俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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かだい

 人間不信ウマ娘集団UCの基地に辿り着いた。

 仲良くなって覇気ゲット、ルドルフの覇気もいただくぞ。

 

「ぶへっ!」

 

 無様に大地を転がりました、どうも俺です。

 バーストモードの効果時間が切れて粒子放出も収まる。

 うう、全身が痛い。何とか立ち上がろうとするがプルプルする両手足。

 生まれたての小鹿か!

 

「この程度か、ハズレだったな」

 

 つまらなそうに見つめた後、興味が失せたとばかりに立ち去ろうとする強者。

 

 俺を圧倒した不愛想なウマ娘、ナリタブライアン。

 ざっくばらんに切った黒い毛並み、静かに燻る炎を宿した力強い瞳。

 高い闘争本能、強者故に満たされない渇きはクロやグラスたちよりも重症っぽい。

 男らしく一匹狼を好む存在。UCやトレセン学園でも畏怖の目で見られているとか。

 口に咥えた草は何?豆苗?自家栽培ってマジか。

 

「お待ちください」

「何だ、もうやめておけ。お前じゃ私に勝てない」

「明日また手合わせしてください」

「付き合ってられん、他の連中を当たれ」

「お前に勝ちたいの!だからお願いします」

「暇じゃないんだが」

「嘘つけ!アグルから聞いてるぞ、リブは暇人だって!昼寝と散歩で1日を終えると」

「瞑想とパトロールだ」

「頼むよ~ブラッシングしてあげるから」

「他人のお前にブラッシングなどさせると思うか」

「普段からお手入れサボってるのバレバレだからしてあげようと思ったのに」

「ぐっ、姉貴にやってもらうから大丈夫だ」

「ズボラすぎて心配かけてるのに「たまには自分でしろ」って注意されたばっかなのに」

「なんで知ってる」

「リブは俺と手合わせする。俺はリブにブラッシングする。はい決定!」

「手加減できんぞ」

「それがいいんだ・・・ごめん、立たせて」

「知らん、しばらくそうしてろ」

 

 「じゃあな」と俺を放置して去るナリブ、マジくそ強かった。

 大の字で寝っ転がったまま空を見上げる。あー負けた負けた。

 

「あれが超級騎神、姉さんがどれだけ手加減してくれていたか、今更理解した」

「いや~見事なまでにボッコボコだったね、私がナビする暇すら無かったし」

「バーストモードのアクセルを完封された、ショック!」

「その割には挫けてないね、むしろ楽しんでる・・・ドM?」

「ちがーう。強くなれるチャンスにワクワクしてるだけよ」

「何だかんだでマサキも脳筋バーサーカーだね」

「誉め言葉として受け取った」

 

 ルドルフと話した後、すぐにエアグルーヴとナリタブライアンを追いかけた俺。

 二人に覇気の提供をお願いしたが、拒否されました。

 とりあえず勝手に、エアグルーヴのことをアグル、ナリタブライアンのことをリブと呼ぶことにした。

 

「たわけが、勝手に決めるな」

「勝手に心読むのはいいのか?もう決めたから、これからはフレンドリーにいくぞ」

「馴れ馴れしい奴だな、そんなので皇帝から覇気をもらうつもりか」

「そのつもりだ、アグルの条件を聞かせなさいよ」

「引く気はないようだな。いいだろう、まずはブライアンを攻略しろ。私はその後に考えてやる」

「おい、私の意志はどうなる」

「元々このたわけと一戦交えるつもりだったのだろう?手間が省けたではないか」

「どーもリブさん。気が変わったので顔を貸します。覇気譲渡の条件は戦闘でいいか」

「雑魚にくれてやる覇気は無い。欲しければ私の渇きを癒してみせろ」

「やぁってやるぜ」

 

 広場に移動しての手合わせ開始したのは良かったのだけど。

 はい全然ダメでした!でも明日も約束した、まだここからだ。

 

