俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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たづな

 メジロ家に雇われてからしばらく経った。

 悪は次から次へと湧いて出る。倒しても潰しても殺しても、消えない。

 憎まれっ子世に憚るとはよく言ったものだ。

 悪を断つ剣が眠りにつく日はいつになることやら。

  

「師匠、今日も悪をなぶり殺す技を教えて下さい」

「たづな・・・前にもいったじゃろうが、抜き身の刀はすぐに折れてしまうぞ」

「そんなに鋭利じゃないです。私もかなり丸くなりました」

「心配しておるのじゃぞ、お前さんはもっとゆとりをもつべきだ」

「うるさいジジイだな・・・特養に放り込みますよ」

「だずな!!!」

「はいはい、すみません。修練しましょうそうしましょう」

「まったくお前という奴は」

 

 このジジイじゃなかった、素敵なお爺様はリシュウ・トウゴウ。私の師匠なのです。

 薩摩示現流と呼ばれる剣技の達人で師範号を持ち。

 剣技は常人の域を超えており、仕込み杖でリアルに銃弾を弾く。

 テスラ・ライヒ研究所に技術顧問として在籍し、剣撃モーションデータの作成とそれに対応した剣の開発を担当するスーパーおじいちゃん。

 斬艦刀というバカみたいな大きさの刀造りに今は夢中になっているらしい。

 私のシシオウブレードもこのジジイが造った。

 ウォルターに紹介されてからというもの、私はジジイから剣技を学んだ。

 力任せに振り回すばかりの私に掃除、座禅、滝行、写経など精神修練を課してくる。

 出家する気はないです。でも修業僧たちとした山籠もりは楽しかった。

 

「ウォルターの奴め、とんでもない娘を押し付けたもんじゃ」

「師匠、斬艦刀完成したら私に下さいね」

「お前さんには過ぎた得物じゃわい」

「殺してでもうばいとる」

「舐めるなよ小娘!その性根を叩き直してやるわ」

「丸腰の10歳児に襲い掛かるジジイ・・・これは酷い」

「こんな奴、弟子にするんじゃなかったわい」

「後悔先に立たずwww」

「やかましい!」

 

 師匠がいい感じにハッスルしたので修練開始。

 最初はお互い徒手空拳、途中から屋敷にあった得物で切り結ぶ。

 あ、折れた。どんな業物でも私が使えばすぐにこうなる。

 シシオウブレードもマメに手入れしないと同じ運命。

 お気に入りの刀を折られてますますハッスルする師匠。

 本気で怒ってしまいましたか・・・。楽しくなってきましたね!

 

 はは・・・本当にお強いですね・・・容赦ない所が素敵です。

 もうボッコボコですよ・・・やってくれましたね師匠・・・今度、盆栽を破壊してあげます。

 

「反省したか?」

「申し訳ありませんでした師匠。これからは心を入れ替えて・・・ざっけんな!ジジイ!ちょっと強いからっていい気になるなよ!」

「よし尻尾を出せ、切り落としてやる!」

「それだけはご勘弁を、口が滑っただけです。あなたの前では正直でいたい弟子でした」

「もう少し大人しい子になってくれんと、こっちの身が持たん」

「私が乱暴者なのは師匠の教えの賜物です」

「なんでちょっとわしのせいにしてんの!?」

「興奮しないでください。また血圧が上がりますよ」

「こいつは・・・たづな、電話が鳴っとるぞ」

「はいはい、ちょっとお待ちを・・・・・・ええ、はい、師匠の所です。はい、はい、わかりました」

「仕事か?」

「そのようです。つかの間の休日も終わりですか」

「剣は抜かずに済めば無事太平・・・」

「抜いたからには一刀両断でしょ。わかってますよ」

「まだ時間があるじゃろう、屋敷の片付けをしてから行け」

「すぐ迎えが来るので無理です。では師匠、またお会いしましょう」

「あ、こりゃ!やれやれ、台風のような子じゃ」

 

 師匠の屋敷から脱出。

 片付けなんてやりたくない。

 メジロ家でメイドの真似事をしたとき「お願いだからなにもするな!」と泣かれたんだぞ。

 家庭的なスキルは弟と一緒になくしてしまった。

 

