「ヴェェアアアーーー!!」
マサキは奇声を上げながら走っていた。
両脇に二人のウマ娘を抱えたまま、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして走っていた。
学園中を縦横無尽に走り回り、何事かと驚く人々を意に介さず、とにかく爆走した。
その走りっぷりは、サクラバクシンオーですら『あれは無い』とクールにコメントするほどだったという。
どうして?
どうしてだ?
なぜ、こんな事になってしまったのか。
あいつらが"そういう関係"だったと気付かなかった俺が悪いのか?
先程の光景が脳裏に焼き付いてしまっている。
全裸で絡み合う愛バたちのあられもない姿が!
俺は操者として、ひとりの男として、あいつらを愛している。
それが全部俺の独りよがりだったなんて、信じたくない!
俺は混乱しきった頭で、こうなってしまった経緯を思い出していた。
〇
「君たちも
「生きがいですから」
「表現の自由は誰も止められないのよ」
「風紀委員も『またお前らか』みたいな顔してたじゃん。いつまで続けるの?」
「「無論、死ぬまで」」
「信念は無駄にカッコイイ」
俺はチームの基地へと向かっていた。
一人ではない、アグネスデジタルとメジロドーベルの二人を伴ってだ。
仲良く散歩しているのではない、俺は二人を連行しているのである。
「しっかり反省してちゃんと謝るように、いいな?」
「ご本人に作品を披露しながら許しを請う。どんな拷問……」
「あのなあ、エロシーン満載の同人誌に登場させられる方が拷問だろ」
「アルダン姉さんいるのよね……謝るからさ、殺されそうになったら助けてよ。絶対よ!」
デジタルとドーベルはどんよりとした暗い表情だ。
まあ、気持ちはわからなくもない。
これから被害者たちの前で罪を告白するのだから。
事と次第によっては、キッツイお仕置きが待っている。
こいつらが何をやらかしたのか説明しよう。
デジタルとドーベルは学園では知らぬ者のいない、同人作家として有名である。
この二人は少々過激な内容の漫画やらその他グッズ類を作成し、闇市で売りさばいていたのだ。
販売される物品の多くが青少年健全育成条例に引っ掛かったので、許可が下りなかったとも言える。
回を重ねるごとに宴の規模も関係者数も、やり取りされる金額も大きくなりすぎため、
風紀委員会の目に留まり、先日、あえなく摘発される運びとなった。
俺も摘発現場に居合わせていたので、その時の事はよく知っている。
首謀者であるデジタルとその右腕のドーベルは説教部屋送りとなり、こっぴどく叱られたらしい。
魍魎の宴はファンに惜しまれながらも、ひっそりと終焉を迎えた・・・はずであった。
何とこの二人、
その情熱とファンからの支持率には感心するけども、呆れた奴らだ。
『なめやがって!』といきり立つ、風紀委員たちにより今回もお縄になりましたとさ。
二人の悪質なところは、
自身の作品(エロ漫画)に知り合いに酷似したキャラを登場させる点だ。
主な被害者は学園生や教官たちで、俺も被害者の一人だ。
ホモホモしい漫画に幾度となく登場させられて、マジで迷惑極まりない。
風紀委員による調査と取り調べで、今回新たな被害者が確認されたのだ。
それが、俺の愛バたちだったという訳である。
「急に呼び出されたと思ったら、泣きべそかいてるんだもん」
「へへ、お手数をおかけしてサーセン」
「泣いてない!目にゴミが入っただけよ」
説教部屋に駆け付けたとき、
相当キツイ詰められ方をしたらしい二人は酷く憔悴していた。
俺が登場すると安心したのか、余計に泣き出すし。
「だって、マサキが来なかったら、たづなさんに引き渡すなんて言うんだよ!」
「お、それは間一髪だったなww」
「笑い事じゃないわよ。でもまあ……来てくれた事には、素直に感謝してるわ」
姉さんの教育的指導は全生徒が恐怖している。
『たづなさんを呼ぶ』と、言えばどんな不良生徒も泣いて許しを請うのだとか。
誇らしくも恐ろしい、我が姉上は偉大だな。
二人の身柄を預かった俺は、謝罪行脚の見届け人として同行している。
この時間だと、基地に愛バ全員が揃っていると思われるので、ひとりひとり探さないで済む。
俺は、二人の作品である薄い本を手に取りページをめくってみた。
「"ガチレズ四姉妹物語"ねぇ…」
「どう?私とベルりん、渾身の一作は?それはシリーズの三巻目」
「売れ行きはかなりいいわ。ファンサイトでも、続きを待ち望む声で溢れてるのよ」
正直、漫画としての完成度は同人の域を超えていると思う。
高い画力に加え、ある種の美しさすら覚える官能的なシーンの数々。
エロ抜きにしても、先の展開が気になるストーリーも秀逸だ。
登場しているキャラのモデルさえ違えば、手放しで褒めていただろうに。
"ガチレズ四姉妹物語"
物語の舞台は、全寮制の名門女子高"セントリリィ女学園"
義姉妹の契りを交わした四人の美少女たちが、
学園の至る所でエロエロな情事に励み、官能の渦に溺れていく。
友人や教師の目を盗んで秘密の関係を続ける、四人の行き着く先は━━
と、いうのが話の大筋である。
■長女・
■次女・
■三女・
■四女・
メインキャラ四姉妹のモデル、名前からもバレバレやないか。
どう考えても・・・
「俺の愛バなんだよな、な?」
「偶然とは恐ろしいね」
「他人の空似よ」
「まだ言うか、似てるってレベルじゃねーからな?」
各キャラの見た目も性格も、そっくりというか、そのまんまだ。
長女はお清楚だが性欲が強く、次女はラーメンばっか食っていて、
三女と四女は事あるごとに仲良くケンカする。
まんまですね!これは模倣ではなく投影だね。
「でも、おぱーいの形はちょっと違うな。こっちはもっとこう……」
「むむ!その話、詳しく聞かせて頂きたい!」
「不潔よ!アルダン姉さんたちのおぱーいに何してくれてんのよ!」
何ってそれは・・・ねえ(´∀`*)ウフフ
ま、いろいろだよ、いろいろ。
彼女たちの双丘には、いつも大変お世話になってます!
