俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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だんじょん

 ヤンロン戦の後、腹パン食らって気絶。

 

 

「ごめ・・・ちゃん・・・いられ・・・の」

 

「あ・・・と・・・ヒトに・・・だよ」

 

 そこにいるのは誰?何を言っている?待って・・・置いて行かないで。

 

 

「頭いてぇ・・・」

 

 夢をみたような気がするが・・・。

 

「あれからどうなった」

 

 どうやらベッドに寝かされていたようだ。

 ここはどこだ?サトノ家のホテルじゃないな、エログッズが見当たらないし。

 ・・・あ~お腹空いたな・・・。

 

「起きたか」

「ヤンロン!生きていたか」

 

 部屋にヤンロンが入って来た。無事だったんかいワレ。

 

「母上との修練以外で死を覚悟したのは久しぶりだ」

「首が変な方向に曲がってなかった?」

「トレセン学園には優秀な治療師がいる。それに天級血縁は伊達ではないさ」

「そうか、俺に腹パンかましてくれた女は?テイオーとマヤは?」

「説明は後だ、まずは食事にしよう」

 

 ヤンロンに連れて来られた食堂。テーブルの上に色とりどりの料理が並ぶ。

 うわーい中華だ!メッチャ美味しそう。

 

「薬膳だ。体力の回復には持ってこいだぞ」

「早く食べようぜ!もう我慢できん」

 

「「いただきます」」

 

 ああ美味いな。体に栄養が染み渡っていく。

 よく噛んで食べないと消化に悪いのはわかっているけど箸が止まりません。

 

「美味すぎる!リアクションで服を脱いだ方がいい?」

「脱ぐな!そうか腕を振るった甲斐があったな」

「・・・お前が作ったのか!すげーレシピを教えてくれ!」

「機会があればな」

 

 イケメンの上に料理まで出来るとは、これができる男か。

 

「俺の仲間は?」

「やよい様が責任をもって家に帰した。ずっとお前の事を心配していたぞ」

「良かった後でお礼をしないとな。ここはどこだ?」

「トレセン学園内の教職員寮だ。ここに住んでいるのは僕と後もう1人」

 

「私だけですね」

 

「きゃー!腹パンマン!いやー!」

「マンではありません。それを言うならウーマンです」

「今はやめて!ご飯食べたばっかりなのー!せっかくヤンロンが作ってくれたのー!」

「駿川女史、マサキが怯えています。威嚇するのはやめて頂きたい」

「威嚇なんてしていませんが。相席よろしいですか?」

「・・・・ご勘弁を」(((((((( ;゚Д゚))))))))ガクガクブルブルガタガタブルブル

「追加の料理を作ってきます。少々お待ちを」

「ひぇ!1人にしないで」

「すぐそこにいる。何かあっても・・・呼ぶな」

「このひとでなし!」

 

 広々とした対面キッチンで料理を作るヤンロン。

 こっちが見えている癖に目を合わせようとしない。覚えてなさいよ!

 

「どうしたんですか?気にせず食べて下さい。冷めてしましますよ」

「あの・・・ずっと見られていると食べにくいっス」

 

 なにが楽しいのかニコニコと笑いながらこちらを見つめる腹パンマン。

 

「・・・あ、あう」

「フフッ」

「そんなに面白いですか?俺の顔が」

「ええ、とっても。見ていて飽きません」

「あ、そうですか・・・もうお腹いっぱいなので失礼します!では俺はこれで」

「追加の料理をお持ちしました」

 

 おい!邪魔すんな。今、俺の逃走を阻止しただろ!

 

「しっかり食べないと強くなれませんよ。さあ一緒に食べましょう」

「え、えっと・・・」

「座って下さい、ね」

「アッハイ」

「ごゆっくりどうぞ。僕は修練の時間なのでこれにて」

「はい。後片付けはやっておきます」

 

 ヤンロンの奴ったら!逃げたわね!

