「起きろぉぉぉーーー!!!」
誰だろう、私を呼ぶ声がする。
この声知ってる、大好きな声、あの人の声だ・・・
私、何をやっているんだろう、どうしてここにいるんだろう?
理由、理由があるはずだ、こうなっている理由がきっと。
整理しよう。
自分のことをまず確定しよう。
こんなフワフワした状態じゃ、考えもまとまらない。
私、私は誰だっけ・・・
これは必要なことだ、先に進むためにも必要なこと。
だってほら、隣にいるあいつはもう動き始めている。
待って、待ってよ!そうやっていつも先に・・・
負けたくない、あいつには負けたくない、あいつ・・・てっ誰だっけ?
落ち着け、落ち着け。
思い出すんだ、あいつのことを、自分のことを、ここに来るまでの気持ちを。
そうして記憶の海に沈んでいく・・・私が私になるために。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あなたも、いつか出会えるといいわね」
「はい」
「きっと素敵な人よ」
「そうでしょうか」
ずっと昔、私と母はこのような会話をした。
操者、そして愛バ、互いを認め合い高め合う最高のパートナー。
絵本に出てくる操者と愛バの物語。
それを読み聞かせながら、嬉しそうに語る母。
私の反応はイマイチ、それもそのはずだ。
だって、"自分より弱い生き物"の力を借りて強くなれるなんておかしな話だ。
単体で完璧な命の私たちウマ娘が、人間を頼る必要性を感じない。
人間は共に戦う存在じゃない、人間は私たちウマ娘が守るべき存在だ。
この時は、本当にそう信じていた。
私、サトノダイヤモンドは"望まれたウマ娘"として生まれた。
サトノ家、御三家の万年№2に甘んじている一応名家。
どう転んでも筆頭のメジロ家には勝てそうにない、永遠の二番手。
まあ、御三家の括りがなかったら二番どころかもっとずっと下かも。
ファイン家?何それおいしいの?
そのメジロ家へのコンプレックスを抱えまくったサトノ家は、近年稀にみるフィーバーを迎えていた。
なんと、頭首サトノドウゲンの娘が待望の"ウマ娘"であることが判明したからだ。
頭首直系のウマ娘が誕生しなくなってから随分と経つ。
うちの職業柄ウマ娘の従業員は多いに越したことはないのだが、サトノの血を受け継いだウマ娘が不在で「なんか締まらないなぁ」という空気が漂っていた所の吉報だったから、さあ大変。
メジロ家とサトノ家の決定的な違いはここにある。
メジロ家が一族中で多くのウマ娘が誕生しているのに比べ、サトノ家ではウマ娘が生まれること自体がレアケースとなって久しいのである。
別にウマ娘をまとめるリーダーがウマ娘である必要はないが、やはり大きな組織を、それも騎神の従者を抱え戦闘や荒事を生業としている家の者が、ただの人間ではカッコがつかないというのが本音だ。面子というのは時として凄くすごーく大事なものである。
組織の求心力と言う点で、騎神を勧誘する際はどうしてもメジロ家に劣ってしまう。
優秀な騎神を召し抱えられない=戦力低下=組織全体の弱体化の式が成り立つ。
何年もどんよりジメジメしていたサトノ家。
そこに産まれたのが私だったもんで、当時はそりゃ凄まじい歓迎ぶりだった。
父と母には毎日大勢の客が訪れ、親戚一同は連日のどんちゃん騒ぎ。
いつの間にか知らない親戚が増えてたり、宗教への寄付を募る電話が鳴り止まなかったらしい。
宝くじの高額当選がバレた奴かっつーの!
大事に育てられました、ええ、ホントに蝶よ花よとね。
私は周囲の期待に応えました、だって私、超優秀でしたからね!
物心つくのも早かった、最初に覚えたのは周囲を把握することだ。
誰が一番で、誰が弱くて、誰を動かせばいいかわかる、誰に味方すればいいかわかる。
空気を読むなんてヤツの凄いバージョン、人の顔色を窺って望む結果を出してやる。
それだけで私の評価はうなぎ登りだった。
簡単だな、簡単すぎてつまらない、ああ本当に面白くない。
「ダイヤモンド様、本日のご予定は・・・」
「全て把握しております。ご苦労様でした」
「はっ!失礼しました」
大人はみんな私を褒める。
「ダイヤ様は立派だ」「あんな優秀な子、見たことない」「サトノ家は安泰」「踏んでほしい」
聞き飽きた賛辞、クソつまんね。変態がいるのはご愛嬌。
望まれたウマ娘?ちょっと違うんだなこれが。
私は"他人が望んだことをこなしているだけのウマ娘"ただ淡々と機械のように。
だからだろうか、ちょっと感情が高ぶった時や、頭の中では割と下品な感じにしている。
なんかこっちの方が生きてる感じするし、もしかしたら、別世界の私は大声で口汚い言葉を使ってみたい願望でもあったりして・・・何を言ってるんだ私は。
そんなこんなで上手くやっていたわけですよ。
でもそう思っていたのは私と周りだけで、実際はそうじゃなかったのかも。
父の名はサトノドウゲン、無精髭を生やした長身のがっちり体形親父。
結構顔が怖いので誤解されやすいが、極度のお人好しでビビり、ヘタレでもある。
父が頭首になってからサトノ家は一気に傾いたって有名、それと同時になぜか一部の層にコアな人気があり忠誠心の高い部下を多数抱えているのも事実だ。
父が頭首なのはその手腕というよりも、人柄と顔の広さだ、つまり有志のファンによって支えられているのである。親戚一同もそんな父が可愛いらしく、どんなポカをやらかしても「まあ、ゲンちゃんなら仕方ないよね」で許してしまう。甘やかすな!
父は私のことを「目に入れても痛くない!」と豪語して激アマ対応、うっとおしい程に構って来るので時々疲れる。しかし、放置するとむせび泣くので適度によい娘キャンペーンを開催している。やれやれ。
でも・・・嫌いじゃないですよ・・・いやホントですってば。
母は・・・母かぁ・・それ聞いちゃうか・・うーん。
とりあえず名前は無しで、母は母だ!それ以上でも以下でもない。
母と私の関係は少し、いやかなり歪に見えたことだろう、これでもお互いに気を遣わない関係で楽だったんだが。
母は人間、そして恵まれた覇気をもつ優秀な操者候補だったらしい。
愛バを求めサトノ家を訪れた際、父が一目惚れ、あれよあれよという間にお見合いがセッティングされ母の「まあ、いっか」の一言で結婚までこぎ着けた。
わかりましたか?そう、母は変わり者なんです。ドライと言うかなんと言うか、母には母の世界があってそこから必要以上に外れなければ許容、外れれば「もういいや」になってしまうみたいな、詳細は本人に聞いてみてもよくわかりませんでした。
母にとっての私は決して望んだ子ではなかったようです。あちゃーーwww
サトノ家に嫁いだのはそれなりに幸せになれそうと思ったから、普通に結婚して、普通の子供がほしかったらしいのです。
はい!ここでもうアウトですよ!
なんと!産まれたのはまったくもって普通じゃない私でしたwww
どうした笑えよ!!!笑ってくださいお願いします。
母もね、最初の頃は一生懸命だったんですよ。
絵本を読んでくれたり、行儀作法を教えてくれたり、手をつないで遊びに行ったり。
その他にもたくさん思い出をくれました。よき母であろうと頑張ってくれました。
その節はありがとうございます!
