俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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信じる奴は救われる

 アル両親から俺宛の手紙を受け取って朗読した。

 その内容にアルは羞恥&激怒してしまう。

 なお、彼女は新たな奥義(エロ)を解禁、近日お披露目してくれる予定だ。

 ヒャッホー!超楽しみ!!!!

 

 母さんに引きずられ次に向かった先にはサトノ家の面々がいた。

 俺たちの接近に気付いているはずのクロとシロは何やら真剣に話し込んでいる様子。

 内緒話という声量ではないので二人の会話は俺の耳にも届く。

 

「ヤバいよ。エロナース来襲だよ。喰い散らかすつもりだよ。うまぴょいデッドエンドだよ!!」

「あのドスケベ姉さん『()()()はマサキさんがしてくだい♪』とかぬかす気ですよ。がばい、ぃやらしかぁ!」 

「アル姉の性欲モンスター!ナチュラルボーンサキュバス!」

 

 地獄耳の二人は俺とアルの会話を聞いていたようだ。

 コラコラ、親御さんのいる前で下ネタトークはやめなさい。

 たぶんアル本人にも聞かれているから、あとでお仕置きされなさい。

 

「ナースに対抗するならば、こちらも衣装チェンジする必要がありますね」

「マサキさん何が好きかなあ……巫女とか?」

「巫女ダイヤは既に試しました。それなりに好評でしたよ」

「いつ試したの!?初耳なんだけどぉ!」

 

 巫女ダイヤ……あの時のシロは可愛かったなぁ。

 母さんが『アンタ愛バに何やらせてんの?』と目で訴えて来るけど、シロが自主的にやったことであって俺がリクエストしたわけではないのです。

 そこはちゃんと理解してくださいよ。

 ええ、そうですよ。

 体操着やスク水とかは一通りクリアしていますとも。

 

「ええい!ナースに巫女ときたら次……次は……シスター?」

「クロにしては良い着眼点ですが、ただのシスターでは弱い。もうひと工夫ほしいですね」

「ならば、網タイツを履いたシスターでどう?着衣のえっちぃ聖職者、これは行けるっしょ?」

「まあまあですね。60点」

「なんだよう。正解があるならもったいぶらず教えてよ」

「マサキさんが真に求めるシスター。それは……」

「そ、それは」ゴクリッ

蛇腹剣を使って敵を倒す戦闘系シスターです!!」

「うわぁぁぁ!超かっけぇーーー!それ採用!」

 

 ねえ?なんで俺がシスター大好きみたいな奴になってんの?

 蛇腹剣シスター……大好物だけどさあ!

 身の丈に合わない巨大武器を使う女子もメッチャ好きだけどさあ。

 

「風使いの銀髪お母さんは?」

「とっくの昔に殿堂入りじゃい」

「それでこそ私の子ね!」

 

 俺の回答に機嫌よくする母さんであった。

 そして、俺たちはサトノファミリーの陣地へ到着。

 

「カッコ良くなったね~マサキ君☆義理ママになる身として鼻が高いぞ☆」

「ハートさん。お元気そうで安心しました」

「うん☆元気元気☆この前のオールスター感謝祭では、ぬるぬるローション相撲で優勝してやったぜ☆」

「もう少し、お仕事選んでもいいと思いますよ?」

 

 いち早く飛び出したのはクロの母親である佐藤心。

 真名シュガーハートさんが熱烈なハグで歓迎してくれた。

 

「ちょっとママ!?引っ付きすぎだってば」

「いけません!マサキさんは母親攻略王(マザー〇ッカー)の異名を持つお方。放置すればハートさんルートに突入してしまいます」

「断固阻止!ママにはパパがいるでしょ!」

「父様、笑ってないで止めてください。また奥さん持ってかれてぇのか?同じ過ちを繰り返す気かダメ親父!」

「ぐはっ!癒えかけた心の傷に愛娘からの容赦ない黒閃!!」

 

 誰がマザー〇ッカーやねん!?シロ、あとでお尻ぺんぺんの刑な。

 下ネタに夢中で出遅れたクロとシロが俺に抱き着くハートさんを引き剥がすべく動き出す。

 ドウゲンさんは心臓の辺りを押さえてうずくまってしまい大変不憫である。

 俺とのハグを堪能したハートさんはウインクをしながら娘二人を華麗に避けて見せる。

 芸能界入りする前は母さんの後輩騎神として、同じ部隊に所属していたのは伊達じゃないらしい。

 そのままの勢いで今度は母さんに飛びつくハートさん。

 

