俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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ひとじち

 タイヤの味がする飴を食べた。

 

「食べた事はないのですが、この味・・・タイヤとしか言えませんわね」

「どうする、吐き出すか?」

「いえ途中で吐き出すなどはしたないですし」

「勿体ないよな。うん、頑張って完食しよう」

 

 何とか食べきった。

 サルミアッキ・・・ハマる人はハマるらしいが俺には無理だったな。

 

「缶詰にした方がよかったかしら」

「何の事だ?」

「このサルミアッキと一緒に匿名で送られてきた品ですわ」

「匿名?誰からの贈り物かわからんもんを食べたのか」

「危険物ではないとチェックされてから、私のもとに届きますから安心かと」

「缶詰はどこ産だ?」

「スウェーデン産ニシンの塩漬けだったはずですわ」

「それ十分危険物だからね。屋内では絶対開けるなよ」

 

 シュールストレミングはヤバい。

 嗅覚に優れるウマ娘には大ダメージだろう。下手な爆弾よりタチが悪い。

 

「嫌がらせされてるの?メジロ家にケンカを売るとか・・・サトノ家か」

「違いますわ。定期的に私個人を指名して届く贈り物です。サトノ家は関係しておりません」

「送り主の調査はしたのか?」

「それが足取すら全く掴めないのです。"黄金の浮沈艦"様はいったい誰なんでしょう」

「メジロ家が調査しても正体不明とか、受け取り拒否はしないのか」

「次はどんな珍品が届くか楽しみになってきているので、このまま放っておこうかと」

「器が大きいな。今後も開封前にチェックはしてもらえ」

「承知しておりますわ。送り主様にはいつかお礼申し上げたいですわね」

「メジロ家のお嬢様ともなるとファンの1人や2人いて当たり前か」

「ファンなのでしょうか・・・」

 

 送られた珍品を前に困惑する自分を想像してゲラゲラ笑っているのでは?とマックが言う。

 とんだ愉快犯だ。相当暇人なのかな。

 

「今更だけど、こんな俺に協力する気になったのは何でだ?最初も匿ってくれたし」

「格好はアレでしたが、あなたの覇気を見れば悪人でないのはすぐにわかりましたわ」

「覇気を見て人の善悪なんて判断できるもんかね」

「できますわよ。あなたのは特別わかりやすいですから」

「は?どういう事よ」

「覇気はだだの生体エネルギーではありませんわ。そこには感情のエネルギーも合わさりますの」

「やだまた初耳。私ってばホント無知」

「感情エネルギーを読み取る事は、人間には難しいですから無理もありませんわ」

「ウマ娘は覇気で人の心の機微がわかるのか、そんなのズルい」

「大体ですわよだいたい。「ああこの人は私の事を好きなんだな~」とかそんな感じ」

「ひでぇ・・・人間圧倒的不利じゃん」

「人間の感情も成人を迎えると、読みづらくなるのが普通なので、ご安心を」

「俺、今年で成人なんですけど。精神年齢が低いガキって事か」

「精神お子様なのと、覇気の性質と総量が異常に高いことが原因で心を読まれるのでは」

 

 思い当たる節がある。

 シロはよく俺の考えを先読みした。母さんだっていつもそんな感じだったな。

 ずっとサトラレ状態だったのかよ!教えてよ!

 これから覇気コントロールの修練を積めば抑えられるとマックにフォローされた。

 ちくしょう絶対に隠せるようになってやる。

 

「そんで俺を無害な紳士と判断してくれたんだな」

「紳士かどうかは知りませんわ。ただあなたに協力したほうが面白いと思っただけです」

「敵勢力に協力するのが面白いか」

「言ったでしょう娯楽に飢えていると、トラブルと遊ぶ絶好の機会ですわ」

「なかなかいい性格してるな。気に入った」

「お褒め頂き光栄ですわ。私からも聞いてよろしくて」

「質問は答えられる範囲にしてね」

「あの場には私を含め4人いました。どの子もメジロ家の未来を背負う優秀な人財です」

「だろうな」

「なぜ私を選んだのですか?」

「理由は単純、お前が一番強かったからだ」

 

 4人とも並みのウマ娘以上の覇気をもっていた。

 そこはメジロ家の子供なら当然なのだろう。

 なかでもマックの覇気は飛びぬけていた、大部分を隠していたにも関わらず。

 そして俺が部屋に突入した瞬間から全身の力を練り上げて、いつでも開放できるよう準備していた。

 不用意な行動を取れば即刻、俺の首を狩りに来ただろう。

 高い戦闘力に頭の回転も早い、クロシロと戦ってもいい勝負になるのでは。

 

