俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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くろまく

 なんということでしょう。

 ゲートから1stを滅ぼした紅い獣が出て来た。

 合体してるけど弱っているぞ。

 今がチャンス!てなわけで、破壊獣ベーオルシファーに挑む。

 

 

「出し惜しみは無しだ!」

 

 先手必勝、オルゴンブラスター(口から怪光線)を吐き出す。

 ゴルシとココも続く。

 

「こいつもだ!青龍鱗」

「行って!シャドウランサー!」

 

 俺のブラスターとゴルシが飛ばした青いエネルギー波が同時に着弾する。

 その直後にココが手甲から放った矢じり状の弾丸が追い打ちをかける。

 

「・・・・アァァ」

 

 相手の損傷は軽微、巨大化した爪付きの腕で一応ガードしたようだ。

 今のは戦闘開始の合図だ。気にせずに攻める。

 

「この切っ先、触れれば斬れるぞ!」

「それ伸びるの!」

 

 ゴルシが手甲に装着されたブレードを伸ばしベーオルシファーに飛びかかる。

 おわ!?分身した?質量を持った残像ですか。理屈はわからないが高度なテクだ。

 

「ゴルシが五人、ウザさも五倍だな」

「言ってる場合か!早よ援護しろ」

「注意して、このまま黙ってるとは思えないよ」

 

 分身を繰り出し包囲しながら斬撃を見舞う。紅い結晶で構成された体に傷が増えていく。

 相手は最初から消耗している、このまま削っていけば倒せるはずだが。

 

 ビキビキと嫌な音を立てベーオルシファーの尻尾に変化が起こる。

 無数の紅い棘が尻尾の表面にビッシリと生え揃った。

 それをどうする気だ?ああなるほど、射出するのね。

 

「アアアァァァーーーー!」

「うへぇ」

「あらら、数が多すぎる」

「防御は俺が、オルゴンクラウド!防いでみせろや!」

 

 全方位に飛び散る紅い結晶体の棘。

 ゴルシは上手いこと叩き落した、ココと俺に向かって飛んで来たヤツはオルゴンクラウドで防ぐ。

 危ねぇ、通常の覇気ガードでは大ダメージになるところだ。

 一回では終わらす気はないらしい、尻尾が次弾を生やそうとして、そこへ間髪入れずに光の矢が突き刺ささる。

 光の矢が爆発、結晶弾の生成を妨害する。

 防御を俺に任せたココが弓矢による射撃を行った結果だ。

 

「ルオォォォ」

「幻影の矢、もっと味合わせてあげる。さあ、どんどんいくよ」

「ナイスアシストだボス、右は任せな」

「じゃあ俺は左を」

 

 覇気の循環でリンク状態となった恩恵はでかい。

 一つ、俺の覇気を常に補給してやれる(ステータスアップと回復を含む)。

 二つ、仲間の思考と次の行動が大まかに読めること。

 これが連携攻撃には持ってこいなんですよ、援護動作が淀みなく行えるからね。

 

 ココはイリュージョンアローを連射して相手の射撃を阻止。

 ゴルシがカギ爪と斬撃合戦を始める。

 ちょっとでも隙を見せたら・・・俺がそこを狙う!

 

「腹が・・がら空きじゃぁぁ!!」

 

 結晶体を纏った五指をベーオルシファーの腹に叩き込んでやろうとしたが、三本の尻尾が邪魔をする。

 攻撃にも防御にも使える。こういう隠し腕的みたいな武器は個人的に大好き。

 数が三本でよかった、過去記録のルシファーは5本の尻尾がそれぞれ違う動き可能としていた。

 もしかしたらもっと本数を増やせるのかもしれない、恐ろしい。

 あんなのやられたら対処しきれない。

 

「悪いな、一本もらうぜ!」

「!?」

 

 一番動きの悪い一本を強引に掴んで引きちぎる。

 

「とったどぉーーー!」

「バカ!素手で無暗に触るな」

「へ?」

 

 ゴルシの忠告は遅かった。

 紅い尻尾から結晶体が膨れ上がるように生成される、その結晶体が掴んだこちらの腕を飲み込もうと浸食を開始。紅い結晶が俺の手から腕を伝って全身に広がろうとする。

 な、なんじゃこりゃぁーー!

 

「ビ、ビックリさせんなや!」

 

 紅い結晶の浸食を俺のオルゴナイトで打消し逆に飲み込む。

 緑の結晶が勝ったぞ!そのまま尻尾の残骸もオルゴナイトで上書きした後、霧散させる。

 

「何今の怖い、俺のこと食おうとしたぞ」

「お前の方が怖いわ!やり返した上に勝つか普通」

「やっぱりマサキなら平気だったね。逆に食べちゃうのは予想外だったけど」

「説明おなしゃす」

「奴の得意技だ。触れたものを浸食、同化して自分の餌にする」

「マジか!」

「生物や機械のコントロールを奪って手駒にしたりとかもできたはず。アレめっちゃ厄介なんだよ!」

「100人規模のPT部隊を丸ごと奴に乗っ取られたこともあったな。あの時はマジ絶望した」

「素手がNGなら先に教えとけよ」

「一般兵は接近戦そのものがアウトだったよ。浸食防止ぐコーティングが施されているデバイス持ち以外は、発見したら即時撤退、遠距離のサポートに専念するってマニュアルがあったぐらい」

「俺は自分が出せるの結晶体、オルゴナイト(緑)がなんとかしてくれるから平気なのね」

「さっきちょっと触ったけど私も平気だったぞ」

「なにしてんの!・・・でもそっか、マサキとリンク状態にある私たちにも浸食耐性ができているんだ」

 

 俺のパッシブスキル有用でした。

 

「オオオオオオォォオォォ」

「うわーキレてるキレてる。マサキ、お前完全にロックオンされたぞ」

「ベーオルシファーにとって、マサキは最悪の抗体になるわけだから仕方ないね」

「一直線に向かって来た!?うわっとと」

 

 カギ爪、尻尾、足技、結晶射撃と連撃の全てがこっちに来る。

 俺に集中した?・・・コイツ・・・もうココとゴルシを眼中に入れてない。

 それでいい、狙ってこい。

 

「私のことはガン無視かよ。つれないな、1stで散々殺し合った仲だろう」

「オオォ」

「お前もマサキにゾッコンか、そういう所はソックリなんだな」

「ゴルシ!いらんこと言うな」

「おっと口が滑った。諦めな、マサキにはもう運命の相手がいるんだ」

「私は諦めないよっ!」

「バカこっちに矢を飛ばすな!あれだ・・うちのボスやメジロのお嬢もいるし、お前はいらないってよぉ!」

「あえて言おう、お前の席ねぇからぁ!」

「オォォォオォ」

 

 俺に注意し過ぎた所をゴルシが果敢に攻め上げる。

 俺の愛バと一緒にすんな・・・クロとシロには、こんな悲しい奴になってほしくないんだ。

 会話になってない独り言を続けながらベーオルシファーの体を蹴り上げる。

 ゴルシの意図を理解した俺も同じ動き、二人分の力が乗った蹴り上げを食らい宙に浮く異形の体。

 

「その隙は見逃さない!」

 

 空中に浮いたベーオルシファーに横なぎの斬撃を見舞うココ。

 弓矢による援護射撃の後、タイミングを合わせてジャンプしていた。

 跳躍力の高さもウマ娘の特徴、騎神ともなればそのジャンプは髭面の配管工にも引けを取らない。

 覇気で出来た光の剣が鮮やかな軌跡を描く、う、うつくしい。

 残っていた二本の尻尾を切断することに成功。

 ココは剣技もそれなりに使えるようだ、なんとも頼もしいね。

 

「こいつもくれてやる!」

 

 尻尾を失ってバランスを崩した所にさらなる追撃。

 ココと入れ替わりに飛び上がったゴルシが分身による連続攻撃。

 結晶の体を切り刻み、ラストに渾身の力を込めた打ち下ろしの斬撃。

 

「舞朱雀っ!!」

「オアアアァァァァァァ!!」

「「ヒューー!決まったぁーーー!!」」

 

 ベーオルシファーの右腕を根元からぶった斬った。

 着地姿勢を取ることもできずそのまま落下する。

 祭壇に置かれたオブジェ(謎の髑髏と怪しい液体?)を複数巻き込んで土煙が舞い、轟音が響く。

 それを見届けた後、華麗に着地した二人と喜びのハイタッチ。

 

「イエーイ!やってやったぜ!」

「今のいいんじゃない、さすがに効いたんじゃない、俺たちいけるんじゃない」

「私たち・・・本当に勝っちゃう。お願いだからフラグ立てないでよ二人とも!」

「「やったか!?」」

「やめろって言ってるだろ!ああもう」

「念入りな追撃をしておこう、オルゴンブラスタァァーーーー!!」

「エグい!」

「慎重なマサキも大好きだよ」

 

 土煙が晴れる前に口からビーム。

 覇気の反応が消えていない、奴はまだ生きている。

 三発目を撃とうとする前にそこから飛び出してくる紅い結晶体の獣。

 右腕と尻尾を失い、全身が崩れ去ろうとしている。まだやるか・・・

 

「オオォ・・・・ァァ」

「滅びよ!不届きものめが!」

「「「なんだと!!」」」

 

 ここで乱入だと!

