俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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天が集う

 聖蹄祭が開催されたトレセン学園は大いに賑わっていた。

 見渡す限りどこもかしこも大盛況の大繁盛、たくさんの歓声と笑顔で溢れている。

 あまりの盛況ぶりを見た理事長の秋川やよいは、

 

『圧倒的じゃないか我が学園は』

『某ネズミのテーマパークも恐れるに足りない』

 

 と、調子こいた発言したという。

 ハハッ!やよいちゃんは怖いもの知らずだね!ハハッ!

 

 マサキは人でごった返す学園内を移動していた。

 衝突事故を避けるため早歩きである。

 その足取りは軽い、動きから嬉しさがにじみ出ている。

 (はや)る気持ちを抑え向かう先は、祭りに合わせ臨時で設置されている迷子センターだ。

 

 水の天級騎神"ガッデス"

 通称『ガッちゃん』に身元引受人として指名されてしまったのだ。

 光栄の極まる重大任務に胸が高鳴る。

 

 ガッちゃんは俺的"合法ロリランキング"ぶっちぎりで世界一位だ。

 嬉しいことに彼女は俺にすごく懐いてくれている。

 俺とガッちゃんは大の仲良し。

 母さんが『そいつだけはやめて!』と必死に懇願するレベルだ。

 抱っこから食事の世話まで、ガッちゃんの方から積極的に頼んで来てくれるから願ったり叶ったり。

 ガッちゃんはお世話されて嬉しい。俺はガッちゃんのお世話ができて嬉しい。

 ああ、なんと素晴らしきWin-Winの関係!!

 

「会うの久しぶりだな……はぁ~ん!なんだか興奮して来たぞ」

 

 変な声出ちゃったわぁ~ん。

 通行人に『なんだこいつキモッ!?』みたいな顔をされても気にしない。

 俺のことは忘れてお祭り楽しんで行ってね!

 

「待ってて、ガッちゃん」

 

 例え、ガッちゃんの正体が40歳オーバーのアラフォーだとしても!

 母さんより年上の天級騎神最年長(ミオを除く)だとしても!

 ロリな彼女はとてつもなく可愛いのだ!もう、それだけで全部許せる。

 早く国宝に…いや、世界遺産に登録するべきだと思うな。

 

「今、会いに行くよ」

 

 ニヤケた表情のまま、俺はスピードを上げる。

 

 〇

 

 競歩スタイルで迷子センターに到着。

 しかし、何やら様子がおかしい。

 入口付近で金髪の女性が騒いでおり、警備兵とセンターの係員が困り顔で応対している場面に遭遇した。

 

「師匠!あなたの愛弟子がお迎えに上がりました。なんで無視するんです?ねえ、師匠ってば!」

「テュッティ教官、落ち着いて。あの子が怖がってしまいます」

「えっと"ガッちゃん"さん、あそこで騒いでいる金髪巨乳と知り合いなのかな?」

「知らない……たぶん、誘拐目的………怖い、追い払って」

「テュッティ教官、幻滅しました」

「どうする?会長を呼んだ方が…」」

「下がってください。それ以上近づいたら制圧行動に出ざるを得ない」

「師匠ォォォ!?何でぇ!何でなのぉぉ!?」

 

 うわぁ・・・(´Д`)

 学生時代に憧れて告白までした女性の発狂する姿を目撃しちゃった。

 甘くて切ない青春の思い出ブレイカー!

 

「待ってるの……テュッティ違う……マサキがいい」

「ものすごくジェラシー!!でも、私の名前を呼んだわ。これで知り合いだと証明されたわね」

「そ、そうなの?」

「思い出した……悪質なストーカー……幼女趣味のガチレズ」

「テュッティ教官!?!?」

「恥ずかしくないんですか!あなたまでマサキ教官のような真似を!」

「違う!違うのよぉぉぉ」

 

 テュッティ先輩が更に発狂。現場は益々混乱して来た。

 騒ぎを聞きつけて野次馬も増えてきている。

 どうしよう、今あそこに行くのちょっと怖いわ。

 とか思っていたら、ガッちゃんとバッチリ目が合った。

 青い瞳をパチくりさせて俺をロックオンする。

 どんな仕草もいちいちカワイイですね~!

 

「迎え……来た……あばよ」

「え?あ、ちょっとキミ」

「もう師匠ったら、知らないフリして私を困らせるなんてお茶目さん」

 

 ガッちゃんは係員の間をすり抜け、テュッティ先輩(ハグ待ち体勢)をガン無視、

 そのまま俺のところまで小走りでやって来た。

 

 柔らかそうな白い肌に青髪青眼のダウナー系ロリは何度見てもいいものだ。

 ドライアイになろうとも、瞬きする間も惜しんで凝視するべき存在である。

 今日はお出かけ用にお洒落していて尚更カワイイ。

 

 子供用のミニスカートに黒タイツの着用、上着として肌触りの良さそうなポンチョを羽織った姿。

 綺麗なアイスブルーの髪を二房に分けて結び肩に垂らした髪型も似合っている。

 ガッちゃんは自分の美容や格好に無頓着なので、母さんたちがスタイリストとして頑張ったのが(うかが)える。

 俺の脳内カメラは先程からずっとガッちゃんを激連写中よ。

 あとで実際に撮影させてもらおう。

 行くぞマサキ。スマホのストレージは十分か?

