俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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顔見る前から好きでした

 ギルドとは元々中世のヨーロッパで、技術の独占などのため、親方・職人・徒弟から組織された同業者の自治団体のことである。

 ウマ娘という存在がいるこの世界において、ギルドは幾度も変革や発展を迎え、今では社会を構成する一組織として確固たる地位を築き上げた。

 

 警察や軍隊等の公的機関、御三家や大企業が有する私設部隊、他にも大小様々な"武力"を持った者たちが乱立している世の中で、そうのような組織に所属していない者も多数存在する。

 少人数でチームを組んでいる者、一匹狼やフリーのエージェント、訳ありや、バイト感覚で仕事をしたいと考える者、学生の身でありながら力を持て余した者たち。

 その力を遊ばせておくことを惜しんだ結果、ギルドから彼らに仕事を斡旋するようになった。要はお気軽に使える遊撃部隊(便利屋)を社会が望んだのである。

 

 ギルドは一見すると小洒落たカフェテリアやバーのような外観をしているものが殆どだ。

 設立当初からの伝統なのか、飲食店にクエスト受注窓口が併設されているというのが基本スタイルだ。

 店内では飲食可能で場所や時間帯によっては酒類も提供可能。

 食事やちょっとした休憩、同業者との交流や情報交換の場としても重宝されている。

 

 そのギルドにとある情報が飛び込んできた。

 情報は瞬く間に拡散され、日本中の各支部に伝達された。

 

 『サトノ家の令嬢二名が操者を探しています』

 『選定試験を行いますので、我こそはと思う方は奮ってご参加ください』

 『なお、試験中に起きた事件事故及び心的外傷については一切保証しません』

 『十二分にご検討されてからのご参加をお勧め致します』

 

 ざわ・・・ざわ・・・

 公開された情報を見た者たちのざわめきがギルド内のそこかしこから聞こえる。

 

「俺、行ってみようかな」

「バカっ!やめとけ。メジロ家じゃなくて、あのサトノ家だぞ」

「でもコレってチャンスだよな。御三家令嬢の操者ともなれば、かなりの好待遇が約束されるはず」

「よく読め、不穏なことが書いてあるだろ。何をされるかわかったもんじゃない」

「心的外傷ってなんだよ、怖ぇぇー」

「肝心の令嬢だが、写真すら無いのはどういうことだ?」

「そりゃあアレだ。外見だけに釣られてくるマヌケを排除するためだろう」

「会ってからのお楽しみ、そういうの嫌いじゃないわ」

「でもなぁ、サトノなんだよなぁ」

「「「「それな」」」」

 

 メジロ家に比べ世間一般に評判のよろしくないサトノ家。

 怖いもの見たさで参加を決めた者も少なからずいたようだが、サトノと聞いただけで大多数の者たちはこの情報をスルーしたのであった。

 

 わかりきっていたことだが、私たちの操者探しは難航した。

 

「「はぁ~・・・」」

 

 深いため息をついてぐったりする。

 今日は朝から代わるがわる、いろんな人間に会い過ぎて疲れてしまった。

 

「二人ともお疲れだね」

「パパ~もうやめよう、知らない人に会うの結構キツイ」

「もう二十人は相手しましたよね。疲れるはずです」

 

 私もキタちゃんも内弁慶な所がある。人間に対してはなおさら人見知りだ。

 選ぶ立場なのはこっちだが、初対面の相手にジロジロ見られるのは気分がいいものではない。

 しかもそれが間を置かず、何度も何度も行われたのでストレスがマッハだ。

 

「さっきの受験者、泣きながら帰っていったけど、何かあったの?」

「「目線がエロい、キモイから消えてくれる」って正直に言ったら泣いちゃった」

「実際はもっとキツイ言い方でしたけどね、もうちょっとお手柔らかにしてあげましょうよ」

「ダイヤが面談した相手は、何故か複雑骨折して泡を吹いていたね」

「あの野郎、私の身体に触れようとしたんですよ!太腿の辺りを嫌らしい手つきでね」

「よし!そいつには社会的に死んでもらおう!」

「さすがパパ!」

「当然ですね」

 

 面接にまでこぎ着けたのなら、少なくとも覇気や身体能力のテストには合格したはず。

 だが、どうにも気に入らない。

 わざわざお越しくださった手前、定型文のやり取りぐらいはしますけど。

 本音では会った瞬間に「はいダメ!お帰りください」「ないわーありえんわー」と言いたい。

 足りないんだよ、どいつもこいつも、クソみてぇな覇気だな。

 

「覇気がショボ過ぎる。もう、それだけで無理です」

「一応基準値はクリアしているんだけど」

「じゃあ次からは基準値とやらをもっと上げてよ、今日来た連中の数倍はほしい」

「む、無茶を言うなぁ。今日、来てくれた人たちだって、轟級騎神の操者には確実になれるとのお墨付きだったんだよ」

「じゃあ、超級の操者クラスを寄こしてください」

「メジロ家でも数人いるか、いないか、の人材を所望するか・・うちの子ってば」

「わがまま言ってごめんね。でも、こればっかりは・・」

「いいんだ。パパとしても二人には納得して契約してほしいからね、焦らず行こう」

「お手数をお掛けします」

 

 その後も数日に渡り面談ラッシュは続いたが、状況は芳しくなかった。

 会った人数は三桁に及んだものの、これだと思う人物は未だにいない。

 

「お待たせしました。ミラノ風ドリアでございます」

「待ってました!サイゼではこいつを食べないと始まりませんね」

 

 連日の面談に疲弊した私たちは休暇をもらった。

 みんな大好きサイゼリアで遅めの昼食を取る。

 私の横に座ったキタちゃんは、辛味チキンに夢中だ。

 それも美味そうだな、後で私も頼もうかな。

 

「それで、半年経ったけど。操者は見つかった?」

 

 私たちの対面に座るウマ娘、インモ・・ファインモーション。

 フォークで自分の注文した品をつつきながら笑みを浮かべてこちらを見る。

 あはは、目が笑っていませんね。

 