 なんと、今まで姿を隠していたワカメことルオゾールがベーオルシファーの背後から攻撃を仕掛けたではありませんか。

 ちょいちょいちょい!おっさんなにしとんねん!

 

「貴様のせいで、1stの民がどれだけ苦しんだと思っている!ヴォルクルス様に代わって私が天罰を下し・・」

「アアアアアァァァァァッッッ!!」

「ぶへっ!」

「ルオゾール君ふっとばされたぁーーー!」

「何しに出て来たんだアレ」

 

 心なしか俺たちに向ける敵意以上の怒りでワカメを薙ぎ払ったように見えた。

 鬱陶しいから仕方ないね。

 おや、ワカメがすぐに立ち上がったぞ。思ったよりしぶとい。

 

「ベーオウルフ、ルシファー、貴様らの打倒こそが我が悲願・・・そのために私はヴォルクルス様を・・」

「フラフラじゃねーか、おいワカメ!あぶねぇぞ!」

「ほっとけ!ワカメが気を引いているうちにトドメをさすぞ」

 

 ベーオルシファー、略してベオルがワカメの方を向く、あらやだ嫌な予感。

 アレやばくね。

 俺の考えは合っていた、ベオルは目標をワカメに変更して・・・加速した!

 ちょ早っ!あの崩れた体でまだあれだけのスピードが出せるのかよ。

 

「オオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

「私が死んでも代わりはいるものぉぉぉ!」

 

 なぜ綾波レイのセリフを言ったのだろう?

 似合ってない上にキモイからやめてほしい!

 ベオルは苦肉の策としてワカメを食べることにしたようだ。 

 そのワカメ多分マズイよ、微量回復と同時に状態異常"毒"になりそうだけど大丈夫?

 ゴルシもココも動かない、というか捕食中に生まれる隙を待ってらっしゃる。

 非情非情ぅぅぅ!

 ええい・・・ちくしょうめーー!!

 

「そんなもの食べちゃいけません!」

「ガアアァァァ」

「なんと」

「「ええーー」」

 

 お食事妨害御免!ベオルの背中にドロップキック!

 ゴルシとココが不満そうな声を上げる。だまらっしゃい!

 不意を突かれたベオルは残った左腕と足のの爪で地面を削りながらブレーキング、体の構造が既存の生物とは違うのか骨折や負荷を気にしない無茶な動き、己の体が崩壊することもいとわない。

 体制を立て直し、踏み込みの一歩目から尋常ではない加速で俺とワカメの方へ突っ込んで来る。

 

「ああああ!もうやけくそだ!」

「え・・・な・・何を」

「「は?」」

「ウォアアアァァァーーー!」

 

 俺の行動に目が点になる仲間たち、そしてワカメもポカンとしてる。

 やりたくなかったよ!

 

「「お、お姫様抱っこしたぁ!!」」

「仕方ないだろうが!このワカメを食われたらベオルが回復するんだから、とりあえず助けただけ!俺だってなあ!こんなおっさんになんで・・・クロ、シロごめん俺汚れちゃった(´Д⊂グスン」

「何をやっているのです/////私まで攻略なさるおつもりか////わ、割といいかも・・フフ」

「頬を染めるなぁ!!」

「どんだけお人好しなんだかw」

「そ、そんな・・・マサキの守備範囲がわかんないよ。おっさんにお姫様抱っこするなんて・・・」

「ボス、ショックなのはわかるが、マサキがこっちに来るまで援護だ」

「あいつが全部悪い・・・ワカメコロスワカメコロスワカメコロス」

「ダメだこりゃ」

 

 ここで豆知識。

 ウマ娘と結婚した男性は結婚式で花嫁にお姫様抱っこしてもらうのがこの世界の定番。

 力関係が一目瞭然でわかりやすい幸せ夫婦誕生の瞬間です。

 もういっその事、お姫様じゃなくて"王子様抱っこ"という名称にすればいいと思う。

抱っこマイスターの俺はするのもされるのも好き。

 体の小さいクロとシロは俺の上半身と下半身を二人で仲良く持って移動したこともあったな・・・途中でケンカして綱引き始めた時は焦ったぜ。

 「はらわたをブチまけちゃうからやめてぇーー!」て叫んだらやっとやめてくれたな。

 

 お姫様抱っこにはね、なんていうか夢があるんですよ。

 それをおっさんにやってしまったわけで・・・人工呼吸よりマシだったと思うことにしよう。

 

 ワカメを抱えたまま追ってくるベオルから逃げ回る。

 一応ここは地下なんだよな、天井の高い広大な空間は鬼ごっこにも対応してます。

 結晶の棘、振り下ろされる爪、裂けた口の牙、驚異的なスピードとパワーでこっちを狙ってくる。

 地面、壁、柱を縦横無尽に蹴り上げながらの超高速移動の応酬。

 バスカーモードとアクセルの組み合わせが途切れた瞬間に捕まってしまうぞ。

 

「手頃な餌に目が眩んでる、そんなに食いたいかコレ?」

「コレですが何か?すぐ後ろに迫ってますぞ、さあ!もっと速く走るのです」

「調子にのんな!投げ捨てるぞ。おい、自慢のバリヤはどうした」

「あなたの結晶体と同様ですな、奴の攻撃は私のアストラルシフトを貫通します」

「同じ結晶ね・・・」

「私が食べられてしまってはせっかく与えたダメージが完全回復!絶体絶命になってしまう。そうならないように鋭意努力するのです」

「ホントに回復するか試してみるか、ワンチャン食中毒でスリップダメージが入るかも・・・」

「おやめください、死んでしまします!」

 

 ワカメが偉そうなのでやる気が出ない、あえて食べさせてみるのもアリかもしれない。

 ベオルの紅い結晶と俺の緑の結晶・・・どんな関係があるか考えるのは後回しだ。

 俺とリンク中のゴルシとココも捕食対象外になっている。

 今の所、唯一の回復手段のワカメを俺が持って逃げているから追ってくるわけね。

 

「なぜ外に出て食事をしないんだ、知性ないの?バカなの?」

「おそらく限界が近いのですよ、外で適当な人間を捕食する時間すら奴には惜しい。それにあなたがいる」

「俺から目を離したくないってか」

「理由は不明ですが、最初から奴はあなたを見ている。何か因縁がおありですかな」

「まあそれなりにな・・・要するにこのまま逃げ回っていれば」

「奴の体は崩壊し世界の危機は去るでしょう・・・これは!?アンドウマサキ、ゲートが!」

「はい?え・・・どういうこと」

 

 ベーオルシファーが出て来たゲートがもう一度輝きだす。

 待て何をしている・・・ああもう勘弁してくれ。

 

 ゲートに残っている大量の覇気がベーオルシファーに補給されていくだとぉ!!

