メジロ家のご令嬢と衝撃の出会い。
ずり落ちそうなパンツをしっかり履きなおして、再び土下座。
露出狂じゃないのです。信じてください。
このままでは埒が明かないので、一気にまくし立てる。
サトノ家のヒリュウからここへ来たこと。
なぜか半裸になってしまい、逃げ続けていたらここにたどり着いたと。
「つまりあなたは私達メジロ家の敵という事ですのね」
「敵かぁ・・・一応そうなるのかな」
「はっきりしませんわね。この後はどうするおつもりで」
「さあ?勢いでここまで来ちまった」
「こんな大それた事をしておいて、ノープランですか」
「まあなんとかなるし、なんとかするよ」
「楽観的すぎませんか?サトノは皆こうですの」
「知らん。サトノ家に厄介になって数日だからな」
「お兄さん面白いね。もっとお話しよう」
土下座をした後。
ふかふかのソファーに案内されそこで尋問と言う名のお話タイム。
「えっと君は・・・あ、俺はマサキと言います」
「パーマー、メジロパーマーだよ。よろしくマサキ」
「メジロマックイーンと申します。以後お見知りおきを」
「ああ、よろしくな」
パーマーにマックイーンね。
愛称パー子にマックで決定。
「あなた達もご挨拶したらどうですの?」
「そーだよ。挨拶はした方がいいよ」
「そ、そうだね。メジロライアンです。よろしく」
「・・・ドーベル、メジロドーベルよ」
「ライアンにドーベルだな。よろしくな」
まだ警戒中の二人の名前も判明。大丈夫よ俺無害な紳士よ。
「なぜハガネにいるんだ?ここって一応戦艦だよな」
「おばあ様に無理を言って乗艦させていただきましたの」
「前から乗ってみたかったんだよねー、戦闘するとは聞いてなかったけど」
「この辺りの区画が一番安全だとかで、この部屋にいるよう言われました」
「はぁ最悪・・・もう帰りたい」
「その安全な部屋に半裸の男性が飛び込んできましたけど」
「なんかすみません」
「いいよ。この部屋にいるのも飽き飽きしてたからね」
「私達、娯楽に飢えていますの。あなたの来訪を歓迎しますわ」
「随分話のわかるお嬢様だな。ありがとう」
「あ」
しまったぁー!頭を許可なくナデナデしちゃった!
いつもクロシロにやってるからつい・・・アカンやらかした。
めっちゃサラサラ!すげー触り心地だ、これがお嬢様の頭髪力かよ!
クロシロもお嬢でしたね。
「す、すまない!いつもの癖でつい」
「い、いえ・・・ちょっとビックリしただけですわ」
「私も撫でていいよーほら」
「いいの!じゃあ遠慮なく」
「わわ、凄いね!気持ちいいよ」
「あの・・・わたくしにも」
マックイーンとパーマーの頭を撫でる。
ほう。クロシロとはまた違った毛並みですな。これはこれで素晴らしいですぞ。
お!?・・・何だ・・・これは二人の覇気?
撫でてると二人の覇気が流れ込んで来た。そして俺の覇気も二人へ。
今、ちょっとだけ循環したか・・・。
俺の奥で何かにカチリと・・・二人の覇気がハマった?うんわからん!
ライアンとドーベルが信じられないと言った顔でこちらを見ている。
「ど、どうしちゃったの二人とも。そんなにチョロかった」
「その男に何か・・・されては無いみたいね」
「二人もやってもらいなよ。マジで世界変わるよ」
「これはとても良いものですわ。もっとお願いします」
「そちらの二人もご希望か。いいぜ来いよ」
「えーと」
「わ、私はいいし・・・」
「いいからおいで、別に取って食いやしない」
まだ躊躇している二人も撫でてやる。
安心させるように丁寧に優しく・・・。
まただ、俺と二人の覇気が循環する。
そしてカチリとハマる。どこに?何に?言葉にするのは難しいな。
「こんな感じでどうだ?怖くないよー俺無害だよー」
「うん。凄く優しい手つき」
「・・・上手ね」
「ね、言った通りでしょ。はい交代!次私の番」
「ふふっ、すっかり人気者ですわね」
四人を撫で終わってトークタイム。
会話してみてわかった。このお嬢様達いい子だな。
こういう子供を育てたメジロ家はやはり名家なのだろう。
そのまま当たり障りのない会話を続けた。
庶民をどう思っているの、お嬢様の辛さトップ10、きのこ派?たけのこ派?
