龍を拾って家に帰ったらなんか変なのがいた。
「それでよ~私の雇い主がお前に興味持っちゃった訳」
「それがファイン家か」
「正確にはそこの頭首様だ。お前の力になってやれと頼まれたんでな」
「なんでファイン家頭首が俺に味方する?」
「期待してるんだとよ。まあ、お前がいるだけで救われている奴がいるってこったな」
「わけわからん」
「今はそれでいいんだよ。これからじっくり相互理解を深めて行こうぜ」
「信じていいのかよ、不安だ」
ファイン家とゴルシにはまだ秘密があるみたいだ。
隠し事は気になるが、他にも聞きたいことがある。
「いつから家で生活している?そもそもなんでここにいるんだよ」
「一週間ぐらい前からかな、ここで待ってりゃお前の方から来るかな~と思ったら見事的中!」
「セキュリティ・・・」
「そんなもんでゴルシ様が止められるとでも?」
「うん、思わない」
ゴルシの読み通り俺は帰ってきてしまったのか。
次はこいつのことだ、頭にいる龍を捕まえて手の平に乗せる。
「この龍がどういう奴か知ってるなら教えてくれ」
「ちょっと見せてくれ」
「キシャアッーー!!」
「メッチャ嫌われてるし」
「なんだよ、機嫌直せよ~。触るぞ・・・やめろ噛みつくな!」
ひっくり返したり指でつついたりして何かわかるもんかね。
俺が我慢してくれと言ったので嫌がりながらも龍は大人しかった。
「龍王機なのは間違いねぇ、でも知ってるのとはちょっと違う、合体機構がオミットされてんのか」
「どうした?何かわかったか」
「ああ、こいつは四神、青龍の超機人で名前は龍王機だよ」
「四神なら知ってるぞ、青龍、白虎、朱雀、玄武。中国の神話で天の四方の方角を司る霊獣だ」
「そうだ。超機人ってのは、まあスーパーロボットみたいなもんだな。生体部品ついてるけど」
「龍王機かぁ~。やっぱりお前は古代人が造ったとんでも兵器ってことでいいのか?」
「キュ~」
「えらい懐かれてるな、本来は主人にしか心を開かないはずだったのに」
「もう一体の白虎も探さないと、なんとかテスラ研に行ってもらわねば」
「虎王機もいるのか、バラルの活動がもう始まっている・・・しかし、青龍の様子を見る限りはそうでもないか」
「ちょくちょく不穏な単語出すのやめてくれない」
「悪いな、いろいろぶっちゃけたいのはやまやまだが、こっちも情報の整理が追い付かなくて」
「なんか大変そうだな。とりあえず青龍の主を探そうと思う、上手くいけば覇気をもらえるかもだし」
「もう暗くなるし明日にしろ。今日の所は泊まっていけよ、今ならゴルシちゃんが遊び相手になってやるぞ」
「泊まるも何も、ここは俺の家だっつーの」
飼い主探しは明日にしよう。
お前もそれでいいか?と聞いたら、青龍は首を縦に振った。
「せっかくだからゲームで対戦しようぜ」
「いいけど、家にスマブラとかないぞ」
「このデッキを貸してやるよ」
ゴルシが俺にカードの束を渡してくる・・・遊戯王、お前デュエリストだったのか。
「ちなみに渡したデッキの方が強いからな。大会には出られない程の凶悪デッキだ」
「ちょっと待ってくれ、えーとルールは」
「そんなんやりながら覚えていけよ、さあいくぜ城之内君!」
「安藤ですけど」
丁寧な解説付きで意外と楽しめました。
それにしても俺が知っていた遊戯王はどこへ行った、新しい召喚方法がさっぱりわからん。
俺の知識はエクシーズ召喚でストップしてるから仕方がない。
あの禁止カードが入ってますよ、キモイ顔の壺が3枚も。
これで大会に出れるわけねーだろ!そのデッキ使って負けた俺は虫野郎以下です!