「それ何です?」

「エスカルゴのオーブン焼き」

「カタツムリ・・・チャレンジしてみましょうか」

「話を逸らさないでくれる。操者はどうなったの?」

「見てわからない、もちろん見つかってないよ!」

「開き直ってもダーメ。はぁ・・私が送ったリストの候補者も全滅か」

「いや、あなたの推薦で来た人間、失礼な奴でしたよ」

「「べ、ベーオウルフ・・すみませんごめんなさい!やっぱ無理です~」」て泣きながら逃げた」

「私なんて会った瞬間にガタガタ震えて「ルシファーの幼体・・うぇ吐きそう」ですって!人の顔見てゲロしたくなるってなんですか!私の顔、そんなに酷いですか!」

「あちゃ~、1st出身者はやっぱ無謀過ぎたかぁ。二人ともごめんね、その人たちは完全に人選ミスだったよ。二人が超絶ブサイクで発狂したんじゃないから安心してね」

「ファイン家嫌い」

「同感です。頭首のことはもっと嫌いです」

「謝るから許してよ。小エビのサラダ頼んであげるからね、ね」

「「Lサイズでな」」

 

 今日は月一恒例の定例報告会。

 ファインモーションと食事をしながら、操者探しについて報告する。

 5回連続でラーメン屋を指定されたので、今日はファミレスにしてもらった。

 

「麺類、パスタしかないんだ。ラーメンは?」

「あるわけねぇだろ」

「すみませーん注文いいですか。えっと、たっぷりコーンのピザと柔らか青豆の温サラダで」

「バッファローモッツアレラとプロシュートも」

「小エビのサラダLサイズ、ふた・・三つもお願い」

 

 私たちウマ娘ですからね、そりゃあ食べますとも!まだまだ序の口です。

 

「期限、今日までなんだけど?」

「取引中止は勘弁してくれませんか、ホントマジ勘弁してください」

「パパのお仕事を人質にするのはやめたげてよう。路頭に迷ったら末代まで呪うからね」

「仕方ないなぁ、今回だけだよ。今後も定期報告はちゃんとすること!いいね」

「「ありがとうございます!!」」

「後、三カ月は待つよ。それが過ぎたら・・」

「「過ぎたら?」」

「二度と覇気を使えないよう封印して、二人にはラーメン職人を目指してもらう」

「職人!ラーメン屋をやらないといけないの?飲食店の経営なめすぎ!」

「そこじゃないですよ!封印ってそんな真似ができるとでも」

「できるよ。私、天級騎神にコネがあるから」

「「はぃぃぃぃ!?」」

「ハッタリじゃないよ。天級なら覇気封印もちょちょいのちょいってね」

「嘘を言ってるようには見えない・・・マジか、最悪だ」

「覇気を失う?ただ可愛いだけの生き物になってしまう!それはちょっと困るぞ」

「だから頑張ってね!自身が無いなら、修行先を決めておいてね」

「ラーメン修行・・・やりたくねぇ」

「ラーメン好きな癖に、ラーメン屋を甘く見過ぎ!毎年どれだけ開店、そして廃業しているのか知ってんのか!」

 

 ラーメン店を経営する未来を防ぐために頑張ろうと思いました。

 

 ファインモーションと別れた後、家に直帰する気にはならなかったので近所の公園でぐだぐだしてみる。

 

「本当に困りましたね」

「ラーメン屋・・バイトならともかく、本業にするつもりはないよ」

「適当な人と契約・・いや、それは自分にも相手にも失礼過ぎる」

「それじゃあ、お互い不幸になってお先真っ暗だしね」

「「はぁ~~~」」

 

 ため息をつくと幸せが逃げるなんて聞いたことがある。

 だとしたら、私たちの幸せは木星辺りまで逃亡していることだろう。

 

「長いため息、何か悩みがあるのかしら?」

「誰や!」

「ほぇ?」

 

 気が付いたら背後を取られていた。

 振り返るとそこに、青みがかった毛並みのウマ娘が立っていた。

 誰だ?見たことがない奴だ。

 私たちより年上、育ちがよさそうな外見、ザ・清楚系、身に着けている衣服も高級品だ。

 裕福な家の子だというのはわかった。

 

「驚かせてごめんなさい。妹たちを思い出して、声をかけてしまいました」

「あ、はい、そうですか」

「あなた、どうしたの?覇気が変だよ」

 

 そうだ、キタちゃんの言う通りだ。

 このウマ娘の接近に気付かなかったのは覇気の出力が微弱すぎて、それを感じることが出来なかったからだ。今、こうして正面に立つ姿を確認して、そこにおったんかい!となった。隠形や隔絶状態にしてはいない・・ちゃんと生きているウマ娘から出ている覇気なのか心配になってくる。

 

「そう、わかるのね・・私、生まれつき神核が不安定なんです。覇気の制御が下手で、今みたいに極少量しか出ない時もあれば、体が言うことを聞かない程に溢れ出すこともあるの」

「それは難儀なことですね。治療は旨く行きそうでしょうか」

「先天性の異常なのでお医者様も首を捻ってました」

「可哀そうなんて思うのは失礼かな。止まってしまうのは、全部やり切って納得してからがいいよ。私に言われなくたって、あなたの目には生きようとする意志を感じるもん。大丈夫だよね」

「キタちゃん・・急に賢くなって、今日は槍でも降るんですかね」

「ジージの受け売り!耳タコするまで聞いた「ジジイのちょっといい話集」より抜粋」

「フフッ・・元気づけてくれたのですね。ありがとう、そう簡単に死ぬ気はありませんからご安心を」

 

 クスクス笑う姿にも品があって可愛らしい。私とは違うな、これぞお嬢様!って感じ。

 

「それで、あなたたちは何を悩んでいたの?よかったら聞かせてくれないかしら」

「見ず知らずの方に話す内容では・・いえ、この際です、聞いてもらいましょう」

「そうだね。私たちだけじゃ行き詰っていたし、第三者の意見が突破口になる可能性もあり」

「はい、どうか、気兼ねなくお話してくださいね」

「えーと、お名前は?」

「通りすがりのA子です」

「ならば私はDですね」

「私B!」

 

 何故だかコードネームで呼び合うことに・・・こういう趣向もたまにはありだな。

 立ち話もあれなので、近くのベンチへ移動する。三人並んで腰掛けお悩み相談。

 A子さんは大変聞き上手で有らせられた。

 溜まっていたストレスのせいか、包み隠さずベラベラと喋ってしまう。

 おっとりポワポワした雰囲気の人だ、そのせいか、私たち二人もすんなりと心を許せた。

 安定性を欠き、波のように満ち引きする覇気から推測するに、A子さんが万全の状態であったなら間違いなく強者であっただろう。

 私たちはA子さんの真価を察し、彼女を強者と認めた上で相談しているのかも知れない。

 

