俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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おるごないと

 女神様も応援してくれるそうです。

 今日こそナリタブライアンに勝つぞ。

 

 

 リブとの戦闘開始。

 最初から解放状態で挑む、戦闘時は常時これが正解だ。

 

「はぁぁぁ!」

「くぉらっ!」

 

 ぶつかる拳と拳、最初は押し負けていたが今では拮抗している。

 

「ふんっ」

「ちっ」

 

 わかっていたけど、リブも数日前より動きが良くなっている。

 慢心せずにしっかり修練を積みレベルアップしてるのは敵ながら見事だ。

 数合打ち合った後に距離をとる、リブが牽制用にしては強力な覇気弾を撃ち込んで来る。

 こいつの威力もシャレになってないので全く油断できない。

 軌道は単純なので避ける、その先にはリブの蹴撃が待っているは想定済み。

 いつもなら属性攻撃で凌ぐ所だが、今日はダメだ。ダメージ覚悟でガードする。

 

「痛てぇ!」

「パターンを変えたか、何か企んでいるな」

「どうかなっ!」

 

 ブラスター発射!手足が塞がっていても口から光線吐いちゃう系男子です。

 

「今のが隠し玉か」

 

 あらら、簡単に防がれたな。でもちょっと驚いてるね。

 

「見せた事なかったっけ?」

「初見だ。ホント人間やめてるな」

「失礼な!実の姉はもっと凄いの吐くよ」

「お前にも姉貴がいるのか・・・怪獣姉弟か」

「それ姉さんの前で言うなよ、真っ二つにされるぞ」

「望む所だ!」

「望む!?」

 

 この戦闘狂め!斬艦刀を装備した姉さんの怖さを知らないからそんなこと言えるんだ。

 

「まだ何か隠してるだろう、さっさと見せろ」

「バーローまだ早いっつーの」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「押され始めた、これじゃ負けパターン入っちゃう」

「・・・マサキ」

「何かを待っているように見えるが?」

「お、わかる子がいるんだね。そこの白髪くせっ毛メガネっ子は洞察力A⁺だね」

「ひぃ!いつの間にか頭に黒光りする何かが!もしや、喋るゴキブリィィィーーー!?」

「ちがーう!私だよミオ・サスガだってば」

「マサキの腕時計だったアンタがなぜここに?」

「危ないから退避してろってさ」

 

 次第に防戦一方になるマサキ、固唾を飲んで見守るギャラリー。

 この時、覇気を分け与えた騎神たちは気づいていた。

 愛バほど強くはないが覇気を通わせた者同士には繋がりが出来る。

 マサキの場合はそれが特に顕著であり、僅かだが感情すら伝わることもある。

 

 (((こいつ、全然諦めてねぇ!!!)))

 

 自分の敗北など微塵も考えていない、どこまでも真っ直ぐな意志を感じる。

 

「根性だけはいっちょ前だな」

「え、何?今バカにしたか」

「粒子量が減ってきてるぞ、そろそろお終いか」

「まだやれる」

 

 リブの指摘したように覇気粒子がみるみる減少していく。

 俺のエネルギー残量を明確に示しているのがわかるのか、ギャラリーから落胆ムードが漂う。

 

「もしかしたらって思ったけど、やっぱり」

「無謀だったか」

「頑張ってほしい、応援してあげたい、でも」

 

「マサ公本人が諦めてないのに、勝手なこと言ってるじゃないよ!」

「でもでも~、光がどんどん弱くなってます~」

「君の舞台がこんな幕引きだなんて認めない。さあ、魅せてくれ、本当の君を」

「心配ないさ、なにか企んでる顔をしてるからね」

 

「エアグルーブ、マルゼンスキー、皆を少し下がらせてくれ。障壁の強度も上げておこう」

「合点承知の助、いよいよかしら」

「了解です。おい、お前たちも手伝え」

 

 何かを察したルルたちがギャラリーを少し遠ざける。

 そして、俺の覇気放出が止まった。

 

「自慢の属性を出さずにガス欠か・・・終わりだ、じっとしていれば一撃で気絶させてやる」

「結構かかったな」

「何を言って」

「お楽しみはここからだぞ」

「まさかお前」

 

 完全に停止したと思った覇気放出が再開!!