遊び疲れたので風呂に入る。一番風呂はゴルシが譲ってくれた。
青龍がついてきたので一緒に入浴。
「超機人って風呂入るんだ・・・」
「キュ」
「錆びたりはしないってか、不思議パワーでなんでも解決すごいですね」
風呂から上がると「じゃあ入ってくるわ」といってゴルシが風呂へ。
おい服は脱衣所で脱げや!スタイルいいから気になるんだよ。
風呂場から聞こえてくる鼻歌をBGMに俺はパソコンを立ち上げる。
良かった、特に弄ったりはされてないようだ。
カメラをONにしてタキオンに連絡をいれる。
画面に見知ったウマ娘の顔が映る、リモート会議一回やってみたかったのよ。
「やあカピバラ君、3日ぶりだね」
「どうも音速の貴公子さん。三重苦を背負ったものです」
「な、なんのことやら。ははは・・・リモートだけど私の土下座が見たいかい?」
「タキオンさん何をして、あ、マサキさん」
「ようカフェ。相変わらずカフェイン取ってるか?」
「最近はノンカフェインのコーヒーも飲みます。しまったな、アルダンさん今ちょうどいません」
「忙しいなら無理に呼ばなくていい。報告だ、青龍を見つけた。ほら、おいで」
「キュ~」
「え、ちっさ」
「カワイイ、でもその子が本当に例の生体兵器ですか」
「今は縮んでいるが元々はでかかったんだぜ」
「なんと体の縮小と拡大を可能とする特殊能力か、他にもあるんだろ!いいね!ああ、隅々まで調べつくしたいよ」
「キュ」
「やめろ!青龍が怯えている。こいつを解剖するとか言ったら許さんぞ」
現状を報告、飼い主と白虎も探してみることとゴルシの奴がいたこと。
「了解だよ。首尾よくいけば白虎共々こちらに来てくれるんだね」
「あんま期待すんなよ。飼い主が拒否すればそれまでだ」
「ゴールドシップ、それにファイン家ですか。面倒事になってきているような」
「やっぱりそう思うよな。もう~俺は愛バたちとまったり幸せになりたいだけなのに」
「大変だと思うが、その未来を掴むためにも頑張ってくれ。こっちもできる限り応援する」
「ありがたいね。じゃあそろそろ切るわ、アルダンやレーツェルさんによろしくな」
「また連絡してください。待ってますよ」
リモートを終えるとちょうどゴルシが風呂から上がってきた。
「なんだ?エロサイトでも見てたのか」
「テスラ研に連絡していただけだ。エロサイト?愛バを手に入れてから興味が無くなったな」
「自身のロリ魂に遵ずるか、恐れ入ったぜ」
「それ褒めてんの?ちょっとバカにしたよね」
「なあ今までどんな人生だったか話してくれよ」
「なんで今日あったばかりの怪しい奴に人生を語らねばならぬのですか?」
「いいじゃん、自慢の愛バや家族のことを語ってくれよ」
「お前のことを教えてくれるんならな」
「ん~・・・まあいっか、いずれは話すんだし。よしいいぜ!まずはそっちからな」
「嘘ついたりするのは無しな。やっぱやめたとか抜かしたら、元サイズの青龍と一緒にお前を泣かす」
「キュー」
「そいつは勘弁願いたい」
俺の人生を知りたいとか、よくわからん奴だな。
まあ家を不法占拠されたとはいえ、こいつが悪い奴じゃないのはわかっている。
だからちゃんと話してやる、母さんや姉さん、クロとシロのこと。
細かい所は端折るつもりだったがゴルシは詳細を聞きたがった、お蔭で姉さんの暗い過去まで軽く話すことに。
ごめん姉さん。不用意に話していい内容じゃなかった、後で謝ろう。
ゴルシは俺が話している最中、一切茶化したりせず真剣に聞いていた。
「で今に至ると、こんなところだな」
「天級騎神にパーフェクト、愛バはアレだし。クロスゲートにアインスト・・・マジでどうなってんだ」
「おーい。何か気になることがあったか」
「気にならねぇ所の方が少ないぐらいだ。これはもう確定だな」
「今度はゴルシ、お前の番だぞ」
「わかってるよ。最初に言っとくぞ、今から見せるのは本当にあったことだからな」
「見せる?話すんじゃなくてか」
「ああ見てもらった方が早い。質問は後で受け付けるからしっかり見てくれ、私が生まれた世界に何があったのか」
「どうやって何を見せるつもり」
「いくぜ!秘技ゴルシちゃんメモリーズ!」
「ちょ、なに、がっ!」
こいついきなり頭突きかましやがった!
