トレセン学園にて修練の日々。
あれから毎日ダンジョンに潜っている。
日中はたづなさんのお仕事を手伝い、夕方からダンジョンへ。
どんなに疲れても母さんも認めた頑丈な俺の体、翌日には回復する。
ダンジョン道中のアインストはウォーミングアップ。
5階層ごとに現れる広大な空間にて行われるボス戦が本番。
ボスはたづなさんです。
今日の俺はデジタルに謝らなくてはならない。
「すまん!褒美は無しだ。よって奴隷契約は解除、どこへなりとも行くがいい」
「そんな、ここまで酷使しておいてそりゃないよ!」
「酷使って、ちょっとお手伝いしてもらっただけじゃん」
「どうしてだ、私のマーキングスーツはどこへやった」
「お前のじゃないし、クリーニングしちゃったのよ。たづなさんがね、気を利かせてくれたの」
「よ、余計な事を!だったらたづなさんの服をもらって来てよ」
「俺は自殺志願者じゃない。諦めろ!」
「いやだ!なんの成果もなく引く事などできぬぅ!」
「まあまあ、ブツより本物の方がいいだろう。しばし待っておれ」
「その物言い、期待してもいいの?」
「ほら、おいでなすったぞ」
「マサキ!」
「マサキちゃん」
俺の姿を見つけるなり元気のいいタックルをかましてくる2人。
しっかり受け止めてやる。
1週間ぶりの再会だな、テイオー、マヤ。
「2人とも元気だったか。お礼も言えずに悪かったな」
「お礼なんていいよ。それより良かった無事で」
「心配したよ~。あの人にやられちゃったのかと思った」
よしよし、2人とも元気いっぱいだ。
体調を聞いたが特に問題ないらしい、良かった俺の覇気による副作用はないようだ。
「学園の治療師がしっかりチェックしてくれたからね。問題ないない、あの戦いの後からむしろとっても調子が良いんだ」
「そうだよ。見ててね・・・それ!」
軽くジャンプしたマヤ、そしておよそ10秒間、空中にフワフワと浮かんだ!?
副作用ありましたね。
「ホバリング?した・・・だと」
「滞空時間はマヤノの勝ちだけど空中ダッシュは僕の方が上手い。あの時みたいに自由には飛べないけど」
「むふふ~。これからドンドン時間を伸ばしてみせるよ」
「ははは、やっぱりお前ら最高だな」
新たな能力に目覚め始める騎神。2人の成長に一役買ったのはわしの覇気じゃぞ!誇らしいのう。
しばし談笑・・・おっと放置する所だった。
「デジタル、こちらはテイオーとマヤ、ヤンロン戦で一緒に戦った仲間だ」
「君も覇気をあげたの?僕はトウカイテイオーよろしくね」
「マヤノトップガンだよー。あなたも騎神?」
「アグネスデジタルです。はい、騎神です」
(*´Д`)ハァハァする対象を目の前に緊張するデジタル。よし、手を貸してやろう。
「テイオー、マヤ。こいつお前達を仲良くなりたいんだってさ。友達になった記念で写真撮ってやる。デジタルを両サイドからサンドしろ」
「「は~い」」
「ま、待ってマサキ!そんな事されたら私・・・あ~!!!!!しゅき・・・」
真ん中の変態が昇天しているが構わずシャッターを押す。
うんうん。どこから見ても仲の良いウマ娘3人だ。
たづなさんから午前中はお休みをもらったので、今日はこの3人と遊ぼう。
約束していた、はちみつ入りのドリンクを奢ってやる。
う~ん濃厚な味わい、90%はちみつだ原液そのものだ。皆が美味そうに飲むのでいいいか。
テイオーはエアダッシュ、マヤはホバリングが得意、フット―パーツ装備したのかな。
ロックマンXは2が一番好き。
テイオーとマヤは無邪気で距離感が近いスキンシップを好む傾向がある。
その度にデジタルが昇天、とりあえず涎を拭け!
