俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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きしん

「サトノ家従者部隊13番"ダイヤ様専属"(仮) 烈級騎神 キタサンブラック行くよ!!!」

 

 クロの名乗りを聞いて過去の記憶が蘇る。

 

 

【十数年前シラカワ邸】

 

 この日俺はシュウの家に託児されていた。

 母さんが仕事の都合で数日家を空ける事になったからだ。

 その間、俺の面倒をお隣のネオさんが快く引き受けてくれたのだった。

 田舎には似つかわしくないお洒落なデザインの邸宅。そのリビングでシュウはウマ娘関係の雑誌を熱心に読み、俺はテーブルに広げた昆虫図鑑を見ていた。

 

「ねぇ、マサ君。ちょっと今からお勉強しよっか」

 

 そう言ってネオさんは大きな本とノートを持ってきた。

 ソファに座っている俺をひょいと持ち上げると、自分の膝に座らる。

 母さんではない女性の匂いと温かさに包まれてちょっと緊張する。

 そんなネオさんについてちょっと紹介。

 

 白河音緒(シラカワネオ)

 

 シュウの実母、俺の母さんのマブダチ。

 鮮やかな紫紺の髪と金色の瞳を持つ優しいママさん。

 実年齢よりかなり若く・・・いや幼く見える外見は、美女と言うより美少女。

 この人からあの高身長イケメンが産まれたのが本当に謎だ。

 初対面の人は大抵「これが経産婦だと・・・」と戦慄する。

 母さんに負けないぐらい甘やかしてくれるこの人が、俺は大好きだった。

 

「えー、勉強きらーい」

「そんな事言わないで、ほーら一緒に賢くなろう?」

「やだ!カナブンの生態について研究中だから忙しいの」

「ウマ娘に関するお勉強なんだけどな~」

「すぐに始めましょう。ネオ先生とお呼びすればいいですか」

「マサ君は本当にウマ娘が大好きね」

 

 本とノートを開いて勉強を始める。

 幼い俺に本の内容は難しすぎたが、ネオさんが子供でもわかるよう噛み砕いて要約する。

 ウマ娘と人間の歴史や風習、文化の違い等々・・・俺の興味が薄れないように工夫して教えてくれた。

 

「覇気については知ってる?」

「ハキ?何それー?」

「あれ、うーんこれはあえて教えてないのかな・・・」

「?」

「覇気についてはまた今度にしましょう。じゃあ、騎人(きじん)と騎神(きしん)について、これは教えてもいいわよね」

「キジン?キシン?」

 

 ウマ娘と言う名称が一般的になったのは40年ほど前から、それまでは人と違う耳と尻尾を持つ彼女たちは騎人と呼ばれていた。

 騎人からウマ娘へ呼称を変える事により[人間の敵では無い][畏怖ではなく羨望するべき存在]を大々的にアピール、現に名称変更後から各メディアへの進出が激増し今に至る。

 

「ウマ娘さんはキジンて呼ばれていたんだね」

「そうよ、今でも騎人と呼んでる人もいるの」

「ふーん」

 

 ウマ娘は生来の高い闘争本能と強靭な肉体を持つ。

 その本能を受け入れ、己の才能に驕ることなく修練を積み上げた者たち。

 人を超え神に至るがごときその偉業を讃えて、一定の武を修めたウマ娘は名を授かる。

 それが騎神。

 

「頑張ったウマ娘さんがキシンになるんだね」

「騎神はとっても強いから敵に回しちゃダメ。騎神を名乗るウマ娘とは特に仲良くしてね」

「はい。ウマ娘さんと仲良くする、そして"うまぴょい"もする」

「よしよし、いい子ね。でも、うまぴょいはあまり連呼しないでね」

 

 俺の頭を優しく撫でながらネオさんが褒めてくれる。

 ここでずっと雑誌を読みふけっていたシュウが口を開いた。

 

「実の息子の前でイチャイチャと・・・まさか母親を寝取られるとは思いませんでした。マサキ、そんなあなたにはマザーファッカーの称号を与えましょう」

 

 瞬間、俺を抱えていたネオさんが消えシュウの眼前に瞬間移動。

 強烈なビンタをする。

 

「ありがとうございます!!!」

 

 吹っ飛びながら、何故かお礼を言うシュウ。

 意味が分からない。

 

「もう!シュウ君、お勉強の邪魔しないで。あとこれ以上マサ君に、変な言葉吹き込むのもやめて」

「フフッ、母の愛が痛いですね・・・」

 

 ネオさんが戻ってきてまた膝に乗せてくれる。

 

「ごめんね。うちのシュウ君ホントにおバカで困っちゃうわ」

「シュウ面白いから好きだよー」

「マサキ・・・////後で、私のウマ娘秘蔵コレクションを一緒に見ましょう」

「良かったわね、マサ君がいい子で」

 

 勉強再開。

 

「騎神なんだけど、強さに応じて級位が設定されているの」

「きゅうい?」

「どの位強いかの目安になる称号ね。下から烈級、轟級、超級、天級の4つあるのよ」

「れつ、ごう、ちょう、てん」

「そうそう。級位については、えーとあったこのページね」

 

 本を広げてこちらに見せてくる。

 

 烈級 ヤバい!