 美人のお姉さんと食事、本当なら嬉しいイベントなのに!蛇に睨まれた蛙ですよ。

 

「マサキ・・・アンドウマサキさんでよろしかったでしょうか」

「ひゃ、ひゃい!アンドウマサキとは俺の事です」

「緊張しなくても大丈夫ですよ。別に取って食ったりはしません」

「初対面で腹パンされましたけど?」

「すみません。あの時は少し腹が立ちましたので」

「な、何にでしょうか」

「私自身の至らなさにでしょうか」

「???」

「こちらの話です、あなたは悪くないですよ」

「は、はぁ」

 

 怖い人のはず・・・なんだけど。

 この人には俺の全てを許容してくれる様な安心感を感じる。恐怖も感じるけど。

 

「ごちそうさまでした。ヤンロンさん、また腕を上げましたね。お店で出せるレベルですよ」

「確かに美味かったですね。男として嫉妬してしまいます」

 

 洗い物ぐらいはやると立候補したのだが、やんわりお断りされた。

 でも食い下がって一緒にやるのを許可してもらった。

 家事を人任せにするのって嫌なんだよ。

 

「~♪」

「ごきげんですね。なにか楽しい事でも」

「今とっても楽しいですから」

「???」

「~♪」

 

 洗い物が好きなのか?

 何気ない日常の一コマ、気の置けない人と家事をやるのが幸せ。

 どうしてそんな事を思った?この人とは昨日会ったばかりだろう・・・なんか変だぞ俺。

 洗い物をが終わった、これからどうしよう。ヤンロンを探してみるか。

 

「少しお散歩しましょうか、夜のトレセン学園も乙なものですよ」

「はい、お供します」

 

 すっかり暗くなっている。

 夜の学園散歩、トレセン学園の広大な敷地を巡る。

 教室棟、生徒寮、教職員寮、研究棟、部室等、グラウンド、レース場・・・その他。

 広大な敷地内に人の気配が沢山ある。

 自主トレをしている子もいるので、まだ消灯時間は先のようだ。

 

「自己紹介が遅れましたね。トレセン学園理事長秘書、駿川たづな(ハヤカワタヅナ)です」

「アンドウマサキです。たづな?」

「はい、たづなとお呼び下さい」

 

 たづな?・・・この人の名前、本当に?

 人の名前にケチをつける気は無いけど、この人はそんな名前ではな・・・。

 

「どうされました?」

「ちょっと違和感が・・・いえ、なんでもないです」

「ならいいですけど。マサキさん・・・まだ私の覇気が欲しいですか?」

「もちろんです!たづなさんの覇気はきっと」

「愛バの糧になるですか・・・そんなに多くの覇気を食らった騎神は、どんな化物になるんでしょうね」

「知っていたんですか?」

「あなたが寝ている間に、お母様からお聞きしました。サイバスターとはちょとした知り合いですので」

「母さんの知り合い、なら話が早い。是非ご協力をお願いします」

「その前に質問させてください、返答次第では覇気の提供はできません」

「う、わかりました。」

 

 母さんの知り合いなら快く引き受けてくれると思ったが、甘かった。

 人助けのためだからと皆が協力してくれるわけではない。

 助けてもらって当然というのは傲慢だろう。

 わかっていた。でもここで諦める訳にはいかない。

 直感が告げる、この人の覇気は絶対ゲットしろと。

 腹パンマン・・・じゃない、たづなさんが真剣な目でこちらに問いかける。

 

「ウマ娘の事が好きですか?」

「今更なにを仰るのやら、好きじゃないと今の境遇になってませんよ」

「本当に?ウマ娘のせいで人生を振り回されているのに、彼女達に関わらなければもっと平穏に暮らせたと思いませんか?」

「思いません。彼女達がいてくれるから俺は幸せなんです」

「本当のご両親がウマ娘のせいで亡くなったと聞いてもですか」

 

 本当の両親?俺の何を知っているんだ。

 ドッキリ?俺を試すための揺さぶりか?わからないこの人の事がわからない。

 

「それでも俺はウマ娘達に感謝しています。顔も知らない両親よりも、今の母さんや愛バ達を愛してますんで」

「・・・バカな子」

 