「ウッキャー☆☆☆サイパイセン~☆☆☆サイパイセーーン☆☆☆☆☆」

「ご無沙汰ね、ハートちゃん。星が多くて若干ウザったいわ」

「永遠の推しであるパイセンに会えたんですもの☆星ぐらい増えて当然だぞ☆☆☆☆☆」

「このノリずっと続ける気?つーかーれーるー」

 

 母さんにじゃれ付いてスリスリハグハグしているハートさん。

 困ったような母さんはやれやれ顔で為すがままだ。

 こういうの見るとクロの人懐っこさは母親譲りなんだと実感するよ。

 母さんもハートさんも実年齢にそぐわぬ美貌と若さの持ち主なので、女子高生がキャピキャピしている風にしか見えないな。

 ハートさんはテレビ出演の多い売れっ子芸能人であるが、今日は特に変装などしていない。

 下手に隠すより開き直って堂々としていれば案外行けるんだそうだ。

 

 そして、母親と入れ替わるようにして俺に抱き着くクロとシロ。

 慣れ親しんだ二人に両サイドからハグされると安心感がすごい。

 

「マサキさん。シスターダイヤは準備中です。もうしばらくお待ちください」

「ちょ!私の企画取らないでよ。シスターブラックを先にお願い」

「わかったわかった。シスターでも何でも楽しみにしてるよ」

 

 打倒エロナースに闘志を燃やすクロとシロ。

 まあ、愛バが俺のためを思ってしてくれる事は何であれ嬉しい。

 たまに、いや、しょっちゅう変な方向に暴走することがあるけど。

 二人の気合がまたもや珍事の引き金にならないよう、シャミ子以外の神に祈っておこう。

 シャミ子は面白がって余計な問題追加しそうなのでダメ!

 

 俺に散々マーキングやスキンシップをした後、二人は未だに母さんから離れないハートさんの下へダッシュ。

 じゃれつく人数がプラスされ、母さんの『ひゃー増えやがった』なんて悲鳴がする。

 同姓からも異様にモテる母さんは女同士の揉みくちゃにも慣れているはず。

 ここはモテモテな母を信じよう。

 

「妻と娘たちが見事なまでのNTR!パパどうしたらいいの?」

「うちの母さんですから。放置しても問題ないかと」

「さすがサイバスターと言ったところか。ここは僕らも男同士で語らうべきかな」

「はい。ドウゲンさん」

 

 残された俺とシロの父親サトノドウゲンさんと再会の握手を交わす。

 直接会うのは久しぶりだ。

 トレードマークのサングラスに陽光が反射してキランッと輝く。

 いつもの無精ひげは今日は綺麗に整えられサッパリしている。

 そんな彼はネルフ総司令の陰キャ親父ではなく、サトノ家現頭首という偉い立場の人だ。

 

「マサキ君、しばらく見ない内に立派になったなあ。娘たちが夢中になるのも納得だ」

「そうだったらいいんですけどね。まだまだ足りない事ばかりの若輩者で━━」

 

 ドウゲンさんの褒め言葉に謙遜しちゃう。

 俺は父親というものに接した記憶は無いが、この人は俺のことも我が子の様に思ってくれているのがわかる。

 出会った当初からすごくいい人だ。

 姉さんが曰く俺の実父も穏やかで優しい人らしいけど、ドウゲンさんみたいな感じだったら嬉しいな。

 

 しばらく男二人のトークが続いた。

 今までの経過やここ最近の出来事を話し終えた頃、自分たちに向けられるいくつもの視線に気付く。

 それもそのはず、母さんたち天級だけじゃなく、御三家の頭首やその家族、大企業の社長とか、不敵に笑うハゲとか、合法ロリとか、ヤベェのが勢揃いだもん。

 しかも、美男美女ばっかなの。見るなと言う方が無理ですよねー。

 学園生たちの親には権力者も多いから、俺たちがどういう奴なのか事情を知っている人たちも今日はわんさかいるわけでして、ジロジロされる心当たりがあり過ぎて困る。

 

「やっぱりみんな目立ちますよね。待ち合わせ場所ミスったかな?」

「どこでも変わらないと思うよ。注目される立場から言わせてもらうと、周囲の反応には慣れるしかない『気にしたら負け』の精神だ」

「はぁ、俺には縁遠い世界っス」

「本気で言ってる?いや、マサキ君ならそれもありえるか」

 

 本気も何も、母さんやドウゲンさんたちを見ている人たちの背景もしくはお邪魔虫が俺だ。

 愛バたちとの登下校時もそんな感じだって知ってるんだからね!