「あらあら、まあまあ!操者を探しているのですか?お若いのに随分と進んでいますのね」

「私だって、こんなに早く操者を探すとは思ってないかったですよ」

「乗り気ではないが探さなくてはならない、候補者には会ってみたが、今の所は脈無しなんですね」

「大体そんな感じだよ。やれやれだ」

 

 少しだけ思案した後、A子さんは口を開く。

 

「・・・それならば、待っているだけなのを止めてみたらどうでしょう?」

「「え?」」

「聞けばお二人は、向こうから来た人のみを相手にしている様子。探していると言ってもあくまで受動的、自分の足でわざわざ探してはいない、違いますか?」

「確かにそうです。そうか、嫌々なあまり受けに回り過ぎてましたか」

「こんなに簡単なことに気づかなかったなんて、私たちのアホ!そうだよ、人生を左右する相手を座して待っているだけなんてバカみたい」

「ずっと後手に回るだなんて、らしくなかったですね。攻めて攻めて自分たちで掴み取る。そうじゃないとダメでした」

「ジージの家を飛び出したからダイヤちゃんに会えた、今度もきっと大丈夫だよね」

 

 キタちゃんは父が勝手に用意したのですが・・・まあ「友達がほしい」と意思表示した結果、彼女に出会えたのであればよしとしましょう。

 

「偉そうなことを言ってすみません。少しはお役に立てたでしょうか」

「目が覚めましたよ。ありがとうございますA子さん」

「うん。喝を入れてもらった気分だよ」

 

 ベンチから元気よく立ち上がり、ペコリと頭を下げる。

 

「やるべきことが見えました。帰りますよB!私にいい考えがある!」

「コンボイ司令はやめて!不安しかない!けど付き合うよD!」

「A子さん、ありがとうございました。では、またいつかどこかで」

「ばいばい~、またね~」

「はい、またどこかで・・・」

 

 A子さんにお礼を言って、ダッシュで帰宅する。

 善は急げだ。この作戦には、先日うちに運び込まれたアレを使う必要がある。

 格納庫のロックは私でも解除可能、後はアレの動き次第。

 きっと上手くいく、そんな予感をひしひしと感じていた。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「元気な子たち・・・」

 

 マックイーンたちは元気だろうか、先程まで一緒にいたに二人を見て妹分のことを思い出す。

 

「待っているだけなのは私もでしょうに・・・人に説教する立場ですか」

 

 胸に手を当てる、安定しない神核の揺らぎを今も感じる。

 自分が起こした大事件、誰かを危険に晒すような私は存在しない方がいいのだろう。

 それでも・・可能性が僅かでも残っているのなら、それに賭けてみたい。

 止まってしまうのは全部やり切ってから、確かにその通りだ。

 アドバイスしたつもりが、逆に勇気をもらってしまった。

 偶然の出会い、温かい気持ちをどうもありがとう。またいつかどこかで・・・

 小さな二人を見送った後、自分の傍らには執事服を着た壮年の男が立っていた。

 音もなく現れると未だにビックリしますね。慣れません・・・

 

「お嬢様、お車の準備が整いました。そろそろ出発致しましょう」

「あら、もう終わったのウォルター?」

「はい、全て滞りなく。先方とも話はつけてあります」

「ありがとう、では、参りましょうか。行先は、えーと、どこだったかしら?」

「テスラ・ライヒ研究所でございます。あのビアン博士が設立した研究機関、きっとお嬢様を救う手立てが見つかるはずです」

「そうだといいわね。どんな最期が待って居ようとも、最善を尽くしましょう」

「その意気です。それでこそメジロ家の血を継し者、メジロアルダン様です」

 

 執事を従えたウマ娘はどこか晴々とした顔をして去っていった。

 この時、三人は互いの真名を名乗らなかった。それは運命のいたずらか、それとも・・・

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「へっへっへ・・・やった!やっちまったぜ!もう後戻りできねぇ」

「お頭!顔が凶悪になってるよww」

「我ながら完璧な仕事っぷり!マダオの裏をかき、まんまとお宝ゲットだぜ!」

「後でメチャクチャ怒られそう・・ねー、運ぶの手伝ってよー!この子、重い~」

「だらしねぇな、それでもサトイモ盗賊団の一員か!」

「サトイモ盗賊団ww弱そうww」

 

 あいにくの空模様、今日の天気は朝から曇り、夕方からは雨になるらしい。

 私たちの作戦は雨天決行!仕事で不在の父や部下の目を盗み、格納庫奥に封印されていた"例のアレ"を無断で持ち出すことに成功した。

 

「パパが家宝にするんだ~って言ってたけどいいのかな?」

「動かない骨董兵器なんぞ宝の持ち腐れですよ。有効利用してやりましょう」

 

 キタちゃんが、銀色に輝く大きなキューブ状の物体(車輪付き)を押しながら移動する。

 私は大きめのスーツケースを二つ牽引する。

 ガラコロと音を立て道を進む、スーツケースはともかく、クソでかキューブの方は目立ってしょうがない。

 どこか適当な場所で開封の儀を行おう。

 

 この辺でいいかな。雑居ビルの裏路地、人がいないことをよく確認してからほっと一息。

 

「あー重かった!結局私がずっと運んでたね」

「じゃんけんで勝負とか言い出したキタちゃんが悪い。それよりお宝を開けますよ」

 

 キューブの表面に触れる。

 パッと見、継ぎ目がなさそうに見えるが・・あった、隠しスイッチ発見。

 ピピッという電子音が聞こえた後、キューブの下部からコンソールが出現した。

 

「パスワード・・・?ブラックダイヤモンド・・・一発かよ!チョロ!」

「娘の名前は安直だよね~。愛されてるから嬉しいけどさ」

 

 チョロすぎるパスワードでロック解除。

 空気が抜けるような音が聞こえると同時に、キューブが展開し、お宝の姿が露わになる。

 中に入っていたのは3m級の黒い人型。

 古代遺跡から発見された素体を用い、現代の技術で再現し、復活させた自立行動型起動兵器。

 対騎神用だというのだから、DCみたいに遥か昔にもウマ娘嫌いの人間がいたんだなぁ。

 

「おお、こいつが・・・羅刹機アルクオン!」

「うはっ!カッケーー!!ロボだロボ!強そうだなぁ戦ってみたいなぁ」

「ええと、起動させるには・・覇気がいるんですよね、キタちゃんお願いします」

「嫌だよ!この子が大飯食らいだって知ってるもん」

 

 ちっ、知っていたか・・・

 起動実験を行った際、実験場にいた数十人の覇気を瞬時に吸い取り病院送りにしたんだよな。

 キタちゃんなら耐えれると思ったんだけど・・・わかりましたよ、ジト目やめて!