 少し寂しそうな顔をするたづなさん。

 

「これからもっと大変な目に合うとしても」

「上等ですよ!全部乗り越えてやりましょう」

「いつか必ず後悔します」

「そんなもん感じる暇もないぐらい幸せになってやりますよ」

「まともなヒトに戻れなくなりますよ」

「ロリコンだの覇気が異常だの既に手遅れです」

「ヒトの道を外れた生き物はヒトと一緒にいられない」

「じゃあ一緒にいてくれる奇特な奴らを探しにいきますか・・・割といるな」

「・・・強情ですね、誰に似たのやら。考え過ぎた私がバカみたいじゃないですか」

「心配してれたんですね。大丈夫ですよ、ヤバい時はすぐ誰かを巻き込むんで!寂しい時は皆を道連れにしてやりますよ」

「本当にこの子は・・・いいでしょう。私も巻き込まれてあげます」

「おお、それでは」

「明日から私と修練ですね」

「ん?なぜそうなるのです?覇気くださいよ」

「あげますよ、その前にあなたを鍛え直してあげます」

「なんでそうなる」

「私の覇気を弱い人に託そうとは思いませんから」

「そんな~・・・手取り足取りやさしくしてくれますよね」

「は?1ヶ月地獄のスパルタコースに決まっているでしょ」

「いやー!お家帰る!」

「わがままですね・・・ゆるゆる3日コースもありますけど」

「それがいい!ゆるいの大好き!」

「ただし今後、全ての覇気は尻から出る」

「みっちり1ヵ月よろしくお願いします!!!」

 

 尻から出るってなんやねん。

 ただでさえ覇気が噴出する俺がそんな事になってみろ、戦闘中尻からキラキラを漏らし続ける男。

 ・・・相手の意表はつけるかも・・・バカな考えはやめろ。

 

「学園関係者や理事長の許可は既にとってあります。寝泊まりは職員寮の空き部屋を使って下さい」

「はい、よろしくお願いします。トホホ」

「広域結界の維持なんて退屈なだけですからね。明日から楽しみです」

「学園のお仕事はどうされますのん?」

「もちろんあなたにも手伝ってもらいます。手早く終わらせて修練時間を確保しましょう」

 

 お散歩を終えて寮に帰宅する。

 立派な寮なのにここで暮らしているのは2人、今日からは3人か。

 

「1階に浴場がありますからご自由に入浴してください。結構広々として快適ですよ」

「ありがたや~。たづなさんからお先にどうぞ」

「一緒に入りましょうか」

「是非お願いします!!!」

「冗談です」

「今あなたは男心を弄びました。謝罪を要求します」

「修練を頑張ったら1回ぐらいご一緒してもいいですよ」

「そいつは楽しみですな。その時はバスタオルは無しでお願いします」

「エロガキのまま大人になってしまいましたね」

 

 たづなさん、ちょいちょい昔の俺を知っているような発言をして気になるんだが・・・。

 でも踏み込むのが怖い。向こうから教えてくれるのを待った方がいいか。

 

「まだ書類仕事が残っているので、今日の所はお先にどうぞ」

「ではお言葉に甘えて、お風呂―!」

「着替えぐらい持っていきましょうね」

 

 今日から寝床を移るので、お風呂の前にサトノ家のホテルに連絡しておこう。

 

「あ、俺です俺」

「詐欺には屈しませんぞ!どうされましたかマサキ様」

「実はね・・・かくかくしかじか」

「承知致しました。お荷物は明日そちらへお届けします」

「何から何まですまんね」

「本日、お楽しみなのはガチムチの男性カップルが・・・」

 

 また脳が腐りそうになったのでガチャ切りしてやった。ホモ御用達のホテルかよ!

 

 与えられた部屋はちょとした着替えも完備してあった。

 ヤンロンやたづなさんが用意してくれたのだろう、今日からお世話になります。

 さあ、一風呂浴びて早く寝るぞー。

 浴場に到着、服を脱いでと、いざ!

