俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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レロレロ

 あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

 転倒する幼女を目撃した。以上。

 

 すぐに駆け寄りたい気持ちを抑え、周囲を注意深く確認する。

 我が子が自力で立ち上がる姿を望む親らしき人物はいない。

 ドローンや隠しカメラも見当たらない。

 つまり、これはドッキリではない。

 

 だったら、助けるしかないでしょ!

 ダシュッだ!いやっふぅーーー♪

 

「大丈夫か?ケガはないか?俺は通りすがりの治療師、ロリコンではないから安心しろ」

「え?……う、うん。大丈夫」

 

 俺の登場に面食らっている幼女。

 10メートルの距離を一瞬で詰めたのは、愛のなせる技だから気にしないで。

 血は出ていないけど、打ち身でアザでも残ったら人類の損失だ。

 念のため、軽く手当(ヒーリング)しておこう。ホイミ!

 

「あれ、もう痛くない??」

「よく効くおまじないをした。もう安心だよ」

「あ、ありがとう。お兄ちゃんすごい!カッコイイ!」

「ハハハ、照れるなぁ~」

「何かお礼を、そうだ!ちょっと屈んでくれる?」

 

 え?何々?

 ほっぺにチューとかされちゃいますか?

 

 俺は言われるがまま、幼女の前に屈んでみせた。

 すると、

 

「……バーカ」クスッ

「あっ!?」

 

 幼女が年齢にそぐわない二ヤリ顔を見せた瞬間の出来事だ。

 バチンッ!と、火花が弾けたような感覚が走る。

 首の後ろ、(うなじ)の辺りに硬い何かを押し当てられた。

 いつの間にか背後に人の気配、大人の男が二人。

 隠形術で身を隠していたらしい。

 幼女は俺を釣るための(おとり)、グルだったのね。

 まんまとハメられちゃった。

 

「ちっ…く……しょう……」パタリ

 

 目を閉じたままダウンする。

 冷たく硬いアスファルトさん。ちょっと寝かせて・・・

 

 〇

 

 思いのほかアッサリと事が運び、拍子抜けする三人の襲撃者。

 一般人を装った幼女に見える女と男二人の組み合わせだ。

 

幼女(ガキ)に弱いという噂は本当だったか」

「まったく、チョロすぎて話にならないわ。上層部もなんでこんな奴を警戒しているんだか?」

「お前の実年齢知ったら泣くぞ。若作りにも程があるってなww」

「うるさいわね。それより、人が来ない内に早くやっちゃってよ」

「わかっている。悪く思うな、これも全てはキリュウイン家のため」

「愛バに恵まれて調子に乗った勘違い野郎め、せいぜい役に立ってくれよ」

 

 三人は突然倒れたマサキを心配し、介抱する振りをして近くのベンチまで運ぶ。

 周囲を警戒しながら、眠ったままの標的に怪しげな術式を施していった。

 しばらくして、

 

「どう?」

「上手くいった。正常に作用している」

「任務完了だ。目を覚ます前にずらかるぞ」

 

 手早く作業を終えた三人は、眠るマサキを放置して立ち去って行く。

 

「しかしよぉ、俺たちが出張る必要あったか?あいつ、すげー雑魚だったじゃん」

「念には念をという事だろう。万が一という事もある」

「過保護よねぇ。アオイ様は上が思っている以上に強いってのに」

 

 意味深な会話する男女が遠ざかるのを確認、更に数分経過。

 

 ・・・・・・・・・・・行ったか?

 もういいかな?いいよね?

 

 長く目を閉じていると、本当に寝ちゃいそうになる。

 このまま寝ていたい誘惑を振り切って、

 マサキ、オッキマース!

