俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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大きいことはいいことか

 ああ・・・そうだ・・・思い出した。

 私とあいつは、あの人の愛バになったんだ。

 三人一緒ならどんな困難だって乗り越えられる。

 きっと輝かしい未来が待っている。そう信じていた。

 

 手にしたものの大きさと、支払うべき代償から目を背けながら。

 

 最低だ、最悪だ、なんてザマだ。

 ずっと一緒にいるって誓ったのに、たくさん笑顔にしてあげたかったのに・・・

 

 離れ離れになった。

 寂しい思いをさせた。

 彼を泣かせた。

 守るべき彼が戦って傷ついている時・・・その場に私はいなかった。

 

 私のせいだ、私のせいだ、私が弱かったから、私が・・相応しくなかったから。

 

 操者を得て強くなった気分でいた。

 愚か過ぎて笑えもしない、ただ彼の力に飲まれただけだ。

 結局、私程度の雑魚が愛バになっていい存在じゃなかったんだ・・・

 分不相応、運命の相手が聞いて呆れる。ホントお前じゃねぇ座ってろだ。

 

 旅の最中、彼はたくさんの騎神に会っていた。

 その中には、私よりもずっと強くて才能溢れる子が何人もいた。

 私じゃなくてもよかった・・・彼を愛し守ってくれる存在は、他にもいたのに。

 

 それに、私とあいつは・・・を・・・滅ぼした・・・だ・・から。

 

 だから・・・

 だから・・・

 だからって・・・・

 

「諦められるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 反省はした!後悔もした!泣き言はもういい!

 知ってたわ!わかってた!最初から覚悟していた!

 

 彼という存在に、私ごときが釣り合うなんて、ありえないって!

 

 それでも・・・

 

 彼がいい!彼がほしい!彼じゃないとダメなんだ!彼がいてくれないと嫌だ!

 

 このままではダメだ、そう思ったから変わろうとしたんだろう。

 本当に愚かで、汚くて、浅ましい。

 彼のためではなく、自分のために眠りについた。

 全ては私のわがまま、醜い願望を叶えるため起こした行動。

 狂ってる、どうかしている。

 大事な人といたいがために、大事な人を傷つけるなんて。

 

「ここまでやって、失敗するわけにはいきません」

 

 必要な糧は集まった。彼が苦労して集めてくれた。

 時は満ちた、もう十分だ、ここから出なくては、動け、動けよ!

 あいつはもう動き出してるぞ!!

 そうだ、あいつだ!私の同類、私の片割れ、私と同じ結論を出した。

 もう一人の最低野郎!

 負けるか、負けてたまるか、独り占めは許さない!!

 

 あいつだけじゃない、他にもいる!

 彼に魅せられたライバルが、眠りを必要としない同類が。

 きっと強い、今の私じゃ勝負にすらならない上位存在。

 負けたくない、負けたくない、私だって・・・彼の・・・

 

「愛バなんだから!」

 

 体、そうだ、強い体が必要だ。

 こんな小さな体じゃ守れない、こんな弱い体じゃ戦えない。

 造ろう、最初から何もかも造り直そう。

 

「ぐっ・・・あっ・・・つ・・・」

 

 痛い、痛い、痛い。

 分解からの再構成、生命の理を飛び越える神秘の反動が痛みという信号を送って来る。

 魂を、私という概念そのものを削られるような痛み・・気が狂えるならどんなに楽だろう。

 無理だ・・耐えられない・・どうして・・こんなの意味無い・・もうやめよう。

 ああうるせぇ!弱い私は黙ってろよ!

 

「・・ぁ・・この・・・」

 

 噛みついて契約した時、彼はもっと痛かったはずだ。

 それでも、受け入れてくれたんだ。

 私たちを思って泣いてくれた、何度も何度も泣かせた。

 その悲しみに比べたら、この程度の痛みが何だというのだろう。

 

 もっと大きくて強靭な体。挫けることを知らない強い意思。

 あの人の全てを受け止められる強い体と心が・・・ほしい。

 

 肉体を再設計、強度と柔軟性の確保、■■■の起動を準備、実現可能のため○○%大型化。

 外界からの接続を認証・・・神核の更新と最適化を実行。

 要領の増設、処理速度を高速化・・・を取得・・・を実行・・・を選択・・・の削除。

 

 魂が軋む、痛覚をもった意識をミキサーでゴチャ混ぜにされたような不快感。

 熱せられ、冷やされ、伸ばされて、固められ、ぐちゃぐちゃにされる。

 情報の混濁・・・感じているのもが痛みであったのかもわからなくなる。

 

「・・サキ・・さ・・ん・・・マ・・」

 

 声にならない声であの人の名を叫ぶ。

 あの人の顔、声、体、匂い、覇気、仕草や癖、細部まで思い出す。

 大丈夫・・・大丈夫・・・まだ全然大丈夫。

 こんな所で止まっていられない、だから邪魔をするな。

 行かなくては、ここから出なくては、だって、だって私は・・愛バで。

 

 サトノダイヤモンドは・・・アンドウマサキの・・・

 

「マサキさんの所有物なんだから!一緒にいないとダメでしょうが!!」

 

 所有物の所は、恋人、嫁、妻、番、でも可です!!

 おっし!これぐらいでいいだろう、後は出たとこ勝負でなんとかしてみせる。

 こんな辛気臭い所さっさとおさらばだ!

 あーーーー!あいつがいない!出遅れた!急がないと!