クレームを入れたい点はまだある。
四姉妹は同性愛者という秘密を隠すため、
自分たちが、ある男性教師に思いを寄せていると、広く公言しているのだ。
■教師・
この正昭先生のモデルは俺である。
日常パートでは出番も多く姉妹たちとよく絡むのだが、
『男のエロシーンはいらねぇ!』とばかりに濡れ場は一切ない。
スケープゴートとしていいように利用されている。悲しきピエロである。
読者の嘲笑を一身に背負う、作中で最も哀れなキャラだ。
なんで気付かないかな?
四姉妹はお前とのデートをすっぽかして、イチャコラやりたい放題だってのに!
『美少女たちに言い寄られモテモテな俺!』『ハーレム最高ひゃっほう!』
なんてニヤケている場合じゃねーぞ。
大体な『結婚するまでエッチな事は禁止なんです♡』なんて言葉を真に受けんな。
裏で『あいつチョロいわーww』と笑われてんだよバーカ!
もう一度言う。
この当てウマ男、正昭のモデルは俺である!!
「正昭が不憫すぎるっ!救いはないんですか?」
「安心しなさい。四姉妹に振られた彼はスピンオフで、同僚(♂)たちとのハッピーエンドへ発展してい予定よ」
「俺にとってはバッドエンドじゃい!」
「姉妹の情事を目撃した正昭はショックを受けつつも、その痴態から目を逸らせず"ソロぴょい"に励むのであった」
「うわー生々しい。そして悲しい」
「さすがw童貞ダミーは格が違うわ」
「誰が童貞ダミーじゃ!」
「どうどう、落ち着いて。童貞はマサキじゃなくて、正昭の事だからさw」
「何キレてるの?正昭は架空の人物よw」
「ハハハ、殴りてぇ」
お前らが俺をバカにしているのは、よーく理解した。
このまま姉さんにパスしてやろうかしら?
逆襲の正昭が四姉妹に"わからせ"する展開なら全巻揃えてもいい。
「マサキが留守の間、果たして四人は何をしているか?気になりますなぁ…グフフ」
「やめーや。うちの子たちに限って百合展開とか、ないない。ないってば!」
「ことわざに"知らぬは亭主ばかりなり"というのがあるわ」
「俺たちはラブラブ両想いなの!変な勘繰りするんじゃありません」
こやつら、不安になるようなことを抜かしおる。
だがしかし、現実と創作は違うのだ。
愚かな童貞正昭と違い、マサキは現在進行形でハーレム構築中だぜ!
チーム基地まであと少しとなった距離。
「あら?」
「およ?」
「どうしたの急に立ち止まって、んー?あれれ」
急に足を止めた俺とドーベル、遅れてデジタルも気付いた。
なんか、基地内部から妙な気配を感じるぞ。
覇気というか、揺らめく熱い闘気が出入口から漏れているような。
まさか、俺のいない隙を狙って現れたルクスの刺客が愛バたちを狙って!?
いや待て、敵襲だと断定するのは早計だ。
「様子を見て来る。二人はここで待っていてくれ」
「気を付けて、何かあったらすぐ呼んで」
「ヤバそうなら私らは逃げるからね。アンタも無理すんじゃないわよ」
「うん、行って来る」
腐っても騎神として訓練されている二人だ、真面目モードにすぐ頭を切り替えた。
まずは俺が先行して様子を見に行く、何も無ければそれでいい。
敵がいた場合やトラブルがあれば、デジタルとドーベルにも動いてもらおう。
逃げるなんて言っているが、手に負えない状況と判断したら即座に助けを呼びに行ってくれるはずだ。
うむうむ、しっかり成長しているようで頼もしいな。
やらしいシーン満載のエロ同人作家とは思えないぐらい頼もしいぜ。
心配そうな二人を残して基地へ。
隠形術は得意ではないが、出来うる限り覇気を出さないよう注意して移動する。
何の問題もなく基地に到着した。
抜き足差し足で出入口に向かい内部の気配を探る。
(中に四人いるみたいだ。パンがどうとか言ってる?)
言い争うような声に混じりドタバタと物音がする。
敵と戦闘中というより、これは、クロとシロがケンカして暴れているっぽいな。
(なんだ、いつものやつか)
ホッと胸をなでおろすと、シロの興奮した声が響いた。
『とったどー!』とは何だろう?
はしゃぎすぎて尻尾がとれたとかじゃなければいいが。
愛バたちが仲良く遊んでいるのは理解した。
デジタルとドーベルを待たせている事だし、遊びは中断してもらおう。
「勝った!勝ったぞ!うおおおぉぉぉーーーー!やったぁーーー!」
シロはまだ何事かを叫んでいる。
おーい、お前たちの操者がやって来ましたよ~。
盛り上がっているところ悪いが、ちょっといいか、いぃぃ!?
え!?( ゚д゚)
出入口の扉を開けて中の惨状を見た俺は彫像のように固まった。
そこには、裸で絡み合う愛バたちの姿があったのだ。
ゴクリッ、なんてやらしい光景なんだ!じゃ、なくて!
どういう・・・ことだ・・・??
俺を認識した愛バたちも驚いた様子で動きを止めてしまっている。
「……何を……して…いるんだ?」
ショックで震える口を動かして言葉を発した。
なぜだ、なぜ何も言ってくれない?
四人とも俺に見られて『しまったぁー!』みたいな顔をしている。
全員が全裸!?『とったどー!』て、パンツの事だったの?
わけがわからない。いや、理解するのを脳が拒否している。
「お前……たち…一体、何を……」
再び問いかけるも、愛バたちは無言だ。
頼むよ、理由があるなら説明してくれ!
今日はちょっと暑かったとか、たまたま着替えの最中だったでもいいから。
言い訳すらしてくれない愛バたちに不信感が募る。
考えないようにしていた、とある単語が脳裏に浮かんできた。
"ガチレズ四姉妹"
は?え?は!?ええええええええええええええぇぇぇっ!?
あれはデジタルたちの創作物、フィクションではなかったのか!
嘘から出た
待つんだ俺!俺の愛バに限ってそんなことはない。
これは何かの間違いだ。そうに決まっている!
(でも、状況証拠は揃ってるぜ。ウケケケww)
俺の中の悪魔が邪悪な笑みを浮かべて囁いてきた。
うるさい、俺は愛バを信じる。
(現実見ろよ。今のこいつら同人の濡れ場シーンまんまじゃね?)
や、やめろ。
(お前抜きでお楽しみ中だったって訳だ。邪魔しちまったなあ)
やめてくれ。
(元気出せよ、
悪魔の嘲笑が脳内でこだまする。
俺は童貞ダミーと同じ運命を辿るのか?
