俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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あいんすと

 クロシロの内どちらか一方しか生き残れない。

 

「選べ!お前の騎神二人の内、どちらを生かして、どちらを殺すかを」

 

 ビアン博士に残酷な選択を突き付けられて、目の前が真っ暗になった。

 あれから医療機器を調整してビアン博士は家を出ていった。

 遺跡の門とやらの調査に行くようだ。そちらが本命だったのかもな。

 しばらくはシラカワ家に滞在するらしい。

 

 どうして、なんで、いやだ・・・。

 考えがまとまらない、博士の言葉が冗談であってくれたらどんなにいいか。

 選ぶ?俺が・・・どちらかが死ぬ・・・俺が殺すのか・・・。

 

 気が付くと母さんに体を支えられていた。立っていられない。

 体に力が入らない、何も考えたくない、頭が痛い、吐き気がする。

 クロとシロの顔を見るのも辛い・・・。

 俺には二人の命を背負う覚悟がない。

 

「母さん・・・契約解除の準備をしてくれ」

「いいのね。二人の意思を裏切る事になるわよ」

「ああ、死んだ方がいいなんて俺には思えない」

「・・・ネオ、グラ、手伝ってくれる」

「わかったわ。急いで準備するわね」

「一応、魂継の準備もしておく。ギリギリまでよく考える事じゃ」

「明日にはできるようにしておくわ。マサキ、後悔しない道を選ぶのよ」

 

 後悔しない道だって・・・どれを選んでも後悔しかないよ。

 なあ、クロ、シロ、俺たち出会わない方が良かったのか。

 

 家にいる事ができない。いたくない。

 傍にいてあげたいのに、二人の近くにいる事に今は耐えられなかった。

 本当に情けない。死にそうになっているのはあいつらなのに。

 俺は自分の弱い心を守るためその場から逃げ出した。

 

 フラフラと家を出て彷徨う。

 三人で散歩した時とは違い足取りは重い・・・。

 ここは、ああ、遺跡か・・・確か今博士が中にいるんだったか。

 !?警備はどこだ・・・人が倒れている。

 異変を感じてすぐさま駆け寄る。

 

「おい!どうした。何があった」

「うう、門から何かが・・・博士が奴を遺跡内部に閉じ込めようと」

「博士は中にいるんだな。母さんに、サイバスターに連絡してくれないか」

「それが、先程から電波障害で通信機器が麻痺してしまっている」

「ばかな・・・ホントだスマホも使えねぇ」

 

 どうなってんだ。

 ああ、もう!それどころじゃないって言うのに!

 

「俺は博士の救助に行く、アンタは付近の住民にこの事を知らせてくれ」

「君一人でか?そんな真似をさせる訳にわ・・・え?」

「俺はサイバスターの息子だ。この覇気を見てもまだ心配か?」

「わかった。博士を頼む。無茶するんじゃないぞ」

「理解が早くて助かる。できれば母さん達を呼んでくれ」

 

 遺跡内部へ突入。

 幸い一本道で、方向音痴の俺でも迷う心配はなさそうだ。

 奥へ奥へと進むと広い空間に出る。

 何だコレ?巨大なリング状の構造物がある。これが門?

 

「博士ー!どこですか!ビアン博士!」

「うるさいぞ。聞こえておるわ」

 

 別の通路から博士がやって来る。

 

「ご無事でしたか。一体何が?」

「悠長に話している暇はない、奴が来るぞ」

「奴って誰ですか」

「知るか!突然クロスゲートが起動したと思ったら、飛び出してきおった」

「クロスゲート・・・門の事ですね」

 

 ガシャン・・・。

 ビアン博士が来た通路から音がする。足音?