 出力、粒子量共に今までの比ではない。一瞬で周囲を美しい緑の輝きが埋め尽くす。

 止まらない、止められない、やっと外に出れたことを歓喜するかのように溢れる大出量の覇気。

 これが、こんなものが、たった一人の人間から出ているのが信じられない。

 

 覇気の爆発、それを行っている男を前にギャラリーはおろかブライアンも動けない。

 

「ひぁっ!何!なにこれ!」

「今までも十二分に狂った量だったのに、更に出して来おった」

「待ってよ、この覇気、超級よりも上なんじゃ」

「ダメ、クラクラする。立っていられない」

「無理せず座ってな、耐性の無い奴は意識をもっていかれるぞ」

「やば、マジで漏らす所だった」

「ヤバいヤバいヤバい、超危険だってコレ!」

「おかしいな、震えるほど怖いはずなのに。どこか温かくて優しい覇気だってわかる」

 

 更なる異常が発生、拡散する粒子の一つ一つから何かが伝わって来る。

 この場に集った全てのウマ娘たちはある光景を見た。

 それは記憶、マサキの覇気が強く覚えている魂の記憶。

 

 あれは誰だろう。

 幼い二人のウマ娘が男に駆け寄って行く。

 顔はよく見えないが、一刻も早く男の下へ行きたい気持ちが二人から溢れている。

 

 早く、早く、早く、声が聞きたい、笑いかけて、撫でて、抱きしめて、好きだと言ってほしい。

 こちらに気づいた彼が「おいで」と手を広げて待ってくれるのが、たまらなく嬉しい。

 

 男に飛びつく二人、苦笑しながら二人を抱き上げる男。

 全力で甘えてマーキングするウマ娘たち、それを受け入れ二人をギュッと抱きしめる男。

 三人とも幸せそうだ。

 

 ロリコン?上等だよ!ずっと待っていた、ようやく会えた、最高に大切な宝物。

 嬉しい、幸せだ、こいつらに会えて良かった、離さない、ずっと一緒だ。

 

 なのに・・・

 

 眠ってしまった、一体いつ目覚めるのだろう。

 一緒にいられない、いなくなった、なぜこんなことに、俺はどうすれば。

 

 俺のせいか、俺がお前たちを追い詰めたのか、出会わない方が良かったなんて思いたくないのに。

 

 寂しい、怖い、悲しい、どうして、嫌だ、一人は嫌だ、また置いて行かれるのは嫌だ!

 

「全員、見えているし聞こえているな。これがマサキ君と愛バの記憶か」

「あいつ、こんな気持ちを抱えていたんだ」

「うおおぉぉぉんんん!!!マサキさん泣いてるよぉぉぉぉぉんんん!!!」

「寝ている時のマサキさんからね~たまに漏れちゃうんだよ、こんな感じの記憶と思いが」

「一流の私も最初は驚いたわ。でもそのおかげでマサキと愛バの関係が本物だと、この人間は私達が思っているような下賤の輩ではないと確信したの」

 

 ・・・羨ましい。

 人間嫌いのUCウマ娘すらそう思ってしまう程に、仲睦まじい三人の様子がその思いが、自分たちの頑なな心を溶かしていく。

 こんなものを見せられてしまえば無理もない。

 人間との絆など無意味だと、あの三人を前にして断じることができる者がいるのか。

 

 その後にマサキが経験した寂しさや痛みも理解してしまう。

 そのために、あんなに必死に。

 そうか、あなたはウマ娘のために命を賭けられる人間なんだね。

 