そんなの嫌だ。
「マサキ、大丈夫?中で何が……え?えぇっ!ええええええええ!?」
「何?面白い物でも見つけ……ほんぎゅぇわぁぁぁぁぁーーー!?!?」
戻って来ない俺を心配してデジタルとドーベルがやって来た。
全裸の愛バたちを見た二人は驚きの声を上げる。
もう限界だった。
混乱しきった頭がぐるぐるして、自分がいたたまれなくて、辛い苦しい。
どうにかなってしまいそうだ。
「い、いやぁぁぁーーッ!ガチレズ四姉妹ぃぃぃーーッ!!」
俺は脱兎の如く逃げ出した。
逃げて逃げて逃げ続けて、忘れ物をしたことに気付いた。
しまった!二人を置いて来ちまった。
俺の愛バが原因で、デジタルとドーベルまで百合空間に取り込まれたら・・・
ドーベルはともかく、デジタルは本望かな。
くそぉ、あの場所へ戻るのは辛いけど、二人を助けなければ。
心を無にして百合現場に戻ると、愛バたちはまだ固まっていた。
助けに来たと言うのに抵抗する二人を持ち上げて、再び逃走を開始する。
何を口走ったか覚えていないが、最後ぐらいカッコよく『サラバダー!』を言えただろうか?
気付かなくてごめんよ。
お前たちが、そんな百合百合関係だったなんて知らなかったよ。
なぜそうなってしまったのか、ちゃんと理由を聞きいておくべきだったかな。
『バレてしまいましたか。ま、そういうことなんで』
『あなたでは満足できません。私たちの事は諦めてください』
『だって、マサキさんのモナド……小さいんだもん』
『おまけに早いしwww』
グサッ!グサグサグサッッ!
妄想の愛バたちが、言葉のナイフで俺のハートをめった刺しやぞ!
やっぱり理由なんて怖くて聞けない。
あんな事言われたら一生立ち直れない自信ある。
「うわああああぁぁぁぁんんん!!!!」。゚(゚´Д`゚)゜。
〇
そうして俺は泣きながら走っている。
もう、何をどうしたらいいのか、訳も分からず走っている。
同人作家二人を持ったままで学園中を走っている。
「見たか?」
「見た!」
「見たわ」
二人に確認をとった。
あの光景は夢でも幻でもなかったらしい。
三人同時に幻覚を見たならどんなによかったか。
「あれは何だったんだ!?誰か説明してくれ」
「パンツレスリングだ」
「パンツレスリングよ」
やはり、そうだったのか!
愛し合う者同士が下着を奪い合う、伝説の格闘技パンツレスリング!
一部界隈では"うまぴょい"以上に崇高な儀式として扱われているとか、いないとか。
最初から、俺抜きでお楽しみ中だったんだな。
「ちょいと移動するよっと…」
「そうね。いつまでも雑に持たれたままなのは気に入らないわ」
俺に持ち運ばれていた二人は器用にも蛇のよう体をくねらせ、最適な位置に収まった。
前方のデジタルを抱っこして、後方のドーベルをおんぶした運搬形態へと移行する。
「う、うう、酷いや……こんなことってあるかよ…」
「いい年した男が泣きすぎよ。あーもう!大丈夫よ、大丈夫だからね」
「ごめん、情けない奴でごめん…」
「アルダン姉さんの異常性欲についていけなかったのよね。かわいそうに」
「そういう訳じゃないけど」
「いくらマサキが短小で早漏の二冠保持者だとしても、女に走るのはやりすぎよ」
「お前は俺を慰めたいの?それともトドメ刺したいの?」
「え?まさか、不能を足した三冠王だったりするの!?」
「もうやめてぇー!」(´;ω;`)ウゥゥ
ドーベルが何とか俺を慰めようと試みるが、逆に傷口が広がっただけに終わる。
男の急所を適格に抉る言葉のチョイス何なの?
「三次元の男はみんなクズだと思ってるから」
「どうもクズです……このまま樹海を目指そうと思います」
「な、何事にも例外はあるわ!アンタや学園の教官たちは男でも尊敬してるし…」
落ち込む俺にドーベルはアタフタし出す。
「どうしたらいい?どうしてほしい?」
「言葉はいらない。頭を撫でてギュッてしてくれ」
「こ、こうかしら」
おんぶ中のドーベルが俺の頭を撫でつつ、体の密着度を上げてくれた。
あーいいっスねぇ。その調子で頼むよ。
美少女の"よしよし"とハグはいつの世も万能薬である。
「クク……クフフフ」
「デジ…タル…?」
抱っこ中のデジタルが肩を震わせている。
てっきり、俺の悲惨さに同情して泣いているのかと思ったのに。
この変態は俺の想像を超えるゲスだった。
「フフフフ、クワァーッハッハッハッ!ヒャハハハハハハハハ!!」
「デジタル、あなたどうしちゃったの?」
「貴様ぁ、何が可笑しい!」
「ハハハ!これが笑わずにいられるか!」
狂ったように笑うデジタルは、心底愉快だという顔でまくし立てた。
「私の追い求めた理想郷。ウマ娘ちゃんたちによる百合百合ワールドが現実になったのだぞ!」
「「ゆ、百合百合ワールドだとぉ!?」」
「そうだ!我が執念が生み出した作品が二次元を飛び越え、リアルを侵食した結果だ!」
いつもなら『偶然だろ』の一言で一笑に付すところだが、
先程の愛バたちを見た後では、そういう事もあったりするのでは?と、考えてしまう。
実際、こいつの執念というか妄念には凄まじい
現実を侵すぐらいはやれるんじゃ・・・
あれ?だったら、俺の愛バがおかしくなった原因、こいつか?