母の恩義と期待に応えようとしましたよ、張り切りました、張り切り過ぎました、テヘw
教えられたこと、言われたこと、全て一度で覚え完璧にこなしてしまう。
何をやってもやらせても必要以上の結果を出してしまう。
教えてくれている最中に「その解釈は間違ってます」なんて生意気を言う。
優秀、優秀過ぎた、ただ喜んでくれると思ったんですがね・・・
見て見て!あなたの娘はこんなに凄いよ、親のあなたも凄いんだよって言いたかっただけなのに。
「私、必要かしらね?」
「え・・・はぁ・・・どうでしょか」
ため息交じりの声で問われたことに即答できなかった。
「何をバカな必要に決まってる」そう言うつもりだった。
でも本心は違う、もうこの人から学ぶことは何もない、得られるものはないだろうと思っていたから。
・・・バカですよね、こんな娘が可愛いわけあるか!
母は普通の、弱い人間の、自分を頼ってくれる娘を望んでいたのだろう。
普通に親を頼り、普通にわがままを言い、普通に泣いて、普通にケンカして・・
そんな当たり前の母娘でいたかったのだろう。
そういえば母の前で泣いたことあったかな・・・生まれた瞬間と赤ちゃんの時ぐらいかな。
ケンカもしてない、面倒事もかけてないと思う、叱られたことは・・アレ?あらら。
そりゃつまんねぇわ!仕方ないわww私だったら絶対嫌だもんww
父と母は私との接し方についてずっと話し合っていたらしい。
迷惑かけとるやないかい!
父が母をなだめる姿を何回見たことか、マジですまんの。
なんでかわからないが、それでも父との関係は良好なんだよな。
普通に笑って、コントみたいになって、父のヘタレっぷりにツッコんで。
いや、これただの芸人やんけ。
そうじゃなくて、父といる時はその、素の汚い私が出ちゃうと言いますか。
まあ、甘えているわけですよ・・言わせんな恥ずかしい////
母との関係が特殊なものになるまで時間はかからなかった。
お互いが話し合って納得した結果。
私たちは母と娘ではなく、サトノ家の同居人みたいな感じになった。
変だと思うかもしれないが、これが割と功を奏したのよ。
母と娘が元々無理だったのだ、だからその枠を取り払った、解放された気分だった。
母は笑顔が増えたし、私とも会話が増えた、二人で出かけたり、趣味について語り合ったこともある。そう、同居人で年の離れた友人関係が私たちの距離。
それがとても心地よかった。楽だった。
私のような変な子の親から解放されてせいせいした?よかったね!
母娘関係を修復しようとか考えないし思わない、だって今が楽ちんなんだから。
「私、この家を出て行くわね」
「え・・・」
「そうですか」
ある日の食卓、家族の団欒に見えるシーンの最中、母が宣言した。
父は絶句して固まっていたが、私の心境は遂にキターーーー!!だった。
一月ぐらい前からちょっとづつ私物が減っていたのは知っていたし、父と母の会議も回数がここのところ増えていた。何よりも・・・臭いだ。
母から父以外の男の臭いがする!年は若いな・・推定20代の若造か、割とイケメンで好青年、母との交際は真剣でありいずれは結婚するつもり、真面目ちゃんなのでやることはやってない。ちゃんと離婚してからハッスルする気らしい・・・。
臭いだけでこんなに推測できんだよ!ウマ娘すげぇだろ褒め称えろ!
浮気ではない、本気だ!現に、母は彼氏のことを包み隠さず父に話し必要なら慰謝料と養育費も払う覚悟ありありのありなのだ。覚悟完了してんなおい!
父は号泣し、泣いて縋ったが、母の決意は固かった。
あれれ、コレ私のせいかな。
私の優秀さが離婚に繋がったか・・・責任?あんま感じてませーん。
その日からしばらく父と一緒に寝た。
寂しいのは私ではない、この髭面親父だ。泣き顔きっしょww
ちょっとだけ申し訳ないと思ってしまった。
別れの日。
今日は母が出て行く日だ。
小さなスーツケースを一つ持って家を出る母。
父と私は最後のお見送りをするべく後に続く。
おい、しっかりしろ!震えてんぞ!まだ泣かないでよ父様!
だだっ広い庭を抜け玄関の門扉まで進む、家の屋敷はでっかいのですよ。
正面に見慣れない男性を見つける。
父と私の方を見て会釈、こちらも会釈を返す。
ほほう、あれが母の彼氏ですか。思った通りなかなかのイケメン~。
今風のSUVでお出迎えですか、身なりもいい、どこぞの起業家か大手のエリート社員ってところだな。優しそうな顔、何より覇気が穏やかでいい。この人ならきっと、母を大事にしてくれるだろう。
彼氏と二、三言葉を交わしてスーツケースを渡す。
車への積み込みを任せて母がこちらに来る。
最初は父と会話、どういう経緯なのか笑顔で握手しおった!この二人の関係もよくわかんねぇな。円満離婚でおk?
で、今度は私に向き直るわけでして。
母の顔、久しぶりにじっくり見たな・・私とあんまり似てねぇな。
「じゃあ、元気でねダイヤモンド」
「はい、母様もお元気で」
「私はあなたの母親には成り切れなかった。そのことはごめんなさい」
「いえ、私も母様の娘として振舞えませんでしたから、お相子です」
「まったく・・・最後まで可愛げのない子ね」
「性分ですので」
「ねぇ、抱きしめていい?」
「はい、お好きにどうぞ」
低身長の私に合わせてしゃがんだ母に抱きしめられる。
こんな風にされたのはいつ以来だろうか・・・
「信じられないかもしれないけど、あなたのこと嫌いじゃなかったわ」
「私もです」
「もう、会うことはないでしょう。偶々会っても知らないフリしてよね」
「はい、そうします」
「あの話覚えてる?操者と愛バの物語」
「はい」
「好きな人が、寄り添える相手がいるっていいものよ」
「父様と浮気相手がいる前でそのセリフはちょっと」
「黙って聞いて、あなたは凄い、きっと一人で何でもできる」
「まあ、そうでしょうね」
「そんなあなたがおバカになっちゃうぐらい、最高に好きな人ができた姿を見たかったわ」
「・・・ありえませんね」
「あなたみたいなのがハマるとヤバいのよ。覚悟しておきなさい」
私を開放して立ち上がる母、その姿はちょっとだけ堂々としてカッコよかった。
「あなたの幸せを心から願っているわ」
「ありがとうございます。母様もお幸せに」
「いつかあなたにも素敵な人が現れるといいわね」
「期待しないで待っておきます」
イケメンSUVの助手席に乗り、颯爽と去って行く母を見送る。
これが、母を見た最後だった、今のところ連絡も目撃もしてないし、されてない。
ふと上を見ると、父が立ったまま泣いていた。
元気出せよ、仕方ねぇな・・今日は風呂一緒に行くぞ。
せっかく背中を流してやったのに、風呂でもずっと泣いてた。女々しいな!
次の日から、なぜか父はサングラスをかけるようになった。イメチェン?
なにそれ?いや、ちょっと待てそれだとアレだ、息子を初号機パイロットにした陰キャこじらせ外道親父じゃないか。
似てるな~マジで似てるな~声そっくりだもんな。
ゲンドウとドウゲン・・・もう運命だな。
私はエヴァに乗りたくないので父のことは"マダオ"と呼称しよう。
まるでダメなおっさん略してマダオだ。銀魂好きですか?私は全巻揃えちゃうぐらい好き。
母のことを振り切るかのようにマダオは仕事に打ち込んだ。
やりゃあできるじゃねぇか!ちょっと見直したわ。
万能母艦ヒリュウをメジロ家と交渉して、ぶんどって来たときはサトノ家一同狂喜乱舞したわ!