 急ぐでもなくだだ悠然と歩く音。ガシャンガシャンと大きな金属が擦れ合うような。

 

「なんだてめぇ!?」

 

 現れたのは西洋のフルプレートアーマーを思わせる巨体。

 紫色の体に角や牙の着いた凶悪な外見、肩関節部には赤い玉のようなものが見える。

 誰かが鎧を着ているのか?だとした身長3メートルクラスの巨人。

 無言のままこちらを見据える。

 アルクオンの時と違って意思疎通ができればいいんだが。

 

「おい、こっちの言葉はわかるか?何者で何が目的か言え!」

「・・・・」

「また無口系かよ!めんどくせぇな」

「お前、なぜそんなに冷静なのだ?相手は未知の存在だぞ」

「最近、羅刹機とやり合ったばかりなんで、耐性ができました」

「ふん。度胸だけは一人前か」

「とりあえず、ここから逃げましょう。母さん達と合流すれば」

「こいつをここから出すわけにはいかん!なんのために足止めしたと思っている」

「ええー、もうここから出して母さんに始末してもらった方が早いって」

「それは最後の手段だ。こいつのサンプルを取りたい、なんとか無力化しろ」

「結局、自分が研究したいだけじゃん。マッドサイエンティストが!」

「マッドは科学者にとって誉め言葉だ。いいからなんとかしなさい博士からのお願い!」

「わかりましたよ。でもこいつ別に襲ってきませんよ」

「そうだな。ついて来いといった私をただ歩いて追跡していただけだ」

「は?外に何人か倒れていたけど」

「こいつが現れた瞬間に逃げ出して、遺跡入り口で死んだフリした連中か?」

「警備員の風上にもおけねぇ。一応、罪悪感で誰が通りかかるまで待っていたんだろうな・・・仕事しろや!」

 

 外にいた人はケガ人ではなくただのゲスだった。せめて母さんに連絡ぐらいして欲しい。

 

「異なる世界・・・力の根源・・・見つけた」

「喋ったー!しゃべりましたよ。博士!聞きましたよね」

「おお、ますます興味が湧いた。なんか他にも話せ!」

「・・・力・・・見極める・・・主・・・」

「ん?どうして右手を振りかぶるんですかね?」

 

 博士を掴んでその場から退避!

 こいつ!いきなり殴りかかってきた。何すんの!やんのかごらぁ!

 

「博士、向こうはやる気です。邪魔なんで下がって」

「言われなくてもそうする。この際生死は問わん奴を止めろ!」

「了解!おい、運が悪かったな。今俺は機嫌が最高に悪い」

 

 これで今だけはクロシロの事を考えずに済む。

 完全に八つ当たり、溜ったフラストレーションの解消に付き合ってもらう!

 

「一気に行くぜ。そらっ!」

 

 さっきの一撃を見る限りアルクオンに比べて遅すぎる。

 懐に飛び込んで打撃を浴びせる。鎧の隙間を縫うように関節部を中心に狙う。

 

「手応えがおかしい?と言うより無い」

 

 中の人が痩せ型なのか?全然当てた感じがしない。関節の赤玉はかてぇ!

 こちらの動きについてこれないのを利用して背後に回る。

 背中を駆け上がり、頭部の兜を両手で掴む。

 

「まずはその面拝ませてもらおうか!そおれぇ、兜ぽーん!」

 

 兜を全力で上に放り投げる。

 中身はなんだ?イケメンなら死ね!

 こういうのには対人恐怖症の美少女が入ってるんだよゲへへ。

 さあ、恥ずかしがらずに見せてごらんなさい。

 兜がカランと音を立て地面に転がる。顔は・・・顔が・・・。

 

「顔がねぇ!何だこいつ!一仕事終えたアンパンマンかよ!」

「中身が無いだと!おい、そこから中を覗いてみろ首だけ引っ込めているんじゃ」

「中も空洞だ!この鎧自体がかってに動いている!アルフォンスだこれー!」

「鋼の錬金術師!こいつは錬金術の失敗作だとでも」

「警戒・・・認識改・・・調査続行」

「ひょ?ぬわー!」

 

 背後の俺を掴んで投げ飛ばす鎧さん。

 頭部を拾って頭に乗せ直す。俺は猫のようにくるっと回って着地。

 鎧が距離を詰めてくる。おほ!早いじゃない。

 

「さっきまでは様子見だったてか、いいぜやったらぁ」

「よし!そいつは今後"アーマー"と呼称しよう」

 

 強烈なタックルをかましてくるアーマー。

 よけると思った?残念受け止めます。舐めんなアルクオンに比べたらお前なんぞ。

 アーマーの両腕が巨大化する。ほう?それで?