 

「マサキ……おひさ~……抱っこ、して」

(おお)せのままに!」

 

 ガッちゃんは、さっそく抱っこをねだって来た。

 その願い秒で叶えてみせる。

 丁寧かつ優しく抱き上げる事に成功。我ながら手慣れたものだ。

 それもそのはず、少し前にされる側の気分を身をもって味わい尽くしたからな。

 その経験を得て俺の"抱っこスキル"は格段に上昇した。

 幼女を抱っこする手腕にかけては、最早日本屈指の実力者だという自信がある。

 

 小さな体から心身が浄化される温もりと匂いを感じる。

 それと同時に、海のように大らかで、清流のように澄んだ覇気が俺を包み込んでくれた。

 抱っこしているはずの俺が、逆に護られ甘やかされてしまう感覚がこそばゆい。

 見た目幼女で年上の包容力あるとか強すぎる。

 これこれ、これがガッちゃんですよ!

 封絶紋をくれやがった偽ロリとは比べるのもおこがましい。

 

「ん……また変わった……どんどん強くなる、ね」

「わかる?修練の成果出ちゃってるかな」

「頑張る子は好き……えらい、えらい……」

「デュフフフ、もっと褒めて」

 

 鋭敏な感覚で俺の成長具合を把握したガッちゃんに褒められた。

 嬉しくてデジタルみたいな声が出ちゃった。

 愛バたちと修練を積み、シャミ子の無理難題をクリアした結果、俺も着実に強くなっているはず。

 今ならあのルクスにだって勝てる、来るなら来いってんだ。

 

「今日は……マズくない?……お祭り、中止になる」

「だよねー!ルクス、来るな!来るなよ!来ちゃダメー!絶対来ないでよ!」

 

 変態仮面(ルクス)、マジで来ないでくれ。

 いくらアホで最低なお前でも今日ぐらい空気読めよ!

 

「それに……縛りプレイじゃ……厳しい、よ」

「そうだね。奴を倒すなら全力で行かないと」

 

 ガッちゃんは俺の胸をつんつんと指で突いた。

 俺を縛る枷が増えていることに気付いたのだろう。

 

「これ……封絶紋……キリュウイン家の仕業?」

「よくわかったね。さすが、天級随一の術師だ」

「解呪する?……今なら格安で……やるよ」

「有料なんだw」

 

 ガッちゃんなら封絶紋をすぐさま消し去ってくれるだろう。

 ありがたいけど、今日はこのままでいい。

 これは決闘用にあえて残してる事を説明した。

 

「今日のための安全装置ってやつだよ。こいつも含めてね」

「私もしてる……ペアルック……だね」

 

 首に装着したチョーカーを指差すと、ガッちゃんも自分の首元を触れる。

 そこには俺がしている物と類似した形状のチョーカーが存在した。

 

 機械部品の付いたお洒落な銀色の首輪。

 これこそが、天才であるシュウが心血を注いで完成させたアクセサリー。

 天級騎神の神核に作用する特別な装置なのだ。

 

「使い心地はどう?何か窮屈だったり違和感があったりしない?」

「今のとこ……快適良好……他のみんなも、たぶん同意見」

「そいつは良かった」

 

 俺が首に着けている物が覇気出力を抑制する"安全装置(リミッター)"であるのに対し、

 ガッちゃんが首に着けているのは"安定機(スタビライザー)"という装置だ。

 俺は"スタビ"と略称で呼んでいたりする。

 

「ありがと……これがあれば……外でも元気」

「礼ならシュウに言ってあげて。頑張ったのはあいつだから」

「うん、わかってる……シュウえらい、マサキもえらい……二人がいて、よかった」

「嬉しいこと言ってくれるじゃないの。シュウも喜ぶよ」

「サイとネオは……子に恵まれた、ね……私も誇らしい」

 

 シュウ曰く、天級騎神の神核は生まれながらにして、世界(星)と連結(リンク)状態にあるらしい。

 世界そのものから絶大な力を引き出し行使する事ができるのだから強いのも当然である。

 その代償として致命的な弱点も抱えている。

 

 自らの神核が生み出す膨大な覇気は寿命を削る。

 全身を隈なく検査して判明したのは、齢30年前後までしか生きられないという残酷な事実であった。

 天級という称号が誕生する以前から、属性覇気などの超常的力を持つウマ娘は幾人も存在していたが、総じて短命であったという。

 この症状には、見た目に影響が出ないという奇妙な特徴もある。

 幸いなのか、それとも質が悪いのか、死の瞬間まで彼女たちの美貌が崩れたという事例はない。

 

 短命に抗う方法も一応ある。

 潤沢なプラーナ(自然発生する覇気)反応のある土地(龍脈)を生活圏にすればいい。

 母さんたちが自然豊かなラ・ギアスで隠居生活を送っているのは、そういった事情があるのだ。

 天級騎神は神核にプラーナを取り込むことで、寿命を削るというリスクをカットしているらしい。

 この辺の理屈はシュウもまだ憶測の域を出ていないとボヤいていた。

 

 以下、母さんたちのコメント。

 

『ラ・ギアスの外は正直辛いわね。体が(だる)いのなんのって』

『若い頃はこんな風じゃなかったの……シュウ君とマサ君に『老けた?』なんて思われたくない~』

『故郷も気が枯渇して住めなくなってしもうたわい。旦那(ダーリン)とラ・ギアスに移住できたのは僥倖(ぎょうこう)じゃった』

『小っちゃくなっても…どうにもならない…残念』

『私?私はどこでも全然平気へーきーwアインスト最強っスww』

『『『『やっぱ地属性はクソ!!』』』』

『うるさいよ、おばはんども!アインスト怒らせたら怖いよ?静寂に支配された新世界作ったろかぁ!』

 