おばあ様=ハマーン説、サトノ家のここが怖い、今期おすすめアニメ見た?
意外と話題は尽きなかった。
「なあ"うまぴょい"って知ってるか?」
発言してから気づく、この質問完全にセクハラですな。
小学生ぐらいの子にする質問じゃない。俺ってホントばか。
おや、マック以外の三人が赤面している。そうか・・・。
「なぜ私だけ撫でますの?」
「いいんだ。マックは純真なんやなって・・・いつかお前にもわかるさ」
「?その憐れんだ眼差し少々不快ですわ」
会話も一段落、良きコミュニケーションでした。
そろそろ脱出案を考えなくては、どうしようかな。
ブリッジを制圧するのは現実的ではないな。護衛もたくさんいるだろうし。
この艦の出口までのナビも欲しい。クロシロに俺の位置を知らせるには覇気を使うか。
大体の方針はまとまった。あとは実行あるのみ。
お嬢様に協力してもらうか・・・してくれるのかな?
「ど・れ・に・し・よ・う・か・な」
「いきなり指差しを始めましたわ、いったい何ですの?」
「私達の内から1人選ぼうとしてない」
「な、何する気ですか」
「やっぱり危ない人だったの」
「マック!君に決めた!」
「私にいったい何をさせるおつもりで」
「人質として一緒に来てくれないか?脱出ルートのナビもお願いしたい」
「お~誘拐しちゃうんだね。やるね~」
「流石にそれはマズくない」
「男ってやっぱりクズだわ」
多少打ち解けたとはいえ、敵側の要人だ。協力してくれる可能性は低い。
それでも、この子ならそんなふざけた頼み事もOKしてくれる気がした。
母さんが教えてくれた。
「彼女達の事を信じてあげて。ウマ娘はあなたの信頼にきっと応えるわ」
そうだった。今の俺がいるのはウマ娘達のおかげだ。
メジロ家は元々俺を家族として迎えようとしてくた人達だし、信じるんだ。
マックが俺を見つめる。まただ俺の奥底を見透かす様な感覚。
目をそらさずに見つめ返す。今俺はこの子に試されてる。
「メジロマックイーン、俺と一緒に来てくれ」
「ええ、喜んで」
差し出した手を握られる。よっしゃあ!交渉成立。
出発前にお別れしておくか・・・。
「ありがとう。短い間だったが世話になったな」
「まあ、適当に頑張ってね。応援してるよ」
「パー子お前がいてくれて助かった。皆を落ち着かせてくれてありがとう」
「パー子?私パー子かぁ・・・うん。元気でね」
パーマーを撫でながら挨拶する。
この子が場の空気を和らげてくれた。
もって生まれたムード―メーカー気質、きっとこの先も必要とされる力だ。
そのうち気の合うパリピの友達とかできそうだ。
「ライアン混乱させてすまなかったな。お前は優しいからメジロ家の事も俺の事も考えてくれたんだよな」
「そんな事ないです。あなたが優しい人だってわかってたのに・・・」
「一応、俺は敵だからな攻撃されなかっただけマシだ」
「はい。どうか気を付けて」
次はライアンを撫でる。
この子は自分達の立場と俺の立場、両方気にして迷っていた。
優しい子だ。この優しさと信念を貫き通せば大物になるだろう。
肉体強化頑張ってね。3食プロテインのみはおすすめしないぞ。
「ドーベル怖がらせて悪かったな。ただ信じてくれ男は俺みたいな変態ばかりではないと」
「・・・撫でないの?」
「嫌じゃないのか」
「別に、私だけされないのも癪なだけよ」
お許しが出たのでドーベルの頭も撫でさせてもらう。
この子ずっと俺を警戒してたな、人見知りで少し臆病なのかもしれない。
そしてそんな自分に自信がないと・・・。大丈夫、お前さんは立派なメジロのお嬢だよ。