 空が青い、どこからかピーヒョロロと鳶の鳴き声がする。

 長閑だ、空気も澄んでいる。もうちょっと休もう。

 

「いい天気ね」

「だね~。明日もって言ったけどさ、本気でここに滞在するつもり」

「ルドルフとアグルからは許可もらったぞ、部屋も用意してくれるってさ」

「こんな所じゃストレス溜まるよ」

「幸い味方はゼロじゃない。頑張ってもっと味方を増やす」

「前向きだね、それでもマサキを認めないって子は必ずいるよ」

「無理強いはしないさ。万人に好かれる奴なんてこの世にいない」

「何事かを成せば必ず肯定派と否定派が生まれるのは世の常だからね」

「アンチより、俺を好きになってくれた奴らに時間を使いたいんじゃ」

「うんうん。それでいいと思う」

「でもどうすっかな~。リブに一泡吹かせる方法、何かあれば・・・」

「周りの子に聞いてみたら?」

「まず会話に応じてくれるかどうかが問題だ」

 

 負けたけど、俺とリブの戦闘は強い覇気がぶつかり合った。

 ウマ娘、騎神なら尚更それをスルーすることはできないだろう、現にギャラリー湧いて来てたし。

 遠巻きに俺を見ているのを感じる。聞き耳を立てちゃうぞ。

 

「さすがブライアンさん。あの人間、手も足も出なかったよ」

「身の程知らずも甚だしい、多少は腕に覚えがあるようだが思い上がったな」

「所詮は人間、己の力量を読み違える浅はかな存在」

「これだから人間は」

「しかも男でしょ・・・ないわー」

 

 好き勝手言われてるー!負けた後に言葉攻めは効く・・・泣くぞボケ。

 こういう時はもちろん、クロとシロの事を考えて心の平穏を保つ。

 ちっこくて、柔らかくて、温かくって、いい匂いがして、全てが愛おしい存在。

 俺また負けたよ、たぶんこれからも負ける時は負ける。

 呆れるか?情けないって思うか?愛想つかすかな・・・それでもお前たちの事だけは。

 

「うぉおおおおおおんんんん!感動じだぁぁぁぁ!!!」

「うるせー!誰だお前」

 

 愛バに思いを馳せていたのに、やかましい泣き声で現実に引き戻された。

 俺のすぐ傍まで近づいて来ていたウマ娘が号泣している、なんだこいつ。

 確かエントランスにいた騎神の一人だ。

 

「だって、だって人間の分際でブライアンさんに挑むなんてぇえええ凄いよぉおぉおお!!」

「分際って言うな」

「わだじ人間はバカで愚かな生き物だって思ってたから、ひっく」

「あーそうですかい、バカで申し訳ないっスね」

「ホントのバカはあだじだぁぁぁああああ!良く知りもしないのに見下して、お兄さんはクソ雑魚なのに頑張ったよぉぉおおおおお!!」

「ちょいちょい、バカにするのやめろ」

「そこまでだチケット、彼が困っている」

「あーもう本当にうるさいな。なにやってんのよアンタは」

「ハヤヒデ!タイシンも!この勇気あるお兄さんがドMでブライアンさんがリョナプレイを」

「よいしょっ!」

「え?あぁあああああああ!!!千切れる!尻尾千切れるーーーー!!!」

「ねぇ、このやかましいのどうやったら黙るの?せめて音量下げる方法教えて」

 

 うるさい黒髪ウマ娘がの尻尾を引っ張っる。

 こうするとクロとシロは大人しくなったが、こいつは余計にやかましくなった気がする。

 

「アンタもう黙りなさいよ。この男、本当に引き千切る目をしてるわ」

「君が悪いんだぞチケット、無自覚に相手をディスっていたからな」

「うう~・・・ごめんなさい。だから離して」

「わかればよろしい、手荒な真似して悪かったな」

 

 ちょっと回復したのでひょいっと立ち上がる。

 騎神が三人、やかましい黒髪、理知的な白髪メガネ、ちっこいツンツン娘。

 バランスのとれた三人組だと思った。

 