 

「ん?なんだ、お前も風呂か。せっかくだ背中を流してやろう」

「ガチムチですね////」

「・・・?」

 

 先客のヤンロン(ガチムチ)と入浴した。ウホッ!いい体してるじゃないの!

 ヤバいな、今度はだづなさんと入浴しないと性的思考がおかしくなるで!!!

 クロとシロはまた一緒に入ってくれるかな。期待しておこう。

 

 翌日、早朝からお仕事開始。

 たづなさんのお仕事は現理事長の秘書、園内のパトロール、やよいのお守、各種事務仕事、結界の維持、その他もろもろ業務は多岐に渡る。今日は一緒に行動してお手伝いをする。

 

「たづな君、そちらが新しい職員かね」

「本日から、秘書見習いとして雇用したアンドウマサキです」

「よろしくお願いします」

「君が連れて来た人材なら間違いないだろう。頑張ってくれたまえ」

 

 現理事長は温厚そうな初老の男性だった。

 この人から理事長の座を奪うのかやよいさんよ。

 

「決して悪い方ではないのですが、少々保守的な考えをお持ちでして、学園の改革には難色を示しています」

「だよなー。無駄に偉そうじゃないのが良い人の証だ」

 

 書類仕事は大変です。事務員さんが面倒な手続きをしてくれるから世の中が回ります。

 あ~デスクワークって思ったよりキツイな。

 

「たづなさん、資料ここに置いておきます」

「ありがとうございます。次はこれとこれのコピーと、メールの返信をお願いします」

「うっす・・・お、電話や・・・はい、お電話ありがとうございます。はい、はい、今変わります」

 

「すれ違う生徒の視線が痛いです。たづなさん、俺ってそんなに変ですか」

「ここでは若い男性は注目されますから。男性トレーナーやヤンロンさんは皆人気者ですよ」

「俺がそうなるとは限りませんよね。知ってますよ、クロとシロが例外だって・・・俺は調子に乗ったらアカンのや」

「卑屈にならなくても大丈夫ですよ。マサキさんは・・・その、か、かわいいですから」

「・・・かわいいは褒め言葉ですか?それとも褒める所が無いブサメンに適当言いましたか」

「褒めてますよ。拗ねないでください」

 

「みつけたぞ!やよい!勝負じゃぁー!」

「にょわー!いきなり何をする!」

「マサキさん!ステイ!一体どうしたんですか?」

「え、だってやよいも操者でしょ。俺と殴り合いぐらいできるよね?」

「できるか!自分が普通じゃない事を自覚しろ、殆どの操者は肉弾戦などせんわ!」

「じゃあ今からたっぷり鍛えないとな」

「え・・・」

「私の操者なんですから、いずれは顔面でドリアンかち割るぐらいはやらせますよ」

「拒否ッ!絶対やらないからな」

「流石だな、次期理事長は覚悟が違うぜ。まずは3日コースからだな」

「ええ、3日でゆるりと鍛え上げましょう」

「勝手に話を進めるな!どうしたたづな!マサキ君が来てからおかしいぞ」

「「この尻から覇気が・・・」」

「人の尻を見て何を思った!たづなが!たづなが壊れてしまった」

「私は元々壊れていますよ」

「俺は壊れていても好きです」

「あらあら、なら問題ないですね」

「なんだこいつらヤベェ」

 

「今日はこれぐらいでしょうか」

「これが例の広域結界ですか。この街に来た時から気になってました」

「極力薄めたつもりなんですが、ちょっと覇気がわかる程度の人間には知覚できないはずなんですよ」

「俺とたづなさんの覇気、相性がいいのかもなんて・・・すんません調子に乗りました」

「・・・いえ」

「あの、もしかしてなんか知ってます。例えば・・・俺の・・・」

「あーなんか不審者が侵入した気配がします。行きますよマサキさん!お仕事です」

「露骨にはぐらかした!絶対なにか隠しているよこの人!」

 