 ヤダ!周りの人たちがハイスペックすぎてマサキ浮いちゃう!もしくは霞んじゃう。

 ガハハハッ、母さんの息子になった時点でこうなる事は決定していたのだ。

 どこぞのよわよわ吸血鬼みたいに消えますんで俺のことはお気になさらず『スナァ…』

 

「娘たちから聞いていたが、君は少々、いや、かなり鈍感だな。これも偉大すぎる母を持った弊害なんだろうか」

「いや俺は敏感ですよ。愛バたちのせいですっかり敏感マサキですよ。娘さんたちには責任取ってもらうんだかね!」ビクンッビクンッ

「公衆の面前で痙攣発作だと!?ダイヤにブラックもマサキ君に何したの?」

 

 ドウゲンさんに背中をさすってもらって落ち着いた。

 お、ハンドヒーリングできるんですね。

 なかなかの腕前ですな。はぁ~癒される~(*´▽`*)

 

 俺の回復を待ってからドウゲンさんは話を続けた。

 

「マサキ君、一番注目されているのは君だ。今日、トレセンを訪れた者の大半は間違いなく君目当てだ。みんな君を見に来ているんだよ」

「何それ恥ずかしい////」ビクンッビクンッ

「しまった再発した」

 

 どういうこと?

 まさかみんな、俺が決闘でキリュウイン教官にボコボコにされるところが見たいの!?

 『調子に乗った報いだ』『もげろ』『ロリコン死すべし』『ウホッ!』

 なんて酷いことを思ってるのね!そうに違いないわ!泣くわよ!

 

「気軽に決闘なんて受けてすみません。もうなんか地味で大人しくなんの面白味もなく細々と生活しますんで今日のところは多目に見て頂けると、だから決闘なんてしたくなかったんや!姉さんと理事長が悪乗りするから、というか借りウマ狂争ってなんだよ?わけわかんねぇよ!当日なのに何をやらされるのか全く聞いてねぇよ。もうさあジャンケンとかでよくね?愛バの乳当てゲームだったら勝ち確定なんだけど━━」

「落ち込む必要はないよ。決闘ではマサキ君の力を存分に見せつけてやればいいのさ。もうね、観客全員を失禁させる勢いでビビらせてやってくれ」

 

 観客全員に漏らされたら臭そう。掃除が大変そう。

 というか、観客とか集まらないでほしい、見届け人は愛バたちだけで十分だ。

 

 ドウゲンさんに励まされていると、チラチラ集団の一人と目が合った。

 

(あ、ノリアキさん。こんちゃーす)

(マサキ君。今日はよろしく頼む)

 

 今日の決闘相手キリュウイン教官の父にして、キリュウイン家現頭首のノリアキさんが軽く会釈をして立ち去って行く。

 う~んとってもダンディ。ポッ////

 一応、対戦者サイドということで決闘終了までは俺と気軽に接する気はなりらしい。

 ノリアキさんに続いてその取り巻きっぽい人たちも広場を後にする。

 その際、俺に向けらる視線には敵意や嘲笑といったものが含まれているのをありありと感じた。

 (´∀`*)ウフフ、なめられるのには慣れっ子なのよ。

 フンだッ!今の内に精々侮っておきなさい。漏らしても知らないわよ?替えの下着は十分か?

 僅かだが、恐れや同情の目で見て来る人はノリアキさんから話を聞いているのだと推測する。

 

「来ていたか、ノリアキ。そりゃあ来るよなあ、アオイ君が心配だもんなあ」

「その様子だと、頭首繋がりというだけじゃなさそうですね?」

「DC戦争時代の戦友。僕らの世代にとって、今日の聖蹄祭はちょっとした同窓会も兼ねている」

 

 これまたDC戦争の関係者だ。

 母さんを始めとして、今日本の有力者ってあの戦乱で活躍した人ばっかりだ。

 知り合いの子供同士が戦うって親的にはどうなんだろうな?

 母さんなら『運命(さだめ)よ!』の一言で結論付けそう。

 

 〇

 

 ドウゲンと会話をしているマサキを愛バの一人であるココは見つめていた。

 

(むー。おじ様とのトーク長すぎない?私の熱視線に気付けぇ~)

 

 愛する男がなかなか自分の下へ来ないので少々ご立腹である。

 保護者面してやって来たルオゾール(ハゲ)にもご立腹である。

 ハゲは崇拝するマサキに会いに来たのであって、私のことは二の次だとぬかしおった!