無邪気でいいわね、若さが眩しいよ。3人に付き合ってしばらく遊んだ。
楽しい時間は過ぎ去るのが本当に早い。
またいつか再会を誓いあってお別れする。
「お前達に会えて良かったよ。立派な騎神になるんだぞ」
「絶対、絶対にまた会おうね。帝王様との約束だよ」
「次はマサキちゃんの愛バも一緒だね。皆まとめてマヤにムチューにさせちゃうから」
「その日が本当に楽しみだ、お前達の更なる成長と幸せを祈っているよ」
「「うん!」」
「はう・・・素直過ぎて尊い」
元気に走り去って行くテイオーとマヤ、次も笑顔で会えるよな。
「これで満足か?デジタル」
「ありがとうマサキ、今日この日を私は忘れない。やっぱりウマ娘ちゃん達は最高にして至高。トレセン学園・・・待っていろ必ず辿り着く」
「ほどほどにな。奴隷契約も今日まででいいぜ、捗り過ぎて修錬を怠るなよ」
「こらから先どんな事があっても、私はマサキを応援するよ。愛バをしっかり助けるんだね」
「ああ、俺の愛バを見たら昇天不可避だぞ」
さらばだ頼もしき戦友達よ。
学園に戻って・・・さあ、修練再開です。
今日も手酷くやられました。
「今日は気絶しませんでしたね」
「毎日気絶するのは遠慮したいので、あー運んでもらってすみません」
「いえいえ。大した手間ではありません」
ダンジョンからの修練帰り。
気絶こそしなかったものの体が動かない。よって今の俺はなんと。
「すみません。おんぶしてもらって・・・お恥ずかしいッス////」
「好きでやっている事ですから、気になさらず」
体格差がある俺をものともせずおんぶしてくれたたづなさん。
は、恥ずかしい!これが羞恥プレイですか。
おんぶするのに邪魔なので斬艦刀は地下20階に置いておきました。
「今日は遅くなりましたから誰とも会いませんよ」
「こんな姿見られたら、クロとシロになんて言えば・・・」
「そんなに嫌ですか?でもやめません。これは私の特権ですから」
「嬉しそうッスね」
「嬉しいですからね」
「・・・・」
「・・・・」
もう開き直っておんぶを楽しむ事にした。いい匂いがします。
この年で女性におんぶされるってなかなか貴重な体験だ。
なんか落ち着く、この人に触れているとすごく安心する。
母さんとはまたベクトルの違う包容力。
最初こそ恐怖が勝ったが、何日も一緒にいるとわかる。
この人は俺をとても気にかけてくれている。それこそ自身の操者であるやよい並みに。
「たづなさん・・・俺の産みの親だったりします?」
「そんなに老けて見えますか?20歳の息子をもった覚えはありません」
「違うか~。なんか他人の気がしないんですよ」
「・・・私は駿川たづな。ただのトレセン学園秘書兼雑用係、そして秋川やよいの騎神です」
「今はそれでいいです。母親は除外となると・・・・お姉ちゃん?」
「!?」
「いったぁーい!急に落とさないでくださいよ!尻がぁー!」
「すみません!だってだって」
「だづなさん!血が!鼻血が出てます!」
「え、あ、本当だ」
「まさかさっきのダンジョンでケガでもしたんですか?」
「ち、違います・・・あなたが変な事を言うから・・・」
しまったな、鼻血を出すほどのケガに気付いてあげられなかった。
もう体は動く、今度は俺の番だ!