「マサキ君が皆とすぐに仲良くなった理由がわかったよ」

「はい、奴の思いはそこにいるだけで周囲に伝わるようです。ここまでハッキリとではないですが」

「愛バを大切に思う気持ちが無意識に伝達され、受信した方は彼を放っておけないか」

「そんな堅苦しいものじゃないわ、全てはマサキ君の人柄と「愛」のなせる結果よ」

「愛か」

「愛よ」

「愛ならば奇跡が起きても仕方がないね」

 

 希望の灯を胸に男は旅を続ける。

 

 待っていてくれ、必ず助ける、諦めない、取り戻す、もう一度、何があっても、お前たちを、絶対に。

 

 だって俺は・・・かけがえのない二人のことが・・・そう。

 

 自分でも呆れるぐらい大好きなんだから!!!

 

「わぉ!大胆~」

「えーと////」

「はは、参ったねこれは」

「なんかこっちが照れる////」

「ひゅー惚気過ぎーーー!!!」

「あんなに思われてる愛バが素直にうらやま」

 

 こりゃ恥ずかしい!俺の思いが筒抜け状態、これがサトラレですか。

 一人は嫌だ?・・・何を勘違いしているんだ俺は。

 ずっと誰か見守ってくれていた、姉さん、園長、母さん、沢山の人たちに今も助けてもらっているじゃないか。

 それに、あいつらとは離れていてもずっと繋がっている!

 

 さあ、やるぞ!アクセル発動!!

 鍵の使い方はもう理解してる。三つ目をぶっ刺すのは初めてだけど。

 鍵の正体は天級騎神の属性覇気。それを使って俺の覇気中枢にある扉を開けるんだ。

 

 攻撃時に風、重力、炎を使用していたのが外側に向けた場合。

 これを内側に、更なる力を引き出すために覇気中枢を刺激するのに使う。

 これがメルアの言っていた「鍵」の使い方で合ってますよね?間違ってたらもう知らん!

 そもそも、見よう見真似で母さんたちみたいになろうだなんて、おこがましい。

 天級の力をメインウェポンにするには俺はまだ未熟だ。

 ちょっとだけ背中を押してほしい時に頼らせてもらうのが正しい使い方なんだ。

 

 扉へ辿り着くには余分な覇気を一度全部放出する必要があることも最近知った。

 だから待っていたんだよ。

 一つ目、シルフィードを差し込むと扉の奥から通常より濃い覇気が出た。

 二つ目、グラヴィティで更に加速する放出、ついでに胸に秘めた思いが暴露された。

 そして三つ目、サラマンダーを使うのはこれが初めて。いけるよな。

 

「さてどうなる」

 

 ピキッ・・・パキッ・・・ガキッ、ビキビキビキィバキィィィーーー!!!

 

 何の音?なんか硬いものが精製されているような。

 

 (やりましたね!)

 (メルア!)

 (今繋げます、さあ手を伸ばして)

 (よっしゃ)

 

 俺の内部で起こっていることがイメージされる、扉の奥から女の子が腕を伸ばしている感じがする。

 ちょっとしか開いてないので片腕しか無理ぽい、扉を押さえているもう片方の腕がプルプルしてるけど大丈夫?

 

 (早くしてください~もう閉まりそう!このままじゃ扉に挟まるぅ!潰されちゃいます!)

 (ちょ!俺の深層領域で女神殺しなんて事件は勘弁だ!!)

 (死にはしません!でも、扉に挟まって身動きできない神なんて、いい笑い者です・・・(´Д⊂グスン)

 (泣かないで~、到着したから!はい握手だ!)

 

 握手というよりガッチリ掴んで引っ張られた。相当切羽詰まってたみたいだ。

 

 (パス形成よし、これで受け渡し完了です)

 (ありがとうメルア、それでこれからどうすればいい?)

 (考えずに感じる、それで全て上手くいきます)

 (よっしゃ!)

 

 ひらひらと振られた手が扉の奥へ引っ込んだ。

 意識が現実へ引き戻される。時間にして1秒も経っていない。

 

 ピキッパキパキパキパキパキッ!さっきからこの音どこから?

