ベーオウルフとルシファーを倒し、お別れをした。
そして黒幕登場。
「何が・・・起きて・・・」
視界がぼやけて揺れている。
体が動かない・・・頭に強い衝撃を受けた。それはいつ?
わからない、なぜ自分が今この状態にあるのかがわからない。
考えろ、動け、奴が、奴が来るぞ。
奴って誰だ?
俺はベーオウルフとルシファーを倒した。
そして・・・そして・・・
ルクス 敵だ ルクス 見つけた ルクス 倒さないと ルクス あいつは敵だ
そうだった、ルクスだ!あの野郎が現れて四対一の戦闘になったんだ。
それでゴルシたちに続いて飛び出して・・・そこまでしか覚えていない。
「ッ!・・・あ・・」
思考が整理されるにつれて全身の感覚が戻って来た。
まず感じたのは痛みだ。
デコがいってぇ・・・額が酷く痛む。それと背中もだ・・・背後にある柱に打ちつけたみたいだ。
今気が付いたが視界が微かに赤い、額の傷口から出血している。
額から流れた血は顎まで流れポタポタと滴っている。
ああこれは・・ちょっと割れたか。陥没はしてないが頭蓋骨にヒビが入ったかも・・痛てぇ。
頭部をルクスの剣で攻撃されたとみて間違いない。
・・・あいつが用意した結晶の剣はでかかった、元ソルジャー(笑)のイケメン愛用の大剣ぐらいだったし。
それを避けるでも防ぐでもなく真正面から受けたのか?
油断はしていなかったはずだ、そもそも攻撃を受けた覚えがまったくないのはなぜだ?
わからない、みんなはどうなった・・・!?
霞む視界で捉えたものは離れた位置で倒れ伏すゴルシとワカメだ。
やられたのか・・覇気はまだ感じる、死んではないが起き上がる気配はない。
ココ!ココはどうなった。
「まだ開始30秒たっていないぞ?ガッカリさせるな」
変声機を通したような歪んだ声が聞こえる、ルクスだ。
「う・・か、はぁ・・はぁ・・」
いた!ココはミラージュソードを手に取りルクスに対峙している。
その息は荒い、一人でルクスの相手をしていた?なぜだ、ココのポジションは弓矢による後方支援だったはず。
おかしい、何かがおかしい。
今の状況に陥る前の記憶が欠如していることが余りにも不可解だ。
ハッキリとわかるのは、大ピンチってことだけ。
「ココ・・・」
「マサキ!ッ!!」
「おっと」
俺の声を聞いたココがルクスへとシャドウランサーをばら撒き後方へ飛びのく。
ルクスが回避行動をとっている隙に俺の下へとやって来た。
「マサキよかった、動けるようになったんだね」
「ぅ・・ココ・・何があった」
「聞きたいのは私の方だよ、急に三人とも動かなくなったから」
「な、なんだそりゃ・・・」
三人とも動かなくなった?身に覚えがない。
「酷い傷・・すぐ手当しないと」
「後でいい・・どうして動かなくなったかわかるか?俺にはその時の記憶がサッパリないんだ」
「三人が向かっていった直後にルクスの手から光が出たの、そうしたらピタッと止まっちゃって」
「明らかに何かされたよう・・・だな」
「その何かがわからない、非常にマズイ状況だよ」
俺の額にハンカチを当てながら笑ってみせるココ。
焦っている、だからこそ自分と相手を安心させようと変な笑い顔になっちゃうよね。
ピンチ!俺たち今、大ピンチ!
奴が何かしたのは明白、そのからくりがわからない、対処方なし!詰んだ!
遂に登場した黒幕をとっちめるつもりが全滅秒読み開始だ。
あれだな、ベーオルシファーを討伐したことでよい流れがこっちに来てると勘違いしたわ。
勢いでいける!と思ったんだがな。
「私、マサキに会えてよかった」
「遺言タイムに入るのやめろ」
「最後にうまぴょいしてくれたら思い残すことはないよ、今すぐやろう!」
「無理だろ」
「うまぴょい時間最速の動物は"コモンマーモセット(5.52秒)"マサキなら5秒以内でいけるよね!二人でギネス更新しようよ」
「そんなレコードホルダーになってたまるか!」
スピードの向こう側に突き抜け過ぎだろ!
さすがのスズカさんも「その景色は見たくない」て言うと思うぞ。
おーい、俺の手をおぱーいに誘導しないでくれ。
生乳柔らけぇな・・・ああくそ・・・死にたくねぇ、いやホントマジで。
この先を味わってみたかった、エロの向こう側へは是非行ってみたいね!
「その景色は勝手に見てろクソが!」て言いそうなスズカさん。
(揉んどる場合かぁぁ!!)
(メルアさん、今いい所だから邪魔しないで。最後にココのおぱーいを堪能したいの)
(余裕があるんだか無いんだか・・まだ終わってません!)
(だよな!もちろん愛バたちのためにも諦めてないぞ。で、あのチートの正体は?)
(あれはラースエイレム、その昔"フューリー"が使った時間兵器です)
女神メルアさんの説明
ヒューリーとは神話時代の大戦でメルアたちに敵対した組織の一つ。
そしてラースエイレムとは。
範囲内の時間経過を完全停止させる「ステイシス・フィールド」を展開することで、内部に存在するターゲットを「停止」させてしまうという反則じみた性能を持つ、まさにチートだそうだ。
(余りに反則すぎて使った者は「卑劣大魔王」の称号と共に村八分にされてましたね)
(つまり・・これはその・・あれだよね)
(言いたいことはわかります"ザ・ワールド!"で合ってますよ)
(ですよね~。もう無理じゃね、俺ジョースターの血筋じゃないしスタプラ使えないし)
(私たちの時は、双子の修羅の神核を同調させることで"時流エンジン"を生み出し対抗しました)
むかーし昔のことじゃった。
限りなく近しい二つの真核を組み合わせることで時流子の流れを加速させる因子を発見した者がいた。
ややこしいのでお蔵入りされていたその研究はヒューリー側にラースエイレムというチート兵器が生まれたのを期に再開された。
研究の結果、双子の修羅を同調(現代で言うリンク状態の強化版)させその覇気を三女神パワーで強化&拡散させることで、自軍をラースエイレムの停止状態から守るキャンセラーとして活躍したのだとか。
ラースエイレムを打ち破りし力の名は時流エンジンと名付けられ大戦後に封印(再お蔵入り)。
双子は"空間の支配者"と二つ名を「恥ずかしい」と言って辞退したらしい。
(と言うわけです。ラウルさんとフィオナさん・・懐かしいな~)
(過去にどうやったのかはわかったよ。今どうすんのかって話は?)
(時流エンジンの持ち主を頼りましょう!はい、これで万事解決です)
(この場に双子なんかいねぇわ!)
いたとしても神核のシンクロ率がシン・エヴァのシンジぐらいの数値じゃないとダメなんだろ?
そんなもん調べてる時間はない。
(全ての事象はあなたに集約されつつあります)
(それココも言ってたが何?今はそれより、双子が)
(世界はあなたを応援している。勘違いではなくいい流れは来ていますよ)
(ふ、ふたごがぁぁぁ)
(よく見て、必要とするものは既に揃っています。後は彼女の願いを叶えるだけ)
(はっ!まさか、俺とワカメは双子だったのか!それは嫌すぎる)
(ここまで言ってもまだわかりませんか?おーい、聞いてますか・・ねぇちょっと、コラ)
(あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!双子が必要なんて聞いてないよ~)
⦅いいから!目の前にいる子と契約しなさーい!⦆
「は、メルア!え・・契約・・誰と」
「どうしたのマサキ。あ、やっぱり両手で揉みたい?」
女神通信を終えると俺におぱーいを揉ませている可愛いウマ娘がおりました。
この状況でなにやってんだろう、とりあえずもう2、3回だけ揉んどいた。
「ん////」
「ありがとう、大変良きお胸でございました」
「こんなのまだ序の口、この先のメニューも永久無料で提供できるからね」
「死ねない理由が増えた」
「それで、何か思いついた?女神様はどんなアドバイスをしてくれたの」
察しがよくてホント助かる。ココもまだ諦めたわけじゃなかった。
女神はココと契約すれば万事解決と言った、それはなぜか。
必要なのは限りなく近しい神核のを持つ者とそれの同調、双子である必要はない。
"同一人物"であるのならば、双子以上の時流エンジンが誕生するのではないか。
そして既に対象者の二人は"融合"というこれ以上ない形で合一を果たしている。
「ココ、俺たちが止まってる間はどうしてた」
「三人が達磨さん転んだを始めたみたいになって、それで」
ルクスが手元が輝いた直後、時間停止した中で奴はゴルシとワカメを大剣で薙ぎ払ったらしい。
防御も受け身も取らない二人を訝しく思ったココはすぐに駆け出し、俺とルクスの間に割って入ったらしい。
「剣の軌道を逸らそうとしたんだけど間に合わなくて、マサキを吹っ飛ばしちゃった」
「俺をここまで飛ばしたのはお前だったのか」
「スマートに助けられなくてごめんね、背中痛いよね」
「いいんだ、マジで助かった」
ココが多少なりとも妨害をしてくれたから、まだ生きていられる。
脳天を勝ち割られそうになった俺を咄嗟の判断で逃がしてくれた。
改めてゾッとする・・何も知らないまま、頭割られて死ぬ所だった・・スイカ割りトラウマになりそう。
「別れはすんだか?」
ルクスが余裕をもって近づいて来る。
来ないな~と思ってたら遺言タイムを許してくれたようだ、舐めやがって!