 

「では、少量のみを与えて様子を見ましょう」

「二人でやろうね。途中で逃げるのは無しだよ」

 

 アルクオンの中心にある球体、核触れて覇気を流す。

 これぐらいかな・・・いや、もうちょっとだけ・・・もういいよね。

 微かな駆動音、やった成功した。

 精悍な顔立ちのツインアイに光が宿り、ゆっくりと立ち上がるアルクオン。

 うお、でかいな・・威圧感パねぇ!既存のAMなんか目じゃない迫力がある。

 

「上手くいったね。それでこれからど・・・しよぉぉぉぉ!?」

「ふんがっ!?」

 

 え?え?ええええぇぇぇぇ!?何が起きたたたた・・・いっでぇ!

 

 理解が遅れる、どうして地面に顔から突っ込んだ!?

 アルクオンに二人まとめてぶん殴られたことに気付いたとき、奴はビルの壁を蹴りながら上昇、そのまま離脱していく最中だった。何その動き?巨体からは信じられない機動性してる。

 

「あ、逃げる!追いかけなくちゃ!」

「なめやがってぇぇぇ!持ち主に対する礼儀がまるでなっちゃいない!!」

「早く!早く行かないと!」

「ヤベッ!操者を先に見つけられたらヤバイ!」

 

 アルクオンは駆動燃料に大量の覇気を必要とする。

 そして、自立行動型兵器の奴は自分に覇気を供給する人間を求める。

 起動時はともかく、駆動中は基本的に人間からの覇気しか受け付けない(後に食わず嫌いだったことが判明)

 その習性を利用して、奴が見つけたであろう潤沢な覇気の持ち主を、先に頂いてしまおうと思ったんだが。

 

「横取り大作戦失敗!!」

「諦めんなよ!まだ終わってない!見ましたか、あいつの挙動?」

「うん、凄く早かった。なんか・・焦ってる?迷ってる?」

「その通り!多分あいつもう操者を見つけたんだ。でも、人が多すぎて混乱してる。逃げて行った方向から見て、操者はこの街にいる可能性大!」

「ならまだチャンスはあるね。でもどうしよう、しらみつぶしってわけにもいかなし」

「こんな時こそ直感頼み!強い覇気を持っている者同士は惹かれ合う。操者と愛バ、運命の相手ならば必ず出会える!まだ見ぬ絆を信じましょう」

「めっちゃロマンティック!!そういうの好き!!もうやけくそだぁーー!」

「私の操者様ーーー!サトノダイヤモンドはここですよーーー!早く見つけてくださーい!」

「キタサンブラックここにいるよ!操者になってくれる人、どこにいるの?出ておいでーーー!!」

 

 と、まあ最初は張り切ってがむしゃらに行動しました。

 街を駆けずり回り、少しでも覇気を感じたらその出所を探る。

 違う、コレジャナイ感、この人でもない、全然ちがーう!、ここにもいない、どこだ?

 

「ぜぇ・・はぁ・・い、いない」

「人多すぎ・・この中から・・探すの・・無理じゃ」

 

 日中の仕事を終えた人々が帰宅を急ぐ時刻になってしまった。

 振り出した雨が強さを増す中、びしょ濡れかつ泥で汚れた私たちは、やっとの思いで人気のない地下道入り口に辿り着いた。

 

「もう最悪!なんで私を道連れにしたの!というかなんで転んだの!」

「仕方ないでしょ、尾行されていたんですから・・はいコレ」

「・・発信機。フラッシュさんの仕業か」

「格納庫前で擦れ違ったから怪しいと思ったんですよ。こちらの動きは筒抜けですね、アルクオンの方は父様たちに任せていいでしょう」

「転んだように見せかけて発信機を壊した?・・・おい、本当のことを言え」

「ごめんなさい!滑って転んだのは天然ですぅ!その時に発信機を見つけて、言い訳に使いました!」

「最初からそう言ってよ・・ああもう、どうすんの・・今日はもうやめる?」

「そうですね、この地下道を抜けた先にビジネスホテルがあったはずです。そこに宿泊しましょう」

「子供だけで泊めてくれるかな」

「心配いりません。あのホテルはサトノ家の関連企業、支配人は私のことを知っていますから」

「名家のコネはありがたいね。よし、風邪ひく前にレッツラゴー!」

 

 追跡防止にスマホ置いて来た意味がなくなった。発信機かぁ、やられたな。

 迎えが来ないということは、父は私たちの自由行動を見逃してくれるらしい。

 アルクオンが一般人を襲うことがないよう、警戒もしてくれているはず。

 心配かけているだろうな。時間は明日までが限界か・・簡単にはいかないなぁ。

 

 本日の成果なし!そう考えると疲労度が増してくる。

 牽引しているスーツケース、普段は楽勝な重量、それすらもウザったい。

 

 アルクオンが収納されていたキューブ体は路地裏の隅に放置してきた。

 父が回収してくれていることを祈ろう。

 

 なんだか不気味な地下道だな。

 切れかけた蛍光灯の点滅や、薄汚れた壁、淀んだ空気が不快。

 さっさと通り抜けてしまおう。

 キタちゃんも同じ気持ちなのか、やや小走りに加速する。

 無駄に長げぇなこの地下道。

 

 (*´Д`)はぁ・・・嫌な空気だ・・濡れた服が気持ち悪いし、顔も汚れてるだろうな。

 タオルぐらいもって来ればよかった。

 一時の家出だと甘く見ていた、持ち物のチョイスを失敗。

 旅行や出張の前には荷物の確認と整理を心掛けるべきですね失敗失敗ww・・・し・・ん?

 

 ( ,,`・ω・´)ンンン?

 

 んん?・・・んんんんんんんんんんんんん???・・・な、なに・・これ・・ウソ・・?

 

 そんなまさか・・・これ・・・覇気か!?

