母さんと出会った日の夢。
幸せな記憶から目覚める。
「ううん・・・ここは」
石造りのベンチに寝かされていたようだ。
体の上に上着が2着?これはあいつらの・・・・。
「はっ!クロシロ何処だ!」
今までの経緯を思い出す。
契約は完了したのか?首に痛みがある・・・何とかなったんだよな。
二人がいない、アルクオンとボンさんの所に行ったのか。
俺も追いかけないと・・・。
「うおっ、何じゃあこりゃー!」
今、気づいたがなんだコレ?俺の体から何か出ている・・・幻想的でキレイね。
緑色の発行物体が周囲を舞っている、あれだガンダム00のGN粒子みたい。
手足を振ってみる。うん、やっぱり俺から出てる。
「もしかしてこれが覇気?こんな風に見えてたのか・・・」
適正検査で落ちて当然だわ。
こんなピカピカした人間イヤですよね・・・。
ちょっと出すぎじゃない?調節できないもんかね、ふんぬばらっ!
「お、できるできる!そうそうもうちょい少な目で・・・」
蛇口を閉めるイメージで覇気の放出量を減らす事に成功。なんだ簡単じゃん。
よーし今度は強くしてみよう、イメージだイメージしろ!
えーと蛇口を緩めて繋いだホースの先端をつまんでと・・・。
「きゃあー!ダメダメダメ出すぎ出すぎだから!」
周囲が一気に明るくなってビックリした。
やりすぎた気を付けよう、練習が必要だな。
覇気を出したり引っ込めたりを繰り返す。
ほうほう、ここはこうしてと・・・ああこうなるのね・・・おけおけ。
手や足、体の一ヶ所に集める事もできる。うん、やっぱりイメージが大事。
足の裏に集中させた状態を維持、ジャーンプ・・・ひゃっ!高い!
その後いろいろ試した、身体能力向上と覇気の存在をハッキリ認識できるようになったみたい。
これが契約後の特典ですか・・・ちょっと地味。
そうだ!一応あれも試してみるか。
今ならやれそうな気がする。
「かぁ~めぇ~はぁ~めぇ~はぁぁぁあああああああああ!!!!!!!!!」
・・・・カシャ。
うん?今なんかシャッター音が聞こえたような・・・・。
やっぱり出ないか~、もしかしたらと思ったけど出ないか~残念!
念のためもう一度やってみるか。
「かぁ~めぇ~はっ!?・・・なん・・・で・・・おまえが」
「・・・・」
ここでやっと気づいた。
俺にスマホを向けている、よく知る男の存在に。
「どうしたのですか?私に構わず続けてください」
「何時からいたんだよ、シュウ!」
「何じゃこりゃー!のあたりからですかね」
「いるんなら言えよ!」
なんでここに?それよりこいつ撮影したのか。
「おい消せ!今すぐ俺の"かめはめ波"を消せ!」
「今ちょうど母に画像を送ったところです」
「ちょっとぉぉぉおおおおお!!!何してくれてんのぉぉぉおおおおおお!!!!」
「おや、早速返事がきましたよ。「ウマスタグラムに載せてもいいかな?マサ君」ですって」
「ネオさんんん!!!やめてぇーーー!!!!SNSって怖いのよ!!!」
もうだめだぁ、ネオさんから母さんへは確実に流失するね!恥ずかしい!
「おめでとうございます。操者となり愛バ・・・騎神を手に入れましたね」
「いろいろ聞きたい事があるが、こっちの状況は把握しているんだな」
「ええ、それなりには」
「すぐにクロシロの所に向かう。お前も付いて来るか?」
「今のあなたが行った所で、足手まといなのでは?」
「わかってる、それでもあいつらだけ戦わせるわけには」
「そうですか・・・それ」
「ちょ、何しやがる!」
拳を振るってきたシュウ、しっかりガードする。
見ればシュウの体からも覇気が出ている。こいつ覇気を乗せたパンチをしたのかよ。
「体はちゃんと動くようで何より、覇気も感じられてますね」
「おかげさまでな。母さんたちとの"遊び"は訓練だったみたいだし」
「久しぶりに相手をしましょう、もちろん覇気を制御しながらです」
いきなり開始された格闘戦。
体に覇気を纏い互いに身体能力を強化して、激しい攻防が始まる。
わかってる、これも訓練なんだろ。
短い時間で俺に覇気を使った戦い方をレクチャーするつもりかよ、ありがてぇ。
でも、かめはめ波をネオさんに送ったのは許さないので、ちょっと本気で相手する。
「常に覇気を全身に巡らせる事を意識しなさい。攻撃防御インパクトの瞬間、各部位に覇気を集中します」
「こうか?殴る時は手に、走る時は足に・・・」
「それを考えずに当たり前のように行うのです。呼吸や心臓を動かすのに考えていないように」
殴る、蹴る、跳ぶ、走る、守る、俺たちの息が合ってきたのか円舞ように攻撃と防御が噛み合っていく。
久しぶりでも忘れていない、ガキの頃から何度も組み合った相手。
母さんとネオさんの教え、一緒に切磋琢磨したシュウが俺という人間を形作っている。
何度か攻防を続け、覇気の制御と体術のカンを取り戻した所で終了。
10分にも満たない時間だが濃密な訓練だったと思う。