 轟級 町がヤバい!!

 超級 国がヤバい!!!

 天級 世界がヤバい!!!!

 

「ヤバいばっかりでよくわかんない」

「何よこれ?大体あってるけども・・・」

「私ならこのように例えますね。ちょっと失礼」

 

 シュウがノートに何やら書き込んでゆく。

 

 烈級 ゴリラ×10

 轟級 ゴリラ×1000

 超級 キングコング

 天級 キングコングの大群

 

「なんでゴリラなの?」

「ダメですか?力の象徴としてゴリラは有効だと思ったのですが」

「ゴリラ呼ばわりはちょっと・・・勘弁して。私ならこうするかな」

 

 今度はネオさんが例をノートに書く。

 

 烈級 ゲッターロボ

 轟級 ゲッターロボG

 超級 真ゲッターロボ

 天級 ゲッターエンペラー

 

「虚無るの?」

「天級の存在は宇宙の危機なのでは?ちょっと動いただけで、惑星吹き飛ばさないでください」

「ダメ?ゲッター好きなのに・・・」

「ネオさんはロボット大好きだよねー」

「いいかげん、積みプラモとロボフィギュアの山を片付けて欲しいのですが・・・」

「う・・・どれもカッコイイんだから・・・しょうがないじゃない」

 

 ネオさん・・・ロボット好きすぎて、一部屋をロボ玩具で埋め尽くしているのは皆知ってる。

 この人の布教活動で俺とシュウもそれなりのロボ好き。

 

 

 殆どの騎神は烈級止まり。※けっして烈級が弱い訳ではなく轟級以上が規格外なだけ

 轟級になれるのは厳しい修練を積み上げた少数精鋭。

 超級に至るのは更なる修練を積み天賦の才を開花させたごく一部の者のみ。

 天級は世界にたった数人の生ける伝説。あまりに荒唐無稽な武勇伝が多くその存在自体を疑う者、ただの都市伝説だと考察する者が後を絶たない。

 

「後は・・・騎神が本気で戦う時、お互いに名乗りを上げるわ」

「自己紹介するの?」

「"今からあなたの事をボコボコにしますけど、いいですよね!"と言う宣言ですよ」

「自分の所属、級位、真名この三つを言うのが基本かしら?多少のアレンジが入る事もあるけど」

「おおー、ケンカの前のアイサツは大事。かっこいいね!」

「そんな場面に遭遇しないのが一番なんだけど、もしも騎神の名乗りを聞いたら絶対に近づいちゃダメよ」

「はーい」

 

 騎人、騎神、級位、名乗りの意味をこの時教えてもらっていたんだ・・・。

 

「今日はこんな所かしら、何か質問はあるかな?」

「"うまぴょい計画"の成功率を上げる方法があれば是非聞きたいですね」

「シュウ君・・・私に"目だ!耳だ!鼻だ!"って言わせないでね」

「やめてください!死んでしまします!!」

 

 ネオさんにメンチを切られ自室へ退散するシュウ。

 

「しつもーん!」

「はい。何かな?私が答えられる事にしてね、シュウ君みたいなのダメよ」

「母さんとネオさんは何級なの?」

「ふふっ、それは秘密よ」

「えー、じゃあヒント!ヒントちょうだい」

「ヒントね・・・"惑星吹き飛ばさないよう気を付けてる"なんてね」

 

 結局、はぐらかされてしまったが・・・今思うとこれって・・・ハハ、まさかな。

 母さんとネオさんがゲッペラー・・・ないないそれはない!!!

 グレンラガンぐらいでしょたぶん?あ、天元突破はやめてください!!!!

 

 

【現在 クロVSアルクオン 戦闘開始直後】

 

 戦場に背を向けてシロと共に逃走中。

 ああ~クロが心配だ。

 

「烈級騎神、クロは騎神だったのか」

「おや、覇気については無知だったのに級位と騎神についてはご存じでしたか」

「烈級・・・ゴリラ10頭分なら・・・行けるか?」

「ゴリラ?」

「何でもない、クロは大丈夫かなって」

「電池切れ寸前の癖にアルクオンはおそらく轟級クラス、今のクロちゃんでは・・・」

 

 背後から戦場の激しさを物語る轟音が響く。

 貨物コンテナが崩れる、大型クレーンがへし折れる、地面が爆散する、破壊音破壊音破壊音!