 天級騎神の縛りに該当しないミオはともかく、母さんたちには元気で長生きしてもらいたい。

 

 長時間ラ・ギアスから離れると母さんたちは酷い体調不良を起こしてしまう。

 昔、ガキだった俺の我儘で母さんを外に連れ出した事があるのだが。

 結果として、倒れて寝込んでしまった母さんを見るハメになった。

 あの時のことは今でも俺のトラウマだ。

 

 『ここで十分満足よ』と母さんたちが言うように、ラ・ギアスは住みやすくていい所だと思う。

 だけど、たまにはどこかへ遠出したいと思うこともあるはずだ。

 空を飛んだり、ワープしたりと、何かと元気が有り余っているなら余計にね。

 

 いつの日か母さんたちに自由を、俺とシュウはずっとそう思っていた。

 その思いは形となり実を結ぶ。

 

「そうして完成したのが、ガッちゃんが今、身に着けている"スタビ"だよ」

「おー……よくやった……褒めて遣わす」パチパチパチ

「ありがたき幸せ!」

 

 ガッちゃんのちょっと偉そうな労い、頂きました!

 主に頑張ったのはシュウで、俺は材料であるオルゴナイトを提供しただけ。

 俺が生成した高純度オルゴナイトは、バスカーモードが終了しても消えず存在し覇気を放出し続ける。

 スタビの内部構造には細分化されたオルゴナイトが組み込まれ、今も淡い光を放っているはずだ。

 生成している俺自身にもよくわからないオルゴナイトを《分析→加工→実用》までやってのけるとは、

 シュウはマジもんの天才であると再認識した。

 

スタビは内蔵された結晶体と装着者の神核を繋ぎ合わせ、プラーナ代わりの覇気を供給することが可能だ。

 ペースメーカーや補聴器のような医療機器と同じような物だと思ってもらいたい。

 天級騎神の命を安定させる機工、故に安定機(スタビライザー)だ。

 このスタビがあれば母さんたちはラ・ギアスの外へ自由に移動できる。

 ずっと行きたいと言っていた『某ネズミのテーマパーク』にも行けるよ、ハハッ!

 

 完成したスタビのお披露目も兼ねて、俺は学園の聖蹄祭に母さんたちを招待したのだ。

 つまり、今日このトレセン学園に天級騎神全員が集合する。

 

 〇

 

 ガッちゃんは学園に入場後、程なくして母さんたちとはぐれ迷子になってしまったらしい。

 母さん基本自由に動くし、ガッちゃんは小さし、この人混みなら無理もないか。

 

「昔と…全然違う…もはや別物」

 

 ネオさんを除く天級騎神は学園のOBにあたる。

 ガッちゃんも学園の内部構造は頭に入っていると、高を括っていた。

 しかし、今の学園は敷地面積の拡張及び度重なる増改築でほぼ原形を留めていない。

 過去の脳内マップはまるで役に立たなかったみたい。

 

「迷子になったら…すぐ保護された…みんな、優しいね」

 

 そりゃあね。

 ガッちゃんレベルの激カワ幼女が途方に暮れていたら、俺でなくとも喜び勇んで駆けつけるわ。

 

「今、学園に危険人物がいるんだって……"ロリマス"とか言う……ド変態らしい、よ」

「ロリマス?どこかで聞いたような。うっ!…‥‥あ、頭が…」

「ロリマスは…私みたいな子を…ストーキングしてテイクアウトもするみたい」

「なんだと!そいつ絶対許せねぇ。見つけ次第ボコボコにしてやる」

「あちゃー…自覚…なしかぁ…」

 

 察しの良いガッデスは気付いていた。

 ロリマスが『小児性愛を極めし者(ロリコンマスター)』の略称であることを、

 "ロリマス"=マサキが学園関係者に周知の事実であろうということも。

 ()しくもそれは、とある異世界にてマサキに付けられたコードネームであったが、不都合な称号をマサキ自身はすっかり忘れていた。

 そんなマサキをガッデスは生温かい目で見守るのである。

 

 俺はガッちゃんを抱っこして待ち合わせ場所へ行く事にする。

 きっと、母さんたちもそこへ向かっているはず、運が良ければ途中で合流できるだろう。

 その前に、フリーズしたままの先輩を何とかしよう。

 

「テュッティ先輩。いつまで固まっているんですか、行きますよ?」

 

 声をかけて肩を揺さぶっても先輩は停止したままだった。

 愛してやまない師匠に蔑ろにされたショックが大きすぎたのだ。

 そんな弟子に冷めた眼差しを向けるガッちゃん。

 

「…返事がない…ただの甘党のようだ…」

「もう、ガッちゃんが冷たくするから」

「テュッティ…昔から私にベッタリ…小さくなってから、もっと酷く……どん引き」

「ガッちゃんのことが本気で好きなんだよ。気持ちを()んであげて」

「無理ー……同性愛むりー……将来有望な、若い男じゃないとムリー」

 

 欲望だだ漏れな合法ロリである。

 ガッちゃん的には俺は合格らしい。喜ぶところかな?