「全然すんでないよ!ちょっとやりたいことあるから二人っきりにして!ベッドがあれば尚よし!」
「そんなに待てない、さっきおっぱい揉ませていただろう?それで満足しておけ」
「見てんじゃねーよ!このスケベ!あれぐらいで満足できるか!余計にムラムラして未練が残るわ!」
「それは全く同感だな」
「本当に頭のおかしい奴だ。死を前にしてのその言動、さすがに少々面喰ったぞ」
余裕をぶっこいている。
こいつは俺たちを見て楽しんでいる、いやそうじゃない、楽しみたいのだ。
予定調和のシナリオよりハプニングがあった方が好きだと言っていた。
サプライズ、新鮮な驚き、どんでん返し、予想外の結果、そういうのがお好みらしい。
こうして会話しているのも自ら進んでやり取りを楽しんでいる。
時間、時間がほしい、ココと契約できるだけの時間が。
「なるほど、ファインモーションと契約するつもりか」
「え・・」
あちゃーバレてる。
「ラースエイレムを発動中に邪魔が入るとは思わなかった。彼女の神核は特別なようだ」
「ああ、そういうこと・・大体理解したよ」
ココは本当に優秀な子だ。
自分だけが動けた理由と、契約によりその効果を俺にも付与できるとすぐに理解してくれた。
「あっさり終わったらつまんないだろ?よければココと話をする時間をくれよ」
「それは気が進まない。ラースエイレムを復元するのには多大な労力がかかった、簡単に攻略されてしまうのは都合が悪い」
ダメか・・・まあ当然だわな。
時間兵器なんてものの優位性をそう簡単に手放すわけないか。
「悔しいけどルクス、あなたの勝ちだよ。勝者の余裕でここは見逃してくれないかな?」
「ファイン家頭首ともあろう者が命乞いか、見苦しいぞ」
「見苦しくて結構、マサキの命が助かるならいくらでも無様に足掻くよ」
ココ・・・お前って奴は。
「愛バになってすらないのにその男を庇うか、健気なことだ。いいだろう」
「タダってわけじゃないんでしょ、それで条件は何かな?」
「その胆力、気に入ったぞ。では、私と契約してもらおうか」
「なん・・だと・・」
「聞き間違いかな?もう一回言ってくれる」
「私の愛バになればマサキを見逃すと言ったんだ」
愛バ?愛バって言ったか。
え、ちょっと待って、ココがこのクソ野郎と契約するだと。
そんなことは・・・
「バカ言ってんじゃねーぞ。この子は」
「ごめんマサキ、ちょっと黙ってて」
「しかし!」
「操者でもない癖に契約に口を出すのは無粋だな、アンドウマサキ」
「うっせぇ!ココ聞くな、こいつはただのゲスだ」
「あなたの愛バになって私に何かメリットがあるのかな」
「ココ!」
ええーー!?
交渉に入っちゃうの?俺よりルクスの方がいいと思ったら乗り換えちゃうの!
確かに俺はまだ操者じゃないけどさ・・・でも・・・だからって。
「マサキとファイン家には手を出さないことを約束しよう。その気があればメジロ家とサトノ家を潰して、ファイン家一強の繁栄も夢ではない」
「随分魅力的な話だね。ねぇ、あなた人間?他にも契約している子がいるの?」
「ご想像にお任せしよう、契約は今回が初めてではないと言っておこう」
こいつも操者だと!こんな奴にも愛バが既にいることが信じられない。
「では返答を聞こうか、ファインモーション」
「最終確認だけど、マサキの命は助けてくれるんだよね」
「もちろんだ」
「ファイン家・・私の仲間たち、そこにいるゴルシちゃんとワカメも含めて手を出さないと誓う?」
「ああ、死んだお前の両親に誓ってもいい」
「そっか・・・そっか、そっか」
ルクスがこちらに手を差し伸べる。
その手を取れば助かる可能性がある。
だけど・・ココ・・・お前は・・・
「マサキ・・・本当にごめんなさい」
「いいんだココ。お前は絶対に正しい」
「フッ、賢明な判断だ。さあ、こっちに来るんだ・・・ココ」
「ゲス野郎の分際で気安く呼んでんじゃねーぞ!ぶっ殺すぞ!!」
おおっと、ココがぶちギレた。
「その名はマサキにしか許してない、お前の汚ねぇ口から垂れ流していいと誰が言った、ああゴルァ!」
「これはこれは、品性の欠片もないことだ」
「黙れよ!大人しくしていれば嘘八百並べやがって!私と契約してもマサキを殺す気だった癖に」
「気づいていたか」
「1stでお前が何をしたか忘れたとは言わせない、人の尊厳を踏みにじり世界を滅ぼしたゲスの言うことを信じるとでも思ったか」
「そうか、ならば「仲良く死ぬ覚悟ができている」と解釈していいんだな」
「覚悟なんてしない!でも、お前の愛バになるぐらいだったら死んだ方が何億倍もマシ」
「ココ、よく言った」
「私の操者になるべき人は決まってる!アンドウマサキただ一人だ!お前はお呼びじゃないんだよ!」
がるるる!と牙をむき出しにして威嚇する猛獣のような笑みを見せるココ。
今の聞いたか・・・最高に心に来る啖呵だった。
嬉しすぎて泣きそう、てか泣くわ。
「だから、ごめんなさいマサキ。最期に一緒なのが私で・・キタちゃんやダイヤちゃんじゃなくて・・アルダンちゃんも怒るかな?・・・て、泣いてる!?」
「うう・・ワイは果報者や・・クロシロだけじゃなく、こんないい子に好かれて、グズッ」
「あ・・」
「渡さねぇ、この子はお前なんかに絶対渡さない!何度もげろって言われもいい、土下寝でも何でもしてやる。クロもシロも、そしてココも俺のものだぁぁぁ!」
ココの肩を掴んで抱き寄せ宣言する。
ええ、勢いですが何か?
「マ、マサキ///嬉しいけどアルダンちゃんを忘れてるよ」
「忘れてない!アルダンはあれだ、ええーとまだちゃんとお話してからじゃないと・・」
「その時は全員揃ってるといいね、私たち五人全員が」
「ああ、最高のハーレムだ。嫉妬と憎しみの視線ですら心地よく感じそうだな」
俺たち五人でか・・・楽しそうだな・・・ケンカはしないでね。
今、その未来が断たれようとしているのが大問題だ。
「振られてしまったか、残念だ」
「はいそれも嘘、私のことなんて「手に入ればラッキー」ぐらいにしか思ってないよね」
「残念なのは本心だよ。ウマ娘に袖にされるのは何度経験しても辛いこどだ」
「実は非モテなのかww人の女に手を出そうとする奴が悪い!!」
「っ!?ダメ!」
ルクスの手元がひか・・・
「ぐ、あぁ・・またか・・ちくしょう・・・」
「・・っ・・マサキ」
ラースエイレムをまた使われた。
ココは弾き飛ばされ、ルクスは仰向けに倒れた俺に大剣の切っ先を突き付けている。
チャージまでにはしばらくかかってそう・・停止していた時間も最初より短い。
乱発はできない、されてたまるもんですか!
