」
「本当にやるの?」
「マサキ君と私を信じてくれ、君たちには極力負担がかからないようにする」
「会長が言うなら……やってみます」
俺と仲のよりターボやチケ蔵たちネームドは嬉々として手を繋いでくれた。
まだ不安がる生徒はルドルフが説得して41人が手を繋いだ。
「しゃぁー!流すぜ流すぜー」
蛇口を捻り、ゆっくりチョロチョロ覇気を流して行く。
「ちょ、ちょっとづつでお願いします」
「うわっ!来た、何か来たーー!」
「何これ何これ、すんげぇ」
「みなぎってきた!」
俺に近い生徒から順々にリンクしていく。一人一人確実に接続だ。
やがて、全員にリンクが完了したのを確認した。よーし、成功だ。
生徒の力量を鑑みて少量の覇気を流すにとどめているが、大丈夫かな?
「気分が悪くなった奴はいないか?少しでも違和感を感じたら言ってくれ」
「大丈夫でーす。何かテンション上がって来たぁ」
「体が軽い。これがリンク……」
「ふぉぉ、マサキ教官とルドルフ会長に繋がっているなんて」
「気が高まる……溢れるぅ……!!」
初リンク状態に戸惑っている者が多いけど、体調を崩した生徒はいないようで安心した。
若干、情緒不安定になっている子もいる。リンク中はよくあることなので心配なしと判断しよう。
「あのー、キラキラはどうやったら出せるんですか?」
質問してきた生徒が言った通り、覇気粒子が出ている者と出ていない者がいる。
そこも説明しておかないとな。
「ああそれは━━━」
「アタシ知ってる!キラキラ粒子が出るのは"マサキさんが関係をもった相手"だけだよ」
「ブ――ッ!!」( ´3`)・;'.、・;'.、ブッー
吹いた。そしてリンクも途切れた。
チケぞぉぉーーー!!貴様何を言っているぅぅーーー!!誤解を招く発言もたいがいにしろや!
確かにね、以前覇気をドレインさせてくれた子や、俺の覇気と相性がいい子はリンク時に覇気粒子が放出されるけど。
言い方ってもんがあるでしょーが!
それだと、俺がネームドのみんなと"ぴょいってる"みたいに聞こえるんだよ、バカ―!
「それって、お手付きってこと?」
「やっぱりな」
「噂は本当だったんだ!」
「ヤリ○○」
ほら見た事か、粒子出なかった子(モブ)がヒソヒソしちゃってるじゃん。
何とかしてよカイチョ―!
このままじゃヤリ〇〇教官クビになっちゃうよ?
「誤解しているようだが、この粒子はマサキ君と良好な人間関係を築いたウマ娘の証だよ。やましい事はあまりない」
「ルドルフならわかってくれると信じてた!」
「あまり?……少しはあるって言ってるみたい」
そう!人間関係ですよ。決して肉体関係ではない!
ルドルフの機転により"お手付き疑惑"は多少なりとも解消されたと思うことにする。
そう思わないとやってられない。
「どうしたのマサキさん。元気出してよ」
「こやつめ!ハハハ」(#^ω^)ピキピキ
「ハハハ」
悪意なく俺を窮地に立たせたチケ蔵、のんきに頭を撫でてきやがる。
決めた、タッちゃんに泣きついてチケ蔵の尻を蹴り上げてもらおう。そうしよう。
『チケ蔵アウトー』てな感じでなぁ!!
今はまだ授業中、復讐の楽しみは後にとっておこう。
再度、全員とリンクを試みる。粒子が出ようが出まいが繋がっていることはハッキリと感じられる。
「今の感じをよく覚えておいてくれ。相性のいい操者とならもっと凄いことになるからな」
「「「「はーい!」」」」
これにてリンク体験終了だ。
皆、興奮冷めやらぬといった感じでリンク中に感じた事を話し合っている。
『すごかったぁ』『癖になりそう』『操者、真剣に探そうかな』
概ね好評なようでこちらも満足だ。
少し疲れたので休憩。今の内に抱っこという名の神核チェックを行っていく。
チケ蔵、ヒデさん、タッちゃん・・・三日間でかなりの人数を調べた気がする。
休憩と甘やかしで回復したので授業再開。ここからは真面目行くぜ。
「リンクの効果は絶大だが、いい事ばかりじゃない。デメリットも知っておいてくれ」
操者と行うにしても、デバイスで行うにしても、無理なく自身に合った覇気量を回すことが大事だ。
相性とか、操者の力量、リンク人数、細かい調整も含めると注意点はいっぱいある。
生徒たちには俺の知りうる限りの情報を教えておこう。
ちゃんとした知識があれば練武場で起こったような事件も防げたはずだから。
「リンクデバイスはお手軽だけど、違法改造されたものや海賊版には手を出すなよ。肝に銘じておけ」
「「「「はい!」」」
「操者選びは急がす焦らず!運命の相手が現れるのをじっくり待つのだ」
「「「「はい!」」」」
「売れ残っても俺は責任は取りません!」
「「「「クソがぁ!!」」」」
昨今は、結婚相談所ならぬ"契約相談所"もマッチングアプリもある。
ギルドでも常に募集しているから、本気で探せばいい相手がきっと見つかるはずさ。
「俺も、クロとシロが頑張って見つけてくれたんだよなぁ」しんみり
「マサキさんの実体験ですか?」
「愛バとの馴れ初め聞きたいです!」
あいつらとの思い出が知りたい?語ると長くなるからプロローグだけな。
雨の降る夜の街、地下道で出会った俺たちは・・・
「警察に通用しようとしたらクロとシロに襲われて、返り討ちにして家に持って帰った」
「「「「何やってんだぁーー!?」」」」
「クロとシロの時も、アルとココの時も、大体ピンチで死にかけている時に契約した」
「「「「本当に何やってるんだ!?!?」」」」
知らねぇよ。俺だって好きであんな状況になってねーよ。
俺たちを反面教師にして、良き出会いをしてくれよな。
めぐりあい宇宙が殴り合い宇宙にならないことを祈ってる。
リンクデバイスを全否定するつもりはないが、操者探しを前向きに検討してくれたら嬉しいな。
リンク体験から始まった授業、どうなる事かと思ったが生徒たちの反応からすると好評だったみたい。
終業のチャイムが鳴り、生徒たちは教室を出て行った。
手を振りながら去っていく最後の一人を見送った後、俺も次の場所に移動するため廊下に出る。
「やあ」
「お、ルドルフ。どうした?」
「君に用があってね。ここで待っていたんだ」
腕組みをして佇むルドルフはそれだけで絵になる。
俺に用?もしかして、授業の駄目だし・・・ヤダー!