石頭め・・・モロに入った・・・ヤバい・・・頭がクラクラする・・・あ、無理。
「いい夢見ろよ・・・たぶんショックを受けると思うが耐えてくれ」
ゴルシの声が聞こえた後、俺の意識は落ちて行った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
明晰夢というやつを見ている。
ここが夢の中だとはっきり認識できている。
ここは俺が見ている夢じゃない、ゴルシが見せている夢・・・違う記憶だ。
ここはどこだ、軍事基地のような施設で大勢の人が慌ただしく動き回っている。
警報が鳴り響く施設内、大型の輸送艦が多数配備され、そこに大量の物資や人員が詰め込まれていく。
場面はその輸送艦群の先頭に陣取っている艦のブリッジに移る。この艦と何隻かは戦艦だ。
「オルゴン反応接近中!その数、クソっ!多すぎる!」
「人員と物資の搭載が完了した艦から順次発進して、私のことは待たなくていいよ」
「了解!クロスゲート起動、転移可能域まで残り10分です」
「10分か・・・それだけあれば」
「更なる反応!これは・・・ヤツです!"ベーオウルフ"が来ました!!」
「やっぱり来ちゃうよね、逃がす気はないってことかな」
「頭首様・・・」
「ごめんねみんな。私と一緒に死んでくれるかな?」
「我ら一同、既に覚悟はできております」
「あなたを置いて逃げるなんてできません」
「最期までお供します」
頭首と呼ばれた少女に艦内のいたるところから「了解!」の声が飛ぶ。
何が起こっているのかわからんがこの人たちは死ぬ気だ。
クロスゲートと言ったか、不思議なもんで俺が見たいと思ったらそこに場面が移る。
輸送艦群の前方に巨大なリング状の構造物があり怪しい輝きを放ち出している。
俺の知っているゲートより遥かに大きいサイズだが間違いない、クロスゲートだ。
「異世界への脱出、ネバーランド計画に中止はないよ。この旗艦のみを残して、他は出発を急いで」
「おっとそいつはダメだぜ。お前もさっさと行っちまいな」
「ゴルシちゃん!?何やってるの!!」
突然外部から通信が入る。この声ゴルシか。
基地から離れた場所に1人立ち、遠くを見据えている。
腕部に刃が取り付けられた青い武装を纏ったゴルシ。
その雰囲気は俺の知ってるふざけた感じは鳴りを潜め、固い決意とギラついた戦意に溢れていた。
「そんなわかりきった事聞くなよ。あいつと決着つけずにこの世界とおさらばなんて無理だぜ」
「ゴールドシップ、今すぐ戻って!早く!もうすぐ転移が始まっちゃう」
「もう時間切れだ、おいでなすった」
何かが迫ってくる、あれはPTか?ゲシュペンスト大群。
でも何かがおかしい全身から溢れるように紅い結晶体がくっついている。
気のせいか、色は違うけどクロとシロの結晶に似ている。
「有人機のゲシュペンスト、中の人はとっくに同化されて手遅れか」
「まったくよう、触れただけで自分の手駒にしちまうんだから困ったもんだぜ」
「逃げる気はないんだね」
「お前は逃げろよ、必ず生き残れゴルシ様との約束だ」
「お礼は言わない、さよならも言わない、次に会ったら死ぬほどラーメン奢ってもらうから」
「向こう側に美味い店があるといいよなwww」
「ファイン家頭首からの命令です。ベーオウルフを足止めし艦隊が脱出するまで時間を稼ぎなさい」
「了解」
「すぐに追いかけてくるんだよ。待ってるから!」
「おう。早く行け」
ゲートが輝きを増し異世界への扉が開かれる。
艦隊は浮上を開始しゲートに向けて発進して行く。
1人残ったゴルシは彼方から迫り来る異形のPT部隊を見据える。
その先頭に一際異彩を放つ存在がいた。
!?!?!?