 

「スタンガン、ね。そんなもん効くかって感じ」

 

 アルの雷撃比べてたら屁でもないな。

 そもそも雷の覇気は俺も使えるし、電気ショックの類には耐性ができているんだよ。

 ロリスキーに拉致られたときの催眠ガスの方がまだマシ。

 

 ベンチからむくりと起き上がり、だらりと腰かける。

 (うなじ)をもみほぐしてヒーリングもかけておこう。

 もし跡が残っていたりしたら、愛バたちがさっきの三人を血祭に上げるてしまう。

 

「首尾よく行ったようだな」

「あ、お疲れ様です」

 

 ベンチに腰かけていると、ラフな格好をした、風格ある男が近づいて声をかけてきた。

 長身で引き締まった体の紳士だ。

 雰囲気がどことなくシロの父親、サトノ家のパパさんに似ている。

 

「俺の演技おかしくなかったですか?」

「バッチリだ。あの三人もまるで疑っていなかったよ」

「ならいいですけど。それで、こいつが例の?」

「ああ。キリュウイン家に伝わる術式『封絶紋(ふうぜつもん)』だ」

 

 シャツをめくり自分の身体を見る。

 俺の胸には黒い炎柄の紋様が浮き出ていた。

 自分では見えないが、背中にも同様の紋様があるらしい。

 タトゥーを彫った訳でも、彫られた訳でもない。

 

 先程の襲撃者が呪術的な儀式を行い、俺の体に呪いをかけたのだ。

 その結果がこの『封絶紋(ふうぜつもん)』らしい。

 

「これで俺は覇気を使えない、一般人になったわけですか」

「そうだ。紋を刻まれた者は、およそ一ヶ月の間は覇気を出すことはかなわ━━」

「出ましたけど?」

「なんで!?」

 

 手から覇気を出してみせる。

 わかりやすいよう、粒子光(大)をプカプカ浮かべた状態だ。

 なんか、ヤムチャさんの操気弾(そうきだん)みたい。

 

「出が悪りぃ。蛇口が絞られている気がする」

「制限を受けてそれか、キミの神核はどうなっているんだ?」

「神様からの贈り物です」

「あながち嘘でもなさそうなのが何とも……」

 

 紳士が呆れと感心の表情をした。

 よくある反応なので、気にしなーい気にしない。

 

 ここまでのやり取りでわかってくれたと思う。

 俺は襲撃されることを事前に知らされていた。

 その上で、あえて『封絶紋』の呪いを受けたのだ。

 当然、さっきの女が偽幼女だと気付いていたさ。

 ガッちゃんという、世界最高の年齢詐称(ロリババア)()で慣れた俺を甘く見たな!

 

「私が呪いの効力を弱める手筈だったが、必要なかったみたいだ」

「もう少しでちょうどいい出力になりそうです。あとで調整しておきますよ」

「調整って……随分と簡単に、いや、キミには可能なのだろう」

 

 やれやれと首を振った紳士は、真っ直ぐに俺を見つめて来た。

 ウホッ!イケオジの真剣な眼差し////

 

「わがままを聞いてもらって感謝する。立場上、表立って応援するわけにはいかないが、キミの勝利を願っているよ」

「本当に、やっちゃっていいんですか?今ならまだ、理事長に頼み込んで決闘自体なかったことに━」

「かまわない。どうか娘を……キリュウインアオイを打ち負かしてくれ」

「そのオーダー、受けましょう」

 

 〇

 

 キリュウイン教官の父親に会ったのは昨夜の事だ。

 

 聖蹄祭を三日後に控えた夜、不意に我が家のインターホンが鳴った。

 

「お客様?それとも通販ですか?」

「いいよ。俺が出る」

「ごめん。お願いしていいかな」

 

 家にはシロとココもいるが、二人はPC作業中で手が離せないっぽい。

 夕飯を食べ終え、食器を洗っていた俺は手を止めて玄関へ向かう。

 はーい。今開けますよ。

 

「夜分遅くに失礼する」

 

 玄関扉を開けると長身の男が1人で(たたず)んでいた。

 ほのかなホワイトムスクの香りがするダンディな男性。

 完全初対面の知らない人だ。

 

「アンドウマサキ君で間違いないかい?」

「はい。俺がアンドウマサキですけど、あなたは?」

「申し遅れた。私は『桐生院典明(きりゅういんのりあき)』という」

 

 キリュウイン!?という事は、あのキリュウイン教官の身内?

 

「君の考えている通り『桐生院葵(きりゅういんあおい)』は私の娘だ」

 

 キリュウイン教官のお父様!?

