ファイン家所有の某所、人里離れた場所では急ピッチで工事が進んでいた。
多くの作業員と建設重機が行き交う現場は活気で満ち溢れている。
見事な輝きを放つ禿頭(ハゲ)の男が現場の指揮を執り、用途不明のオブジェや電子機器の設置、果ては魔方陣らしき紋様の書き込み作業等を進めていく。
その光景を離れた位置で眺めながら電話をしているウマ娘がいた。
彼女はケラケラと楽しそうに会話をしている。
通話相手は気心知れた親しい間柄のようだ。
「そうだね。私たち4人でちゃんと話あった方がいいよね」
4という数字を強調して伝えるとスピーカーからいい反応が返って来る。
「うんうん、二人が怒るのは私の責任だ。だが私は謝らない!」
電話越しでも伝わる呪詛まみれの声に、若干引きながらも毅然とした態度を示す。
「それじゃあ、第一回愛バ会議を楽しみにしてるよ。またね~」
本題である会議の開催日時を伝えて通話終了。
頭首であるファインモーションは、隣にいる部下のエアシャカ―ルにやれやれと大袈裟なジェスチャーで心労をアピールしてみせる。
「あー怖かった、ダイヤちゃんの一言一句に殺気を感じたよ」
「計画は予定通り進めていいんだな」
「うん、変更なしでよろしくね。マサキをサルベージする前に話はつけておかないと」
「こっちの準備はまだかかりそうだ、ルオゾールの注文が多くて嫌になるぜ」
「ハゲはハゲなりに有能だからしっかり連携をとってあげてね。ゲートから邪神を呼び出す方法を知ってるのは確かだから」
「で?目覚めた破壊獣どもはどんな具合だ」
「なんか弱体化してるってさ、殺される心配は今の所なさそう。でも、アレの用意はしておいて」
「へいへい、くぁ~忙しくて泣けるぜ」
「インテリヤンキーの底力を見せてちょうだいな。頼りにしてるからね」
「ヤンキー言うな」
自前のノートパソコンをカタカタと操作しながら、持参した缶ジュースをグビッと飲む。
「またエナドリ?飲み過ぎは体に悪いよ」
「毎食カップ麺よりマシだろ、そういえばゴルシの奴はどうした?」
「休暇申請して何処かに消えちゃった。大丈夫、作戦決行日にはきっと帰って来るよ」
「マジで羨ましい・・・俺、今月まだ休みもらってねぇよ」
「悲願だったベーオウルフたちとの決着をつけられたからね、リフレッシュ休暇は必要だよ」
故郷と一族、そして戦友たちの仇を討つことができたのだ。
いくらハジケリストと言えども、センチメンタルな気分に浸りたいこともあるのだろう。
リング状の構造物が運搬されて来たのを確認しつつ会話を続ける。
「あのルクスとか言う仮面野郎は放置していいのか?」
「調査と捜索は引き続きお願い。そう簡単に尻尾を掴ませてはくれないと思うけどね」
「あれだけの啖呵を切ったんだ。奴には相当な自信と後ろ盾でもあるんだろうさ」
そうだろうな。
ヒュッケバインを襲ったガリルナガンの使い手、電波ジャックやEOTを流失させたこと。
敵はルクス一人だけとは考えにくい、奴には協力者がいる。面倒で厄介なことだ。
ルクスに対抗するために、こちらも戦力の確保と増強をしておく必要がある。
その中心にいるべき人が、安心して帰って来られるように。
「しばらくは大丈夫だと思うよ。こっちはマサキと離れちゃったけど、向こうも無傷じゃないみたいだからね」
「血痕からは有力な情報を得られなかったが、お前の操車が一矢報いたのは確かみてぇだな」
「流石過ぎて惚れ直しちゃう!予想だと腕の一本ぐらいもぎ・・・噛み千切ったとか?」
「まさか、それだとマジもんの化物ってことになるぞ、お前の男は」