 

「ダイヤちゃん!!!」

「ステイ!」

「ぐぇ!なんで止めるの!!」

 

 遅れて気付いたキタちゃんの耳を引っ張って動きを止める。

 顔を近づけて、小声て喋る。

 遠くからこちらにやって来る、彼に気付かれないように。

 

「前から来る、男性、10代後半から20代前半、長身引き締まった体、恐らく〇貞」

「そんなんどうでもいい!!は、覇気が・・覇気が桁違いだよ!!なんで?どうしてコレに、今まで気づかなかったの?ありえない!!」

「かなり高度な術ですね。目視可能距離まで近づかないと、判別不可能な細工が施されている」

「え、じゃあ向こうは私たちにもう気付いてるかも?どうする?声かけてみる」

 

 これは行くべきか・・いや・・この異常な覇気を出している人間からすれば、私たちなど歯牙にもかけられないかも。

 感じたことのないプレッシャー。この覇気はヤバイ、ヤバすぎる!

 この人間から覇気を乗せた殺気を向けられたら、冗談抜きで心臓発作起こす自信がある。

 こ、殺される・・体を掴まれて、無理やり覇気を流し込まれただけで、神核が内側から崩壊しそう。

 それほどまでに凶悪、大出量、大出力の覇気を垂れ流している。もうすぐそこまで来ている。

 逃げるべきだ・・・この人間には関わってはいけない。 

 まともなウマ娘なら、隠れて逃げてやり過ごすのが賢い選択。

 

 ・・・まとも?・・・はっ!私には当てはまらない言葉ですね。

 

「行くぞ。彼こそ待ち望んだ操者です」

「え?そこは慎重になる所じゃないの?いつもと立場が逆じゃね」

「ビビっているなら来なくていい。私が操者を手に入れる瞬間をアホ面で見てろ」

「はぁぁぁぁ!!?ビビッてねーし!!先に見つけたの私だし!ダイヤちゃんこそどっか行ってよ!」

「ほざけ!先に見つけたのは私だ。とにかく彼は私の操者!これもう決定事項だから」

「私のだよ!!絶対私の方がいいって言ってくれるはず」

「いや、私が」

「私だって」

「「・・・やめよう」」

 

 こうして揉めている間にも近づいて来る。

 どうしよう、ああ、こんなずぶ濡れの汚れた顔で会いたくなかったぁぁぁ!!

 第一印象は大事なのに・・初見のファッションがこれだなんて・・ヒドイ。

 

 マジかよ!キタちゃんも同じ人を希望している。・・・戦争かなこれは。

 お互いに足を引っ張り合って、結局、契約出来ず仕舞いだ、なんてことにならないようにしなければ。

 クソっ!恐れていたことが現実になった・・・好みが被るのはわかっていたのに。

 私もキタちゃんも、この僅かな時間でもう決めてしまっている。

 まだ顔もよく見てないのに、性格もどんな人なのかわからないのに、膨大な覇気から感じる力に魅せられてしまっている。

 完全に酔ってる、虜になってる、この覇気を自分のために回してほしいと思ってる!!

 

「争ってる場合じゃないです。休戦協定を結びましょう」

「オッケー。思ったんだけどさぁ、この覇気だと私たち二人ぐらいなら余裕じゃない」

「でしょうね。この質と量なら10以上の騎神を従えても不思議じゃありません。ですが・・・」

「独占欲発動?」

「それなんですよね。譲りたくない感が凄いんです!束縛もしたいです!」

「ヤンデレ素養があったんだね。気持ちは物凄くわかるよ」

「病んでません、デレデレですから」

「はいはい、とりあえず話してみようよ。それから契約して、最終的にどっちがいいか選んでもらうってのは・・どう?」

「その案を採用します!まあ、勝負は既についてますがww」

「その余裕が泣き顔に変わる瞬間を見てあげるねwww」

「何だとコラ!今ここで泣かせてやろうか!」

「やってみろよサトイモがぁ!!」

「「・・・やめよう」」

 

 おかしいぞ、二人とも妙なテンションになってる。

 話したこともない人を巡ってケンカとか、相当ヤバイ奴らだ。

 くっ、それもこれも、前方から漂ってくる覇気のせいだ!思考回路がショート寸前!!

 私たちいつも以上に頭悪くなってるーーー!!!

 

「ちょ、来るよ来ちゃうよ。ど、ど、どうすればいい?」

「一旦スルーしましょうか。その後、彼を尾行して家を突き止める。今日はホテルに泊まって、明日サッパリした状態で改めてご挨拶を・・・ダメだぁ!その間に別のメスウマやアルクオンに取られると思ったら、ホテルでグースカ寝るなんてことできっかよぉ!!」

「だよね!行くっきゃないよね!!」

 

 お互い自然と手を繋ぐ、ちょっと震えてるのが伝わるだろうか、なんだキタちゃんもかよ。

 

 (よし、行こう)

 (行きましょう)

 

 彼がドンドン近づいて来る。どうやら向こうもこちらに気付いた模様。

 

 (こっち見た!見た!)

 (見ましたね・・なんかちょっと動揺してますよ)

 

 もうちょっと、もう少し・・ああ、みっともない恰好を見られてしまう。

 

 (匂いがする!これあの人の匂なの!?うわぁぁぁぁぁ!!めっちゃいい匂いだぁぁぁ!!)

 (し、信じられない。これが男から出た匂いだと・・ご飯三杯はお代わり余裕っスわ!!)

 

 うそやろ!?今まで嗅いだことない匂いが鼻腔をくすぐる。

 これがフェロモンとかいうやつか?すげー落ち着くし、いつまでも嗅いでいたい。

 全力深呼吸で肺を満たしたい!このアロマどこに売ってますか?一生分買います!!

 

 (顔!顔が見え・・がっはぁぁぁぁあぁぁ・・・あがががあががが!)

 (・・・//////////////////////////////////////////////ボンッ!!!)

 

 チラッと見えた顔に二人とも轟沈ですわ。

 

 (超絶美形というわけじゃない)

 (モデルやイケメン俳優という感じでもない)

 (でも、優しそうな目・・凄くキラキラしてる。髪の毛キレイ、うる艶)

 (パーツのバランスが絶妙、大人っぽくもちょっとだけ少年の可愛さを残したような)

 (タイプだ・・・)

 (めがっさ好みです)

 ((きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!!超カッコイイィィィィィィィィーーー!!!))

 

 ダメだぁ!ダメだぁ!だめだぁぁぁぁ!!!

 本で読んだ通りになってる!相手の全ては愛おしいとはこのことか。

 一目惚れ!!いや、よく見る前、覇気を感じた時から好きでしたぁ!!

 

 (キタちゃん)

 (何?)