「ここではアウェイの人間アンドウマサキですけど。会話をしてくれるか?」

「ああ、問題ないよ。二人もそれでいいな」

「うん、お話したい」

「好きにしたら」

「良かったねマサキ。私はミオ、高性能AIだと思ってくれていいよ」

「はいはい!アタシはウイニングチケット!」

「ビワハヤヒデだ、よろしく頼む」

「ナリタタイシン」

「よろしくな、チケ蔵、ヒデさん、それとタッちゃん」

「おい」

「「「タッちゃんとな!?」」」

「ダメ?タッちゃん可愛くない」

「「「かわい~い~」」」

「あんた、私がチビだからってバカにしてるの」

「マサキは小さい子を崇拝してるよ、バカにするなんてありえない」

「紳士ですから」

「それはそれで怖いんだけど」

 

 タッちゃんは不満そうだったけど、それ以上言及してこなかったので勝手に決定。

 近くのベンチに「どっこいしょ」と腰を下ろす。痛みはだいぶマシになってきたぞ。

 三人組もついて来た。チケ蔵は俺の横に陣取って、尻尾をブンブン動かしている。

 ヒデさんは冷静にタッちゃんは一歩引いた感じで応じてくる。

 

 ウイニングチケット

 黒い毛並みと赤い瞳、人懐っこくスポーティな感じがするウマ娘。クロを思い出すわ。

 ピュアで共感力に優れ、大声でよく泣く。よく言えば真っ直ぐ、悪く言えばおバカ。

 もう少し落ち着きましょう。

 

 ビワハヤヒデ

 白くフワフワした毛並み、眼鏡をかけた知的な印象のウマ娘。

 計画的で理論派、頭でっかち、理論を実践に落とし込めるだけの実力をちゃんと磨いている優等生。

 くせっ毛に悩み、頭が大きいと言われるのはNGらしい。

 

 ナリタタイシン

 淡い栗毛、青い瞳、小柄な体型のウマ娘。

 少々ツンツンして尖っているが、ナメられたくない一心からの態度だと推測。

 不器用なのが伝わって来るからちょっと心配、まあ友人には恵まれているので大丈夫か。

 「バカ////」て照れながら可愛く言ってほしいです!

 

「どうしてブライアンと戦闘していた?覇気で力量差はわかっていたはずだが」

「無茶なのは承知の上だ、愛バの復活がかかっているからやるしかない」

 

 事情説明・・・。

 

「操者だったんだ、ねぇ操者ってウマ娘を奴隷にして無理やり戦わせるクズって本当?」

「チケット、アンタねえ・・・」

「すまない、UC所属のウマ娘は人間について偏った知識を持っている者も多い。ピュア(バカ)なチケットはそういう連中から影響を受けやすくてな」

「ピュアなら仕方ない。チケ蔵さんや、俺は愛バを奴隷だと思ったことは一度もない」

「じゃあどういう関係?」

「両想いだと自負している。かけがえのない大切な存在だ」

「ひゅー、恥ずかし気もなく堂々と言ったねー」

「事実だからな」

「愛バのためにか、君のような人間ならば皆も心を開くかもな」

「マサキさんはいい人間なんだ、へぇー」

「人間と契約するなんて時代遅れだと思うけど」

 

 この三人は友好的、そしてそれなりの実力者だ。

 リブとの手合わせ後からずっとこちらを伺っている多くの気配を感じる。

 これはモブウマ娘たちのものだろう、俺は試されているんだ。

 UC全体に受け入れてもらうためには、実力者たちから認められるのが一番。

 

 交渉開始。

 