たづなさんに背を向けてしゃがむ。
「ここからは俺がおんぶします。さあ早く乗って!」
「本当に大したこと無いですから、平気ですから」
「いいから!乗ってください。言う事聞かないと、たづなさんに襲われたって、やよいに泣きつきますよ」
「操者をだしにされては従うしかありませんね・・・失礼します」
よし、おんぶ成功。
結構着痩せするタイプか、背中がに当たる感触がとっても幸せです。
「たづなさん。できればもっとギューとした方が安定します」
「あなたの頭は万年発情期ですか?」
「男として当然の反応ですよ」
「変態、ドスケベ、エロ、色魔、性欲魔人、種ウマ、ぺドフィリア」
「酷い言われようだ。種ウマ?」
「その昔、多くのウマ娘と所帯をもった伝説的なスケベ男の異名です」
「種ウマねぇ・・・。俺はペドなんでたづなさんは守備範囲外です。安心しておぱーいを「当ててんのよ」してください」
「守備範囲外?それはそれでムカつきますね」
「首を絞めたらアカン!」
観念したのかたづなさんが力を抜いて体重を預けてきた。
あったかい、この人をおんぶできて嬉しい。
もうすぐ寮に着いてしまう・・・もうちょっとだけこのまま。
「だづなさん・・・少し遠回りしてもいいですか」
「・・・仕方ないですね。ちょっとだけですよ」
沈黙すらも心地よい。
一緒にいられる、それだけでいい、それがどんなに大切か知っている。
やっぱりこの人は俺の・・・。
修練の日々は続く。
「できた!俺の炒飯試作16号どうですか師匠?」
「具材の切り方、火加減はいい。もう少し鍋振りのスピードをあげろ、味は・・・まあ、これなら合格だ」
「よっし!やっと合格した。俺もたーべよっと!・・・美味い、自画自賛だけど美味い」
「男2人で料理教室ですか?私も味見したいです・・・やよい、お行儀が悪いですよ」
「美味ッ!おかわりをくれマサキ君」
「は~い、たーんとお食べ!ちゃんと座って食べなさい。たづなさんもどうぞ」
「いだだきます。フフッ、なんかいいですねこういうの・・・ずっと憧れていました」
「家族の団欒、だづなさんがパパ、ヤンロンがオカン、俺が子供、やよいがペットですね」
「ペット!?」
「誰がオカンだ!」
「私は一家の大黒柱、責任重大ですね」
「これを食べたらダンジョンへ行きますか。今日は地下25階まで踏破する」
「忘れ物は無いか?ハンカチ、ティッシュは持ったか。夕飯までには帰ってくるんだぞ」
「「「やっぱりオカンじゃないか」」」
「ぐぬぬぬ、あー鬱陶しい!いい加減、寝てろ!・・・はぁ手強かった」
「次が来ます。休んでいる暇はないですよ」
現在ダンジョン地下22階、進む度に強くなる敵。
「さっきの連中、明らかに連携してきましたよ。知恵もつけてきたか厄介な」
「各個体の総合能力が上昇しています。気を抜かないで」
「うわー、また赤カブトがいる。あいつ嫌い」
骨=クノッヘン、触手=グリード、鎧=ゲミュート、全部盛り=レジセイア
そして21階から現れた、見た事がない新種。
右腕から突き出た短剣、左腕の機関砲、両肩から特殊な弾丸(機雷?地雷?)をばら撒く。
赤と黒の装甲、角の生えた頭部がちょっとカッコイイ。
こいつの特徴・・・クロが装備していたアルトアイゼンに似ている。
アルフィミィはこの世界と存在が近い人や物があると言っていた。
異世界のアルトアイゼンをアインストがコピーしたものなのかも。
新種、赤カブト=アイゼンに決定。
短剣と機関砲でチクチク、隙あらば仲間ごと特殊弾でぶっ飛ばそうとしてくる危険な奴。
「流石に数が多過ぎる!たづなさんヘルプです!」
「仕方ない、アイゼンは私が消します」
「すみません、お任せしま・・・ああ触手が絡みついて!バカどこ触っているんだ!そういうのは俺じゃなくて、だづなさん!変わってください!いやー触手いやー!」
「あらあら大変。動画を撮ってあなたの愛バやお母様にお伝えしなくては」
「やめてー!くっそ!離せ、お前らそれでも触手か?たづなさんを狙えってんだよ!一部始終終わるまで待っててやるから!じっくり見物させてもらうから!」
「ドスケベが!もうここに置いて帰りましょうか」
「すみません、欲望に忠実な俺を許して!ヘルプミー!あっーーー!」
「やれやれ」
地下25階。
「やらせはせん!やらせはせんぞー!」