えーと、なになに、ヒリュウを改修するってか!いいぞもっとやれ!
居住ブロックに私の部屋を用意しろ、それから大浴場には拘れ、お願いパパ!
これで家が制圧されても大丈夫って・・・縁起でもないこと言うな。
私も忙しくなりましたよ。
父の名代として駆り出されることも増えました。立派に勤めを果たしてみせましょう。
マジ退屈でウンザリwww。
そして遂に学校!義務教育が受けられる年になったのです。
正直めんど・・ゴホン!ええ、同年代の方々と集団行動をとるのは非常に興味深いです。
学校デビューは、まあ、私ですし。上手いことやりましたよ。
清楚でおしとやかなダイヤちゃん(おまけに美少女)はみんなの憧れ、人気者ですわ。
それにしても、不思議な生き物がいるな。その名は男・・・。
私は同年代の子供と接触する機会があまりなかったもので、子供との付き合い方がイマイチよくわからない。
女子はまだなんとかなるんだよ。問題は男子だ・・・なんだこいつら?
これをどう育てたら、母をその気にさせたイケメン君まで進化をするんだよ。
無知で、愚かで、不潔、おまけに助平と来た!人類かコレが・・・猿だろ猿、猿山に帰れ!
しまったな、女子限定の学び舎にしてもらえばよかったかも、男子の存在がホント無理。
こいつらは私にもちょっかいかけて来るからドン引きだ、何?自殺志願者か?
マダオとの約束「腹の立つことがあっても我慢して、殺しは絶対にNO!」の約定があってよかったな。
やーめーてーよー、もうほっといてよ。こっちくんな!
何が目的なの?目が合ったら逸らす癖に、軽く微笑んでやったら赤くなるの何?熱があるなら休め。
気を引きたい?嫌がらせで気が引けると思うなよ!お前らへの好感度はマイナスより上がらねぇよ。
将来的にこれと、繁殖活動するとか・・・正気か?
ダメだぁ!そんなのダメだぁ!せ、せめて年上でお願いします。
ダイヤちゃん割とファザコンなんで、年上の包容力をみせてほしいっスわ。
そんなこんなで私の人間蔑み度がアップしたのでした。特に性別男はアカン!
友達?いますよ普通に、お喋りしたり、休憩中に駄弁ったり、ご飯を一緒に食べるやつですよね。
放課後?お出かけや遊びに行く?家に招待したりして・・・はぁ・・あのですねぇ。
うちはサトノ家ですよ。黒服の強面がゴロゴロしてる所に友人なんて呼べませんよ。
それに必要性を感じません、放課後は一人でゆっくりしたいし、次期頭首としての仕事や、勉学に修練で忙しいんです!一緒にいたいと思う同年代なんていませんよ、いるわけありません。
友達・・・無いものねだりしても、仕方ないですよね。
「ダイヤちゃん、今日は早く帰って来てね」
「また何か企んでますか?私の部屋にゲシュペンスト(中の人マダオ)を放置した時みたいな、サプライズはやめてください」
「ええーー、アレ結構喜んでいたじゃん。嬉々として襲い掛かって来たじゃん」
「自室に武装したPTがガイナ立ちしていたんですよ!メジロ家暗殺部隊のカチコミかと思って焦りましたよ」
「全武装を解体した挙句、エアダクトから濃硫酸を流し込もうとしたぐらいだしね」
「とにかくやめてください!もう部屋を荒らされるのは懲り懲りなんです!パソコンのデータぶっ飛ぶのもう嫌なんですぅ!」
「いや、暴れて荒らしたのはダイヤちゃん自身・・・あ、ちゃんと早く帰って来るんだよ、寄り道ダメ絶対」
まただ、また父が妙な気を回した。サトノ家恒例のサプライズイベントです。
離婚してからというもの父は前にも増して子煩悩になった。
誕生日以外のサプライズも多いし「アレ欲しいかも」と呟いただけで、翌日それがお急ぎ便で届く始末。
冗談に決まってるだろw誰が"邪神モッコス"のフィギュアなんか欲しがるかよww
我が家の玄関前にディスプレイ中、魔除けとして大活躍のモッコス!みんなも買ってみよう!
愛されてるのはわかってるから、頻度が多すぎだから、少し落ち着いてほしい。
で、今朝もソワソワしながら早めに帰宅を促して来たわけで・・・何かあるなコレ。
絶対なんかあるぞコレ!要警戒だ。
帰り道異常なし、黒服がお出迎えする様子もなし、帰宅してからが本番か。
嫌だなぁ、怖いなぁ、今回は部屋が無事に済みますように。
無事帰宅、満面の笑みを浮かべた父に出迎えられた。その笑顔に不安しか感じない。
「お帰り~、うんうん、ちゃんと帰って来て偉いぞう」
「帰巣本能ぐらい備えてますよ。それで、ネタばらしはいつですか?」
「ネタ?ネタなんて仕込んでないよ。用意したのはプレゼントさ、それも、とびきりのヤツをね」
「プレゼントのヒントは?」
「生き物」
「クソがぁ!何を用意したんだ!ああもう!頼むから部屋を荒らさないでくださいよ~」
「仲良くするんだよ~」
生き物!生き物wwバカじゃないの?
私に何かを育てるなんて無理に決まってる。向いてない向いてないんだよ。
ペットなど飼いたいと思ったことすらない。
学校のメダカ水槽にザリガニ放流して全滅させた犯人は私だ!
だって共存できると思ったんだもん、まさか、ザリガニ単騎による蹂躙が始まるとは思わんかった!
正直ちょっと興奮した。ザリガニ強ぇぇぇカッケェ!ってなった。メダカさんたちごめんなさい。
部屋の扉前で待機、父が何を仕入れて来たか、それが問題だ。
サソリや毒ヘビだった場合、血清とか用意した方がいいかも・・さすがに考えすぎか。
猛獣の類だった場合、戦闘が予想される。
なめんなよコラ!こう見えてもウマ娘やぞ、熊ぐらいになら勝てる自信があるわ。
深呼吸・・・意を決して扉を開く。
「あ、やっと来た」
「へ?」
開けた瞬間に固まる。
向こうもこちらに視線をやり笑みを浮かべる。
生き物・・・確かに、生き物だった。
でもよう、同年代ぐらいのウマ娘が用意されてると誰が思うよ!
私の父は何をやったのだろうか、人身売買?目の前のウマ娘を買ったのか?それとも誘拐!?
だとしたら大問題だ!即刻、頭首の座を明け渡してもらいたい!その後、警察に突き出そう。
「あなたがダイヤモンド?私はえっと、うん、キタって呼んでね」
「確かに私がダイヤモンドですが、キタ・・さんはここで何を?」
「頭首様から聞いてないの?私、今日から従者部隊入りしたんだ」
「え?あなたが従者部隊。冗談を言ってるわけではないみたいですね」
「うん、最年少の合格者だって。みんな褒めてくれたよ」
キタと名乗ったウマ娘。
ここから長い付き合いになるとは、この時は夢にも思わなかった。
黒髪に赤い瞳、髪の毛は無造作に伸ばしているが、それがこの子にはピッタリ合っている気がする。
ニコニコというよりヘラヘラした笑顔を浮かべている。
綺麗で可愛い子だな。愛嬌がないと母に指摘された私にはその笑顔が眩しいです。
キラキラした赤い瞳がこちらを射抜く。
艶やかな闇色の黒髪は天性の気品と風格を備えている。
いい面構えだ。
やりますね、容姿端麗がデフォのウマ娘、その中でもこいつは文句なしの美形!可愛い!くそぉ!ま、負けてない・・負けてないですよね?