「お三方の覇気がほしいです。何とかなりませんか」綺麗なお辞儀

「いいよ!あげる!」

「チケ蔵チョロっ!」

「マサキさんはいい人、愛バのために頑張ってる・・・応援ずるよぉおおおおおんんん!!」

「うわ、また泣いた」

「二人とも協力してあげてよぉおおおおお!!」

「皇帝からは「マサキ君に協力するかどうかは自己の判断に任せる」と言われている」

「無償で覇気をあげるのは嫌、周りの目もあるし、チョロ蔵と一緒にされたくない」

「チケ蔵だよぉぉぉおおおおおおんんん!!」

「だったら課題を出してほしい、それをクリア出来たら覇気をくれるってことでどうよ」

「いい考えだと思う。二人とも異存ないか?」

「いいよぉぉぉぉぉおおお!!」

「あーうっさい、私もそれでいいわ」

「決まったな」

 

 どんな課題を出されることやら、頑張るぞー、えい、えい、むんっ! 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「こんな感じでどうかな。我ながら結構上手くできたと思うんだ」

「これが私だと・・・す、素晴らしい」

「ハヤヒデが、ハヤヒデが」

「あの剛毛がなんてこと」

 

「「ハヤヒデの髪の毛がサラッサラのストレートヘアになったぁあああ!!」」

 

 チケ蔵とタッちゃんが驚きの声を上げる。

 ヒデさんは手鏡に映る自分を見てウットリしている。気に入ってくれたみたいだ。

 

 出題されたのはブラッシング、くせっ毛に悩むヒデさんを満足させてくれとのこと。

 愛バたちに好評だった俺のテクニックがどこまで通用するか心配だったが、なんとかなった。

 

「マサキ、美容師になってヘアサロンやれば。癖っ毛で悩むお客さんで繁盛するよ」

「店を出すなら是非教えてくれ、毎週でも通うぞ」

「いや、美容師はそんな甘い職業じゃないからな。ブラッシング出来るだけじゃなれないよ」

「一体どうやったの」

「そうだよ、ハヤヒデの剛毛は今まで多くのブラシやスタイリング剤を葬って来たのに」

「ちょっとした覇気の応用だ」

 

 ヒーリングで傷を治療している時「治れ~治れ~」と念じているように。

 ブラッシング中は「真っ直ぐ、そうそう、真っ直ぐ綺麗によ」と念じながらするのがコツ。

 髪の毛一本一本に覇気を浸透させていくイメージ。

 慌てず、ゆっくり丁寧に、心を込めて。するとどうでしょう、サラサラヘアの完成です。

 

 クロとシロはブラッシングをよくせがんできたな、またしてあげたい。

 

「マサキの覇気あっての技だね。こんなブラッシングができる奴はそういないよ」

「感動じだぁああああ!ストレートハヤヒデなんて奇跡だよぉぉぉおおおおおおんんん!!」

「初の試みだし、俺は素人だ。その状態はもって3日ぐらいかな」

「3日もか!ありがとう十分だ。長年の夢が叶ったよ」

「俺はヒデさんのくせっ毛もいいと思うぞ」

「そうかい、世辞でも嬉しいよ。よーし、今日はこの髪を妹に自慢してやろう」

「妹いるんだ」

「君を叩きのめしたブライアンが妹さ」

「マジか、そう言われると似ているような」

 

 ヒデさんとリブは姉妹だった。毛色と髪質はともかく、顔立ちと覇気質が似ている。

 姉なら妹の弱点知ってるかもな、聞いてもいいのかしら。

 

「次はチケ蔵だな」

「わーい、よろしくお願いしまーす」

 

 躊躇せずにドカッと俺の前に腰を下ろすチケ蔵。

 この子は髪質は特に手を加える必要なし、ハヤヒーは毛量が多かったし大変だったぜ。

 丁寧にブラシをかけていく。

 

「おおお~なんか凄い、上手上手!」

「こら暴れない、じっとしてなさい」

「えへへ、なんかいいね、こういうの」

 

 屋外でのブラッシングは続く。場所は先程の広場から少し離れた中庭、休憩用テラス席。

 あえて人目のある所でやるのは三人の希望、一応俺の監視という名目。

 俺にとっても周囲への存在アピールになるので願ったりだ。

 気づいてるぞ様子見モブたちよ、チラチラ見てんだろ~。

 