「気合だけはいっちょ前ですね。よいしょっと!」
「重い!・・・リニアアクセル!」
「スピードもまあそれなり、そこ!」
「げっ!あっぶない!なぁ!」
「蹴り技主体の方がマサキさんには合ってるか。腕は必殺の蹴りを入れる補助に固定してみても面白いかも」
「考え事ですか?余裕ですね!シルフィード」
「天級の覇気を使った技・・・威力は高いが制御が困難、回数制限も痛い」
「アクセ・・・げふっ!」
斬艦刀を軽く振っただけのはず、高速で接近する俺を正確に捉え薙ぎ払う。
いだだだだだあ。ゴロゴロ地面を転がりつつなんとか体勢を立て直す。
「マサキさん、天級の属性はしばらく封印です。まずはあなた自身の覇気から生じる力を伸ばしましょう」
「はい!正直俺も母さん達に頼り過ぎだろうと思ってました。そして!使いにくい!」
「最後の切り札としては有効です。油断した相手にまとめて叩き込む使い方をオススメします」
「リニアアクセル、これを瞬時に発動、常時展開できるのが理想か」
「そうです。こんな風に・・・ね」
たづなさんの足元に小さな放電が起こった。その場から掻き消えて、俺の目の前に。
「私にもできました。今ので良かったですか?」
「か、簡単にパクられるとは・・・才能の差が・・・凹みます」
「こんなやり方があったんですね。私もまだまだ未熟です」
「嫌だな、もしかしてこの技はちょっと見たら誰でもラーニング可能なんでしょうか?」
「それは不可能でしょうね。覇気の資質が近・・・なんでもないです」
「覇気の性質がなんですか!たづなさんあなたは俺の・・・」
「続けましょう。リニアアクセルを展開したままで、かかってきなさい!」
「ああじれったい!もう全部吐き出しましょうよ!」
たづなさんは結局、今日も口を割らなかった。
早く別の言い方で呼びたいんだけど!思いっきり甘えたいんだけど!
どんな理由があるにせよ、もうこれはたづなさんも意地になっているんだろう。
おそらく母さんは事情を知っている。でもこの人から直に聞きたい。
待ちますよ、俺はいつでもカミングアウトばっちこいです。
本日のやよいとたづなさんは秋川本家へ。
修練はヤンロンとやる事にする。
「どんな感じ?いけそう?」
「ああわかるぞ。お前の覇気を確かに感じる」
「ウマ娘相手じゃなくても覇気の受け渡しは可能、じゃあ今度は吸い取ってみるか」
「一気にやるなよ。徐々にだ」
ENドレインの精度が上がってきている。
いろんな奴から覇気を吸収する事で俺も変わってきています。
接触してない状態でも可能、ウマ娘じゃなくてもOK。
効果範囲と許容人数もこの旅でちょっとづつ強化されていく。
「出でよ!」
「おお成功した」
ヤンロンの手から覇気が迸る。現れたのは炎ではなく小さな雷。多分俺の覇気です。
「実戦に使用できるほどのものではないが、他の属性を使えるのは新鮮だ」
「そもそも属性があるのが異例なんだって、ビアン博士が頭抱えていた」
「ビアン・ゾルダーク、DCの元総帥か。妙な知り合いがいるな」
「頑固で気難しいマッドサイエンティストだけど面白い人だよ。愛娘がいて、超強い」
「それは会うのが楽しみだ。近々、2人揃ってトレセン学園に来るらしい」
「マジか、見つかる前に移動したいな」
「む。雷が消えたか、お前の○○アクセルのように1度使用したらその後も使える。と言う訳ではないようだ」
「母さんの風、ネオさんの重力、グラさんの炎、俺の覇気中枢に記録されたらしい」
「意味がわからん。規格外なお前のだからこそなせる芸当か」
「どうした!それでお終いか!」
「まだだ!もう一本お願いします!」
「その意気だ!来い!」
トレセン学園にも休日はある。
生徒たちは遊びに行ったり、自主トレしたり、思い思いの過ごし方をする。
良く晴れた日のグラウンド、自主トレを行うウマ娘たち。
そして組手を行う男たち。
「捕まえた!この・・・ひょ?」
「次に繋がる動作が遅い!最適な行動を瞬時に選択しろ、思考と行動のずれを限りなくゼロにするのが目標だ」
「やると思った時には既にやっているだな」
「そうだ、判断の遅れが敗北をいう結果を産む」
お昼。今日はグラウンドから少し離れた所にあるテラスでいただきます。
ヤンロンの奴ったら、生徒から弁当もらってるー!このリア充がぁ!