「私の操者だよ?スパルタ兵もドン引きの闘争心で、それぐらいやってみせるよ」
「そうかい。俺はルクスって奴に同情しちまうよ、アンドウマサキの敵役なんて碌な目に会わないのが確定している」
マサキが消失した現場からクロスゲートを回収。
私たちが退去した後にマサキはゲートで何処かへ転移させられた模様。
現場に残された血痕から、マサキはルクスにそれなりの手傷を負わせたことだけはわかった。
最後まで死力を尽くして抵抗したんだ・・・その姿を想うだけで誇らしい。
残された血液から情報を読み取れなかったは残念だ。戦闘による大規模覇気の残渣及びゲートの余剰エネルギーに晒されたことで生体情報が欠損していたので仕方がない。
ヴォルクルス教団を吸収合併し、人員の補充と勢力を拡大した新生ファイン家はマサキのサルベージを実現するために奮闘中だ。
世間を騒がせたルクスとの決着はマサキを取り戻してからだ。
今は私たち・・・愛バ4人の団結を急がねば・・・こ、怖くなってきた。
ルクス・・・今は泳がせておいてやる、精々調子に乗っておけ。
「私たちを敵に回わしたことを、必ず後悔させてあげる」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ガッちゃん。はい、あ~んして」
「あ~ん」
「ん・・・」モッキュモッキュ
「美味しい?」
「ボーノ。もっとちょうだい」
「か、かわいい~。いっぱい食べて大きくなってね」
「クロちゃん。そのロリババアを甘やかしちゃだめよ」
「ババア違う、アラファオーなめんな」
数日前、アーマーから吐き出された幼女は一命を取り留めた。
なんとこのロリは水の天級騎神ガッデスご本人であることが判明。
体が縮んだ経緯については、邪神降臨を目論んだ教団にエネルギーちゅーちゅーされた結果らしい。
マサキさんと会ったことも聞いた、そしてルクスのことも。
あの変態仮面が諸々の事件を起こした黒幕であり、マサキさんが行方不明になったのも奴の仕業だと知った。
ガッデスはまだ完全回復とはいかないので看病を所望。
今は母性本能に目覚めたクロちゃんが即席おじや(昨晩の残り物使用)を「はい、あ~ん」と食べさせている真っ最中。
クロちゃんってば、乱暴者の癖に世話好きなんですよ。
カゼをひいた時とか、妙に優しくて戸惑ってしまうぐらいです。
その間私の方は、知り合いのラーメン狂いと非常に大事な電話をしていた。
「あ!コラ待て・・・切られた。あのインモーめ」
「シロちゃん。どうだった?」
「最悪なことだが間違いない、インモーがやらかしおったで!奴が寝取りウマ確定だ」
「あのメスウマぁ!初対面から嫌な予感がしていたんだよ!残りの一人は?」
「「最後の一人はサプライズ~当日までのお楽しみってことで♪」とはぐらかされた」
「うわぁ、気になる。当日って何かイベントでもあるの?」
「三日後に第一回愛バ会議開催、マサキさんの愛バ全員集合だとよ。いやぁ今から楽しみですな」(#^ω^)ピキピキ
「当日の天気は血の雨だね」(#^ω^)ピキピキ
スマホを握りしめる手に力が籠る。おっと壊さないようにしないと(これで七代目)。
「ファインと話していたの、私が無事なのを伝えてくれた?」
「一応伝えましたよ。「ああ、やっぱりね。そっちで保護よろしく」と言ってました」
「教団とファイン家の衝突。マサキはルクスと戦闘して行方不明か・・・あの仮面、うちの子たちによくも」
「ルクスはマサキに執着しているみたいだった。今後は愛バである、あなたたちが狙われる可能性も」
