金玉砲が怖いので投降する事にした。
「それでは行ってきます」
「すまないね。君にこんなマネをさせて」
「いえ、気にしないで下さい。後は頼みます」
現在、ヒリュウとハガネは俺の引き渡しのため接舷中。
ハガネからヒリュウ甲板上にスロープ状の通路が伸びて向こう行ける状態だ。
パパさんと黒服さん達に見送られて通路を進む。
俺の手には荷物がたくさん入る大き目のカバンが二つ、サトノ家のお土産である。
メジロ家の皆さんもきっと気に入ってくれるはずの自慢の品。
俺がハガネ側へ渡り切った事を確認してヒリュウが離れて行く。
目の前にあるドアのロックが解除され中から護衛らしきウマ娘が2人現れた。
「ようこそ。メジロ家所有のハガネへ」
「お待ちしておりました。どうぞこちらへ」
「ああ、お世話になります」
一応、歓迎されているみたいだな。
二人に促され通路を進む。
「何処に向かっているんですか?これから俺は何を」
「頭首に謁見していただく前に、あなたを検査させて下さい」
「簡単なメディカルチェックと覇気の検査を受けていだ抱きます」
「はあ、検査ですか」
「形式的なものですご理解ください」
「サトノ家の物に何かされていないとも限りませんし」
検査を行う部屋に到着した。
「先程から気になっていましたが、随分と大きなカバンですね」
「サトノ家頭首から迷惑をかけたメジロ家の皆さんへのお詫びの品ですよ」
「怪しいですね。そのカバンもチェックいたします」
「どうぞ」
空港にあるような手荷物検査装置でカバン調べる。
「ふむ。このカバンはX線を通さない特殊な素材でできてますね」
「中身を直接確認しても?」
「ええ、"生もの"なので早めにして頂けると幸いです」
「生もの?食料品ですか」
二人のウマ娘が二つのカバンを同時に開けた。
そして、中の"生もの"と目が合った。
「「な!?」」
「せいっ!」
「ふんっ!」
生もの達が一撃で検査をしていた二人を昏倒させた。
「ふー、狭かった」
「ガバガバセキュリティーで良かったですね」
「おう、お疲れさん」
カバンに入っていたのは俺の愛バたち、クロとシロだ。
投降する事を決めた時。
素直に従うのは癪だったので、一矢報いたいと提案してみた。
これにはパパさん含めサトノ家全員ノリノリで作戦決行。
カバンの中にクロシロを入れてハガネへ侵入。
その後、艦内部で可能な限り破壊工作(嫌がらせ)を行い脱出する予定。
勢いでここまで来ちゃったけど、この作戦も大概無茶だ。
「私達の侵入がバレるのも時間の問題です。早速行動開始しましょう」
「装備あんまり持って来れなかったね。マサキさん"亡霊"はどう?」
「今の所大丈夫だ。何とか使いこなしてみせる」
ここに来る前に騎神用の装備"ゲシュペンスト"をレンタルした。
黒い手甲と足甲で武装もシンプルかつ必要最低限。
ATX計画では比較的まともな万人向けの仕様。
三基のプラズマカッターに特殊兵装としてスラッシュリッパ―。
邪魔くさいのでスプリットミサイルとビームライフルは置いて来た。
俺に射撃は向いてないと思う。
装着者の覇気を通わす事でしっかり防具の役目を果たすので十分だ。
「俺だけ装備ありで何か悪いな」
「いえいえ。流石に私達のは持ち込めませんし、素手で十分です」
「その代わり、嫌がらせアイテムいくつか持ってきたよ」
小型のバッグに破壊工作用の道具を持ってきたらしい。
よし!そんじゃまあ行きますか。
意気揚々とドアを開けて部屋を出ようとしたら、いきなり発砲された。
「うお!撃って来やがった。というかもうバレた」
「ちっ、対応が早いですね。腐ってもメジロか」
「ちゃんと実弾だね。こっちが覇気でガードする事がわかってる」
俺、この間まで覇気使えなかったのに・・・。実弾で撃たれた事に少しビビる。
騎神が当たり前の戦場では実弾も容赦なく飛び交うのね。理解した。
銃を使っているのは人間か、近接格闘をするのがウマ娘だな。
銃撃が途切れた隙に部屋を飛び出す。
銃より怖いのはウマ娘だ。戦艦の職員なら全員騎神だと思ったほうがいいな。
人間は無視してウマ娘に狙いを絞る。
俺たちの技量と覇気に生半可な騎神は相手にならない。
手早く何人か無力化して通路を走る。
追手の人数がどんどん増えてくる。ゾロゾロうぜぇー。
おや、分かれ道だ。こういう時は
「「「こっち!」」」
クロシロが右に、俺は1人で左に曲がる。
「「「ちょっ!?」」」
えー?俺たち以心伝心だったじゃん・・・・。
なぜこのタイミングで意見が分かれる。
俺の方向音痴は三人の絆より強い呪いのなの?