いいんだ俺にはクロとシロがいるんだ。
あいつら俺が適当に作ったものを「美味い美味い」って食べてくれたよな・・・会いたい。
持参のおにぎりを食べながらスマホを弄る、クロとシロの写真は俺の癒しだ。
「また写真を見ているのか」
「飽きる事などない。この画像だけで飯が美味くなる」
ヤンロンとやよいにはクロとシロの事は説明してある。
2人とも本気で心配してくれた。いい奴らだ。
「目覚めさせるには、多くの騎神たちの覇気、なるべく良質かつ強力な覇気が必要か」
「そうなんだよ。この学園にならと思ったんだけど、今の所だづなさん以外はピンとこない」
「間が悪かったな、今ちょうど交換留学に行っている生徒たちがいるんだが、これがとんでもない実力者だ」
「なんてこった、みすみすチャンスを逃がした・・・だと」
「皇帝、女帝、影を恐れぬ怪物、この3人は超級騎神になるのがほぼ確定だ」
「いつ帰って来る?」
「半年後だな。ドレインするのは諦めた方がいい」
「そんな優秀な奴らと会えなかったのは俺の運が悪いせいか」
「いない者の事を気にしても仕方がないだろう。出会えなかったのはお前のせいではない」
「ご縁がなかったか、もったいない!」
「お前の今後だが・・・残りの天級騎神を探した方がいい」
「水のガッデス、土のザムジード。写真1つ残して無いんだぜ。本当に見つかるか?」
「5人中3人とは既に会えている。残りの2人とも必ず会える、そう信じて進むしかない」
「そうだな。頑張るしかないってか」
強い覇気同士は惹かれあう、信じるしかないか。
ついにこの日が来た。
ダンジョン地下30階、最下層到達。
「おめでとうございます。ここが終点です」
「すっっっごい!見たことある物がありますね。見たくなかった」
なんでここに迷惑門、クロスゲートがあるんだよ!
「機能を停止してから随分時が経ちました。旧校舎が異界化した原因はこのゲートから漏れた力のせいでしょう」
「俺の故郷にあったヤツは今でも生きている」
「あなたの故郷にあるのは偶然ではありません。ゲートを監視するために天級が移り住んだのしょう」
遺跡のゲート→ド田舎村誕生→ゲート発見→母さんが移住→天級がいるなら私も住むで(人口増加)
→癖のある住人が集う→今に至る
「ここのゲートには変わった噂があります。その昔、まだゲートが動いていたとき、3人の騎神がこのダンジョンに挑んだそうです」
「なんか始まった」
「3人はとてつもない力で一気に最下層まで攻略。そして地上の人が待ちわびる中、帰還した3人は奇妙な生物を連れて戻った」
「・・・異世界からの来訪者!」
「人かどうかはわかりません。ただ、記録によると人語を解する無機物と有機物を合わせたような存在だと」
「意思のあるアインスト、ミィの同類か」
「あくまで噂ですよ。マサキさん、このゲートは無限の可能性と危険性を秘めています。注意してくださいね」
「わかりました。でもこのゲートから出てきた存在に俺は助けられましたよ」
「奇遇ですね、私もですよ」
「???」
このゲートには今後も注意だ。
「さあ、総仕上げです。今日はとことんやりましょう」
「俺もそのつもりです。あなたをビックリさせてやります」
「言いましたね。見せてください、あなたの力を」
「今度こそ!」
初手から全力!この人に対して遠慮する必要は一切ない。
覇気開放、粒子散布、電磁加速展開、行く!
たづなさんはただ斬艦刀を正面に構えるのみ。
下手に踏み込むと一撃でやられてしまう。マジで怖い、でもビビるな行け!