「ゲホッ・・急にキレてどうしたよ・・何がお前をムカつかせた?」
「わかっていないようだから教えてやる。私の方が先だった!」
「ガッ・・・うぁ・・」
頭を乱暴に蹴られた。サッカーボールじゃねぇぞコラ。
「お前っ!!!」
「動くなファインモーション、今は私とマサキが談笑中だ」
「剣を首に当てといてよく言うわ。何が先だって」
「キタサンブラック、サトノダイヤモンド、メジロアルダン」
「愛バたちが何かしたか、お前の口からその名前が出ること事態が不快なんだが」
「出会ったのは私が先だ!私こそが彼女たちの操者になるはずだった」
はあああああ!?そんなことクロもシロもアルダンからも聞いたことない。
「それを後からしゃしゃり出てきた貴様が奪っていった!私には貴様を殺したい十分過ぎる理由があるんだよ」
「それがお前の本音かよ。余裕ぶってたのはどうしたwwそっちの方が好感持てるぞ、ダサくてww」
「口の減らない男だ。こんな奴が天級の息子を騙るなど世も末だ」
「騙ってねぇよ!俺はちゃんとした母さんの子だ」
血のつながりなんて関係ない。
俺と母さんは正真正銘の仲良し親子なんだ。
「せっかくだ、お前が死んだ後の計画を聞かせてやる」
「捕らぬ狸の皮算用だなwいいぜ、クソつまんねぇプランを言ってみろよ」
「先程も言ったがお前の愛バたちは本来、私のものだ」
「ちげーよ俺のだよ」
「お前は死に、愛バたちは自由の身となる。そこで改めて契約をしよう」
「あいつらが素直に応じるわけがない」
「だろうな、だが、私にはコレができる」
「なっ・・・がぁあああああああああああ!!」
「マサキ!何やってんだぁ!このゲスーーー!」
ルクスが俺の胸に右手の指をめり込ませた。
うがあ・・・ああ・・・掴まれた・・・心臓?・・違う、神核をだ・・・。
俺の体内には入ったように見えた奴の手は、形のない覇気溜まりの神核に触れている。
これが奴の能力、対象の神核に手を伸ばし弄ぶ。
圧倒的な不快感、鈍く強烈な痛み、最悪の異物が侵入したことに全身が悲鳴を上げる。
「痛いか、無痛にもしてやれるが、お前に必要ないだろう」
「て、てめぇ・・くそが・・」
「彼女たちの神核を操作して、私の覇気無しではいられない体に調教してやる」
「そんなこと・・させっかよ・・」
「薬物中毒と一緒だ。跪いて私に覇気を懇願する姿が今から待ち遠しいぞ」
「さすがゲス・・いい趣味してる。死ねばいいのに」
「お前もやっていることだろう?少なくとも二人は完全な中毒者だ、その結果はお前も知っての通りだ」
こいつ、クロとシロが結晶の繭になったことを言っているのか。
「俺は神核をどうこうしてない、心からあいつらを好きになったんだ」
「その気持ちすらもお前の異常性が引き起こしたと、なぜ考えない」
「知るかバーカ!」
「お前がモテないだけなのをマサキのせいにすんな!キモイんだよゲス」
ルクスは俺とココの罵倒にも動じない。もうこいつ最高に嫌い。
愛バたちを俺に取られたを思って逆恨みするのもキモイし、まだ諦めてない粘着っぷり。
やり方も最悪、このゲスをあいつらに会わすことはできない。
「後のことは心配するな。愛バもそこのファインモーションも私が面倒をみよう」
「ちっとも安心できないな」
「ここまでにしよう。さよならだアンドウマサキ」
「さよならすんのはてめぇだよ!」
俺の胸から引き抜かれようとした手を掴む。
バスカーモード!食らいつくせ!俺のオルゴナイトよ!
緑のオルゴナイトがルクスの手から腕を飲み込む。
このまま一気に!
「できるとでも思ったか?」
「ちいっ」
奴の赤いオルゴナイトが浸食を止める。
緑と赤の結晶は互いを相殺し合い霧散する。
まだだ!
「玄武剛弾!」
「アストラルバスターッッッ!!」
いつの間にか復活していたゴルシとワカメの攻撃がルクスへと迫る。
二人とも死んだふり上手かったぞ。
ラースエイレムを使って来ない、やっぱり乱発はできないみたいだ。
大剣を振るうと同時にオルゴンクラウドで二人の攻撃を防いでみせるルクス。
「いいから!どけよゲス野郎!!」
そこをココが強襲、ミラージュソードがルクスの首を狙う。
ヒット寸前で光の剣が止まる。オルゴンクラウドの強度を上げたな。
「こっち見ろや!実は非モテ!」
仰向けのまま下からブラスターを浴びせかけてやった。
俺が奴の腕を結晶浸食してから、みんなの動きが噛み合いコンボが発生した。
リンクはとっくの昔に切れているってのに、ルクスへの怒りが俺たちの心を一つにした。
これには奴も後退せざる得ない。
「マサキ!」
「ココ!」
「させるか、今一度ラースエイレムの恐ろしさを知るがいい」
やっべ!今度こそやっべ!
俺のミスだ、つべこべ言わず、昨日の内にココと契約しておけばこんな結果には・・
「させない・・ケルヴィン・・ブリザード」
凛とした声が聞こえた。
瞬間、この場全体の温度が休息に冷えていくのを感じる。
「この冷気!?くっおおおおおおおおぉぉぉ!」
「何アレ凄っ!」
「一瞬で氷漬けになっただと!」
「ざまぁw」
「戻って来ましたか、あのような体で無茶をする」
周囲一帯に冷気がに包まれた。
戦場の景色が一変する。そこかしこに生まれる氷塊、大気中の水分すらも瞬間冷却しキラキラ輝くダイヤモンドダストが出現する。
寒っ!めっちゃ寒い!真冬なの?氷河期なの?体の芯から震える程の冷気を感じる。
攻撃対象となりその冷気を集中させられたルクスがどうなったかは一目瞭然。
眼前にあるのは大きな氷柱、仮面を付けた人型を封じ込めた氷の牢獄が生まれている。
氷漬けのルクスがその動きを完全に停止していた。
こんな芸当ができる人物はやはり彼女しかいない。
「ガッちゃん!」
「ん・・・間に合ったね」
ベーオルシファー戦の前に別れたはずのガッちゃんがそこいた。
「どうしてガッちゃんがここに?先輩たちはどうしたんだ」
「それは・・かくかくしかじか」
洞窟神殿から退去したテュッティ先輩、サフィーネ、ガッちゃんとミオは地上で待っていたファイン家別動隊のエアシャカ―ルたちと合流し、俺たちの帰りを待っていた。
その間、転移術で移送した教団員の手当てと捕縛をしていた所でガッちゃんが気づいた。
転移させたはずの人数が一名足りないことに。
嫌な予感がしたガッちゃんは追いすがるテュッティ先輩を説得(腹パン気絶)して俺たちの下へ参上してくれた。
「そこの仮面・・信徒に混じってた」
「そうか、最初からいやがったのかコイツ」
「一人で来るなんて、思い切ったことしたね」
「一人じゃない・・ザムも道連れ」
「それ持ってきちゃったか」
「降ろすの忘れてた」
ガッちゃんも慌てていたのだろう、ミオが入ったバッグを肩にかけたまま来ていた。
ピシッと氷柱に亀裂、マズイ!ルクスの奴が出てこようとしている。
「長くはもたない・・チャンスは今だけ」
「ワカメ!」
「承知しましたぞ」
ゴルシとワカメがガッちゃんの傍に駆け寄り、氷柱の周囲に結界を張ろうと試みる。
「ああくそ、自慢じゃないがこういうの苦手だ。私ができることあれば言ってくれ」
「覇気ちょうだい・・・ダメ、マサキのみたいに上手くチューチューできない」
「それでも無いよりマシだろ、いいから使ってくれ」
「二重三重に陣を張るつもりですが、これでも突破されそうですな」
「おお・・人間にしてはなかなか・・・うん、そのまま手伝って」
「マサキ!ボスを頼む!さっさとやることやっちまえーーー!!!」
仲間たちが作ってくれたこのチャンス、無駄にするわけにはいかない!
「ココ・・その・・・いいか」
「うん、待ってましただよ」
「えっと、どうしよう。クロとシロの時は確か」
上半身を起こして立ち上がろうとする俺をココが制する。
「座ったままでいいよ、楽な姿勢でやった方がいいでしょ」
「そっか、最初に謝らせてくれ。こんなことになってごめん」
「謝る必要は感じないけど、マサキの気が済むなら受け取るね」
「散々拒否した挙句、ピンチになったら都合よく契約しろだなんて・・俺は最低の男だ」
「無理を言ってたのはこっちだし仕方ないよ」
「今更なんて言えばいいか正直わからない、クロシロの許可を取ってからだと思っていたし、出来ることなら今じゃなくて、もっとムードのある時と場所で契約したかった」
「ホントだよ、そこだけは残念だな」
足を投げ出して座る俺に正面からしな垂れかかって来るココを受け止める。
ちょっとドキドキしてきた、ココの鼓動も同じようなリズムを刻むのを感じる。
細く繊細な身体・・クロシロとは違う匂い・・覇気の流動。
近距離で見つめ合う、金色の美しい瞳が真っ直ぐに俺を射抜く。
欲しい・・・お互いがお互いのことを欲している。
「勝つために、生き残るために、お前が必要だココ」
「うん」
「でもそれだけじゃない、今ならわかる。あいつらと同じく俺はお前のことも待っていた」
「私もだよ」
「今ピンチじゃなくても、きっとどこかでこうなる運命だったんだ・・・今のはさすがにクサいかw恥ずかしい!」
「フフッ、頑張って。クサさ最高潮でもキミの口説き文句はこうかばつぐんだよ」
「ならいい。最後に確認だ、俺には既に愛バがいる。それでも本当にいいのか?」
「百も承知、とっくに覚悟はできてるよ」
「お前一人に構ってやれなくて寂しい思いをさせるかもしれない、それにクロシロがどういう態度に出るか未知数だ、アルダンのこともある。いろんな奴らに好き好き言ってしまうダメ男だし。俺といればそこのルクスみたいなのに絡まれるだろう、大変な思いをして後悔する日が来るかもしれない、それから・・・」
「はいストップ!」
「んぐ」
指先で口を止められる。契約前の不安材料はしっかり提示しておきたかったんだが。
「言ったでしょ、もう私は覚悟完了してるの。今更そんなので怖気づいたりしない」
「しかしだな、負わなくてもいい苦労ってもんが」
「マサキにはそれだけの価値がある。苦労?寂しい?そんなのが全部チャラになってお釣りがガッポリ入るくらいの価値がね。せっかく見つけたキミを手放すだなんてとんでもない!!」
「強いな、俺の愛バはみんな強い子ばかりだ」
「キミがいるから強くなれるの」
「俺のことも強くしてくれるか?」
「うん、一緒に強くなろう。私とキミとみんなでね」
「みんなか・・そうだな、全員揃うまでは絶対に死ねない」
「揃った後が本番だよ、ワクワクでいっぱいの日々にしようね」
覚悟が決まってないのは俺だけだった。
この子を幸せにする勇気が無いなんてどこかで言い訳をしていた。
情けねぇ、ここまで言わせてできないなんて言えない!