 

「お前何をやらかしたワカメ!」

「私ではありませ・・・まさか・・・この会場に"あの御方"が」

「黒幕の仕業かい!どこだどこに」

「マサキ!こっちに一旦戻って来い」

「ワカメは捨てていいよ」

「不法投棄は感心しませんな!」

「きゃーー!ワカメがしがみついて激しく不快」

 

 ベーオルシファーが動きを止め、ゲートからのエネルギー補給を受ける。

 崩れかけた体がみるみる修復していく。

 ここで回復するんかい!強敵の超回復ってホント嫌い。

 我慢してワカメを助けた意味がこれで消失した、無駄な努力ご苦労様~てHU☆ZA☆KEN☆NA!

 

 よけいな海産物と一緒にココたちと合流。

 ワカメを降ろしてやっと不快な抱っこから解放される。

 

「ご苦労様でした。次の機会があれば是非またよろしくお願いします」

「次はない!もう絶対やらない」

「フフフ、嫌よ嫌よも好きの内ですぞ」

「ごるぁ!くそワカメ!お前マジでふざっけんな!やってくれてなボケ!私の男から離れろ、消し飛ばすぞ!」

「おお、怖い怖いw」

 

 怒りと嫉妬でチンピラと化したココがワカメに乱暴な蹴りをお見舞いする。

 それをヒョイと躱したワカメの不敵な笑みが余計にココを煽る。

 これが御三家頭首の成れの果てです・・・いや、メジロとサトノも似たようなもんか。

 俺に向き直ったココは正面から俺をハグする。

 

「かわいそうなマサキ、今すぐ浄化してあげるね!」

「うわぁい、熱烈なハグとマーキングだ。まだ戦闘中なのわかってる?」

「おぼぇ・・・ワカメ臭せぇ、人の男になんてことを・・・絶対ゆるさん」

「え、俺ワカメ臭いの。いやぁぁぁーーー!愛バたちに嫌われるのいやぁぁぁーーー!」

「誠に失礼ですな、私のダンディなスメルを理解しないとは」

「それただの加齢臭じゃね」

「安心してマサキ!私がなんとか匂いの上書きを・・・おぇ」

「無理すんなココ、お前ゲロ吐きそうな顔してるぞ。お願い吐かないで!ゲロ臭も追加とか嫌よ!」

「原料ラーメンのゲロか、なかなか破壊力高そうw」

「ふむ。ファイン家では想い人にゲロをぶっかける習慣があると、異常者のそれですな」

「そんなわけあるか!うぇっぷ・・・誰かファブリーズ持ってきて」

「市販の消臭剤にヘルプするほど臭いのか?もういいよココ、後でファブっとくから・・・(´Д⊂グスン」

「守れなかった・・・ごめん、ごめんねマサキ」

「そんなことより、アレを放置していてよいのですか」

 

 ワカメ臭でパニックになってる場合じゃなかった。

 理由は不明だが、再起動したゲートがベーオルシファーにエネルギー補給をしている。

 くそ、もう腕と尻尾が再生しかけてる。

 

「オルゴンクラウド最大展開!好き勝手にはやらせん!」

 

 指向性をもった覇気の粒子群がゲートに殺到する。

 瞬く間にゲートを埋め尽くしたそれは結晶化を開始、緑の結晶ドーナツが出来上りゲートの動きを止める。

 これでよし、回復妨害してやったりだ。

 

「ゲート全体を結晶で包み込み動きを封じましたか、器用なものですな」

「もう驚くのも飽きてきたがホントとんでもねぇ奴だ」

「やだ、私の操者(ほぼ確定)凄すぎ。惚れてまうやろーー!あ、とっくの昔に惚れてたよ」

「二人とも、こんどこそ決着をつけるぞ」

「了解、おいワカメ邪魔だからどっか行け」

「今日の所は見逃してあげる。早く消え失せてね」

「それはできない相談ですな、あ奴には散々辛酸を舐めさせられたものでして」

「は?私たちと共闘する気、厚顔無恥も甚だしいんだけど」

「判断は一応恩人であるマサキに任せます。いかがですかな?」

「敵の敵は味方ってか・・・いいぜ、協力してもらおう」

「ええーマサキ本気なの」

「妙なマネをしたらココが地獄の折檻をすればいい、その時は誰も止めない」

「わかったよ・・・今だけだからねくそワカメ。勘違いしないでよ」

「ルオゾールですぞ。まったく、あなたを頭首として推薦したのは大きな誤りでしたよ」

 

 渋々といった感じでワカメの協力を認めたココ。

 今は猫というかワカメの手も借りたい状況なのは理解しているだろうからな。

 この二人、もしかして昔は仲がよかったのかな。

 

「オオオオオオオォォォーーーー!!」

 

 バキバキと音を立ながら紅い結晶体が膨れ上がる。

 ふぁ!?何?フォームチェンジですか。再生した箇所だけでなく全身が変化した。

 尻尾は一本になったが肥大化している。毛が生えていたらさぞやモフモフだったろうに。

 腕の爪はダウンサイジングして軽量化、逆に足の爪がでっかくなっちゃた。

 頭部から長くて細い結晶状のものが生えている、髪の毛?ロングヘアになったな。

 眼光は更に鋭くなったように感じる。

 こちらを、俺を見ている・・・最初からずっと。

 

「なーんかスリムになったな、ダイエット成功か」

「元々の形状に近づいた?騎神だった頃の意識はないはずだけど」

 

 紅い眼差しを正面から受け止める。

 この勝負、長くびかせるつもりはない。一気に決める。

 

「ゴルシとココは大技の準備しとけ、ワカメは適当にやって」

「おうよ」

「うん」

「適当にいたします」

 

 フッーー・・・深呼吸。

 力を籠める、拳を握り、踏み込む最初の一歩に全神経を集中させる。

 3・・・2・・・1・・・ゼロだ!

 

「来い!ベーオルシファー!!」

「アアアァァァーーー!!」

 

 正面からの激突、相手の懐に飛び込んだのはほぼ同時。

 オルゴナイトで固めた拳を思いっきり奴の顔面に叩きつける。

 

「ぐがぁ」

「オオ」

 

 顔に強烈な衝撃、痛さよりも揺れる視界と脳が心配。

 奴も同じこと考えていた場合こうなりますよね。

 クロスカウンター、クリティカルヒットしたは両者の拳、互いの頬に見事に刺さってます。

 

「ダブルノックアウト!?」

「い、痛そう」

 

 この程度で俺も奴も倒れねえよ。

 

「ここからだよなぁ!」

「ガアアァァ」

 

 開始される殴り合い、命を削り合う死の舞踏。

 細身の体からは信じられない威力の攻撃が飛んでくる。

 早い、そして鋭い。正攻法で正面から相手をねじ伏せに来ている。

 ああ、この攻撃はあの子が好きそうなスタイルだ。

 綺麗な黒髪、赤い瞳、俺に全力で擦り寄ってくる姿を思い出す。

 

「それがどうした!」

 

 相手の拳をいなし、がら空きの顎に頭突きをかましてやる。

 俺の石頭は今じゃ覇気とオルゴナイトの硬度も合わさってる、痛かろうな。

 それから~ヤクザキックを食らいなさい!