 

 ・・・・・・驚きで少しの間、硬直してしまった。

 

 わざわざ訪ねて来るなんて何事だろう?

 『うちの娘と決闘とはいい度胸だな?あぁコラ!』

 みたいな恫喝目的だったら嫌だなあ。

 

「いきなりで申し訳ないが、君と話をするためにやって来た。どうか時間を作ってもらえないだろうか?」

 

 キリュウイン父・・・ノリアキさんは深々と頭を下げた。

 その姿からは、敵意や害意は感じられない。

 俺に礼を尽くそうとする心遣いのみが伝わって来る。

 この人は信用しても良さそうだ。

 

「頭を上げてください。えっと、狭い所ですが…どうぞ」

「ありがとう。お邪魔するよ」

 

 立ち話も何なので家に上がってもらうことに、

 リビングでは、二人の愛バがしかめっ面で待ち構えていた。

 玄関での会話を聞いていたらしい。

 

「私たちの団欒(だんらん)にずけずけと、キリュウインは恥知らずの家系ですか」

「ホントだよ。親子揃って常識が無いのかな?」

「こ、コラ!お前たち…すみません、二人はちょっと虫の居所が悪いらしくて」

「これも私と娘の無作法が招いた結果だ。彼女たちの怒り、甘んじて受け入れよう」

「ノリアキさん…」

「申し訳なかった。キリュウイン家を代表してお詫びしよう」

「「……」」

 

 嫌味を言う愛バたちにも頭を下げる、ノリアキさん。

 この潔さと高潔さ、間違いなく紳士だ!

 

 (二人とも、話しぐらいは聞いていいよな?)

 (頭首直々に、ここまでされちゃうと仕方ないか)

 (私はマサキさんに従います。かきょ…キリュウインにしては、まともそうですし)

 

 二人のお許しが出たので、話し合いの席を設ける事になった。

 ちゃぶ台セット、座布団セット、お茶もセット、俺たちとノリアキさんは向かい合って座る。

 

「話を始める前に、これはほんの気持ちだ。受け取ってほしい」

「お心遣いありがとうございます」

 

 手土産を頂いてしまった。

 ご丁寧にありがとうございます!

 

 ほう、名古屋名物『青柳ういろう』ですか、もっちり感が堪らんのですよ。

 後ほど愛バたちと分け合って美味しく食べよう。

 

「とんこつ味あるかな?」

「あるわけないだろ……。マサキさん、私は少々席を外したいのですが、よろしいですか?」

「いいけど、何か急用か?」

「実家への諸連絡が残っておりまして」

 

 (それと、一応ですが外を見回っておきます)

 (わかった。気を付けてな)

 (こっちは任せて、無理難題を吹っ掛けられそうになったら止めるから)

 

 離席したシロが家の外へ出たのを契機にノリアキさんは話を始める。

 

「改めて名乗ろう。キリュウイン家現頭首、キリュウインノリアキだ」

 

 彼に続いて俺とココも自分の名前を口にする。

 家バレしていた以上は事前に調査済みだろうけども、礼儀として一応な。

 

「ファイン家現頭首、お会いできて光栄だ。すると、先程出て行った彼女がサトノ家の……ドウゲンがべた褒めしていた娘か」

「こちらこそ、お噂はかねがね。ご息女様にも、すっごく大きなお世話になってます」

 

 ココ!嫌味ったらしいのやめなさい。

 注意する意味で尻尾を軽く引っ張っておいた。俺の尻をファサファサしてもダメ!

 

「この場にはいませんが、愛バはあと二人います。これがまた、俺には勿体ないぐらいの可愛い子でして」 

「知っているとも、話には聞いていたが何とも豪勢なメンバーだ。極めつけに、それをまとめる操者はサイバスター様の息子ときている」

 

 ありゃ、ご存知でしたか。

 もしかして、母さんの知り合いだったりしますか?