「思い付きでリンクなんかさせてすんません!懲戒解雇だけはやめてください!」
「違う違うw授業は素晴らしかったよ。皆、楽しんでいたし、私も君の話に聞き入ってしまった」
褒められてしまったぞ。やったー!素直に喜んでいいんだよな。
「先程の集団リンク、実に見事だったよ」
「恐悦至極っス」
「私の仲介が必要だと
「はて?なんの事やら」
「一体君は何人のウマ娘と同時リンクできるのだろうね。興味は尽きないよ」
「タキオンみたいになってるぞ。噓も方便で見逃してくれない?」
「いつか、君の本気が見てみたいものだ」
「俺はいつでも本気で生きてる」
「そうだね。君はそういう男だ」
もうこの辺でやめましょうや、腹の探り合いは苦手なんよ。
「お叱りや解雇通告でないとすると何用?」
「こういう事さ」
「お?おぅ」
ルドルフは俺の両脇に手を入れて持ち上げる。
そのまま抱っこされてしまった。
そう言えばまだ彼女には抱っこされていなかったな。
「君のお世話係に立候補した。行きたい場所はあるかい?」
なんと!会長自ら動きなさるとは……大変光栄であります。
優しく微笑むルドルフが眩しい。
とりあえず医務室まで連れていってもらう。
「今の俺を見たらテイオーが悔しがるな『ボクも抱っこー!』とか言いそう」
「フフ、仲良くやっているようだね」
「まあな」
「ふぅ~、何とも言えない抱き心地だ。エアグルーヴが絶賛していただけはある」
グル姐さん!?
あなた、俺を抱っこしている最中はずっと文句言ってましたよね。
もう!素直じゃないところが可愛いな。
「事件のこと聞いた?」
「学園生が救急搬送される事態だ、当然耳に入っている。マサキ君が活躍してくれたそうじゃないか、生徒会長として礼を言うよ。ありがとう」
「俺は職務を果たしたまでだよ」
生徒が幸せな学園生活を送れるよう、日々尽力している生徒会長シンボリルドルフ。
お世話係のついでに事件のことを話し合うのが目的だったみたいね。
治療に当たった俺から直に現場の状況を聞いておく必要があると判断したのか、真面目だな。
ルドルフによると、今回の件は由々しき事態として学園全体で対処することが決定したらしい。
俺からも、タキオンに怪しいデバイスの解析を依頼したことを伝えておく。
「ふむ。やはりリンクデバイスの誤作動か」
「あれが元凶なのは間違いないと思う。触ったとき凄く嫌な感じがしたんだ。こいつわざとやってんのか、みたいな?」
「何者かの悪意を感じるデバイス、出所を調べる必要がありそうだ」
早急に注意喚起を行い再発防止に努めないといけない。
俺とルドルフの意見は概ね一致しており、情報交換はスムーズに行われた。
「先程の授業は中々タイムリーだったね。少なくとも、君の授業を受けた生徒はリンクデバイスを慎重に扱うだろう」
「そうであってほしいと思ってるよ」
「ところで……私のことはもう"ルル"と呼んでくれないのかい?」
「お気づきでしたか」
UC基地を訪れた際、彼女にルルというあだ名を付けたのだが、テュッティ先輩が"ルナ"と呼んでるの聞いちゃったんだよな。
それ以来、なんかルル呼びを遠慮している。
操者のテュッティ先輩が呼ぶ"ルナ"は二人だけの絆を感じるのだ。それを邪魔したくないというのが正直な気持ち。
ほら、二つもあだ名があったら混乱するじゃん・・・読者様が!
「そうかい?君の愛バも複数のあだ名を所持しているのではなかったか、クレイジーダイヤモンドとかさ」
「それは
でも、何だかんだ言ってクレイジーダイヤモンドは響きがカッコイイから好きよ。
阿修羅とか雷帝とかもいい!デスラーはよくわかんね。
「他人行儀なのは嫌だな。できれば、君にはあだ名で呼んでほしい」
「じゃ、これからもルルで」
「そうしてくれマサキ君。フフフ、皇帝特権を発動させずに済んでよかったよ」
なんだかヤバそうなスキルを使う準備をしていたらしい。
そこまであだ名で呼んでほしかったの?
ルルが嬉しそうなので良しとしますか。
「マサキ君、我々の友情を祝してダジャレを言ってみてくれ」
「そんな簡単に思いつくか」
お前が笑いたいだけだろに・・・スベっても文句いうなよ。えーっと・・・
「ですます口調で済ます区長」
「ブッッwwやはりw天才かwwビヒャッヒャヒャーwwフォフォフォフォフォォ―ww」
「ルル!笑い声が怖いしキモイ!!」
廊下にはしばらくの間ルルの笑い声(異音)がこだましていた。