それと、なんかいい匂いしそう。てかしてる!
笑顔は決して媚びているのではなく、どこかこちらを品定めしているように感じる。
年は同じぐらい、背丈もほぼ一緒、肝心の覇気はどれどれ・・・うおっ!マジか。
ヤベェなこいつ、入隊テスト合格は伊達じゃないってか。
「私、同等のウマ娘に会ったの初めてなんだ。だからとっても嬉しいよ」
同等ときましたか、同年代ではなく同等・・なめられたもんですね。
「本日付けで私がダイヤモンドの専属従者になるから、よろしくね」
「はぃぃぃぃ!?私は全く聞いておりませんが」
「頭首様の決定だよ。だからよろしくね」
「いや、強行突破しないでください。私に専属なんていりませんから、お引き取りください」
「ええー!せっかく割のいいお仕事見つけたのに、そりゃないよ」
「それはお気の毒に、あなた程の腕ならサトノ家じゃなくても雇ってもらえますよ」
「考え直してよ~、従者が嫌だったら友達ってことで」
「そうか、そういうことですか」
こいつは父が用意した私の"お友達"ってわけか。
金で用意するなよ・・・めっちゃ嫌な金の使い方じゃんか。
ご丁寧に"同等"の奴をしっかり見つけて来た所が余計に腹立たしい。
数日前、父との会話で「本気で遊べる友達がほしい」なんて戯言を言わなきゃよかった。
私はね、ウマ娘なわけですよ。
人間の子供と本気で遊んだらケガだけじゃ済まないこともあるわけで。
しかも、私も例に漏れず体を使った遊戯がしたいわけで・・・肉体言語的な。
私の希望する友達は、ウマ娘で実力が近しい(できれば同年代)存在だった。
それをクリアしたのが、目の前の黒髪である。
「どこで拾って来たんだか・・はぁ・・」
「メジロ家の従者部隊試験と間違えて受けたら合格したの」
「おい!メジロ家が第一志望かよ!帰れ!」
「帰らないよ、サトノ家のこと好きだし、頭首自ら面接してくれるなんてアットホームだよね」
「うちはブラックですよ、給料は安いし、仕事はメジロの下請けで激務です」
「奇遇だね、私もブラックなんだ」
「何のことですか・・・とにかく部屋から出て行ってください」
「ええー、一緒に遊ぼうよ」
「嫌です。仕事なら私のお守り以外の業務を担当してください、父にもそう言っておきますから」
「頑固だな~、友達ほしくないの?私はほしいのに」
「必要ないです。そんなものいなくても生きていけます」
「なら仕方ないね」
部屋を出て行こうとするキタ、やれやれ、やっと理解してくれたか。
ごめんなさいね、私の平穏にあなたは要らないの、気を付けてお帰りください。
バンッ!
お、お、お、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?
「なんの真似ですか?」
「いい反応だね、これなら退屈しなくて済みそう」
コイツ!私の横を通り過ぎるふりして裏拳かましてきやがった!
ビビったわ!咄嗟に受けれてよかったわ!遅れたら顔面鼻血ブーだったわ!
「自分が何をしているか、わかってます?私、サトノ家次期頭首ですよ?」
「知ってるよ。家名や肩書なんか知らない、私は人の価値を自分の目で見て"一緒に遊んで"から確かめる」
「あなたの遊ぶは、暴力のことですか?野蛮ですね~紛争地域にでも移住したらどうです?」
「戦争はダメだよ、いっぱい人が死ぬのはよくない」
「あ、そういう倫理観はあるんですね。意外」
「闘争の醍醐味はね、同レベルの相手と心ゆくまで死合うことだと思うの。ギリギリ限界の果てに行きたいな」
「わかった、あなたはただのバーサーカーですね。聖杯戦争、生存無理ww序盤で消えそうw」
「知らないの?ウマ娘はみんなバーサーカークラスが基本だよ」
「私、ライダー志望なんだけどな・・・それで、このまま遊ぶつもりですか?」
「うん!ダイヤモ・・もうダイヤちゃんでいいよね。ダイヤちゃんを一目見た瞬間に思ったよ、この子に勝ったらさぞ気分がいいだろうなって!」
「うわぁ、初見でロックオンされてたんだぁ・・最悪」
「だからさぁ・・続き、やろうよっっ!!」
「あーーー!この部屋はやめて!お気に入りの家具がぁぁぁぁ!ぐぁぁぁパソコンもぉぉぉ!」
そこからはもう・・・ええ・・・まったく酷いものでした。
サトノ家の不祥事トップ10にランクインしましたよ。なんせ、屋敷が半壊したのですからね。
キタ、こいつマジで強い。多分キタキタ親父より強い(当たり前かw)
今まで出会ったどんなウマ娘より恐怖を感じた。やられる!と思ったことも一度や二度じゃない。
屋敷の破壊された壁が、逃げ惑う部下たちが、グラサンをなくして泣くマダオが視界に入ってもそれどころじゃない。一瞬でも目を離したら狩られる!そう思えるだけの力を十二分に振るってくる。
楽しそうだな、おい!ホント・・・楽しそうに笑ってる。
「こんなことしてただで済むと思うなよ!」
「それがダイヤちゃんの素?そっちの方がいいよ、下品で面白くてww」
「やかましいわ!てめぇ、損害賠償請求してやるからな」
「頭首様とは利害が一致してるよ「君の好きなようにやっていい」て許可もらってるもん」
「だからって、友達になるのに死合いして、屋敷ぶっ壊すとかないわ!」
「拳は言葉より雄弁だよ、屋敷は犠牲になったのだ、私たちの犠牲になw」
「物は言いようですね、くそっ、手が痺れてきた。手加減なしでやってくれちゃって」
「楽しんでる癖にw私の弱い所をガンガン狙ってくる上に、屋敷内の道具を使用した即席トラップのまあえげつないこと!」
「は?地の利を生かすのは当然でしょ。私のテリトリーでケンカを売った自分を恨め」
「褒めているんだよ。私とここまで遊んでくれた子はいなかったから」
「いや、できたとしてもやらないでしょ普通」
「普通って言葉嫌いだな。平均を言い訳にして目を背けるなんてつまんない!」
「それには同意します、よっと!ちぃ、これも躱しますか」
問答を交えながら、格闘戦を続ける。
誠に遺憾ながら・・・こいつとの遊びは楽しかった。それは事実、向こうも多分そう感じてる。
なんだろう、充足感ってやつですか。
こいつとの遊びはとてもとても満足いくものだったのです。久しぶりに我を忘れた。
満足・・・それを諦めたのはいつの頃だったかな。
夢中になって時間の概念が吹っ飛ぶ、短かったような気も長かったような気もする。
気が付けばお互いもうボロボロだ、服は破れ、血は滲み、マダオがなぜか半裸で気絶している。
小学校低学年がしていい恰好じゃないよ、ああ、私の膨らみかけるところがポロリしそう!