「そんだけ強ければいざって時、最低限自分の身は守れるだろ」

「慧眼ですのね。ですが少々買い被り過ぎますわ、まだまだ修行中の身ですので」

「そのストイックさ痺れるね」

「褒められて悪い気はしません。あら、早速実力を披露できそうですわ」

「え?アレ倒していいの」

 

 目の前に艦内警備用のAMがいる。リオンのカスタマイズ機か。

 武装は・・・制圧用スタンロッドと機銃ぐらいか。艦内で大暴れできないので控えめ。

 

「ここ通らなきゃダメ?迂回ルートは」

「ここが一番安全なルートですわ、AMなど手早く片付けてしまいましょう」

「なんでやる気満々なの?あれ、お宅の備品ですよね」

「訓練以外でAMを合法的に破壊できるチャンスですわ」

「ウマ娘って思考がバーサーカーの子が多すぎない」

「私たちは人間よりも闘争心が高い生物ですから、本能ですのよ本能」

「ならしゃーないか」

「ええ、ではお先に」

 

 正面から突っ込むのかい。早っ!一歩目からそんなに加速するの。

 AMがマックの存在に気付いた時には至近距離まで接近、そのまま頭部を蹴りの一撃でへし折る。

 頭部とメインカメラを破壊されてなお動く腕部を引きちぎり、起動したままのスタンロッドを剥き出しの内部構造へと押し当てる。高圧電流が機体を駆け巡り機能停止になる。

 まさに秒殺、相手の弱点を正確に把握してからの無駄の無い動き。やるじゃない。

 

「ひゅー!カッコイイ抱いて!」

「抱きません。ほら、もう1体来ましたわ。あなたの番ですのよ」

「俺のターン!」

 

 機銃を撃つ隙を与えずに加速!懐奥深くに潜り込む。

 人型の構造ならこんな風にっと、腕をとり相手の重心が動いた瞬間タイミングを合わせて。

 

「そぉい!」

 

 できた!人生初一本背負い。

 受け身も取れず倒れ込んだ機体胸部を覇気を乗せた足で思いっきり踏み砕く。

 まあまあかな。もっと効率よく倒せるように修練あるのみだな。

 

「お見事です。AMや並みの騎神では相手になりませんわね」

「そうか。初陣は数日前だったが、様になっているみたいだな」

「その割には良い動きをされます。日頃から修練を積んでいるのかしら」

「まあ、いろいろあってな」

 

 母さん達にいろいろ仕込まれた結果です。感謝します。

 

「壊して良かったのか、後で怒られたりしない?」

「あなたに脅されて仕方なくやった事にしますので、問題なしです」

「本当にいい性格しているな。こいつめ」

 

 ちょっと乱暴に頭を撫でる。

 嫌がられるかと思ったが、髪をクシャクシャにされてもマックは微笑んでいた。

 

「これについて、忠告をしておきます」

「コレ?頭を撫でる事か」

「はい。女性が頭ナデナデされるのが好きと言うのは、男性の一方的な妄想ですわ」

「すみません!調子にのってました!もうしません!」

 

 クロシロがせがんでくるので気にしてなかったが、撫でるのアウトだったんかい!

 そ、そうだよな。好きでもない男に頭触られるはキモイよな・・・泣きそう。

 落ち込んでいる俺の手を取って自分の頭に乗せるマック。何しとんねん。

 

「私はあなたに撫でられるの好きです。パーマー達もそうですわ」

「ありがとうございます!お嬢様!」

 

 今後は許可を取ってからにしよう。特に初対面の子には注意!

 男の勘違い行動、他にもやらかしてそうで怖い。

 でも、このお嬢様に受け入れてもらった事は素直に嬉しい。

 ホンマにええ子やでメジロ家の未来は安泰やな。

 

 乱れたマックの髪を手櫛で整えて移動を再開する。

 途中で遭遇したAMはマックが率先して(嬉しそうに)破壊していくので楽ちんだった。

 そうして進んだ先で開けた場所に辿り着いた。

 ここは各区画への通路が合流する中継地らしい。だからか、見張りがわんさかいやがる。

 咄嗟に物影へ隠れる。あの人数はヤバいな、頼れるお嬢様に相談してみよう。

 

「マック、何か良い作戦はあるか?」

「正面から正々堂々と突撃するのはどうでしょう」

「そういう脳筋プレイは却下だ。人数差考えろよ、無謀すぎるわ」

「ならば私を利用して頂くしかないですわね」

「お前を警備たちの中心の放り投げて、気を取られている間に俺が無事に突破する」

「スタングレネードみたいな扱いですわ」

「ダメか?」

「ダメですわ。ですが外道な考え方はいいと思います。・・・演技力に自信はありますか」

「何をしたらいい」

 

 作戦を練る。

 お嬢様を誘拐して人質にするクズになりきれとのオーダーだ。

 演技でいいんだよな。最近こんなんばっかりや。

 面接で「特技は?」と聞かれたら「ウマ娘幼女の誘拐です!」言えるか!