 痛み?喉元過ぎれば熱さを忘れるってやつですね。

 

「マサキさん・・・今行きますからね」

 

 意識が覚醒していく、夢の終わり、目覚めの時だ。

 ここでのことを目覚めた自分は覚えていない、そんな気がする。

 でも、きっとこの気持ちは、マサキさんへの想いは変わらない。

 それだけで十分だ。

 

 ただ一つだけ気掛かりなことがある。

 

「小さい体の方かお好みでしたかね」

 

 ロリコン、卒業してくれますか?

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「あ・・う・・・ぁ」

 

 眩しい、ここは何処だろう、私は・・・

 

「あ、起きた!シロちゃん、私だよ!わかるよね」

 

 シロ・・・そうだ、私はあの人のシロだ。

 曖昧だった意識がクリアに、そして記憶の整理整頓が始まる。

 私はサトノダイヤモンド、マサキさんの愛バで、眠たくなってそれで・・クロちゃんも。

 いつも隣にいた相棒はどこだ?

 それに、マサキさん!私の操者はどこにいる!?

 

「う、ぐっ・・・」

「ああ、無理に起きない方がいいよ。寝たきり生活が長かったからね」

「あなた・・誰ですか・・」

 

 布団に寝ている私を覗き込む、黒髪美人のお姉さん。

 この人が看病してくれたのだろうか?

 凄く綺麗な人、それに愛嬌もあって可愛い。紅い瞳はルビーみたいに輝いている。

 ん?この顔・・・いやいや・・・いやいやいや!

 

「あの、知り合いの子にそっくりなんですが・・・お名前を伺っても?」

「まだ寝惚けているんだね。クロだよクーロ!あなたの親友で部下で姉妹でマサキさんの愛バ」

 

 口調と匂いも知っているものと一致!ああーーー!そんなまさか・・・

 

「真名キタサンブラックだよ。忘れたとは言わせないよ、サトノダイヤモンド」

「嘘だ‥‥‥夢だろ‥‥これ‥‥夢に決まってる‥‥‥‥‥!」

「ところがどっこい‥‥‥‥夢じゃありません‥‥‥‥! 現実です‥‥‥! これが現実‥!」

 

 なんでさ!何が起こった!ついさっきまで、ちんちくりんだったはず!

 それがこんなに大きくなっているだと!背ぇ伸びたなぁーー!大人びたなぁ!それに・・・

 

「なんだそのワガママボディは!ボンッキュッボンッか!スタイル抜群かぁ!」

「表現が古臭いな。そっちだって、人のこと言えないじゃん」

「はい?私は今日も若くてプリティ・・な、なんじゃあこりゃぁぁぁ!!!」

「そのリアクションはもう私がやったよwww」

 

 目の錯覚だろうか?腕がなんか長い、ペチペチと自分の顔に触ってみるが、こんなんだったか?

 足先の感覚、いつもより距離があるような、あれあれれ?

 一番気になる場所に触れてみる・・・フニョン!・・水風船?なぜ胸部装甲に風船が・・・

 あ(察し)こいつは私が憧れた女の武器、ズバリ!おぱーいですね。あはははは・・・すげぇなコレ!

 

「自分の胸に夢中とかキモイよww」

「いやだってコレ凄くない?凄いよね、ねぇ!!」

「はい凄い凄い。垂れないように気を付けてね」

「ブラをブラジャーをください!こんな凶器を生で放り出すなんてとんでもない!!」

「寝起きなのにテンション高いわね~」

「あ、サイママ」

「お義母様!」

 

 おぱーいに興奮していたら、銀髪の美人が部屋に入って来た。

 マサキさんの母親、サイバスター様だ。

 ハートさんに続き、いずれ私の母になってくれる偉大なお方です。

 

「急成長でビックリしたのはこっちの方よ。動けるならまずはお風呂に入ってらっしゃい」

「お、お見苦しい所をお見せしまして・・・あのマサキさんは?」

「その話は後にしましょう、まずは身なりを整えてからね」

「は、はい」

「動ける?手を貸そうかシロちゃん」

「いえ・・よっと・・・大丈夫みたいです」

 

 クロちゃんに気を遣われながらも、立ち上がる。うわ、目線が高い!落ち着かねぇ!

 

「すぐに慣れるよ。私の時もそうだったから」

「だといいんですけどね」

 

 入浴中にも考えを巡らせる。クロちゃんは私より数時間早く目覚めたようだ。

 私とクロちゃんの身に何が起こったのか、あれから何日経った?

 マサキさんは?・・・マサキさん・・・リンクが切れてますよ・・どこにいるんですか。

 

「うん・・・しょっと」

 

 風呂上りに柔軟体操。なんだか体がバッキバキだわ!固い~固いよ、凝り固まってるよ。

 自分の体のはずなのに違和感ありすぎ、馴染みきっていない新品?そんな感じがする。

 用意してもらった服、どこがとは言わないが少々キツイ。

 義母様いわく「今はこれで我慢して」だそうだ。私の胸を見て舌打ちしたのは気のせいだと思いたい。

 全身が映る姿見で自分の体をチェック。

 

 私の体がアオハル大爆発してる!もしくは、ワープ進化で幼年期から究極体に!

 ウォーサトイモン・・・メタルサトイモン・・・おバカ!サトイモンはねぇよwww

 

「やだ、これが私・・・う、美しい////」 

 

 美少女や!美少女がおる!ロリから一皮も二皮も剥けて、美人度がアップし過ぎてますね。

 もちろん可愛さも絶妙なさじ加減で残ってます。

 それにこのナイスバディ!そのおぱーいで騎神は無理でしょ?って言われちゃう!!

