俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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ゆーしー

 酒は飲んでも飲まれるな。  

 サバイバル生活を満喫しました。

 

 迎えに来た輸送機レディバード乗り込む。

 

「「「おじゃましまーす」」」

「は~い乗って乗って、ふぅ~これで一安心だね~」

 

 ミオが言うには酔った俺たちが乗ったアヒルボートが転覆した際、ぶつかったのがこの輸送機らしい。

 俺たちが悪いのはわかっているが、遭難した原因の輸送機に助けられるって複雑。

  

 内部は結構簡素な造りだな。

 ヒリュウやハガネが凄過ぎただけで輸送機なんてこんなもんだろう。

 俺たちが乗り込んだのを確認して発進したようだ。

 

 先程甲板上で「キィー!」と叫んでいたウマ娘がこちらにやって来る。

 

「任務ご苦労様、アケボノさん」

「キングちゃん!お迎えありがとうね~」

「それで、そちらの招かれざる客はどちら様?」

 

 ゴルシとアイイコンタクト。

(やるか)

 (ああ)

 

「どうしたのかしらお二人さん、キングの威光を前にひれ伏す準備ができたのかしら?」

「ウニョラーーー!!!」

「トッピロキーーー!!!」

「ああ、大変発作が」

「え?何?ひぃ!こっちに来る!」

「メッケメケェエエエエエ!!!」

「キロキロキロモキレ---!!!」

「わぁ~3日間のサバイバルですっかり野生化したんだね~」

「アケボノさん!見てないで助けて!」

「コラ!マサキにゴルシ!初対面の相手を襲っちゃダメ!」

「「オアーーー!オア――!!」」

「あ、あなたたち一体何なのよ!?」

「「ヒッポロ系ニャーポンさ」」

「は?」

「それなら仕方ないね~」

「そこまでの覚悟だったらもう何も言わないよ」

「お待ちなさい!今の言葉の意味が理解できたというの?冗談でしょ!」

「おい、こっちは疲れてるんだよ。静かにしてくれない」

「騒がしい奴だな、落ち着けよ」

「突然正気に戻るな!なんで私が責められるのよ!」

「何か食べるもの無い?お腹空いたよ~」

「だな。糖分が足らねぇぜ」

「無視すんな!!!」

「いい具合に弄ばれてるな~。この二人相手じゃ分が悪いよ」

「うう~、一流の私によくも・・・あなたたち!覚えてなさい!後悔させ」

「あの雲、なんかウンコに似てる」

「ああ、見事な巻きグソだ」

「せめて聞きなさいよ!」

 

 一人でプンスコ怒っているウマ娘がいる。腹でも減っているのかな。

 

 茶色い毛並みに青いイヤーカバーを着けた、自称一流のウマ娘。

 高飛車な感じがするが、なぜだかイマイチ決まらない。

 悪役令嬢になろうとして失敗した、お人好しって感じ。

 俺とゴルシの嗜虐心(しぎゃくしん)を刺激したのが運の尽きだぞ。

 

 ボノがどこからか持って来たお菓子をいただく。うめうめ、久しぶりの糖分ですわ。

 操縦席にいるパイロットと数人の乗務員、全員がウマ娘。

 輸送機の大部分が車両や起動兵器の格納スペースで占められている。

 座席が見当たらないので地べたに腰を下した、みんなで輪になってダラ~とする。

 

「機嫌直してよキングちゃん~。マサキさんたちも反省してるからね」

「別に怒ってないわよ、引いてるだけで」

「アンドウマサキ!可愛い愛バたちのために頑張ってます」

「ゴールドシップ!元居た世界が滅んだからこっちに来ちゃった」

「ミオ・サスガ!体が無いので腕時計になったりヘルメットになったり」

「怪しすぎるわ!!!」

「誰も嘘は言って無いぞ、信じてくれよゲイナー」

「エクソダスするかい?」

「オーバーフリーズしてる場合じゃないよ、オーバーヒートしていこう」

「それはキングゲイナーでしょ!私はキングヘイローよ!」

「王には人の心がわからない」

「騎士王ではないわ!」

「じゃあ何王なんだよ」

「キングはそこにいるだけでキングなのよ」

「キングだからか?」(よくわかんね)

「そうよキングだからよ」

「キングすげぇ」(マジでわかんね、もうめんどくせ)