 

 ん?リブがこちらを見て目を丸くしている。なんだその目はぁ。

 周囲のギャラリーもポカンと口を開けてこちらを凝視している。

 

「誰だお前」

「おいおい、ボケたのか?俺はアンドウマサキだ」

「私が知っているマサキとお前はかなり違うな」

「はい?・・・ん」

 

 なんか手がゴツゴツするな~と思っていたが、視界に入った手と腕が緑の結晶に覆われていた。

 なにが起こってる?この結晶はクロとシロが変貌した例の結晶体?

 

「え?え?えぇぇ」

 

 まさかコレ、手だけじゃない!どこまでこんな状態なんだ?

 さっきの不可解な音は、覇気が結晶化していく音だったのかよ。

 顔をペタペタと触ってみると硬質なスベスベ感が伝わって来る・・・ハハハ、どうしよう。

 

「マサキ!鏡!鏡用意したから見て」

「ナイスだミオ!気が利くな」

 

 お気遣いのミオさんが、チケ蔵を上手くコントロールして姿見を用意してくれた。

 そこに映ったのは、全身を輝く結晶で構成された人型の異形だった。

 

「なんだこの化物はっ!無駄にキラッキラッしやがって!」

「お前だ!大事なことだからもう一度言うよ、その結晶人間はお前だ!マサキ!」

「やっぱそうか~俺か~」

 

 クロ、シロ、お前たちの操者はどんどん人間離れしていってます。

 こんな俺でも一緒にいてくれますか?

 

 色は違うけどこの姿、ゴルシが見せてくれた1stの記憶で暴れ回っていた滅びの獣。

 ベーオウルフとルシファーにそっくりじゃねーか!!!

 

 ざわ・・・ざわ・・・

 

 いきなり化物になった俺を前に騒がしくなるギャラリー。

 そりゃそうだ、誰だってビックリするわ!俺が一番びっくりしとるわ!

 

「姿は変わってもマサキに違いないな、ならば続けるぞ」

「リブ!わっ、ちょ、バカ」

「見た目通りの硬さ、砕きがいがありそうだ」

「この戦闘民族さんめ!」

 

 リブの拳をガード、今のでちょっと腕の結晶にヒビ入った!このまま腕ごと砕けるなんてことはないよね。

 戦闘は続行していいみたいだ、予想外の事態なのにみんなパニックにはなっていない。

 ルルたちが変貌した俺を見ている。

 きっと驚いただろう、こんな姿になった俺を見た反応が気になる。キモイ?それとも怖いか。

 

「マサキ」

「マサキさん」

「マサキ君」

「マサ公」

 

 ああ、覇気をくれたみんなに心配をさせてしまっている。

 

「「「「なんだその状態異常wwwおもしれぇwww」」」」

 

 そうでもないみたいですね。お前らなぁ・・・。

 

「アハハハwwwすごいイリュージョンだねwww」

「これが若さかwww」

「怪奇、結晶男現るwww」

「ユニコーンガンダムのラストで見たwww」

「フルサイコフレームだったのwww」

 

 ねぇ、これって異常事態だよ。人間が結晶怪人に変身したんだよ?笑ってる場合じゃないよ。

 ユニコーンはフェネクスが好きです!ガンダムNT見て改めて思った、とりあえずニュータイプ研究所は滅べ!

 

 こうしている間にもリブが攻め込んで来るので考えがまとまらない、どうしてこうなった。

 これが真のバスカーモード?

 

 (ちょっとメルアさん!女神様ってば!取り扱い説明書をください!今すぐ!)

 (オルゴナイト形成は・・・上手く行き過ぎたようですね)

 (メルア!良かった~帰ったのかと思ったぜ)

 (マサキさんが余りにテンパってるので戻って来ちゃいました)

 (ヘルプ!ヘルプミー!この間違った変身を解く方法を教えて)

 (別に間違ってませんよ、初回なので勢い余って全身にマテリアライズされたみたいです)

 (マテ?)