 エンジン音が近づいてくる。迎えがきたようだ。

 大排気量の大型バイクが私の横に停車した。

 ライダースーツを身に纏った長身の男がヘルメットを脱ぐ。

 金髪ロン毛、少女漫画に出てくる貴族の美男子。キザな物言いや仕草も様になるイケメン。

 

「トロンべよ。今日も元気そうでなによりだ」

「出たな!トロンべ狂い」

 

 エルザム・V・ブランシュタイン。

 元DCの凄腕特殊戦闘員。どんな武装も人並み以上に使いこなし、銃火器の腕前は超一流。

 負けはしたものの、単身で天級騎神とやりあったとの噂もある。

 現在はメジロ家の起動部隊から派生した特殊戦技教導隊所属、私の同僚だ。

 一見、完璧超人にも見えるこの男には困った癖があった。

 

「任務だぞトロンべ。さあ、トロンべに乗り給え」

「たづなです。バイクもトロンべなんですね・・・頭痛い」

「乗ったな、では駆け抜けろトロンべよ!」

 

 トロンべ狂い。コレさえなければと皆さんおっしゃいます。

 この男は黒髪のウマ娘と黒い乗り物(バイク、自動車、航空機、その他)をなぜかトロンべと呼ぶ。

 数か月前の任務時、部隊のメンバーが奇跡的に全員黒髪のウマ娘だったことがあった。

 作戦立案中からトロンべがゲシュタルト崩壊を起こし、連絡系統が混乱したため部隊編成をやり直したのは今でも語り草だ。

 

「だづな?トロンべはミノルではなかったのか」

「この間、ばば様から名前をいただきました。これからは駿川たづなでお願いします」

「了解したぞトロンべよ」

「全然わかってないですね」

 

 騎神にとって真名を隠し別の名を名乗るということは複数の意味がある。

 操者となる人間が仮契約を申し込むため、本来の名を伏せる事で力をセーブするため。

 名前をつけた人や組織の命令に従うという騎神から意思表示。

 

 メジロ家のご頭首ばば様よりこの名前を授かりました。

 まあ、雇い主でもあり私の恩人でもあるので了承するのは構いません。

 トキノミノルの名は大事な所で披露しましょうか。

 駿川たづな(ハヤカワタヅナ)として心機一転頑張ります。

 

 メジロ家機動部隊大7支部。私の寝床、任務次第でどうせすぐ引越する。

 そこから輸送機に乗って指定された作戦地帯に向かう。

 部隊員から渡されたタブレットにウォルターが映る。別の場所から私たちに指示を出すのだろう。

 

「ウォルターさん本日のゴミはどんな様子でしょう?」

「少々でかい群れだ。お前が追っている例の奴で間違いない」

「それを聞いて俄然やる気でました」

「エルザムは地上に展開済みの部隊と合流してゴミを一ヶ所に纏めろ」

「承知した」

「たづなはいつもやつだ」

「それしかありませんね、乗り心地は改善してくれましたか?」

「贅沢を言うな、設備改善の予算が欲しければもっと働け。以上だ検討を祈る」

 

 通信が切れた。酔い止め持ってくれば良かった。

 仕事の前にお菓子を少々・・・うまーい!\(^_^)/リンゴのタルトしかも手作り!

 料理とお菓子作り等、調理全般が得意なエルザム。また腕を上げたな。

 メジロ家のお抱えシェフも唸るその手腕!流石です。

 私も含めこの男に機動部隊全員が餌付けされている。

 

「隊長、もうすぐ到着しますよ。お菓子食べるのは帰ってからにしてください」

「この間みたいに舐めプして、尻尾の毛を切られたりしないでくださいよ隊長」

「はい隊長、この発信機は壊さないように、隊長の位置を特定するものですからね」

 

 隊長・・・この呼び方は慣れない。

 

「皆さん・・・10歳児に隊長は務まりませんと何度もいいましたよね」

「そんなことはないぞトロンべ隊長。あなたは立派な戦士だ」

「そうですよ隊長!」

「隊長!今日もカワイイ!」

「隊長!踏んでください!見下した目で罵ってください!」

「落ち着け!それは協定違反とみなすぞ!ミノル改め、たづなファンクラブから抹消されたいのか!」

「「「「「「「「隊長!!隊長!!隊長!!!」」」」」」」」

「鎮まれ!こんな狭い所で暴れるな!あ、私の食べかけを奪い合うのはやめて!」

 