「やっと理解したようね。さあ私を讃えなさいな!」

「で、この輸送機はどこへ向かっているのかね?知ってるなら教えてヘイロー」

「キングと呼びなさい、私たちの基地に向かっているわ」

「着いたらマサキさんたちの歓迎パーティーだね~とっておきのお鍋を作っちゃうよ~」

「きりたんぽ食べたい」

「もつ鍋がいい」

「うんうん。全部やろうね~」

 

 きりたんぽってあれだろご飯で出来た棒状のあれを鍋に突っ込むヤツ。

 名前は知ってるが実は食べた事ないのよ。たぶん美味しいはず。

 

 キングヘイローにも例のアレお願いしてみよう。

 

「キングにお願いがあります」

「頭が高いわよ、何?」

「覇気くれ」

「嫌」

「そこをなんとか」<(_ _)>ペコリ

「恐ろしく早い土下座、ゴルシ様じゃなきゃ見逃しちゃうね」

「あなたねぇ、プライドとかないの?」

「プライドで愛バは救えん!腹も膨らまん!結論、プライドなどいらぬ!!ぬぅ!ぬぅ!?」

「「サウザーwww」」

「聖帝みたいな顔やめなさい!わかったから、あげればいいんでしょあげれば」

「キングはすごいなぁえらいなぁ僕にはとてもできない」

「やっと理解したようね、大いに感謝しなさい!そうね、特別にキングコールをする権利をあげるわ。嬉しいでしょ」

「僕にはとてもできない」

「無理やり書かされた感想文風に拒否しないで!」

 

 キングの覇気をドレイン、気が変わったとか言われる前にやったるでー。

 ・・・うーん・・・いいんだけどね・・・ドレインは普通にできるし。

 

「ENドレイン、どこでこの技を覚えたのかしら」

「異世界から来たスケスケブーメランがくれた力さ」

「真面目に答える気がないのね」

「いつも誤解されるが、俺って結構真面目なんよ」

「・・・ねぇ、愛バのことが好き?」

「生き甲斐だ」

「そう、ならいいわ」

 

 キングの覇気をもらったぞ!

 基地とやらに到着するまでちょっと休もう。

 枕がほしい・・・丁度いいのがあるではないか!

 

「なんで私が!膝枕しないといけないのよ!」

「ばぶぅー」(そう言いながらも膝枕してくれるキング優しい~)

「でちゅね遊びの後遺症でな、マサキは誰かが膝枕してやらないと眠れなくなったんだ」

「幼児退行したマサキさん、とっても可愛いんだよ~」

「マサキは今リハビリ中なんだ。少しの間だけ協力してあげて」

「・・・すぴー」

「あ、もう寝やがった。ふぁ~私もひと眠りしよっと、着いたら起こしてくれ」

「アップデートが必要だし私もメンテに入ろうかな、ちょっと機能停止するね」

「もう、何なのよコイツら」

 

 信じられない、普通初対面の相手に膝枕要求するか?

 さっき会ったばかりの男に膝枕している自分が一番信じられない。

 何とはなしに男の髪に触れてみる、無防備に寝ちゃってまあ。

 こちらをニコニコしながら見つめるアケボノ。

 

「不思議だよね~何が違うんだろう?この人、本当に人間なのかな~」

「人間なのよね・・・」

「何事にも例外は付き物ってことかな、あ、そろそろ来るよ」

「来る?それはどういう・・・へ?」

 

 一流の膝枕でグースカ寝てる男から覇気の粒子が放出される。

 その後のことは体験したものでないとわからないだろう。

 

 ああ・・・この人は違うのね。

 

「理解してくれた~?」

「キングの名に誓ってこの人は・・・マサキは例外だと認めるわ」

「みんなにも会ってほしいんだ~」

「そうね、こういう人間もいるってことは知っておいた方がいいわ」

「キングちゃんならそう言ってくれる思ったよ」

「でも勘違いしないで、人間全てを認めた訳ではないから」

 

 安心しきった顔で眠るマサキの頭を撫でる。

 そうしていると、とても穏やかな気持ちになれた。

 

 仮眠をとってリフレッシュした。

 