「トレセン学園は百合の園へと生まれ変わる。ゆくゆくは日本全土を百合の千年王国へ!」
「お前かぁ!お前が原因だったのか!」
「マサキ!?待って、今のはデジタルの妄言よ。そうでしょ?」
俺はデジタルの胸倉を掴み上げた。
もしもこいつが愛バたちを狂わせたのだとしたら、許しはしない。
焦って止めようとするドーベルと違い、デジタルは余裕の態度を崩さない。
変態のふてぶてしい顔が一層俺の神経を逆なでする。
「感謝するよマサキ。君の愛バちゃんたちのおかげで、我が悲願は達成される」
「こいつ!」
「グフフ、殴りたければ殴れ。ここで私が倒れても、一度始まった百合の流れは止まらない。もう誰にも止めれんのだからなぁ!」
「お前のような奴がいるから」
「カウントダウン開始するわ!発射まで5……4……」
「ほら、どうしたマサキ?私を倒すなら今がチャンスだぞ。ん?」
「お前なんか、お前なんか…こうしてやる!」
「1……
「いってしまえぇぇっ!!」
「デジタル、イッキマース!」
俺はデジタルを渾身の力で上空にぶん投げた。
発射された変態は雲を突き抜けて、あっという間に見えなくなる。
敬礼したまま飛んで行った奴は、晴れ晴れとしたいい笑顔だった。
無茶しやがって・・・
「はぁ……はぁ……お、終わったのか?」
「よくやったわ、マサキ。これで世界は救われたのよ」
「くっ、だが、そのためにデジタルが犠牲に」
「誰のせいでもないわ。あの変態っぷりは人類には早すぎたの」
「そっか。なら仕方ないね」
「そうそう。つまんなことは早く忘れましょう」
「「わーっはっはっはっ」」
この日、一人の変態が空の彼方へと消えて行った。
彼女の尊い犠牲により百合の侵食から世界は救われたのだった。
《百合帝国の野望編》 ━完━
おわかりいただけただろうか?
マサキのみならず、打ち上げられたデジタルもドーベルもおかしなテンションになっている事に。
ガチレズ愛バにショックを受けたマサキの頭は恐慌状態に陥った。
その結果、暴走した感情の波が覇気に乗って外部へ流出、至近距離にいた二人のウマ娘はその影響をモロに受けてしまったのである。
今の三人は賢さが著しく低下した状態。つまり、ものすごく頭が悪い。
一名が空に退場しても笑って済ませるぐらいにはバカだ。
「何も解決してねぇよ!」
「そうね。デジタルが滅んでも、マサキの愛バはガチレズのままね」
地団駄を踏みながら叫ぶマサキ。
やれやれと首を振るドーベル。おんぶはまだ継続中である。
「本当にもうダメなのか?あいつらを取り戻す事はできないのか……」
「諦めるのはまだ早わよ、ロリコン童貞」
「童貞ちゃうわ!マジで違うから!しっかり捨てさせてもらったから!」
「ふーん、誰で?」
「読者様のご想像にお任せする」
「メタいわ」
「すまん。それより、ガチレズに打ち勝つ策があるなら教えてくれ?」
よくぞ聞いてくれたとばかりに、ドーベルはマサキの頭に顎を乗せた。
「勝利の鍵は"わからせ"よ」
「なんと!?」
「男の良さを徹底的に教え込み、自分たちが誰の所有物であるかを思い出させるのよ」
「そ、そんな大それた事、俺にできるだろうか?」
「できるかじゃない、やるの!百合道に堕ちたメスウマに身の程をわきまえさせてやるの!」
「なんかすげぇな、さすがエロ同人描いてる奴は違うぜ」
「フッ、褒め言葉として受け取っておくわ。あ、調教の過程は逐一報告してよ、ネタにするから」
『頑張れ♪頑張れ♪』とマサキを焚きつけるドーベル。
この女、自分の作品のネタになれば、何を犠牲にしてもいいと思っている。
本当にいいのかなあ?と、思いつつも、もうそれしか方法がないような気がしてきた。
そうと決まれば行動あるのみ。
「よし、行くか」
「行きなさい。背中で応援してるから」
マサキは気合を入れ直し、ドーベルをおんぶしたまま"わからせ"に行くつもりだ。
そこへ、デジタル打ち上げ直後から、ずっと存在を無視されていた者が堪らず声をかけた。
「話は聞かせてもらった!」
「「誰だ!?」」
「私だマサキ君、数分前からずっといたぞ。で?生徒をおんぶしたまま、どこで何をするつもりだ?」
「理事長!邪魔しないで」
「止めないでください理事長。俺はこれから愛バたちを拉致監禁して、ハード調教に勤しむのです!」
「鬼畜ッ!いくら操者でも、やっていい事の限界を超えすぎだ!」
相思相愛でも超えてはいけないラインがある。
学園を預かる者としての責務から理事長は体を張ってマサキ(バカ)を止めようとする。
その背に乗るドーベル(バカ)も共犯らしい、というかこいつが私欲のために煽っていたのを、目の前でバッチリ聞いていた。
「強行突破よ、マサキ!」
「かしこまり!」
「な!?にょわぁ~私ごとぉぉーーー!?」
走り出すマサキ。
小柄な理事長が足にしがみついた程度で止まる男ではない。
「危ないんで抱っこしますね、理事長」
「ひぃぃー!降ろしてくれるだけでいいのに、何で道連れぇーー!?!?」
「そこで見ているがいいわ。アルダン姉さんたちが『くやしい…!でも…感じちゃう!』する様をねえ」
「うっわ、見たくない。早まるんじゃない、止まれ!止まってくれマサキ君!」
「俺はやるぜ!愛バたちを取り戻すんだ!」
理事長にケガをさせまいとバカなりに気を遣った結果、道連れゲットだぜ。
巻き込まれた不憫な理事長、関わるんじゃなかったと後悔しているが、あとの祭りである。
「どこを目指しているの?」
「愛バのところに決まってる」
「そっちは屋内プールだ!方向音痴が闇雲に走るな」
「私が
「あいよ。リンクしまーす」
「一瞬でいとも簡単にリンク、相変わらずの規格外だな」
マサキにリンクされたドーベルの能力が跳ね上がる。
ドーベルは供給された覇気を使い、学園中に索敵をかける。
「見つけたわ!旧校舎近辺にアルダン姉さんと他三名の覇気。それとは別で…近くに大きな……うげっ」
「どうした?」
「む?むむむ!」
「理事長も何ですか?二人ともトイレなら気にせず行って来て…‥お?」
二人に遅れて、鈍い俺にも感じ取れた。
強くおどろおどろしいような覇気・・・姉さん!?