 

 結局、テュッティ先輩の石化は『おらー、はよ治れ』と、ガッちゃんがビンタすることで解除された。

 嬉しそうな顔で『ありがとうございます!』と叫ぶ姿に、どこかで見たような既視感を覚える。

 

「じゃあ、マサキ。師匠のことをよろしくね。くれぐれも、勝手に持ち帰ったりしないように!いいわね?」

「そ、そ、そんなことしませんよ。手頃なボストンバッグなんて常備してませんよ」

「養ってくれるなら……誘拐……望むところ」

「利害が一致した。もう、我慢しなくていいよね。さらってもいいよね!」(*´▽`*)

「いいわけあるか!おふざけが過ぎると、サイさんに言いつけるわよ?」

「母さんにチクるはやめてください~」( ゚Д゚)

「むー…テュッティ…幸せな老後を、邪魔しないで」

「師匠のことは私が養いますから、ご安心を!では、またあとで」

「マサキ、助けて……私……糖尿病で死ぬ、かも」

 

 激甘党と同居した場合の食生活を心配するガッちゃん。

 基本、家事はしないから家のことを同居人に任せるスタンスなのよね。

 当然のように食事の準備など出来ようはずも、する気もない。

 放っておくと汚部屋を作り出す『生活能力皆無のクソニート』と母さんが嘆いていたっけか。

 

 テュッティ先輩はやり残した仕事を片付けてから、改めて合流することになった。

 迷子センターで騒がなければ時間のロスを防げただろうに、

 ガッちゃんが絡むと途端にポンコツになる先輩も、素敵やん。

 でもなあ・・・

 

「テュッティ先輩……いくらガッちゃんが可愛いからって『幼女相手に興奮(ハアハア)する』なんて普通じゃない。病院に連れて行った方が…」

「ブーメラン……刺さってる、よ……超巨大なヤツ」

「どこどこ?変わった仮装をしている奴がいるんだなあ」

「さすが…真性…あくまで自分は正常だと、言い張る」

 

 〇

 

 どうしてこうなった?

 

「お、俺は何もしていない、無罪だ!」

「わぉ…四面楚歌…だね」

 

 俺は数十を超える人数に周りを取り囲まれていた。完全包囲である。

 包囲陣を組んでいる誰もが俺に厳しい目線を寄越すので、居たたまれない。

 

 ガッちゃんを抱っこして歩くこと数分、

 実にいろんな人が声をかけて来た。

 ガッちゃんを見て『可愛いですね~』となった後、俺を見て『なんだァ?てめェ……』の黄金パターンですよ。

 警備兵のみならず顔見知りの同僚に生徒たち、挙句の果てには今日が初対面の一般来客までもが、

 正義感に燃えた瞳で俺に職務質問吹っ掛けて来る状況って何なのよ!?

 『あ~やっちゃったね~』と、最初から俺を誘拐犯(変質者)だと決めつけているのはどうしてよ!!

 

 『ついにこの日が来たか』

 『やっちゃったもんはしょうがない。自主しよ?』

 『お前の罪を数えろ』

 『どこからさらって来た!?正直に言え!』

 『本性を表しやがったな』

 『至急、至急、応援求む』

 『被疑者は手練れだ。慎重に行くぞ』

 

 こんな風に失礼な言葉を浴びせられるシーンが何回もあって悲しいやら怖いやら。

 俺はその都度必死に弁解したけど、誰も聞く耳を持ってくれなかった。

 『先を急ぐんで、通してください』と立ち去ろうとしたら、肩を掴まれて拘束されそうになったので、やむを得ず少々抵抗した。

 それがいけなかったらしく、応援を呼ばれて包囲陣が完成したって訳よ。

 ミスったな。下手な弁解などせず最初から逃げていればよかった。

 おかげで未だに待ち合わせ場所にたどり着けていない。

 

「マサキ…人気者…みんな、めっちゃ見てる」

「うん、見てるね。どいつもこいつも、犯罪者(ゴミクズ)を見る目だよね」

「またか…みたいな…呆れ顔している人も」

「またって何!?幼女をお持ち帰りした経験なんか…………ありました!」

「さすが…幼女誘拐の…プロ?」

 

 プロじゃないよ!よくてセミプロだよ!

 ええい!これもガッちゃんが可愛い過ぎるのが原因だ。

 天級は容姿のレベルも飛びぬけているので目立ってしょうがない。

 

 はっはーん、マサキわかっちゃった!

 こいつら、正義ぶっているが俺のことが羨ましいんだな。

 ガッちゃんを抱っこしている俺が妬ましくて、強硬手段に出やがったか。

 この俺から幼女(合法)を奪うだと?厚顔無恥も甚だしいわ!

 

「マサキ教官、今ならまだ間に合います。さあ、その子をこちらへ渡してください」

「拒否!断固拒否!」

「こいつ、やっぱり」

「もう撃ってもいいんじゃね?」

「キシャァーー!!死守!死守!ガッちゃんは絶対に渡さないわよ!」

「ダメだコイツ……終わってやがる」

「い、今すぐたづなさんを呼んだ方が━」

「どうどう…冷静に…私がちゃんと説明する、から」

 

 威嚇する俺の頬をペチペチ叩いたガッちゃんは、包囲してる人たちにの目をジッと見た。

 小さくても天級騎神、美幼女のただならぬ(プレッシャー)に辺りは静まる。

 頼むぜ、ガッちゃん。俺の清廉潔白さを奴らに教えてやってくれ!