 

「お嬢様、ちょっと失礼」

「あら、お姫様抱っこされてしまいました」

「後は打ち合わせ通りにするとして、行きますか」

「ええ。困った時は流れに身を任せましょう」

 

 マックを抱えて移動する。なんか嬉しそうだね君。

 

「随分手慣れてますのね。凄く自然な動きでしたわ」

「抱っこの事か?いつもは2人分だからな任せとけ」

 

 そのまま堂々と広場へ出る。

 

「お仕事ご苦労様でーす。そこを通してくれませんかねぇ」

「貴様は、いたぞー!変態が・・・お、お嬢様!」

「こいつお嬢様を人質に、どこまで腐っているんだ!」

「他のお嬢様方の安否を確認しろ」

「待ってて下さい、すぐにお救いしますから」

 

 俺を包囲してジリジリと迫ってくる。

 マックがいるから不用意には動けないよね。

 

「おいおい、俺はここを通して欲しいだけだぞ」

「皆下がって!下がりなさい、この男は危険です!」

「お嬢様もこう言ってるんだ下手に動くなよ、げへへ」

「私は大丈夫です。他の子たちをお願いしますわ」

「健気な事だ。おい!そこをどきな、言う通りにしないどうなるか・・・」

 

 結構雰囲気出てるんじゃないの、いけますよコレ!

 マックもノリノリだ。耳と尻尾の動きで楽しんでるのがバレバレ。

 笑うな、まだ笑うな・・・。

 

「くっ・・・ご自身より我らや他のお嬢様方の心配を・・・」

「メジロ家の至宝である尊い方をよくも、この外道め!」

「変態!クズ!ゲス野郎!ウマ娘の敵!」

「許さんぞ、生かして帰すな!」

「「「「「「「「コロセ!コロセ!コロセ!コロセ!コロセ!」」」」」」」

 

 ヤバい。これだけの人数が一斉に殺気を向けてくるのはかなり来るもんがある。

 足が震えそう、もう中止して土下座した方がいいかも。

 マックが目で「大丈夫、私がついています」と言ってくる。

 賽は投げられたか。えーいままよ。

 

「いいのか?こいつがどうなっても」

「お嬢様に何をするつもりだゲス!」

「そうだな~。まずはこいつに、一般庶民の生活を叩き込んでやるぜ!」

「なっ、メジロ家の尊厳を奪うつもりか」

「庶民に成り下がった後は、イケメンの好青年を紹介して大恋愛させてやるわ!」

「そんなお嬢様・・・」

「そして2人は結ばれ、大勢に祝福されて結婚!仲人はもちろん俺がやる」

「嘘だ・・・そんなの嘘だ・・・」

「子宝にも恵まれて順風満帆な生活を送り、最期は愛する孫たちに看取られる。そうなってもいいのか!」

「ぐ、なんて恐ろしい事を・・・お前は悪魔だ」

「あの、それって私とても幸せになってませんか?」

 

 お嬢様を庶民に堕とす。俺の恐ろしい計画を聞いた奴らは道を譲るしかない。

 メジロ家のお嬢様を崇拝し過ぎるこいつらには大分効いたみたいだ。

 バカで良かった。

 

「覚えていろよ。この借りは必ず返すぞ!」

「お嬢様、必ずお助けしますから辛抱して下さい」

「くそ!こんな奴に」

 

 悔しいでしょうねぇ。俺からのファンサービスは気に入ってもらえたかな。

 ほら、マックも何か言ってやれ。

 

「くれぐれもついて来ないで下さいね。私の身を案じているならなおの事です」

「はーいそこ通りますよー。どいてどいてー」

 

 難関を突破できました。

 

「怖かった~。皆ものすっごい目で睨むんだから」

「いい感じでしたわ。誘拐犯さん」

「お前まで・・・勘弁してくれ」

  

 職業 盗賊(ウマ娘幼女専門) 天職になったらどうすんの!