 さっきのお返しとばかりに膨れ上がった両腕によるラッシュをこちらに見舞う。

 

「ぐっ!いってーなボケ!俺とラッシュの速さ比べするか!ああん!」

「アリコンの防御力も大したものだ!後でお前のサンプルも取らせろ」

「アリコンって言うな!気が散るからどっか行け変態科学者!」

 

 拳と拳がぶつかり合う!ちょっと痛いけど・・・それだけだ。

 サンドバッグになるのはてめぇだよ。

 俺のラッシュスピードがアーマーを上回る。

 おやおや~体の至る所にひび割れができてますよ?

 

「謝るなら今のうちだぞ!しっかりちゃんと謝って!いいから土下座しなさい!!」

「土下座?・・・理解・・・不能」

「知らないの?後で教えてあげるね!てめぇの意識が残っていればなぁー!ぎゃははははは!」

 

 不利を悟ったのかアーマーが後退する。

 ビビったね。気持ちで負けたら終わりですぞ。

 アーマーの体から腕部が分離してこちらへ飛んでくる。

 

「そういうのもアルクオンがやった後だ。二番煎じ乙でーす」

 

 俺の体を両手で掴んで引き寄せる。それで?

 おお、胴体部分が巨大な口にすっげー牙!アレにパクパクされたら痛いだろうな。

 なので牙に噛まれる前に自分から飛び込みます。

 

「!?・・・意味・・・不明」

 

 中が異空間だったり、消化液で溶かされたらどうしようかな・・・全然平気!ぶかぶかの鎧を装備しただけ。

 

「吐き出そうをしてる?無理でーす。その前に中からパーン!」

 

 覇気の全力開放!アーマーの内部から爆裂させてやった。

 体の各パーツが全て吹き飛ぶ。その内の頭部だけを確保しておく。

 

「こんなもんですよ。博士―!終わったよー」

「・・・お前、本当に人間か?終始アーマーを圧倒していたぞ」

「慣れですよ慣れ!一週間前の俺なら死んでました」

 

 未だに動く腕部分のが近くにあったので踏み潰す。

 

「どうしますこれ?全て粉々にしておきましょうか」

「待て・・・ほうほう。見ろ、自己修復機能があるらしい。核をつぶさない限りこいつは何度でも蘇るぞ」

「核?あの赤い玉かな」

 

 両肩に2つ、内部に1つの計3つあった。えーと、あれだあれだ。

 ふん!もうひとつ、ふん!

 

「最後の1個は残しておこう。おい、聞こえるか?これからお前の処遇を決定する」

 

 赤玉は博士にパスして、頭部を掴んでブンブン揺さぶる。

 

「おら!なんか言え!命乞いをしろ」

「敗北・・・強者・・・服従」

「お、なんだ負けを認めるってか?大人しくできるよな」

「何をする。そいつを自由にするな」

「大丈夫ですよ。なんかコイツ見た目よりいい奴かも」

 

 頭を開放してやると修復された各パーツが寄り集まって人型となる。

 ビアン博士の手から赤玉がフワフワと飛んで鎧の中に収まった。

 

「で?なにお前。どこから来たの」

「異界・・・門・・・脱走」

「異界といったか?ここではない世界からきたのか」

「世界・・・多重・・・無限」

「ほう。異世界はいくつも存在し、その可能性は無限だと!」

「ええ、これで会話できてるの」

 

 意思疎通をわかりやすくするためにジェスチャーやハンドサインを教える。

 頭がいいのね。すぐに覚えてくれた。「はい」なら頷くし「いいえ」なら首を振る。

 サムズアップもできるぜ。やるねー。

 この生命体?アーマーとコミュニケーションを取っていると門に異変が起こる。

 

「博士!なんか輪っかが光ってる!」

「アーマーが出てきた時と一緒だ。また何か来るぞ!」

「追跡者・・・面会・・・拒否」

「会いたくない奴が来るってよ!博士このリング破壊してもいい」

「無理だ。このゲートはサイバスターでも破壊できなかった」

「はいぃ!それは無理だわ!」

 

 リングの内側が水面のように揺らぐ青い光によって輝きを増してゆく。

 

「離れましょう。何かやば・・・」

 

 光が溢れる。うおっ!眩しい!

 光が収まった・・・誰が来たのかなー・・・うわーい団体さんだー!