 

「マサキ、誘拐犯じゃない…養ってくれる予定、だから…飼い主?ご主人様?」

「「「「え!?!?」」」」

 

 あのさぁ・・・誤解を招く言い方は良くないと俺は思うな。

 ガッちゃんに任せたのは間違いだと気付くも手遅れ。

 

「私は、マサキの所有物…ペットでも奴隷でも…何でもいっか」

「「「「か、完全調教済みだとぉ!?!?」」」」

「ひぃぃ!違うんです!」 

 

 周囲から『この鬼畜!』『ふざけんな!』『もげろ』などと罵詈雑言が飛ぶ。

 状況の悪化に『正直に言ったのに何で?』と首を傾げるガッちゃん。可愛いから許す!

 でも、困った事になったぞ。

 

「小さい子に何を言わせているんですか!」

「こう見えて俺よりだいぶ年上だけど?」

「年上なめんな…敬えー…(あが)めろー」

「見え透いた嘘はいいです」

「誘拐でないと言うのなら、二人はどういう関係?」

「娘とか言う気じゃないですよね?」

 

 俺とガッちゃんの関係?

 仲の良い友達で、治療術の先生で、合法ロリという俺の癒しである。

 だが、それを言ってこいつらが『そうですか』と、納得して引いてくれるか?

 この場を収めるには、俺たちの強固で純真な絆を主張しなければならない。

 友情を超えた親愛を持つ存在・・・思い当たるのはやっぱりアレだ。

 

「この人は、俺の母さんの友達だ」

「「「「ん???」」」」

 

 つまり、俺にとってガッちゃんは・・・

 

母親みたいなもんですね!」(´▽`)

 

 俺の主張に静まり返る一同。

 俺たちの絆に驚いて声もでないと見える。

 風属性ママの偉大なる教え『母親と息子の絆は永遠にして最強!』は、間違いじゃなかったんや。

 母さん以外の天級騎神も、みんな母親みたいだと勝手に思っているよ。

 母性を感じたから仕方ないね。

 

「マサキ、マイサン…養子縁組する?…介護よろ…」

「ガッちゃんの老後はテュッティ先輩と相談かな」

「私、お金ない…サイの財産…山分けしよ」

「ははは、母さんが聞いたらマジギレしそう」

「サイには黙ってて…二人の秘密、だね」

 

 この合法ロリ、老後に向け介護要員の確保と友人の財産を狙っているだと!?

 ちゃっかり者で可愛いじゃん。

 

 俺とガッちゃんの仲睦まじさに呆気に取られた諸君?。

 もう気は済んだでしょう。

 いい加減そこを通してもらいますね。さあ、どいたどいた~。

 

「なんて奴だ……バブってやがる」

「あんな小さい子に、バブみプレイを強要だとぉ!?」

「あ、ありえない。こんなヤバいロリコンが野放しだと」

「すげぇ、もう変態を通り越して尊敬に値するわ」

「さすがマサキ教官、俺たちに出来ないことを平然とやってのける」

「くっ、うらやま……待て、私はいったい何を言って!?」

「気を付けろ!マサキ空間によるミーム汚染が始まっているぞ」

 

 何故だ?包囲が未だに解かれる気配がない。

 強行突破する選択肢が現実味を帯びて来た。

 その時だった。

 

「マサ君がバブみを覚えたと聞いて!」

「ここに居ったのか、探したぞい」

 

 強固な包囲陣をかき分けて、新たに二人の美少女が登場する。

 隠し切れないオーラと美貌の存在に周囲は釘付け、そして騒然となる。

 俺には見慣れた光景だ。

 

「来てくれたんですね、ネオさん!グラさんも」

「やっとか…遅い…待ちくたびれた…」

 

 天級騎神、闇のネオグランゾンと炎のグランヴェール。

 ママ友(母さんの友達)の登場に俺は安堵する。

 思った通り合流できたぞ。

 

「もう、勝手にはぐれたのはガーさんでしょうに」

「お主はついでじゃ。わしらが探しておったのはマサキよ」

「酷い…おばはんの癖に…ロリの扱い、下手すぎ」

「「おばはん言うな!」」

「い、いはい(痛い)…」

 

 怒った二人に頬っぺたをつままれ涙目になる、ガッちゃん。

 何だかんだ言って、ネオさんたちは迷子になったガッちゃんを心配していたんだろう。

 彼女たちがとても優しい人だって、俺はよーく知っている。

 

 それよりもだ。二人ともお洒落してるー!

 う、美しい。そして可愛い!

 普段と違うお出かけスタイルが新鮮でドキドキしちゃう。

 

「よくお似合いです。まったく、目の保養になりますな!」

 

 俺の発言に周りがウンウン頷いて同意している。

 

「ホント?マサ君に褒められたちゃったわ。嬉しい」

ヤンロン(せがれ)もこれぐらい正直じゃったらのう」

 

 今日のネオさんも、ため息が出るほど美しい・・・

 シュウの母親で、俺のこともとても愛してくれている。

 紫紺の髪と眼を持つ、ゆるふわな雰囲気のお姉さん。

 プリーツスカートにニットとシャツの組み合わせ、軽やかでかわいい装い。

 動きに合わせてふわりと揺れるスカートと、うるツヤのツーサイドアップヘアが彼女の魅力を引き上げている。

 

 グラさんも大層お綺麗である。

 鮮やかな紅の髪と眼をした、貫禄ある物言いをする。ヤンロンの母親だ。

 いつものチャイナドレスではなく、ティアードスカートにロゴTシャツとジャケットのコーデ。

 毛量の多いポニーテールが特徴で美しくも可愛らしい。

 

 二人とも小柄なので、ぱっと見は中高生のそれであるが、存在感は並みのアイドルを軽く凌駕しており、人を惹きつけてやまない。

 

大好きです!!