 そして、マサキ待っている間に屋台を巡って来ると言いどこかに行った。

 ぼっちの癖にめっちゃ楽しんでるな。

 あいつ、お一人様で映画とか旅行とか平気なタイプだ。

 むしろ一人の方が気楽でいいって感じの強メンタルだよ。

 

 キャーキャーと姦しい声が聞こえる。

 クロちゃんとシロちゃんとその母親、確かハートさんだっけ?がサイさんにじゃれ付いているのだ。

 まるで三匹の大型犬にまとわりつかれる美小女の図?

 いやいや、犬の方も美少女だからね。犬じゃなくて全員ウマだからね。

 それの光景を温かい目で見守る、おじ様とマサキ。

 優しい両親と愛らしい子供たち…………家族だ。

 

(……いいなぁ)

 

 私が失くしてしまったものがそこにあった。

 家族……私にも確かにいた。

 でも、失くしちゃった。二回も失くしちゃったよ。

 私だけを残して、みんないなくなっちゃった。

 

 もし両親が生きていたら。

 聖蹄祭に来てくれた?私がじゃれても許してくれた?

 マサキやサイさんを紹介したら喜んでくれたかな?

 

 もう何度目かの想像を振り払ってため息をつく。

 考えても仕方ないよね。

 過去は戻らないけど、今の私にはマサキがいてくれる。

 それで十分じゃないか。

 

「いいなぁ……本当に、羨ましい」

 

 押し殺したはずの心情が口から零れてしまう。

 普段ならこんなこと無いのに……

 賑やかなサトノファミリーを見て寂しくなっちゃんたんだよ。

 きっとそうに違いない。

 子供か私は!

 それでも二人分の記憶を持つファイン家頭首か?

 あーもうヤダヤダ、マサキ早く来てよ~。

 こんな人の多い場所で孤独死しそうな愛バがいるよ!!!

 

「なーに黄昏(たそがれ)てんの?」

「ひゃぁ!?」

 

 完全なる不意打ち。後ろから抱き着かれた!?

 柔らかで温かい感触がする。不快ではないむしろ心地よい。

 誰?私の背後をとるなんて何者???

 隠しきれていない覇気、鼻をくすぐる香り、ツヤツヤサラサラの長い銀髪。

 力強ッッ!全然振りほどけない。強すぎる!!

 顔を確かめるまでもない。こんな人ひとりしかいないよ。

 

「さ、サイさん?なんで?」

 

 さっきまでクロシロちゃんたちと遊んでいたんじゃないの?

 あ、サイさんの代わりに今は何故かアルがもみくちゃになってる。

 変わり身の術???

 

『エロナースめ!その首もらったぁーー!』

『ナースなんて古いんだよぉ!時代はシスターじゃい』

『あら大変、隔離病棟から重度精神障害者が脱走してます。ここで楽にしてあげますね♪』

 

 ハートさんはドウゲンおじ様と一緒に休憩中、娘たちの醜態をニコニコ見守っている。

 放置していいんだろうか?いつもの事か。

 

 それよりも。今は私の方がピンチ!

 ピンチと言うかサイさんに後ろから抱き着かれてるの。何で?

 ふわぁぁ、いい匂いがするよう。マサキとはまた違ったかぐわしい香りだ~変態みたいでごめんねぇ!

 

「んー。なんかねぇ、寂しそうな顔してる子がいるなぁって思ったから。来ちゃった」(∀`*ゞ)テヘッ

「来ちゃったって……」

「で、何が不満なのか話してみ?いや待って、当ててあげる……マサキがラーメンのスープ残した!とか?」

 

 違うよ。いくら私でもラーメンのスープ残したぐらいで……丼を空にする努力はしてほしいかも。

 そうじゃなくて。

 

「ほんのちょっとだけ羨ましくなっちゃった。お父さんにお母さん……私にも大事な人たちがいたはずなのにって」

「……」

「あは、何言ってるんだろう。感傷的になってごめんなさい。もう大丈夫だから」

 

 ひとりで勝手に落ち込んでるとか、らしくない。

 マサキが来るまでにいつもの私に戻らないと。

 

「バカね。あなたのお母さんならここにいるじゃない」

「え?」

 

 抱きしめる力がちょっとだけ強くなる。

 私の肩にアゴを乗せたサイさんは、幼子に言い聞かせるような優しい声色で話す。

 