「起きなさい、もうすぐ到着するわ」

「・・・うーんねむねむ」

「ふぁ~着いたか・・・あー体がバッキバキだ」

「アップデート完了っと。マサキ起きなよ~」

「久しぶりの基地だね~やっと温かいお風呂に入れるよ~」

「いい加減に起きて、ほら」

「嫌や~俺はここがいいんだ」スリスリ

「どこ触ってるのよ!ちょ、顔をこっちに向けるな!このスケベ!!」

 

 膝枕堪能いたしました。

 

「ありがとう。凄く落ち着いた」

「しゃんとしなさいな、ああもう!寝癖が」

「世話焼きなのね、マサキの好感度がアップした!」

「はいはい」

 

 寝癖と服装を整えてもらった、キングは気配りのできるいい子だぞ。

 

 目的地上空、ゆっくりと高度を下げる輸送機。

 窓から基地だという場所を見渡すことができた。

 

「森」

「森だな」

「もう少しで通過するわ」

「お?」

 

 何かを通り抜けたような感覚、この感じはラ・ギアスを出入りする時と似ている。

 眼下に広がる光景が鬱蒼とした森から人の手で建造された施設群へと変化した。

 「どう?凄いでしょ」とドヤ顔しているキングさん。

 確かに凄い仕掛けだ、広範囲を認識阻害させる結界が張ってあるとはな。

 

「視覚情報を誤認させる幻術の類か」

「秘密基地ぽくなってきた」

「内部は結構ハイテクだね、さっきの結界発生装置は地下にあるとみた」

「見ろよ、地面が割れたぞ!パッカーンって」

「なんだか、あんまり驚いていないようね」

「そんなことないぞ。秘密基地でテンション上がってる」

 

 宮殿のような大豪邸、噴水、訓練施設、倉庫、研究棟、プール、滑走路、庭園、森、その他諸々。

 基地って言うからもっと軍事施設みたいなのを想像していたが、違った。

 基地じゃなくて学園、そうトレセン学園に似ている、ミニトレセン学園だこれ。

 

 緑の芝生に覆われた地面がカパッと割れて内部へ着艦するように誘導灯が点いた。

 滑走路に降りるんじゃないのね。「ガイドビーコンなんて出すな!」と言うのは誰のセリフだったけか。

 無事着艦、お見事でした。

 

「ありがとうございました」

「え、はい、どうも」

 

 輸送機のパイロットと乗組員にお礼を言ってから輸送機を降りる。

 礼を言われるとは思ってなかったのか反応が「なんだこいつ?」だったけど。

 

 着艦したドック内は広く騒がしい、忙しなく多数のウマ娘が動き回っている。

 俺たちが乗っていた輸送機の他にも多数の車両や艦が配備してある。

 周囲のスタッフはウマ娘ばっかりなんだな、まあそういうこともあるか。

 

「キングちゃーん!おかえりー!」

「まあ、ウララさん。急に走ったら危ないわよ・・・とと」

 

 小柄なウマ娘が駆け寄って来た。しっかり受け止めるキング。

 

「ボノちゃんもおかえりー!・・・あれれー??」

 

 俺を見て目をパチクリさせるウマ娘。俺の顔に何か?鼻毛には注意してますぞ。

 

「ただいま~この人はね~」

「人間?もしかして男の子」

「性別オスですが何か?」

「うわぁーーー!!!」

「ほわぁーーー!!!」

 

 いきなり叫んだウマ娘にビックリして俺も叫んじゃいました。

 

「人間だ!それも男の子!みんなーーー!男の子が来たよーーー!!!」

 

 走り出したウマ娘、男が来たぞと触れ回っている。

 子って歳でもないのですが・・・。

 

「説明しておくべきだったわね」

「ここはねぇ~人間が滅多に訪れないんだよ~」

「男性が来たのはいつ以来かしら、とにかく施設内に人間がいること自体が珍しいのよ」

「ほほう。終末のハーレムを期待してよろしいか?」

「よろしくないわ」

 

 ということはですよ、ここはトレセン学園以上にウマ娘だらけってことですね。 

 しばらくここで暮らしたい!