えー、なんかメッチャ怒ってないか。
「四人のそばにたづなさんがいるわ。ねえ、嫌な予感しかしないんだけど」
「これはマズい、非常にマズいぞ。た、たづながキレてる…超怖い!」
「あいつらったら!また何かやっちゃったの?」
ともかく、旧校舎へ向かおう。
そこに愛バたちと、ついでにキレた姉さんがいるはずだ。
「どうやら私はここまでのようね。マサキ、あとは任せるわ」
「うむ。私も所用を思い出したのでな、急ぎ職員室へ戻らないと」
「デジタルを失った今、お前たちが頼りだ。行くぜ!死なばもろともォ――!」
「「いやだぁ!降ろしてくれぇぇ!!」」
「諦めろ、途中下車は不可能だ」
怒れる姉さんに会いたくない、ドーベルと理事長が必死に抵抗する。
ひとりでは心細いので逃がさない。
腕の筋力と覇気の鞭でしっかり縛り付ける。おんぶも抱っこも解除は俺次第だ。
そうこうしているうちに、姉さんの覇気が一段と膨れ上がった。
旧校舎辺りに生い茂る木々の間を貫いて、黄金の覇気を纏う長大な剣がその姿を現す。
ちょっと、なにしてんの!?明らかに必殺技の準備段階じゃないか。
「斬艦刀!?リミッターを解除するなと、あれほど言ったのにぃ!もう終わりだぁ!」
「ヤバいわよ。あんなの食らったら死体も残らないわ」
「っ!」
急げ!加速しろ!
何だか知らんが愛バたちがピンチだ。
姿が見えた。
斬艦刀を振りかぶった姉さんに背を向けて全力逃走している愛バたちだ。
姉さん顔怖っ!地ならし発動させた直後のエレンみたい。
愛バたちは生き残ろうと必死の形相だ。泣いてる奴もいる。
「お前ら全員……バ
姉さんの怒号と共に必殺の一撃が放たれた。
斬艦刀を包む極太の光が愛バたちに迫る。
それなんてエクスカリバー??
あ、シロがこけた!?
転倒したシロは立ち上がるよりも、オルゴンテイルで他の三人を拘束する事を優先した。
自分を置いて行こうとしたのが気に入らなかったのだろう。
『『『やめっ!離せや!このクソサトイモがぁ!!!』』』
『死ぬときは一緒だ!ざまぁぁww』
表情からそんな感じの事を言っている気がする。
「「「マサキさん!ばんざぁああいっ!!」」」
逃れられないと悟った愛バたちが叫んでいる。
最期の台詞がそんなのでいいの?
でも、ピンチに俺の名を呼んでくれたのは嬉しかったりする。
俺が見た光景はやはり何かの間違いで、ガチレズ四姉妹は誤解だったのかしら?
と、今は考えている時間が無い。
途切れかけていた愛バたちとのリンクを即行で復活させる。
バスカーモード!
愛バたちが俺に気付いた。
こっち見てる場合か!すぐに
「シロ!防いでみせろ!」
俺の言葉に反応したシロが即座に跳ね起きた。
尻尾の拘束を解かれた他の三人も役割を理解して行動に移っている。
俺はありったけの覇気を愛バたちへと送る。
それぞれの体から粒子が溢れ、瞬間的にバスカーモードへと移行した。
無数に枝分かれしたシロのオルゴンテイルが、その大きさ強度を増し愛バ全員を包み込む強固な壁となる。
クロ、アル、ココはシロの体を支えるように立ち、オルゴンクラウドを全力展開、壁の厚みと耐久性を爆発的に上昇させる手助けをした。
愛バ四人の協力により、緑の結晶で作られた半円状の巨大防護壁が完成する。
その壁に斬艦刀が直撃する。
怒り狂う姉さんが必殺の一撃が振るったのだ。
地鳴りのような音と衝撃、光に飲み込まれる愛バたち。
「うわっぷ!」
「きゃ!」
「くっ、防御は間に合ったみたいだけど」
離れている俺たちの所まで衝撃波が伝わって来た。
吹き飛ばされないように踏ん張るって耐える。
大丈夫かな?蒸発して何も残らなかったとか、やめてくれよ。
しばらくすると粉塵が晴れていき、そこには、砕け散ったオルゴナイト欠片たち。
防護壁はちゃんと仕事をしてくれたようだ。
「おお!」
「しぶといわね」
「俺の愛バですから」
愛バたちは生きていた。
シロは辛うじて残ったオルゴンテイルを前方に展開したまま直立不動。
あれは立ったまま気絶しているな。
他の三人は地面にへたり込んだり、目を回して大の字に倒れていたりする。
よかった、全員無事だ。
何の下準備もせず一気に大量の覇気を使ったため、消耗は激しいようだけど。
大きなケガもなく、生きているなら万々歳だ。
姉さんの一撃に耐えきったのは見事だと褒めたやりたい。
そうだ、姉さんはどうなった?
愛バの無事を確認してすぐ、この惨状を作り出した張本人に目を向ける。
そこには、
「もう一撃ぃ!今度こそ仕留めてやらぁーーー!!!」
再び必殺の構えとる姉(鬼)の姿がありました。
待って待って待って!
二回攻撃はダメだって、二撃決殺だって!
今の愛バたちは無防備だ。
壁を作る力も逃げ出す気力も残っておらず、次の一撃は耐えられそうにない。
死んじゃう。俺の大切な愛バたちが死んじまうよぉ!
「理事長!操者命令で止めてくれ」
「無茶を言うな!ああなってしまったら、たづなは目標を消すまで止まらん」
「力づくで止めるしかないわ。それができるのは、マサキ…あなただけよ」
「そうだな。ここはマサキ君に賭けるしかない」
「と、言う訳で。邪魔にならないよう私は離れているわね」
「同じく。頑張ってくれたまえよ、信じているからな」
俺に丸投げして、またしても逃げようとする二人。
もう、往生際が悪いなあ。
いい加減腹を括りなさいよ。
「愛バたちを救えるのは俺たちしかいない!やるぞお前ら!」
「いや、あの、話聞いてる…?」
「我々を戦力に数えるんじゃない!」
「三つの心がひとつになれば一つの心は百万パワーじゃーーー!」
「「嫌だって言ってるのに!降ろしてぇぇーー!!」」
ジタバタする二人と共に姉さんへと突撃する。
大上段に構えた斬艦刀へと黄金の覇気が集束していく。
宝具の連発はやめてください。
「ヤバいって!絶対逃げた方がいい」
「たづなの奴め、さっきよりもでかいのをお見舞いするつもりだぞ!」
「チャージなどさせるものか」
幸いにも姉さんは俺たちに気付いている様子はない。
殲滅対象である愛バたちに注力するあまり、視野が狭くなっているんだ。
そこに付け入る隙がある。
「理事長!お願いします」
「え?え?」
「いっけぇー!秋川ミサイルッ!」
「何してくれてんだぁぁぁ君はぁぁぁーーー!?」
「こ……こんなこと残酷すぎる!」
俺はチャージ中の姉さんへと理事長(本名・秋川やよい)をぶん投げた。
戦々恐々とするドーベルには悪いが、これも必要な措置なのだよ。
目論見通り、飛んで行った理事長は目標へと無事に着弾した。
「ぶほぉ!?」
「ごっ!?攻撃?どこからっ……何してるの、やよい?」
「こっちの台詞だぁ!お前も!お前の弟も何をしているんだ!!」
「私は有害指定生物の殺処分中よ。邪魔しないで」
「いいのか?あんなのでもマサキ君の愛バだぞ」
「あんなのだからこそ始末するのよ。今、ここで!」
「ついでに学園を破壊してか?始末書が増えるぞ。増えるぞ大量にぃぃーー!!」
「知ったことかぁ!」
自分に取り付いた理事長と口論を始める姉さん。
よしよし、イイ感じにチャージ妨害をしてくれているぞ。
このまま畳み掛ける!次弾装填!