 

「アア」

「跳んだ!?」

 

 ヤクザキック不発。

 回避した直後に尻尾をビタンッと地面に叩きつけ大跳躍した。

 牙の並んだ口が開かれ、そこから発射されるのは赤い怪光線。

 

「ブラスターきた!」

 

 一直線に迫る光線を横飛びで回避。

 ブラスターの勢いは止まらず、ココたちいる方向へ向かう。

 リンクはまだ継続中、こっちは構うなと仲間の覇気が言っている。

 

「「ワカメバリヤー!!」」

「ぬおお、この私を盾にするとは!いいでしょう、防いでみせましょうぞ!」

 

 なんか大丈夫そうなのベーオルシファーに集中しよう。

 

「行けっ!結晶の拳」

 

 光線を吐き切った所に、オルゴナイトで両手に形成した杭を二発ぶっ放す。

 フィンガークリーブの応用、射撃は苦手だけどこういうロケットパンチ風の技なら俺に合ってる。

 ダメか、二発とも蹴散らされた。威力も飛距離も足らない、飛び道具下手くそすぎて泣ける。

 空中にいたベオルは尻尾と背中から覇気を噴出、加速したまま俺の背後に着地。

 振り向こうとする俺の頭にカギ爪を伸ばした回し蹴りが襲う。

 防ぐ?いや待てこれは・・・

 

「ひょわっ!あっぶ!」

 

 回し蹴りに合わせて尻尾の攻撃も含まれていやがった。

 髪の毛を掠める赤い刃に冷や汗が止まらない。

 尻尾の結晶を大鎌状に変形させ、蹴りから僅かに遅れて振りかぶる二段構えの攻撃。

 もし回避でなはく防御を選んでいたら今頃首チョンパでしたわ。

 無理な避け方で首がグキッってなったのを気にする暇もなく、転げるようにその場から逃げる。

 物言わぬ紅い眼が笑ったような気がした。

 

「伸び、え、長っ!」

 

 尻尾が追撃をかける。

 伸びた尻尾の先端は鋭利な矢じり状になっている。

 俺の体を貫くには十分すぎる大きさの尻尾。

 伸縮距離には限界があるはず、それに長く伸ばした状態で精密な動きはそうできない。

 などと楽観視していた自分が悪い。

 

「危ないマサキ!」

「は、いいっ!」

 

 クパァという擬音が聞こえそう。こちらに届く寸前、鎌首をもたげた尻尾が先端から五つに枝分かれした!?

 いきなりのことで面喰ってしまう。最初から五本だった、だからその大きさと太さだったのかよ。

 五分割された尻尾はそれぞれが俺の頭部と四肢を貫こうとする。

 

「ぐぎぎ」

「ああ、よかった」

「今のは危なかったぞ、油断すんなロリ!」

 

 ココが声をかけてくれなかったら危なかった。

 ピンポイントバリヤの要領で尻尾が狙っている体の四箇所にオルゴナイトを形成。

 手足はなんとか守られた、顔に迫る最後の一本は・・・これしかない。

 

「歯で受け止めましたか、野蛮ですな~」

「ワイルドで素敵なんだよ!腐れワカメにはわからんのですよ!」

「お前ホント、マサキが大好きなんだな」

 

 ぐぁ・・・口の中切れた。

 歯で受け止めた先端を嚙み砕いてペッと吐きだ出す。

 一本に戻ろうと引っ込む尻尾をむんずと掴む。

 待てコラ逃がすわけねぇだろ!

 

「お前の浸食は俺には効かない、じゃあ、俺の浸食はどうかなっ!」

「オオオ!?」

 

 出力を上げる!

 緑の結晶体がベーオルシファーの尻尾を埋め尽くし、本体へと駆け上がる。

 これにはさすがの奴も驚いたようだ。

 どうする?このまま結晶で全身を・・・何?

 躊躇なく尻尾を切り離した。

 それだけじゃなく、切り離された尻尾が結晶体に浸食されつつも俺に巻き付いて来る。

 そこへ本体からブラスターが撃ち込まれ。

 爆発する。部屋全体を揺るがす大爆発!その中心にいた俺は意識が飛びそうになる。

 「うわあああ」とか「ぎゃあああ」とか叫べないもんだな。

 絶叫できるってまだ余裕あると思う今日この頃。

 

「痛、うあ・・・くそ・・が」

 

 今のは効いた、ブラスターはともかく、巻き付いた尻尾が自爆するとは思わんかった。

 全身にくっついた複数の小型爆弾を一斉起爆されたも同然の衝撃。

 ノーダメージとはいかない、オルゴンクラウドが使えなければ今ので終わってた。

 体は痛いけどまだ大丈夫、服は・・・凄いな、ちょこっと焦げているだけ。

 ファイン家の戦闘服もいい仕事していますね。

 

「生きてんのか!」

「し、死んじゃったかと思った」

「うむ。どちらも化物ですな」

 

 ゴルシ、ココ、こっちはいいから溜めてろ!

 

 ベーオルシファーが突っ込んで来る。

 尻尾の再生はまだ時間がかかりそうだ、奴の武器を減らせたと思うことにしよう。

 フィンガークリーブで迎え撃つことにする。

 奴は両手を刃に形状変化、紅いブレードによる斬撃をチョイスしたようだ。

 

 先程の尻尾を使った攻撃。

 相手の意表を突くことを楽しむかのような、工夫と罠を巡らせた嫌らしさ・・・。

 もうわかった、これアレだ、あの子の趣味だ。

 長い亜麻色の髪、琥珀色の瞳、普段アレな癖にどこか遠慮がちに擦り寄ってくる姿を思い出す。

 

「そりゃ苦戦するわ、二対一だし」

 

 契約前、コンテナだらけの埠頭で初めて戦った二人の愛バ。

 それを凶悪に魔改造して合体させたヤツが目の前の敵だ。

 結晶の刃と結晶の拳が火花を散らす。一進一退の攻防が続く。

 

 なあ、一体何がお前たちをそうさせたんだ?

 

 覇気からは敵意以外の感情は読み取れない。

 本当にそうか?もう手遅れだと諦めているだけじゃないのか。

 俺は・・・

 戦闘中に意識を逸らすなど愚の骨頂、わかってはいるんだが。

 

「くぉらぁ!マサキ!!」

 

 俺の意識に喝を入れる声が響く、ココだ。

 

「勝つんでしょ!勝って、キタサトちゃんに会いに行くんでしょ!」

 

 そうだ、そのために頑張って来たんだ。

 

「キミの愛バは誰?キタサトアルと私、ココを含めての四人でしょうがぁ!!」

 

 お前はまだ愛バ未満じゃい。アルダンも仮契約だよね。

 

「そいつは、ベーオルシファーは1stの残骸でしかない。もうどこにもいないんだよ、別世界の彼女たちは!」

 

 わかってる、わかってるから。

 

「お願い戦って!私たちで終わらせてあげないとダメなんだよ!!」

 

 ああ・・・そうだな。

 

 下手な優しさは時として邪魔でしかない。今は集中しよう。

 ベーオルシファーの真意を探るのは勝利してからだ。

 

 ベーオルシファーのブレードを止める。

 

「そんな鈍らで俺が切れるかぁぁ!」

「アアァ」

 

 折る!砕く!破壊する!緑の結晶は紅い結晶を凌駕する。

 両手を失うベーオルシファー、再生は始まらない。

 緑の結晶が傷口そのものを覆っているからだ。

 再生持ちは本気でウザいから潰させてもらった、思い付きでやったが上手くいった。

 戦意はまだ失っていない、残った両足から繰り出される蹴りと、むき出しの牙で噛みつこうとしてくる。

 往生際が悪い、次は足をもらう!

 カギ爪ごと踏みつぶす、再生防止のため結晶をプレゼントするのも忘れない。

 奴の口に覇気が集まるのを感じる。この距離でブラスターか無茶すんな。

 ・・・ここだ。

 発射される寸前、下から上に向けて掌底を放つ。

 頭突きしたときも思ったが、顎が弱いぞ。

 ブラスターの暴発、強制的に上を向かされたベーオルシファーの光線は天井を削り爆発する。

 おいおい、ここ地下だぞ。崩落とかしないよな。

 

「アガ・・ァァ!?」

「終わりにしよう。うあああああああああああああ!!」

 

 フィンガークリーブを体に突き立てる。

 俺の指が奴の首と胴体に深く食い込み、傷口に再生防止のオルゴナイトで固める。

 踏ん張りは効かない、奴の体が浮く。

 持ち上げた体を無造作にそれでいて力いっぱい投げる。

 

「そりゃぁぁぁ!!」

 

 当てずっぽうに投げたわけじゃないぞ。

 悪いなベーオルシファー。こっちは四人がかりなんだわ!

 投げ飛ばした先にいるのはニヤケ面のワカメおじさん。

 

「私の出番ですな、さあ地獄を見せて差し上げましょう」

 

 ワカメが禍々しい長剣を構えている。どこから出した?

 飛んできたベーオルシファーに突き立てることに成功、あいつ俺がつけた傷口を狙ったな。

 腹立つが優秀なワカメ、立ち上がろうとするベオルの攻撃を避け背後に回る。

 今の何?透明化したように見えたけど?アレもアストラルシフトの応用なの?キモイ!