 (では説明いたします)

 

 生物が発する生命エネルギー(感情エネルギーを含む)が覇気。

 別名プラーナというが、メルアたちが生きていた時代はオルゴンエナジーとも呼ばれていたそうだ。

 

 高密度のオルゴンエナジーが物質化したものがオルゴナイト、漢字で書くと覇気結晶ってとこか。

 物質化した覇気を自在に使用する術を習得した超越的存在のウマ娘こそが三女神の正体。

 

 (物質化した覇気、オルゴナイトの力は強力ですよ。私たちもこれでドカン!とやってました)

 (ドカンねぇ、全身にくっついてるのはさすがに邪魔なんだが)

 (頑張って自分でとるか、相手に除去作業を手伝ってもらえばいいと思います)

 (どうやって?)

 (あ、来てくれましたよ)

 

「どこを見ている!」

「へ、おごっ!」

 

 メルアとの会話は1秒にも満たない刹那の間に行われているが、その僅かな隙が命取り。 

 顔面にいいパンチをいただきました。痛っ!衝撃凄い!

 

 ピシッ!あれ、俺の顔割れてね?

 

 リブのパンチで亀裂の入った顔面、そこから全身に崩壊が広がっていく。

 よーし、このまま脱ぎ捨ててしまおう。脱皮ですよ脱皮。

 

「しゃあ!キャストオフだ!!」

「何!」

 

 覇気の出力を上昇させて邪魔な結晶をぶっ飛ばす。ふー8割ぐらい外れた、サッパリサッパリ!

 そのままぐるっと一回転、勢いのせた回し蹴りをリブにお見舞いする、インパクト時に足の結晶をパージしておくのも忘れない、うぉ!なんか結晶が爆裂して威力が跳ね上がった!

 

「この力!?」

「なるほど、こういう風に使えばいいのか」

 

 全身を覆っていた結晶はほ外れた砕け散った、両指先の結晶はまだ残っている。

 無くなった分は気にしなくていい、すぐにでも精製できるから。

 

「くらえ」

「お?」

 

 リブが握り込んだ拳から覇気弾を放つ、その数10発、半数は曲線的な軌道を描き俺の回避ルートを潰している。

 

「耐える!」

「バカが、お前の覇気ではガードした所で」

 

 昨日までの俺ならこんなのくらえば負け確定。

 全弾命中!衝撃がすんごいのよ。しかし、俺の防御力も上がっている。

 体を覆う通常の覇気コーティングに加えて、覇気の粒子が形成する防護壁がしっかり守ってくれる。

 

「ビックリしたけど、大丈夫」

「全弾食らって無傷だと」

 

 オルゴンクラウド

 放出した覇気粒子に指向性をもたせたもの。漢字では覇気雲?よくわかんね。

 今回はバリアとして使ってみた。これも、メルアの協力を得て獲得したバスカーモードの力。

 移動の補助、オルゴナイトの形成、防護壁の展開にと、いろいろ使えそうだ。

 

 (オルゴンエナジーを操作して、オルゴナイトとオルゴンクラウドを使いこなしましょう)

 (オルゴンがゲシュタルト崩壊しそう)

 (あなたが生み出した覇気をしっかり感じ取ってください)

 (やってみる)

 

 クロやシロならこの力、どう使うだろう。

 きっと、俺なんかよりも上手に扱うんだろうな。

 

 顔に残った結晶の仮面をはぎ取る。

 

 姿見に映ったその顔は、良かった、ちゃんと俺だった。

 

「今度こそお待たせだ、リブ」

「待ちくたびれたぞ、どんな姿になろうともぶっちぎってやる」」

「いつまでもやられっぱなしだと思うなよ、まずはその幻想をぶち壊す!」

「やってみろ!」

 

 強大な覇気を練り上げるリブ、俺もオルゴナイトをいつでも出せるように準備する。

 不慣れだなんて言ってられない、やるんだよ!