「うへぇ!それは困った」
一刻も早く力を取り戻さなければ、勝負にすらならない。
ルクス!マサキさんを傷つけたこと断じて許さない。
「ガッデスさん」
「ガッちゃんでいいよ」
「天級最年長が抜かしよるww」
「サイは黙ってて」
「では、ガッさん。私たちの覇気、何とかなりませんか?」
「うーん・・・果報は寝て待て」
「放っておけと?」
「一見枯れているように見える井戸、その奥底は温泉どころか油田に繋がっている。溢れるのは時間の問題」
これまた、微妙な例えをなさいますね。
「何かが二人の覇気を使って回路(パス)を形成した。もうすぐ向こうから接触してくるはず」
「あの、要領を得ないんですが、一体何のことです?」
「心配無用。二人は今、マサキと同じステージに立っている」
「マサキさんと同じ・・・」
「オルゴナイトの繭から生まれた、生まれ変わった二人がただの騎神で終わるはずは無い」
「だといいんですけど」
「この言い回し、面倒な性格は相変わらずねガー子」
「サイは老けたね。私はアンチエイジングに成功したよ。(^_^)vブイッ!」
「嫌だわ~最高にムカつく」
「サイが育てたにしてはマサキはいい子。私が引き取ってもいいよ」
「そこまでにしとけよ。バギクロスぐらいなら無詠唱ノータイムで出せるんだからな」
「そうよ!マサ君の親権は私も欲しいんだから」
「いや、マサキはもう成人しておるじゃろうが、親権ってww」
「ああーー!!ウゼェ!アラフォー同窓会ヤメロ。その一員なのが一番泣けるわ」
いつの間にか、ネオさんとグラさんがヒョッコリ現れました。
師匠(グラさんの旦那)とシュウさん(及びその愛バ二名)は持ち前の家事スキルを遺憾なく発揮して買い出しと、夕餉の準備中です。「人数が増えましたからね」となんか楽しそうでした。
今、アンドウ家の覇気係数がとんでもない数値になっております。
何という過剰戦力!この場所に集うご婦人方の気まぐれで、地上から町がポンポン消えてもおかしくないです。
弱点があると聞いて逆にホッとしたぐらいですよ。それぐらいじゃなと余りに理不尽。
存在が大きすぎて近くにいると、いろいろな感覚が麻痺しそうです。
こんな状況で育ったマサキさんはそりゃ大物ですわ。
「5・・・4・・・3・・・」
「ここで唐突なカウントダウンが!?」
「え?どこから、うお、アーマーさんからだ」
「もう今度は何よ。ここ最近いろんな事が起こり過ぎ!」
「シュウ君曰く、特異点崩壊がどうたら・・・よくわかんないけど」
「2・・・1・・・」
「全員集合!ガー子を中心に結界を張るぞい」
「「「了解」」」
なにごと!何事?
縁側に鎮座して不動明王と化したアーマーからカウントダウンの音声が発せられる。
自爆はやめてくださいよ。
咄嗟の判断と行動力はやはり歴戦の猛者。
ガッデスと私たち二人を庇いつつ、グラさんが防御結界を即時展開、それをネオさんがフォロー。
サイさんはアーマーが良からぬ動きをした場合に備えて覇気を集中、最悪の場合はアーマーを大技でぶっ飛ばす気満々だ。
「0・・・」
さて、何が起こるか・・・
「何も起こらないのかよ!」
「お、驚かせやがって」
ガシャンとアーマーの頭部が地面にに落ちる。
続いて、体を構成する鎧のパーツが次々に落下する。
「風化していきますよ。え、死んだの」
「何あれ!ひぃ!手が・・・人の手が見える!」
崩れていく鎧の中心、胸部装甲だった箇所からこちらに向けて人間の手が伸ばされているのを発見。
ええーー?!何それ。まさかアーマーさん・・・サイさんに内緒で人を食べてましたか?