 

 あ、ヤベ勢いで告っちまった。

 将来を誓い合った愛バがいるのに、何やってんの俺のバカバカ!

 恐ろしい、これが天級騎神の力(魅了)か・・・

 

「すんません、今の好きは『Like(ライク)』の方でお願いします」

「お…浮気か…コラァ…」

「カカカ、ほんにお主は()い奴じゃのう」

「私も好きよ、マサ君!『Love(ラブ)』の方なら、二人でサイさんを説得(始末)する必要があるわね!」

 

 ガッちゃんが頬を膨らませてペチペチして来る。

 グラさんは笑いながら、ネオさんは照れながら、ご機嫌な様子で俺と肩を組んだり腕を絡めたりと・・・

 傍から見ればイチャついているように見えるだろう。

 しかし、これは健全なるママ友(母の友人)とのスキンシップである。

 健全なご近所付き合いの延長であって、何もやましい事はない。

 

「あの、マサキ教官?」

「なんだね?俺はママ友との交流で忙しいのだが」

「えっと、この二人とはどういう?」

「え?見てわかんないの」

「わかりませんよ!美少女を侍らせて何やっているんですか!?」

「もげろ」

「愛バでは……ないですよね?だったら」

 

 めんどくさいなぁ。

 ていうか、君たちまだ居たの?

 いつまでも人を囲んでないでお祭り楽しんで来たらいいのに。

 俺はわかり切った答えを述べた。

 ご覧の通り・・・

 

俺の母親的存在ですけど、何か?」( ̄д ̄)

 

「「「「何か?じゃねぇーよ!!!」」」」

 

 360°からの総ツッコミはやめてよ。

 何が気に入らないのか、わかんないっピ!

 

「俺、何か間違ったこと言いましたか?」

「ふむ。別に間違ってはおらんのう」

「そうね。マサ君は私の次男だものね」

「養え…面倒見て…贅沢させろ」

「「「「えぇ…‥‥」」」」

 

 俺たちの正当性に群衆どもが尻込みを始めたぞ。

 ほら、何も問題ない。このまま押し切る!

 

問題あるわよ!大ありよ!

「「「「今度は何だ!?!?」」」」

 

 上空から銀髪の美女が舞い降りて来て優雅に着地した。

 そろそろ来る頃だと思っていたが、登場シーンがヒーローのそれだ。

 ラ・ギアスの外なのでナチュラルに飛行するのは控えてほしい。

 

「まったく、手塩に掛けた息子をたぶらかすんじゃないわよ!」

「「「ぶーぶー」」」

「ぶー垂れてもダメ!マサキ、私が何者なのか教えてやりなさい」

 

 オ~ケェイ!

 心に響く名台詞でお伝えしよう。

 

よく…わかりません…母さん(本物)です

「何でVガンダム風に言ったの!?」

「久しぶりに会ったから、嬉しくて////」

「なら仕方ないわね!」

「この親子、理解し難いコミュニケーションをしよるわ」

「あれがマサ君とサイさんの平常運転なのよ」

「どっちも、アホ…似た物親子」

 

 バイク巡洋艦の巨大タイヤがぶつかったところで、母さんは無傷である。

 むしろ、母さんに衝突したバイク巡洋艦が爆散するまである。

 『これ……母さんです』とは、実はアニメでは言ってないのである。

 

「とりあえずハグしとく?」

「そうね。とりあえずしましょう」

「あーズルい。私もマサ君とハグしたいのにー」

 

 俺と母さんは再会を祝して抱き合った。

 何かあってもなくてもハグして愛情を確かめ合う、アンドウ家ではこれが日常だ。

 ガッちゃんを抱っこしたままなのを忘れて・・・

 

「むぎゅぇ…サイの胸に…潰され、る……乳硬てぇ」

「誰の乳が硬いって?この無駄飯食らいが!マサキ、限界まで密着するわよ」

「アンドウプレス…たす、け…おごご…」

「母さん、その辺で勘弁してあげて。ガッちゃんの顔と俺の肋骨から妙な音が聞こえる」

 

 俺と母さんに挟まれたガッちゃんは、胸の中で圧縮されかけた。

 止めに入ってくれたネオさんたちのおかげで、骨が軋む程度で解放してもらえ事なきを得る。

 適度なハグで満足した母さんは俺たちを取り囲む集団、その代表格に近づいて話しかける。

 母さんが動く度に周りがざわつくのも、あるあるの光景。

 

「お騒がせしてごめんなさいね」

「あ、いえ」

「もう解散していいわよ。マサキは誘拐犯じゃないから」

「え?いや、しかし」

「解散していいわよ、ね?」ニッコリ

「「「「は、はい!失礼しました~」」」」

 

 あれ程粘着していた職質集団が、母さんのスマイル威圧によって解散させられる。

 蜘蛛の子を散らすように消えていく人々、誘拐犯の汚名を着せられるピンチは去った。

 やはり母は強しだ。

 

 俺の母さんは動きやすい服装を好む傾向にある。

 基本的にスカートよりもジーンズ等のパンツスタイルが多い。

 だが、今日の母さんはひと味違った。

 

「おっふ。母さん、珍しくスカート履いてる!?」

「たまにはね。変かしら?」

「変なわけあるかーい!超似合ってるよ。愛してる!!」

「そう///ならよかったわ」

「あーサイさん照れてるw」

「うっさいわね」

 

 安心したように笑う母さん。俺の反応が気になっていたようだ。

 母さんたちレベルになると余程の事がない限り、何を着ても似合っちゃうんだよね。

 もっと自信もっていいと思う。

 

 陽光を反射して煌めく白銀のロングヘアは今日もサラサラ。

 力強い緑の瞳。俺を見つめる眼差しはどこまでも優しい。

 長めのタイトスカートにブルゾンを合わせ、キャップをかぶりスニーカーも履いている。

 アクティブなかっこよさを演出しながら、綺麗可愛さも盛り込んだ着こなし。

 最高に似合ってる!