 うむ、しっかりバスト87だな。予測通りの結果で満足だ。

 顔よし!スタイルよし!性格も・・いいはず!こりゃ男どもが放っておかないぜ!!

 やめて!放っておいて!私がモテたい人は、この世にただ一人だけなの!!

 

「マサキさん、喜んでくれますかね?貧乳派とか言われたら泣く」

 

 リビングに向かうとテーブルの上に御馳走が並んでいた。

 うはっ!美味しそう。なんだか急にお腹が減ってきた。

 義母様は手際よく食事の準備を整えており、それをクロちゃんが手伝っている。

 

「あら、もういいの?どれどれ・・・いいわね、文句なしに可愛いわ!」

「ありがとうございます。私もお手伝いします」

「ならこれと、それも運んでくれる。簡単なもので悪いけどご飯にしましょう」

「サイママ、料理上手~。でも作り方独特~」

「美味けりゃいいのよ、美味けりゃ」

 

 メニューは日本の家庭料理、いわゆるお袋の味の見本市。

 味噌汁、ご飯、肉じゃが、おひたし、焼き魚、漬物、他にも大皿に乗った煮物や佃煮や副菜が多数ある。

 あぅ・・・マジで美味しそう。こういうのでいいんですよ!日本人でよかったぁーー!!

 

「「「いただきます」」」

「お代わりもいっぱいあるからね。遠慮せずにじゃんじゃん食べて」

「はい・・・う、うますぎるぅ~・・・いったい何日ぶりの食事なんだ!」

「美味ーい。思わずガッついちゃう!はふぅ~幸せ」

「お口に合って何よりだわ。そうだ、ドウゲン君たちにはもう連絡したからね、きっとすぐに来てくれるわ」

「パパ、それにママも」

「ありがとうございます。ああ、メシウマな義母様、素敵です」

「サイでいいわよ、様付けって苦手だからね」

「ではサイさんで」

「私はサイママって呼ぶよ」

「私の方はクロちゃん、シロちゃん、でいいかしら?マサキ以外に呼ばれるのは嫌?」

「そんなことないよ、サイママなら大歓迎」

「サイさんのお好きなように、あなたにそう呼ばれるなんて光栄です」

「ウフフ、ありがとう」

 

 全騎神の憧れ天級騎神、その筆頭であるサイバスターと食事をしている。

 しかも手料理だ・・・この食卓に全財産を投げ出してもいいと思う輩は山ほどいるだろう。

 行儀作法大丈夫だったかな、美味しすぎて"パクパクですわー"しちゃった。

 サイさん小食だな・・・天級は省エネなのかも。

 

「「ごちそうさまでした」」

「はい、お粗末様でした」

 

 食後のお茶を頂いてまったり。あーー満腹満足したぁ。

 

『次のニュースです。数日前に崩落した洞窟ではファイン家主導のもと復旧作業が続いており』

 

 テレビでは午後のニュースをキャスターが読み上げている。

 ファイン家・・・インモーの所か、洞窟?洞窟を復旧ってなんだ。

 

『この洞窟は新型のアミューズメントホテルとして計画され・・・』

『現場付近の目撃情報によると謎の発行現象が・・・』

『仮面を付けた謎の集団がいたとも、リング状の構造物と緑色の鉱石を回収・・・』

 

 なんだろう、ニュースの現場が凄く気になって仕方がない。

 クロちゃんもテレビの画面をジッと凝視している。

 

「落ち着いた?そろそろ情報の整理いってみる?」

「はい、お願いします」

「私たちとマサキさんに、何があったか教えてほしい」

「そうね、どこまで覚えてる?」

「私たちが・・・」

 

 ピンポーン!

 インターホン鳴っちゃったよ・・・お客さんかな?

 

「ちっ、これからだってのに・・・はーい開いてるわよ、勝手に入って」

 

 誰だろう?三人・・・騎神2人間1か。

 思わず身構えそうになるが、一人は知っている匂いなので警戒を解く。

 

「お邪魔します・・・ふむ、目が覚めたようですね」

「お二人とも、お久しぶりです」

「は、初めまして!うわ・・うわぁ・・・凄く可愛い子たちだね」

 

 おまかわ!と言いたくなるような黒くてちっこい騎神に、いつぞや私たちを助けてくれたボンさん。

 そして、長身のイケメンが現れた。・・・この人・・操者?どこかで見たような。

 

「ネオは?」

「うまむらに行ったまま帰って来ません。二人の服を買い漁っているのでしょう」

「あいつは・・クロちゃんたちは着せ替え人形じゃないっての」

「二人にお話は?」

「これからよ」

「ではご一緒させてもらいます。彼女たちの存在は大変興味深いですから」

「好きになさい、クロシロちゃん、この子たちも同席するけどいいかしら?」

「構いませんが、どちら様でしょう?」

「ボンさんは知ってるよ」

 

 微笑みながらボンさんは頷いてくれる。

 

「天級騎神ネオグランゾンの子、シラカワシュウです。マサキとは幼馴染ですよ」

「大物が来ましたね・・・シラカワ重工の若きトップ、稀代の天才シラカワシュウ。まさか天級のご子息とは」

「シラカワ重工、知ってる!超有名企業じゃん!お母さん、ネオグランゾンなの!超かっけーー!」

「改めまして、マスターシュウの愛バ、ミホノブルボンです」

「シュウお兄さまの愛バ、ラ、ライスシャワーですぅ。よかったちゃんと言えたよ」

「ご丁寧にどうも、マサキさんの愛バ、サトノダイヤモンドです」

「同じく、キタサンブラックだよ」

 

 簡単に自己紹介をした。

 ほほう、シュウさんも中々の色男ですなぁ。覇気も良質で愛バ二人も優秀・・できるな。

 ですがまあ、私のマサキさんには劣りますけどねぇ!!!

