身バレした。
安藤正樹(アンドウマサキ)と言います。どうぞよろしくお願い致します。
俺の悲鳴が夜空に響き渡った後。
「びっくりした。急にどうしたの?発作?安心して私たちがついてるよ!」
「何か怖いものでも見たんですか?大丈夫です。何があっても、あなたを守り抜いてみせましょう!」
頼もしい事言ってくれるじゃないの、元凶はお前らだけど!
「どこで俺の事を知った!吐け!」
まさか心が読める系の能力者か?
「そんな能力ありませんよ。ちょっと察しが良いだけの、普通のウマ娘です」
今、まさに心を読まれたんだが。
「マサキさんは表情や仕草によく出ますからね。分かりやすいです」
このメンタリスト怖い。
チート読心能力じゃないとすると、俺の情報はどこから漏れたんだ?
「はいこれ。返すね」
黒髪が何か手渡してくる。
これは俺の財布と免許証‥‥‥うぇ!?
コンビニではスマホを使ったコード決済をしたので、なくなっていることに気が付かなかった。
「いつ盗んだ」
「マサキさんに尻尾を握られる、少し前かな」
「フッ、久しぶりに見ましたよ。キタちゃんの早業」
「えへへーー」
えへへーーじゃないが。スリだぞ!立派な犯罪だぞ!
あの格闘の最中に盗まれただと‥‥‥全然わからなかった。
改めて、こいつら人間じゃねぇ!!!
「お嬢さんたち、ちょっとよろしいですか?」
「何?お金には手をつけてないよ」
「免許証を拝見したかっただけですので、各種カード類も全て無事です」
財布の中身が無事な事にちょっと安心する。
「俺の個人情報なんですが、忘れて頂けるとありがたい‥‥‥」
「「無理!」」
即答かよ。
「恩人の名前を忘れるなんてとんでもない」
「私は免許証番号12桁も暗記済みです。絶対に忘れません」
もうだめだぁ、おしまいだぁ。
「なので観念して、私たちの名前も聞いて覚えて呼んでください」
「うんうん。楽になっちゃおうよ」
こいつらの名前を認識したらいよいよ詰みだな。
【フリーターの青年、ウマ娘の少女を誘拐!身代金目的の犯行か?】
なんてタイトルのニュースが世間を騒がせ、この二人の実家から訴えられて多額の損害賠償請求、それだけでは終わらず、社会的にも物理的にも抹殺されるのだ!
知らない!知らないのです!
この子たちが良家のご息女だなんて知らなかったんですぅ!
突発的な犯行と、計画的な犯行では罪の重さが違うよね?知らんけど。
誘拐の罪状は確定したので、如何に刑を軽くできるか考え始めました。
あきらめんなよ!!
「あだ名」
「「???」」
「あだ名で、勘弁してもらえませんか?」
「私たちにニックネームを付けるから、本名はいらないってこと?」
「どんだけ名前知りたくないんですか!そんなに拒否されるとヘコみますよ」
二人は少し考えた後、口を開く。
「仕方がないです。愛称を付けることで、今は妥協しましょう」
「どうせなら、可愛いのをお願いね」
「ありがとうございます」
やった!本名判明をスルー出来たぞ。
よしよし、二人が気に入るスペシャルな名前を考えてやらないとな。
うーん……ウマ娘…‥‥仲間に‥‥‥モンスター‥‥‥仲間モンスター‥‥‥子まだ子供…‥‥。
「あの、大丈夫ですか?不穏な事考えてません?」
「期待してるよー。ワクワク」
よし!決めた。
大好きなゲームにあやかって、素敵な名前を選んだぞ。
「ゲレゲレかボロンゴだな‥‥」
「「!!!???」」
俺の呟きに反応して二人が騒ぎ始めた。
「ちょっと待って下さい!それ天空の花嫁が考えたやつですよね!絶対嫌ですよ!」
「やだーかわいくないよー」
「そんな事言うなよゲレゲレ。ビアンカが悲しむだろ」
「私がゲレゲレで決定!?やめてくださいーー!!」
「キラーパンサーじゃないよ、ウマ娘だよ!」
どうやらお気に召さなかったようだ。
プックルとチロルにした方が良かったかな?
仕方がない、あいつらの名前を今こそ使わせてもらうぜ。
「じゃあ、黒髪のお前がクロ。ロングヘアーのお前はシロだ」
「クロ」
「シロ‥‥‥ですか」
「ダメか?」
「クロかぁ。うん、私の本名に近いし全然OKだよ」
「良かったですね、クロちゃん。私にシロは全然関係ないですが」
「じゃあ、お前はやっぱりゲレゲレ…」
「シロがいいです!シロってあだ名最高です!」
「決まりだね」
シンプルかつ安直なので嫌がるかと思ったが、これで決まりそうだ。
「因みに由来と言いますか、元ネタを教えて欲しいのですが?」
「私も知りたい」
ふぅ、あいつらの事を語る日が来るとはな。
「クロとシロはな。俺が昔飼っていた‥‥‥」
「猫ちゃんですか?」
「違う。裏山で捕まえた二匹のカナブンだ」
「「カナブン!?!?」」
「ああ、あいつら冬は越せなかったな、本当に残念だった」
「何しんみりしてるんですか!」
「今頃、天国で二匹仲良く飛んでいるだろうな」
「カ、カナブン‥‥‥」
人が切ない気分に浸っていると、シロが騒ぎ出しクロがなんか落ち込んでいる。
もうわがままだなー。
「何を考えているんですか!女の子に死んだカナブンの名前を付けるなんて!どうかしてますよ!!」
「なんだと!先代のクロシロに謝れ!」
「私たちと、全国のクロちゃんシロちゃんに謝るのが先じゃないですかね」
「カナブンって、あのウンコ転がすヤツ?」
「それはフンコロガシです!」
「古代エジプトではスカラベと呼ばれ、神聖な昆虫とされていたんだぞ。うん、フンコロガシもアリだな」
「「ないよ!?絶対ないよ!!」」
「フンコとロガシで分けるから、好きな方を選んでくれ」
「私はロガシがいい!よろしくね、シロ改めフン子ちゃんw」
「やめろぉ!フン子は死んでもやめろぉ!」
少し揉めたが、黒髪の子をクロ、ロングヘアーの子をシロと呼ぶことになった。
見ているか天国の先代たちよ、二代目が誕生したぞ。