 軽く自己紹介も済んだし、本題へ入ろう。

 

「まずは娘の非礼を詫びたい。不快な思いをさせてしまった事、本当に申し訳なかった」

「ええ、それはもう。マサキなんて会うたびに難癖つけられるから、ストレスで性転換までしたんだよ」

「なんと!?」

「ココ、嘘をつくなよ」

「…う、嘘か、よかった…性転換はさすがに冗談だろうな、うん」

「あ、女になったのは本当です」

「えぇぇ」( ゚Д゚)

 

 もう!ココが余計な事を言うからノリアキさん引いちゃったじゃないの。

 安心してください、手術も再手術もしてないです。

 シャミ子とかいう駄女神(竜)が一晩でやらかしてくれました。

 

 お茶を飲んで落ち着いてから、話を進めてもらう

 

「君たち程ではないにしろ、(アオイ)は才能溢れた子でね。ずっと周囲の期待に応え続けて来たんだ」

「娘自慢始まった?」

「しっ!黙って聞こうぜ」

「親の私から見ても、彼女の人生は順風満帆そのものだった。大した挫折もなく……思えば、それがいけなかったのだろう」

 

 ノリアキさんの語るところによると、キリュウイン教官は敗北を知らない人だったらしい。

 これまでの20年とちょっと、挫折を味わうことなく、思うままに結果を出して来たんだと。

 突出した才能があった分、実力が拮抗する相手やライバルには恵まれなかったのだ。

 俺に対するシュウみたいな奴がいなかったのね。

 

「しかし、娘は出会ってしまった。(ことわり)から逸脱した規格外の存在に」

「誰のことでしょうね?」

「娘は戸惑っただろう、こんなにも思い通りにならない現実があるのかと」

「最初にぶつかった壁がマサキという、イレギュラーチートモンスターだったんだね。キツイww」

「…チートモンスター」(´・ω・`)ショボーン

「沸き起こる負の感情と激しい苛立ちに焦った娘は、マサキ君(壁)を前にしてこう考えた『間違っている』と」

 

 マサキとその周りが『間違っている』のだ。

 全部が間違っている!でなければ、自分が負けるはずがない、負ける事なんてありえない。

 間違いは正さなければ、その大元であるマサキを倒さなければ!

 

「と、父親なりに推理してみたが、大体合っていると思う」

「何それ?『俺は悪くねぇ』って駄々こねているだけじゃん。マサキを悪者にしてさ」

「全く以ってその通りだ。敗北を認められないから、マサキ君を認めるわけにはいかない」

「しょーもな!よわよわメンタル保つために、私のマサキに迷惑かけないでほしいよ」

「ううむ」

 

 キリュウイン教官にとって、俺の存在は目の上のたんこぶって訳か。

 随分とこじれてしまったようだが、どうしてこうなった?

 

「少々、いや、かなり甘やかして育ててしまった負い目がある。キリュウイン家の教育本心は『とにかく褒めて伸ばす』だ」

「なるほど。それで誕生したのが『空気が読めず思い込みの激しい自尊心天元突破クソ女』なんだね」

「酷い!」

「うわぁ、私の娘そんな評価なんだ……うわぁ…」_| ̄|○

 

 ココが正直に言いすぎたので、ノリアキさんはすっかり項垂(うなだ)れてしまった。

 

「で?結局、父親のあなたはマサキにどうしてほしいの?」

「三日後に行われる聖蹄祭での決闘、それについて頼みたい事がある」

「やっぱりですか」

「先に言っておくね。八百長で負けろなんて言ったら……ファイン家はキリュウインの全てを見限るよ?」

 

 ココが怒りのオーラを出しながらノリアキさんを睨む。

 八百長など持ち掛けたら最後、ファイン家はキリュウイン家を排除する方針を固めると告げたのだ。

 それこそ、あらゆる手段を用いてだ・・・怖ぇぇぇぇ(;'∀')

 愛バ一人でこのプレッシャーだと!?これがあと三人分なんて、俺だったら漏らす。

 ノリアキさん、ちょっと冷汗出てますけど?漏らして無いですよね?ね?

 

「負けろなどと言うつもりはない。むしろ逆だ」

「逆?」

「決闘ではマサキ君に是非とも勝利してもらいたい」

「へぇ」

「どうか、私の娘に敗北を教えてあげてほしい。それが私の望みだ」

 

 人は悔しさをバネに成長していく。

 涙の味や敗北を経験し己の不足を知る。

 それを良しとせず、抗おうとするからこそ強くなれる。

 そういう、当たり前で大切な事を『決闘』で教えてやってくれと頼まれた。

 負けるつもりはないけれど、俺にそんな大役務まるのだろうか?