 囲まれとる。アーマーに似た紫色の装甲を纏った変な奴らがざっとみて50体ぐらい。

 アーマーの同型はいない。

 全身が骨でできたような奴と、植物みたいなウネウネがいる。触手!そういうのもあるのか!

 で・・・そいつらの中心にいる奴、あーアカンこいつはヤバすぎる。

 怨霊や鬼を連想させるような面?で構成された体躯。核には色違いの青い球。

 刺々しい体の周りを鬼面のような物体が浮遊している。血の色をした鬼面の鎧武者か。

 こいつは頭一つ飛びぬけている。指揮官機?

 変な汗が出る。逃げろ殺されるぞと!本能が叫ぶ。

 

「博士。逃げましょう。アレはダメです」

「ふっ、雑魚の私でもわかるぞ。アレが動いた瞬間終わると」

「全力・・・退避・・・推奨」

「アーマーも逃げろって言ってるし、もう家に帰ってもいいよね。母さんの出番だよね」

「熊と遭遇した時の要領でゆっくり後退しろ、決して刺激するな」

 

 こちらに興味を示してはいない。現状の把握に時間がかかっているのか。

 今の内に逃げよう。「プゥ~」空気を読まない音が辺りに響いた。

 

「おい博士・・・誰が方屁しろと言った!」

「緊張して思わずな。許せ!これも生理現象だ!」

「なんで偉そうなんですか!臭っ!腸内環境どうなってんだ!」

「悪臭・・・不快・・・最悪」

「ほら!アーマーも嫌がってる!臭いがわかるのかよ、鼻どこよ!」

「馬鹿者!お前が騒ぐから気づかれたぞ」

「うるせぇ屁こきジジイ!!!」

 

 鬼面野郎がこちらを向く完全にロックオンされた。もうやだ。

 音もたてずに空中に浮遊し、両腕をクロス各部鬼面の目と口に当たる部分が発光する。

 全方位に向けて光の砲撃が行われた。

 

「「「!?」」」

 

 ラ・ギアス村にある謎の遺跡はこの日、内側から弾け飛んだ。

 

「何?今の」

「方角は遺跡の方ね。ビアン博士が何かやらかしたのかも」

「どうするのじゃ。行ってみるか」

「グラは留守番、ここであの子達を守ってあげて、ネオ行くわよ」

「はーい。この感じ・・・うん。力を振るう機会がありそうね」

「喜んでんじゃないわよ」

「す、すみません!こちらにサイバスター様はおられますか?」

「どちら様?今から出かけるんだけど」

「い、遺跡から変な奴が出てきて。博士と息子さんが」

「ネオ行くよ!」

「はい!」

「は?え!」

「う~ん。何が起こっておるんじゃろうな」

 

 一瞬で掻き消えた二人に驚愕するモブ警備員。マサキの愛バは未だに起きない。

 

「ごほっ!げほ。博士!生きてるか」

「何とかな。アーマーが咄嗟に庇ってくれなければ、今頃あの世行きだ」

「助かった。サンキューな」

「礼・・・不要・・・責任」

「ん?あの鬼面野郎は、お前を追いかけて来ただと!」

「それならアーマーが奴らの下に帰れば丸くおさまるのか」

「無理・・・鬼面・・・凶悪」

「無理だってよ!あいつ目についた生き物全部殺すマンだってよ!」

「いつの間にか意思疎通がスムーズに・・・なぜだか考えがわかる不思議だ」

 

 クソがぁ!母さんはまだか・・・。

 ?・・・奴らの数が減ってる50はいたはず・・・あいつらぁ!

 

「博士マズい!あいつら村中に拡散しやがった。このままじゃ皆が危険だ」

「電波障害はまだ収まらんか。ヒリュウや天級に連絡しなければ」

 

 どうする、どうしたら。

 この規模の異変だすぐに母さんが対処するだろう。でも数が多い。

 各個撃破なら少し時間がかかるか、住民の避難や救助を合わせるともっと時間がいる。

 マップ兵器で一層?いや広範囲や敵味方の識別を設定すると威力が下がると聞いた。

 更に厄介なのは・・・。

 