 チケ蔵のブラッシングも完了。

 

「ありがとう!わぁ、尻尾も完璧だ。嬉しいな」

「喜んでくれてなにより。最後にタッちゃん」

「私はやめとく」

「遠慮することはない、せっかくだからやってもらうといい。凄くいいものだぞ」

「そうだよタイシン!マサキさんにブラッシングしてもらった記念も三人お揃い」

「ほらおいで~、試すのは一時の恥、試さないのは一生の恥」

「はぁ・・・変なことしたら蹴り飛ばすから」

「耳に触るのは?」

「アウト」

「そんな~」

 

 まあ、ブラッシングしてると耳ぐらい触りますよ。

 アウトと言ってたが特に怒られたりしない、最初は緊張していたが徐々にリラックスしてくれた。

 

「三人が何でUCにいるか聞いてもいいか?」

「アタシはお父さんが「パパ以外の男はうまぴょいの事しか考えてない野獣だ」って言ったからかな」

「それって娘を取られたくない父親のエゴでは」

「「ウマ娘だけの組織で腕を磨きなさい、男には関わるな」て何度も言ってた。個人的に人間嫌いって訳じゃないよ」

 

 チケ蔵は完全に父親が過保護をこじらせた結果だった、本人も特に疑問を感じずここまで来てしまったか。

 

「私は妹の付き添いだ。ブライアンは操者を必要ないと断じ、人間を歯牙にもかけていない」

「あの強さじゃ操者にしてくれって周りがうるさかったろうな」

「ああ、それにうんざりしたブライアンはここに行き着いた。過保護だとも思うが妹を放ってはおけないからね」

 

 ヒデさんはナリブを心配してついて来たと、どこのお姉ちゃんも偉大である。

 

「私は人間嫌い」

「タッちゃん・・・」

「ずっとチビだってバカにしてた癖に、騎神になった途端に手の平返してすり寄って来た」

「よしよし」

「大人しくしてれば調子に乗る、本気を出せば化物呼ばわりホントどうしろってのよ!」

「よしよし」

「わかってるわよ、人間もそんな奴ばかりじゃないってことは。でも、あの時の悔しさは忘れない」

「よしよし」

「あー思い出したらムカついてきた。あいつら全員足の小指骨折しろっ!!」

「よしよし」

「よしよしウザい!」

「ホント災難だったな。タッちゃんはよく我慢した、偉い偉い。溜め込んだ怒りは全部出してしまえ、たっぷり聞かせてもらうから」

「・・・あんたウザい」

 

 そう言いながらもプンスコ怒ったり、ションボリしながら話してくれるタッちゃん。

 ウマ娘への理解が少ない地域でよくある問題だ。

 高スペックのウマ娘を妬んだり、都合よく利用したりと、心無い人間のたちのせいで病む子もいる。

 周りと違うのを許さない環境ってのは残酷だ。子供のコミュニティならより顕著だろう

 

 話を聞きながらも、ブラッシングは継続、怒りが激しい時は頭と耳を撫でて落ち着かせる。

 家族や友人ににも吐き出せないことってあるよね。その点、俺なら問題ない訳で。

 ひとしきり話し終えたらスッキリしたのか大人しくなった。あれ・・・。

 

「初対面の男に愚痴って絡むなんて、何やってんのよ私」

「あの、タッちゃん」

「何?もう終わった」

「このまま覇気をもらってもいいか、今もの凄くドレインしやすい状態でして」

「・・・もう好きにすれば」

「じゃあ、いただきますっと」

 

 ナリタタイシンの覇気を手に入れた。

 これって俺に心を許してくれたってことだよな。嬉しいねぇ。

 