「マサキと結婚するんでしょ?そうしたらあなたは私の娘よね。例えそうじゃなくてもココちゃんはもう既に私の娘なのだぁ!!さあ観念しなさい」

「えっと、とても嬉しいお話だけど、私は…」

「あなたがマサキと出会って、私の娘になって、今はこうやって抱きしめている。きっと全部あなたのご両親が導いてくれたのよ。そうしてあげてほしい、どうか娘をよろしくって、私に託してくれたのだから」

 

 何を…何を言っているんだろうかこの人は。

 私の両親が導いた?託した?そんなわけない。

 急にオカルトちっくな話をされても困る。霊能者でもない奴が勝ってな妄想で何言ってんだって怒るべきだ。

 でも、サイさんの言葉は本当に驚くぐらいストンと私の胸に収まった。収まってしまったのだ。

 だって、ずっとそうならいいと思っていたから。

 

「そう、かな……そうなのか…な…」

「ご両親は褒めてくれるはずよ。大きくなったね、元気に育ってくれて嬉しい、ありがとう、大好きよ、ってね」

 

 ああ。

 敵わないなぁ。本当に敵わない。

 この人の思いが、とても温かい言葉が、心に染み渡り全身に広がっていく。

 それは私が聞きたかった言葉だ。父と母にずっと言ってほしかった言葉だ。

 

「本当に?」

「本当よ。それとも何?ココちゃんは天級騎神の言葉が信じられないのかなぁ?」

「いや、サイさんのことは信じてるよ」

「じゃあ『お母さん』と呼んで!『母上』『ママ』『マミー』でもいいわよ!」

「それは……まだ心の準備が」

「ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから!『お袋』でも『オカン』でもいいから呼んで!」

「や、くすぐらないで……だめ…きゃははははははは」

「呼べよぉぉ!マサキは即行で呼んでくれたのよ!」

 

 母と呼んでほしいサイさんがくすぐり攻撃を仕掛けて来た。

 まったくもう、センチメンタルな気分が台無しだよ。

 そういうところマサキそっくりなんだから。

 

 血のつながりなんて些細なことだと思う。

 誰がなんと言おうとサイバスターはマサキの母親なのだと理解する。

 この愛に包まれて彼は育ったのだ。

 

 マサキが自慢してやまない最高の母は、私のお母さんにもなってくれた。

 あはは、これじゃ実の両親が嫉妬しちゃうかもね。

 

「あー!ココがサイママを独り占めしてるー!まあぜてぇよぉーー!!」

「そいつに関わると三食ラーメンになりますよ。私の里芋料理ならば健康的かつ美味です」

「義母とのふれあい体験。この波に乗り遅れるわけにはいきません。そういうわけで、メジロアルダン参戦致します!」

「しゃぁーコラ!まとめて来いやぁ。お前ら全員わしの娘じゃぁぁぁーー!」

「ちょ、キャラおかしなことにww」

 

 かまってちゃんのクロシロちゃんにアルまで参戦して来てもうメチャクチャだ。

 寂しさなんてどこかに吹き飛んじゃった。

 

 〇

 

 母さんの包容力に愛バ全員がノックアウトされた。

 

 あれはじゃれているのだろうか?

 傍目には相撲部屋のぶつかり稽古にしか見えない。

 何度も突撃してくるクロシロアルを母さんが千切っては投げを繰り返している。

 その合間にココが全身をくすぐられるというカオスな状況。

 何これぇ?広場に集まった人が催し物と勘違いして写真撮ってるよ。

 でも、ココが楽しそうだからいいか。

 

「よかったな、ココ。うん…本当によかった」グスッ

「さすがは天級騎神。いえ、マサキ様の母君ですな」

 

 巻き込まれない距離でぶつかり稽古を見守っている、俺とルオゾール。

 なんだか寂しそうなココに声をかけようとしたところ『私に任せな』と母さんが自信満々に言うので任せてみた。

 結果、母さんの思惑通りココに笑顔が戻り今に至る。

 

 二人の会話で、なんだか母さんに引き取られた日のことを思い出した。

 『あなたのお母さんになるウマ娘よ』と言われた時は心底嬉しくて、母さんの輝くような微笑みは今でも鮮明に思い出せる。しょっちゅう夢に見るくらいだ。

 やはり母とは偉大なの存在である。

 

 母さんとココのやり取りでちょっと泣いちゃった。自前のハンカチで涙を拭う。

 横のルオゾールもウルっと来ていたはずだが、涙腺の決壊は何とか堪えたみたい。

 

「今日はココの保護者役か?」

「それはついでですぞ。私はマサキ様に拝謁するためにやって来たまで」

「そうか。まあ、せっかくだから祭りを楽しんで行ってくれ」

 