「博士。あの鬼面が現れてから電波障害だけじゃなく、覇気の調整が上手くいきませんヤバいです」

「何だと・・・?クロスゲートが起動したままだ。ゲートを開く動力に覇気を使っているのか」

「何々?わかるように説明して」

「クロスゲートの動力はわかっておらん。アーマーが出てきた時は周囲の電波を、鬼面が出てきた時は覇気を使用したのかもしれん。利用できそうな動力を無差別に選定し周囲からかき集めるだと。なんて迷惑な門だ」

「ちょっと待ってよ・・・この感じ、村中から吸収してるぞ。いくら母さん達でもこれは・・・」

「何がクロスゲートだ!迷惑門に改名してやろうか!あ、最初に名付けたの私だったわ!」

 

 ヤバいぞ、母さん達普段の半分以下ぐらいしか実力出せないんじゃ。

 なぜか俺は平気・・・だけど・・・この村の住民はヘロヘロになっているかもしれない。

 

「博士は大丈夫ですか。まだ立って歩けますか」

「ああ、少々怠いが。平気だ」

「アーマーを連れて逃げてください。途中で住民の避難と母さん達に連絡を、轟級以上の騎神にも協力を仰いでください」

「まさかアレとやる気か?無謀すぎるぞ」

「わかってます。でもあの鬼面野郎はここで食い止めないと被害が増える。なに、母さん達が来るまでの時間稼ぎですよ。さあ、邪魔くさいので行ってください。アーマー博士を頼む」

「依頼・・・了承・・・武運」

「死ぬなよ。アリコン」

 

 博士とアーマーが去って行く。

 あれだけいた骨と触手もどこかへ行った。

 残ったのは俺と鬼面野郎・・・。

 怖い。アルクオンの比ではない恐怖感、首にずっと刃を押し当てられているかのようだ。

 そうだ、あの時は三人だった。今は一人だ。

 

 こいつをここに足止めして母さん達の到着を待つ。

 それだけだ、できるはず。ゲートの覇気吸収をさっさと止める。

 クロシロの覇気は今、不安定なんだ!どんな悪影響があるかわからん!止めなくては。

 クロ、シロ、俺に勇気をくれ。本当は今すぐに逃げ出したいんだ。

 でもお前らのためなら俺はやれる。

 ああ、そうか、悩んでいたのがバカみてぇ。決めたぞ!そのためにも生き残る。

 

「おい!お前は喋れんのか!」

「・・・・」

「無理みたいだな。ちょっと俺と遊んでくれよ!」

 

 先手必勝!全力の覇気を初撃で叩き込む。

 

「衝撃のファーストブリット!」

 

 避ける素振りすら見せねぇ。舐められてますね。

 浮遊する鬼面に受け止められた。まだだ。

 

「撃滅のセカンドブリット!」

 

 こいつも簡単に止められた。それもわかってる。

 鬼面ごと腕をかち上げる。ボディががら空きだぜ。

 

「抹殺のラストブリット!」

 

 胸部の青玉に拳を叩きつける。はは・・ビクともしねぇわ。

 大したダメージを与えられなかった、俺を薙ぎ払おうとする鬼面野郎。

 身を屈めて回りこむ。どいつもこいつもでかいんだよ!何で3メートルクラスばっかやねん。

 背後をとった!回避した動きはそのままに体をひねって回転。本命の回し蹴りを背中に叩き込む。

 

「死にさらせ!!!」

 

 はいクリティカル!背後からモロに蹴りを食らった鬼面・・・ああもう、赤鬼でいいや。

 赤鬼は受け身を取ることなく吹き飛び、地面に体をバウンドさせた。

 どうだ・・・今のは手応えがあった。

 

「立たなくていいぞ。そのまま寝てろ、ダメージは入っていると信じたい」

 

 なぜ自分が倒れているのか理解できないといった感じか。

 ゆっくりと起き上がり俺を見据える。

 左腕の鬼面から何かが出てきた。あれは、刀?

 歩くでもなく走るでもなく地面から僅かに浮いた状態でこちらに接近する。

 歩幅が読めない。フワフワ浮いたかと思えば急加速急制動で刀を振るう。

 遺跡の壁だったものが刀の軌跡に沿って切断された。

 

「なんちゅう切れ味だ。ヤバい、あれはもらえない」

 

 白羽取りなんて芸当ができるはずもなく逃げ回る。

 上空に飛び上がった赤鬼が力を込めて刀を振るった。居合?