いや、まさかそんな。
そいつを見た瞬間、胸が締め付けられるような痛みが走る。
違う違う違う!あれは違う!あれは俺の愛バなんかじゃない!!!
全身が紅い結晶で構成された化物。
辛うじて女性に見えるシルエット、四肢に巨大なかぎ爪をつけ、尋常じゃない威圧感を放っている。
口に当たる部分からはチロチロと高密度の覇気が漏れ出している。
おそらく口内の牙も爪同様の威力をもった凶悪な代物だろう。
「よう、ベーオウルフ。そんなに急いでどこに行くんだ?」
「・・・・」
「初めて会った時からいろいろあったな。おかげさまで私たちはこの世界を捨てるはめになったぞ」
「・・・・」
「どんな気分だ?ん?メジロ家もバラルもみーんな潰して、かつての仲間だった婆ちゃんやトレセン学園の全員を殺したってのはよ!!」
「・・・・」
「何とか言えよてめぇ!こんなことしてなにが・・・」
「・・・アハハ」
「?」
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!」
「笑うのかよ・・・もういい!くだばれ!!ベーオウルフ!!」
その声・・・嘘だよな。俺が知ってるあいつの声とちょっと似てるだけだよな。
激昂するゴルシと狂った笑い声を上げるベーオウルフの戦闘が開始された。
ゴルシ強ぇ!凄まじい動きで敵を圧倒する。
転移中の艦体に攻撃しようとするPT部隊を片っ端から薙ぎ払い、宿敵の動きにもすかさず対応してみせる。
姉さんと同じぐらい、ひょっとするとそれ以上の強さだ。
一騎当千とはこのことか、この調子ならいけるのでは。
「思った通り弱体化してやがる。本当バカだよなwww餌である覇気、それを潤沢に持っている生命の人類を考え無しに滅ぼすからだwww」
「・・・・」
「この終わった世界はくれてやるよ。最期のときまで精々飢え苦しんでろ」
「・・・ハハ」
「もらったぞ!青龍鱗!」
あれだけいたゲシュペンストを手早く片付けベーオウルフを追い詰める。
ゴルシが構えた両手から青い覇気を纏ったエネルギー弾が放出される。
文句なしの直撃コース、当たればただでは済まないだろう。
だというのになぜだ、ベーオウルフは回避行動はおろか防御姿勢すらとろうとしない。
する必要がないとでもいうのか、その答えは上空から現れた第二の化物によってもたらされた。
ゴルシの青龍鱗をいとも簡単にはじいてみせる。
「"ルシファー"まで来やがったか!相変わらず仲のよろしいことで、あ~吐き気がする!」
「・・・・」
「お前が来たってことは・・・そうか、生き残りの混成部隊は全滅か」
「・・・・」
「けど遅かったなwww俺以外はみんなここから逃げちまったよwww」
クロスゲートによって最後の一隻が転移するのを見届ける。
目的通り時間を稼いだ、ざまあみろとゴルシは2体の化物を見る。
しかし、そいつらはまるで動じる様子もない。
ルシファーと呼ばれた化物の姿があらわになる。
全身が紅い結晶体で構成されているのは同じ、こちらも女性のシルエットでかぎ爪は無い。
代わりに目を引くのは尻尾に当たる部分が巨大化し五つに枝分かれしていることだ。
先端が鋭い刃状になった尾はそれが武器であり盾であり、決して触れてはならない毒を持っているとなぜだかわかってしまった。
やっぱり・・・お前もいるのか・・・二人ともどうして。
「お前らはここで私と死ぬんだよ!ゴルシ様の最後のパーティーに付き合ってもらうぜ」
「・・・アハハ」
「・・・フフフ」
「最後まで狂ってるな、こんな奴らにどれだけの犠牲者が・・・おいコラ待て!何をしている」
