クロ、シロと名付けた二人がきちんと自己紹介したいらしい。
「では始めます。準備はいいですかクロちゃん」
「うん。打ち合わせ通りにやってやんよ」
いつの間にかリハーサルもバッチリらしい。
では、聞かせてもらおうかお前たちの本当の名前とやらを!
「座りますね」
「せいざー」
部屋のフローリングには通販で購入したイ草マットが敷いてある。
少々厚みのあるマットなので正座した足にも優しいはずだ。
慣れた感じで正座するクロとシロ、背筋がキッチリ伸びた佇まいは礼儀作法の教育を受けているが感じられる。
釣られて俺も正座しちゃう、足が痺れる前にちゃっちゃとお願いします。
目をつむり深呼吸、再び開眼した二人の身に纏う空気が変わる。
顔つきも大人びた気品と風格を備えた堂々としたものになった。
なんだか俺の方が緊張して来た。
「「アンドウマサキ様」」
「まずは、あなた様に感謝を」
「この度は私たちを助けていただき、誠にありがとうございます」
「この御恩は一生忘れません、いつか必ずお返しします」
様付けキターー!!
失礼、大分年下の女子からの様付けにちょっと興奮しちゃった。
二人とも仰々しいわよ、もっとフランクに接してくれていいのよ。
クロの敬語はとっても新鮮!
「これまでの非礼の数々をどうかお許しください」
「あなた様のご厚意に甘えてしまい無礼を働いた事、深くお詫び申し上げます」
「今後もご迷惑をお掛けする事かと存じますが、何卒宜しくお願い致します」
ん?今後って何よ?
「これからも迷惑かけるけどごめーんね!」て事なの?
やだホントやめて。
「大変申し遅れましたが、今こそ私たちの真名を解禁致します」
わお、真名(しんめい)とか言い出したよ。
何?本名バレたら弱点が露呈する程の有名人なの?
君らの正体サーヴァントなの?クラスはウマだけにライダーですか?
クロシロが頷き合い、最初にクロが続いてシロが自身の名を告げる。
この瞬間を待っていたんだ!
「私はキタ‥‥‥キタサンブラック」
「私はサトノ‥‥‥サトノダイヤモンド」
「「この名とこの命、髪の毛一本から血の一滴に至るまで全てをあなた様に捧げます」」
「「どうか、末永くよろしくお願いします」」
三つ指をついて頭を下げるクロシロ、お辞儀が堂に入ってるな。
えー、クロがキタサンブラックで、シロがサトノダイヤモンドね了解了解。
ウマ娘の名前はどの子もスーパーロボットみたいで、かっけーな!!
それよりさあ「血の一滴~」のあたりの文言…‥重いよ!重すぎる!!
もっと自分を大事にしなさいよ、簡単に捧げちゃダメなんだからね!
なるほどはるほど、これが俗にいう愛が重馬場ですか!
「ちょ、長い長い!もう頭を上げてくれ!」
いつまでやってんのよ。そのまま寝たりしないでよね。
ゆっくりと頭を上げる二人。
その顔は元の愛らしい美小女に戻っていた。
「どうでしたか?即席だったのでグダグダしゃちゃいましたかね」
「堅苦しいの疲れるよねー」
「いやいや、大したもんだ。なんか二人とも立派だった」
「褒められた、嬉しい!」
「はい、頑張った甲斐がありました」
チビ二人がビシッと挨拶してくれたのだ、俺もしっかりしないとな。
行くぜ、俺のターン!
「キタサンブラック」
「はい!」
「サトノダイヤモンド」
「はい」
「もう知っているだろが、改めて言わせてくれ」
「「はい」」
「俺の名はアンドウマサキ」
そう、俺はアンドウマサキ、トレーナーを目指しているただの人間さ。
皆さん俺が主人公ですよ!メタいですか?そうですか。
「お前たちを出会って…なんだまあ、割と楽しんでいる自分がいる」
短い間かもしれないけど、二人ともよろしく頼む」
こんなんでどうでしょう?