クロもシロもアルもココも俺が幸せにしてやるんだ!うひょー大それた四股宣言!!!
「四股すんません」
「それこの先何回も言いそうww」
「ふぅ・・・そろそろ、いいか」
「うん、やろう」
いよいよだ。
結構な緊急事態だが焦って契約したくない。まだ出てくんじゃねーぞルクスのアホ!!
「ファインモーション、お前と契約したい。俺の愛バなってくれるな」
「はい承りました。私、ファインモーションはアンドウマサキ様を生涯の伴侶、操者として認めます」
照れる///
この後は・・・ん?忘れていたぁーーー!この後アレがあるやん!あの激痛再び!?
「い、今から地獄の噛みつき刑でしょうか((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル」
「おや、震えだしたね。それもいいけど・・・こっちをもらおうかな」
「何を・・・痛っ!」
ルクスに頭を蹴られてから額の傷口がまた開いていた。
もう血が止まらないので放置していたが、そこへココがいきなりキスをした。
「チュッ・・・ん」
「お、おい」
怪訝に思っている俺を無視して傷口に口づけするココ。
口紅のようになった俺の血を舌を使って舐めとる・・・エロい。
そのまま今度は舌を這わせてきた!ちょっとおおおお!
「レロ・・・染みる?」
「少しな。なあ、デコの血でいいのかよ?」
「出血したら舐めるって言ったよね。実はルクスの攻撃を食らった時からずっと狙ってました」
「マジでか!あの時、そんな気持ちだったの!」
「チューーー!!」
「吸い過ぎ!吸い過ぎだから!なんかこのまま脳みそ吸われそうで怖い!!」
「じゃあ舐めるね。レロレロレロレロレロレロレロレロ~」
「ちょw花京院より舐めてるぅぅぅ!」
俺のおでこはサクランボじゃありません。
なんとも締まらない、こんなんで人生のパートナーが決まってると思うと笑える。
不思議だ・・・クロとシロの時は死ぬほど痛かったのに・・今回はなんか楽?
額はずっと痛かったはずなのに、ココが舐めている箇所から痛みが引いていく気がする。
ココの頬が上気している。
舌がゆっくりじっくり額を舐める、俺の血を味わっているかのようだ。
悩ましい吐息がエロい、傷口へと時折やさしくキスをされてしまう。
心地いい・・もうなすがままだ・・このまま身を委ねてしまっていいのか・・・いいか。
声が聞こえる・・・あの時みたいに。
・・・ほら、私の言った通りになった・・・
・・・ピンチなのはわかってるけど、嬉しいよ・・・
・・・やっとあなたのものになれた、それがとても嬉しい・・・
・・・ズルい女、嫌な女、弱い女、こんな私でごめんね・・・
・・・嫉妬するし、わがままも言うよ、泣いたり暴れたりするかも・・・
・・・でも、どうか、そばにいさせてね・・・
・・・私の全てをあげる。だから、聞かせてほしいの・・・
・・・私、あなたのことが大好き。他の三人に負けないくらい好き・・・
・・・あなたは・・・
(何だよ?言ってみろ)
・・・あなたは私のことどう思うかな?・・・
(好きでもない女と契約なんかするかよ)
(ピンチをしのぐためだけじゃない、これからもお前にいてほしいから契約するんだ)
(気が多くてすまん!俺はみんなが好きだ、だから、お前のことも大好きに決まってる)
(好きだファインモーション、こんな俺でよければ全部もっていけ)
・・・うっわ、うわ、うわぁぁぁ!ヤバイ鼻血出そう・・・
(おい!今最高にいいムードだったのに!)
・・・もう思い残すことはないよ・・・昇天していいかな?・・・
(いいわけないだろ)
・・・もう何も怖くない。あ、やっぱりキタサトちゃんは怖い・・・
・・・これからもよろしくね、私の操者様・・・
(こちらこそだ、俺の愛バ4号)
・・・4号はなんか酷くない・・・
「あいつら、いつまでやってんだ!」
「ふむ。額からの吸血プレイですか・・暗黒神官と呼ばれた私でも引きますな」
「教団はもっとエグイ儀式やってそうなんだが」
「失礼な!ヴォルクルス教団は地道な布教活動とアットホームな雰囲気が魅力の健全な宗教団体ですぞ」
「生贄に覇気を奪うのがアットホームねぇ」
「それはそれ、これはこれです!普段は好きなお菓子を持ち寄ってスマブラ大会とかしてました」
「それ私も参加した・・教団は変だけど・・みんな割といい人だらけ」
「は?アーチボルトと繋がっていただろ、生贄用意してもらったりとか」
「奴に依頼したのは闇社会で「信者募集中」の宣伝です。それを曲解したあのアホは女子供をさらってこちらに寄越す始末!可哀そうなのでトラウマな記憶は消して家に送り届けましたよ。もうマジでめんどうでした」
「ワカメが助けて入信した子もいる・・・教団はダークぶってるけど殺しやテロにはいっさい関与してない」
「知らんかったわ~。極悪キチガイカルト教団だってモーションが言っていたから」
「おのれファイン!小さいころ宿題を手伝ってやった恩を忘れおってからに!」
「そういえば、1stでは師弟関係だったな」
「先生、先生と呼ばれていた頃が懐かしいですよホントに・・・」
ルオゾールも教団も思ったより腐っていなかったことが判明。
教団は純粋にこの世界2ndのことを憂い、ヴォルクルスの召喚に踏み切ったようだ。
自分たちを生贄にしても1stの悲劇を繰り返さないと決死の覚悟をしていたのだとか。
「お前の悪い言動は何だったんだよ」
「ヴォルクルスは破壊神、悪の組織風にキャラ立てしないと召喚に応じないと脅されまして・・・ルクスに」
「騙されすぎだろ!」
「仕方ない・・ルオゾール、あいつに神核弄られてた・・定期的に」
「え?それはいつですか!身に覚えがありませんぞ!」
「マッサージチェア」
「な!まさかあのプレゼントが・・そんな」
教団を立ち上げて間もない頃。
お祝いにルクスから高性能マッサージチェアをプレゼントされたことがある。
大層気に入ったルオゾールはそこに座りうたた寝をするのが日課になっていた。
「昼寝中・・ルクス、後ろにいたの見たよ」
「教えてくださいよ!」
「無理だよ・・その後、すぐに牢屋行きになった・・・あなたのせい」
「そうでしたぁ!誠に申し訳なかった。あわわわ、私の神核大丈夫?どうなってんの?」
「見た感じ問題ない・・気分の高揚と、ヴォルクルスに対する狂信性の一時アップが目的・・たぶん」
「ルクスゥゥゥゥ!!私の心を弄んだなぁ!許しませんぞォォォ!!」
「気力限界突破ワカメww」
「ん・・そろそろ・・・ヤバイ」
「くっ、これだけの結界を内側から・・」
「マサキ!早くしろ!デコ舐めプレイの延長戦は却下だぁぁぁ!!」
デコ舐めプレイってなんやねん。
ガッちゃんたちが限界みたいだ、名残惜しいが行かなくては。
「ココは休んでろ、後は俺がやる」
「うん・・お願い」
契約完了。
今回は痛くなかったし、気絶もしなかった。
契約のやり方とその間の感覚には騎神ごとに違う反応があるのかも、知らんけど。
俺はすこぶる元気だ、ココの覇気をもらってベーオルシファー戦より調子がいいくらいだ。
逆にココは俺の覇気を取り込んだ反動から少々ぐったりしている。
心配だ、またクロやシロみたいになったらどうしよう。
「結晶体にはならないよ、ちょっとクラクラしてるだけ・・マサキの凄くおっきいんだもん///」
「覇気のことですよね?小さいと言われるよりはマシだけどな!」
背伸び、腕回し、腰回し、屈伸、伸脚、アキレス腱・・・ストレッチをしてと。
「もう無理~・・・マサキ・・・後よろしく」
「そうと決まれば退避ですぞ、ささ、ガッデス殿はこちらへ」
「はい・・運搬よろ~」
「いくら天級でも身を酷使し過ぎだ。体だって幼女のままなのに、死んじまうぞ」
「それでも私は天級・・サイに代わってあの子を守る義務がある」
「天に愛されし子、それがアンドウマサキですか」
ガッちゃんがワカメに抱っこされて退避していく、いいの?ワカメ臭うつちゃうよ。
ゴルシはこちらに来てココを守ってくれるようだ。
ワカメの多重結界が破られる。
その直後に氷柱が音を立てて崩れ去る。
中から激昂したルクスが出て来る、ガッちゃんの技が随分とお気に召したようだ。
「やってくれたな天級騎神!そんなにあいつが、マサキが可愛いか!!」
おほっ!怒ってる怒ってるw年上に可愛がられて何が悪い!