自分の弱さを知ってるお前はどんどん強くなる。自信もってね。
「お別れは済みましたか」
「ああ、じゃあ行きますか!」
「頑張ってね~」
「応援してます」
「・・・早く行きなさいよ」
マックと一緒に部屋を出る。
「では行ってきます。おばあ様達には上手く誤魔化してくださいな」
「お前らいい女になれよ!縁があったらまた会おうぜ」
マサキとマックイーンが出て行った後。
残された三人は少しの寂しさを感じていた。急に部屋が広くなった様に感じる。
「なんか凄かったね。風・・・いや嵐みたいな人だった」
「不思議だよね。どう見ても怪しい人なのに、気づいたら仲良くおしゃべりしていたし」
「何なのあいつ・・・」
「ドーベルやっぱり無理してた?ごめんね男の人苦手だって知ってたのに」
「男は苦手よ・・・そのはずなんだけど」
「?」
「おかしいの!全然嫌じゃなかった。頭撫でられた時もっとして欲しかった・・・」
「おお、ドーベルが・・・あの男嫌いのドーベルが・・・」
「私達もだけどマックイーンが気に入った人だよ。ただ者じゃないね」
「また会えるかな」
「いい女になれだって・・・」
「・・・ふん」
マックの案内で艦内を移動する。
「もう自分が何処にいるのかさっぱりわからん」
「ご心配なく、艦内の地図は頭に入っていますわ」
「頼もしいな。で今は何処に向かっている」
「使用人たちの更衣室ですわ。先ずはあなたの格好を何とかしましょう」
「ご迷惑お掛けします」
更衣室にたどり着いた。
何でもここは男性用であまり人は来ないらしい。
艦内使用人の男女比が7:3で女性優位なので仕方がないか。
「運がよかったな。一度も誰とも遭遇しなかった」
「警備が手薄な場所と監視カメラの無いルートを選んで移動したつもりですのよ」
「マジか、本当に優秀なんだな」
作業着とスーツがある。
マックにスーツをおすすめされたのでスーツに決定。
サイズはえーと、うん大丈夫そうだ。
よし、着替えますか。
「私がいるのに躊躇なく着替え始めましたわね」
「どうせパンいちなんだから今更だろ」
高級そうな黒いスーツを身に着ける。
スーツ着るのなんて久しぶりだ。おかしくないだろうか。
なんかこう気が引き締まるよね。
「どうかな?これでいい、変な所ない?」
「とってもお似合いですわ。このままメジロ家に就職なさっては」
「ご冗談を・・・」
「ちょっと屈んで下さいな。ネクタイが曲がってます」
「ありがとうな。女の子にネクタイを直してもらう夢が叶った」
「どういたしましてですわ」
何やら部屋の外から人の気配を感じる。
今部屋から出るのは危険だな。焦らずに休憩タイムとしよう。
マックが俺に質問してくる。
「首筋の傷は歯形・・・あなたは操者で間違いないですわね」
「おう、最近なったばかりだ」
「愛バはサトノ家の子でしょうか」
「そうだぞ。マックよりちょっと下の子が2人な」
「私より年下・・・しかも2人同時・・・ロリコ・・・」
「何とでも言え!ロリコンは覚悟の上だ」
「契約で噛みつくだなんて、サトノは随分と伝統を重んじるのですね」
「ん?本契約では噛みつくんでしょ」
「一昔前まではそうだったらしいですわ。現在、契約で人間に噛みつくウマ娘はほとんどいませんわ」
「えーあんなに痛い思いしたのに・・・」
「その激痛も噛みつき契約が廃れた原因ですわ。痛みに耐えられず契約失敗する事が多々ありまして」
「痛いだけでメリットないんかい」
「そんな事はありませんわ。噛みつきで契約した者は非常に仲が良く、長く連れ添うのが当たり前ですわ」
「それだけ?」