 元気良すぎる男女の声。こいつら全員年上なんです。

 くじ引き決めたのではなく、私が隊長になったのは仕組まれたことだったと最近知った。

 

 働き始めた頃はみんな私を怖がった。

 戦場で暴れ回る私に味方すら恐怖を抱き、どこにいてもいつも1人。

 家族を失って自暴自棄になり、他者を拒絶し心を閉ざしていた私にも原因があるのはわかっている。

 ウォルターさんや一部の物好きな人たちが私を気にかけてくれなければ、ボッチ街道まっしぐらだったことだろう。

 成り行きで隊長になってしまったこの部隊は、私のことを好きだと言う物好きばかり。 

 要は変人の集まり・・・ありがたいことです。

 部隊員以外のメジロ家の方々も私に対する接し方が変わってきたように感じます。

 私も少しは丸くなるってもんですよ。めざせコミュ障改善!トラウマを乗り越えろ。

 

 戦場は膠着状態が続いていた。

 とある組織の秘密基地、メジロ家に発見され起動部隊を送られたものの。

 戦闘用AMや非合法な各種兵器類、多数の構成員による物量で激しく抵抗する。

 ここにきてメジロ家の部隊が後退、籠城を決め込む構えをとる悪党は歓声をあげる。

 

「ざまあみやがれ!見ろメジロ家の犬どもが尻尾を巻いて逃げていくぞ!」

「はっはー!この基地の戦力を甘く見やがったな!」

「ここが簡単に落とせるわけないだろうがバカめ!」

「悔しかったら天級騎神でも連れてくるんだな!まあ無理だろうがな」

「よし、お前ら必要なブツだけ詰め込んで脱出の準備だ」

 

 メジロ家の起動部隊は退けた。 

 後は準備が整い次第こことはおさらばだ。

 

「口ほどにもなかったな、正直ガッカリしたぜ」

「ヤバさで言えばサトノ家の方が上だな。低級の騎神しか揃えられないようじゃダメだ」

「気に入らないな」

 

 男たちがメジロ家に思い思いの悪態をついているなか、威圧感のある声が響く。

 ウマ娘だ、にじみ出る殺気と覇気を隠そうともしない。

 その立ち振る舞いや顔つきから多くの戦場を渡り歩いた猛者だとわかる。

 

「本当にこの程度か?聞いていた話と違うぞ」

「先生のことを知ってあいつらビビったんじゃないですか?」

「先生はやめろ、私はただの傭兵だ。戦場と金がありゃあ満足さ」

「アンタは俺たちの切り札だ、頼んだぜ騎神のねーちゃん」

「報酬分は働くさ・・・どうしたメジロ家、来いよ!いるんだろ!私を楽しませてくれよ」

 

 メジロ家機動部隊陣地

 

「こちらエルザム、舞台は整った。さあ主役の登場だ!今こそトロン・・・」ガチャ切り

「隊長聞きました?」

「はーい。やっちゃってください」

「どうかご武運を!あ、ゲロはもう吐かないでくださいね」

「善処します。カウント合わせ・・・5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・0!行ってきます!」

「発射!!!」

 

 悪党サイド

 

「先生!何かがこっちに向かってきます!」

「ミサイル?特殊徹甲弾の類か、まあいい、撃ち落としてやる!」

 

 騎神の両腕から放たれる覇気弾!通常のミサイル兵器であれば今ので無力化されただろう。

 命中する。しかし、その弾頭は少しグラついただけで真っ直ぐこちらに突き進む。

 

「ちっ!対覇気用の防御装甲!お前ら下がっていろ!突っ込んで来るぞ」

「なんだって!おい爆発したらどうなるんだよ!」

「狼狽えるな!私の後ろにいれば問題ない!フィールドぐらい張れる」

「流石先生だ!」

 

 激しい音と衝撃、多くの人員とAMたちが配備された広場の中心に弾頭が突き刺さる。

 爆発は特に起こる様子はない・・・。

 遠巻きに見ていた構成員たちは首を傾げる。警戒をしたまま武器を構え近づこうとした。

 

「ウェエエエ、何回やっても慣れません。ウプ・・・ギモヂワルイ」

 

 弾頭の中から口を押えた少女が出てくる。

 場違いな光景に周囲は怪訝な顔をするが、傭兵の騎神だけは警戒心を上げる。

 