「よっしゃ、行ってくるわ」
「うん、気を付けて」
額の血は止まった、というか無理やり止めた、だってココがずっと舐め続けそうな勢いだったんだもん。
オルゴナイトで傷口を固める、やったら出来た!止血には今後も使えそうなテクだ。
「あのバカを殺してやる!そうだ、そうすれば天は"あの美しい風"は目を覚ます!!」
「寝ぼけてんのはてめぇだよ」
「ぐ、マサキーー!!」
なんか言い出したけど知らん。
怒りのままに剣を振るうルクスへ接近してオルゴナイトの爪をお見舞いする。
剣で受け止められた、でも構わない。
「くだらん、ガラクタの真似事か?」
「意外と応用がきくんだよ、こんな風に!」
10本の爪を近距離から射出する。フィンガーミサイルなんてどうよ。
「ちぃ!」
剣で半数を残りの半数をオルゴンクラウドの盾で防ぐルクス。
ふむふむ。威力と命中後の爆破規模は結晶の大きさと、そこに込めた覇気に依存するっと。
こういうのはシロの得意分野だ、あいつが起きたら相談してみたい。
「だっりゃぁあああ!」
考えろ、常に工夫を凝らせ、まだやれる、まだアレができるはず。
模倣しろ、見たはずだ、感じたはずだ、あいつらみたいに、そしてそれ以上のオリジナルを!
フィンガークリーブ、何度も拳をぶつけるのはルクス本体ではなくその大剣。
結晶の強度は俺の方が上だ!武器破壊まで後一歩ですが大丈夫?
「なめるな!」
「おお、もう一本か」
左手にも剣を形成して攻撃を開始するルクス、右手の大剣より小ぶりだな。
両手剣に両拳がぶつかる。手が塞がった、こんな時もう一本腕があればな・・・造るか。
「よい・・しょっとぉ!!」
「貴様っ!」
ルクスの頭上からオルゴナイトの槍が振り下ろされる。
覇気で出来た鞭を造る要領で尻尾を造ってみた、俺が制御できるのは一本が限界それでも意表を突くには十分。
槍の正体は即席で造った尻尾の先端だ。手足が塞がってもこいつで追撃できる。
同時、俺の足に形成していたカギ爪をルクスの足に接触させ浸食させる。
緑の結晶で地面に縫い付けられた足じゃ回避行動には移れまい。
「うぐっ」
「浅かったか」
尻尾槍が二振りの結晶剣を破壊する。
頭を狙った一撃を武器を犠牲にすることで防いだか。
はい、隙ができました!
「臓物(はらわた)をブチ撒けろ!!」
正拳突きをルクスの腹に叩き込む、ヒットした瞬間におまけつき。
拳と共にオルゴナイトの杭を打ち込み射出!
アルトアイゼンのリボルビングステークからヒントを得たオルゴナイトステークだ!
「ぐおおぉぉぉぉーーー!!」
今のは完全に入った。
ルクスは叫びながら吹き飛び、儀式の間の柱を二、三本へし折ってようやく止まる。
「やるじゃねえか!おい、見ろよボス!あんたの男、超強いぜ」
「知ってるよ・・やっぱりカッコイイな」
「ありゃボスには勿体なかったな、私が唾つけとけばよかったぜ」
「残念だったね、そっか、ゴルシちゃんでもそう思ってくれるほどの人が私の・・・えへへ」
この程度で終わるはずはない、油断せずに構える。
ほら来たぞ。
立ち上がったルクスが赤いオルゴナイトを手に形成しそこからビームを撃って来る。
オルゴンクラウドで軌道を逸らすことに成功、ルクスは横に走りつつこちらにビームを撃ち続ける。
射撃戦にシフトしたようだ。
「その姿、お前はベーオウルフやルシファーにでもなるつもりか!」
「必要なら何にだってなるさ。てめぇに人生狂わされたあいつらの意思が俺に宿ったのかもな」
「減らず口を!」
うわ、バンバン撃って来る。
ブラスターで応戦するが直線的な軌道が読み易いのかひょいひょい躱される。
こっちはクラウド上からガリガリ削られているのに。
とりあえずルクスがいる方に向けて結晶の塊をぶっ放しておこう。
「そんな狙いで当たるとでも」
「ちょこまかウゼェ!止まれってんだよ!」
「防護壁がいつまでもつかな、このまま追い詰めてやる」
「あっ!そこ危ないぞ」
「ハッタリはよせ、幼稚な言葉で惑うほど・・な、ぐあぁぁぁ!!」
「だから言ったのに」
先程何発かぶっ放した結晶塊が形を保ったまま転がっていた。
ルクスの移動先にちょうどあったので遠隔操作で起爆できるかやってみたら出来た。
見えている地雷でしたよ?注意もしたのにモロに食らってやんのww
逃がさん!
姿勢を崩しよろけた所を一気に接近。
体重、覇気、速度、それと奴に対する怒りを込めた全力蹴り!
「くたばれ!」
「おごっ!?」
足裏のオルゴナイトを起爆!結晶爆裂脚、いいルビが思いつかん。
二回目の吹き飛び、今度は受け身をとって倒れ伏すことはなかった。
ふと思ったが、あの仮面なんなの?
あれだけ動き回って吹っ飛んだのにどうして外れないの?肉付面なの?仮面が本体なの?
そんなに隠されると暴いてやりたくなるな!
新規契約した効能か、体がメチャクチャ軽い。
一方、ルクスの方は片膝をついて肩で息をしている。
あれれ~どうしたのかな、結構効いているじゃないの。
「あれだな、ラースなんたらがなけりゃ、ちょっと強い不審者だなww」
「忌々しい男だ、ならば望通り味合わせてやる!停止した時の中でわけもわからず死んでいけ!」
ルクスの手元が怪しく光ると同時に時間停止のフィールドが形成される。
俺の時は三度停止した。
「フン、偉そうにしていたのはハッタリだったか」
「・・・・」
「契約したものの、その力を引き出せなかったようだな」
「そ、そんなマサキ!」
「見ているがいいファインモーション!お前の想い人の最期をな!」
「ダメ!やめて!」
「ハハハハ、終わりだアンドウマサキ!」
手に形成した赤いナイフをマサキに突き立てようとしたルクスは見た。
マサキの眼球が動き、こちらを睨みつけるのを。
「うわたぁ!!」
「ぐぇ」
ルクスの仮面に俺の拳がクリティカルヒットする。
あっぶな!めっちゃ近かったぞ、あんなに顔近づける必要ある?キスされるのかと思ったわ。
(もう!急に話しかけるのやめてよね、メルアさん!)
(いや、どうなったか心配でして)
(会話中にラースなんたら来ちゃったから、動けるまでラグが発生したでしょうが!)
(ご、ごめんなさい。でも、よかったですね!時流エンジンの恩恵がバッチリ作用していますよ)
(ココのおかげだ、後でお礼しないとな)
(四人目の愛バですね。境遇がトーヤさんに似てるのは偶然でしょうか?)
(トーヤってのがメルアたちの、いいひとって奴かどんな男だ?やっぱ俺に似てるのか?)
(はぁ?冗談よしてください、似てませんし。トーヤさんの方が何兆倍もカッコいいです)
(そ、そうっスか)
(大体!オルゴナイトで尻尾や爪を出したり、噛みついたり、光線吐いたり野蛮な真似はしませんよ!)
(ごめんってば)
(トーヤさんの戦いはもっとスマートなんです!こう、武術と剣を華麗にですねぇ・・)
(この話続けるの?まだルクス倒してないよ)
(まあ、私たちに対してはもっと積極的になってほしかったですけど)
(エロさでは俺の勝ちだな!)
(そこで威張られても・・・)
(エロくて何が悪いか!)
(ラースエイレム、多分今ので終わりですよ。時流エンジンで動く人数が二人もいれば負荷がかかって壊れます)
(そうなの?じゃあ、ここからは真向勝負だな)
(はいです!頑張ってください、私たち全員が応援していますからね)
時間停止前の女神通信がちょっと邪魔だった。
トーヤみたいにスマートな戦いは俺には無理だ、俺は俺らしく行くところまで行こう。
ひっくり返りそうになるルクスのローブを掴み至近距離から睨みつける。
手首から腕にかけて接続されていた謎の装置(多分あれがラースエイレム)が火花を出して煙を上げる。
メルアの言った通りだ、時間停止中に動く人数が起動者以外にいると負荷がかかり壊れる。
ココが一人で動いていた時からずっと負荷がかかっていた、それが今度こそ臨界突破しただけ。
俺が仮面に手をかける、その腕を掴むルクス、おい観念しろや!
「ラースエイレム破れたり!さあ、顔を見せろ。ブ男か?イケメンか?それとも女かぁぁ!!」
「は、離せ」
「俺はプレデターの素顔を希望する「なんて醜いんだ」ってシュワルツェネッガーみたいに言ってやんよ!」
「やめ、ぐ、くそ、や、やめろぉぉぉぉぉぉ!!!」
「うわっと!」
焦ったルクスが覇気の瞬間解放による爆発を行う、食らうわけにはいかない、距離をとって回避。
ちっ、もう少しで外せたのに。
「はぁ、はぁ、マサキィィィィ!どこまでも目障りな男!貴様だけは」
「正々堂々勝負しろや、それで負けろ」
「負ける?この私が負ける?ありえないんだよそんなことはなぁ!」
攻撃?オルゴナイトからの赤いビーム、でも俺を狙ったわけじゃ・・・あの野郎!!