 そのまま指揮者のように指を動かすと、突き立った長剣が自在に動き回りダメージを与えていく。

 

「オオオウォォ」

「はっはっは、プラグマティックブレードのお味はいかがですかな。今の私すごく輝いてますな!」

 

 結構な有効打であるのは認めるが・・・なんか腹立つ。

 

 (マサキ、準備できたよ)

 (よっしゃ、やれココ!)

 

「リミット解除・・・コード・ファントムフェニックス!!」

 

 ココの武装である弓矢、両端のリム部分から覇気の粒子が迸る。

 存分にチャージされ、矢に込められた覇気は今までの比ではない。

 一瞬だが、ココの背中に天使の翼を幻視する。

 俺とココの混ざり合った覇気が彼女の背から漏れ出ているからだ。

 ファントムフェニックス、必殺の掛け声と共に発射された矢はその名の通り炎の不死鳥を形どる。

 どういう理屈でそうなったかって?知らん!感じろ。

 不死鳥は真っ直ぐ標的に向かい衝突する。

 その威力はご覧の通り、ベーオルシファーを中心に極太の火柱が立ち上り焼き尽くす。

 

 ワカメごと。

 

「ぬぉぉぉぉぉ!?」

「オアアァァァァァァァ!」

 

 満足気な表情のココ、一仕事やりきった達成感が溢れてる。

 

「焼きワカメじゃ!ざまぁwwそのまま奴と燃え尽きてしまえ」

「ふぅ・・・死ぬかと思いました。予定では私が退避した後に発射でしたよね?」

「チッ、なんで生きてんのかな!」

「やれやれ、透過しての移動は疲れるのですよ。私、少し休みますね」

 

 髪の毛ちょっと焦げとるやないかい!

 さすがに疲れたらしい、コゲワカメは「どっこいしよっ」と言って腰を下ろした。

 お疲れ~もうずっと寝てていいぞ。

 

「ォォォオオオオ」

 

 あれだけの炎に焼かれてもベーオルシファーはまだ動く。

 でも大分効いてるよな。

 

 (さあ、頼んだぜ。バッチリ決めろ!)

 (ありがとな・・・1st全てを代表して礼を言う)

 (らしくねぇぞ、存分にやってしまえ!!)

 (任せな!)

 

 リンクとアイコンタクトによる会話は超便利。

 

「ばあちゃん、みんなも・・・見ててくれよな!!」

「久しぶりに見られるね、楽しみだな~ゴルシちゃんの麒麟」

「リミット解除!」

 

 こちらもたっぷりチャージ完了、打ち合わせた両拳に青い覇気が集中する。

 

「そらっ行け!」

 

 飛び上がったゴルシはそこから無数の覇気弾を眼下のベーオルシファーにお見舞いする。

 一発一発が高威力の散弾!逃れる術はなく敵に殺到する。

 立ち上る黒い爆煙、そこへ突撃するゴルシ。

 

「でやぁ!」

 

 視界不良の中でゴルシの声と打撃音が響く、煙の中からベーオルシファーが飛び出して、いや、殴り飛ばされて来た。追いかけるゴルシ、もはや逃走など許さない。

 

「せい!」

「でやああ!」

「うおおおおおおおおおお!!!」

 

 ゴルシは止まらない。拳、肘、蹴り、突き、その他諸々。

 因縁の相手に対し万感の思いを込めて激しいラッシュを繰り出す。

 あれだ、ジョジョのオラオラオラだよ。全身ボッコボコやぞ。

 

 家族、戦友、故郷を奪った相手に対する怒りと憎しみ、今ここで晴らす!

 俺にできるのはその手助けだけだ。

 覇気ならいくらでも回してやる、だから行け!ゴールドシップ!

 

「コード麒麟!」

 

 デバイス、ソウルゲインにある球体の色が赤に変わる。

 両肘を後ろに突き出す構え、腕に装備されたブレードに全エネルギーが集中する。

 

「ベーオウルフ!ルシファー!この一撃で決める!」

「やれ!」

「やっちゃえ!」

「やってしまいなさい!」

 

 突貫!

 ここまでのコンボによるダメージがベーオルシファーに防御の構えすらとらせない。

 

「でぃぃぃやっ!!!」

 

 勝敗は一瞬で決した。

 左、右と振るわれた絶対破壊の力を込めたブレード。

 全身全霊の一撃がベーオルシファーを下から上、縦方向に両断する。

 

「!?アァ!?オァァァァァッァァ!?」

 

 ぶつかり合ったエネルギーの奔流が大爆発を引き起こす。

 地面に手をついて着地するゴルシ。

 目をつむり肩で息をしている。そして背後で爆発を上げる宿敵に別れを告げる。

 

「失せろ、この世界・・・いや、全ての世界からな」

 

 憑き物が落ちたような顔で立ち会がるゴルシ。

 そこへココが駆け寄って行き飛びつく。

 

「やった!やったよ!やりおったなこんちくしょーーめ!」

「いだだだ、おいボスやめ・・・大技の反動で即効性の筋肉痛がぁぁぁ」

「特別ボーナス支給しちゃう!何がいいかな」

「有給休暇をくれ、三年ぐらい」

「そのまま放浪の旅に出そうだから却下。ラーメンならおごってあげる」

「またラーメンかよ。まあ、それでもいいや」

 

 嬉しそうにじゃれ合う二人を見てホッコリ。

 だがまだやることがあるんだ、これがな。

 爆発の中から力なく落下した者がいる。

 そいつは崩壊寸前の体と引きずりながら、ズズッ・・・ズズッ・・・悲しいほどゆっくりと俺の方へ。

 両断された体を無理やり再生させ辛うじて動けるようにしたのだろう、小さな子供ぐらいのサイズになった人型が二体確認できる。

 紅い結晶体でできた怪物が二体這ってくる。

 自分たちが得られなかった、大切な何かを求めるように・・・。

 

「お任せしてよろしいですかな」

「ああ、手は出さないでくれ」

 

 ワカメが空気読んだ、こいつ思ったよりいい奴だよな。頭焦げてチリチリワカメだけど。

 

「うそ!・・・まだ生きてる」

「あいつ!?」

 

 ココとゴルシが気づいた。もうちょっとじゃれててもよかったのに。

 

「待ってマサキ!まさか」

「早くトドメをさせ!これ以上何するかわかったもんじゃねぇ」

「大丈夫だ」

「おいコラ聞いてんのか!」

「本当に大丈夫だから、少しだけ時間をくれないか。これが最期なんだ・・・」

「私はマサキを信じるよ、ゴルシちゃんも、ね」

「ちっ、わかったよ」

 

 ありがとう二人とも。

 

 三人が見守る最中、俺はベーオルシファーと対峙する。

 二つに分離したからベーオウルフとルシファーに戻ったか。

 

「ようやく話せるな、俺はアンドウマサキだ。俺の言ってること、わかるよな」

「・・・・ァ」

「・・・・」

「声は出さなくていい、勝負は俺たちの勝ちだ、頼むから暴れないでくれよ」

「「・・・」」

 

 しゃがみ込んで二体の顔を見る、こちらを見上げる小さな四つの眼光には力が無い。

 時間が迫っている。

 

「俺に会いに来てくれたんだよな。そのために無茶をやらかして今もボロボロだ」

「「・・・」」

「わかってる。好きで戦っていないよな、望まない闘争をずっとやらされてきたんだよな」

 

 別世界の縁を辿ってここまでやって来た。

 自分たちの世界では出会うことが叶わなかった可能性を見たくて。

 こうして相手の覇気が感じられる距離まで近づけばわかる、ベーオウルフとルシファーの体はずっと暴走状態にあったと。

 体だけが本能のままに暴れ回った。

 その間、心は神核の奥深くに封じられたまま泣き叫んでいた。

 誰にも何も届かない、声も涙も枯れ果てたのは随分前だった気がする。

 全てを殺し、全てを壊し、その結果、世界ごと捨てられた。

 

 伝わる、破壊獣と言われた二体から・・・かつての彼女たちの本心が。

 

「辛かったな、大変だったな、本当に・・よくここまで来てくれた」

 

 目の前の二体は涙を流さない、だからその分も泣き虫の俺が泣いてやる。

 

 取り残された、何もない、自分たち以外に誰もいない、衰退も繁栄もない空虚な世界。

 自分たちが壊した世界。

 幾星霜の時を呆然と立ち尽くした、自壊するその時をただ待ち続けた。

 そんな時、確かに感じた。

 門の向こうから暖かくて優しく、それでいて強い覇気を。

 

 誰?誰なの?操者?まさか・・・一緒にいるのは・・・私たち?