 ついでとか言っちゃてるけど、ルオゾールはココのことを心配しているだよな。

 ココも何だかんだで重要な案件を丸投げしているみたいだし、1stからの絆があるみたいだ。

 本人たちに効いたら『腐れ縁!』とハモったりするし。

 

 ルオ―ゾールは1stでは幼いココの教育係をしていたらしい。

 2ndで離別していた時期はお互いボロクソに罵りあっていたけど、ファイン家に出戻ってからはあっという間にココの片腕に復帰してみせた。その手腕はかなりの物だとドウゲンさんも感心していたっけか。ハゲだけど。

 やっぱアレだな、鬱陶しいワカメヘアーからハゲ頭にしたのが功を奏したんだと思う。

 俺を神と崇める狂信者になったのはハゲの副作用だろうか?

 

「クフフ、今日回る予定の屋台に催し物はチェック済み。隙間時間で人脈作りと要注意人物の監視も行う予定です。もちろん、マサキ様のご命令があればそちらを最優先させていただきます」

「お、エンジョイする気満々じゃん。俺がいない間に母さんたち相手をしてくれるとありがたい。あーでもついででいいからな、ココのフォローをするついでで」

「…心に留めておきましょう」

 

 このツンデレハゲめ~可愛くないぞ!

 

 かくいう俺もルオゾールと彼が率いる人たちには世話になっている。

 神である俺の手足となって働くのが至上の悦びなんだとよ。

 こちらが指示しなくても、ルクス関連の調査から愛バがやらかした事件の後始末までやってくれるからすごく便利。

 知らず知らずのうちにサポートされることもあり、事後報告で気付く事も多々ある。

 電話での『アレを片付けておきましたぞ』『は?え?何の事?』と言う会話が増えた気がする。

 

「そういえば、MML団とかいうロリコンたちはどうなった?」

「クククク…煮えたぎっておりますぞ」

「ほう。詳しく」

「あ奴らは今頃南の島で地獄の強化合宿中。何人生き残ることやら、クフフフ」

「うわぁ…程々にしといてやれよ。頼むから死人は出すな」

「そういうわけに参りません。マサキ様という至高の御方に仕える戦士ならば、あの程度のしごきは乗り越えて然るべき」

 

 以前、幼女化した俺をさらったMML団なる迷惑集団がいた。

 そいつらも俺を神だとか言って、なんやかんやでルオゾールたちが面倒みる事に決まったはずだが、俺の狂信者が増えただけみたいだな。

 強化合宿とか、あいつら大丈夫か?

 オークみたいな大柄な奴はともかく、ロリスキーみたいなヒョロガリには相当キツイだろ。

 本人がどうしてもやりたいってなら止めないが、無理せず堅気の職業に就くのが健全だと思う。

 

「マサキ様のご威光により、私共も随分と大所帯になってきました」

「ねえ?実質今、俺の信者何人ぐらいなの?正確な人数聞いてないから怖いんだけど」

「いずれ世界中の民がマサキ様にひれ伏すのです。細かいことを気にしてはなりません」

「おい、はぐらかすな。さてはお前も把握してないな」

 

 後でわかったことだが、聖蹄祭の時点で500人程の狂信者がいたらしい。

 名前も顔も知らない皆さん。どうか人生を棒に振らないでー!

 俺なんかに祈ってもご利益ないよ。

 あ、でも幼女の信者は大歓迎!直接面談熱烈希望!とか言ったら愛バに折檻されるから思うだけにする。

どうせなら信じるなら俺よりも三女神とシャミ子にしたらいいのに。

 

「信徒たちが増えた今、いつまでもハゲ部隊(仮)と呼ばれるのは示しがつきません」

 

 邪神崇めていた旧ヴォルクルス教団メンバーの殆どがルオゾールの指揮下に入り、ファイン家で活動するようになってから彼らにハゲ部隊(仮)という呼称が付いた。

 このふざけた呼称はファイン家頭首のココが『めんどくさいからコレで』と超投げやりに決めてしまったものだ。

 ココもルオゾールたちの勢力がこんなに拡大するとは夢にも思っていなかったのだろう。

 数百人規模に膨れ上がった今では改名を望む声が上がっている。人員にハゲていない人の方が多くなったのも理由らしい。

 そうだよなあ。俺もチーム『ああああ』を早く変更したい。

 