「マサキ、お姉ちゃんに力を貸して戦場のど真ん中で吐きたくは・・・オロロロロロ~」

 

 こちらを無視して少女はゲロをする。

 しばらくえずいた後、汚れた口元を拭いて用意していたボトルから水分補給。

 

「何者だ!」

「動くな!動けば射殺する」

「いい、お前らは下がれ」

「しかし先生」

「下がれと言ったんだ!死にたいなら別だがな」

 

 少女の格好は白を基調とし蛍光色のロゴや模様が入った戦闘服。

 ローマ字で描かれたオシャレなデザインの文字はME・ZI・RO

 短パンにポケットが沢山ついたアーミーベスト、ノースリーブのインナー。荷物が入るボディバック。

 そして体に不釣り合いな大きさの刀を背負っている。明らかに異質。

 

「お前は人間じゃない、騎神だな?」

「え、はい。一応騎神です・・・あなたもですか?」

「そうさ、ここの奴らに金で雇われた傭兵崩れだよ」

「あーあー、警告~警告します!皆さんよく聞いてください~」

「なんの真似だ?」

「1度しかいいません。すぐに武装を解除して投稿してください」

「おい」

「これはお願いではなく命令です。後ちょっとだけ待ちます」

 

 シーンとなる周囲そして。

 失笑と共に下衆な笑みを浮かべてヤジを飛ばす。

 

「おいおいおい!メジロ家は本当にどうしちまったんだwww」

「こんなガキを単身送り込んで何ができるってwww」

「かわいそうになぁwwwメジロ家に利用された騎神の末路だwww」

「ガキが戦死するまで奮闘したという実績が欲しいのか?いいスケープゴートだな」

「「「「「「「ぎゃははっはっはははははっはははは!!!」」」」」」」

「単身で送り込まれる騎神のガキ・・・まさか・・・こいつ」

 

 はい!いつものパターンです!

 精々笑ってろ、そうやってこちらを舐めてくれれば仕事がしやすい。

 

「もういいですね・・・ではでは~・・・お?」

「だりゃぁああ!!!」

 

 唯一油断してなかった騎神が殴りかかってきた。おう!これはこれは。

 

「おい!バカども、気を抜いてんじゃねぇ!こいつはメジロ家の"暴君"だ!」

「その呼び方嫌いです」

 

 悪党どもに広まってしまった教導隊員の二つ名。

 ウォルターさん"死神"エルザム"黒旋風"だったかな。

 そして私は"暴君"・・・完全に日頃のおこないのせいですね。

 

「タイラント?あれが・・・」

「教導隊の使用する悪夢の生体兵器」

「メジロ家が封印を解いた破壊神」

「私はどこにでもいる10歳のウマ娘なのですが」

「そんなわけ、ないだろうがぁ!!!」

「おっとっと」

「なにをやっている!さっさと攻撃しろ!死にたいのか!」

 

「私の名前は駿川たづな悪を断つ剣です!」

 

 まずは雑魚を減らしましょうか。

 向かってくる騎神、モブ子でいいか。モブ子を躱して近くにいるAMの体を無造作に引きちぎる。

 驚いてる場合か?AMの一部を投げつけ怯んだ人間たち、抜刀!駆け抜ける!

 3人分の胴体が上下に分かたれた。どんどん行きます。

 

「攻撃!攻撃するんだ!」

「速すぎる!当たらない、AMを全て動かせ!」

「や、やられる。増援を呼ぶんだ!」

「ひぃこっちにき・・・あ・・・」

 

 何か言ってた奴の首が飛ぶ。

 うるさい!こいつら悪党は最期までうるさい。何もせず静かにしていれば殺さないのに。

 AMはあらかた片付けたか、えーと後は。

 

「調子に乗るなよ!暴君!」

「結構強い?めんどくさい」

「噂は聞いてるよ!これだから戦場はいい!たまに掘出し物とやり合える」

「はぁ・・・」

「どうした!私を楽しませろよ!」

「はぁ・・・」

「俺達には先生がついてるぞ!やれ!タイラントを殺せー!」

「はぁ」

 

 温度差を感じて欲しいです。

 私は別に熱くなってないし、むしろ冷めてるし。帰っておやつ食べたい。

 

「暴君、級位はどのくらいだ」

「級位?ああ・・・烈級です」

「試験監督の目は腐ってるね。お前はどう見ても轟級だろう」

「よくわかりません」

「だが残念だったね、私は超級騎神だよ」

「それって凄いんですか?」

「はっ!見せてやるよ絶対的な力の差を!ふぅぅぅ・・・はぁぁぁああああああ!!!」

「おわっと!?」

 

 始めて見た、ビーム?口からビーム吐いたよモブ子!ゲロビですね。

 こ、これが超級騎神の力?