「こんな所ですか・・・付け焼き刃ですがね」
「もういいのか?」
「まだアルクオンは停止していません。向こうはまだ戦闘中ですよ」
「そうだな、完璧になるまで訓練してる暇はないか」
「では行きなさい、くれぐれも油断なさらず」
「お前は来ないのかよ」
「もしもの場合に備えて増援の手配をしておきますよ、先に行ってください」
「わかった。助かったぜ」
「お礼はあなたの愛バの写真でいいですよ」
「考えておく」
シュウと別れ覇気がぶつかり合う戦場へ向かう。
待ってろよクロシロ!あ、ボンさんも。
「やれやれ、行きましたか・・・」
マサキの姿が見えなくなった後、その場に膝をつく。
先程の訓練でシュウの覇気は限界寸前まで消費された。
上手くごまかせたが、何度かこちらのガードをすり抜けてダメージをもらっていた。
予想の遥か上の覇気に完全に飲まれた。
「わかったつもりでいましたが・・・とんでもない覇気ですね」
全身に纏った覇気による強化補正が桁違いだ。
一撃一撃の威力と体の頑強さ、素手でも並みのウマ娘など敵ではないだろう。
あの力は騎神クラス・・・今後の修練しだいでは操者という枠に収まらない可能性もある。
「ふむ。私も一から鍛え直しですね」
まだ弟分に情けない姿を見せるわけにはいかない、兄貴分としてのプライドがある。
母たちに折檻されている姿はノーカンだ。
「あなたがウマ娘と紡ぐ物語はここからが本番です。期待してますよマサキ」
【騎神三人VSアルクオン】
「本当に何なんですかこいつ!あーくそっ!」
「わっ!とと、今のは危なかったね」
「バッドステータス「焦燥」を確認。三人でリンチするはずが、逆に追い込まれています」
騎神三人は防戦一方を強いられてた。
クロシロがブルボンに合流した直後、アルクオンの動きが変わった。
ブルボンとクロを薙ぎ払い、シロをその剛拳で吹き飛ばす。
これまで以上の猛攻に感情がないはずの機体から、明確な怒りと殺意を感じる。
「いっ・・・たいなぁ!もう!まだ私名乗ってないのに!ずるいです!私にもカッコよく名乗らせて!」
「アルクオンがマジギレしてるんだけど」
「覇気出力30%上昇を確認、なおも上昇中・・・この状況マズいです」
「あれ?加勢に来たのはずなのに足引っ張ってる」
「マサキさんを私たちに取られて"激おこぷんぷん丸"なんですね、わかります」
「無事契約完了したようですね。おめでとうございます」
「ありがとう。えへへ照れるね////」
「ありがとうございます。いや~いいもんですね愛バになるって////」
幸せな空気をぶち壊すようにアルクオンが迫る。
三人で即席のフォーメーションを組んで対処するが、その悉くが通用しない。
アルクオンの攻撃一つ一つがこちらの覇気と命を削りに来る。
「がぁぁ!パワーが違い過ぎる!」
「つ、強い!強過ぎるぅ!」
「バッドステータス「島田兵」を確認。二人ともまだ戦えますか?」
「実は先程の一撃で折れてませんが、右腕が上がりません・・・ヒビ入ったかも」
「大丈夫?私は契約前から足がプルプル痙攣してた、タイマンの傷が今になって」
「奇遇ですね。最初の不意打ち時、利き足をやってしまったブルボンです」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「「「ヤベェ!!!」」」
騎神三人の優位性が負傷者三人という不利な状況になっていた。
まともに攻撃を受ける事は即戦闘不能を意味する。
回避に専念し逃げ回るだけの時間が続く、「この屈辱忘れはせんぞ!」と三人は思った。
「エネルギー切れは?どうしてあの子はまだ動けるの?」
「気付きませんか、あいつ攻撃するたびにこっちの覇気をぶんどってますよ」
「なにそれずるい!ウマ娘の覇気は受付ないはずじゃ」
「戦闘継続時間の延長を可能とする特殊機構。その際、覇気を吸収する対象は問わないと推測」
「本当は人間の覇気が食べたいけど、ウマ娘の覇気も我慢すれば食べれるって事か」
「嫌々食べないでくださいよ、失礼な!」
エネルギー切れはしない、こちらは負傷中、戦闘力は向こうが上・・・。
これは詰んだか、いやまだだ、考えろ何かないか、何か。
その時、離れた場所から強い覇気の噴出を感じた。
自分たちだけでなく、アルクオンもそれに注意をはらい動きを止める。
あそこはさっきまでいた公園、契約の場所、この力強くも優しい輝きの覇気は・・・。
「・・・・っ」
「・・・マサキさん」
目覚めたのだ彼が、私たちの大事な操者が。
アルクオンが騎神たちを無視し移動を開始しようとする。
何処へ?決まっている。当初の目的である最高のご馳走の所へだ。
「「行かせるかぁあああ!!!」」
痛む体を気にしていられない、全力でこいつを止める。
操者を狙う相手に愛バの本能である感情が爆発する。
おい!何をしに行こうとした?お前ごときがあの人に触れようとするな!