 !?間合いなんて関係ない!何かを飛ばした!!

 

「あ・・・!?・・・かはっ」

 

 切られたと思った時には遅かった。

 俺の上半身、肩から斜めに袈裟斬りにされた。

 出血する。斬られた箇所が燃えるよに熱く痛む。やられた。

 剣圧にエネルギーを乗せて離れた相手も攻撃するとか。あーいてぇ。

 覇気で応急処置、止血して。傷口が開かないようにコーティング。

 今、何分たった・・・そんなにもたないぞ。

 

 なんだなぜ来ない・・・赤鬼が俺の背後、遺跡の残骸とゲートの付近に顔を向けている。

 いつの間にかゲートの光が収まっている。覇気吸収はまだ続いているか・・・・ん?

 

「人?なんで・・・」

 

 さっきまで俺たち以外誰もいなかったはずなのに、人が倒れている。

 青い髪をした女の子?格好がおかしい・・・スカートを履いていない。

 赤鬼が女の子に近づこうとする。

 

「その子に近づくな!まだ終わってねぇぞ!」

 

 少女を守るために飛び出す。逃げ遅れた住民か?誰だかわからんがどうでもいい。

 女の子一人助けられないようじゃ、クロシロに顔向けできない。

 邪魔をするなとばかりに刀を向けられる。ここで避けたら後ろの少女が。

 覇気で防御するしか・・・刀の軌道は突き。間に合うか。

 

「・・・・はは・・・くそ・・・超いてぇ」

 

 刀に合わせて全力でガードしたにもかかわらず。覇気の防御膜をあっさり抜かれる。

 吐血する。ああ、これは・・・本当にマズい。

 だって赤鬼の刀が俺の腹部を貫通しているんだから・・・。体から刃が突き出ている。

 赤鬼が刀を引き抜いたと同時。膝から崩れおちる。

 内臓を損傷した。出血も吐血も止まらないさっきの傷も開いたようだ。

 痛いと言うより、寒い・・・体からどんどん命がこぼれていってる。

 ・・・視界が霞んで来やがった。

 もっとみっともなく足掻いてから死ぬもんだと思っていた。寒い、そして静かだ。

 力が入らない、体を動かすことができない。

 正体不明の女の子はどうなった。俺はここで終わるのか。

 母さん・・・クロ、シロ、皆・・・ごめん・・・。

 

「何やってるの?」

 

 誰かの声がする。誰・・・母さんじゃない・・・聞き慣れた美しい声色。

 でも、この人はこんな底冷えのするような殺気を放つ人だったか。

 

「ねぇ、何やってるの!」

 

 赤鬼が後退する。その左腕がミキサーにかけられたかのようにズタボロに潰されている。

 やや離れた位置から聞こえた声は、いつの間にかすぐ傍で聞こえた。

 

「しっかりして。もう大丈夫だからね」

 

 自身が血で汚れる事も厭わず、俺の傷口に手を当てる。

 覇気を供給して傷口を塞いでくれた。

 助かった安心感と、助けられてしまった情けなさと羞恥心。

 

「ネオ・・さん・・・すみません・・・」

「喋らないで、すぐにサイさんも来るからね。本当によく頑張ったわ」

 

 優しい、俺の知ってるネオさん・・・。

 でも違う、その瞳が紫紺の輝きを放っている・・・キレてる?

 赤鬼・・・お前死んだぞ。

 

「あなたがやったの?」

「・・・・」

「口もきけないの?」

「・・・・」

「なんでこんな事したの?」

「・・・・」

「この子が誰かわかってる?あなたが傷つけていいような存在じゃないのよ」

「・・・・」

 

 怖い・・・超怖い・・・母さん!早く来て―!

 

「サイさんが来たらどうせ同じ運命よね。私がやってもいいわよね」

「・・・・」

「生き物なのかな。よくわからない、どうでもいいか・・・」

 

 鳥肌が立つ冗談抜きで漏らしそう。

 いつもと同じ美しい声色で、息を吐くように告げられる死刑宣告。

 

「じゃあ、あなた・・・殺すわね」

 

 この瞬間、ここは戦場ではなく処刑場と化した。

 

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