 (私、あの人と結婚します。招待状送るから式には来てね)

 (アッハッハッハッ、ワロスワロス~葬式には出てあげるよ。天国から私たちのハネムーンを見ててね)

 (子供を残して死ねるか!私とあの人の遺伝子を後世に残すのが使命なの)

 (知ってる?劣性遺伝子は自然淘汰されるべきなんだよ、子作りと子育ては私がやるよ)

 

 もう結婚式場へのゴールインから孫に囲まれた余生までシミュレートしたわ。

 気が早い?ライバルのメスウマが隣にいるんだぞ!悠長なこと言ってられるかぁ!!

 

 妄想とケンカで時間を食い過ぎた。

 気づけばもう目の前・・・ヤバイ、心臓の音聞こえてないよね。沈まれこの不整脈がぁぁぁ!!

 そして・・・アッサリ擦れ違った。

 

 (おぃぃぃぃぃ!無言かよ!なんか言えよ!)

 (切り込み隊長はキタちゃんでしょうが!ビビッたなてめぇ!!)

 (そっちこそ!手汗がさっきから酷いんだよ、ウエットマンがよぅ)

 (ウェットウーマンじゃボケ!誰が"湿った手の女"か!)

 (フォークダンス拒否られるよww)

 (バッカおめぇ!私と手を繋ぎたくてクラスの猿(男子)ども殴り合いしてただろうが)

 (あの暴動はそういう経緯があったんだ・・・)

 

 手汗じゃねーよ、雨だよ雨・・・もしくは大気中の水分が、潤いをくれたんだよ!

 体育祭で猿どもがケンカしていたのは事実だ。

 私もしくはキタちゃんとの、学校行事だから合法握手を巡って順番争いが起こったんだよな。

 結局、私とキタちゃんがずっと固定で踊るハメになったけど!

 

 ああーー!!バカなこと考えている隙に、私の操者がぁぁぁぁぁ!

 

「なあ、大丈夫か?」

 

 おっと、突然のイケメンボイス~。んん?どこから聞こえて来たのかなぁ・・・マジで?

 声かけられたぁぁぁぁぁ!!

 どどどど・・・どうすんのこれ・・・どうしたらいいの?

 

「大丈夫って」 

「私たちの事ですか」

「いや、お前ら以外誰がいるんだよ」

 

 なんの面白味もない返答してしまったぁ!バカバカ!私たちバカ!

 お・ま・え・ら お前らって言われたぁぁぁ!うひょー認識されてるぅ!それだけでメッチャ嬉しい!

 これはアレだ、人気アイドルが突然自分の名前を呼んでくれた。それに匹敵する奇跡だ!

 会話、会話しないと・・・ああ、いつもよく回る舌が動かねぇ、どうなってんだくそがぁ!

 

「もう一回聞くぞ、大丈夫か?」

 

 う~ん、いいお声ですね~。クールでキリっとしてて、それでいて熱血なシャウトも得意。

 ああ、なぜだろう・・・緑の川が見える・・グリーンリバー・・略してグリババ。

 スパロボガチ勢ってホントですか?グリババ様。

 

 (耳から出血しそう・・鼓膜が痙攣起こしてるよ)

 (待て!まだ逝くのは早いぞ!「受け入れよ」って言われてねぇだろ!)

 

 彼との距離が近づいた瞬間。五感の全てにノイズが走る。

 ゾッとするような感覚に襲われた・・・これは警告、彼を大事に思う誰かの警告だ。

 マーキングのメッセージ!?それも超強力なヤツを前にして冷や汗が止まらない。

 

 『覚悟無き者は去れ!!!』

 

 短くも強烈な想いを込めたメッセージ。これを刻んだのは超級クラス?いやもっと上の化物!?

 これを読んでなお、彼に手を出そうとするウマ娘はいないだろう。

 今まではそうだったのかもね、でも今は私たちがいる!この程度の脅しに屈するかぁ!!

 

 (正直ブルってる)

 (私もです。この人は一体何者なんでしょうか・・・)

 (やめとく?)

 (まさか!覚悟なら既に完了してます)

 (言うと思った。私だってやっちゃうよ)

 

 この人が誰だろうと関係ない、強い何者かに守られているなら、それほどの貴重な男だって証拠。

 なおさら興味が出てきた。

 

 私たち二人はもうメロメロのメロよ・・・この後、何がどうなったのか実はあまり記憶がない。

 

 通報されそうになって、免許証盗んで、コンビニいって、お持ち帰りされて・・・

 彼の一挙手一投足に気になって、その優しさと人となりに触れて、わがまま言って困らせて。

 

 夢みたい、これは本当に現実なの・・・私、女の子でよかったなぁ。

 

 シロ、シロ、シロ、シロ、シロ・・・私はシロになった。キタちゃんはクロ。

 愛称、彼がくれた初めてのプレゼント、先代がカナブンなのは気にしたら負け!!

 シロは全然真名と関係ないけど、サトとかダイとかモンドよりマシと思うことにする。

 彼にシロって呼ばれる度、体がビクンッてなる。心の中では元気よく挙手&起立してますぜ。

 

 彼の名前も知った。絶対に忘れない魂に刻み付けた大事な名前。

 何度も何度も何度も、頭の中で繰り返す。

 マサキ、アンドウマサキ、マサキさん、マサキさん、マサキさん・・・ウェへっへっへ・・・。

 

「ダイヤちゃん?入浴中にガンギマリするのやめてくれる」

「ヤク中じゃねーよ。それと、ダイヤじゃなくてシロです。お間違えなきように、クロちゃん」

「そうだったね。クロかぁ、ジージが呼んでくれていたなぁ、えへへ」

「ダイヤ改めシロです!マサキさんの愛バのシロをよろしく」

「うっわ!クソウゼェww自称愛バが何か言ってるww」

「妖怪乳首削りは黙ってろ!再生しなかったら一生恨むからな!」

 

 当初の予定とは違ったが、いい感じで事が運んでいる。

 出会った当日にお持ち帰りからの~お泊りコンボが発生!契約までまっしぐら!