 

「もう自分で歩けるか?」

「もうしばらく、このままでお願いしますわ」

「イエス、ユア・ハイネス」

 

 お姫様抱っこを継続したまま走る。

 マックに案内されて無事目的地に到着した。

 小型の脱出艇が格納されたドック。ほ~これで逃げるのね。

 すぐそばに管制室があるな。あそこで出入口の開閉やボートの離発着を制御するようだ。

 「ありがとう。もういいですわ」と言うマックを降ろして入室。

 そこでは初老の男性が1人待ち構えていた。

 

「お待ちしておりました。お嬢様」

「ウォルター」

「えっと、この執事さんは」

「申し遅れました。メジロ家の執事長、ウォルター・C・ドルネーズでございます」

「ご丁寧にどうも。安藤正樹です。この艦に殴り込みに来て、そろそろ帰ろうと思ってます」

「バカ正直すぎますわ。ウォルター、ボートの準備は?」

「いつでも発進できます。後はお連れ様の到着を待つだけです」

「いつもながらパーフェクトな仕事ぶりです」

「恐れ入ります」

 

 この執事さんは、マックが産まれるずっと前からメジロ家に仕えている、爺や的存在らしい。

 今回もマックの動きを察知して、俺とここへ来ると予測しいたらしい。超有能!

 覇気が全く感じられないのが逆に怖い、完璧過ぎる制御。絶状態ですねわかります。

 たぶん俺を一瞬でバラバラにできるぐらい強い。この人が追手だと即詰んでたな。

 

「いいんですか?俺はあなた方の敵では」

「私はお嬢様の意思を1番優先しておりますので」

「ウォルターは信用できますわ。いつも私の味方です」

「・・・終盤で裏切ったりしないで下さいよ」

「はて?なんの事ですかな」

「マサキさんと一緒に来られた方は今どちらに」

「すぐ傍まで来ております。追手は上手く撒いているようです」

「あなたの覇気でこちらへ誘導してあげて下さいな」

「覇気を出しちゃっていいんだな」

 

 クロシロ~俺はここにいるぞ~。そろそろ帰るよ~こっちにおいで~。

 愛バの事を考えながら覇気を放出する。これで伝わるのか。

 

「ほう。大したものですな」

「予想の遥か上、数日前の超特大覇気はやっぱりあなたでしたか」

「お、来てる来てる。2人ともこっちに向かってる」

 

 覇気を開放した事で2人の位置が大体わかる。真っ直ぐこっちに来てる。

 

「さあ、ボートに乗ってください。お連れ様が到着しだい発進させます」

「あの、航空機の免許持ってないのですが運転できますかね」

「安心してください。操縦系は全てゲームのコントローラーに仕様変更済みです」

「エースコンバットとかプレイした事ありまして?あんな感じですわ」

「ええーちょっと苦手なジャンルだ」

「搭載されたAIによる自動運転もできます。お嬢様方でも問題ありませんでした」

 

 子供でも運転できたから大丈夫ってか、不安だな。

 先に乗って2人を待つ事にするか。

 その前に・・・。

 

「ここでお別れですわね。短い間でしたが楽しかったですわ」

「本当に世話になったな。ありがとう、お前の事は忘れない」

「そのスーツは差し上げますわ。それからこれも」

「サルミアッキ・・・処分に困ったな。まあ、もらっておくよ。スーツはマジでありがたい」

「少し屈んで下さる」

「ん」

 

 マックの前に屈むと優しく抱きしめられた。

 ウォルターさんがサムズアップしてこちらを見ているで、こちらからも抱きしめる。

 

「知っていましたか、あなたにメジロ家の子になる未来があった事を」

「知ってる。そういう可能性もあったんだよな、でも今の俺も嫌いじゃないぜ」

「どこにいてもあなたはあなたです。いつまでも面白愉快なあなたでいて下さい」

「マックも無病息災でな」

「次に会った時は、もっと遊んで下さいな。約束ですわよ」

「その時は俺の愛バ達も紹介させてもらう。あいつらがいたらもっと面白くなるぞ」

「ふふっ、楽しみにしてます」

 

 最後に耳や頭を一撫でして離れる。名残惜しいが行かなくては。

 ウォルターさんにも一礼して部屋を出る。

 ボートに乗り込むと同時にクロシロがドックに到着。

 

「「マサキさん!!」」

 

 俺たちが搭乗したのを確認して発進ゲートが開く。さあ脱出しますか。

 

 

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