「ごめーん。ちょっと引っ張ってくれる」
「うっわっ!喋った。どうやら生きてるみたいだよ」
「いいの?引っ張っていいの?犯罪の共犯とかにならないの」
「この声・・・いいわ、引っ張りましょう。やるわよネオ」
「いいわよ、サイさん。せーの!」
スッポン!とあっさり引っ張り出されたのは人間?それも少女の形をしていた。
「ふぅー。服のデザインと形成が間に合ってよかった。全裸で初お目見えは締まらないしね」
十代前半ぐらいに見える少女が現れた。
ネクタイを締めた青いブレザータイプの学生服を着こなし、愛嬌よく人懐っこい笑みを浮かべている。
髪形はツインテールの可愛らしい美少女だ。
私たちと同年代?体の発育は・・・フッ、私たちが大差で勝利ですね!
「おお!全員揃ってるじゃん!何年ぶりかな~」
「えっと・・・」
「どちら様でしょうか?」
「うん?マサキから聞いてないの?新顔もいるみたいだし、自己紹介するね」
風化していくアーマーの残骸をパンパンッと払ってくるりと一回転。
ビシッと妙なポーズを決めて少女は宣言する。
「土の天級騎神ザムジードだったのは過去の話」
「今の私は、同胞であるアインスト"アーマー"と融合を果たし、誕生した新たな生命体」
「新人類!ミオ・サスガだよ!よろしくお願いします」ドヤァ
ザムジード・・・新人類?・・・は?
「ねえ、今日の夕飯何だと思う?」
「ダーリンがキッチンに立つと中華三昧じゃぞ」
「飲茶がいいわね。シュウ君なら小籠包とか出してきそう」
「焼売好き」
「あの、無視はやめてください」
思考放棄した天級たちが夕飯の献立を気にし出した。
最近理解したが、この人たち基本メシの話ばっかりしている。
所帯じみててなんだかなぁ。
話が進まないのでクロちゃんと私がコンタクトを試みる。
「イノベイター?」
「エヴォリューダーってことでオナシャス!」
「ザムジードだったとは、どういうことですか?マサキさんとのご関係は?」
「実はね・・・」
ほうほう、ザムジードの正体はアインストだったと。
そして死期を悟った彼女は肉体と精神を分離、自立型金属細胞ラズムナニウムの制御AIに偽装して活動を開始。
マサキさんと合流して共に旅を続け、肉体のコアを持っているガッデスを救助、ゲートを通ってここまで来た。
「それでアーマーさんと融合合体して美少女化したと」
「マサキとの約束だからね。次に会う時は人間の姿だって」
「アーマーさんの意思は?」
「心配しなさんな。双方合意の上だよ、私はザムジードでありアーマーでもある。お互いの記憶は共有し統合もしている。ミオ・サスガとして生まれ変わっただけだからね」
「ならいいのですが、それでマサキさんは」
「ガッちゃん、わかる?」
「ん、多分だけど・・・マサキがゲート使って私たちを逃がしてくれた」
「単独でゲートを起動したの?・・・いや、マサキなら・・・」
「ミオ、けじめ」
「そうだね。謝らないと」
ガッデスとその傍に寄り添ったミオが、サイさんと私たちに向けて深々と頭を下げる。
突然のことに面喰ってしまう。
「サイ、それにマサキの愛バたち・・・ごめんなさい」
「私たちがついていながら、助けられたのはこっちだった。本当にごめん」
見た目はともかく、年長者としての責任を果たせなかった。
無念さを噛みしめ謝罪をする天級二人。
「そういうのやめてよ。マサキはアンタたちを無事に逃がしてくれた、母として鼻が高いわ」
「天級騎神に借りを作るなんて、私の操者は立派だ」
「マサキさんの行動にはいつも驚かされますけど、それには必ず意味があります。お二人が今ここにいる事もきっと偶然ではありません」
「でも、そのせいでマサキは」