 シュウ、賢いお前ならどうするよ?

 

「言われなくても、マサキは負けないよ。そうだよね?」

「まあ、勝つ気でいるよ」

「君の実力を疑ってはいない。だが、まともに戦えない状況ならどうだろう。例えば……覇気が使えなくなるとか」

「つまり、妨害工作を仕掛けて来る輩がいるってこと?」

「話が早くて助かるよ」

 

 キリュウイン家では、アオイのことを実父のノリアキ以上に溺愛している一派がいる。

 次期頭首であるアオイを猫可愛がりして、将来的に甘い汁を吸おうと企んでいる連中だ。

 そいつらにはアオイの母方祖父母が深く関係しているのだが、ストーリーには絡まないので割愛する。

 

「昔から彼らは過保護が過ぎる。それは今も変わっていない」

「可愛がられるのは良い事では?」

「純粋な愛情だけならね。下心が見え見えだと厄介なんだよ。ホントもう、お金が絡むと身内こそが一番めんどうなんだよねww」

「まったくだ」

 

 お互い通じ合うものがあったのか、現頭首の二人がウンウン頷いている。

 俺もとりあえず『ですよねー』と言っておいた。

 

「奴らの魂胆はわかっている。決闘でアオイに『サイバスター様の息子を倒した』という箔をつけたいのだろう」

「そのまま頭首を()げ替えて、キリュウイン家の実権は老害たちが握る計画かな?」

「わお、ちょっとした革命だ」

 

 現頭首ノリアキから娘アオイへの世代交代はまだ先の話である。

 しかし、伝説の天級騎神、その息子を大舞台で倒したと言う実績があればどうか?

 力量は最早十二分として、すぐにでも頭首へ推挙されるだろう。

 それを今か今かと待ち望んでいる輩がいればなおさらである。

 

 今回の『決闘』がお家の権力闘争に使われていること、キリュウイン教官は知らないんだろうなあ。

 

「不正を働いてでも娘の勝利を望む一派がいる。今日はその事を伝えに来た」

「わざわざ教えてくれてありがとうございます。ですが、俺と会っていることがばれたら」

「ご心配には及びません」

「あ、お帰りシロちゃん」

「ただいまです」

 

 音もなくぬるりとシロが帰って来た。

 24時間営業のスーパーへ行ってきたのか、手には膨らんだエコバックを持っている。

 

「本日、ノリアキさんはサトノ家頭首と会食に出かけた。と、いう事にしました」

「しましたって、おい」

「父に口裏合わせをお願いしただけです。それと、キリュウイン家にも()()()()()がいるようなので、上には間違った情報が伝わるかもしれませんw」

間者(かんじゃ)か、その様子だと上層部に紛れ込んでいるな……サトノは恐ろしい。ドウゲンにはあとで礼をしておくよ」

「外で待機しているノリアキさんの部下も協力的、ファイン家に頼んで替え玉も準備しました。バッチリ安心です」

「本当に恐ろしいな!精鋭の隠形待機がまるで意味をなさないとは」

「やるねぇ、シロちゃん。私が手を回すまでもなかったかな」

「マサキさんの愛バとして、これぐらいは朝飯前です」フンスッ

「えらいぞぉ、シロ。今日はいつもより丁寧にブラッシングをしてあげちゃう」

「恐悦至極に存じます」

 

 いい仕事をしてくれたな、シロ。

 頑張った子はたっぷり褒めてあげよう。

 

「私の教育不足と娘のわがまま、そして身内の暴走。全てはキリュウイン家不徳の致すところだ」

 

 ノリアキさん、なんかずっと謝ってばかりだな。

 土下座のプロとして、謝罪されてばかりだとムズムズする。

 

「恥を忍んでお願いする。決闘で娘を倒し、凝り固まった考えを改めさせてほしい」

「わかりました。俺も、精一杯頑張らせていただきます」

「どうか、よろしく頼む」

 