(/ω\)イヤン
「あは・・は・・ねぇ友達ってのやっぱなしで・・いたた」
「けほっ・・あ、鼻血が・・・はっ!最初からそんなもんになる気はねーです」
「親友、親友がいいな。ダイヤちゃんが勝ったら親友になってあげる」
「ワザと負けたくなる提案どうも。そっちが勝ったらメジロ家に推薦状を書いてやるよ」
「そんなの要らないよ。ここが、サトノ家が気に入った」
「じゃあ、後始末はしなくていい権利をやる。その代わり、私が勝ったら様付けで呼べ!主従関係は絶対、二度と逆らわないことを誓ってもらう」
「うわ、女王様気質・・・引くわー」
「そのまま引いてろ!押しつぶしてやる」
こっからがまた大変だった、もうお互い死に物狂いでやり合って、意識を取り戻したマダオがシングルナンバーと呼ばれる従者部隊のエリートを招集していたからな。
メジロ家との戦争が始まると思って駆け付けたナンバーズが見たのは、次期頭首が同年代のウマ娘と野獣のように殺し合っている姿だったからドン引きですわ。
数分で飽きて、私たちを見世物に酒盛り始めたナンバーズ含めた部下たちにもドン引きですわ。
あーあ、メチャクチャな一日だった。
この日のことは生涯忘れたくても忘れられない。
ようやく組み伏せたキタが大人しくなるのを待って声をかける。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・私の勝ちですね・・・」
「うん。そうみたい・・あはは・・超悔しい・・・私本気だったんだよ」
「私もです、つい熱くなりました。そのことだけは感謝します・・・ああ、痛てぇ」
「関節・・・外されるとは・・・参ったな・・あと一歩だったのに」
「ああ、そうでした。3~2~1」
「え、ちょっと待って何のカウントダ・・・ぎゃあああああああああああああああああああ!!」
「はい、ハマったぁ!これで元通り。しばらく安静にしてれば治ります」
「グスッ・・ヒ、ヒドイ・・目から火花が出た・・超痛すぎる!」
「鬼の目にも涙ですね。つ、疲れたぁ・・・後片付けが大変そう・・トホホ」
「ねぇ、ダイヤ様」
「ちょ!キモイキモイキモイ!いきなりなんですか」
「そっちが様付けにしろって言った癖に」
「忘れてました」
「私を専属従者として認めてくれないかな?私ダイヤ様ともっと一緒にいたい」
「様はもういいですって!専属・・・専属かぁ・・うーん」
「ダメ?」
「いいでしょう。ただし条件があります」
「体だけは勘弁して、私はノーマルなの。そういうのは男女でやらないと・・ねぇ」
「クソガキが何抜かしてんだ!お前の体なんぞ興味ないわ」
「だったら何?早く言って」
「主従関係は結びます。ですが、私たちはあくまで対等です。好きな時に意見し、好きな時に遊びましょう」
「おお、それは願ったり叶ったりだけど、いいの?」
「いいんです。だって私たち、たった今から・・・し、親友ですからね////」
「プッ、クサいよダイヤちゃんww」
「ああーー!頑張って言ったのにーーー!笑いやがった、もういい、誰も信じない」
「ごめんごめんwwよっと」
寝転がった状態から立ち上がり。パンパンっと衣服の埃を払うキタ。
私も彼女に倣って埃を・・・服?これ服?ボロ雑巾の間違いじゃ・・・ひでぇ有様。
「改めまして、サトノ家従者部隊ダイヤ様専属、真名キタサンブラックだよ」
「サトノ家次期頭首、サトノダイヤモンドです。まあ、楽しくいきましょう」
「「コンゴトモヨロシク」」
ガッチリ握手して笑い合う。「やるな」「お前もな」で理解し合った私たちの始まり。
いつの間にか夜、星空が綺麗だったな~。
屋内のはずが夜空も拝めるなんて、大胆なリフォームしたもんですよ。
匠は私とキタちゃん。「なんということをしてくれたのでしょう」とマダオが泣いてた。
こうなる原因作ったのはあなたですよね?
翌日からキタちゃんは私と行動を共にするようになった。
キタちゃんは二、三日に一度は実家に帰るが、それ以外は朝から晩まで一緒。
学校でも公務でも一緒、風呂にも布団にも突撃してくる、その図々しさには・・少しだけ感謝した。
何でも言える仲間が、対等の友達ができたことが素直に嬉しかった。
父と私は壊れてしまったサトノ屋敷から、近くのビジネスホテルに避難した。
住み込みの部下たちは改修中のヒリュウで寝泊まりしているようだ。迷惑かけてすんません。
憧れのホテル暮らし、思ったよりいいもんじゃない、食事はモーニングのセルフサービスのみ。
文句なんてありませんよ?サトノ家は質素倹約主義なのでメジロみたいな豪華絢爛成金趣味はないんです!
「いつになったら屋敷は直るのでしょうか?さすがに飽きた、ビジホ暮らし」
「うーん。だったらさぁ、うち来る?」
「へ?」
てなわけでキタちゃんの家にお宅訪問・・・おおお、タワマン!タワー型マンションじゃないですか!
しかも、最上階ぃ!もしかして、キタちゃんってばいい所の子なの。
あ、私も一応お嬢様にカテゴライズしてくださいね、オナシャス!
いつも思うが、エレベーター止まったら不便なんてレベルじゃねーな。まあ、ウマ娘なら問題ないか。
「ママ~帰ったよ~」
「おお、お帰り☆我が愛しの娘よ☆うん?そっちの可愛い子は誰かな☆」
「嘘だろ・・サ、サトウシン・・本物?」
「おうよ☆元アイドル、現バラエティーの女王!佐藤心(サトウシン)とは私のことさ☆」
「芸能人、キタちゃんの母親が・・・意外っ!」
「よく言われる~」
「初めましてサトウさん、ご活躍いつも拝見しております。サトノ家次期頭首、サトノダイヤモンドです。キタさんにはいつもお世話になっております」
「お世話してますww」
「いや、むしろこっちがお世話と言うか後始末してるんだけど」
「ブラックから話は聞いてるよ。君がダイヤちゃんかぁ☆会いたかったぞ☆」
キタちゃんのお母さんは今をときめく売れっ子芸能人サトウシンだった。
この人から、バーサーカーが産まれただなんて信じたくない。
タワマン最上階でおもてなしされました。
普段はお手伝いさんがいるんだけど、今日はオフってことで手料理を振舞ってくれた。
むむ、美味しい・・芸能活動をこなしつつ主婦業もマスターしてるとは、マジ尊敬します。
ほほう、父親不在ですか、キタちゃんから離婚歴ありのシングルマザーと聞いていたが・・・
うちもシングルだし、そこは空気を読んで突かないことにする。
「あの、失礼ですが、シンさんはウマ娘なのですか?」
「そだよ☆普段から隠してるんだけどね☆うんしょ、コレが証拠さ」
髪の毛と同じ、淡いブロンドの尻尾と耳が出現する。
「正直に言っていいよ☆余りにへなちょこな覇気でビックリしたって」
「ごめんねママ~」
「ブラックのせいじゃないさ☆必要なものが必要な人の下へ行っただけだぞ☆」
「すみません、込み入った事情に深入りしてしまって」
「いいのいいの☆いづれわかることだし、娘に母親の力を継承できたと思えば嬉しいもんさ☆」
「ママ大好き!お小遣いアップして」
「私もブラックが好きだぞ☆お小遣いは自分で稼ごうね☆」
出産を機に覇気を失うのはよくあること、疑似的な魂継が親から子へ行われるためだ。
うちの母もそうだったな・・私を生まなければ彼女は今頃操者をやっていたのだろうか。
サトノ家ではありえない、仲睦まじい母娘の姿を見た。
私が母とあんな風にじゃれ合ったことは新生児の時ぐらいか・・少しだけ羨ましい。
「おっとダイヤちゃんが寂しそうだぞ☆」
「こっち来いよ、そぉーれい」
「え、ちょ、やめ」
「我が家に来たものは我々母娘の洗礼を受けるのだ☆ナハハハ」
「アハハハハ」
「近い、狭い、なんだこの母娘・・むぎゅぅ」
キタちゃんに抱きつかれ、そんな私たちをシンさんが優しく抱きしめる。
サンドウイッチされた・・・温かい・・・母はきっと、こういうのを望んでいたんだ。
させてあげられなくてごめんなさい。
この日からたまにキタちゃんのお家へお邪魔したり、お泊りしたりが日常になる。
「ダイヤさん・・・ちょっとお話があるんだけど・・いいかな」
「何ですかクネクネして気持ち悪い」
ある日、父がモジモジクネクネしながら声をかけてきた。
なんだろう、無茶なお仕事の依頼かな?さん付けなので要警戒。
部下たちのモチベーションアップ用「ダイヤ様写真集」の撮影はこの間やったばかりだろ!