 

「「おおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

 

 激しい殴打のラッシュ、一撃ごとに拡散される覇気が衝撃となって周囲の者を驚嘆させる。

 

 ナリタブライアンはUCでも屈指の武闘派で超級騎神、その力は皇帝ルドルフと同格、将来的には天級の座も狙える逸材だ。

 その畏怖と羨望の対象である彼女と、互角の戦闘を繰り広げる男が存在するなど、数日前は誰も想像していなかっただろう。

 

「最初から普通じゃなかったけど、ここまでとはね~」

「ウララさん?大丈夫」

「あ・・・うん。すごいなって思って・・・もうわかんない」

「あのブライアンにダメージが入ってる?どういうこと」

「マサキの手に注目~、結晶が拳を覆ってるね。アレで攻撃されると多分メチャクチャ痛いと思う」

「理屈はわからないが、あの結晶は危険だ。不用意に触れるのはよくない」

「ねえねえハヤヒデ、これマサキさんが落とした結晶の欠片だよ。綺麗だね」

「注意喚起したばかりだぞ、チケットはもう好きにしたらいいと思う」

「お土産にもらっておこうかな・・・わっ!・・・あー砕け散って無くなった」

「一定時間で霧散するのか、粒子に戻っただけかもしれないな」

「謎だらけだね」

 

 

 メルアがイメージで力の使い方を教えてくれる。神様になる前にはこうやって戦っていたのだろうか。

 

 (私がお手伝いできるのはここまでです。後はあなた次第)

 (ありがとうメルア、頑張ってみる)

 (いつも応援してますからね、あなたに女神の祝福を)

 

 リブから攻撃をもらう、痛いけどオルゴンクラウドのお蔭かダメージは昨日の半分以下に抑えられる。

 こちらの攻撃、オルゴナイトを纏った手足はそれだけで凶器だ。リブの強固な覇気防御層を越えてダメージを与えることができる。

 

「痛い!でもダウンするほどじゃない、お前はどうだ!痛かったら泣いてもいいのよ?」

「相手の攻撃で痛みを感じるのは久しい、もっと痛みをくれ」

「Mかよ」

 

 攻撃や防御の度にオルゴナイトが砕け散る。その都度、新規に精製するがリブの連撃を前に隙を見せれば一気に追い込まれるので注意。

 

 蹴りを放つ、攻撃をヒットさせる瞬間を狙い、こちらからオルゴナイトを爆散させる!

 

「ぐっ!」

 

 こいつは有効、リブからしたら打撃と同時に爆弾をゼロ距離で起爆されたようなもの。

 力加減や精度はまだ改良の余地あり。

 

 ギャラリーの方へ飛び後退するリブ、ルルとアグルたちの誘導で既に退避完了済み。

 逃がさない!ここで攻めないでいつやるんだよ。

 手にオルゴナイトを精製、結晶の拳を食らいなさい!

 一瞬だがルルたちと目が合う「行け!やってみせろ!」と応援してくれる。

 ああ、見ててくれよ。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 渇く、渇く・・・渇きの正体もわからぬままに、闘争を求める。

 

 強者故に満たされない、もっともっとだ、頼むからまだ消えないでくれ。

 簡単に諦めないでくれ、私はまだ・・・戦っていたいんだ。

 

 姉貴の背を追いかけていた頃は良かった。

 自分の強さを自覚した時、喜びより虚しさが勝った。

 誰か・・・いないのか・・・。

 

 ルドルフは強かったが再戦はいつになるやら、エアグルーブは相手をしてくれない。

 姉貴は?アマさんは?他のみんなは?