 

 周囲のウマ娘たちが俺たちを、いや俺を見ている。

 珍獣を見るような目つきですね。視線が絡みつく、期待に応えてやろうかしら。

 

「いきなり全裸になったらどんな反応するんだろう」

「何不穏なことを口走ってんの!」

「おっと、口に出してたか。バレたら仕方ない、キングの命令は絶対!脱ぐか!」

「そんな命令した覚えはないわ!」

 

 走り回っていたウマ娘が戻って来た。

 

「私ハルウララ!あなたのお名前は?」

「俺はアンドウマサキ、こっちの変なのはゴルシ、腕時計はミオだ」

「フフッ」(髪を掻き上げてキメ顔)

「どうも」(スマートウオッチを点滅)

「マサキ・・・マサキに、ゴルシちゃんとミオちゃんだね」

「そっちはウララでいいか」

「うん。よろしくね」

 

 ハルウララ

 ピンク色の毛並みと瞳を持つウマ娘。

 瞳の中には特徴的な花弁の模様、似たような奴がいなかったか。

 ちっこい体に元気いっぱい、無邪気に微笑む姿はまだ子供だな。

 

「マサキさんはね~、私を手伝ってくれたんだよ~」

「へぇー、ボノちゃんのお手伝いができる人間なんだ」

「俺が加勢する必要はなかったけどな」

「そんなことないよ~」

「報告とマサキたちの紹介をしたいのだけど、カイザーは戻っているかしら」

「いるよ~、えーと、首を洗って待ってる?」

「長くしてだな」

「他のみんなは?」

「マルちゃん以外は揃っているよ、みんな暇なのかな」

「了解したわ。あなたたち、このキングについてらっしゃい!」

「「「イエス、ユア・ハイネス」」」

「やればできるじゃないの!今の返事、すっごくいい感じよ!」

「はやくいこう~」

 

 エレベーターを乗り継ぎ広い敷地内を移動する。

 すれ違うウマ娘たちが俺を見るたびに、ギョッとする。

 あからさまに敵意を向けてくる奴、目を合わさない奴、逃げ出す奴、指差してクスクス。

 うん、不快です!ぷるぷる僕は悪い人間じゃないよ紳士だよ!

 

 それが何度も続いた結果。

 

「シャアッーーー!!!ガルルルル!」

「ご、ごめんなさーい」

 

 野生化した。

 

「コラ!マサキ!威嚇したらダメよ」

「どうどう~マサキさん」

「フッー!フッー!フッー!」

「うわ、人間がいる」

「え?やだ本当」

「フシャアッーーー!!!」

「「ひぃ!!」」

「あなたたち!すぐに退避しなさい!写真撮ってる場合か!」

「逃げて逃げて~ウララ~」

 

 オレサマオマエマルカジリ

 

「マサキの気持ちもわかるぜ。ここじゃ人間は完全にアウェイ、居心地悪すぎだろ」

「ごめんね~ちょっと事情があるんだ~」

「よしよし大丈夫よ。あなたはこのキングが守ってあげるわ、だから落ち着いて」

「・・・フニャーゴロゴロ」

「いい子ね」

「キングちゃんすごーい。人間使い?」

「膝枕といい、キングにメチャクチャ懐いてるのはなんでだ?」

「バブれる対象だからじゃないの、本能で甘えさせてくれる相手だと認識したんだよ」

「確かに~キングちゃんはヒモ男を養って貢ぎそうかも~」

「「彼には私がいないとダメなのよ~」ってかwwwダメにしてるのはてめぇだよwww」

「あはは、キングちゃんダメ男製造機なんだwww」

「誰がダメ男製造機よ!!!」

 

 キングに妙な才能があるのが発覚した。

 

 地上に出た、建物だけじゃない、空気も学園に似ている気がする。

 中央にそびえる洋風の豪邸目指して更に移動、よく整備された通路や街路樹、どこに行ってもウマ娘。

 本当に人間はいないんだな。

 

 上空からも確認できた豪邸の辿り着き大扉を開ける。

 ここはエントランスホール、トレセン学園校舎棟のものによく似ている。

 高い天井、売店や食堂などの各種施設、上階へと続く階段、休憩用のテーブルとイスがチラホラ。

 

 エントランスにいるウマ娘たちが一斉にこちらを見る。

 不躾な視線ですね。

 

「オア~」(全員騎神だな!やんのかコラァ!)

「心配しなくていいからね~みんなマサキさんが気になってるだけだから」

「なんとなく意味は伝わるから放置してるけど、マサキ、人語を忘れてるね」

 

 この場にいる騎神を代表してか一人が近づいて来た。

 お、褐色じゃないですか!いいね!