「やめてやめてやめて!本当にやめて!」
「怖いのはわかる。しかし、この任務は君にしかできない!」
「なんで私が…マサキ総受け本の総集編、原稿がまだ上がってな━」
「ドーベルボンバーッッ!」
「こんなの私のキャラじゃないぃぃぃーーー!」
キャラ崩壊は今更ですぞ。
両手で掴んだドーベルを渾身の力を込めて投げ飛ばした。
デジタルと理事長でコツを掴んだのか、俺の投擲スキルは抜群の精度をもってドーベルを姉の下へと送り届ける。
一直線に飛んで行ったドーベルは、全てを諦めたかのような表情だった。
総受け本の作成も諦めてほしい。
・・・・・・よっし!命中確認!
「はがっ!?」
「べっ!?またか……あんたはメジロの腐女子!」
「失礼ね!別に腐ってないわよ。私はただ、男たちが乳繰り合う姿に熱いものを覚えただけよ!」
「十二分に腐っとる!知っていたけど、メジロ家も相当イカれてるわ」
「集中の乱れた今がチャンス。ドーベル君、協力してたづなを止めるぞ」
「ああもう!こうなったらヤケクソよ」
「ええい!うっとうしい!」
小さい操者と腐女子にしがみつかれて、大層ご立腹な姉さん。
それでもまだ、チャージを止めようとしないとは、
愛バへの殺意は依然として衰えていないらしい。
暴れ狂う姉さんの死角から接近だ。
二人が時間を稼いでくれたおかげで、ようやく俺も参戦できる。
「そこまでです。もうやめましょう、たづなさん」
「やっぱり来たのね、マサキ」
姉さんを羽交い絞めすることに成功した。
理事長とドーベルも必死に押さえてくれている。
「愛バが何をやらかしたのか知らないけど、非礼については誠心誠意お詫びします!本人たちにも改めて謝罪させる。だから、この場は何とか収めてもらえませんか?とりあえず、
「マサキ、あのバカタレどものことは、きれいさっぱり忘れなさい。もうすぐこの世から消えるからね!」
「そんな殺生な」
「愛バが必要なら、私がもっとマシなの紹介してあげる。あの四人は存在自体が害悪だから滅ぼすしかないの」
「い、嫌だ。愛バはあいつらじゃなきゃダメなんだ」
「頭が悪い上に露出狂だったりするのよ?あんなのと一緒にいたら、マサキの品位が下がる」
「品位?マサキ君に……」
理事長『こいつに品位なんてあったか?』みたいな目はやめてください。
露出狂なんて発言が出るってことは、裸を目撃された愛バがいるのか。
まさか、素っ裸で外に出たなんてことないだろうな。ないよな?
「パンツくれだの、絆創膏だの、私が更年期だのと、ほざきやがって!」
「ごめんなさい!全く意味がわからんけど、俺の愛バがごめんなさい!」
「おまけにガチレズらしいわ。操者の居ぬ間にレッツ!パンツレスリングだったみたい」
「ドーベル!余計な事を言うな」
「本当に救いようがない。ここで終わらせるに限る!」
「ひぃぃぃ」
ドーベルの不用意な発言が姉さんの怒りを加速させた。
それに伴い、覇気出力とチャージ速度が上昇する。
三人がかりで押さえ込もうとしているのに、止まる気配すらない。
理事長とドーベルには既にリンクしていて、可能な限り覇気を回している。
かつて暴君と呼ばれし騎神はそれでも止まらないのだ。
「イヤァァァァァァ!!」
「トゥ!ヘアー!!」
「モゥヤメルンダッ!!」
「やめてよね……本気でケンカしたら、今のマサキたちが私に敵うはずないでしょ…」
三人でアスランになってもビクともしない。
今のうちに愛バたちが逃げてくれたらいいが、彼女たちはまだ動けそうにない。
くそ、このままではチャージタイムが終了してしまうぞ。
せめてあと一人、協力者がいてくれたら・・・
「マサキ!上、上を見て」
「上?この忙しい時になに……あれは!?」
「何だ?何かが落ちて来るぞ!」
上空から妙な気配、何かが落下して来ている。
隕石ではない。覇気を感じる、あれは生物だ。
「トレセンよ!私は帰ってきたぁぁーー!」
落下してきた生物は、小柄でピンク毛並みの変態だった。
「デジタルね」
「デジタルだな」
「なんで空から?」
空の星になったはずでは?
まさか戻って来るとは思わなかった。
滞空時間が長すぎる気がするけど、変態だから何でもありだ。
奴はこちら目掛けて突っ込んで来ている。
なんか不安だけど、勝利のピースが揃った!ことにしよう。
(どういう状況?私が
(かくかくしかじかだ。姉さんを止める!協力しろ、デジタル)
(委細承知。微力ながら助太刀いたす!)
(随分と物分かりがいいな)
(当然見返りはもらう。報酬はガチレズ四姉妹の資料提供で頼む)
(背に腹は代えられない。それで手を打とう)
(アシスタントも募集中、ペンタブ使える?)
(わかったから!とにかく手伝え)
(ラジャー!)