「あの・・パパね・・その・・」
「再婚ですか?やっと覚悟を決めたんですね、おっそ!」
「何で?何で知ってるの!言ったことなかったよね!」
「ウマ娘なめんな!加齢臭にいきなり女の人の匂いが混ざったら誰でも気づくわ」
「うそーん!せっかくのサプライズが」
「それで、お相手はどなた?」
「あ、そこまでは知らないんだ。じゃあ、行こうか。両家顔合わせにね」
「いきなりですね。ですが、望む所です。物好きな女の顔を見てやりましょう」
父は騙されやすいので、もしも結婚詐欺だった場合は私が止めなくては。
さてさて、うちのマダオを落としたのはどんな方でしょう・・・
「お、お邪魔します」
「は~い☆いらっしゃいだぞ☆」
「おっそーい!待ちくたびれたよダイヤちゃん、頭首様」
「すまないね、はい、これお土産だよ」
「うわぁぁぁぁ!みそピーだあぁぁぁ!私これ超好き!」
「みそピーってwwいや、美味しいですけどね」
なんか見たことあるタワマンだな~と思ったら、こういうことですか。
まさか、再婚相手がキタちゃんの母上、シンさんだとは。
匂いで気づくべきでした!
最近、ウマ娘の嗅覚を研究した商品が登場したせいで匂いが当てにならん。
消臭剤、ボディーソープ、香水、これからどんどん増えるんでしょうね。
「ダイヤちゃん☆私のことはママでもお袋でも、好きに呼ぶがいいぞ☆」
「はい、ハートさん。で、いつからですか?馴れ初めを聞かせてください」
「ショック☆でもハートは諦めないぞ☆」
「私がサトノ家従者部隊採用試験の面接に行ったときだよね。あの時ママもついてきたもん」
「なぜキタちゃんが答える」
「あはは、まあそういうことなんで」
「そういうことだぞ☆」
どういうことだよ、サッパリわかんねぇよ。いい年こいてまた一目惚れかよ!
親の惚気話とかあんまり聞きたくないので別にいいか。
シンさんの真名はシュガーハート、だからハートさんと呼ばせて頂きます。
「父のどこがよかったんですか?金ですか?」
「コラコラ、ダイヤ!財力意外魅力ないみたいな言い方やめて!」
「うーん☆可愛い所かな☆」
「いやぁ///えへへ」
「いい眼科を紹介しましょうか?父が可愛く見えるなんて重症です」
「ダイヤ~」
「その辺にしてあげなよ。中年の哀愁が可愛いと錯覚したんじゃないかと・・・重症だねママ」
「どちらの娘も辛辣☆気に入ったぞ☆」
そんなこんなでとんとん拍子に話が進み。
晴れて、父とハートさんは再婚したのでした。めでたしめでたし。
ハートさんがお母さんか・・・お母さんって呼ばなきゃダメ?
嫌じゃないです・・・ちょっと恥ずかしいのと・・・私に誰かを母と呼ぶ権利があるか疑問なので。
しばらくハートさんでお願いします。
頭首の再婚で揉めると思った?残念、家はサトノでした!
現役芸能人との再婚ということで、親族はまたしても大歓迎の大フィーバー!
従者部隊最年少のキタちゃんは元々アイドル的存在だったので、お嬢様への昇格もすんなり納得された。
引き続き従者部隊に席を置きつつ、サトノ家の令嬢としても振舞うそうです。めんどくさそう。
こういう時の頭空っぽ具合がサトノ家のいい所だ思う。ノリと勢いを大事に生きてるな。
「どっちにする?」
「何がですか?」
「姉と妹どっちがいい?」
「そういうのやめましょうよ。主従だけでもめんどくさいのに」
「私たち姉妹になったんだよ!ちゃんと決めておいたほうがよくない?」
「興味ないです。大方それにかこつけて勝負したいだけでしょう」
「わお、お見通しかぁ」
「この件は聞かなかったことにします。私たちの関係が壊れる元凶になり得ますから」
「了解、姉妹決めはなしだね。私たちは対等だ」
「そうです。仲良くいきましょう」
「でもさぁ、たった一つしかないものをお互いが好きになった時はどうする?」
「平等にシェアすればいいのでは?」
「分けれない、分けたくないものだったらどうする?」
「その時は、潔く勝負しますか」
「やった!首を洗っておいてね」
「こっちのセリフですよ」
そんな事態にならないのが一番です。
ちょっとだけ嫌な予感がする。キタちゃんと私の好みって被ること多いんだよな。
やれやれ、お菓子の取り合いぐらいで済めばいいですが・・・
「ねぇ、今日はどこ行くの?」
「ちょっとした会合だよ、同業他社との情報交換や取引のお話を少々」
「それで?何で私たちまで呼ばれたんでしょう」
「それが、先方の頭首がどうしても二人に会いたいって打診されてね」
「同業者、頭首・・・メジロですか?」
「ぶっぶー!ハズレだよ。本日、招待してくれたのはファイン家だよ」
ファイン家・・・正直よく知らないんだよな。
ここ最近、急速に勢力を拡大して着々と力をつけている、油断ならない集団らしい。
サトノ家以上にパッとしない、御三家の空気とか言われてたのに、何があったのやら。
ファイン家が指定した場所は落ち着いた雰囲気の和風旅館だった。
都心から離れた郊外に位置し、ちょっとした大人の隠れ家的お宿に到着。
いいですね~こういう所で羽を伸ばしてまったりびろーんと寛ぎたい。
館内に通されファイン家の方々とご挨拶、大人の会話が始まってしまったので退屈だ。
気を利かせてくれた旅館内のスタッフが中庭に行ってみたらどうかとお勧めしてくれた。
「いいよ、行っておいで。くれぐれも物を壊したり、誰かを傷つけたりしないこと、いいね」
「「は~い」」
キタちゃんと旅館を探検、ちょっとワクワクすっぞ!
「広いね~。あ、温泉あるんだ、入る時間あるかな~」
「それよりこっちが気になりますね。この旅館、なぜか名物がラーメンらしいですよ、変わってる」
「旅館なのにラーメン?意味不明だね」
写真のラーメンは具沢山でとても美味しそうだった、機会があれば是非食べてみたい。
「ここが中庭ですか、季節が合えば桜や紅葉も楽しめそう、う~ん雅ですね」
「おお、芝生だ芝生!手入れが行き届いて綺麗だね~」
「そうで・・・んがぁ!」
「ダイヤちゃん!」
突然のことだった、いきなり後頭部に衝撃が・・・攻撃された?