 失礼、愛バの贔屓目が正直に暴走しました。自分の操者が一番なのはどの子も当たり前ですよねー。

 うちの子が一番ならぬ、うちの操者が一番なんだからぁ!!!

 

 人数分のお茶を用意し、お茶請けも完備しました。

 このニッキ臭は・・・お、生八つ橋じゃないですか。誰か京都行ったの?

 

 まずは自分たちが覚えている所まで話そう。

 

 マサキさんと契約した翌日から、異変は始まっていた。

 神核の内側から響く鼓動?何かが脈打つ感覚、それを契約の反動だと、操者の覇気が私たちを強くしてくれていると、そう思ったから深く考えずに放置した。

 放置した・・その内なんとかなると思って、なんとかなってほしくて・・・

 

 認めたくはなかった。

 操者の覇気に潰されかけている事実を、愛バになる資格無き未熟者だってことを。

 まったく釣り合いが取れていない「所詮、お前たちでは無理だったんだよ」って突き付けられているのに。

 そんなことはない!今はちょっと調子が悪いだけ・・認めてたまるか。

 

 二人で平静を装った。

 幸い、この頃のマサキさんは覇気や神核の変化に鈍感だった。

 父は苦い顔をしていたけど私たちの意思を汲んで、口をつぐんでくれていた。

 

 メジロ家のハガネから戻る途中、マサキさんから別のメスウマ臭がして発狂した。

 ここ最近の不調で、心身共に安定性を欠いていた所でこれはマジで凹んだ。

 奪われる!メジロ家にマサキさんを取られしまう!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!

 

 その後に出会った、天級騎神グランヴェール。その圧倒的な力を目にして思った。

 私たちもあんな風に強かったら、操者の傍にいることを許されるのだろうか・・・

 

 強くなりたい・・変わりたい・・私たちこそ彼の愛バだと叫びたい。

 奪わないで!あっち行って!頼むから・・お願いだから・・・やめてよ。

 困った時の神頼み、信心深くはないけれど・・ご利益があるなら何でもいい、そうだ三女神様!!

 ウマ娘の始祖である女神様なら、きっと・・・

 

 どうか、お願いします。

 彼を失いたくない!だから、強くなりたい!なるべく早く!べらぼうに!

 

 『力がほしいか』

 

 そんな問いかけが聞こえた気がする・・その時からだ、酷い睡魔が襲って来たのは。

 そうして、昏睡状態になった私たちをマサキさんが、ここラ・ギアスに運んだ。

 

「異世界からやってきたアインストと取引したのよね、その結果、二人の神核を安定させることに成功した。それでもあなたたちは眠ったままだった。

「マサキ以外の覇気、それも素質のあるウマ娘限定の覇気を望んだ。そのことは覚えていますか?」

「いえ・・眠る直前はただ申し訳なくて、悔しくて、そのようなことは」

「マサキさん、泣いてた・・私、弱い自分が、大事な操者を泣かした自分が許せなかった・・」

 

 私もクロちゃんと同じ気持ちだ、不甲斐なくて、情けなくて、なんて自分はこんなに弱いのかと嘆いた。

 その結果・・騎神の覇気を操者に注文しただと?

 それについては身に覚えがございません!強くなるために操者に要らぬ苦労をかけるなんて・・・

 ダメダメな愛バだなぁ・・・トホホ、許してマサキさん。

 

 私とクロちゃんが知る限りの話をした。八つ橋(゚д゚)ウマー

 

「ふぇぇ・・そんなことがあったんだね」

「昏睡・・まるで眠り姫ですね」

「どう思う天才君?」

「さっぱりわかりませんね!奇跡が起きたとしか言いようがありません」

 

 天才のシュウさんもお手上げポーズ。

 

「きっかけはマサキの覇気で間違いないでしょう。ですが、その後のことは、お二人が望んで引き起こした事象だと推測します」

「私たちが・・・」

「望んだ・・・」

「マサキが好き過ぎて、眠ったり、結晶になったり、でっかくなったりしたのね。うちの子愛されてるわ~」

「操者への愛が起こした奇跡・・・素敵だね」

「愛ゆえにですね、マスターも見習ってください」

「私が昏睡したらどうします?」

「脳に電気ショックで叩き起こします!」

「ブルボンさん、やりすぎだよ・・・ちょっと火で炙れば起きてくれるよ」

「フフフ、私の愛バは凶暴です」

 

 私たちが眠ったのは自業自得ですね!どうしてこうなったかわ考えてもわからん!

 

「あのぅ・・結晶とは何のことでしょうか?」

「はいコレ、二人が眠ってからしばらく経った時の映像」

 

 動画には私が目覚めた時にいた部屋が映っている。

 ・・・は?部屋を埋め尽くす輝く緑の石?は何だろう?

 

「これが結晶?」

「そうよ、いきなりそうなったからビックリしたわ」

「私たちは何処に?」

「さあ?その中にいたんじゃないの、知らんけど」

「この結晶体はお二人の繭だと思っていましたが、どうです?」

「いや、繭とか言われましても・・・」

「綺麗な石ころになってる、これが本当に私たちだったの」

 

 人体というか愛バの不思議ですね・・・不思議すぎるだろ!