「タイシンが~あのキレたナイフがぁ~マサキさんにデレたよぉぉぉおおおおお!!!」

「驚いたな、マサキ君にはタイシン攻略の方程式が既に構築済みだったのか!」

「うっさい!デレてないし」

「タッちゃん、もうちょっといい?」

「仕方ないわね、痛くしないでよ////」

「「デレとるやないかい!!」」

 

 「ツンデレはツンツンする前に落とせばいい」サトノさん家のダイヤモンドちゃんが言ってました。

 「ツンを失ったツンデレに存在意義はない」シラカワさん家のシュウ君が言ってました。

 「最終的にデレてくれるなら何だっていい」アンドウさん家のマサキ君はこう考えております。

 

 その後、チケ蔵とヒデさんの覇気もドレインさせてもらいました。

 この三人と仲良くなれたのは僥倖(ぎょうこう)だったな。

 こちらを伺うモブたちの警戒心が少し和らいだように感じる。

 

 誰かが近づいて来る。あのウマ娘はエントランスにいた騎神の一人。

 

「なんだ、上手くやってるじゃないのさ」

「「姐御!」」

「アマさん、マサキを心配して来てくれたのか」

「そのつもりだったけど、その様子じゃあいらぬ世話だったね」

「先程はどうも、褐色美人さん。アンドウマサキです」

「皇帝からアンタのことは聞いてるよ。ヒシアマゾンだ、それしにても・・・へぇー」

「な、なんスカその目は、裸が見たいのなら有料になりますよ」

「コラ、私を盾にすんな」

 

 眼力の強い瞳でジロジロ見られた、思わずタッちゃんの後ろに隠れる。

 尻尾でペシペシ叩かれたけど、それでもしっかり庇ってくれるタッちゃんが好き。

 

「大丈夫だよ、マサキさん。姐御は見た目に反して超絶いいウマ娘だから」

「そうだぞ、オカン級の寛容さはブライアンもたじろぐ程だ」

「まあ、ここにいる奴らは皆世話になってるよ」

「その言葉信じるわよ、嘘ついたら耳にハチミツ塗りたくってアリの巣付近に放置プレイの刑」

「「「地味に怖っ!!!」」」

「アハハハ!この短期間でここまで仲良くなるとはね。ヒシアマ姐さんもビックリだよ」

 

 ヒシアマゾン

 褐色の肌に艶のある黒い毛並み、力強くも優しさを感じる瞳。

 野性味溢れる血気盛んなタイプだが、世話焼きで面倒見の良い姐御肌。

 家事スキルも高く、とても頼りがいのある存在なのだとか。

 

「さっそくブライアンとタイマンしたそうじゃないか」

「ボコボコだったけどな」

「あいつに挑んでピンピンしてる時点で大したもんさ。いいねぇ、人間にしておくには勿体ないよ。気に入った」

「ごめんなさい。俺には可愛すぎる二人の愛バがいるんです」

「なんで姐御が振られた感じになってんの」

「別に交際を申し込んじゃいないよ。おかしな奴だね」

 

 ヒシアマゾンは俺の面倒も見てくれるらしい・・・それってどこまで可能ですか?

 うちの愛バは入浴介助から添い寝までやってくれたぞ、マジ最高!

 

「部屋を用意したから案内するよ、ついて来なマサ公」

「わかりやした姐御!ついてくついてくついてく」

「どこに行こうとしてるんだい!なぜ反対方向に?」

「あーマサキは方向音痴なんだよ。たまーにそのキャラ設定を出してきてウザい」

「おいこらミオ、ウザいとか言うな泣くぞ」

「そいつが自慢のAIってヤツか、なんでもいいからついて来な、はぐれるんじゃないよ」

「ウッス。ありがとな三人ともまたな~」

「ばいばい~」

「また会おう」

「またね」

 

 三人娘と別れてヒシアマゾンこと姐御について行く。

 中央広場から少し離れた所にあったのはレンガ造りの建物。

 