 

「うーん。なんか違うなぁ」

「どしたの?」

「いや、このボディーソープやシャンプーもいい香りだけど。マサキさんの匂いじゃない」

「わかるぅ~。察するに、アレはマサキさんの体からにじみ出る天然のフェロモンですよ」

「・・・マーキングのやり方知ってる?」

「そう来ましたか・・・書物の知識なら少々」

「それでいいから教えて、自分の匂いをマサキさんに付けたい、混ぜ混ぜしたいぃぃぃぃ!」

「この欲張りさんめ!だが同感じゃい!所有権を主張するためにも、早いとこやっちまいましょう!」

「名付けによっと少し覇気が循環したけど、どうよ?」

「いい感じです。拒絶反応なし、不快感なし、なんか肌がツヤツヤしてきた」

「私はなんかポカポカするよ。神核があったけぇんだ・・これがな」

「二人ともいけそうですね。勝負は明日です」

「うん。なんとか契約してもらおう」

 

 風呂上りには更に嬉しいことが待っていた。

 ブ、ブブブブブ、ブラッシングだとぉぉぉーーー!!!いいんスカ?やってもらっていいんスカ?

 お金払います。払わせてください!え、無料?・・・ここが天国か・・・・

 ブラッシングはいつも、セルフかキタちゃんとかわりばんこしている。

 それが、マサキさんの手にかかれば・・・究極のリラクゼーションタイムに早変わりぃーーー!!

 あびゃーーー最高すぎる。至福のひと時をどうもありがとう。生きててよかったぁ。

 彼の匂いに包まれて、優しく優しくブラシをかけてもらう。あう、マッサージまで・・・

 もう腰砕けですわ!調子にのって寄りかかっても許してくれる、あ、頭撫でてくれた。

 

 (シロちゃん!シロちゃんってばよ!)

 (何?今いい所だから邪魔すんなや)

 (鼻wwマサキさんの鼻がww毛がwww)

 (ハナ?何を言って・・・)

 

 ブハッ!・・・・・クッ・・アハハハハハハハハハハwwwやめてくださいーー!!!

 

 よし、顔には出てないな。よく我慢したぞ私!

 マサキさんの・・・は、鼻毛がwwピョロピョロしてるぅwwww

 どういうことなの?それはひょっとしてギャグでやっているのですか?

 わ、笑ってあげた方がいいのかな・・いや、この様子だと気づいていない。

 教える?でも、それだとこの至福の時間が中断してしまう・・・スルーしておこう。

 おい!クロちゃん!ジェスチャーやめろ!見ないようにしているんだからやめて!

 

 笑いをこらえるのに必死だったが、とても充実したブラッシングでした。

 

 その後、真名を名乗りご挨拶。鼻毛も指摘してピザで夕食パーティー。

 クスハ汁・・・これ造った奴アホだろ。製造者は無駄に揺れるカットインの乳女だな。

 

 うまぴょいwww計画www腹がよじれる程笑ったのは久しぶりだ。

 アンドウマサキさんが木原マサキさん(天)になりかけたwww

 

 夜、マサキさんのお布団で就寝。

 ふぉぉぉぉぉぉぉぉ!!この布団すごいよ!マサキさんの匂い100%スパーキング!

 グェフェへへへへ・・・ヤベェよだれが出ちまう。

 

 隣室で電話を終えたマサキさんは私たちを一撫でして眠りにつく。

 ・・・紳士ですね・・・手を出してくれてもいいんですよ。バッチコイですよ!!

 ふぁぁぁ・・ねむねむ・・今日はいい夢が見られる気がする。

 

 翌日早朝。

 

「寝顔、可愛すぎんかコレ」

「無防備なマサキさん・・・ゴクリッ」

 

 早起きした私たちは、寝ているマサキさんの顔を覗き込む。

 か、かわええ!何だこれ何だこれ、年上男性のあどけない寝顔・・くそぉ!スマホがねぇ!写真撮りたい!

 急にクロちゃんがマサキさんの首へと顔を近づけた・・おい!

 

「ちょいちょいちょい!何しとんねん!」

「いや、首筋を噛むならこの辺かな~と」

「寝ている時にやるのはイカンでしょ」

「本番前のシミュレートだよ。ここの血管から吸血すればいいのかな」

「どアホぅ!そこは動脈だ。そこは避けてですね・・えーとこんな感じで」

「あー抜け駆けはダメだよ!」

 

 目を覚ましたマサキさんにアイアンクローされました。握力強いですね。

 

 朝の身支度を整える。

 マサキさんの着替えはもちろんガン見しました。ゲヘへ、朝から眼福眼福。 

 お返しに私の着替えをガン見してくれていいんですよ。

 あら、割と興味もってくれてます?ほうほう、これは脈ありですね。

 

 朝食は旦那様の手作り・・・フレンチトースト美味し!毎朝でも食べたいです!

 料理かぁ・・マサキさんが喜ぶならやってみる価値ありですね。

 

 お金は受け取ってもらえませんでした。

 私たちを認めてくれる・・・嬉しい、彼の優しさが、その誠実な心が、堪らなく嬉しい。

 「大好きです」なんて口走ってしまった。本心からですよ・・父にだって滅多に言いません。

 人生初のマーキングは上手くできたかはわからない。

 どうせ、これから何度でもやる気だし、いいか。

 

 アルクオンの捜索。 

 これってデートですよね?あ、余計なクロい子もいますが気にしたら負けです。

 街を巡る、彼の隣を歩く、楽しく会話する、笑顔を向けられる、一緒に笑う。

 デート・・いいものですね。

 

 アルクオンは来ないか・・

 特殊なセンサーでも備えているのか、奴は隠蔽術が施されたマサキさんの覇気に気付いていた。

 もっとも精度の方は低いらしく、個人をドンピシャで特定することは不可能なようだ。

 昨日の逃走劇も大体の当たりをつけて飛び出していったが、マサキさんを発見することは叶わなかった。

 残念でしたね、操者との縁は私たちの方に分があったな。

 起動時に私たちが与えた覇気は少ない、予備バッテリーのような機構が備わっていたとして無駄遣いはしないだろう。

 人が襲われたというような事件事故も皆無、対騎神用なので人間を攻撃しないように設定されているのかも。

 まあ、破壊されそうになったら防衛機構が働いて人間にも反撃してきそうではあるが。

 父たちがアルクオンを確保してくれることを期待するか。

 

 楽しい時間は早く過ぎ去るって本当ですね。

 マサキさんから借りたスマホで、家に連絡をいれた「こっちは大丈夫なので羅刹機をよろしく!」とだけ言っておいた。

 契約!契約をしないと・・どうやって切り出そう・・・

 

 マサキさんについて少し不可解な点がある。

 彼は自分が出している異常な覇気に気付いていない。感じ取れないようにされている。

 恐らく、マーキングで警告メッセージを刻んだ相手の仕業だ。

 何の意図があってのことだろう?自身の覇気で思い上がらないための処置?それともただの過保護?