「ダイヤちゃんの頭にサッカーボールがめり込んどるww」
「どこのどいつだ!この私にシュートを決めるとはいい度胸じゃないか!」
「ごめんなさ~い、ボールそっちに行っちゃいましたぁ」
「あいつかぁ」
「あの子、ウマ娘だよ。警戒して・・・多分強い」
まったく悪びれた様子もなくそいつは現れた。
何?私と戦争したいの?
こいつが私の後頭部を・・大事な脳が詰まってるんだぞ!これ以上アレになったらどうしてくれる!
私たちよりちょいと年上のウマ娘・・覇気は・・・な、なんだ・・と。
「ごめんなさいね。ちょっと足が滑っちゃって」
「ワザとか!ワザとやったんか!」
「事故だよ事故、そうだ!お詫びの印に一緒にサッカーしない?」
「そんなのがお詫びになるか!」
「ダメかな?三人で遊んだら楽しいと思うんだけどなぁ」
「遠慮します。球技詳しくないんで、それにボールが私たちの脚力に耐えれるとは思えません」
「そこは力加減を調整するんだよ、こんな風にね」
「わっ、上手上手~」
「へぇ、なかなかやるじゃないですか」
リフティングというやつをいとも簡単にやってみせる。
落下したボールに合わせ足の適切な部位を当て、ボールの軌道を安定させる。
上手い大道芸人のジャグリングを見てる心境だ。
放っておいたら、永久にできてしまうのではと思うほど安定した動きをみせる。
しばらくボールの動きを目で追っていると、謎ウマ娘が話かけてくる。
「二人はさぁ、もう操者っているのかな?」
「は?操者ですって、この年でいるわけないでしょ」
「要らないかな、別に人間に頼らなくても十分やっていけるし」
「つまりは、この先も契約する気はないと?人間は下等生物でパートナーになるとかありえないと?」
「そ、そこまで言ってませんよ」
「でも、当たらずとも遠からずかも」
「操者はいいよ~、きっと強くなれるよ、苦楽を共にしていろんなものを共有できる。それは最高に素敵じゃない」
「いえ、別に」
「まだ早いかな・・」
「乗り気にはなってくれないか・・・そっか、そっか」
リフティングを中止してこちらを向く謎ウマ娘。
そいつの覇気が一瞬だけ攻撃的なものになった。
「私はキミたち二人に操者を見つけてほしいんだ」
「私たちが操者を得ることで、あなたにどんなメリットが?」
「私だけじゃない、世界にとってのメリットがある・・・かも」
「かも!かもってことは確定してないんだよね。不確かなもののために契約を強制されても困るよ」
「ごもっとも、でもね、これで未来の危機が回避できるなら安いものだよね」
「言ってる意味がわかりません。もういいですか、行きましょうキタちゃん」
「う、うん。それじゃあ」
こいつ頭おかしい、関わったらいけない奴だった。
それに・・・こいつの覇気、得体の知れない気持ち悪さがある。
一人なのに・・まるで二人いるような・・・うん、気のせいだな。
「逃げるなよ、サトノダイヤモンド、キタサンブラック。そんなんだから・・・」
「え!?」
「何!?」
「弱いままで、みんなを不幸にしたんだよ!!クソガキがぁ!」
突如膨れ上がった膨大な殺気に気圧される。
初対面のウマ娘、その瞳から明確な憎悪と怨嗟を感じる。
産まれて初めて、ここまでの殺意を向けられた。
喉が渇く、声が出ない、体が動かない、キタちゃんと死合った時なんてまだ全然マシだった。
極大の負の感情を向けられることは、こんなにも苦しいんだって、初めて知った。
理由がわからない、このウマ娘と自分たちの接点は無いはずだ。
彼女から恨まれる覚えはない、だというのに、どうして・・・
どうして、今すぐにでも泣き叫んで許しを懇願したくなっているのだろう。
「ごめんね、こっちは本気なんだ。相手に言うことを聞かせたいときは、勝負するしかないよね」
「あ、あなた何者ですか?」
「どうして、私たち何かした?」
「そっちは二人がかりでいいよ、尻尾鬼でいいか、経験あるよね」
「勝手に決めないでください!」
「・・・いいよ。やろう」
「キタちゃん!」
「ダイヤちゃん、これはもう勝負しないとダメだよ。戦ってこそわかることもある」
「またそれですか・・・仕方ないですね」
「決まりだね。じゃあ、スタート」
「ちょ、ルールは!」
「最後まで立っていた方の勝ちで」
「それもう尻尾鬼じゃなくね」
しまったなぁ・・・お気に入りの服を着て来ちゃった。服?ハイブランドよりウマクロ派です。
やるだっけやってみましょうか、後悔させてやる!
つもりだったんだけどなぁ・・・
「年齢的には上位、連携はまだ甘い、現時点での危険性皆無、なんだ・・・弱すぎない?」
「ち・・ちくしょ・・う」
「あ、ありえねぇ」
戦闘開始直後の二人まとめて秒殺された。
驚愕よりも悔しさと怒りで跳ね起き、攻撃するがその度に、躱され、いなされ、防がれ、カウンターをもらう。
二人がかりだぞ?実力にそれなりの自負があった私たちのプライドはズタボロだ。
身体はもっとズタボロですけどね・・・ここ芝生でよかったぁ。
「ちょっと拍子抜けだな。ずっと雑魚のままでいてくれた方がありがたいけど」
「・・・雑魚」
「何も言えねぇ」
「最低限身を守る術は必要か、それに二人の力が黒幕に対抗する手段になるかもしれないし、その為にはやっぱり操者が必要。それも、二人を正しく育成できる人が」
こっちは息も絶え絶えだというのに、涼しい顔で独白を続ける謎ウマ娘。
「よし!今後の方針は決定。負けた二人には約束通り言うことを聞いてもらうからね」
「そ、それより・・」
「ここから・・出せ・・」
「あ、ごめんごめん。すぐに掘り起こすからね」
どういう状況かって?埋められてんだよ。
首だけ出して、地面に埋まってんの!この屈辱忘れてなるものかぁ!
普通穴掘るか?そして埋めるか?旅館に許可とってやっているんだろうなコラ!
「うわ、二人とも泥だらけww」
「誰のせいだと、あーあーもう最悪です」
「埋められたの初めて、ちょっとワクワクした」
「ではでは~、お姉さんからの命令を発表します。心して聞いてね」
「できる範囲でお願い」
「金はやらねぇぞ!」
「キミたち二人には操者を見つけて契約してもらいます!頑張って最高のパートナーを探そうね」
「「嫌っスわ」」
「コラ!このお題は確実にやってもらうよ。じゃないと今後の取引は無しにするからね」
「取引だと?・・・あなた、ファイン家の要人ですか」
「要人も要人だよ。自己紹介前にボコってごめんね」
「「本当にな」」
「ファイン家頭首、ファインモーションだよ。よろしくね、まだ可愛い破壊獣さんたち」
「破壊獣、さっきから何を。というか頭首!?あなたいくつですか?」
「2ndの体だからえーと12歳ぐらいかな、学校に行っていたら小学生だったと思うよ」
「小学生が頭首・・ファイン家はロリを崇める風習でもあるのですか?」
「やらなくちゃいけないからなってる、それだけだよ。うちのみんなは納得してついて来てくれてる」
「パパとお話している人が頭首じゃなかったんだ、ふーん」
ファインモーション、若干12歳で頭首を務めるウマ娘。
思えばこの時、初めて格上の相手と戦い、速攻で敗北したのだった。
負けた・・・力でも想いでも、仕事内容でも・・・上には上がいるって本当だな。
その名前、ジャポニカ復讐帳に書いておくぞ、油性マジック赤でな!