別のルートに入った俺たちに追手も分かれて対応する。
「仕方ないです!このまま続行!」
「マサキさん!気を付けて!」
「すまん!」
大声で作戦続行を確認して走る。
クロシロがいないのに無事この艦から脱出できんのか?不安すぎる。
二人と別れてしばらく、俺は袋小路に追い詰められていた。
ヤバいですね。
「もう逃げ場はない。大人しくしろ」
「やはりサトノ家に毒されていたか。かわいそうに・・・」
「あいつらのアホは伝染病と同じだ。なんて恐ろしい」
「向こうに逃げた子供達も相当厄介なアホらしいぞ」
「こいつも何をしでかすかわからん。早く取り押さえろ」
サトノ家嫌われすぎワロタ。
騎神が数人・・・やるしかないか。頼むぜゲシュペンスト。
先ずはスラッシュリッパ―を試してみるか
覇気を全身と装備に通わせ戦闘準備。
俺の覇気に反応して騎神達が身構える。
こっちから行くぜ。
「切り裂け鋼の戦輪よ!」
ちょっとカッコよく言った瞬間、装備に違和感を感じる。
どうしたゲシュペンスト?リッパ―出しちゃってよ。
動かない、それに何か熱くなって、ちょっと焦げ臭いよ・・・え煙が・・・。
「なんだこいつ様子がおかしい」
「不用意に接近するな。気を付けろ」
「ハッタリかもしれんが、警戒を怠るな」
「待って!これは俺にも予想外の・・・あ、ヤバそう・・・すみません!これ外すのてつだ・・・」
手伝ってと言い終わる前に、ゲシュペンストは俺ごと爆散した。
マサキと別れたクロシロは追手を振り切り、艦内を走っていた。
「ねえ、シロちゃん。マサキさんに渡した亡霊、何処から持って来たの?」
「格納庫の隅で埃被っていたやつですが、それが何か」
「最後にメンテナンスしたのいつ?」
「さあ?私は古鉄と白騎士の調整に掛かり切りだったので、半年は放置していたかも」
「マズくない?碌にメンテしてない装備にマサキさんの覇気が通ったら」
「大丈夫ですよ。いくらあの人の覇気が強力でも装備を破壊する程ではな・・・」
ドンッ!と艦内に爆発音らしきものが響き渡った。
位置はマサキが逃走したであろう方角から聞こえたような・・・。
「シロちゃん?」
「だ、大丈夫ですよ。マサキさんを信じましょう。私達は自分の任務に専念するべきです」
「そ、そうだね。うん、マサキさんなら大丈夫」
「怒られる時は一緒ですよ、クロちゃん」
「また耳引っ張られるのかな。スキンシップ禁止とか言われたら、たぶん泣く」
「それは大変困ります。あの人のナデナデ、ハグ、抱っこ、その他が無くなる生活はイヤです」
「もう!ブラッシングしてもらえなくなったら、シロちゃんのせいだからね!」
言い争いをしながら、操者の無事を信じてひた走る二人だった。
「けほっ!げほ・・・うぁ・・・び、びっくりしたー!」
いきなり四肢に装着した装備が爆発するとか、驚くわ!
覇気がなかったら木っ端微塵になってたぞ。
自爆は最終手段でしょーが!なに初手から発動させてんだ。
こんな欠陥品を寄こしやがって、クロシロは後でおしりペンペンの刑だな。
「くっ!いきなり自爆するとは・・・」
「サトノ家やはり侮れ・・・」
「奴は何処だまだここに・・・」
「は?・・・・」
「え、なんで・・・」
「・・・・////」
なんだろう?俺の姿を確認した騎神達が唖然としている。照れてる人もいるし。
俺が何か・・・あれ?なんで服着て無いんですかねぇ・・・。
そっかそっか、爆発で服が消し飛んだのね。かろうじてトランクスは残って安心?
覇気ガード時、服も上手にコーティングできるように修練せねばな。
現状は把握した。
いつまでも固まっている訳にはいなかないので、時を動かしますか。
せーの。
「いやぁぁぁあああああああああ!!!変態ウマ娘の集団に犯されるぅぅぅううう!!!」
「「「「「「変態はおまえだぁあぁああああああ!!!」」」」」」
パンツ一丁、略して"パンいち"になって逃走再開。
武器も無くなったし、精々逃げ回って場を混乱させてやろう。もうやけくそだ!
でも何だろう、敵陣の中枢で半裸(ほぼ全裸)で走り回るのって、すごく気分がいい。
いけない事をしている背徳感、バカな事をしている高揚感、多少の羞恥心。
いろんな感情と開放感でアドレナリンがドバドバだぜ。
ひゅー体が軽い!もう何も怖くない!!