 ノリアキさんのお願いを了承する。

 キリュウイン教官に負けられない理由が増えた。

 俺のやるべきことは変わらない。決闘でキリュウイン教官に勝つ!それだけだ。

 

「妨害工作って、どんな手で来るかな?」

「概ね見当はついている。キリュウイン家には力を封じる術があって━」

 

 キリュウイン家の悪い人たちが、俺を罠にハメる気なんだってさ。

 怖いねー。十分警戒しておこう。

 俺も決闘に向けて準備しておかなくっちゃ。

 ココとノリアキさんが仲良く会話しているので、ちょっと疎外感。

 

「あれ?シロはどこに行った」

「こちらです。よっと、お酒はありませんが、おつまみにこちらをどうぞ」

「さくらんぼ?」

「はい。ちょうど鮮度の良さそうな物がありましたので、つい」

 

 外出したのはスーパーでさくらんぼを買うためだったのか。

 シロは、さくらんぼをノリアキさんに食べてほしいのだ。

 

 一目見た瞬間から思っていたけど、あえてスルーしていたのに・・・

 ノリアキさんは、とあるキャラクターに似すぎているのだ。

 体格といい、特徴的な髪型といい、名前といい、確かにすごくソックリだけどさ。

 ハイエロファントグリーンでエメラルドスプラッシュしそうだけどさ!

 その振りは露骨すぎだろ。

 

「こいつは美味そうだ。がっつくようで悪いが私の好物でね、さっそく食べてもいいかい?」

「どうぞどうぞ!遠慮なさらず」

 

 ちょ、ノリアキさん!?自分からいっちゃうの!

 期待を込めた眼差しで見守るシロ。耳が忙しなくパタパタ動いている。

 俺とココは顔を見合わせて『ないない、それはない』と呆れていた。

 さくらんぼを一つ手に取ったノリアキさんは、それを口に運び・・・

 

レロレロレロレロレロレロ

「「「や、やった!?!?」」」

 

 舌の上でリズミカルに『レロレロ』転がされるさくらんぼ。

 期待通りの結果に大満足のシロ。

 俺とココも思わず一緒にガッツポーズだ。

 

「レロレロ……昔から"花京院(かきょういん)"のソックリさんだと言われてきた。これぐらいは造作もないさ」

 

 そうですか、もう慣れっこですか。

 写真撮ってもいいですか?

 できれば、何パターンかポーズも決めてほしいです。

 

「このさくらんぼ。私が独り占めしては勿体ない。さあ、君たちもご一緒に!」

「いいんですか?」

「ふふ、舌がつるまでやってやりますよ」

「えー、うまくできるかなあ」

 

 それぞれがさくらんぼ準備して、

 いくぜっ!

 

「「「「レロレロレロレロレロレロ~♪」」」」

 

 突然始まった夜の会合は、

 楽しく『レロレロ』して幕を閉じました。

 

 その次の日、

 さっそく襲撃された俺は予定通り『封絶紋』を、その身に受けたのだ。

 

 〇

 

「許せない…マサキさんの体に淫紋を刻むなんて!」ムキ―ッ(゚Д゚)ノ 

「封絶紋な」

「なんかタトゥーみたいでカッコイイね。無頼漢っぽくて好きかも///」

「淫紋が発動したら教えて下さい。すぐに楽にして差し上げますから!」

「封絶紋だって言ってるだろ!?」

 

 ノリアキさんの事を報告がてら、愛バに封絶紋を見せびらかした。

 アルの反応はおかしい。クロの反応は上々だ。

 

「覇気はどう?」

「それがすごいぞ。普段の三分の一ぐらいしか出ないのよ」

「本来なら、まったく使えなくなるという話でしたが…」

「マサキさんだからね。キリュウイン家の術になんか負けたりしない」

「更にこいつと着けて…」

 

 俺は首に金属製のチョーカーを装着する。

 こいつはシュウに用意してもらった特別製だ。

 以前、アルが身に付けていた無骨な爆弾首輪と違い、洒落たデザインは普段使いにもピッタリである。

 作り手であるシュウのセンスが光る一品だな。

 輪の中央にあるボタンを操作すると、圧迫感がない程度にフィットする。

 『ピッ』という電子音がして、一瞬だけ銀の首輪が淡く発光した。

 