 自分でやっておきながら仕組みや理屈がまるでわからん!!

 もしかして、一旦溶けた?ドロドロのスープから復活したの?完全変体する昆虫かよ!!

 だとしたら、まさに蛹や繭といった表現がピッタリだ。

 

「それで、出てきたらこの体になっていた・・・何それ怖い」

「成長期の神秘だね~」

 

 大きくなっているのはこの際、置いておくとして・・・見過ごせない事態が発生している。

 

「普通に考えたらパワーアップイベントだよね」

「まあそうですね・・復活を遂げ新たな力で無双!ってのがお約束なのに」

「「弱くなってるんですよねーーー!!!」」

「ちょっと失礼・・・覇気の総量が減っているわけではないようです・・・奥深くへ籠っている?」

 

 シュウさんが私たちの頭に手を当てて首を捻る。

 籠ってる?覇気が引き籠りッスか・・・働きたくないでござる!

 

「あははは・・・気付いていたよ。雑魚丸出しの覇気しか出せないって・・・凹む」

「図体だけでかくなっても意味がないんですよ!何をやってんだか私は・・・」

 

 神核の鼓動は穏やかだ・・体と同じく、こちらも形状が変化している模様。

 昏睡する前の息苦しさや圧迫感は無い、覇気の出力が減っているだけで心身ともにスッキリ爽快だ。

 

「戦闘において覇気が使えないのは致命的ですね」

「私たちもう騎神じゃなくなったの・・うう・・こんなんじゃ、マサキさんに捨てられちゃう」

「お兄さま、何とかしてあげられないの?」

「長いお勤めの結果がこれでは、あんまりです。マスターの出番ですよ」

「もちろん手を尽くす所存です。ビアン博士も協力してくれるでしょう」

「ビアン?元DC総帥のビアン・ゾルダークですか!またしても有名人」

「ウマ娘嫌いなのに協力してくれるんだ」

「そこはほら、私のコネでね」

「「さすが!!」」

 

 あのビアン博士と繋がりをもっているだなんて、さすが天級!

 

 弱体化した件は保留。

 体が急成長したために、神核やその他の各部位が馴染んでいないだけかもしれないし。

 自然に回復してくれるといいんだけどな。

 

「本題に入りましょうか」

「うん、ずっと気になってたしね」

「感覚としては、うーんよく寝たなぁ・・ぐらいなんですよね」

「ちょっと寝坊した感がパない」

「教えてください」

「私たち・・・」

「「どのくらい寝ていましたか?」」

 

 1ヶ月か?それとも2ヶ月か?

 操者を一人にするなんて!本当に愛バ失格だ!

 

「2年半」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・ワンモアプリーズ?」」

「マサキが旅立ってから、大体2年と半年経過したわね。やっと起きてくれて安心したわ」

「「なん・・だと・・」」

「惜しいですね。後半年で"眠り姫"から"三年寝太郎"にランクアップでした」

「ブルボンさん!シャラップ!!」

 

「「ね・・・寝坊したぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

 告げられた期間の長さに戦慄する。

 人生史上最大の寝坊をかました。大失態に眩暈と吐き気もする。

 長い!長すぎるよ!そんなに長くマサキさんを一人にした、やってしまったぁ!!

 

「お、怒ってるかな、愛想を尽かしているかな、もう私たちなんて過去の女で・・あばばばばあばああ」

「2年以上音信不通・・両想いのカップルでも自然消滅するには十分過ぎる・・おごごごごおごっごお」

「悶絶し始めたわwwシュウ、ブルボンちゃん、ライスちゃんもちゃぶ台ごと避難よ~」

「「「はーい」」」

 

 頭を抱え畳の上を転がる私たちを尻目に、サイさんたちが避難する。

 ああ、お茶が零れたら大変ですからね・・・

 どうも、2年半も操者を放置した愛バ(笑)です。

 こんなの愛バじゃないですwwただの駄バですよ駄バ!罵ってください!

 

「あははは・・・もうダメ、終わった・・」

「生きる意味を失いました・・富士の樹海ってここから遠いですか?」

「ちょっと!弱気になってる場合じゃないわよ!・・・手遅れかもしれないけど」

「その通りです。マサキならきっと・・多分・・楽観的に考えれば・・えーと・・ご愁傷様です」

「何ですか!その歯切れの悪さ!励ますならキッチリやってくださいよ!」

「そうだよ!ボンさんたちも目を逸らしてな・・・・・・・・・・おい、いるのか?」

 

 いるのか?クロちゃんったら何を言ってるんでしょう?

 おや、どうしたんですか皆さん、顔を伏せてたり目を逸らしたり・・こっち見ろ!!

 

「サイママ」

「何かしらクロちゃん」

「皆の憧れサイバスターは嘘をつかないよね、何か知っているなら教えてほしいな」

「あらやだ、この子の殺気、全盛期のネオみたいwww」

「サイさん?」

「おお、こっちもか。何かなシロちゃん」

「私の目を見て答えてください。マサキさんの愛バは何人ですか?」

「クロちゃんとシロちゃんで、いーち、にーい・・・さ」

「「さ?」」

「・・・・遅いわねネオったら・・あ、硬い八つ橋もあるんだけどいる?」

「「続きはよ」」

「天級騎神を脅していますよ。マサキの愛バは大物ですね」

 

 目が泳ぐサイさんに詰め寄る私たち、もう天級とか知ったことか!早くゲロっちまいな。

 

「さ、さん、よん・・・ええい、わかったわよ!1、2、3、4、全部で4人よ!4人!!」

「「4人だとぉぉぉぉぉーーーー!!!」」

「ひぃ!」

「マスター!避難指示を」

「待ちなさい!面白いので様子見ですww」

 

 よん?四?よーん?4?ワン、ツー、スリー、フォオーーーーーーーーーー!!!