「お前だったのかデジタル」

「同士マサキ、昨日は大活躍だったね。無事でなによりだ」

「マサキさんこの不審者とお知り合いですか」

「ええ、まあ、この子からも覇気をもらったんですよ」

「へぇー、あなた前にもお会いしましたよね」

「な、なんの事でしょう」

「素直に吐いた方がいい、今なら気絶するまで殴るぐらいで許してくれるさ」

「マサキ!いつからこの悪魔の手先になったのさ」

「悪いなデジタル、今の俺はだづなさん直属の部下だ。長い物には巻かれるのが賢い生き方だぞ」

「そういう事です。覚悟はいいですか」

「くっ!殺せ」

「たづなさん、こいつの処遇は俺に任せてくれませんか」

「・・・いいでしょう。この変態ウマ娘を調教してやりなさい」

「へへ、覚悟するんだな。俺の命令に逆らえないようにしてやる」

「くそ!このデジタルどんな辱めを受けようとも、心までは屈しない」

「・・・テイオーとマヤにマーキングされたスーツ、まだ洗ってなかったな」

「らめぇええ!洗っちゃらめぇー!く、ください!この憐れなメスウマにくだしゃい!」

「そんなに欲しいのか、だったら忠誠を誓ってもらおう」

「誓います!絶対服従です!だからどうかお慈悲を」

「よし!今からお前は俺の右腕だ。働き次第で褒美をとらす」

「は!何なりとお申し付けください。マサキ様」

「見事な手並みですね。早速奴隷をゲットしましたか」

 

「おらキリキリ働け」

「花壇の整備か。秘書じゃなくて用務員だね」

「こういうのも下っ端の仕事さ。あ、スコップ取って」

「はい。だづなさんかぁ・・・う~ん」

「何よ、デジタルの守備範囲外か?」

「そんなことないよ・・・ないけど・・・闇が深そう」

「おい、滅多なことを言うな。後が怖い」

「マサキ、だづなさんと何かあった?」

「昨日腹パンされた」

「見てたからそれは知ってる。そうじゃなくて・・・うまぴょいした?」

「ぶっ!何を言い出すのかね!お風呂一緒に入るのが先でしょうが!」

「その反応はしてないね。近づいて改めて見るとさ、マサキとたづなさん・・・似てる」

「そうか?気のせいだろ」

「覇気の性質、呼吸と間の取り方、匂い、ちょっとした仕草、なんか似てるんだよね。うまぴょいまでした仲ならそれもあり得るかなと思ったんだけど」

「昨日が初対面の・・・はずだけど」

「デュフフフフ!私気になります」

「あんまり踏み込んで逆鱗に触れるなよ。さあ、たづなさんが帰って来るまでに終わらすぞ」

 

 本日の業務終了。奴隷1号(デジタル)を解放。

 デジタルはまた明日以降も来てお手伝いしてくれるとの事です。

 

「お疲れさまでした。それではこれから楽しい修練の時間です。お昼は食べましたか?」

「はい。学園の食堂が職員も利用可能で良かったですよ。にんじんハンバーグ美味し!」

「夕食はヤンロンさんが用意してくれるそうですよ。頑張ってお腹を空かせましょう」

「やったぜ!今日のメニューはなんだろなー・・・それでここはどこですか」

「旧校舎、騎神以外は立ち入り禁止の閉鎖区画です」

「ここで修練するんですか?確かに人はいないし他の建物からは離れていますが」

「とりあえず中に入りましょうか」

 

 夕方の旧校舎、夜になるともっと不気味になるであろう建物。

 入口の扉には大型の錠前が設置してある。

 たづなさんが鍵を取り出してロックを解除する。

 覇気を感じる扉、この扉一般人では開けられないと見た。

 

「お、お邪魔します・・・!?たづなさん、今のは」

「気づきましたか。この旧校舎の中は一種の異界と化しています。ダンジョンと言った方がいいかしら」

「ダ、ダンジョン。なんですかその冒険心をくすぐるワードは」

 

 侵入した瞬間に空気が変わったのを確かに感じた。

 旧校舎の中と外では違う理が働いているような、違う世界に来てしまった気分だ。

 

「もうすでにおかしいですね。建物は4階建てだったのに階段は地下へ続く目の前のヤツのみ。教室はおろかここ1階には階段以外は何もないじゃないですか」

「ダンジョンの入り口へようこそ。さあ行きますよ」

 

 階段を下りる。

 明かりはあるので暗くはない、等間隔に謎の照明が配置されている。

 到着したのはまさにダンジョン、石造りの壁、迷路のように入り組んだ通路、「押して」と言わんばかりのスイッチ、向こうに見えるのは・・・宝箱!オラわくわくしてきたぞ!