ルシファーの挙動がおかしい、停止したクロスゲートに尾を伸ばし何かをしている。
よく見ると尻尾の先端部からギリギリ目視できる程度の糸のようなものが伸びゲートまで到達している。
ゲートが再び起動、結晶体と同じ紅い輝きをもって転移するためのエネルギーをチャージしだす。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
「ウフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ」
「ふざけやがって!お前らぁ!!!」
2体が得物を逃がすはずはなかった。
ゲートに干渉し強引起動、先に転移した者たちを追いかけるつもりだ。
その意図に気づいたゴルシはルシファーに襲い掛かるがベーオウルフがそれを阻む。
剛腕に装着された爪はかすっただけで命を脅かす。
距離を取ればそこにルシファーからの砲撃が見舞われる。
尻尾から無数の追尾式のレーザーが放たれる。あれも覇気弾の一種なのか?
ジリジリと追い込まれていく。
ゴルシが力尽きたとき2体は異世界に転移するだろう、そしてまた滅びをもたらす。
「行かせるかよ、この世界の滅びを異世界の奴らにプレゼントするなんて御免だ!」
「・・・アハハ」
「・・・フフフ」
「もってくれよソウルゲイン!リミット解除コードき・・・」
「???」
「???」
「マジか?なんか来るぞ」
玉砕覚悟で仕掛けようとしたその時。
起動したゲートから何かが這いずりだして来た。
ゲートの輪を掴む巨大な腕、大きな体躯と翼、黒い異様はまさに悪魔。
あれは・・・知っている・・・俺はこの悪魔に・・・。
心臓の鼓動が耳に強く響く、大切な約束が・・・そのために俺は。
大地に降り立った悪魔はその巨体を縮める、まるで世界の理にあったサイズに調整したかのよう。
2m弱程の身長になった悪魔は翼を砲塔に変形させて正面に打ち込む。
呆気に取られるゴルシを通過した弾頭はベーオウルフとルシファーを狙ったものだ。
今まで余裕をもって遊んですらいた2体が初めて強い警戒をみせ回避行動をとる。
爪と尻尾の結晶体にかすった弾頭はその部分を抉り取り、2体は自身を傷つけた存在に怒りを示す。
またとんでもない奴が来たもんだ。何者かわからないがゴルシは命拾いした。
「敵の敵は味方ってことでいいのか?お前は何もんだ?それが異世界で流行りのコスプレか」
「ゲートはまだ動いている・・・行け・・・あの2人は俺が食い止める」
「そんなことできっかよ!」
「代わりに頼みがある・・・探せ・・・世界を弄ぶ破壊者と・・・ディーン・レヴを宿す者を」
「わけわかんねぇ。それよりヤバい!お前、体が消えかかってるぞ」
「存在できる時間は少ない・・・お前が転移した後・・・この世界を隔絶する」
「お前は消えて、あいつらをこの世界に閉じ込めるのか」
「消えはしない・・・いずれまた会える・・・さあ行くんだ」
「ありがとよ。可能なら私の分まであいつらをぶちのめしてくれや」
悪魔に導かれてゴルシはゲートにを潜る。生身で大丈夫なのか?まあゴルシだし何とかなるか。
転移する直前に大声で悪魔に呼び掛ける。
「そうだお前!名前は!!!」
「クォヴ・・・いや・・・ちがうな」
「早く教えろ!!!」
一瞬だけなにかを考え言い直す。
「アストラナガンだ・・・すぐに忘れてくれていい」
アストラナガン、それがこの悪魔の名前か。
「ぜってー忘れてやんねぇ!!!」
ゴルシはそう叫んで転移していった。
残ったのはアストラナガンとベーオウルフ、ルシファーの3体。
にらみ合う両者、しかし悪魔の方はどこか悲しげだ。