「覇気の交換を傷口から直に行う事で、因子の覚醒を通常より促す事ができるはず」
「因子?何それ?」
「勉強不足ですわよ。因子は親や祖先から受け継いだ潜在能力ですわ」
「つまり~」
「自分以外の覇気で眠っている力を呼び起こす可能性。噛みつき契約ではそれが顕著ですわ」
痛かった分パワーアップするのか。
もちろん必ず成功するとは限らないし、優秀な因子が眠っているとも限らないらしい。
まさに因子ガチャである。期待し過ぎるは良くないかも。
「人間の魂に覇気の刃を突き立てる事になるので、どの文献や研究でもとにかく"死ぬほど痛いぞ"と言うのが共通の見解だったのですが、本当によく耐えましたわね」
「もう二度と味わいたくない・・・あれはアカン」
「あなたの愛バも相当の覚悟だったと思いますわ。その契約方法はそのうち禁止されるでしょうから」
「禁止されるほど人間には危険なのかよ」
「危険なのはウマ娘の方もです。操者の覇気が体を創り変えた症例もありますし・・・」
「聞いてないんだが」
「覇気の循環は契約した者同士に影響を与え合います。本来はゆっくり時間をかけて慣らしていくはずですが」
話をまとめてみよう。
〇共通
人間とウマ娘が契約する→操者と愛バの関係になる
覇気の循環が始まる→互いの覇気がそれぞれに影響を及ぼしパワーアップ
〇通常契約
契約方法→接触により一定時間覇気を送り合う→書面による手続きで完了
徐々に体を慣らしながら行うので負担が少ない
〇古式契約(噛みつき)
契約方法
人間が付けた名前をウマ娘が受け入れる→ウマ娘が人間の覇気と血液を摂取する
→ウマ娘から人間へ覇気を送り込む→成功すれば覇気循環が始まる
※非常に強い痛みを伴うため人間側は相応の覚悟が必要 後遺症が残る可能性あり
互いの覇気が一気に流れ込むため負担が大きい。
ウマ娘側は人間の覇気に強い影響を受けるため、肉体にも変化が起こる場合あり
危険を伴う分パワーアップの度合いが通常契約の比ではない。
不確定要素が多く双方にとって危険が大きいため近々禁止される予定。
この契約方法を実践してくれる人間自体が少ないため、古式契約をした者はウマ娘にとって憧憬の対象である。
「あの時は急いでいたから詳細は説明されなかった。かなり危ない橋だったんだな」
「大切にしてあげなさいな。2人とも本気でしょうから」
「本気とは何ぞや」
「あなたが真剣に死ねと言えば、躊躇なく自害するぐらい本気という事ですわ」
「重いなあ」
「それを受け止めるのが男の甲斐性でしてよ」
「そういうもんかね」
「そういうものですわ」
俺はウマ娘好きを自負していたけど、まだまだ知らない事が多いな。
クロシロにもちゃんと聞いておかないとな。
あいつら俺の知らないうちに覚悟完了しやがって・・・。
部屋の外ではまだ警備がうろついている。
何か食べ物を持ってくれば良かったな。腹減って来た。
「私こんな物を持ってますわ」
「何それ?」
マックが取り出したのはなんだ・・・黒い飴?
「先日頂いたフィンランドのお土産ですわ」
「サルミアッキ」
「そうそれです。食べた事があおりで?」
「ないよ。有名な食べ物らしいがな」
「私も初めてですわ。せっかくですから一緒に食べましょう」
「ありがとう。思ったより黒いな」
初サルミアッキいきます。
「「いただきます」」
口に入れた瞬間広がる不可思議な味。
マックも微妙な顔をしている。
「何だろうなコレ、例えるならばえーと」
「同時に言いませんか、この味を一言で表すなら・・・」
「「タイヤ!」」
出会って間もないウマ娘とのシンクロ率は良好だった。