「ぐっ・・」
「お、おい」
「マサキ!く、ゴルシちゃんマサキを」
「いいから、隠れてろ。あいつお前らを狙う気だ」
「隠形で隠れていてもわかるぞ!そら、今度はそっちだ!」
「くそっ!」
何もない所へ攻撃したようにみえるが違う、あそこにはきっと、間に合えーーー!!
「がぁ」
「マサキ!・・やだ・・」
「おのれ、天級の隠形を看破するとは」
最初はゴルシとココを今度はワカメとガッちゃんを狙った。
最悪だ、俺とタイマン張るのをやめて手当たり次第に攻撃し始めた。
しかも、オルゴンクラウドを集中してやっと防げる程度の威力で撃って来る。
狙われている奴らから離れすぎていると庇いきれない。
そうなると、俺が直接盾になるしかないわけで・・・こいつ美学もクソもないな、マジ悪だ。
胸と腹部に鈍痛・・痛てぇ・・カバーしきれない箇所があったか・・ああ、また出血。
「次はどっちかな、どっちがいいと思う?お前に決めさせてやるよマサキ!」
「このゲスがぁ・・・」
「ルオ・・ここまでありがと・・マサキ抱っこ」
「え、ガッちゃん何する気」
「覇気もらうね・・・ふぅぅぅ・・・はっ!!」
「こ、これは」
戦場全体に現れる魔方陣、ガッちゃんが俺の覇気を流用して何かやる気だ。
「ガッデス!お前も目障りだ、マサキと共に消えろ!」
ビームが飛ぶ、今度はココの方へ。
やめろ!その子は俺の愛バになったばかりの子だぞ!
くそ、間に合うか・・今のゴルシじゃアレは止められない!
「大丈夫・・私が・・送るから・・お別れ言う?」
「え、あ、そうか」
そういうことか、頼りになる幼女様だぜ。
「ルオゾール!あんた思ったよりいい奴だったな、今後は精々真面目に生きろ」
「・・・はい、命の恩人の言葉、確かにいだたきましたぞ」
「ゴルシ!これからも誰かを助けてやってくれ、マジなお前もカッコよかったぞ」
「急に何を・・まさか」
「ココ!」
「マサキ!」
「あいつらを頼む!絶対に戻るから信じて待ってろ!最高のハーレムを準備しておいてくれ」
「うん、待ってる!信じてるから!だから・・・」
魔方陣の光が一層強くなる。
そして転移が始まる。俺とガッちゃん、ルクスを残してみんなが消え去った。
地上に送ったんだよな・・・これで心配なく戦える。
「転移術か厄介な、だが、そのせいでガッデスは死ぬな」
「何?ガッちゃん・・・な、覇気が」
ガッちゃんの覇気が酷く弱まっている・・これはヤバイ、明らかに虫の息だ。
ただでさえロリ化しているのに、ここまで大技を連発し過ぎた。
嘘だろ、待ってくれ、こんな所で死なないでくれ、今日はあなたを助けにきたはずなんだ。
嫌だ、嫌だ、嫌だ!
「マサキに肩入れするからそうなる。お前のせいで天が一つ失われるんだ」
「俺のせい・・俺がガッちゃんを、母さんの友達を」
体が震える・・さっきから必死に覇気を与えようとしているが・・ガッちゃんが受け取ってくれない。
もう、受け皿である自身の神核に外部から覇気を取り込む力さえ残っていないのか。
涙が出て来る、もう、ルクスなんてどうでもいい。
腕の中で消えている命を前にどうすることもできない自分がただただ情けなくて悲しい。
「泣かない・・男の子でしょ・・フフ、なんかちょっと嬉しい」
「ガッちゃん待って!お願いだから待って!今俺がなんとかするから」
「子供は諦めてた・・でもテュッティが来て・・マサキにも会えた・・うん、二人とも私の子にしよう」
「おれは母さんの子だよ、でも、ガッちゃんの子にもなっていい!だから」
「眠たくなって・・・来ちゃった・・じゃあねマサキ・・それと■■■■■■■」
「何?何を言ってガッちゃん!ガッちゃんてば!」
最後に何かを呟いた?よく聞こえなかった、それとも認識できなかった。
「哀れな、マサキは結局覚醒に至らなかった。お前は所詮、彼の"代役"でしかない」
嫌だ、嫌だ、嫌だ!どうすれば、母さん、母さんたちならなんとかできるのか?
でも母さんたちはここにはいない。
会いたい、今ものすごく母さんたちに、そしてクロとシロに。
あいつらの所へ、ラ・ギアスへ今すぐ帰りたい。
そこにはシュウだっているはずだ、だからガッちゃんを誰かが救ってくれる。
帰る、帰りたい、故郷ラ・ギアスへ・・・せめてガッちゃんだけでも!
その時、不思議なことが起こった。
「な、ゲートが作動した!?バカな私はアクセスしてな・・・お前かぁ!」
ベーオルシファー戦で結晶まみれにして放置していたゲートが動き出す。
結晶を取り払い、力強い光と共に駆動音を響かせる。
『起動権限者のアクセスを確認』
『前回のゲストは不正なアカウントの使用が認められました、アカウント破棄します』
『ユーザーを確認・・・履歴を確認・・・約20年前の使用を確認・・』
声が響く、頭の中に直接聞こえる声が。
女神通信や超機人のテレパシーに似ているが、これは機械音声のように無機質で業務的だ。
これは、ゲートが俺に言っているのか?
「私の操作を受け付けない、またか・・そうやってお前は全部持っていく」
ルクスがなんか愕然としてるがそれどころじゃない。
このタイミングで起動したゲート、何か意味があるはずだ。
『転移先を指定してください』
なんだと、転移先を選べるのか!だったら行くっきゃねぇ!
「ラ・ギアスまで頼む!わかるか?」
『ラ・ギアス???該当データなし』
ええー、こいつまさか現在の地名とか知らないのか。どういえば伝わるんだろう。
「日本の○○県○○市の山間部にある村だよ」
『日本?ニホンってなんやねん?』
こいつ!急に口調が関西弁に・・日本わかんないかぁどうしよう。
悩んでいると向こうから提案された。
『オススメの転移先をピックアップします』
そんな機能まであるのね。
『起動可能なゲート検索・・32件該当・・・内、外界行き18件』
外界行きはやめてほしい。
『現存エネルギーで転移可能先・・・6件該当』
『19番ゲート付近に準起動者反応を二名確認・・・同場所にてエレメンツの反応もあり、三名確認』
ん?今のは・・・準起動者、エレメンツだと・・それって
『19番ゲートへの転移をオススメします』
『転移予定者はユーザー並びにエレメンツ二名と判断、合流するなら19番ゲートへの転移がよいでしょう』
「そこだ!そこでいい、転移先をそこに指定する」
『転移先指定完了・・2分以内にゲートを通過してください』
輝くゲート、その向こう側はきっと・・・俺の望んだ場所。
「行かせると思うか!」
「くそ、邪魔すんなボケ!今はお前に構ってる暇はない!」
リングの中心が波打つ向こう側は見えないが、アレさえ潜れば。
ルクスがゲートの前に陣取って邪魔をする。
ち、近づけねぇ!ビームやめろや!
「ははは、そうやっている間にガッデスはくたばるな」
「てめぇマジで泣かすからな」
どうすれば、早くしないとゲートが閉じてしまう。
ミオお前ならこんなときどうする?
「てミオ!お前!」
ガッちゃんが持っていたバッグの中にある宝珠が輝いている。
チャックを開けて中を覗くと宝珠の黒い表面が蠢いているのを確認した。
ラズムナニウムで構築されたそれはバッグから出てすぐにガッデスの体を包み込む。
時間にして数秒、あっという間に黒い宝珠は数倍の大きさになった。
中にミオとガッちゃんを取り込んだ結果生まれた黒の宝珠(特大)。
そうか、ミオ、お前も力を貸してくれるんだな。
でかくなった黒の宝珠をオルゴナイトでコーティングする。
これで転移の負荷にも耐えてくれるはず。後はあの邪魔臭い野郎を!
「そこをどけぇ!!オルゴンスレイブーーーー!!!」
「バカな!ゲートごと破壊するつもりか!」
あれ、知らないのか?ゲートは母さんでも破壊できないんだぞ。
この程度はゲートにとってなんでもない。
ブラスターの数倍、広範囲をカバーする大出力のエネルギー波がルクスを襲う。
回避場所?そんなもんねぇよ!だから防御するしかないよなぁ!
ルクスの動きが止まった、今だ!
ガッちゃん、ミオ、母さんたちとあいつらによろしく。
「いっけぇぇぇーーー!!」
両手で力いっぱいぶん投げる。
サッカーのスローインならゴールもスタジアムも貫通する勢いで投げたつもりだ。
ゲートに向かって、シュウウウゥゥゥーーートイン!ど真ん中だぜ!