 老若男女問わず見惚れること必至の、暴力的なまでの美人。

 この人こそが、俺が太鼓判を押してやまない自慢の母さん。

 風の天級騎神サイバスターである。

 

「マサキの…ファッションチェック…ねちっこい」

「気付いてないようじゃから言うが、全部声に出ておるぞ?」

「えぇ!?マジで!早く言ってよ、恥ずかしぃ////」(*ノωノ)

「恥ずかしいのはこっちなんだけど!会って早々褒め殺しに来る息子って何?」

「そんなこと言って、マサ君に褒められてニヤついていた癖に」

「ネオ、お主も相当じゃったが」

「結論…マサキに褒められて…みんな満足」

 

 ファッションチェックを口に出していたらしく、とても恥ずかしい思いした。

 『お洒落した甲斐がある』と、母さんたちが喜んでくれたのが救いである。

 

「お返しにマサキもファッションチェックされてみる?」

「いやいや、チェックするほどものではございませぬ」

 

 俺の服装はアウトドアブランドのパーカーにジョガーパンツだ。

 動きやすさを優先した男性教官スタイルです。

 お洒落具合では母さんたちの足元にも及ばない。

 はーん!俺にもシュウみたいなイケメン補正が欲しかったよう!

 あいつ、薄汚れたスウェット上下でも格好良く着こなすから嫌になっちゃう。

 

 〇

 

 合流した母さんたちと噴水広場へレッツゴー。

 

 歩いているだけで物凄い視線を感じるけど、母さんたちは気にした様子もない。

 象がアリの挙動を気にしないのと同じく、一般人の反応には興味なしって感じだ。

 愛バたち以上に年季の入ったスルースキルは伊達じゃない。

 

 おまけに今はナンパ除け用に極小の覇気圧を放出しているので、遠巻きにされてはいるが近寄ろうとする者は皆無だ。

 

「名付けて…む、人よけバリアー」

「今、ナチュラルに虫って言いかけたのう」

「ガッちゃん、そういうのできるなら早くやってほしかった。何のために職質されたのか…」

「マサキ…何事も修練だよ…私は、厳しいの」

「嘘つけ。面倒だからやらなかっただけじゃろう」

「正直に言う…忘れてた…だけ」

「ガーさん。ボケボケねえw」

「見た目がアレでも中身が老化してんでしょww」

「マサキ…私の代わりに…サイとネオをビンタして、お願い」

「無茶いわないで!?」

 

 母さんたちの首にも"スタビライザー"が装着されているのを確認する。

 俺もリミッターを着けているから、五人でお揃いのアクセサリーしているみたい。

 

「ガッちゃんにも聞いたけど、スタビの調子はどう?」

「いい感じよ。特に不自由していないわ」

「そうね~。試作品には妙な締め付けや息苦しさを感じたけど、これはすごくいいわ」

「力は超級騎神程度に落ち着いたようじゃが、無問題(モウマンタイ)じゃろう」

 

 スタビの効能によって母さんたちは良好な健康状態を維持している。

 今日トレセン学園までやって来れた事から、ラ・ギアスの外でも自由に活動できることが証明されたのだ。

 それと引き換えに大幅なステータスダウンをして、強さは超級騎神クラスまで低下しているようだ。

 

「今、ミノルちゃんと戦ったら厳しいかも。刀さえ取り上げちゃえば何とか…」

「いや、戦わないでよ」

 

 弱体化して姉さん並みってどんだけやねん。

 姉さんと戦闘する前提のシミュレートやめて!

 

「マサ君のお姉さん。真名を伏せているから"たずな"ちゃんよね」

「"悪・即・斬"を地で行く女傑じゃと聞いとるわい」

「元メジロの教導隊、暴君…次期天級候補…若い才能が妬ましい」

 

 他の天級たちも姉さんのことが気になっているようだ。

 姉の実力が認められて嬉しい反面、

 『勝負してくれそうなウマみーつけたっ!』

 なんて思っているであろう母さんたちに気が気じゃない。

 姉さんとのバトルは祭りのあとで、誰にも迷惑かからない場所でやってほしい。

 宇宙空間とかどうかな?