あの人は私たちのものだ!覇気の一欠けらすらくれてやらない!ふざけるな!!!
アルクオンの体にしがみつき引きずり倒す。
爆発した感情が覇気を一瞬だが増幅させパワーが上回った結果だ。
そのまま自分たちごと押さえつけ固定する。逃がさない!
「ブルボンさん!!」
「やってください!!」
二人の意図を理解した三人目の騎神は既に上空へ跳躍済み。
「了解。全力で行きます!究極ブルボンキック!!!」
「「技名ダサっ!!!」」
地面に縫い付けられたアルクオンの胸部へ、騎神の脚力に膨大な覇気を乗せた一撃が炸裂する。
その衝撃は固定をしているクロシロにも伝わり、地面に大きなひび割れとクレーターを創った。
堪らずアルクオンの装甲が弾け飛ぶ、むき出しとなった体の中心、核に当たる部位に追撃をしようとするが。
「うそ!」
「・・・こいつ!」
アルクオンが跳ね起きる、しがみついたクロシロを物ともせず。
そしてその剛脚をブルボンにお見舞いする。
「っ!?」
最初のお返しとばかりに放たれた蹴りを、まともに受けたブルボンは吹き飛ぶ。
受け身を取る事もかなわず、海上に放り出され沈んでいく。
「いけない!シロちゃん!」
「・・・・ちいっ!」
シロを振りほどき、まだ腕にくっついているクロを地面に叩きつける。
「がはっ!」
何度も何度も何度も、邪魔者の反応が消えるまで続けられた。
意識を失ったクロを無造作に投げ捨てる。
「クロちゃん!起きてくださいクロ!起きろ!キタサンブラック!!」
クロに呼び掛けながら救出を試みる。
三対一でも勝てない相手、だけど相棒を捨てて逃げる事はできない。
海に落ちたブルボンも心配だ。
何よりここでこいつを止めないと・・・。
「操者のために命をかける、愛バ冥利につきますね」
諦めてたまるか。
【マサキ】
おーおー、なんか派手にやってる。
衝撃と轟音が響く、見えるようになった覇気がバチバチ飛び交っているのがわかる。
急がないとな、母さんのとの追いかけっこ思い出す。
風のように軽やかに走る姿、きっとこんな感じで覇気を足に。
地面を蹴るときに覇気を使い、一歩の距離を伸ばす。コツをつかんでそのまま加速。
跳ねるように走り抜ける、最高速を上げていく。
「クロ、シロ、ボンさん」
まだ三人の覇気を感じる。感じるのだが・・・酷く弱っている。
そして最初にボンさん、次にクロの覇気が小さくなった。消えてないよな?嫌だ!
「チャドの霊圧が・・・消えた?」みたいにな事はマジで勘弁してくれ。
不安に駆り立てられさらに速度を上げる。
落ち着け、アルクオンを前に冷静さを失ってはいけない。
覇気を使った本気の戦闘、俺の初陣。勝利条件は全員が生き残る事。
向こうが格上だ、無理に倒さなくていい。サトノ家やシュウの増援が来るまで生き残る。
とにかく冷静にクールになれマサキ!・・・見えた!
俺、参上!
ボンさんがいない。
クロが倒れ伏している・・・動かない。
そしてシロが・・・首を締め上げられもがいていた。
「あ゛!?」
キレるという言葉を今はじめて理解した。
覚えていない、どうやって移動したのか。
覚えていない、アルクオンの片腕を根元から粉砕した。
覚えていない、シロを救出して腕に抱えていた。
本当に覚えていない、ただ冷静とは真逆の感情が俺を突き動かしただけ。
あーちくしょう!やったな、やってくれたな!上等だ!
逃げる?増援を待つ?嫌だね!こいつはここで潰す!!!
ごめん!母さん、ネオさん、シュウ、無理だった、我慢できなかった。
初陣なのに命のやり取りなんてしたことも、覚悟もないのに。
俺は今から命をかけてこいつを倒す!!!
こんな時三人は「行って来い!」て言ってくれるよな。
名乗りなんて上げない、ただ衝動のままに宣戦布告する。
「おい!なに人の愛バ勝手にボコってんだ」
俺史上最大のガンを飛ばして告げる。
「解体するぞ!コノヤロウ」