「拍手ー」
「ぱちぱちぱち」
小さな手で拍手する二人。
照れる/////
「ようやく正式なご挨拶ができました。ところでマサキさん」
「何だ?」
「あー言っちゃうんだ」
「今まで空気を読んでましたが、もう我慢できません」
「うんうん。そろそろ限界」
「・・・・」
「もっと早くにお伝えすべきでした」
「タイミングが難しいよね」
「何だよ、もったいつけずに言ってくれよ」
「一緒に言おうよ」
「二人の力を合わせればどんな困難も乗り越えられる、やりますよクロちゃん!」
「おっけーシロちゃん!」
本日、何度目かわからないが・・・スゴク・・・イヤナヨカンガシマス。
「「マサキさん」」
こいつらがステレオで話すのトラウマになりそう。
「「鼻毛が出てますよ!!!」」
恥ずかしい!!!!!!!!
しばらくして・・・・。
出てたわ!めっちゃピョロピョロしてたわ!鼻毛神拳の伝承者になるところだったわ!
ボーボボのものまね、シュウがめちゃくちゃ上手いんだよなぁ。
「いつからよ」
「ん?」
「いつから気づいていたのよ!言いなさい!!」
「テンパるとオネエになりますよね。キモかわいいー」
「マサキさんがお風呂から上がった時からかな」
「鼻毛出しながら優しくブラッシングしてくれましたね///」
結構前じゃねーか。
ブラッシング中、俺に向けてくれた笑顔はいったい何・・・。
「ヒドイじゃない!そうやってずっと笑い者にしていたのね!」
「何度も言おうとしたよ」
「絆が深まっている最中に"鼻毛"で水を差したくなかったんですよ!」
「せめて真名解禁の前には言ってほしかった・・・・」
「あの時が一番大変だったねー、頑張った私」
「こっちがマジモードになっているのに、目の前にいる男性の鼻毛ピョロピョロwwww」
「絶対に笑ってはいけないウマ娘www始まったwww」
笑ってんじゃねーか!
クロシロあうとー。
その尻、思いっきり蹴り上げてやろうか?
「信じない!もう誰も信じない!」
「過去を悔いても何も変わりませんよ?機嫌直してください」
「世界は残酷なんだよー、いえーがー」
クソがっ!
この鼻毛どもめ一本残らず駆逐してやる!!!
鼻毛の永久脱毛とかできるのかしら?ちょっと怖いし痛そうなのでやめとこ。
「よし!切り替えて行くぞ!もう終わった事だしな」
「立ち直りが早い所も好きですよ」
「お腹減ったー」
「そろそろ来てもいいころなんだが・・・」
その時ちょうど「ピンポーン!」とインターホンが鳴った。
キタキタキタキタピザが来た!
オートロックを解除、配達員の到着を待つ再びインターホンが鳴る。
「出てくるなよ」
「「ラジャー!」」
聞き分けの良い二人を残し玄関へ向かう。
「お待たせしました。ウマウマピザです」
「ああ、ご苦労さん。お代はこれで・・・」
キャッシュレス決済便利。
お、よく見ればこの配達員さんウマ娘だ。
「いいマンションにお住みですね、一人暮らしですか?」
「え、あ、そ、そうです。一人ですよ、はは・・・」
話しかけられると思ってなかったのでどもる。
コミュ障かっ!
「お一人でこんなに頼むなんてピザお好きなんですね」
「そうなんですよ、今日はお腹が空いていて・・・」
「あ、もしかして今彼女さんが来てますか?」
「いえ、今はフリーなんで・・・・・」
何?この人何?決済終わってるんだからピザ置いて帰ってよ。
それとも最近のデリバリーはボッチ用に"配達員さんと雑談できるサービス"でもあるの。
クロシロの靴を隠しておいて正解だったな。
女児用の靴二足も発見されたらもれなく無料で通報サービスされる所だった、セーフ。
「変ですね?女の子の匂いがしたので、てっきり誰か連れ込んでるのかと思ったのですが」
「・・・・」
「ごめんなさい、ウマ娘は嗅覚が鋭いので余計な詮索しちゃいました」
「・・・・」
「きっと私の気のせいですね。では、こちら注文の品になります。ありがとうございました」
ピザを受け取る、扉が閉まる。
こえーよ!超こえーよ!なんなの?本当になんなの?
セーフか今のセーフか?大丈夫、落ち着け。
まだ慌てるような時間じゃないよね。
きっとそうあれだ、俺に一目惚れして彼女がいるかどうか、つい聞いちゃったんだよ。
そう思ったらなんかドキドキしてきた、ピザまた頼もうかな。
「ピザが来たぞー」
「「いえーい!」」
部屋に戻りピザをテーブルに並べる。
さあ、宴の始まりじゃー。