『転移完了を確認・・エネルギー供給の必要があります・・次回起動ま・・で・・』
ゲートからの声が聞こえなくなる。
ありがとう、迷惑門なんて言ってごめんなさい、役に立ったわ。
これでガッちゃんは・・大丈夫、母さんたちを信じよう。
ルクスはど・・こ・・が・・・ぁ?
「よそ見とは随分余裕があるな」
「しつこいな・・・普通空気読んで逃げるだろう・・がはっ・・」
俺の腹に赤いナイフが刺さっている・・・ルクスの生み出した赤いオルゴナイトの短剣。
ああヤベェ・・・今度こそヤバイ・・・。
ナイフが引き抜かれる、出血する、口からも吐血する。
崩れる、震える手で腹を押さえたままうずくまることしかできない。
バスカーモードの時間が切れた、ココと契約した反動もここにきて感じるようになる、頭がクラクラする。
「手こずらせてくれたな、代役の分際で!」
「がっ・・あ・・ああ」
顔を踏まれた、クソが、鼻が曲がったらどうしてくれる。愛バが悲しむでしょうが。
「このまま出血死するのを眺めてやってもいいが、こちらにも決まりがある」
決まり?約束事?誰とのだ、こいつの協力者ならまだまだいそうだがな。
「ゲートを動かした、お前はまだ化ける可能性がある」
俺の足を持って引きずるルクス、どこへ連れて行く気だ・・・ああ、痛てぇ‥体にもう力が・・
二つある内のゲート、先程俺が起動させたのとは別のゲート前へと連れて来られた。
「収穫の時期はまだ早い、しっかりと熟成させねばな・・ゲートアクセス」
ゲートが輝きだす、よかったな、こっちのゲートはまだお前の不正アクセスに気づいてねぇぞ。
「この・・クソや・・ろう・・が」
「そんな目でみるな、殺さずにチャンスをやろうと言ってるんだ」
「嘘つけ・・別に死んでも・・いい・・て思ってる・・くせ・・に」
「その通りだ、だがお前を生かしてもっと苦しめたいのも本心だ」
起動したゲートへ周囲の空気が引き込まれて行く。
倒れたまま踏ん張りの利かない俺は少しづつゲートに吸い込まれていく。
驚きの吸引力、何なのよコレ?ダイソンなの?
「くそ・・・あ・・・」
「熟成期間を設ける。ここでは無い場所で生き残ってみせろ」
「ふざけ・・・んな」
「ああ、そうだ。なるべく早く戻った方がいい、余り遅いと・・・もらうぞ」
「何を・・」
「お前の大切な愛バたちをだ!全員まとめて私のものにしてやる!!」
「・・・ぐっ」
「神核も身も心も全て全て全て!全てを思い通りにしてやろう!ククク・・アッーハッハハハ!」
「ゲ・・ス・・が」
下半身がゲートに飲み込まれた。ズルズルと引き込まれる・・・ああ、爪が床に引っかからない。
「いい顔だ、その悔しそうな顔を覚えておこう。戻って来たらまた見せてくれ」
うるせぇ・・・
「どこへ行くかは私も知らない、運が悪ければ転移の負荷で体が弾けるかもな」
うるせぇよ・・・
「愛バが待ってくれているといいな?私のものになっているかも知れないがw」
黙れ・・・
「クロ、シロ、ココだったか。アルダンはアルか、お前が考えたらしい低俗な名だ」
黙れよ・・・
「抵抗する気も失せたか、絶望して気でもふれたか?精神崩壊なんぞに逃げるなよ」
・・・
「お前が悪い、お前の存在が間違いだ、後悔しろマサキ」
ああ、もうホントうるせぇ。ギャーギャーやかましいわ。
こっちは腹に穴が開いて、額が割れて、血も吐いてんだそ、他にも全身痛いし、力の使い過ぎと契約の反動で怠いし、ベーオルシファー戦からの連戦だったんだぞ!チート使って負けた癖に偉そうな。
てかコイツ何なの?
もう俺が抵抗しないと思ったらベラベラベラベラ喋りやがってよぉ!
なんかキャラ変わってね?登場時の余裕しゃくしゃくはどこいったよ。
今はもうなんか、三下というかただのゲスじゃん、アーチボルトのお仲間じゃん。
こんな奴に滅ぼされた1stが浮かばれない。
ああ嫌だなぁ・・今から異世界かぁ・・チート転生じゃないと嫌だなぁ。
チートくれないならせめて・・・お土産がほしいな・・・そうだ、もらっていこう、それがいい!
「もうすぐお別れだぞマ・・・・・は?」
「ガアアアァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーー!!!!」
近づきすぎだボケ、そんなに俺の顔が見たかったのかよ。
こいつマジで危機感ないよな、猛獣に不用意に近づくバカの末路を知らないのか。
痛みを我慢し、上半身の力だけで跳ねる、下半身はもう浸かってるから無理。
屈んでまで俺に嫌味を言っていたルクス、その腕を掴む、掴む、掴んで引く、こっち来いや。
残った僅かな力でバスカーモード限定使用開始!場所は口内、人体の最強硬度を誇る箇所。
そして・・・俺の歯は輝く緑の牙となり・・・
ルクスの右腕を噛み千切ってやりましたとさ・・・ざまぁ。
「な、が、あああああああああああああああああっっっ!!こいつ!腕を!私の腕をぉおおぉお!!」
「ぎゃははっはははは!あーマジい・・ゲスの血肉なんざ口にするもんじゃねぇな」
「くそっくそっくそっ!このバカが!貴様は人間じゃない野蛮な猿以下の畜生だ!あああああああ」
「早く帰って手当したら?オルゴナイトで傷口固めたから死なないぞ。この腕は土産にもらっとくわ」
「ぐっ・・・それを、か、返えせぇぇぇぇぇぇ!!」
ルクスが残った左腕を伸ばそうとする、それを未だに残る牙を鳴らして威嚇する。
右腕か・・・ふむ、やっぱいらね。
フゥゥゥゥーーーー!とブラスター(小)を浴びせかけるとルクスの右腕は結晶化の後、ボンッとなって消えた。
「あ、ごめーん。ゴミが落ちてたから綺麗にしておいたわww」
「お前ぇぇぇぇぇ!!」
ああ、もう胸のあたりまでゲートインしちゃったよ。これはもう抜け出すどころじゃないな。
「覚えていろアンドウマサキ!この痛み、屈辱、決して忘れはせん!」
「いいから失せろボケ、帰って「腕がないよー」て泣いてろ」
「忘れるな!お前に待っているのは破滅だけだ!最期は無様に野垂れ死ね!!」
「あーはいはい。お前が死ねバーカ」
「奪ってやる何もかも家族も愛バもこの世界の居場所も全て・・・」
「なげぇ!うぜぇぇぇぇ!!」
最後の最後に残ったブラスターを吐き出す。
仮面越しにもわかる憎しみを込めた視線を向けながら、ルクスの姿は掻き消えてしまった。
撤退用の転移術か・・・使えるんなら早くしろよ。
一人になったな・・・暗い・・・静かだ・・・。
ゲートの微かな駆動音だけが聞こえる。うーんズブズブ入ってます、もう残りは首と頭だけか・・・
せっかくここまで来たのに、もうすぐ会えるはずだったのに、悔しいな。
でもなぜだろう、これから行く場所にあんまり不安は感じてないんだ。
天国だったてのはやめてね。
「腹減った・・・眠い・・・寒い」
痛みが少なくなってきた・・ヤバイな・・・体の冷えの方が辛い・・血が減り過ぎた。
でも、これだけは・・・言うぞ、声を大にして言いたい俺の思いの丈。
「母さん・・心配かけてごめん。シュウ・・・助けてくれたみんな、みんな・・・ありがとう後よろしく」
「姉さん、俺、弟で最高に嬉しかったんだぜ。ネオさん、グラさん、ミオ、ガッちゃんも・・・」
みんなの顔を思い浮かべる。絶対に忘れないように、再び戻って来るその時まで。
「ココーーー!!あいつらと仲良くな!お前なら絶対に大丈夫だから、頼む!」
「アルダン!!アルって呼ぶわ!巻き込んでごめん!でもお前が愛バなの超嬉しいぞ!!」
それから・・・最後はやっぱあいつら二人に・・・
「クロ!シロ!いつまで寝てんだ!起きろ!起きないと!ルクスって変態が来るぞ!!」
「どんなに離れてもずっと一緒だ!愛バが増えちゃったマジでごめん!でも二人ともいい子だからぁ!」
「愛バたちみんな愛してるぞぉぉぉぉーーー!!!全員が必要で大切だ!マジで信じてくれ!」
なんか言い訳になってきたな・・・もう一回だけ・・・
「だから!早く起きろぉぉぉぉぉぉ!お前たちの可愛い顔を見せてくれーーーーー!!!」
「クロ!シロ!アル!ココ!俺は絶対にかえ・・・」
ゲートが叫んでいた人間を飲み込む。
ヴォルクルス教団地下神殿、儀式の間は激戦の後に静寂を取り戻した。
残ったのはゲートの淡い光と、緑に輝く儚い粒子のみだった。
この日、アンドウマサキは2ndから消失した。
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「マサキ!?・・・そんな・・・リンクが切れた」
「ボス?どうしたあいつに何かあったのか」
「大丈夫、だって絶対戻るって言った、約束したんだから・・・信じる信じなきゃ」
頭を振って立つ、ガッデスの転移術にて地上へ帰還したココは操者に託された使命を果たそうとする。
「シャカールたちはこの近辺にいるはず、行くよゴルシちゃん」
「おい、いいのかマサキが」
「私には使命がある。マサキは絶対に無事、まずは別動隊との合流を優先します」
「その使命とやら、私も参加できますかな」
「今更何?私は忙しいんだけど」
ルオゾールがココの前に立ちふさがる、邪魔をするなら殺すぞという覇気を飛ばすココを意に介していない。
「見つけたのですよ、新たな神、いや希望をね。誰に言われたからでもなく、この目でしかと見て判断しました」
「まーた信仰か?懲りないおっさんだな」
「アンドウマサキ、マサキ様こそがこの世界の希望!私は彼と彼の愛する者の力となりましょうぞ」
「口では何とでも言えるよね。縋る対象がほしいだけならやめてくれる、マサキは私の、私たち愛バのものだ」
「今までの行いが簡単に許されるとは思ってません。手始めにこういうのはどうでしょう」
ルオゾールが自らの頭に手を当てる、次の瞬間・・・髪の毛が全て抜け落ちた。
見事なツルっぱげの完成である。なんの手品だよ!セルフ出家やめろ!