 

「おかえり、ゾロゾロ連れてどうしたんだい?」

「ただいま~姐御~」

「アマちゃん!えっとね、男の子が来てストレスで野生化してやってやるぜ」

「意味がわからん」

「残念ながら事実です。カイザーに報告したいのですが」

「執務室にいるよ。それにしてもへぇー、人間それも男かい」

「ウニョ~」(甘やかしポイント平均値をオーバー、バブリ対象として認定します)

「早く行こうぜ、マサキがその女の膝で熟睡する前にな」

「ウララさんはここで待ってなさい」

「はーい、ウララ~」

「面白い奴だね、また後でな」

 

 褐色ウマ娘と別れて執務室へ。

 入口扉の前でピタッと足を止める。

 

「いる」

「あ、マサキが戻った」

「あの扉の向こうに・・・三人」

「別にとって食われたりしないわ、行きましょう」

「怖いから嫌です」

「ここで怖気づいたか、しゃーない帰るぞ」

「触らぬ神に祟りなしだね」

 

 回れ右して帰ろうとする俺たちをキングとボノが引き留める。

 

「ここまで来て帰るだなんて!すぐそこなのよ」

「一緒に行くから大丈夫~怒られたりなんかしないよ~」

「だってよ、どうするマサキ?決めるのはお前だ」

「嫌!」

「帰るわ」

「帰ろう」

「なんでマサキが決定権持ってるのよ!子猿に総理大臣任せるぐらいの暴挙でしょ!」

「なんでそんなに嫌がるの?教えてくれるかな~」

「あの部屋に入ったが最後、一瞬で身包み剥がされたあげくに俺のうまだっちが酷い目にあう」

「「それは恐ろしい」」

「命からがら逃げた俺はキングの裏切りにあい、執拗な逆うまぴょいを強いられてるんだ!!!」

「「強いられたかー」」

「そして俺はこの基地に囚われうまぴょい奴隷として割とハッピーエンドで終わる」

「「ハッピーエンドならいいんじゃね」」

「被害妄想が凄いな~」

「結局、都合のいい終わり方してるじゃないの!いいから行くわよ」

 

 渋る俺の手を取り引きずって行くキング。強引なのね。

 

「何かあったらキングを肉壁にしていい?」

「いいわけないでしょ!でも、一応守ってあげるわ感謝しなさい」

「私を盾にしてくれてもいいよ~」

「ありがてぇありがてぇ。皆の衆、作戦「いのちをだいじに」で」

「「ラジャー」」

「超級騎神が三人」

「「来るぞ遊馬!」」

「ユウマって誰?」

 

「ほう貴様、わかるのか」

「妙な覇気の出所はお前か」

 

 扉の前でわちゃわちゃしていたら向こうから来ちゃった。

 執務室から出てきたのは鋭い覇気を放つ二人のウマ娘。

 

「ごきげんようエンプレスにブライアン」

「その呼び方は流行らないと言っているだろうキング、その男が例のたわけか」

「ええそうよ、あまり怖がらせないであげて、野生化してしまうから」

「野生化?獣のような闘争本能を秘めているという事か、面白い」

「そんな野蛮人みたいな真似は致しません」

「ついさっきまで致してたよね」

 

 俺を品定めするように見てくるエンプレス。エンプレス・・・女帝か。

 口にカイワレ?を咥えたブライアンの視線も勘弁してほしい。

 こいつら強いぞ。覇気くれないかな~。

 友好的な関係を築くためにも第一印象は大事、紳士的振る舞いを心掛けよう。

 

「初めまして、エンプレスさんにブライアンさん。アンドウマサキです、以後お見知りおきを」紳士

「聞いていた話と違うな、礼儀正しい奴ではないか」

「ハズレか?いや、こいつの覇気は確かに・・・」

「私の時と随分違うじゃないの!さっきまで人語を忘れて唸ってた癖に!」

「キングさんに良い病院を紹介してあげては?」

「ああ、後ほど手配しよう。疲れが溜っているのかもしれない」

「いらん気遣いするな!」

 

 キング、あなた疲れてるのよ。俺という紳士が野獣に見えるなんて重症だ。

 エンプレスとはキングが勝手に言ってるあだ名だと判明。できる女って感じの御方です。

 ブライアンはもうあれだ、まーた戦闘狂タイプだよ・・・もうお腹いっぱいでち。

 