「よい機会です。この場で新たな名を決めてしまいましょう」

「唐突だな。ココの許可はもう取っているんだろう?好きにしたらいい」

「実は前から考えていたのです。その名も神聖マサキ教団と…」

「却下だ」

マサキズ・ローリ・コウンはどうでしょう?至高の我が神」

「アインズ・ウール・ゴウンみたいに言うな」

 

 ルオゾールが何をしたいか大体解った。こいつオーバーロード読みやがったな。

 俺をアインズ様にして自分はデミウルゴスのポジションに就きたいらしい。

 釘を刺しておかないと世界征服の片手間に建国したり虐殺したりしそうで怖い。

 既にアルベドっぽい愛バが四人もいるんやで。

 

「好きにしろというのは撤回する。俺の名前を使うのは禁止だ」

「ククク、さすがはマサキ様。尊き御名前を出すまでもないと、つまりそういうことですね」

「お前の中でどういう結論に至ったか知らんけど。もうそれでいいよ」

 

 アインズ様も感じたであろうストレスを今まさに体感する俺。

 何をやっても曲解された上に全肯定され評価が爆上がり……めんどくせぇ!

 全部諦めて丸投げしたくなるわ。

 これが愛バなら俺を立てつつも適度にツッコミを入れてくれるのでありがたい。

 

(マサキ、マサキ、私の声が聞こえますか?聞こえますよね?ね?)

(何か用かシャミ子?今忙しいんだけど)

 

 脳内に涼やかな女性の声が響く。こんなことをする奴は神連中に決まってる。

 ゴッドテレパシーを受信(ブロック不可)。今回の発信者はシャミ子だ。

 これ苦手なんよ。いつ来るかわからないのと、内容が大概しょーもないから。

 まったくもって力の無駄遣い。

 

(そのハゲに伝えなさい。マサキと一緒に私を崇めることを許すと)

(何言ってんの?ボケたの?)

(いや~私もそろそろ表舞台に立つ下準備をしようかなと思ってですね)

(本音で語れ)

(三女神教はあるのに何でシャミ子教は無いの!もうヤダぁ!私も信仰が欲しいんですよぉ~。メジロの老人連中や一部の首脳陣だけにお祈りされるの飽きたぁ!ヤダヤダヤダ知名度上げたいみんなに知ってほしい世界中噂になりたい。シャミ子記念日作ってよ!シャミ子祭り開催してよ!もっと敬ってもっとチヤホヤしてよ甘やかしてよ!お供え物してよォォォォうわぁぁぁぁぁんんん)

 

 シャミ子が承認欲求モンスターになってしまった。

 長年に渡る"女神像ハブられた件"のストレスと、俺がルオゾールたちに崇拝されている事が引き金になり、嫉妬の炎が燃え上がったのだ。

 今、夢空間では床を転げ回って暴れるシャミ子を三女神たちが腕力で制圧している頃だろう。

 毎度ご苦労様です!

 

(む、無断じゃない!取った、今許可取ったの!メジロの一番偉い子に連絡して『OK!』貰ったからシャナミア様の望むままにって言われたから!頼みましたよマサぎゃぁぁぁぁ関節が逆方向に!?お前らやりすぎだろ!トーヤにも見せられない残虐ファイトらめぇ。あ、言い忘れたマサキ決闘頑張って骨がぁばらっっ!?!?)

 

 ほねがばらという断末魔を残してテレパシーは終了した。

 三対一でメルアたちが相当無茶苦茶やっているっぽい。

 次に会った時、シャミ子の骨が無事であればいいが。

 メジロの一番偉い子?その人にもゴッドテレパシーが送られたのかな。

 

「マサキ様、如何なされました?数秒ほど心ここにあらずでしたが?」

「今、神託が下りて来たぞ」

「なんと!マサキ様を伝言板にするような不届き者(クソバカ)が、いや待て、まさか上位神……シャナミア様!」

「うん。そうそうシャミ子がね━━」

 

 シャミ子からの言伝を嚙み砕いて説明した。

 駄々っ子のよう泣きわめいていたのは彼女の名誉のため伏せておく。

 

「これでも私は元三女神教徒、不人気…ゲフンッ!あー、秘匿されていたシャナミア様のお言葉なら喜んで従いましょうぞ。ありがたや~ありがたや~」

「今不人気って言った?シャミ子泣くよ。ちゃぶ台に突っ伏してむせび泣くよ?」

 

 シャミ子のせいで当初の目的を忘れかけた。

 えーと、ハゲ部隊(仮)の名前を改めようって話だったよな。

 ルオゾールに任せるとマサキ教という俺の名が全面に出た感じになって迷惑だから却下。

 そこへ、シャミ子が信仰対象にしてほしいとお願いして来た←今ここ!