 

 会いたい、見てみたい、自分たちにはありえなかった可能性がある世界。

 

 クロスゲート・・・そうゲートがある。

 いつか向こうの世界と繋がる時が来るかもしれない。

 ごめんなさい・・・その時まではどうか・・・生きてしまうことを許してください。

 

「いいんだ、全部伝わってるぞ。他の誰もがお前たちを許さなくても、俺がお前たちを許すよ」

「「・・・・」」

 

 震えながら伸ばされた手を握ろうとしたが崩れていく。

 崩壊していく全身、もう長くない。

 

「こっちのお前たちは賑やかで楽しくて飽きない、めっちゃ可愛くて俺のことを操者にしてくれた」

 

 触れた先から崩壊する頭を優しく撫でる、あいつらにそうするように。

 

「今はちょっと訳ありだがな・・・よし、待ってろ今見せてやる」

 

 バスカーモードのフルドライブ。

 ベーオウルフとルシファーへと愛バのことを想いながらゆっくり覇気を流す。

 漏れ出した余剰分がココたちにも伝わったようだ。

 

「これ・・・キタサトちゃん」

「マサキと愛バたちのメモリーってか・・・悪くない」

「こ、このウマ娘は!?奴らの幼体。なるほど、そういうご縁ですか」

 

 出会い、楽しかった日々、別れ、俺たちの思い出を全部見せてやる。

 

「「アア・・・アァ・・・」」

「本心から思うよ、あいつらに会えて本当によかった。今ここにいないのが本当に寂しくてな」

 

 長年の旧友に再会したみたいに語りかける。殆ど惚気話になっちゃったけど。

 

「嘘みたい、ベーオウルフとルシファーに意思疎通ができてる」

「あんなに大人しい奴らを初めて見たぜ、そして懐いてやがる」

「し、信じられん、あの破壊獣が・・・まるで幼子のようではないか」

「マサキ・・・キミはホントに凄い人だね」

 

 この場にいる全員がマサキと愛バの思い出を垣間見る。

 その光景に変化が生じる。

 俺と愛バの記憶じゃない、まさかこれはお前たちの。

 

「伝えたいことがあるんだな、いいぜ、見せてくれ」

 

 塗り替えられる光景。

 二人の記憶、見せたいものは何だ。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 それはまだ平和だった頃、ある日の1stでの出来事。

 世界の滅びはここから始まった。

 

「現場はここ?」

「うん。そうみたい」

 

 原因不明のAM暴走事故が発生した。

 ギルドからの仕事にも慣れてきた私たちはいつものようにコンビを組んで事に当たる。

 

「テイオーさんたちは?」

「別の場所でも同様の事件が発生したみたい、そっちに行ってから来るってさ」

「うーん、何やらキナ臭いね」

「確かに、でも考えるのは後。まずは生存者の救助と暴走中のAMを処理しましょう」

「了解、今日もよろしくねダイヤちゃん」

「こちらこそ、頼りにしてるよキタちゃん」

 

 現場の指揮を担当している騎神に許可をもらって現場に突入。

 最近は顔も売れて来たのですんなり通してもらった。

 

 AMを排除しつつ生存者を探す。

 

「ここはクリア・・・次の場所に行きましょう」

「待ってダイヤちゃん、生体反応?向こうからだ!」

「あ、ちょっと待ってよ」

 

 生存者を見つけたキタちゃんを追いかける。

 旧市街の雑居ビルその一室で倒れている人を発見した。

 

「救助に来ましたよ、大丈夫ですか!脈はある・・・うんしょっと」

「もう、置いていかないでよ。その人は」

「このまま私が背負って行くよ、ダイヤちゃんは帰りのルートを先導し・・て・・」

「キタちゃん?」

「ぐっ・・なにコレ・・かっ・・・は・・」

「どうしたのキタちゃん!」

 

 要救助者を背負ったキタちゃんが急に苦しみだした。

 背負っている人を振り落として激しく悶える。一体何が起きてるの?

 

「ダメ・・にげ・・・う、うああああああああああああああああああ!!」

「そんな、嘘!キタちゃん!」

 

 絶叫を上げるキタちゃんが変貌していく、胸の中心から紅い結晶のようなものが広がり全身を埋め尽くす。 

 そうして現れたのは変わり果てた姿の相棒・・・紅い化物だった。

 

「オオオオォォォッーーーー!!」

「キ、キタちゃ・・・っ!?」

 

 腕が振るわれる、カギ爪のついたそれは問答無用でこちらを攻撃してきた。

 救助者を抱えて逃走を図る。

 叫び声を上げながら追ってくる・・・アレは何?キタちゃんはどうなったの!

 混乱する頭を必死に働かせる。

 しっかりしろ!人命救助が先だ、まずはこの人を安全な場所まで運んで、それから、今あったことをみんなに知らせるんだ。

 テイオーさんやマックイーンさん、頼りになる先輩方や同僚が力を貸してくれるはず。

 

「待っててキタちゃん!必ず助け・・る・・から・・」

 

 え?走っていたはずなのに・・体から力がぬ・・け・・胸の奥が変だ・・・。

 

「あ、ああ・・・がぁ・・・」

 

 倒れる、いけない・・・今倒れたら救助者は・・どこにいった?

 私が抱えていた救助者がいない!?

 

「トウカイテイオーとメジロマックイーンではなかったか、まあいい」

「あなた・・・だ・・れ・・」

「ほう、まだ意識があるのか。やはり、お前たちは掘り出し物だった」

「何を・・した・・の」

「私のちょっとした特技だ、相手の神核をある程度自由に弄れる。まるで立体パズルのように」

 

 意識が飛びかける、体の奥からよくない何かが溢れ出す。

 先程のキタちゃんのように私の体を紅い結晶が埋め尽くそうとしてくる。

 ダメ・・・やめて。

 

「君たち二人には何かしらの才が眠っていた、それを無理やり呼び起こしてみたが・・フフフ」

 

 心底楽しそうに話しをする何者か、こちらが聞いていようがいまいが関係ないのだろう。

 声?ボイスチェンジャーでも使っているのか、歪んだ音声が言葉を紡ぐ。

 そういえば最初から正体不明だった、男か女かも分からない、厚着をしておりフードを目深に被って顔すら見えない。匂いも皆無・・・よくよく考えたらおかしい、騎神である私が一般人の匂いを皆無と判断することはありえない。それに覇気だ、私もキタちゃんも最初からこの人の覇気を探ろうとすら思わなかったのはなぜだ?

 

「最近"彼"が相手をしてくれないから退屈していたんだ。まさか、思いつきで始めたことがこのような結果を生むとは、これだからウマ娘はいい」

 

 体が・・・私の心が・・・消えていく。

 

「今回はこれで行こう!きっと素晴らしい滅びになるぞ!」

 

 だ・・ダレカ・・・

 

「ん?君たちの先輩方が来たようだ、私はこの辺で失礼する。君たちの闘争を特等席から見物させてもらうよ」

 

 ・・・ク・・

 

「では、よき滅びを期待しているよ」

 

 ・・・クソがぁ・・・

 

 逃げて行った何者か、アレは邪悪だ、世界を弄ぶ病巣のような存在。

 悔しい、最期に私が感じたのは堪らない悔しさ無念さ、柄にもなく口汚い言葉が出てしまうほどに。

 

 キタちゃんは私はどうなる、どうなったのだろう?