 

「つい最近ラインがあったのよね。愛バが増えるかもって」

「濁してましたが、確定したも同然でしょうね」

「「どこのメスウマがちょっかいかけたんじゃあぁぁぁぁぁぁーーー!!」」

 

 嘘でしょ?嘘だと言ってよマサーキィ!私たちの心、ミンチよりヒデェことになってますよ!

 

「あんなにマーキングしたのに・・そうか・・取っちゃうんだ、アハハハハハハ、そっかそっかぁ」

「戦争じゃぁ!皆殺しじゃぁ!耳と尻尾を引っこ抜いたらぁ!!」

「マサキさんは騙されているんだよ。目を覚まさせてあげなきゃ!私しか見なくていいよって」

「少々お待ちください、あなたを誑かした淫売はこの私が消し去ってあげます、完膚なきまでにね」

「よーし!頑張るぞーー!やって、やって、やって、殺って、殺ってやらぁーーー!」

「覚悟しろよ・・慰謝料と養育費だけで済むと思うな。殺してバラして晒してやるよ!」

 

 私たちは、裸足のまま外に飛び出そうとする。

 

「はい、そこまで」

「ぎゃふん!」

「ほげぇ!?」

 

 残念!首根っこを掴まれて、動きを封じられました。

 天級騎神すごいですね!うわぃ、万力のような締め付け・・お、落ちる・・ギブですギブ。

 サイさんはその場から一歩も動いていない。

 覇気で出来たロープが首輪のように絡まっている。便利な技をお持ちですね。

 

「はぁ、あなたたちの憤りもわかるけど。ちょっと落ち着きなさい」

「弱体化をお忘れですか、今の状態で出て行った所で勝ち目はありませんよ?」

「だって・・だってぇ・・・う、うう・・うわぁーーーん!いーやーだぁーー!」

「ウボェ・・・グェヘ・・・ズズ・・・うぉぉぉーーーーん!いーやーでーすー!」

「な、泣いちゃった・・ええと・・大丈夫だよ、よ、よしよし」

「体は大人、頭脳は子供、逆コナン君ですねwww」

「ブルボンさん!お黙りぃぃぃ!!さっきから何なの?」

 

 その後、泣いて泣き続けて瞼が腫れたました。

 帰って来たネオグランゾンことネオさんがビックリされていました。

 虐待の罪でサイさんを通報しようとしたので、風と闇がプチゲンカしていました。

 それを宥めるのに、泣いている場合ではなくなったのですが・・・はぁ・・マサキさん。

 

「・・・」

「・・・」

 

 縁側に座りボーッとする私たち、頭の中はぐちゃぐちゃだ。

 嫌な考えが何度振り払っても湧いて出る。どうして・・・理由は至極当たり前、私たちのせいだ。

 

 シュウさんとその愛バ二人は、シラカワ邸に戻っていった。

 ネオさんはそのまま、サイさん宅で駄弁っている。

 

「後2人いるんだって」

「私とクロちゃんで一人づつ相手するしかないですね」

「ショック」

「ショックですね」

「どこかで慢心していた。マサキさんは、いつまでも私たちのだって」

「英雄色を好むといいますし、あんないい男、いつまでも放って置かれるほうがあり得なかった」

「バカだよね。仕方ないよ・・2年だよ2年・・浮気されても文句言えない」

「マーキングの警告を突破した、私たちの時と同様に、覚悟完了したメスウマが相手ですよ」

「きっと強いよね、マサキさんが認めたんだから・・・」

「知り合いだったら嫌だなぁ、超気まずいですよ」

「「はぁ~」」

 

 マサキさん、今どこで何をしているんですか?会いたいです。

 シュウさんたちいわく、こちらからの連絡に反応しないとのこと・・・心配だな。

 「マサキは、よくスマホの充電を忘れますから」と言われたけど大丈夫かな。

 

「ねぇ、二人が可哀そうよ。なんとかしてサイさん」

「そっとしておけばいいのよ。考えをまとめる時間も必要だわ」

「・・・任セナ」

「アーマーちゃん!?」

「お、行くのね。アインストのお手並み拝見」

 

 ガシャンと音を立て鎧がやって来る。。

 大柄な体を私とクロちゃんの間にグイグイ割り込ませ着席。

 ちょ、狭い狭い・・・もう何がしたい・・え・・あ・・励ましてくれるんですか、そうですか。

 

「アインストでしたっけ・・異世界から来た物好き、今はサイさんのペットでしたか」

「アーマーちゃんだね。聞いてるよ、私たちが眠っている間、ずっと護衛していてくれたんだよね」

「約束シタ、マサキ、オマエラ頼ムト」

「独特の喋りですね。ですが、いい子だってのはわかります」

「中身空洞だぁ・・こんな子も手懐けるとは、やっぱりマサキさんは凄い」

「元気ナイ、ナニユエ?」

「捨てられちゃうかも・・・」

「私たちより、いいウマ娘と契約したそうです・・はぁ」

「心配、イラナイ、杞憂」

「あなたに何がわかるんですか」

「ワカル、マサキ、オマエラ大事」

「本当に?本当にそうなのかな・・私たちのいらない子じゃあ」

「イラナイ子ノタメ、命カケル?」

「命・・そうでした。ずっと、ずうっーと!マサキさんは命をかけてくれた」

「本当ハ死ヌハズダッタ、ソノ運命、マサキガ変エタ」

「生かされた・・私たちが、生きることを望んでくれた」

「理解シタカ、クズドモ?シャキットシロヤ」

「うん。もうクヨクヨするのやめた!元気出すよ」

「クズどもって言った!?思ったより口悪いな。でも、激励ありがとうございます」

 