「遅れてすまなかった、奴を取り逃した挙句、お前たち2人を滅びの獣に貶める結果になるとは」
「・・・・」
「・・・・」
「俺だけは理解しよう、お前たちは被害者だと・・・これ以上何も殺さなくていい、壊さなくていい」
「・・・・」
「・・・・」
「もう終わりにしよう」
悪魔の肩口から長い棒状の物体が飛び出す。
それを片手でつかみ取った瞬間、銀色の輝きを放つ刃が形成される。
死神が持つ大鎌、相手の魂を刈り取る武装。悪魔の見た目と怖いくらいにマッチしている。
それを2体に向けて構える。2体の化物も爪を牙を尾を鋭く研ぎ澄ます。
「願わくば、ここではない世界のお前たちに、良き理解者が現れん事を」
「「オオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!」」
アストラナガンの声に反応したのか、笑うのをやめ叫び声をあげて突撃する2体。
怒っているのか、それとも泣いているのかわからない。
3つの強大な力がぶつかり合う、観測者のいない世界、悪魔の体が消え去るまでそれは続いた
取り残された2体は天を見上げいつまでも咆哮していた。
それが1つの世界の終焉だった。
終わった・・・これを見せたかったのかよ。
俺の知ってるあいつらじゃないのはわかっている。それでもこれは結末は・・・。
結晶体・・・このままだと俺の愛バは同じ道を辿るのか?それは絶対に認めない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「キューキュー」
心配そうに俺をのぞき込む青龍の声で目が覚めた。
その体を指先で撫でてやる。
「大丈夫だよ。ありがとな心配してくれて」
「キュー」
「起きたか、どうだった?」
ソファーに寝かされていたようだ、時間にして15分ぐらいか。
テレビを見ていたゴルシが振り返り俺に質問してくる。アイス食ってるー!
「牧場しぼり?」
「ちげーよMOWだよ」
「俺は爽が好き」
「ハーゲンダッツ、もっと安くなんねーかな」
「でもあの値段と味には納得して買うよね」
「そうだな・・・でどこまで見た」
「アストラナガン」
「よし、全部だな」
スプーンを差し出してくるゴルシから何口かいただく。うまーい!
「お前とファイン家は異世界からの逃亡者だった。そのことを知っているのは?」
「教えたのは天級騎神たちだけだ。もっともメジロ家のばば様や、一部カンのいい奴らはなにかしら気づいていると思うぞ」
「母さんたちは知っていたのか・・・じゃあクロとシロのがああなっちまうことも」
「そこは誰にも喋ってねーよ。この世界にベーオウルフとルシファーが誕生すると決まった訳じゃないし」
助かった、もし母さんがクロシロを危険視していたら絶対に契約解除されていた。
「天級には事情を話してクロスゲートを監視してもらっている。ベーオウルフとルシファー、その他の外敵から侵略を防ぐためにな」
「ラ・ギアスに住んでいるのはそのためか」
「あの村の住人の殆んどは転移してきた奴らだぞ。いざって時は天級と協力して事に当たる手筈になっている」
「マジでか!訳ありとは聞いていたがそんな事情があったとは」
隠し事多いですよ。知らないままが幸せだったとは思わない、もう気づいてしまったからな。
「パラレルワールドってことになるのか、ゴルシのいた世界は」
「混乱するから私のいた世界を1st(ファースト)、今いる世界を2nd(セカンド)でどうよ」
「おkそれでいこう。時間は1stの方がちょっと進んでいるんだよな」
「ああ、その認識で間違いない」
「お前の婆ちゃん・・・」