 どちらにせよ、彼を守ろうとする意志は伝わってくる。

 どなたかは存じませんが、ごめんなさい。あなたが厳重に封をした扉、私たちが開けちゃいます!!

 

 ・・・戦闘になってしもうた。

 マズったな「首を噛ませてください」じゃなくて「吸血してもいいですか?」にすればよかった。

 あーあーもう、クロちゃんのスイッチを入れちゃったよ!ケガさせないようにしないと。

 あら、思ったよりやりますね。昨日の地下道でもそうでしたが、身のこなしが様になっている。

 格闘の心得がある、目線だけでなく耳と尻尾に注力していることから、対ウマ娘戦の知識もあり。

 覇気を感じていないんですよね。それでこんなに動けるの?

 これで覇気が使えるようになったら・・・想像しただけでワクワクが止まりません!!

 うわっ!容赦なく顔面狙って来た!必死な表情・・ああ、いいですね・・・

 クロちゃん、交代してください。私もマサキさんと遊びたい!!!

 

 操者になるメリットを提示したら、アッサリ了承してくれました。やったね!

 よかったぁ。私たちのことを気に入ってくれたんですね。

 これからは愛バとして、たっぷりご奉仕しますね。どうか末永く可愛がってください。

 さて、契約しないと・・・き、緊張しますね。

 

 最悪のタイミングでアルクオン襲来・・・貴様見ていたな!この覗き魔が!

 もうちょっと待てなかったんですか!!ちくしょう!

 マサキさんが狙われてる!「わ・・私のだぞッッッ!!!」

 

 アルクオンはクロちゃんに任せて逃げることにした。

 いっそのこと共倒れしないかな・・いや、嘘です。ちょっとそれもアリかと思っただけです。

 うげっ!こっちに来やがったか・・・クロちゃーん何やってんの!!

 ボール扱いされた、うぇっぷ・・吐きそう。

 

 助っ人が来てくれた、その名はボンさんw

 契約する時間を稼いでくれるみたいだ、ありがぇ!

 

 やっとこの瞬間が来ました。

 私は、私たちはマサキさんのものになる。だから、私たちのものになってください。

 

 激痛でマサキさんが暴れそうになるのを抑え込む。逃がさない。

 彼の絶叫を聞きながら、牙を立て、血をすする。熱い、命の味、もっとほしい。

 ちょうだい、あなたの全て、その命をちょうだい、はぁ////凄く気分がいい////

 混ざる、私たちと彼の覇気がぐちゃぐちゃに混ざって溶けて一つになる。

 感じる、なんて凄い覇気、神核は想像を絶する複雑さと強度を誇り、ギラッギラに輝いている。

 頭が沸騰する、堪らない恍惚感に全身が痺れる。

 痛くしてごめんなさい。でも、止めない、止められないの。

 

 「いいぜ・・・全部もっていけ・・・」

 

 契約完了・・ですね。

 

 気絶したマサキさんを残し、私たちは走る。

 ボンさんと合流して、あのポンコツを倒さなくてはいけない!

 

「今の私は気力200オーバーです。アルクオンがなんぼのもんじゃい!!」

「うーん。気分爽快!最高だよ!操者の覇気をもらうってこんなに気分がいいんだ!」

 

 まだこんなもんじゃないはず。

 気絶中にも関わらず大量の覇気が供給されてくる。

 マサキさんが意識的に覇気を回したら・・・は、破裂したりとか、しないですよね・・あはは。

 

 おいおい!三人がかりだぞ!羅刹機パねぇな!誰だこんなもん造ったバカは!

 わかってまーす!復元したのはサトノ家でしたね・・・/(^o^)\ナンテコッタイ

 クソォ・・・腕が上がらない・・ヒビが入った。痛たた。

 

 ボンさんもクロちゃんもやられた・・・私もピンチ。

 息がっ・・絞殺なんて冗談じゃない・・苦し・・せっかく・・会えた・・のに・・

 これから最高の愛バライフが待っているのに、こんな所で終わりたくない!

 嫌だ、離せこのポンコツ!!私の命はもう私だけのものじゃない!あの人の、マサキさんのものだ!

 てめぇなんぞにくれてやるほど安くないんだよぉ!!

 

「おい!なに人の愛バ勝手にボコってんだ」

 

 やられる!と思った瞬間、一番聞きたかった人の声が聞こえた。

 首の締め付けから解放され、優しく抱き留められる。

 守るべき操者に助けられるなんて情けない、弱い自分が心底嫌になる。

 それでも、この瞬間に幸福を感じた。

 ピンチに駆けつけたヒーローに救われるヒロインみたい、憧れのシチュエーション(゚∀゚)キタコレ!!

 それが嬉しくて、嬉しすぎて、普通の女の子みたいにウットリしちゃった。

 

 母様・・・私、見つけたよ・・・ちゃんと出会えたよ。

 

 でもね、少しだけ違ったの。

 

 私の前に現れた人はね・・母様が言ってたよりも、もっとずっと・・・

 

「解体するぞ!コノヤロウ」

 

 最高に素敵な人だった。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 アルクオンを倒した後、天を衝く光の柱が出現した。

 その発生源は、雄叫び上げる私たちの操者だ。

 シロちゃんはその光景をウットリしながら見つめている。メスの顔しやがって!

 私はもう、嬉しくって、嬉しすぎて、自分が手に入れたものの大きさに震えた。

 うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!うおわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 心の中で私も絶叫している。興奮冷めやらない、冷めることなどありはしない。

 

 ジージ・・・私、見つけたよ・・・ちゃんと出会えた。

 

 自慢したいなぁ。私のだよ!すごいでしょって。

 

 今ならわかる。あの言葉の意味が・・・

 

「ジージ、きっと腰を抜かすなぁ」

 

 だって、彼は・・・信じられないぐらい大きくて大きくて・・・

 

 最高に"でっけぇ"男だったから。

 




クロ「シロちゃん視点長くない?」
シロ「気のせいです」
クロ「どう見ても長いし多いよ!なんで優遇されてるの!」
シロ「私がメインヒロインですから。サーセンwww」
クロ「マジか・・・作者はサトイモ好きか・・・マジかぁ・・・」
シロ「クロちゃんのサポカガチャで、爆死した恨みもあるそうですww」
クロ「ひぃ!ゆるしてゆるして、弧線のプロフェッサーあげるからぁ!!」
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