「せいっ!」
「ふっ!」
振り下ろされる刀、そこで終わらず回避した俺の動きを追う。
超重量の刀から繰り出される破滅の斬撃。当たったらアウト。
地下30階の壁や床が音を立てて崩れ去る。
「地下でそんなに暴れて大丈夫ですか?落盤からの生き埋めは嫌ですよ」
「ご心配なく。1度このフロアをまとめて吹き飛ばそうとしたことがあるのですが、どんなに破壊してもこの空間は復元されます」
実験済みか。
たづなさん本体を攻撃するにはあの刀が邪魔!こいつで封じられるか。
覇気でできた鞭を伸ばす、刃の部分は避けて柄のあたりを絡めとる。
離してもらいましょうか、そのデカ物をねぇ!
「覇気の鞭ですか、それでここからどうします」
「こいつで・・・ふんぬぅ~・・・・全然動かねぇ!ダメだこりゃ」
「そぉーれ!」
「ああー逆にこっちが引っ張られるー!」
解除!パワーSSSかよ!そう、たづなさんの恐ろしい所はこの斬艦刀じゃない。
もっとシンプルな強さ、ただ単純にこの人は力が強い!!!
パワー勝負なら母さんとだってやり合えるレベルだ。
こちらを紙のように引き裂く力に覇気が上乗せされる、考えただけでもゾッとする。
「その刀、もしかしてわざと使っています?素手にならないために」
「そんな事はありません。まあ、徒手空拳も得意ですが」
何とか後ろに回り込みたいが、隙が無いですよねー。
「いきますよ・・・斬艦刀・疾風迅雷!!!」
真横に構えた刀、覇気が乗っているせいかより大きく見える。
右手で刀身の峰を支えこちらに突っ込んで来る。
刀のスラスター部分から覇気が噴出。加速力を上げていく。
咄嗟の判断、床を踏み砕き、その破片を前方へ蹴り上げる。
覇気の斬撃つき、目くらましと攻撃を兼ねた攻撃。
「それで止められるとでも」
「思ってませんよ!」
全てをものともせず進撃してくる。回避できただけマシ。
フロアの壁にぶつかる寸前に体を大きく捻り、覇気の乗った刀をこちらに投擲する。
俺の胴体を分断するのに十分すぎる破壊力を秘めた死のブーメラン。
「大車輪なんてどうでしょうか」
「使い方!ワイルドすぎだろ!」
「徒手空拳になりましたよ。拳と脚で語り合いですね」
「やばっ」
リニアアクセル!完全にものにされましたね。なんなら俺より上手いぐらいだ。
たづなさんの蹴りがこちらを痛めつける。ストッキングエロいなーとか言ってる場合じゃない!
格闘技量はヤンロンの上だが、あり余る力が技量差を完全に無意味にする。
重たい、とにかく一撃一撃が重い。ガードした所が痺れる。
アルクオンやぺルゼインの一撃を遥かにしのぐ、もうどうしろと・・・。
「このまま終わってしまうんですか?」
「まだですよ!俺はまだ!」
「なら超えないと、待ってる人たちがいるんでしょう」
「そうですよ!必ずもう一度取り戻す!」
気持ちはまだ負けてない。
いける、もうちょっとでなにかが変わりそう。そうだ次へ進むんだ。
斬艦刀を拾うだづなさん、大きく上段に構える。あれはマジで殺しに来るぞ。
「さあ耐えてみなさい!斬艦刀・疾風怒濤!!!」
耐える?バカを言うな、あんなものまともに食らったら一刀両断どころか体が消し飛ぶ。
でもやる気になっていらっしゃる。
膨れ上がる覇気、振り下ろされる超重量の刀、真っ直ぐこちらを見据える瞳。
スラスターから大出量の覇気が漏れる。斬撃の威力と速度を上げる。
死ぬ。
これは躱せない、だったらどうする。止める?これを止める・・・。
覇気を全部回しても無理だ。今の俺じゃ無理だ。
俺だけの覇気ではこれは・・・。
なあ、クロ、シロ、皆・・・使ってもいいか?
せっかく集めた覇気、俺もちょっとだけ味見してもいいか?