「おっと、2ndの婆ちゃんには言うなよ。まだうら若き乙女だろうからなwww」
「言わない、言えない。でもwwwごめんwwwこれは笑うwww」
「私をバカにしてんのかwwwそれともメジロ家全体かwww」
「だってwww末裔がこんなんwww」
「ひでーなwwwまあ自覚はあるんだわ、お嬢様ってガラでもないしなwww」
「( ´ー`)フゥー...いや大変失礼した。メジロ家の血筋が半端ないって再認識したわ」
「あんまり気にすんな。この世界でゴルシちゃん2号機が生まれてくるかはわかんねーし」
「全く同じ未来が展開するとは限らないってか」
「同一人物でも趣味趣向や進路、結婚や子供の有無、生き様や死因まで何かと違ったりするしな」
「でも概ね似たような感じにはなるんだろう」
「そういう訳だからベーオウルフとルシファーには監視をつけている。お前たちには悪いと思っているが、サトノ家やラ・ギアスにはファイン家の諜報員がずっといたんだぜ」
「いい気はしないが、世界が滅ぶというなら致し方無いのか」
知らない所で動かれているのは不快だけどな。
ああ、心配だ。今の状態のあいつらは1stの連中にはどう見えているんだろう。
「クロとシロに手を出す気か?それなら俺は」
「待て待て!そんな気はねぇよ。少なくとも私たち穏健派はな」
「過激派がいるって言ったようなものですね」
「転移した1stの生き残りの内半分はファイン家を中心とした穏健派に、残りの半分は2ndに新たな世界を構築したいって過激派だ。こいつらはお前の愛バを超敵視してるから要注意だ」
「そんなのがクロとシロを狙っているだと!やらせはせんぞぉ!」
「そこは安心していいんじゃね。ラ・ギアスにいるの住人は穏健派だし天級の懐に突っ込むアホはいないだろ」
「実家に運んだのはファインプレーだったのね」
問題は増えたがとりあえずあいつらの安全は問題ないみたいだ。
「愛バたちが結晶化した。これは、その、ああなってしまう兆候なのか?」
「1stのあいつらは結晶化なんてしてねーんだわ。普通に成長して普通に学園に通って騎神になって、ある日を境に豹変したと婆ちゃんが言っていた。それまで予兆や異変の類は一切感じなかったから不思議がってたな」
「突然異常をきたしたのか・・・1stの俺は一体何をやってたのか」
「いないぞ」
「なにが?」
「1stにお前はいないんだわ」
「へ?」
「天級やお前の周りにいる奴らは大体1stにもいた事を確認済みだ。でも何度調べてもお前はいない」
世界規模の話だと人間1人ぐらいいてもいなくても問題ないのか。
でも自分のことになるとなんか不安になるな。
「えーと姉さんのことは」
「パーフェクトは一人っ子だったぞ。テロに巻き込まれてもいない、メジロ家に仕えてもいなかったがな」
「なんだろう、この不安感がマシマシになってくる感じは」
「安心しろ。お前はちゃんとここにいる」
「キュー」
ゴルシが俺の手をしっかり握る。飛行した青龍が俺の頭に着地する。
ちゃんと感覚がある大丈夫だ。俺は確かに今ここに存在している。
「1stにいなかった男が1stを滅ぼした騎神と契約した。穏健派はお前に期待しているんだよ」
「期待ねぇ」
「アンドウマサキ、愛バたちを正しい姿に育成してやってくれ」
「そのつもり」
「この世界の命運はお前にかかっている!とにかく超頑張れってことでよろ~」
「うは!責任重大!!!」
言われなくてもやってやるよ。頑張る理由が増えただけさ。
あんな硬そう痛そう無機物ボディ・・・無理です!
俺のカワイイ愛バたちは柔らかスベスベボディなんだよ。
1stのような結末は絶対に認めんぞ。