 吹き飛ぶ、建物の壁を何枚も突き破っても止まらない体。

 正直感心した。覇気弾ではなく光線?熱線?にして打ち込むとは、口からなのは趣味だろうか?

 

「や、やったぞ!先生がやってくれた!」

「あれが超級騎神の力か、凄まじい・・・基地の建物が倒壊したぞ」

「タイラントの奴もただではすむまい」

「蒸発したんじゃねぇの!案外あっけなかったな」

「フフッ轟級ごときで私の前に立つからだ。相手が悪かったね」

「一応死体を確認するぞ、もし生きていたら鉛玉でハチの巣にしてやる」

 

 聞こえてますよ。

 思ったより飛ばされたな・・・数が多いしめんどくさくなってきた。

 さっきの真似してみよう、確かこうやって。

 覇気を練る、集中、口から吐き出すイメージ、ゴジラの放射能熱線が理想だ。 

 もっともっともっと、上がってきたぞーーー!

 範囲は広く、威力は高く、まとめて消し飛ばすとしよう。

 仮想砲身固定!名前は・・・ハイパーブラスターなんちゃって。

 師匠なら超絶熱線砲とか言いそう。

 

「すぅぅぅうううう!!!・・・・」

 

 ヤッッベ!くしゃみでそう!

 

「へ、はっ、はっくしゅん!!!!」

 

 発射!

 前方の広範囲を高威力のビームが薙ぎ払う。

 私が突っ込んで壊した建物、AM、輸送機、たぶん人、モブ子、その他もろもろ全てが光を食らう。

 壊れる、吹き飛ぶ、消滅、死。

 最後の引き金がくしゃみだった事など知る由もなく消し飛ばされる。

 

「うっくしゅ、ぶえっくしゅ、あー鼻水・・・花粉症?そんな訳ないか」

 

 勢い余って耳と尻尾が出ちゃった。

 普段は覇気の制御を兼ねて隠しています。

 覇気を溜めすぎるのも考え物だ、定期的に出さないと、ほら、こうなりますよね。

 予想よりでかいのが発射されたな。さて、モブ子はっと。

 

「生きてましたか。偉そうに級位を名乗るだけはありますね」

「ふ、ふざけんな・・・轟級ですらない・・・お前も超級かよ」

「知りませんよ。試験会場出禁になったんですから」

 

 騎神に級位がある事すら知らなかった。

 エルザムに連れられてこの前始めて試験を受けた。

 めんどくさいので参加者全員を殴って気絶させたら「級位はやるから帰ってくれ!」と泣かれた。

 烈級は合格しました。けど試験にはもう行くなとメジロ家からのお達しです。

 轟級以上の資格認定はウォルターさんや覇気に詳しいメジロ家上層部が直々にしてくれるそうです。

 今後に期待しましょう。

 

「あなたは超級内ランキング何位ですか?」

「は?知るかよ!だが超級とやり合って負けた事は無い」

「天級とは?」

「あいつらはもう騎神じゃない、人の形をした超規模の自然災害だよ!挑む事すらバカバカしい」

 

 天級>>>超えられない壁>>>超級ですか。

 

 超級を何人倒しても天級に届くとは限りませんね。

 

「随分疲弊してますが、まだやりますか?お仲間は・・・もういませんね」

「お前が消し飛ばしたからな、真名を名乗れ!」

「ん?その必要を感じませんけど」

「どこまでバカにするんだ!私は超級騎神・・・」

 

「パ、パーフェクト!!!」

 

 騒ぎを聞きつけ飛び出して来たのだろう。

 仕立ての良いスーツを着て金のアクセサリーをしたマフィアのドンっぽい奴がいる。

 資料で見た人相の悪い顔の男、今は私を見て青ざめている。

 このバカげた組織のトップ。

 

 それより、そんなことより、今この男は何と言った、私を何と呼んだ。

 見つけたぞ!5年ぶりだ!ようやくだ、こいつが、元凶か!!!