 ほんまえらいこっちゃで・・・。

 

「このまま逃げてるだけでいいのか?何かできる事は」

「クロちゃんには申し訳ないですが、先に私だけでも契約を済ませましょう」

「この状況でか?」

「この状況だからです。契約完了すればマサキさんの覇気が私に流れ込んで来ます。」

「それでどうなる」

「契約直後の操者は覇気の殆どを愛バに持って行かれますから、アルクオンの興味対象外になるでしょう」

「俺の覇気残量が少なければ、あいつは襲って来ないか・・・」

 

 そんなので上手くいくかわからんが、できる事は全部試してみるか。

 そう思った瞬間。

 

「ごめんシロちゃん!!!そっち行ったーーーー!!!!!」

 

 クロの叫び声が聞こえると同時、アルクオンがこちらへ迫る。

 初撃を辛うじて躱す俺たちだが、止まることなく追撃をかけてくる。

 こいつ今度はシロを狙って・・・。

 

「地獄耳ですか?それとも本能?どちらにしろ[どけ!こいつは俺の獲物だぞ!!]と言いたいのですね」

「おい、シロ」

「どうやら私をご指名みたいなので、出来るだけ引き離します。その間にクロちゃんと合流してください」

 

 俺から離れて行くシロ、それを追うアルクオン。

 ああ~今度はシロが。

 

「マサキさん」

「クロ!良かったぶじ・・・」

 

 振り返った俺が見たのは、全身ボロボロになったクロ。

 あの野郎!!!!コロス!!!

 一気に頭に血が昇る、愛バになる予定の少女を傷つけられ怒りが抑えられない。

 

「えへへ、ゴメンね。やっぱあの子強いや・・・私ってまだまだ弱い」

「そんなことない、お前は立派な騎神だよ」

「騎神?そっか、知ってるんだね・・・名乗り上げてこのザマ・・・ホント恥ずかしいな」

「お前が体張ってくれたから、俺はまだ干物にならずに生きてるぞ」

「じゃあ頑張って良かったかな、よし!落ち込むの終了。私まだまだ戦えるよ」

 

 所々衣服が破れ全身に傷を負ってなお、戦意を失ってないことに安堵。

 100%元気とは言えないが、何とか軽傷で済んでいるようだ。

 血が出ている箇所をハンカチで拭ってやり、乱れた髪を手櫛で整えてやる。

 

「ん、ありがと」

「どうする?シロは一人づつでも先に契約した方がいいと言ってたが」

「私と戦闘中だったのに、いきなりそっちに行ったんだよね。マサキさん傍にいる契約しそうなウマ娘を優先的に潰したくなったって事かな?」

「だとしたら、今クロと契約しようとすると、またこっちに戻ってくるのか?」

「わかんないけど、私契約はやっぱり三人でしたいな。シロちゃんも一緒にね」

「ああ、そうだな。とりあえずシロのところに行くぞ」

「うん。ちょっ・・・アレは!」

 

 シロと遠くに行ったはずのアルクオンが大きく振りかぶって何かをこっちに投擲する。

 何を投げて?・・・てシロじゃねぇか!

 慌ててシロを受け止めるクロ、俺も二人の衝撃を逃がすように支える。

 ハンター×ハンターのドッヂボール回みたいになっとる。

 

「ナイスキャッチですよ二人とも!」

「ボールになった気分はどう?」

「最悪です。ゲロ吐きそう」

「吐くのは後にしろ、来るぞ!」

 

 どうやら三人まとめて一網打尽を選択したらしいな。

 俺を庇うように前へ出るクロシロ、マジでどうすんだこの状況。

 こんな事ならさっさと二人に首でも何でも噛ませてやれば良かった。

 今でも十分カワイイけど二人の成長した姿が見たかったな・・・・。

 

 真っ直ぐ加速して突撃してくるアルクオン。

 距離数メートルまで迫ったその巨体が突然、蹴り飛ばされた!!

 

「「「!?」」」

 

 蹴り飛ばされた・・・そうクロでシロでも俺でもない、更なる乱入者によって。

 吹っ飛ばされたアルクオンは貨物コンテナに直撃、崩壊する瓦礫の下敷きとなった。

 

「保護対象を確認、危険因子の一時排除完了」

 

 機械のようでありながら、透き通る声を発する乱入者。

 声も出せず唖然とする俺たち。

 よーし、こんな時は目で会話するんだ!アイコンタクトってやつ。

 

 (また知り合いか?)

 首を振るクロシロ。

 (そちらの関係者では?)

 俺も首を振る。

 (この人ウマ娘だ!しかもメッチャ強い!)

 

「「「誰!?」」」

 

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