「待てぇー変態!その格好で走り回るなー」
「止めろ!奴を止めるんだ!」
「我々が追い付けない、何なんだあいつのスピードは!」
「おい、パンツがずれそうになってるぞ!出すなよ!ぜったい出すなよ!」
「もうヤダ・・・サトノ家こわい・・・」
「あの有害人間を、お嬢様達には絶対に近づけるな!」
おーおーまだ追ってくるか。この鬼ごっこ超楽しー!ひゃはははははははは!!!
いかんいかん、興奮して我を忘れてしまった。
クロシロの破壊工作が終わるまで、こっちに人員を割いてもらわないとな。
「タスケテ―!レイパーズに追われてるのー!」
「誰がレイパーだ!この露出魔めが」
「寄ってたかって男を襲うなんて!これがメジロ家のやり方かぁあああああ!!!」
「やめろ!メジロ家を侮辱するな!」
「あの人、さっきから何で被害者ぶっているんですか!行動も思考も狂ってます!」
「あれがサトノだ、覚えておけ。理解しようとするな精神を病むぞ」
「ひぃ!」
「なによ人を異常者みたいに言って!パンツ脱ぐわよ!」
「「「「「「それだけはやめろー!!!!」」」」」」
その頃、ハガネのブリッジでは・・・。
監視カメラから届いた映像がモニターに映し出され、スタッフ一同皆困惑していた。
ありえない戦闘力で追手を躱し艦内で次々に嫌がらせを行う二人の幼い騎神。
もっとありえない半裸の人間とメジロ家騎神の鬼ごっこ。
ハガネが建造されて以来ここまで艦内が混乱したのは初めての事である。
「ほう。自らおとりになり愛バ達に注意が行かないように仕向けるとは、できるな」
この艦のトップ、メジロ家頭首ばば様が感心したように言葉を漏らす。
ブリッジスタッフ達は思った「いや、あいつらそこまで考えてねーと思う!」
「しかも自爆して半裸になるとはな、何という決意と覚悟!見事です!」
見事か?自爆も予定外のように見えたが・・・。
「我がメジロ家の精鋭達が、ああも翻弄されている。あの男・・・やはり欲しい」
あの変態が欲しいのか?勘弁してくれ。
ハガネのスタッフ一同のやる気が下がった。
スタッフの一人がおずおずと発言する。
「頭首様はあの男を操者として、メジロ家に向かい入れるおつもりですか?」
「ええ。天級の横やりが無ければ、元々うちの子でしたからね」
「?」
「こちらの話です。そうですね、孫達の誰かと契約してもらえば・・・」
「お、お嬢様方をあの男に本気ですか!」
「もちろん本人達の意思や相性を尊重しますが、あの覇気なら孫も納得するでしょう」
おいおい、冗談じゃねぇぞ!
お嬢様たちはメジロ家の宝だ、あの聡明で愛らしく才能あふれる彼女達が・・・。
あの変態と契約するだと・・・絶対に許さねぇ!
スタッフ一同のやる気が上がった。
「警戒レベルの引き上げと、男の方に戦力を増員させますがよろしいですか?」
「ええ。多少手荒になっても構いません。あの三人を捕縛しなさい」
「はっ!」
「きゃあぁああああああああ!!!レイパーが増えたぁー!!!」
急に追手の人数が増えた。
今15~20人ぐらいか、ヤバっ、どんどん増えていく。
しかも、飛び道具が・・・銃弾、ナイフ、手裏剣、弓矢、ブーメラン、ゲイボルク!?
やだ!追手にランサーが混じってる。兄貴か師匠どっちだ!
スカサハ師匠のぴっちりスーツエロいよね。
修業頑張った後のご褒美で、思いっきり甘やかして欲しいんじゃ!
追手の必死さがさっきと段違いだ。皆目が血走っている。
そんなに見つめるなよ。興奮しちゃうじゃないか・・・。
パンいちで興奮するのはマズいか。
「あんな奴がお嬢様と、許さない許さない許さない!」
「とにかく捕まえろ!生死は問わん!手が滑ったとでも言えばいいだろ」
「隔壁を降ろせ!逃走ルートを限定して追い詰めろ」
「・・・マズいぞこの先の区画は。はっ!最初からそれが狙いか」
「逃がすな!あいつの存在はメジロ家を破滅に導く!」
これ捕まったら殺されますね。
初めて乗った艦だし、元々方向音痴なので何処を走っているの全然かわからん!
そろそろ脱出方法も考えなくては、クロシロは上手くやっているのかな。
ちょっと休憩もしたいし、次の部屋に飛び込んで身を隠すか・・・。
加速して追手を引き離す。この角曲がって最初の部屋へとびこめー!