「エアグルーヴだ。まずはリーダーである皇帝に会ってもらう」

「ナリタブライアン、好きに呼べ」

「皇帝、なんだか凄そうですね。承知しました」

「私などより遥かに優秀な方だ、失礼の無い様にな」

「おい、そこの男。後で顔を貸せ」

「嫌ですけど」

「ちっ」

 

 上から目線で命令してくるブライアンをサラリと躱して入室。

 どうせ手合わせのお誘いだろ、今そういうのいいから。

 エアグルーヴに率いられてご立派な造りの執務室に乗り込んだ俺たち。

 

「お連れしました」

「ああ、ご苦労だったね」

 

 大きな執務机を挟んだ向こう側、高級そうな革張りの椅子に座りこちらに背を向けているウマ娘。

 うは!こいつはヤベェぞ、姉さん並みの覇気を感じる。

 まあ、母さんたちの覇気に慣れた俺は「すごいですね」と素直に感心するだけなんで。

 嘘です!ちょっとビビりました!キングがさりげなく背中ポンポンしてくれなかったら逃げてたわ!

 この覇気とプレッシャー、皇帝は間違いなくこのウマ娘。

 

 椅子を回転させてこちらを向こうとする。

 

「よく来てくれたね。私はここの代表を務めるシンボリル・・・あ」

「?」

 

 回転の勢いが強すぎて一周、また背を向ける皇帝さん。なにやっとんねん。

 照れながら半回転してやっとこちらを向く。顔赤いっスよ。

 

「ゴホン!・・・最近の椅子は回転が効いていて困る////」

「椅子のせいにすんなよ」

「ゴルシ、そこはスルーしてやれよ。皇帝さん真っ赤だから」

「皇帝・・・」

 

 エアグルーヴにジト目を向けられションボリする皇帝さん。

 それを見てちょっと緊張が解れたので良しとする。

 見かねたキングが発言する。

 

「先に報告をしたいのだけどいいかしら?」

「聞かせてもらおうか。君たちもそれでいいかな」

「かまいませんよ」

「島にいたDCは全員懲らしめておいたよ~マサキさんたちが手伝ってくれてね~」

 

 島での戦闘と俺たちに会ったこと、サバイバルをしたことをボノが皇帝に報告する。

 「マサキさんがね~」とボノが俺について言うたびに「ほう」と興味深く頷いている。

 

「大体わかった。よくやってくれたヒシアケボノ、疲れただろう、ゆっくり休んでくれ」

「は~い」

「キングも下がっていいぞ。彼らと話をしたい」

「わかったわ・・・マサキ、また後でね」

「ありがとうキング」

 

 世話焼きキングはホンマにええ子やで、キングコールするものやぶさかでない!

 ボノとキングが退出し、俺とゴルシとミオが残される。

 エアグルーヴも外に出たようだ。

 

「改めまして、シンボリルドルフだ。皆からは皇帝と仰々しく呼ばれているよ」

「皇帝に女帝、それにシャドーロールの怪物か。有名所の騎神が勢ぞろいとはな」

「私も君の事を知ってるよ。ファイン家の奇行種ゴールドシップ」

「「奇行種www」」

「おーい、奇行種具合ではマサキも負けてないぞー」

「ふむ、アンドウマサキ君だね」

「そうです。初めまして皇帝さん」

「生放送で全国に赤ちゃんプレイを披露したアンドウマサキ君だね」

「それは人違いですね」

「マサキたちのこと知ってるんだね。テレビの情報だけではないように思うけど」

「腕時計が喋っている?君の事は知らないな」

「AIのミオだよ、マサキのアドバイザー的存在」

「ミオ君だね、よろしく」

 

 俺たちのことは調査済みってか。ならば話が早い。

 

「俺の目的を知っていのるなら協力してほしいのですが」

「私の覇気が必要かい」

「ダメでしょうか?」

「愛バのために尽力する君を応援したいとは思っている」

「条件付きでOKということですね」

「察しが良くて助かるよ」

 

 個人的には協力OK、立場的にNGってことかな。

 その辺はちゃんと聞いてみないとわからんね。

 