「これでどうだかなっと?」

 

 さっそく覇気を出してみる。

 普段より一段と色味の薄い粒子光が漂い始めた。

 出るには出るけど、すごく頼りないな。

 

「五分の一ってところか、いい感じだな」

「マサキさん1/5……男になって女になって、あと三つは何になるの!?」

「五等分のマサキさん……マサキさんが五つ子!?五人全員と結ばれるハーレム展開を希望します!」

「二人とも漫画の読みすぎだってばよ」

 

 このチョーカーは、装着者の覇気出力を抑制する機能を持っている。

 いわゆる"リミッター"である。

 決闘をすることになったとシュウに相談したら、即行で作ってくれたよ。

 優秀すぎる幼馴染は最高だぜい。

 

 "リミッター"と"封絶紋"を使い、俺の覇気をキリュウイン教官と同程度に調整する。

 準備は整った。

 これでキリュウイン教官を『うっかり殺しちゃった(*ノ>ᴗ<)テヘッ』とならずに済む。

 

「うっかりミスは誰にでもあるよ。あるある~」ニヤァ

「不慮の事故は、いつ何時起こってもおかしくありませんもの」ニヤァ

「お前たち、何か良からぬことを考えてないか?」

「「何でもないでーす」」

 

 ホントかな?

 シロとココも何かやからしそうで怖いんだよな。

 ここはひとつ、操者の俺がビシッと言ってやらないと・・・

 

「マサキさん、疲れてない?マッサージする?」

「別に疲れてないぞ」

 

 クロのマッサージは気持ちいいからな、いつもやってもらって感謝。

 今日は逆に俺がマッサージしちゃおうかな?ぐへへ。

 指が自然とワキワキ動いちゃう。客観的に見てキモイ俺です。

 

「スケベなマサキさんも好きだよ」

「私もお願いしていいですか?何だか今日は胸が張って///」

 

 くっ、どっちだ?

 クロとアル、どっちのおぱーいをマッサージすればいいんだ!!

 

「どっちも揉んだらいいじゃん」

「それだ!……いや、そうじゃなくて、お前たちの企みを聞かないと━━」

【もみますか? もみませんか?】

「もむ~♪」(*´▽`*)

 

 魅力的な選択肢には逆らえなかったよ。

 結局、愛バたちが何を企んでいたかは聞けず仕舞い。

 

 〇

 

 『只今より、日本トレーニングセンター学園"聖蹄祭"を開始する!』

 

 理事長の元気な開会宣言が学園中に響き渡る。

 上空には煙幕花火も打ち上がり、祭りの始まりを告げたのだった。

 開始前から長蛇の列を作っていた正門前では、集まった人々が歓声を上げながら学園へと入場して行く。

 

「押さないで、順番通りお願いします」

「チケットを拝見……これ偽造じゃねーか!つまみ出せ!」

「やっと来れた。ここが、トレセン学園……俺もう死んでもいい」

「バカ!まだ門くぐっただけだろ、おい!昇天するな!」

「さすが女子高、匂いが違う。ペットボトルに空気を入れて持って帰ろう」

「過度な変態行為はルール違反よ。私は新たな推しウマ娘を探すのに専念するわ」

「何から見たらいいんだろう、迷うな~」 

 

 聖蹄祭を待ちわびていた人たちは、ワクワクが抑えきれない様子。

 配布された冊子とマップを頼りに目当ての場所へ向かう姿は、祭りをやって良かったと思わせてくれる。

 みんな楽しんでくれるといいな。

 

 この日のために増員された警備スタッフは大忙し。

 確か、メジロの機動部隊と治安局(フェイルの部下)からも人を回してくれているはずだ。

 教職員たちも自分に割り当てられた場所で仕事中。

 俺も学園内の巡回をしているところだ。

 

 さて、生徒たちはというと・・・

 