 

 マサキとルオゾール相談中・・・・・・5分後

 

「もうさあ。さっさと決めようぜ俺というか、ぶっちゃけ作者のモチベーションが下がってる」

「おおメタいメタい。ですが、シャミ教というのはあまりにも」

「俺にばっか考えさせんな。お前が始めた団体だろ?イイ感じに決めてくれや」

「しばしお待ちを……………うーむ……………神竜教(しんりゅうきょう)?」ボソッ

「いいじゃん!それにしよう。決定決定!で、名前に込められた意味とかあるの?」

「意味ッ!?えーっと…神であるマサキ様と機甲竜であるシャナミア様の教えを信じ広める平和的武装勢力……とか?」

「おお!即席の考えにしては十分だ。やるじゃんこのこの~」

「フフフフフ、お褒めのお言葉…身に余る光栄」 

 

 神竜教いいね!イエスだね。

 元々シャミ子は"竜の女神"や"神竜"という二つ名を持っていたからピッタリだろう。

 俺の名前が入っていないのがいい、凄くいい!

 そのうちシャミ子+三女神を崇める教義作って俺はフェードアウトさせてもらおう。

 代わりと言っては何だが、シャミ子たちの操者であるトーヤさんを担ぎ出すのもアリだな。

 うん。我ながら素晴らしい計画だ。

 

 俺は芝居がかった支配者のポーズを取る。

 察したルオゾールが俺の前に片膝をついた。ノリの良い男だ。

 

「ルオゾールよ」

「はっ!」

「貴様たちハゲ部隊(仮)は名を改め、今この時より神竜教団と名乗るがよい」二ヤリッ

「かしこまりました。全てはいと尊き御方々、神竜の導きのままに…」二ヤリッ

 

 こうして世界に神竜教とその狂信的団体が誕生した。

 彼らがどうなっていくのか、作者のモチベは回復するのか、まだ誰も知らない・・・

 

 【オーバーロリコン ~バカとハゲと不人気ドラゴン編~ 完

 

 ふっふーん。いいじゃない、いいんじゃない。

 やっと終わったじゃなーい。

 『ママーあのおじちゃんたち何?』『シッ!見ちゃいけません』『クスリでもやってるのか?』

 周囲の反応を気にしたらダメじゃない。

 

「マサキ!いつまでハゲと遊んでるの?私にもかまってよ」

「クッフッフ、私とマサキ様の絆を断ち切ることはできますまい。小娘は伸びたラーメンでも啜っておればよいのです」

「うっせぇハーゲ!私のマサキから離~れ~ろ~」 

 

 しびれを切らしたココがやって来てルオゾールとケンカを始めてしまった。

 すっかり元気になったようで安心する。アレはあれで仲がいいのかね。

 ココの執拗なボディブローを食らっているルオゾールも、顔には出さないが嬉しそうだ。

 

 ココが満足するまでしっかり撫で回してから移動開始。

 母さんも俺の隣に戻って来ている。

 

「そういえば母さんたちの宗教団体はなかったの?」

「あったわよ。というか、今もあるじゃないのファンクラブとか何とか」

 

 天級騎神のファンクラブは公式非公式問わず今もなお増殖中だ。

 俺の故郷ラ・ギアス住民の8割はファンクラブ会員だとか聞いたことがある。

 ラ・ギアスに限り会員カードが身分証として使えるのは異常だと思うの。

 そうか、言われてみればアレは正に宗教だよ。

 

「残ってるのは比較的まともな団体よ。"表"に出て来たヤバそうなのは全部消したわ……主にネオが」

「ああワームスマッシャーの刑ね。表ということは"裏"に潜ったヤツらは放置ですかい」

「そこまで面倒見切れないわよ。勝手に潰し合うなり何なりすればって感じ」

 

 勝手に増えて大きくなって分かれて争って騒ぎ出して迷惑なんだとさ。

 まともな団体というのは極力母さんたちに迷惑が掛からないよう活動しているらしい。

 うん。ファンならちゃんと推しへのリスペクトと最低限のマナーを守るべきだ。

 迷惑撮り鉄のような暴挙に出て炎上してはダメダメなのである。

 神竜教にはその辺を厳守させるようルオゾールに言っておこう。

 

「しかし、宗教ができるなんてマサキも大人になったのね~」

「大人になるのと現人神になるのは違うと思う」

 

 なんで嬉しそうなの?

 私の苦労をお前も味わえってこと?

 

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