 

「ひゅー!RPG好きの俺は今感動しています。謎解きは任せてください」

「このダンジョンのギミックは大方解明したので、ヒントぐらいは教えてあげます」

 

 たづなさんとダンジョンを進む。

 梯子を登ったり、大きなブロックを動かしたり・・・実際やるとめんどくさいな。

 俺の操作でゲームの主人公達はいつもこんな面倒な事を・・・パズル何回も失敗してゴメン。

 

「宝箱!開けていい!もう限界だ開けるね!」

「待ってください、罠が」

「ぎゃー!」

「言わんこっちゃないですね」

 

 開けた瞬間爆発しやがった!俺じゃなきゃ上半身が無くなる所でした。

 

「まだ地下1階だろうが!トラップ仕掛けるの早いわ!」

「このダンジョンにある宝箱は50%の確率で罠です」

「早く言ってよ!ちなみに何が入ってたりするんですか」

「にんじん1本ですかね。薬草の代わりではないかと」

「いらねー!危険を冒してにんじん1本はねぇよ!」

「そうですか、意外と美味しかったですよ」

 

 食ったのか、誰が何の目的で用意したかわからん謎のにんじんを食ったのか。

 

「エンカウントしませんね。ここにモンスターは出ないんですか」

「ご心配なくそろそろ来ますよ」

「なにが・・・お?」

 

 いるわ、通路の奥になんかいる。

 

「ここから本番ですね。私は極力手出しはしませんので1人で片付けてください」

「よし!いっちゃいますよ!スライムかゴブリンか?おらーかかってこいや―!」

 

 通路の奥へ進撃、敵の姿を捉える。

 骨、触手・・・なんか見た事ある奴らだ。

 

「アインスト!アインストがなぜここに!」

「彼らの名前を知っているんですか?私はゴミ1号、ゴミ2号と呼んでましたが」

「ミィ達みたいな意思は感じない・・・やってもいいんだよな」

「向こうは既に戦闘態勢ですよ。ケガしたくないならやりなさい」

「お前らに恨みはないが!覚悟しなはれ!」

 

 覇気開放!戦闘開始!

 まずは1匹!骨の胸部を貫く!手の平を鋭い槍のようにイメージして強度をあげて放つ貫手。

 触手は遠距離からビーム撃ってくるからな、触手の軌道を読み絡め取られないよう回避。

 脚に覇気を集中!蹴りの動きに合わせて弧を描く覇気の斬撃を飛ばす!

 命中した。これなら多少離れている相手にも攻撃できる。怯んだ所で接近その核を拳で砕く。

 今日は単身でできる攻撃方法をどんどん試していこう。

 少しづでもパワーアップしていかないとな。

 まだまだこんなんじゃ足りない!もっともっと!

 

 たづなさん本当に手伝ってくれないんスね。

 

 アインストとエンカウントしながらダンジョンを進む。

 一戦ごとに反省点を改善策を考えて、次は何を試そうか。

 

「ふー、今何階ですか」

「地下3階ですね。ここまでいいペースで来てますよ」

「どうも。アインストは死んだら砂状になって風化するんですが、ここにいる奴らは光になって消えますね」

「ここを調査した研究員が言うには、敵性体アインストは本物ではなく、このダンジョンが記録したデータを再現しているのではないかと」

「立体映像だって?ちゃんと実態がありましたよ」

「ですが倒した後は光となって霧散します。ここは異界、外界の常識が通用しないダンジョン。謎パワーで謎現象が起きてもなんらおかしくありません」

「OK、考えるのはやめましょう」

「はい。どうして異界化したのかは不明ですが、ここはよい修練場です」

 