俺とデジタルの念話(0.2秒)終了。
取引により協力を取り付けた。
リンクしてデジタルのステータスアップも完了だ。
「たづなも見ろ!上だ上!」
「そんな古典ブラフに引っ掛かるものですか」
「いや、本当なんだけど」
「もういい、もう十分覇気は溜まった」
「やば、間に合わない」
「斬艦刀!バカウマ四人を黄泉路へ連れていけぇぇ!!」
チャージを終えた姉さんが斬艦刀振りかぶった。
万事休すか。
「ただいまぁぁぁーー!」
「ぐあぁぁぁぁ!?!?」
「「何ィィィ!?」」
「おいバカ!どこに着地しているんだww」
間一髪、最後の助っ人デジタルが到着した。
なんとも命知らずだが、姉さんの顔へ貼りつくように落下して来たのだ。
小柄な体形を生かしてフェイスハガーのように顔をホールドしている。
「デュフフ、たづなさんの綺麗なご尊顔が至近距離に…」(*´Д`)ハアハア
「気持ち悪ッ!何よコイツ、この!離れなさい」
「みんな!これが最後の戦いだ。一気に姉さんを落とす!!」
「姉さん!?誰の?」
「知らなかったのかい、ベルりん。マサキとたづなさんは血の繋がった」
「兄ね!二人は兄弟だったのね!てことは、たづなさん実は女装男子!?それで、マサキと近親
「「激しく違うわ!!」」
「ドーベル君!鼻から大量の血が!?」
「フフフ、お気になさらず。一刻も早く事態を収束させて、原稿をまとめないと…フフフ」
勘違いでドーベルのやる気が上がった。
鼻から赤血操術を繰り出しているけど、こっちにかけないでほしい。
「ハアハア、たづなさん。チューできそうなぐらい近い……」(*´Д`)
「ぎゃぁぁぁぁっ!変態が、変態が迫って来る」
「お前ふざけんな!姉さんの唇を奪ったりしてみろ、今度は成層圏の彼方までぶっ飛ばすぞ!」
「ちょ、ちょっとぐらいペロペロしても…デュフ」
「いやぁぁぁぁッ!ホント何なのコイツ!?」
「不純ッ!愛バのピンチを黙って見ている訳にはいかん。ふぬぬぬぬ――!」
姉さんのピンチに理事長のやる気が上がった。
煩悩だらけのフェイスハガーは元からやる気MAXだ。
変態に恐怖した姉さんの態勢が崩れる。
この好機、逃してなるものか!
「今だ!押さえ込めぇぇーーー!」
「「「ウオォォォ――――!!!」」」
「な、やめ!?」
力を合わせて、姉さんの体を後方に引きずり倒す。
その最中、持ち主の手から斬艦刀が零れ落ちる。
刀身に蓄積された莫大な覇気が行き場を失い、一気に弾け飛ぶ!
「「「「「なんてこったぁぁぁぁぁぁ!?!?」」」」」
俺たちの絶叫をBGMに、周囲一帯が暴虐の光に包まれていったのだ。
〇
私が目覚めたとき、全ては終わっていた。
たづなさんの一撃を防いでから気を失っていたようだ。
騒ぎを聞きつけ駆け付けた人々が見たのは、爆心地で気絶するマサキさんたちだった。
クレーターの中心でほぼ無傷なのは、マサキさんが防壁を展開したからだろう。
大勢の教官や生徒の騒めきで意識を取り戻した私もすぐに彼の下へ。
先に起きていたクロたちに遅れをとってしまった。
「マサキさん!マサキさん、しっかりして!」
「小姑を引き剥がしましょう。マサキさんを押し倒している風なのが最悪です!」
「そこの野次ウマたち!写真撮る暇があるなら救助手伝ってよ」
「理事長と変態二名が何故ここに?邪魔ですからとっとと運んでください」
救助隊と野次ウマに囲まれながら、マサキさんを介抱する。
他はどうでもいい、操者の無事が最優先だ。
しょうもない事で信頼を裏切ってしまい、泣いて逃げ出したはずの彼がここいる。
私たちを助けに来てくれたのだ。こんな駄バたちを・・・
マサキさんの頬に手を添える。
「ピンチに駆けつけるなんて…ホント、あなたはカッコよすぎます」
「ごめんなさい。野球拳なんてバカな事を提案した私が悪かったよ」
「責任は我々全員にあります。ちゃんと説明して謝って、マサキさんに許してもらいましょう」
「なんだか大事になっちゃったな。原因がアホ過ぎて、情けないやら恥ずかしいやら」
被害は旧校舎近辺の森が少々消し飛び、地面が抉れた程度で済んだという。
人命は失われていない。
私たち愛バ全員と、マサキさんと変態たち、たづなさんと理事長も無事だ。
この事件はすぐさま学園中で噂になり、憶測が憶測を呼んだ結果。
"痴情のもつれ"という事で方が付いた。
『マサキ教官、たづなさんと浮気してたんだって』
『密会に突撃した愛バたちと修羅場を演じたらしいぞ』
『行きずりの女であるデジタルとドーベル、理事長も参戦したらしい』
『マジかよ。マサキ教官節操ねぇな』
『それでさ、業を煮やしたたづなさんが斬艦刀で心中を図ったんだと』
『怖ぇぇぇ!』
マサキさんが悪者にされてしまっているのが解せない。
でも、下手に訂正して回ったところで、ゴシップ好きな連中を喜ばせるだけだ。
腹立たしいが噂の鎮静化を待つことにする。
七十五日経っても収まらないようなら、"D"が実力行使に出ると思え!
程なくしてマサキさんの意識が回復した。
もの凄くバカバカしくて恥ずかしいけど、事の経緯を洗いざらい説明した。
温泉旅館のチケットを巡って争ったこと、野球拳からパンツの奪い合いに発展したこと。
裸になって、それを目撃され、たづなさんに殺されそうになったこと等々・・・
全てを説明したあとは、愚かな行いで迷惑をかけたことを謝罪した。
愛バ全員が額を床に擦り付けての全力謝罪である。
嫌われたらどうしよう。頭を上げられない、マサキさん顔を見るのが怖い。
判決の時を待つ被告人の気分だ。
「よ、よかったぁ~」
しばらく黙っていたマサキさんの第一声は安堵の声だった。
「ガチレズじゃなかったんだな。全部俺の誤解だったんだ!あーマジで焦った~」
『よかった』を繰り返すマサキさん、ちょっぴり泣いてる。
「もうそんなことしなくていい。ほら、顔を上げて立って立って」
マサキさんがひとりひとりの手を取って立たせてくれる。
本当に優しい人だ。
「ごめんな、お前たちを疑った俺がバカだったよ。許してくれ」
あなたが謝る必要はありません。
悪いのは私たち、その中でもクロが一番最悪です。
「俺こんなバカだけど…好きでいてくれるか?お前たちを、好きでいていいか?」
そんなの!