 

「引っ込んでろバカ!出てくるんじゃない!さあやるぞ暴君!わたし・・・」

「くそ邪魔」

「へ・・・あ・・・」

 

 超級(笑)ぎゃーぎゃーやかましいので黙らせる。頭を三分割したのでもう静かになるだろう。

 

「ひぃ!ひぃいいいいいいい!!!」

 

 逃げるなよ。わざわざ会いに来てやったんだぞ、歓迎しろよ。

 5年前はあんなに私を欲したじゃないか!忘れたのか?忘れさせるものか!!!

 

 復讐は何も生まないだと、わかってないな復讐は何かを生むためにするんじゃない。 

 復讐すらできないようでは前に進めないからやるのだ。

 これはやったことへの清算、けじめだよ。大人なんだから当然わかるよね。

 

 

「なんだ、まだ殺してなかったのか」

「来たんですかウォルターさん」

「が・・・げふ・・・」

「喋ってもらわなければならない事がありますからね」

 

 アースクレイドル襲撃事件。

 複数の組織の思惑が絡んだこの事件を起こした悪をずっと探していた。

 丁寧に1つづつ潰していく。

 クレイドルの技術を狙った奴、メジロ家への意趣返し、クレイドルの支配を望んだ奴。

 そして私を狙った奴、皆殺しにしてやった。

 あの時、家族を殺した武装集団を派遣したのは目の前のこいつ。

 

「結局お前は私の力じゃなくて、私を別の所に売った金が欲しかったんだな」

「そ、そうだ!あいつら目玉が飛び出るほどの大金を用意したんだ。あれだけの金を見せられたら誰だってやったはずだ!」

「それで、買取業者はどこのどいつだ」

「し、知らねぇ。だがあれはDCじゃない、奴らの大半はウマ娘だったんだ!」

「ウマ娘が同族を買うだと?」

「天級の卵を集めるとしきりに言っていたんだ!それ以外は知らねぇ!」

 

 嘘は言ってない。

 顔面を手加減しながらボコボコにしてやっただけでベラベラよく喋る。

 金のため・・・こいつの遊ぶ金欲しさに・・・クズが!

 

「もういい帰る」

「いいのか?両親の仇だぞ」

「組織は潰した、仲間は誰1人残っていない。こいつはもう終わり」

「甘いなゴミ掃除は徹底してやれと教えただろう」

「後は任せます」

 

 くだらない、こんなくだらないことで人は誰かを不幸にする。

 

 私と弟を襲った悲劇、それよりも酷い現場をいくつも見た。

 家族を友を夢を失い泣き叫ぶ人々、それを糧に欲望を叶える悪党ども。

 世界はマジで残酷だ。

 

 これで私のけじめは一段落。

 その奥に潜む闇はまだ遠い、これからも悪を断つ剣は必要だ。

 帰ろう・・・帰って、また鍛え上げるのだ、己という最強の剣を。

 

「くそがぁ!!くたばりやがれぇえええ!!!」

 

 ゴミのトップが最後の意地を見せた。

 背中を見せた私に隠し持っていた銃を向ける。

 

「・・・え」

「こんな奴連れてかえりたくない、ここで処分しよう」

「う、腕がぁああああああ!!!」

 

 ウォルターさんの鋼糸が銃を持った腕を切断した。

 オリハルコニウム製のワイヤーを使った曲弦糸、お見事です。

 

 腕を失って喚き散らすゴミになにかの液体をかける。

 咥えていた葉巻を手に持ち、投げつける。

 

「汚物は消毒するに限る」

「ぎゃあああああああああああ!!!!!!」

 

 火だるまになったゴミは少し暴れた後動かなくなった。

 肉の焼ける不快な臭いを残して

 

 あーあー今夜はステーキの気分だったのに・・・エルザムにメニューを変えてもらおう。

 

 

 更に時間は経過する。

 弟を孤児院に預けて10年の月日が経った。

 

 あれからも私はいろいろ頑張った。

 超級騎神の資格も取ったし、家事だってするようになった。

 師匠とは今に修練を続けている。最近は落ち着いてきたと褒められる。

 ウォルターさんが教導隊を辞めた、なんとメジロ家の執事になった!