 異界の謎生物?に元気づけられてしまった。貴重な未知との遭遇。

 表情の無い鎧がニカッといい笑顔を浮かべた気がする。

 私たち背中をポンポンと叩いた後、鎧は客間の隅に移動、ドッカリと腰を下ろし、動かなくなった。

 サイさんが言うには睡眠モードに入ったらしい。

 アインストって眠るんだ・・・え?気が向いたらご飯も食べるんですか・・・謎の生き物だ。

 

「マサキさんがモテるのは、それだけいい男だって証拠!」

「それな!要は私が正室、残りのカスどもを側室(おまけ)にすればいいんです!」

「そうだね。カスのシロちゃんwww」

「おや、側室ごときが正室に逆らわないでくれませんか?カス三人で慰め合ってろwww」

「「ぶっコロ!!」」

「元気になったみたいね・・・ケガする前に止めた方がいいかしら?」

「そうね。家を壊されたら堪らないわ。おーい、二人ともアルバムがあるんだけど見る?」

「何のアルバム・・っ!?見ます見せてください!よければ言い値で買います!」

「そ、それは・・・まさか・・・お宝だ!それを拝見しないなんてとんでもねぇ!!」

 

 サイさんが手にしている、大きな本のような物・・・アルバム・・写真・・思い出。

 恭しく受け取ったそれを、震える手で広げ、ページをめくる。

 

『〇月〇日 マサキがラ・ギアスにやって来た記念』

 

 銀髪の女性に抱っこされ、照れながらもニッコリ笑う少年の顔。

 仲のいい親子のツーショット写真がそこにあった。

 

「「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁーー!!マサキさん!超かわえぇぇぇーーーー!!!」」

 

 幼いが確かにこの顔はマサキさん!面影がバッチリ残ってる。あわわわわ・・・凄いものを見た。

 その後もページをめくり、新たな写真が目に入る度に、絶叫と悶絶を繰り返す!

 もうやめてーーー!私たちのライフはもうゼロよぉ!いや、やっぱりやめないで!!

 

「ロリ!ロリマサキさんのパラダイスや!うぁ鼻血出そう・・くぅぅぅ、かわいいよぉ」

「この場合はショタが正解・・おう、これは夏のプール日和・・グヘヘへへ」

「すっかり夢中ね」

「無理もないわ、うちの子だからね!!」

「サイさん・・この写真焼き増しは・・」

「無理!嫌!不許可よ!」

「そ、そんなぁ~。ならば今の内に脳内に刻み付けてやる!」

「だんだん成長していく・・はふぅ・・私たちの同級生だったらと、妄想が捗る!」

 

『シラカワ親子と一緒』

『初めてのアカシックバスター』

『家の改築(8回目)記念』

『中二病覚醒www』

『〇歳の誕生日』

 

「マサキさんの思い出ですね~。うん?・・・この写真は」

「どうしました?・・・マサキさんと・・誰ですかこの金髪巨乳は?」

 

 赤くなった顔で、少し緊張し気味のマサキさん。

 その肩に手をかけて微笑む綺麗な女性と二人で写った写真。

 二人とも学生服を着用しているので高校生ぐらいの時だろうか。

 マサキさんが、見たことがない表情をしている。それが酷く癇に障った。

 

「それはテュッティちゃんね。この時のマサキ、ガチガチになってたわ」

「ああ、マサ君の初恋相手ね」

 

 はつこい・・・誰の?マサキさんの初恋?ハハッご冗談お・・おうおうおうおうおぉぉぉぉぉぉ!

 

「こ、この方と、マサキさんはその後・・・」

「マサキが告って振られたのよ。あの時の落ち込みっぷりは大変だったわ」

「シュウ君が夜通し煽ってようやく立ち直ったのよね。うんうん、友情って素晴らしいわ」

 

 こくった・・だと。「告白したのか?私以外のメスに」

 

「振った、振っただと、マサキさんが振られた。コイツ何様のつもりだ!」

「待ってください!考えようによっては、このメスのおかげで、今のマサキさんがあるわけでして」

「ああそうだった。それからよ、マサキがロリ・・「やっぱ年下だよね」とか言い出したの」

「「テュッティさん!ありがとうございましたぁ!!」」

 

 彼を振ってくれて感謝いたします。

 後は私たちに任せて。どうか、二度とマサキさんに近づかないでくださいね。

 

「む、女の子と写っている写真が結構ある。嫉妬しちゃうな」

「リューネちゃんにサフィーネ、村在中のウマ娘とかね。あ、これも懐かしいな」

「恋愛には未発展だけど、女の子とすぐ打ち解けるのよね、マサ君ったら」

「なんかわかる気がする」

「心にですね、こう、スッと不快感なく滑り込んで来るんですよねぇ」

 

 私たちの操者は、女子のATフィールドを中和する機能を備えているようだ。

 誇らしくもあり、心配でもある。

 