「焼きそばいらんかね~ゴルシ印の焼きそばだよ~」

「シラオキ様は全てをお見通しです。今日の運勢占ってみませんか?」

「ヘイヘイヘーイ!そこの道行く若人たち、うちらのステージ見てってちょ」

「腕相撲大会の参加者募集!マッスルボディ(ライアン)を倒すのは君だ!」

「同人誌即売会(非エロ)やってまーす。ここでしか買えない"でじターン"と"ベルりん"先生の限定本あり」

「グラウンドにて"ウマレース"開催中。一着のウマ娘を当てた人には理事長のブロマイドが━」

「VRウマレーターに挑戦してみませんか?仮想空間では人間でもウマ娘になれますよ」

「ドリンクは無料配布だ、遠慮なく飲みたまえ。何?色がおかしい?……それは安全な着色料さ、飲めば君自身がもっと不可思議な色に━━」

「無許可露店発見!直ちに警備兵を呼べ!」

「あのマッド!祭りでもやらかす気か、絶対に逃がすな!」

 

 おー、活気があっていいな。

 早くも客引き合戦が始まっており宣伝や営業に余念がない。

 みんなそれぞれの出し物を頑張っているようだ。

 露店売り上げ上位には学園側からご褒美が出るらしいので、相当気合が入っているのだろう。

 

 愛バたちはクラスの出し物に参加すると聞いている。

 何とか時間を作って見に行くつもりだ。

 

「ンンンンンンンンッッッッ!!!!新たなモルモット獲得のチャンスがァァァァッ!!!!」

「暴れんなこの!マサキ教官、スルーしないで手伝ってください!」

「カピバラ君ンンンッッ!!決闘前に私の作った栄養剤はいらないかい?これを飲めばキミのロリコン度数は三倍に━━」

 

 うるさい駄バに"おそろしく速い手刀"をお見舞いしておいた。

 覇気が弱まっているせいか、一回で気絶しなかったので十数発連打するハメになった。

 首が曲がったまま連行されるアホを見送って、巡回を続けよう。

 

 〇

 

 祭りが始まってしばらく、

 巡回任務を終えた俺は、交代要員に引継ぎをして休憩に入った。

 

「待ち合わせの場所は、えーっと」

 

 三女神像(似てない)のある噴水広場だったよな。

 みんなも今頃向かっているだろう。

 奇跡的なスケジュール調整により、関係者ほぼ全員に休憩を捻出した貴重な時間だ。

 方向音痴を発揮して遅れた・・・なんて事にならないよう注意しよう。

 

 足早で広場へ向かっていると学内アナウンスが聞こえて来た。

 

『本日は聖蹄祭にお越しいただきありがとうございます』

『ご来場の皆様に、迷子のお知らせを致します』

『ブランド物のフードポンチョを着た青髪青眼、三歳ぐらいの大変可愛らしい女の子が、迷子センターでお連れ様をお待ちです』

『お心当たりのお客様は、教室棟一階臨時迷子センターまでお越し下さい』

『いや、マジでめっちゃ可愛いな。お持ち帰りしてぇ』

 

 おいおい、最後の方に漏れちゃいけない本音が聞こえたぞ。

 気持ちはわからんでもないがね。

 迷子、しかも幼女の迷子だ。

 これだけ人が多いと親とはぐれる子もいて当然だ。迷子センターを準備して正解だったな。

 保護者は早く迎えに行ってあげなされ。でないと、俺が行っちゃうわよ!

 

『繰り返し迷子のお知らせを致しま……はい?えっ……わ、わかったわ』

 

 おや?アナウンスが途中で途切れてしまったぞ。

 何事だろう?

 

『保護した迷子が身元引受人を指定しています』

『トレセン学園養護教官"アンドウマサキ"……また、マサキ教官か…』

『この世の者とは思えない激カワ幼女が!あなたをご指名です!ちくしょうめ!

『名前は"ガッちゃん"と言えばわかるらしいです。はよこいや!ロリコン!

もげろ

 

 俺に対するのヘイトが酷すぎない?

 外からのお客様に変な誤解されたらどうすんのよ!

 

ガッちゃぁぁぁんんんんんッッッ!!!!」(≧▽≦)

 

 俺は超高速で迷子センターへ走るのであった。

 ンンンンンンンンッッッッ!!!!今行きますぞォォォォッ!!!!

 

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