 こうなったら天級騎神に挑むしかないと思いかけた時、あいつは現れた。

 

 一般人よりはマシ、ただそれだけの男。

 

 手合わせを挑まれたのでノックアウトしてやった。つまらない、もう来ないだろうな。

 予想に反して次の日も、また次の日も懲りずに挑戦してくる。いつもへばっている癖にしつこい。

 何かを秘めているのを感じるが、こいつの成長を待っていては人生終わってしまう。

 もしかしたらと思ったんだが、人間に期待するなんてどうかしていた。

 

 そうして今日も渇いていくはずだった。

 

「逃がすかぁ!!」

「っ!」

 

 人間、マサキは限界を超えてみせた。

 結晶を身に纏いこちらを吹き飛ばす威力の一撃を叩き込もうとしてくる。

 必死の形相、息を荒げ、痛む体にムチ打ちながらも果敢に攻めてくる。

 その目が、顔が、覇気が、全身が、言っている「お前をぶっ飛ばす!」と。

 

 ああ、そうか。

 

 私は誰かに、追いかけてほしかった。あの頃みたいに一緒に遊んでほしかったんだ。

 

 渇きはもう感じていない、満たされていく。

 

 (どこまでも食い下がって来る)

 

 広場を飛び出し、ギャラリーを置き去りにして、基地を走り回りながら攻防を続ける。

 いくつか建物を壊したが知ったことか!こんなに楽しい戦いをやめられる訳が無い!

 走りながらぶつかり合う。

 

 (振り切れない?この私が・・・)

 

 面白い、面白い、自然と顔に笑みが浮かぶ。

 マサキの手刀を首の動きだけで回避して殴り飛ばす。

 攻撃を避けきれなかった髪の毛が宙を舞う、今のは危なかった、汗が頬を伝っていくのを感じる。

 こんなに愉快なのは久しぶりだ。

 

「何笑ってんだ!そんなに俺の顔は愉快かコラ!」

「アンドウマサキ・・・感謝する」

「え、何、急に?」

「さあ、とことんやろう!」

「あ、はい」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 マサキとブライアンの戦闘は基地内から外へ移行した。

 二人に置いてけぼりをくらったギャラリーたちは建物の屋上や基地外壁の上に昇るなど、思い思いの場所で観戦中である。

 

「ああー!おいでよバクシンの森が、お二人のパワーで荒れ地になってしまいます!」

「森の名前あったんだwww」

「そろそろ決着がつきそうね」

「ブライアンの奴、皇帝と手合わせした時より強くなっている。マサキのしつこさに感化されたのか」

「マサキ君がこれまで歩んで来た行程を肯定しよう皇帝だけに!」

「・・・・」やる気が下がった

「皇帝だけに!!」

「二回も言わなくて結構です」

「私の発言(ダジャレ)についての感想を400字以内で答えよ」

「不快」

「漢字二文字はやめて!?」

 

 女帝のやる気が絶不調になった頃、マサキとブライアンの戦闘は佳境に入っていた。

 

 苦しい、心臓の鼓動がうるさい、疲労もピークだ。

 ここでぶっ倒れてしまえば楽になるぞ、もういいじゃないか、よく頑張ったよ。

 やめろ、そんな誘惑にのってたまるか!甘えるな!倒れるのは勝ってからだ。

 

「確かこうだったな」

「おいおい、まだ覇気が残っているのかよ。超級騎神ってのはどうかしてるぜ」

「お前が言うな。行くぞ!」

 

 リブが出す桁外れの覇気が炎のように揺らめくオーラの形をとる。

 合わせた手の平に覇気を集中し、溜めた後に発射される。

 

「かめ〇〇波ーーー!!!」

「言った!そしてやりおった!!」

 

 なんか見た事ある構えだと思ったら、皆ご存じのアレだった。

 再現度が高い、威力も元ネタ通りだったらヤバい。これには応えねば。

 

「すうぅぅぅーーーはぁぁぁっ!!!」

 

 オルゴンブラスター発射!