「当たり前だよ!」
「当然です」
「何度でも言います。私はあなただけ」
「女神様に誓って一途だよ」
全員が即答してみせる。
この想いは本物だ、同性愛などに現を抜かす暇などありはしない。
「お前たち……ぐすっ……大好きだ!」
四人まとめて抱きしめてくれる、マサキさん。
大きな愛を持つ、そんなあなたが大好きですよ。
〇
「まさか、俺が医務室に運ばれるとは」
姉さんを止めた俺たちは盛大に地面へと倒れ込んだ。
その際、斬艦刀に蓄積された覇気が暴発したのだが、意識を失う前の俺がオルゴンクラウドを展開させ、窮地を脱したらしい。
よく覚えてないんだけど、無意識に生存本能が働いたんだろう。
軽いすり傷と打撲で済んだ俺は、医務室に運ばれてすぐ目を覚ました。
愛バたちから事件や被害状況の説明を受け、現場にいた全員の無事を確認した。
姉さんには心からの謝罪を、理事長とデジタルとドーベルには感謝を伝えねばなるまい。
その他、迷惑をかけた人たちにも・・・身から出た錆とはいえ、事後処理は大変だ。
いろいろやっていたらスッカリ日が暮れた。
姉さんの怒りは本当に凄まじく、土下座するシロの頭を冗談抜きで踏んずけていた。
俺も他の愛バも精一杯謝って、何とか許してもらったのであった。
理事長が間に入ってくれなかったら、シロの頭はコンクリの床と融合するところだったぜ。
デジタルとドーベルは『ネタがあふれるぅ!』とかで、さっそく原稿に取り掛かっていた。
元気ならいいんだけど、俺たちをモデルにするのは今回限りだからな!
「うう、酷い目にあいました」
「まあまあ。命があっただけでも感謝しようぜ」
「そうなんですけど。あぅ、まだ小姑の靴底が後頭部に乗ってる気がします」
現在、夕暮れの街を愛バを連れて帰宅中だ。
疲れたので、今日の旧校舎ダンジョン探索は中止にした。
姉さんに踏まれて疲弊したシロは、おぼつかない足取でよたよたと歩いている。
そんなシロが心配なので、俺は歩調を合わせて歩く。
他の三人は夕飯の買い出しをするため、先行してスーパーへ向かった。
「俺のあげたパンツが悲劇を生んだとかww」
「笑い事じゃないですよ。せっかくもらったのに…」
愛バたちと和解できて本当によかったと思う。
あのまま勘違いして大切なものを失っていたら、こんな風には笑えていなかった。
俺たちには、これからもいろんな出来事が待ち受けている。
ケンカしたり、すれ違ったり、間違えたりもするだろう。
でも、その都度ちゃんと話し合って、理解し合って、許し合って、乗り越えて行こうと思う。
今回の事件は良い教訓になったな。
早とちりダメ絶対!エロ同人に登場させるのもダメ!
なにがガチレズ四姉妹だ!
そもそも、事前にあんな本を見ていたのが悪かったんだよ。
デジとベルの作家コンビは今後も要注意だ。
「あれ?シロのパンツは破れたはず。だったら今は?」
「はいてないです」
「今、なんと?」
「はいてないんです///確認……してみます?」
少し照れた表情でいたずらっぽくシロが言う。
耳に吐息がかかる距離で囁かれ、ゾワゾワしちゃうぜ。
えーっと、つまり、シロの下半身は今大変無防備な状態にあるわけでして・・・
けしからんな!
「正確には絆創膏で応急処置しています」
「は!?何それ、どうしちゃったの?」
「それも含めてご確認を…そのあとどうするかは……お任せします」
「ここでか!いや、いくらなんでもそれは////」
屋外ではさすがにマズいでしょ。
せめて家に帰ってからという事で、うん、早く帰ろうか!
今更だがスカートの短かさが気になるな。
誰かに見られでもしたら大事なのだ。
シロのスカートがめくれないように細心の注意を払わねば。
「マサキさんのお気遣いが嬉しいです」
「俺はシロの行動にハラハラしっぱなしだ」
「ムラムラは?」
「もちろんしてる!」
「素直なあなたを愛しています♪」
ニヤニヤするシロが可愛い。
二人っきりだったら、自分を抑える自信がない。
「おい、ノーパン。マサキさんを誘惑する暇があるなら荷物持てや」
「誰のせいだと!クロ、私のイチャコラタイムを邪魔するなと、いつも言ってますよね?」
「フン!知らんな」( ̄д ̄)
「こ、こいつは本当に」(#^ω^)ピキピキ
いつの間にか現れたクロが、ネギのはみ出たエコバックをシロに手渡す。
渋々受け取るシロ。どうやら買い物が終わったらしい。
クロは少し不機嫌そうに俺に腕を絡めてくる。
シロとのやり取りを見られていたらしい、やだ恥ずかしい!
「今日の事件、発端はクロです!マサキさん、この罪深いウマに重罰を課して下さい!」
「なんだよう。シロがボクサーパンツ独り占めにしたのが悪いんじゃん」
「だからって、引っ張って破らなくてもいいでしょ!」
「うるさーい。ノーパンサトイモ!」
「だから、誰のせいでこうなったと思ってるんだぁ!」
掴みかかろうとしたシロの手を躱し、クロは走り出す。
「ご通行中のみなさーん!聞いてください、あそこに露出狂のサトイモが━━」
「やーめーろーやー!」
「はいてないんだって!ノーパンで下校する変態がここにいまーす!」
「もう許さん!パンツはぎ取って、あらゆる箇所に絆創膏を貼ってやる!」
「待て!シロは走ったらアカン。見える、見えちゃうから!」
追いかけっこを開始するクロとシロ。
ひらひらと翻るスカートにハラハラしつつ、俺も二人を追いかけるのだった。
二人の争いはアルとココが合流するまで続きましたとさ。
そんな俺たちへと、憎々しい目を向ける人物がいた事には気付くことがなかった。
「アンドウ……マサキ…」ギリッ
「アオイ~、今日のストーキング終わった?もう帰るよ」
「ミーク…私は覚悟を決めました」
「あっそ」
「フフ、フフフフ、待っていなさい……あなたの好きにはさせません。彼女たちは必ず、この私が救ってみせる……フフフフフ」
「わー、超嫌な予感する」