「おじゃましまーす!」
「え!」
「きゃっ!」
「な、何?」
「なんですの!?」
先客がいたー!しかも女の子が4人。お、全員ウマ娘じゃんカワイイ!
はっ!パンいちの俺が女児4人の部屋に突撃・・・殺される理由が増えましたね。
「こんな格好ですまない。見るからに怪しいのは自覚している。まずは落ち着いてほしい」
「「「「・・・・」」」」
「実は今、追われていて困っている。ちょっとでいいから匿ってくれないか?」
ダメ元で頼んでみた。
無理だよなー。俺だったらパンいちが部屋に突入した時点で即悲鳴、即通報するわ。
こちらを見つめる8つの瞳に警戒の意思を感じる。
「最悪だ!この先の部屋はお嬢様方―!」
追手が来やがった!ああもう!こうなったら限界まで徹底抗戦じゃあ!
この子達を巻き込まないように場所を変えよう。
「邪魔して悪かったな。もう行くわ、俺の事は忘れてくれ」
部屋を出て行こうとすると4人の内の1人が近づいて来た。
そのままジッとこちら見る。
なんだこの探るような目線、あいつらと初めて会った時のような感覚。
「こっちですわ。しばらくここに隠れてください」
俺の手を引いてクローゼットに隠れるように促す。いいの?ありがたいけど。
「ちょっ、マックイーン何を!」
「その人を匿うの?正気!」
「ははは、面白そうだから私は賛成」
クローゼットに入って息を潜める。
追手が来た!ドキドキ・・・スニーキング中のスネークもこんな気分だったのかな。
ダンボール箱持ってくれば良かった。
「はあはあ、お嬢様方・・・ご、ご無事でしたか」
「何ですか?ノックもせずにゾロゾロと、メジロ家の者として礼節には注意しなさい」
「し、失礼しました。ですが、緊急事態ですのでご容赦下さい」
「何かあったのですか?」
「えっと、つかぬ事をお聞きしますが、ここに半裸の変態が来ませんでしたか?」
「半裸の変態?ハガネはいつからそのような下賤の輩の侵入を許すようになったのか」
「申し訳ありません!そいつは変態の癖になかなかの手練れでして」
「言い訳はいいのです。ここは大丈夫ですので、すぐに別区画の捜索に向かいなさい」
「は!何かあれば直ぐにご連絡下さい。では、失礼します」
ふぃー、なんとかなった。
それにしてもお嬢様ね・・・メジロ家のご令嬢か。
堂々としてまだ子供なのに風格があるな、シロとはまた違った気品を感じる。
「もういいですわよ。変態さん」
「ありがとう助かった」
「とりあえず体を隠して下さる?」
「そこの毛布?を使ってもいいですかな?」
「ええ、構いませんよ」
毛布というよりタオルケットを体に羽織る。
なんかパンいちにマント装備は変態度数が上がった気がする。
前をしっかり隠してと、とりあえずこれでなんとか。
相手は子供だが命の恩人、改めてお礼せねば。
「ありがとうございました。おかげで命拾いしました」
「まあ、キレイな土下座ですこと。困った時はお互い様です。お気になさらず」
頭を上げ4人の子供達を見る。
「いいのマックイーン。この人危険じゃないの」
活発そうなボーイッシュな子。俺の体をマジマジと見ていた。
筋肉に興味あるのかな。戸愚呂弟とか好き?
ちょっとまだ警戒されてる。
「うう、用が済んだら早く出ていきなさいよ」
黒髪ロングの子。この子が一番俺を危険視している。
ちょっと素直じゃなさそうだが、こういう子のデレが見たいね。
目もあんまり合わせてくれない、男が苦手なのか?
「まあまあ。二人ともリラックスしてほら、リラックスー」
親しみやすそうな茶色毛の子。このメンツのムードメーカー的存在か。
場の空気を読んで二人を落ち着かせようとしている。フォローもうまい。
俺を見ても微笑んでくれる。ええ子やね。
「で、あなたはいったい何者で、どうして追われていましたの?」
俺を匿う決断をした子。
淡い紫がかった美しい毛並み、威厳と気品のある所作。
間違いない、この子がリーダーだ。4人の中でもこの子の存在感は一際凄い。
それと、どことなくシロに似ている・・・。
誤解を解かなければ!
焦って立ち上がったのでマント(タオルケット)が床に落ちる。
ついでに唯一残った装備のトランクスもずり落ちそうになった。
あと数ミリでアウトだったぜ!このまま返答する。
「今パンツ脱げそうになってるけど。俺、変態じゃないんだ!信じてくれ!」
「「「「説得力皆無!!!!」」」」
ですよねー。
失敗したわー。