 よくない、とてもよくないことが起こるのだけはハッキリしている自分が嫌になる。

 

「キタちゃん!ダイヤちゃん!どこなの!」

「テイオー!あそこです。サトノさんがいましたわ」

 

 ・・・二・・ゲテ・・・

 

「アアアアァァァァーーーー!!!」

「サトノさん!?」

「え、何が・・・マックイーン離れて!奥からもう一体何かが来るよ!!」

「オオオオオオオオオオオオオオオォォォ」

「紅い結晶の化物!?それが二体・・・そんなまさか・・」

「キタちゃんとダイヤちゃん?コレが」

 

 巨大なカギ爪もった化物と尻尾が肥大化して枝分かれした化物が二体。

 女性的なシルエット・・・コレが可愛い後輩たちだなんて認めたくない。

 それに、この異常な覇気・・・超級騎神どころじゃない、敬愛する会長の覇気より上だなんて。

 二人を救う?バカを言うな、こっちが生き残れるかも怪しい状況だ。

 ごめん、本当にごめん。今すぐに二人を助けてあげられなくてごめん。

 覚悟を決める。

 

「撤退するよマックイーン。これはボクたちだけじゃ手に負えない」

「了解ですわ。お二人のことは皆と合流してから考えた方がよさそうです。さあ、行きましょう」

「行くのは君一人だ。会長やチームのみんなによろしく」

「何を仰いますの!残るなら私も・・・」

「わかってるだろマックイーン。二人ともやられるわけにはいかないって、誰かがこのことを報告する義務があるんだ」

「でも、それでしたら」

「ちょっと時間を稼いだら直ぐに追いかけるよ。心配しなさんな、無敵のテイオー様は何度ケガしたって復活してきただろう」

「・・・死ぬことは許しませんわ!必ず追いついて来るのですよ、待ってます!」

「うん。行ってマックイーン」

 

 マックイーンが振り返らずに走り出す。目から大粒の涙を零しながらの逃走。

 正しい判断をした、それなのに涙が止まらない。

 辛くてもこうしなければいけない、わかっていた、騎神となったその日から覚悟はしていた。

 だけど・・・ああ、本当は凄く怖くて悲しくて・・・とても・・・

 

「そういうわけで付き合ってもらうよ、お二人さん」

「オオオ」

「アアア」

「なんでそんな風になっちゃたか、わけわかんないよ。ごめんね、最近二人に構ってあげられなかったからバチが当たったんだ・・・やっと超級騎神になれたのにな・・・超級最初の仕事がこれだよ」

 

 自重気味に笑うテイオー、そのまま構えを取り覇気を練り上げる。

 

「チーム"スピカ"所属 トウカイテイオー ここは絶対に通さないよ!」

 

 絶望的な戦闘が始まる。

 これは撤退戦、仲間を逃がすために殿を務めた者の末路は決まっている。

 

 これが1stの終わりの始まりだった。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「今のは・・そうか、あいつが元凶か」

 

 知ってる奴らが出てきた、俺が知っている姿より立派に成長したあの子たちが。

 俺の愛バたちって成長しても可愛いんだな・・・嬉しい。

 そんなことより!神核を弄っただと!?

 潜在的に女神の因子を持っていた二人を強引に暴走させた結果がこれだってのかよ。

 それを、まるで遊び感覚でやりやがった。

 最初から二人を選んだわけではない、誰でもよかった。

 たまたま面白半分でやったら大事になってそれが楽しいだと!!

 ふっざっけんなぁぁぁ!!マジでふざけんな!そんなくだらないことで、そんなので二人は破壊獣なんて呼ばれる存在になってしまったのかよ。

 たくさんの人が苦しんだんだぞ、許せない、許すわけにはいかない。

 

「ココ!ゴルシ!ついでにワカメ!今の見たな!」

「バッチリ見たよ!うん、二人も被害者だったんだね」

「若い頃のばあちゃん・・・テイオーはあの後確か・・・クソッ」

「あれは・・そんなはずが・・・」

「俺は黒幕を絶対に許さねえ。こっちに来てるんならぶっ飛ばす」

 

 目的が増えた。

 あんな奴を野放しにしていたらまた碌でもないことをやらかすに決まってる。

 俺のキルノートにメモってやるぞ、油性マジックでな!

 

「「・・・・ァ」」

「ありがとうな。お前たちの無念は俺たちが引き継ごう。あんな奴の好きにはさせない」

 

 もう頭部しか残っていない、消えていく二体。

 最期の力で俺たちにあのビジョンを見せてくれたんだな。

 

「疲れただろう。もう休んだ方がいい・・・眠るまでずっとこうしていてやるからな」

 

 愛バにそうするように抱きしめる。

 こいつらは確かに世界を滅ぼした。贖うにはあまりに大きな罪、でも最期ぐらい安らかに逝かせてやりたい。

 俺のわがままを女神様たちなら許してくれるよな。

 消えていく、別れの時が近い。

 何か言えよ俺!もっと言いたいことが、かけてやりたい言葉があるはずだろうが!

 

「俺は愛バにあだ名を付けてるんだ。先代がカナブンで最初揉めてな・・・」

 

 俺のバカ、泣いてる場合か!あだ名のエピソードは別に今言わなくてもいいだろ。

 崩れて粒子になっていく二体の、悲しい運命を辿った二人の目を見ながら告げる。

 

「おやすみ・・クロ・・シロ・・いい夢を見るんだぞ・・・」

 

 手から質量が感じられなくなる。

 ベーオウルフ、ルシファーと呼ばれ恐れられた二人の最期だった。

 ただ涙が零れる。いいんだ俺は今泣くべきなんだ。

 クロ、シロと呼んだのは間違いじゃなかったと思う。

 1stに俺がいたらきっと似たような名前を付けていただろうから。

 

 崩壊した二人の体は紅い粒子となって霧散して・・・え?

 紅い粒子群の色が変化していく、俺の覇気と同じ綺麗な緑色になった。

 宙を漂う二人の残滓が俺の下に、コレ全部が覇気か・・・もらっていいんだな。

 俺の体に浸透していく覇気、これは、奴に汚されていない彼女たち本来の覇気だ。

 ありがたく頂戴する。

 その覇気を共にメッセージを受け取る・・・しかと胸に刻みつける。

 これは彼女たちの遺言だ。

 

 ・・・ありがとう・・・

 

 ・・・やさしいあなた・・・ 

 

 ・・・どうか・・あなたのしってるわたしたちを・・だいじにしてあげて・・・

 

 ・・・よ・・かった・・さいご・・に・・あえた・・・のが・・・

 

 ・・・あなたで・・よかった・・・

 

 ちゃんと聞こえたよ。俺も会えてよかった。

 あいつらが起きたら話してやろう。

 もう一人のお前たちがいたことを、その悲しい出来事を。

 

「クロ、シロ、お前たちに会いたいよ」

 

 無性に会いたくなった。

 今すぐにでも会いたい、ガッちゃんとミオの覇気は届いただろうか、起きてくれよ二人とも。

 

「お疲れ様、マサキ」

「ココ」

 

 後ろがら優しく抱きしめられる。

 

「悪い・・お前やゴルシ、1stの人たちからしたら俺は甘すぎるって怒られて当然だ」

「いいの、あれでよかったんだよ。ちゃんと看取ってあげられてよかったね」

「あいつら、ありがとうって・・俺に会えてよかったって・・・」

「うん」

「なんでこんな・・・あいつらは悪くない・・・それなのに・・・」

「うん」

「泣いてばっかでごめんな。カッコ悪い・・だけど、もう少しだけこのままで・・・頼む」

「誰かを思って流す涙はカッコ悪くなんかない。それを笑う奴がいたら私が始末してあげる」

「過激だな・・・でも、ありがとう」

 

 さようなら別世界のクロとシロ。お前たちのことは忘れない。

 

「なあワカメ、お前なんか隠してんじゃね?さっきのビジョンに出てきた正体不明に心当たりあるんじゃね」

「・・・そのことですが、いいでしょうあなた方には話しておくべきだ」

 

 俺とココがちょっとだけセンチメンタルに浸っている時。

 ゴルシと会話していたワカメが意を決して何かを話そうとした時。

 そいつは現れた。

 

 パチ、パチ、パチ、パチ・・・

 

 拍手?場違いな音が聞こえた方向へその場の全員が一斉に視線を送る。

 そこには教団信徒のローブと仮面をつけた人物が立っていた。

 いつからそこにいた?覇気・・・何だ?読めない・・・そこにいるのに感じとれない!