 本日の一発目よりも威力が上がっているぞ。

 

 リブのかめ〇〇波と俺のブラスターがぶつかる、真っ向から受けて立つ。

 光線同士の競合いが開始される。

 

「これはきっつい・・・」

 

 光線の太さが倍ぐらい違う、リブの方が厚さがあるので不利っスね。

 口から出した後は腕で押し出す感じにしてます。

 だったら最初から手で撃て?それは好みの問題です。口から出した方がワイルドだと思ってる俺です。

 いやーーー!押されてるーーー!!ぐぎぎぎぎぎ。

 残念パワーが足りない。

 

 そうだ、アレがいい。

 メルアが見せてくれたイメージではもっと大出力の極太ビームをぶっ放すウマ娘がいた。

 今の俺ならきっと再現できるはず、やってやんよ。

 

 リブにじりじりと押されている最中、覇気を集中、オルゴンクラウドで周囲に拡散した余剰分も全てかき集める。

 後ほんの少しで俺に到達しそうになったかめ〇〇波を押し戻す準備完了。

 ギリギリまで溜めに溜めたぞ。

 ブラスターを超える高威力、高射程を誇るであろうその技をぶっぱなす。

 

「うぉらぁあああああああああああああああ!!!」 

 

 オルゴンスレイブ

 発射された瞬間に形勢逆転、かめ〇〇派を飲み込んでリブへ直進。

 オルゴンエネルギーの奔流がリブめがけて浴びせられた。その直後に大爆発!

 

 まだ終わりじゃない。

 予想通り、爆炎の中からリブが飛び出して来た。

 衣服がちょっとボロボロになってるがかまわず突貫してくる。

 お前ホントすげえな。

 俺なんてもう倒れそうだ。おそらくこれがラスト、最後まで付き合うぞ。

 

「アンドウマサキ!!!」

「ナリタブライアン!!!」

 

 オルゴンクラウドの防壁を貫通するリブの拳、迎撃した俺の右手から嫌な音と激しい痛み。

 くそ痛い!結晶の精製が間に合わなかった!?利き手を潰されたか。

 

「これでっ!!」

 

 終わりにしてたまるか!

 片腕を殺しただけで満足か?随分とお優しい事で。

 

「まだだっ!」

「が、左の!?」

 

 オルゴナイトを纏った左の手指がリブの胴体に打ち込まれる。

 そこから更に結晶を精製、ここまで距離が近いとこっちもダメージ覚悟だが仕方がない。

 

「行っけぇぇぇ!!!」

 

 爆裂!!!

 膨大な覇気で精製された左手の結晶が破壊の力となって砕け散る。

 

 フィンガークリーブ

 オルゴナイトを纏った貫手の連撃。

 本来ならばラストに鋭利なオルゴナイトのロケットパンチをぶち込んだ後に爆裂させる。

 

 今回はゼロ距離でぶち込んだので二人とも吹っ飛びました。

 

 最後の瞬間、俺とリブの思考がリンクする。

 

 (どうした?もっと嬉しそうな顔をしろ)

 (ありがとう)

 (礼などするな・・・覚えていろ、次はぶっちぎってやるからな)

 (その時はまた、よろしく頼む)

 (お前を見くびっていた私の負けだ。そして限界を超えたバカなお前の勝ちだ)

 (素直に褒めてくれませんかねぇ)

 

 二人して大地に転がる。

 立ち上がるのが辛い。お、ルルたちがこっちに向かってる。

 カッコだけはつけとかないとな。

 

 フラフラのままゾンビのように立ち上がり、リブの下へ。

 あらら、気絶しちゃってるよ。眠っている時はカワイイのね。

 服をボロボロにしちゃったので、俺の上着(こっちもボロボロだけど)をかけておく。

 

 到着したルルたちが破壊の残滓と俺たちを確認する。

 

「勝負あり!二人とも良く戦った。勝者!アンドウマサキ!!」

 

 ルルの声に合わせて拳を天へ突きあげる。なんかそれっぽいだろ。

 

「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」

 

 なんかギャラリーからよくわからん雄叫びが上がった。

 

 つ、疲れた。

 

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