 子供の頃のマサキ、思春期で中二病まっさりのマサキ、青春時代を謳歌するマサキ。

 いろんな時代でいろんな表情を見せる操者を目に焼き付ける。

 5冊目のアルバムを閉じて思いを馳せる。

 

「堪能しました。動画等もあれば、是非お願いします」

「それはまた今度ね」

「マサキさん・・・今どこにいるんだろう。会いたいよ・・・」

「連絡がつかないのは不安ね。シュウ君も首を傾げていたわ」

 

 ピンポーン!また来客か。

 

「開いてるわよ~、勝手にどうぞ~」とサイさんが応答する。

 ドタドタと見知った人たちが入って来る。

 

「ダ、ダイヤ!ブラック!無事かい!て・・・えぇぇぇぇぇぇぇ!?」

「どうした☆どうした☆あ、パイセンたちお邪魔しまーす。うちの娘たちがすっかりお世話になったようで」

「パパ!ママ!」

「父様、言いたいことはわかりますが落ち着いて。ハートさんもご心配おかけしました」

「・・・夢でも見ているのか。娘たちが一気に老けた!」

「コラコラ☆若人に老けたは失礼だぞ☆いやーちょっと見ない間に、大きくなったねぇ☆」

「親子感動の再会、よかったわね」

「シュウ君が簡単なメディカルチェックは済ましているわ。今の所、体が大きくなっただけで、健康体ですって」

「覇気は激減しましたけどね」

 

 両親と再会。父もハートさんもご壮健で何より。

 図体が大きくなったことで、動揺する父を宥めたり、写真を撮ったり、騒がしくも忙しい。

 ハートさんは、サイさん&ネオさんとの思い出話に花を咲かせていた。

 父は少し痩せたような気がする。ハートさんは私たちを見て目が潤んでいる。

 我が子が2年以上も昏睡状態だったんだ、きっと多大な心労をかけたことだろう。

 

「もう大丈夫です。マサキさんが助けてくれましたから」

「パパ、ママ、心配かけてごめんね」

「いいんだ、二人がこうして無事なら・・うう・・よかったぁ・・本当によかった・・」

「もうパパ☆泣かないって約束したろ☆でも、うん・・よく起きてくれたね☆偉いぞ二人とも☆」

 

 二人の天級に見守られながら、親子4人で抱き合う。私の・・家族・・温かい・・

 ここに、マサキさんもいれば・・・

 

「ほ、本当におっきくなったな・・パパなんだか照れちゃう////」

「ハートさんの前で何を抜かすか!このマダオは」

「ダメだよパパ!私たちマサキさんのものだからね」

「でも本当に成長し過ぎだぞ☆今すぐ業界に売り込める顔とスタイル☆うらやま☆」

「父様、マサキさんの行方について何か情報は?」

「おお、そうだったそうだった。どうやらマサキ君はファイン家と行動を共にしていたらしい」

「ファイン!あのラーメンマニアの所に」

「教団という組織の殲滅作戦に参加したようだ・・極秘情報だが、水の天級ガッデスの救助も兼ねていたと」

「な!ガー子の奴・・うちの子に迷惑かけやがって」

「救助?あのガーさんが捕まっていたどでも・・・何事?」

 

 教団、水の天級、ファイン家の作戦行動に参加・・・厄介ごとの臭いしかしない。

 うちのマサキさんは、一体何に巻き込まれた。

 

「ここへ来る前に、ファイン家からメッセージが届いた。ダイヤ、ブラック、お前たち宛にだ」

「まるで私たちが起きるのを、知っていたようなタイミングですね」

「ファインモーション・・・どこまで関わっているのかな」

「先に言っておくよ。ショッキングな内容だから心して聞いてくれ」

 

 真剣な父の様子に不安が募る。

 気付けばクロちゃんと手を握り合っていた。ウエットウーマンでも勘弁して。

 サイさんが「はよいえ」と顎で催促したのを合図に父がメッセージを読み上げる。

 今時、紙の手紙かよ!

 

『アンドウマサキはこの世界から消失しました』

『あなたたちに出来ることは何もありません』

『彼の救助は私たちが責任もってやり遂げてみせますので、ご安心を』

『二人は大人しく待機をしていてください。邪魔立てした場合、命の保証は致しません』

『なお、水及び土の天級騎神を発見した場合はご一報ください』

 

 なんだ・・何を言っているんだ・・消失・・消えた・・あの人が消えただと!?

 

『操者探しの件、無事クリアしたこと、遅ればせながらお礼申し上げます』

『最近、私も操者と契約しました。二人が羨むこと必至のいい男です!』

『では、その内お会いしましょう。ファインモーションより』

 

 惚気てんじゃねーよ。インモーの操者なんてどうでもいいわ!

 

「ははは、なめられたものですね・・・」

「余計なことをするなって・・邪魔だってさ・・・」

 

「「ふざけんじゃねーぞ!!インモーがぁぁぁーーー!!」」

 

 ですよねーと父たちが首を振る。

 消失の意味はよくわからないけど、マサキさんに何かよくないことが起こった。

 ジッとしてるなんてできっこない!動かなければ・・助けが必要なら今度は私たちの番だ!

 

 まずは力を取り戻そう、幸い修練相手には事欠かない。

 だってここには、あの天級がいるんだから・・・

 

「サイさんどうする?」

「ファイン家に連絡してみるわ。不確定な事柄が多すぎて・・・マサキ、あんた何をやらかしたの」

 

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