「我々のことを知ってるかい?」

「無知ですみません。あなたたちがどういう集団かは知りません」

「ゴールドシップから聞いていないのか」

「知ってるなら教えろや!」

「そのうち否が応でもわかるからいいかな~と」

「ここを訪れた人間は久しぶりだ。歓迎するよ」

 

 スッと姿勢を正して組織名を教えてくれる。

 

「我々はUC(ユーシー)、ウマ娘の平和と安寧を願う組織だ」

「DCのパクリですね」

「DCに似せているのはワザとさ、彼らの二の舞はしないという戒めの意味を込めている」

「UCは何の略?幻想生物の馬の上位存在ユニコーンですか?」

 

 ユニコーンとは角の生えた馬っぽいヤツです。

 馬を更にパワーアップさせた存在としてペガサスと共に、この世界では人気の幻獣。

 二次創作やゲームにガンガン登場します。ガンダムにもなってるしな。

 

「ウマ娘クルセイダーズだよ」

「しょーもなー」

「ゴルシ!ハッキリ言いすぎだぞ」

「UCか~私がフラフラしている間にそんな組織が誕生していたとはね」

「帰るぞマサキ、お前が関わる必要がない奴らだ」

「どうしたのよゴルシ、さっきから当たりが強くね」

「こいつらDCと一緒だからな。人間嫌いのウマ娘至上主義集団、そうだよな」

 

 人間至上主義のDC、ウマ娘至上主義のUC。

 どっちも迷惑だってサトノ家従者部隊の二人が言ってたな。

 それで人間がいないのか、どうりで俺を警戒するわけだ。

 

「我々の目的はあくまでウマ娘と人間の融和だ。選民思想に染まっているつもりはないよ」

「どうだか」

「ここに来るまでのマサキを見る目、少なくとも人間を対等に見ている感じではなかったね」

「不快な思いをさせたのなら謝罪しよう。だが彼女たちにも人間に思う所があるのだ」

「人間から酷い扱いを受けたとかですか」

「そうだ、DC兵たちがウマ娘を脅威に感じているように、UCのウマ娘たちは人間を良く思っていない」

 

 人間を嫌うウマ娘もいる。この前、最低のクズを成敗したばかりなので納得。

 もしアーチボルドのようなクズ男に関わってしまったら、絶対に人間嫌いになるだろう。

 大なり小なり、ここにいるウマ娘たちは人間に不信感を持つ経験があると・・・。

 ボノやキングは普通に話してくれるし、すれ違ったウマ娘たちの感情は嫌悪よりも恐怖。

 人間が嫌いと言うより怖くて信用できない、わからないってのが本音だと思いたい。

 もう憎くて憎くて仕方ないって所までいってる子がいなければいいが。

 

 ここのいる騎神たちから覇気をもらうことが出来れば、確実にクロとシロの復活に近づく。

 だが、UCのウマ娘たちは人間が嫌い・・・困ったね。

 目の前にいるシンボリルドルフ、彼女の覇気は何としてもほしい。

 

「あなたが覇気をくれる条件を聞かせてもらいましょか?」

「エントランスに集った騎神たちから信頼を勝ち取ってみせてほしい」

「それはいつもやってることです。ついでに覇気もゲットしますが、かまいませんよね」

「それでいい。気をつけたまえ、ここの騎神は曲者揃いだからね」

「曲者じゃない騎神の方が珍しいと思いますが、まずは先程の二人からいってみますか」

「エアグルーヴとブライアンを?いくら君でもそれは」

「ここを出て左の通路を移動中、すぐに追いつけるよ」

「では皇帝さん、また後で。イテキマース!」

「・・・行ってしまったか、あの二人は除外してもよかったのだが」

 

 執務室にはシンボリルドルフとゴールドシップの二人だけとなった。

 

「学園サボっていいのか?生徒会長殿」

「先輩方を差し置いて推薦されたので正直困ってるよ。お笑い番組だけが心の癒しさ」

「そんでここでも代表やってますってか。過労死するぞ」

「そうならないよう気をつけるよ。理想の実現には体調管理も大切だからね」

「真面目か。お前がどうしようと勝手だがマサキだけは敵に回すなよ」

「忠告痛み入るよ。天級の恐ろしさは十分理解しているとも」

 

 マサキ個人なら問題ないってか・・・わかってねーな。

 あいつのヤバい所は戦闘能力だけじゃないんだよ。

 

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