「ふむ。思いのほかサッパリしますな、これでもうワカメとは言わせませんぞ」
「ワカメがハゲにジョブチェンジしただけじゃねーか!それにしてもすげーツルツルだぁ」
「わかった、ハゲが今からファイン家に復帰することを認めます。教団員もまとめてこちらに引き込める?」
「もちろんですとも、皆がマサキ様の下僕となりましょうぞ。全員の頭髪はハゲオンリーでいきます」
「それはいらない」
「いいじゃねーか、ファイン家ハゲ部隊を設立しようぜww」
終わってない、ルクスとその関係者の脅威は残っている。
ここからだ、例え操者と離れていても愛バは止まらない!止まるわけにはいかない。
「早く帰ってきてねマサキ・・したいこと、してほしいことがたくさんあるんだから」
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「聞こえた」
「え、何が?アルダンちゃんどうしたの?今日のカレー美味しくなかった?」
「そんなはずありません。私がグラム単位で計測した完璧な材料とレシピに時間配分は完璧です」
「ええーーココ壱みたいな味がするよコレ、ズルしてデリバリー頼んだ?」
「お店の味に近づいてるならいいじゃないですか!誓って手作りですよ!」
「私、ジャガイモがちょっと溶けた田舎臭い家カレーが好きなんだけど」
「だったら自分で作れぇぇぇ!!文句が多いんですよファルコンは!」
言い合いを始める二人をよそにアルダンは窓の外に目を向ける。
「アル・・・アル・・・私をアルと呼んだのは・・・あなたですか」
「アルダンちゃん?おーい」
「聞こえてませんね」
急いで着席し、とり落としたスプーンを手にする。
食べかけのカレーを凄い勢いで掻き込み、咀嚼し、一気に飲み込む。
「ちょ、慌てて食べなくていいってば!」
「ごちそうさまでした。ちょっと頭首様の所へ行ってきます」
「どうしたのです?お給料の値上げは期待できませんよ」
「あの人の、マサキさんの現在位置を調べてもらいます。それとお嬢様たちの警護に志願します」
「え、遂に略奪愛計画を始めるの!やったぁーー!」
「コラ、ファルコン!待ってくださいあの計画は杜撰すぎてバカらしい・・・」
「アルダンちゃん待って!カレー付いてる!ありえないところに付いてる!」
部屋を飛び出し走る、目指すはサトノ家頭首のいる場所。
居ても立っても居られないこの気持ちはなんだろう、間違いなく何かが起こった。
あの人の、お嬢様たちの、そして私の運命が動き出す予感がする。
「マサキさん、無事ですよね・・・お嬢様たちのことは命に代えても守ります」
だから・・・
「またあの優しい笑顔を見せてくださいね」
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「あ・・・」
「サイさん!大丈夫?」
「あ、うん・・・ちょっと湯呑が割れちゃって」
「あらら、見事に真っ二つね。どうやったらそうなるのよ、変な力入れすぎなんじゃないの」
「いや、そんなことしてない・・・コレ、マサキが使ってたヤツなのよ」
「なんか縁起悪いわね、もしかしてマサ君に何か・・・」
ピシッ!
「え、またぁ?」
「違う、この音は・・・!?クロちゃんとシロちゃん」
ピシッピシ・・・ピキ・・・バキ・・・・ピシッ・・・
音の出所は客間だ、一目散に向かい襖を開け放つ。
いつものように鎮座する緑の結晶体、そこに無数の亀裂が入っていた。
「これは・・・」
「シュウは家にいるんでしょ、すぐに呼んできて。それからドウゲン君とビアン博士にも連絡を」
「え、ええーー!ということはつまり」
「繭が割れるわ、出て来る・・・産まれるわよ、あの子の大切な愛バたちが」
亀裂はこうしてる今もどんどん増えていく。
結晶全体が輝きだし今にも爆発しそうだ。
「家をぶっ飛ばしたりしないでしょうね、一応結界だけ張っとくか」
「あわわわ、こ、心の準備が・・・どうしましょう、ねぇどうしたらいいの?」
「テンパりすぎだっつーの!いいからシュウを呼んできなさいよ」
「そんなことより動画とか撮らなくていいのかな、この決定的瞬間を記録した方がいいんじゃないの」
「カメラなら博士とシュウがとっくに仕掛けてるわよ。あ、そろそろよ」
「待って!二人とも待って!おばちゃんまだ覚悟ができてないの!」
「おばちゃんww自分で言っちゃったよ。それより構えて、出て来るのはクリーチャーかもよ」
「それってファイン家が危惧していた、ええと」
「ベーオウルフ、ルシファー、マサキが旅立ってからすぐに、ファイン家頭首が教えてくれたでしょ」
「世界を滅ぼした破壊獣・・・そんなのにはならないわよね」
「わからない、この繭自体が未知の現象だからね。何が起こっても不思議じゃないわ」
「出てきたのが怪物だったら、どうするの」
「もちろん倒すわ、マサキに恨まれても私たちには世界を守る義務がある」
「そうね、わかった。私も付き合うわ、なんとか救う方向で」
「甘ちゃんね、でもアンタはそれぐらいでいいわ。お、来るぞ来るぞ」
「頑張ってもう少しよ」
二人の天級が見守る最中、結晶の輝きは最高潮に達する。
繭が割れる、吹き出すのは貯め込んだ覇気の余剰分なのか、様々な騎神の命を感じる。
光爆、視界が埋め尽くされるほどの光が溢れ、アンドウ家が内側から眩く照らされた。
そして・・・・
「あー眩しかった、で二人はどうなったの?」
「衝撃は感じなかった、爆発しなくてよかったわ・・・覇気の粒子、あの子と一緒の光」
「ちょっと見えない、見えないから!この粒子邪魔よ」
粒子は徐々に消えていき、久しぶりに布団が見えてきた。
いる・・・そこの二人がいる・・・さあ、どんな姿かな・・・
「・・・すぅ・・・すぅ・・・」
「・・・ん・・・サ・・キ・・さ・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?
寝ている、一糸纏わぬ姿のウマ娘が二人、穏やかな寝息を立てながら。
「着替え、持って来ないといけないわね」
「私のを着せればいいわ、この感じだとサイズも合いそうだし」
「あはははww何言ってるのww胸の大きさが違うじゃない!サイさん負けてるじゃないwww」
「よし、表にでろ。久しぶりに相手をしてやる」
「怒らないでよ~、私のならギリ合うかな」
「いや、アンタのでも無理でしょ。起きたらうまむらに連れて行くしかないか」
「それにしても・・・育ったわね」
「育ち過ぎよ、リミットオーバーにもほどがあるわ・・・どうすんのよコレ」
二人の姿を見た時、私たちは一瞬見惚れてしまった。それ以上に困惑した。
このウマ娘たちは一体何なのだろう、急激な成長をする例は多々あれどまさか・・・。
「体だけ大きくなって、前より"弱く"なってるなんてね、何がしたいのかしらこの子たち」
「覇気が繭になる前の・・多く見積もって半分・・・マサ君が集めた覇気はどこへ行ったの?」
「神核だけは安定してるみたい、一応健康体にはなってるみたいね」
「むむむ・・・胸部装甲が大きいのはマサ君の趣味かしら」
「知らないわよ。はい、じゃあ関係各所に連絡するわよ」
まあいい、これであの子も帰って来るだろう。
「マサ君、きっとビックリするわ。だってこんなに綺麗で可愛いんだから」
「戦力になるかはともかく、そこだけは大満足でしょう。こんなのがいたら男も女も放っておくはずないもの」
操者の喪失と愛バの目覚め、彼と彼女たち物語は続いていく。