「ここにいたのかい、ダイヤ、ブラック」
「父様」
「パパ!」
「ごきげんよう、ドウゲンさん。少し娘さんたちと遊んでもらってたんだ」
「ファインさんもご一緒でしたか、本日は誠によいお話をさせて頂いて・・・」
「いえいえ、サトノ家とは今後もよい関係でありたいとファイン家一同考えておりますから」
「こちらこそ願ってもいないことで、何卒よろしくお願い申し上げます。よいお返事を期待しておりまから!それはもう、メチャクチャ期待していますからぁ!」
「働くパパは腰が低い!」
「年下相手でも誠実な応対、そして美しすぎるお辞儀・・我が父ながら大した者です」
「娘に褒められるパパの喜び・・ジーンと来るなぁ」
「仲良し親子で羨ましいよ。急な話なんだけど、協定に関して条件を一つ追加したいのですが、よろしくて?」
「何でしょうか?ここに来ての追加条件となると少々身構えてしまいますな」
「ご息女の二人によき操者を見繕って契約させること。これを条件として追加します」
「ひょへ!?」
「父様w変な声出さないでww」
「あははwひょへってww」
「期限は今日から半年以内、条件が達成できなかった場合、本日のお話はなかったことに。また、今後の全て取引はメジロ家と致すことにします」
待て待て待て待て、待てや!
私たちに操者をつけることがそんなに大事か?
全ての取引をメジロ家とだと!サトノ家はもういらない子なの!そ、そんなぁ~。
ヤバイヤバイヤバイ、サトノ家の死活問題になってきた、一族滅亡の危機!
今まではサトノ家とファイン家が協同することで、辛うじてメジロ家に対抗できていたのだ。
メジロ家とファイン家が本格的に手を組めば、サトノ家などあっという間に根無し草にすることも・・・
「お、お待ちください!娘たちはまだ10歳にもなっていない若輩の身、操者を必要とするには早すぎるのでは!」
「そんなことない、早ければ早いほどいい。よき操者とよき関係を結び、来るべき脅威に備えてほしいの」
「しかし、それは余りにも暴論では、娘たちの気持ちもありますし・・・何を!?」
「無茶な要求をしているのは理解しています。ですが、これは大袈裟ではなく世界の未来を決める重大案件なのです」
メジロ家の名を出し、そのまま高圧的に要求を迫るのかと思ったが違った。
ファインモーションはその場で地面に手をつき首を垂れ、土下座をしてみせる。
これには私たちサトノ家一同( ゚д゚)ポカンである。
「ファインモーション、一世一代のお願いにございます。どうか、操者と契約する件を前向きに考えていただけませんでしょうか?お二人が誠の操者と契約なさった場合、ファイン家はサトノ家の傘下に入り未来永劫の協同を誓う所存です」
「・・・ダイヤ、ブラック、どうやら彼女は本気のようだ。後はお前たちが決めなさい」
「そこまでする理由は教えてくれないのですか?」
「今聞いても混乱させるだけだろうし、操者が決まった暁には必ず説明することを約束するよ」
「私たちが気に入る人間かぁ、ぶっちゃけハードル超高いよ?」
「高くないと困るよ。あなたたちが心から納得する、最高の操者を選んでほしい」
「どうする?」
「どうしましょうか?」
「まさか勝負事の約束を反故にするなんて・・・キタちゃんとダイヤちゃんはそんな恥知らずじゃないよね」
「ちっ、それを言われると・・ああわかりましたよ!探すだけ探してみましょう」
「私も一応頑張ってみる。でも、何百人会っても気に入らなければそこまで、契約なんか絶対にしない」
「今はそれでいい、私からも優良な操者候補のリストを送るから、まずは検討してみて!あ、もう頭上げてもいい?そろそろ土下座がしんどくなってきた」
「操者か、娘たちの成長には歓迎すべき存在・・ダメ!やっぱりパパかなり寂しい~」
「じゃあ、仲直りだね。末永くよろしくねキタちゃん、ダイヤちゃん」
「いつか借りは返すからね」
「覚えてろよ」
「もう、逆恨みして悪かったってば・・この世界のキミたちは悪くないのわかってたのに・・ごめんね」
「「???」」
その後、汚れた服を預けてお風呂に入ることに・・・うは、露天風呂だ!
「あ~しみる~」
「おっさん臭いよダイヤちゃん」
「ほっとけ!真っ昼間から露天風呂、この贅沢を今は堪能しますよ。はふぅ~」
「それで?二人はどんな操者がいいのかな」
「年上の分別ある人間が最低条件、男は嫌だな」
「覇気だよ覇気!これが合わないと全部ダメ!なるべく強力な覇気の持ち主を希望するよ」
「二人が満足する覇気か・・かなり限られるね」
「「いたのかインモー!」」
「それやめろっ!また埋められたいか!」
いつの間にかインモーまで入浴していた。
ファインモーションに一矢報いてやろうと名前を弄ったのが大層お気に召したようだ。
「インモー?陰毛っスかw卑猥っスねww」「ぶっころ(#^ω^)ピキピキ」の流れがありました。
「そっちだって、サトイモの癖に!芋の癖に」
「里芋なめんなよ!煮っ転がしとか超美味いだろうが!」
「煮っ転がしwww」
「笑ってないでお前も何とか言えよ、世紀王!」
「リボルケイン!!」
「「ぎゃあぁぁぁ!目がぁぁぁぁ!」」
キタちゃんの容赦ない目潰し(リボルケイン)によってインモーと私のバトルは有耶無耶に終わった。
世紀王のネタがわかる人がいるかどうかは知らん!
人の名前で遊んではいけません、少し前に学校で暴れた私が言うのだから間違いない!
わかっていたのに我慢できんかったんや!インモーが悪いんや!
「美味しいね」
「うめうめうめ」
「はふはふ、うまーい」
「二人とも落ち着いて食べなさい」
風呂上りにラーメンを奢ってもらったので、出会って5分でバトルした(埋められた)件は水に流すことにした。
たまに食べるとホント美味いな、強烈な旨味が脳にガツンと来やがるぜ。
人の奢りと言うのがいいね、ただでこれを味わえるなんて得した気分だ。
「操者探し頑張ってよ、進捗状況は定期的に確認するからね」
「そんな担当編集者みたいなことを」
「見つかるのかな・・・不安だ」
「二人とも無理しないでね。サトノ家の未来より娘の未来を優先したいパパでした」
「父様こそ無理しないで、ファイン家との取引が無くなったらうちは・・・およよ」
「ファイン家は鬼畜だよね、頭首の顔が見てみたいよ」
「ええ、きっと卑猥な顔で腹立つこと必至ですwww」
「本人ここにいますけど!!と・に・か・く・頼むよ二人とも、この世界のために、何より自分たちの未来のために頑張ってね!」
「「へーいへいへい」」
「やる気だせ!」
「うんうん。三人とも仲良くできそうで安心したよ」
どこがだよ・・・。
ファインモーションとはまた別件で揉めそうな気がしてならない。
こうして私たちは操者を探すことになったのでした。
そして・・・あの人に出会った。