 ゆっくりとこちらを称賛するような拍手、こいつ・・・こいつは・・・

 

「さすがは我が宿敵の"代役"だ。よいものを見せてもらった」

「てめぇ・・・」

「あ、あなたは」

「おっと、自己紹介は自分でするよルオゾール。皆さん、初めましてかな」

 

 ビジョンで見て聞いたばかりの声で喋る。

 男か女かわからない、ボイスチェンジャーで変換されたような歪んだ声。

 

「私の名はそう・・・ルクスとでも呼んでほしい、以後お見知りおきを」

「ルクス、ベーオウルフたちを造ったのは」

「はい、私です」

 

 否定する意味はないとばかりの即答。

 

「そこのルオゾールが言ってる"あの御方"とは私のこと、孫光龍を使い妖機人にあなたを襲わせたのも私、他には・・・何でしたかね、メジロ家、アースクレイドル、DCにUC、ヒュッケなんたら・・・すみません、多すぎて把握してないです」

 

 まったく悪びれてない様子に絶句する。

 こいつ自分の悪行を指折り数えながら、途中でめんどくさくなって放棄しやがった。

 聞いたことがある単語を呟くたびに胃がムカムカしてくる。

 もしかしなくても、今まであった大事件の裏にはコイツの影があったと確信する。

 

 (二人とも)

 (さっきの戦闘で気張り過ぎた、デバイスも私も40%が限界だ)

 (同じく、無理すれば大技一回分なら可能化も)

 (俺はまだ動ける。二人はそのまま待機だ、下手に動くなよ)

 (ラジャー)

 (了解だよ)

 

「ルクス、これはどういうこどですか!ベーオウルフたちの誕生にはあなたが関わっていた。1stを滅ぼしたのはあなたではないですか!」

「それが何か?」

「あ・・あなたは言った1stの滅びを防げなかった神を捨て、新たな神ヴォルクルス様を信仰しろと。あれは嘘だったのですか」

「嘘ではない。ヴォルクルスが2ndを滅ぼすエンディングがあってもいいかと思っただけだ」

「エンディング?あなたが何を言っているのかわからない」

 

 ケラケラと答えるルクスに対してワカメは混乱していく。

 エンディングだと、こいつまさか・・・

 

「おいルクス、そこのワカメをそそのかした理由はなんだ」

「暇つぶしだったかな・・・いけないな、私はその場の思いつきで動いてしまう質があってね」

「わ、私の信仰が・・ただの暇つぶし・・・」

 

 はい、わかった。こいつマジくそ外道。

 感覚が狂ってる、遊んでやがるんだ、人の大事なものを踏みにじって。

 

「ベーオウルフたちを召喚したのもてめぇか」

「そう!それそれ!あれは私にも予想外のこと、シナリオを無視した完全なイレギュラーだった。ああいうハプニングは大歓迎だ。つい、盛り上げるためにゲートを操作し回復させてしまったよ。延長戦は期待通りに楽しめた」

「奴が来たのはお前が意図したことではないと、じゃあ何で?」

「お前だアンドウマサキ。ルオゾールがゲート起動した時にお前の覇気がゲートから各世界に漏れたのでしょう、あの二体はその僅かな覇気を手繰り寄せ自力でゲートを潜り抜けた。ああ、これを奇跡と言わずして何と言うのか!私が残したガラクタが物語のいいアクセントになったようで喜ばし・・・」

 

 ルクスに無言でブラスターを発射する。 

 回避した風には見えない、直撃爆発する。

 聞くに堪えない・・・ガラクタだと!あの二人を化物にしておきながらガラクタだと罵ったか貴様。

 

「ごめん、我慢できなかった」

「いいよ、マサキが撃たなかったら私がやってた」

「だな。あいつはアーチボルトが可愛く思えるほどの外道だ」

「・・・騙された・・・私のやってきたことは一体・・」

「ワカメ、シャキッとせんかい!」

「は、へ、はいぃ!!」

「悔やむのも嘆くのも後にしろ!あの外道に少しでもムカついたなら手を貸せ!そのあとでくたばれ」

「くたばってたまるものですか!ええ、やってやりますとも!おのれルクス、許しませんぞ」

「ワカメが仲間になった」

「敵でも味方でも微妙な戦力で使い辛そう」

「何がヴォルクルス様ですか!もう様付けめんどくせぇ!そもそもヴォルクルスって何?そんな奴見たことねーし!どうせラスボスじゃなくて中ボスのなかでも下の下的存在でしょうな!邪神?破壊神?天級倒してから言えやwwwバッカじゃねーのwww」

「ハッチャケワカメwww」

「こっちの方がよくね。教団運営とかでストレス溜まっていたんだろうな」

 

 手のひら返しクルクルパーのワカメを放置していると、爆煙の中から悠然とヤツが歩いて出て来る。

 

「無傷・・・それに、紅いオルゴンクラウド」

 

 ルクスを中心に赤い覇気の粒子が展開されている。

 これが奴の覇気、今までは完全制御で隠蔽していたのか。

 

「嫌な色だね。綺麗じゃなくて、なんか汚ったない赤」

「性格の悪さがにじみ出てんだよ」

「ベーオウルフたちは鮮やかな"紅"でした。似ているようで全然違いますな」

 

 奴に神核を弄られた二人、色の鮮やかさで優っていたのは彼女たち本来の輝きのせいだったのかも。

 

「今日はヴォルクルスの降臨を見学するだけのつもりだったが、お前たちの登場とハプニングでいささか気が変わった」

 

 赤いオルゴナイトで剣を造りこちら向けるルクス。

 オルゴンクラウドとオルゴナイトを使いこなす。

 

 敵だ、見つけたぞ、こいつこそが俺の敵。

 

 結晶を武器にするのもお手の物か、技が被ってるんだよボケ。

 ますます存在を許しておけない。

 

「この後何か予定はあるか?もしよかったら・・私と遊んでいかないか?」

「四対一だけどいいのか」

「問題ない。私と一騎打ちする資格があるのは"彼"だけだ」

「彼って誰やねん」

「いずれわかる。さあ、雑魚は雑魚らしく群れてかかってくるのがお似合いだ」

「あいつメッチャ腹立つ」

「処す?ねぇ処していい?」

「煽り耐性ゼロですな、もちろん私もゼロです!ムカつくんだよ!」

「やってやんぞご・・・ん?」

 

 (・・サ・・キ)

 (だ~れ~?今、忙しいんだけど)

 (よかったマサキ!やっと通じた)

 (メソ・・メルアじゃないか!久しぶりすぎて一瞬わかんなかった)

 (今メソって・・それよりも今相手にしている奴は何者?)

 (ああ、俺を通して見えてんのね。ルクスだとよ、今までの事件はだいたいこいつのせい)

 (赤いオルゴンエナジー使い、私が生きた時代にもいなかった)

 (女神様でも初見ってヤツか注意しながら戦うぜ)

 (え、待って!ダメ!)

 

 ※俺と女神様の会話は0・3秒以内で行われます。

 

 メルアの静止を聞かずに飛び出す。

 一番手はゴルシ、次にワカメが続く、バスカーモードは問題なく発動中、ココの援護射撃もまだいける。

 戦闘開始!俺も行くぜ。

 

 

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「まだ開始30秒たってないぞ?ガッカリさせるな」

 

 ポタポタと何かが零れ落ちる。

 自分の額から滑った血液が滴る音だと気づくのはまだ先のこと。

 

 あれ・・・どうして俺は・・・負けているんだろう。

 




クロ「(´Д⊂グスン」
シロ「マサキさんの優しさが目に染みます・・・」
アル「うう・・・私こういうの弱くて・・うう・・」
ココ「本当に私の操者は最高だよね」

クロシロアル「「「お前のじゃねーよ!!!」」」

ココ「三対一で私を責めるのもうやめない」
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