 執事服www似合わねーwww。耳を切断されそうになったので土下座した。

 エルザムがどっかに行った。美食とトロンべを求める探求の旅に出るのだとか。

 勝手にやってろ。

 

 15歳になった私にはめんどうな試練が待っていた。

 最近、よくない視線を感じる。これは私を慕う部下たちから向けられるものに似ている。

 何と言いますか、下心丸出しの視線。私を女としてみてるのか?

 交際や結婚を申し込む輩もいる。女性からもくるから困ったものだ。

 そして厄介なのが愛バとして契約して欲しいというもの。

 戦力の更なる増強のためメジロ家でも推奨している契約・・・お断りします。

 

 私は1人で暴れるのが性に合っている。

 サポートは大歓迎だが誰かが隣に立つのは邪魔でしかない。

 それこそウォルターさんがやエルザムぐらいの実力がなければ無理無謀。

 男女交際も操者と愛バの契約もいらないっス。

 そうだな。今の仕事を辞めて金持ちの秘書でもする、その後なら考えてもいい。

 悪を断つ剣は一生継続する所存です。

 

「ラ・ギアスですか?」

「そうです。そこにいる天級騎神に会って来てほしいのです」

「ばば様直々の命令なら私に拒否権はないです。しかし、なぜ私なのでしょうか?使者として適任な人材は他にもいるでしょうに」

「メジロ家の騎神で天級に最も近いのはあなただと思っていますよ。舐められないように最大戦力を投入するのは当たり前でしょう」

「買い被り過ぎですよ、私クラスの騎神はこれからどんどん誕生します。新しいメジロを担うお嬢様たちがその証拠です。かなりの才能を秘めているとお聞きしましたが」

「あの子たちがものになるには十数年かかります。今はあなたがたよりですよ」

「わかりました。私はなにをすれば?ご挨拶だけでいいですか?」

「あなたには伏せていましたが5年前、天級の1人が養子を迎えました。その子の様子を探ってほしいのです。問題があればメジロ家で引き取ります」

「ばば様が気にする子供、よほどの覇気の持ち主なんでしょうね」

「出発は明日です。準備を怠らないように、あなた1人ですからね」

「まあ、ゾロゾロ行っても迷惑でしょうし」

「あなたにとっても無関係ではありませんよ。これがその養子に関する資料です」

「???」

 

 最後にニヤニヤしたばば様。怪しいないったい何を企んでいるのやら。

 天級騎神かぁどんな人なんだろう・・・私より弱かったらブチギレるかもしれない。 

 逆恨みだが天級の存在が私の運命を狂わせたとも言える。

 わかってる悪いのは力を悪用しようとした奴らだ、天級騎神は善人だと聞いている。

 私情は捨てよう。任務に集中するべきだ。

 

 私室に戻りちょっと休憩。ばば様との謁見は気疲れする。

 冷蔵庫からお気に入りのカフェオレ(コーヒー牛乳激甘)取り出す。

 渡された資料をめくりながらカフェオレを口に含む。

 

「ブッゥゥゥウウウウウウウウーーー!!!!!」 

 

 勢いよく全部吐いた!!!!

 

「うぇ、ゲホゲホ・・・ガホ・・・そ、そんなことって・・・ばば様、アンタって人はぁ!!!」

 

 カフェオレまみれになった資料に記された情報を今一度確認する。

 間違いない、あの孤児院。

 写真・・・5年前のあの子の写真・・・大きくなって。

 お父さん?いや、お母さんに似ているか、髪の色なんてそのまんまじゃないか。

 名前を確認・・・やっぱりそうだ。

 

 10年経った、この写真よりも成長していることだろう。

 いいのかな会っても、怖がられたりしないだろうか?

 これは仕事なんだから仕方がないよね。

 私情を捨てると決めたばかりなのに大丈夫か。

 

 これは仕事仕事仕事任務任務任務。

 天級の力と育児をその目でしっかり確認しなければ!

 今まで受けた任務史上最重要案件だ!

 この任務は絶対にやり遂げてみせます!!!

 

「待っててねマサキ」

 

 私の名前は駿川たづな、真名トキノミノル。

 

 悪を断つ剣はちょっとお休み。1人のお姉ちゃんに戻ります。

 

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