 ここに出現する敵は旧校舎の外に出る事はないのだが、放っておくとダンジョン中を埋め尽くす程湧いてキモいので半月に1度たづなさんや有志の騎神達が掃除するらしい。

 

 その後も特に苦戦する事は無く地下5階に到着した。

 今までとは違い広い空間。ここは・・・来るのか、来ちゃうのか。

 

「どう見てもボス部屋ですね。セーブポイントはどこにありますか?」

「セーブポイントなんてありませんよ。でもボスはいます」

「しゃあー!気合入れていきますよ」

「はい。本日の仕上げです。頑張りましょうね」

 

 そう言って俺と向かい合うたづなさん。

 ここまであえてスルーしてきた巨大な刀を構える。穏やかじゃないですね。

 

「あの、どうして構えるのでしょうか?今からボス戦ですよね」

「ここのボスは先月討伐済みです。復活までおよそ3ヶ月程かかります」

「ではボスと言うのは・・・まさか!」

「はい。私がボスの代わりです♪」

「\(^o^)/オワタ」

 

 怖い、たづなさんに比べたらアインストなんて、ただのカカシですな。

 深呼吸・・・深呼吸だ。これは修練、修練なんだ。

 いくらたづなさんでもそれは理解しているはず。

 

「それでは参ります。どうか死なないでくださいね」

「あ、コレは気を抜いたら即死するヤツだ」

 

 始まる修練、たづなさんとマンツーマンで稽古をつけてもらう。

 ほぼ一方的にボコられただけだったけど。

 ボコボコ→気絶→起きる→ボコボコ→気絶→起きるの繰り返し。

 5分以上寝てるとたたき起こされる。手加減されてこのザマです。

 巨大な刀の銘は"零式斬艦刀"切れ味がどうこうじゃなくて大きさと重量が頭おかしいし。

 峰内と称してぶつけてくるのホントやめて!刀じゃなくて鈍器だよ。

 この鈍器を平然と振り回すたづなさんが一番頭おかしい。

 この御方は本当にウマ娘か?ゴリラの化身、ゴリ娘じゃないよね。

 

「今、最高に失礼な事を考えましたね?」

「ち、違います!「メスゴリラ怖いですね」なんて思ってません!」

「ほう、私がゴリラなら、あなたのお母様はなんなのでしょうね」(#^ω^)ピキピキ

「自分の事を子猫だと思っているゴジラです」

「プッ!あははははははは!言い得て妙です。さすが息子ですね、よくわかっている」

「母さんに言わないでくださいよ。マジで怒られますから」

「はいはい。では、ゴリ娘の力を思い知らせてあげますね」

「すみません許してください。美人が台無しですぞ」

 

 ボッコボコやぞ!もう無理ー。初日からこんなんで大丈夫か。

 クロ、シロ・・・俺はもうダメかもしれない。

 

「ただいま帰りました」

「・・・あ゛あ゛」

「お帰りなさい駿川女史、そのボロ雑巾は?」

「マサキさんです。少し前からずっとこの状態で困ってしまいます」

 

 片手で担いでいたボロ雑巾(マサキ)を床に置くだづな。

 

「これはヒドイ!初日からやり過ぎでは?」

「少々熱くなってしまいました。簡単にへし折ってしまわないように注意しないと、反省しています」

「・・・あ゛あ゛」

「さあ、マサキさん。お風呂に入りましょう。早速ご一緒してあげますね」

「・・・あ゛あ゛」

 

 止める間もなくマサキを引きずって浴場へ向かうたづな。

 ・・・いいのか?いや、僕では彼女を止められない。

 

「浮かれているのか?あの駿川女史が・・・マサキいったい何をした」

 

「はーい、こっちですよ。綺麗にしましょうね」

「・・・あ゛あ゛」

「歯形が2つですか、愛バはどんな子達なんでしょうね。」

「・・・あ゛あ゛」

「あんなに小さかったのに、大きくなっちゃって・・・」

 

 虫の息状態のマサキが意識を取り戻したのは翌日の事だった。

 

 

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