俺の中では皆から集めた覇気、今も眠るクロとシロの覇気が混在している。
心臓の鼓動が聞こえる。俺のだけじゃない、クロとシロの鼓動。
重なる、混ざる、そして生まれ変わる。
いいんだな、ああそうだ、どんなに離れていてもずっと一緒だ。
斬艦刀がぶつかる。ああ本当に重たいな。
「・・・超えましたか」
バチバチッと体を駆け巡る雷。
振り降ろされた刀はクロスした俺の両腕がバッチリ受け止めていた。
「無傷で受け止めるとは、それが本来の覇気ですか」
「・・・わかりません。今、始めて見たんですから」
漂う粒子はそのまま、手足から噴出する覇気がいつもと違う。
腕と脚から漏れる覇気の形状は雷、全身を回る覇気が放電現象を引き起こす。
雷、俺にも属性が宿った。眩く輝き弾ける雷光。
「俺の愛バが引き出してくれましたよ!あなたに負けるなってねぇ!」
「互いに影響を与え合い強くなる。理想の関係ですね、あなたたちは」
たづなさん、待たせてごめんなさい。
「プラズマビュート!逃がすな!」
「っ!」
両腕から発生させた雷光の鞭!たづなさんが持つ斬艦刀をキャッチ。
引き寄せる。今度は絶対に力負けしない!
「くっ!覇気の性質変化だけじゃない、基礎能力そのものが跳ね上がった!」
「そのデカ物もらいます!」
巨大な刀身を包み込む雷光、力自慢のだづなさんの手から無理やりもぎ取る。
確かに力は強い、けどこの刀はやっぱりあなたには不釣り合いだ。特に柄の部分がでかすぎ!
引き寄せた勢いはそのまま、脚に覇気と集中、蹴り砕く!!!
「カウンター・ブレイク!!!」
零式斬艦刀、爆殺!
たづなさん、なに喜んでいるんですか?
もうちょっと付き合ってください。
「いきます!必殺のコンビネーション」
高速移動で接近、だからなんで嬉しそうなんですか!
「せいっ!」
左回し蹴り!
「はあっ!」
右後ろ回し蹴りで吹っ飛ばす!
「飛べぇ!」
リニアアクセル最大出力!先回りしての蹴り上げ!俺もジャンプする。
「決めるぞ!」
両足から噴出する覇気をで真横に加速!
「レイジング!」
覇気は雷光となって更なる加速。
その飛び蹴りは稲妻、相手を粉砕せんと迸る。
一切手加減なしの全力!これが今できる俺の全て。
「ストラァァァイク!!!」
避けもしないたづなさん。大きな衝撃と音を立てて壁にぶち当たる。
最後まで笑っていたな。
雷が消える、し、しんどい、もう限界だ。
女性相手にここまでやったのは初めてだが果たして。
「はぁ、はぁ・・・たづなさん、生きてますよね?・・・たづ」
パチパチパチと場違いな音が聞こえる。
拍手しながら現れたたづなさん、口元から血が出ている。やり過ぎた?
「よくできました。ええ、本当によくできました!」
心底嬉しそうに褒めてくれる。なんか怖い。
「こんなに痛い思いをしたのは久しぶりです。肋骨が折れたかもしれません」
口元の血を拭う。痛がっているようには見えない。
「期待に応えてくれた、成長を実感できた。流石です、それでこそ私の」
私のなんですか?言えよ。
「あなたに敬意と感謝を、頑張ったご褒美に見せてあげますね」
「その姿は」
帽子を脱ぎ捨てる。空気が変わる。現れるのは美しい毛並みの耳と尻尾。
知ってる。成長したその姿、俺を見る眼差しはあの時と変わらない。
「トレセン学園次期理事長、秋川やよいの愛バ」
「"超級騎神"トキノミノル」
「覚えていますか?マサキ?」
そうだミノルだった。
「この姿になったら1度出してしまわないと・・・ちょっと失礼」
記憶の整理がまだ不完全なのに、なにをする気ですか?
待って!せめて俺が避難してからに・・・。
「くしゅん!」
可愛らしいくしゃみによって放たれたのは破壊の力。
その時、地下30階フロア全体が光に包まれ爆散崩壊した。
豪快ですね。