「人間が来た時はここで待機してもらうのがルールなのさ、少々手狭だが勘弁しておくれよ」

「かまわないっス。いろいろとご迷惑をおかけします」

「掃除は行き届いているから安心しな、最近じゃ無許可で出入りしている奴もいるみたいだし」

 

 室内はキチンと整理整頓されており、洗面所、トイレ、ベッドにソファー、テーブル、冷蔵庫や電子レンジ等の家具家電も揃っている。ちょっと広めのワンルームマンションみたいな間取りだ。

 

 冷蔵庫の飲み物は自由に飲んでいい、ご飯は食堂でとるのが基本。

 ご飯の時間になったら呼びに来てくれるらしい。

 一人で勝手に行動して問題があったらいけないので気を遣ってくれたようだ。

 

「スマホは持ってるな、連絡先を教えておくよ。外出する時は必ず連絡する事、私じゃなくてもいいから気の許せるウマ娘を同行させるように」

「さっきの三人やキングたちなら付き合ってくれると思いたい」

「まだアンタの事を警戒している奴は大勢いるが、挫けるんじゃないよ。困った事があればアタシを頼ってくれればいい」

「ありがとう頼りにしてます姐御!」

「じゃあ、メシの時間までゆっくりしてな。タイマンで消耗してるだろうしね」

「は~い、ちなみに姐御の覇気を頂戴することは可能ですか?」

「焦るんじゃないよ。まずはそこにいるサボり魔と交渉したらどうだい」

 

 「また後でな」と言って姐御が部屋を出ていった。

 ソファーの上の毛布が不自然に盛り上がっているのには気づいてましたよ。

 「どっこいしょ」ソファーの空きスペースに腰を降ろす俺。

 ここまで近づいてやっと覇気が感じられる、大した隠形だな。

 

「あちゃ~バレバレだったみたいですね」

 

 まいったな~と頭を掻きながら毛布から出てきたのは飄々とした雰囲気のウマ娘。

 

「どうも~セイウンスカイっていいます」

「アンドウマサキ・・・あ、ヤベェこれ来たわ・・・ふぁ~眠い」

「ミオ・サスガだよ。マサキがお眠だから手短に」

「マサキさんにミオちゃん、りょーかいです。私のことはセイちゃんでもウンスでもスカイでもお好きにどうぞ」

「ごめんちょっと寝るわ、ミオ、姐御が来たら起こしてくれ」

「わかったよ」

「ちょいちょいちょい!何でスルーするかな~。あ、その毛布は私の」

「生温かい、グッスリ眠れそう」

「えっと、聞いてる?見えてる?セイちゃんここにいますよ~」

「お、抱き枕あるじゃん」

「え、え、ちょっと何して」

「おやすみ~」

「いい夢みろよ。さてさて、今の内にガッちゃんの行きそうな所を検索しておこうかな」

「うぇえええええええええ!?」

「うるさい・・・」

 

 仮眠をとって体力回復しておこう、リブとの戦闘で思いのほか覇気を消費してしまったからな。

 このソファー大きくてフカフカ、抱き枕は柔らかくていい匂いがする。

 

「温かい・・・ごめんよセイちゃんとやら・・・起きたら・・・お話しよ・・・」

「寝ちゃったよ、いきなりペース乱されたな」

 

 軽くホールドされているだけなので抜け出せない訳ではないが。

 なんとなく起こしてしまうのは悪い気がした。

 

「無防備すぎませんか~私が悪い子だったらどうするんです?」

 

 返事は無い、AIの方も沈黙したままだ。

 マサキの体から覇気の粒子が漏れ出すのじっと観察する。

 

「なるほどなるほど、これはいけません。セイちゃんもまた眠たくなって来ましたよっと」

 

 姐御が来なければ昼寝継続するつもりだったし、まあいいか。

 

「抱き枕の役目をしっかり果たしてあげましょう、特別サービスってことで」

「・・・青雲の癖に・・・線香の匂い・・・しない」

「失礼な寝言だな、線香ブランドじゃないですよーだ」

 

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