 スタビを手に入れた今、普通にピンピンしてそうで怖い。

 

「たぶん地形適応・宇宙Sよ」

「だろうね!ともかく、聖蹄祭中は姉さんとのバトルは禁止ね」

「わかってるわよ。今日はお祭りをエンジョイするって決めてるから」

 

 ならいいけど。

 羽目を外し過ぎないでよ。

 

「"決闘"とやらも楽しみだしねw」

「ぜ、善処します」

 

 母さんがニヤッとして俺の顔を覗き込んだ。悪い笑顔もカワイイ母親である。

 う、やっぱり見に来る気なんだ。

 決闘については特に言及していないのに、情報が伝わってしまっている。

 できれば、母さんたちがお祭りに気を取られている間に終わらせてしまいたい。

 無理か?無理だろうな。

 

「頑張ってね。万が一相手をやっちゃっても、シュウ君が何とかしてくれはずよ」

「ゾンビ系でいいなら…方法あるよ…徒花ネクロマンシー」

旦那(ダーリン)秘伝の反魂丹(はんごんたん)を使う手もあるぞ。キョンシー誕生じゃ」

 

 心配してくれるのは嬉しいが、俺がキリュウイン教官を殺す前提なのやめてね。

 そんなことにならないよう、封絶紋にリミッターまで着けているんだからさ。

 

 わかっていたけど、決闘の一部始終を母さんたち観戦されてしまうのだ。

 ラ・ギアスでペルゼインと戦った時(惨敗)のような無様を晒すわけにはいかない。

 うー、プレッシャーだなあ。

 得も言われぬ気恥ずかしさがこみ上げて来るぞ。

 

「参観日に…お洒落した親が来た…みたいな?」

「ほんとそれ!参観日の小学生気分よ。俺、教職なのに」(´Д`)

 

 ガッちゃんが俺の心情をうまく表現してくれた。

 

 小学生のときの参観日、

 教室に母さんが登場して授業がストップどころか、学校全体が狂喜乱舞した思い出。

 参観日に来た親のほとんどが、我が子ではなく母さんを凝視していたなあ。

 

「今日という、マサキの参観日に天級騎神が()()()したわけね」

()()でマサ君を応援しましょう」

「はて?……何か、忘れているような?」

 

 全員・・・揃っている、はず?

 

「急にどうしたのじゃ、マサキ?」

「俺たち、誰か忘れてない?」

「風、水、火、闇…全属性…()()()()()()

「そっか。そうだよな!天級騎神()()()に応援されちゃあ、頑張るしかないよな!」

 

 よーし!いっちょやってやりますか。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

いじめか!

「いや、その、悪かったよ。機嫌直して」

「このミオちゃんを忘れてハブるとは、いい度胸だな。アァ?」

 

 母さんたちと歩いていると『忘れんなよ!』と、妙な女が飛びかかって来た。

 すかさずネオさんが手刀で叩き落したが、ダメージが入ったように見えない頑丈っぷり。

 そいつは俺の同僚で、母さんたちが素で忘れていた奴であった。

 

 地の天級騎神ザムジード。

 その正体は母さんたちと心を通わせたアインストであり、

 なんかいろいろあって、美少女の姿にフォームチェンジして今に至る。

 名前もミオ・サスガと改めた。

 トレセン学園の教官として働き、チームスピカの操者もしている。

 

「私にもファッションチェックやれよ!」

「えー、なんか学制服を魔改造したコスプレの上にジャージ羽織ってる。あーはいはい。カワイイカワイイ」

「やる気ないにも程がある!?」

「ジャージに"ゴールドシップ"って刺繡が入っているので、おそらく借りパクだろう」

「細かいところに気付くなあ。ちょっと借りてるけど、ちゃんと返すよ」

 

 めんどくさいのでチェックは適当に終わらせた。

 ブカブカのジャージはゴルシのか・・・装備すると賢さが下がりそうだ。

 

「天級はやめたと聞いたが?」

「やめたけど!心は今でも天級騎神だよ」

「知らんがな」

 

 俺はミオに胸倉を掴まれて揺さぶられ中。

 母さんたちは少し離れた場所で身を寄せ合いヒソヒソしている。

 ガッちゃんは母さんの脇に抱えられた状態だ。

 

「自分を天級だと思っている異常者。痛い人ね」

「あの手の(やから)は定期的に湧くのよ。思い込み怖いわ~」

「アレ…人間でもウマ娘でも、ない…ガチのエイリアン」

「しかも地属性じゃろ?ないわー」

 

 わざと聞こえるように話す母さんたち、ここぞとばかりにミオを弄り倒す腹積もりだ。

 これも天級なりのコミュニケーションなのだろうか?

 

「何とかしてよ、マサキ。アンタの母親(+α)でしょ!」

「母さんたちに質問です。何故ミオをおもちゃにするんですか?」

「おもちゃ!?」

 

 直球で聞いてみた。

 

「マサキと同僚になったのがムカつくのよ!」

「そうよ!ザムさんだけマサ君と同じ職場で楽しいなんて、ズルいわよ!」

「わしは、まあ、何となくじゃ」

「前に…養育費の…支払い断られた、誠に遺憾」

「子離れできない女の嫉妬は見苦しい!!グラは状況に流されすぎ!ガッちゃんについては、完全に逆恨みじゃん!」

 

 ガッちゃんの言う養育費とは、自分用の遊興費である。

 ミオに金をせびろうとして断られたのを根に持っていたらしい。

 

「ここで白黒つけてもいいんだよ?今、弱体化しているの知っているんだから」

「は?弱っててもアンタになんか負けないし」

「今こそミオちゃん下剋上の時!マサキ、一緒に戦って!」

「バカを言うな。俺は母さんの味方だ」

このマザコンくそ野郎!

「ふふ、私の教育は間違いじゃなかったわね」

「このマザコン製造機!」

 

 ミオの奴、大声でなんてことを言いやがる。

 褒め言葉だとしても恥ずかしいでしょ////

 

 何とかミオをなだめ、その後も(かしま)しい天級一行と共に移動する。

 愛バにも負けないぐらい元気な母親たちのことを、喜ばしく思うのだった。

 

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