「ゲートで異世界に飛ばされたのね。今頃、勇者扱いでもされているのかしら」
「マサキさんならどんな場所でも大活躍だよ」
「無能認定からの追放、そして魔王へと成り上がるマサキさん・・・いいですね!」
「えー・・・なんかあんまり心配してない」
「心配はしてるわ。でもね・・・信じてるの」
「そうそう、信じてるよ」
「ええ、どんな時でも信じてます」
「私の息子はね、好きな女を残してくたばるような男じゃないわ」
「わお!サイさんカッコイイ」
「楽観主義極まれり。じゃが、わしもその通りだと思うとるよ」
「うまぴょい計画、未完遂のまま死なれては困ります」
「ホントそれ!」
マサキさんは絶対に生きている。
それだけはここにいる全員が確信している。
姿は見えない、リンクは切れた、それでも・・・彼ほどの存在が黙って消えたなんてこと、ある訳がない。
必ず帰って来る。その為に今もどこかで戦っているはずだ。
「というわけで、謝る必要はないわ。どうしても気が済まないなら、今後もマサキやクロシロちゃんたちを気にかけてあげて」
「もちろんだよ。ミオ・サスガはマサキのズッ友だからね」
「マサキは命の恩人、そして私の子も同然」
本当に不思議な人だ。
ここにいないのに、彼を思うだけで皆の心が暖かくなる。
世界に名立たる天級騎神、その全員から愛されているだけでも驚愕に値する。
天級だけではない、彼のために協力を惜しまないと言ってくれる猛者は他にもいるのだろう。
多くの人に影響を与え巻き込む力。それこそがマサキさんの真骨頂で恐ろしい所だと思う。
「クロちゃん。私たち絶対に強くならないといけません」
「うん。このままじゃ終われない」
堂々と彼の隣に立つ。
それが愛バとして選ばれた自分たちの使命だ!
「女神と竜の加護、それに・・・見てるよね・・・」
誰に聞かせるでもなく、ボソッと呟いたガッデスの小声を私は聞き逃さなかった。
女神と竜?そして最後に「くろきじゅうしん」と言いましたか・・・
「黒き銃神」とは何のことでしょう?
この日、愛バとして新たな決意を固めた私たちだった。
⦅力がほしいか⦆
(誰?)
(誰ですか?)
⦅力がほしいか⦆
(お、シロちゃんだ。やっほー)
(嫌ですね、人の夢に不法侵入しないでくださいよ)
⦅力が・・あの、聞いているのかしら?こっちを見なさい!⦆
(ここは私の夢だよ。侵入者はそっち)
(ロリコニアの件もあります。同じ操者を持つ私たちは夢を共有してしまうみたいですね)
(それならマサキさんの夢にダイブ希望なんだけど!)
(その手があったか!操者と愛バは夢で繋がることもあるそうですし、私ワクワクしてきました)
⦅無視されてる・・・テニア!ちょっと来て、今回の後継者たちは手強いわ⦆
⦅もう、なんだよ~。最初の定番挨拶ぐらい一人でチャッチャとやってよね⦆
(なんか気配が増えた)
(そちらの方々、とりあえず姿を見せてくれます?)
⦅こちらを認識しても動じないか・・・いいね!度胸ある子は大歓迎⦆
⦅メルアの方も前代未聞の後継者らしいし、此度は何かおかしいわね。はい、これでいいかしら⦆
パンッ!と柏手を打つ音が響いた瞬間、景色が変わる。
隣にはいつもの相棒が、そして目の前には初見の少女が二名。
「はじめまして、私の名前はカティア。やっと繋がったみたいで安心したわ」
「はじめましてだね、フェステニアだよ。テニアって呼んでね、後継者さんたち」
聡明な雰囲気を漂わせた黒髪の少女はカティアと名乗り、明るく活発な雰囲気を纏った赤毛の少女はテニアと名乗った。
この覇気・・・いや、このプレッシャーもう神気といってもいいレベルだ。
サイさんたち天級から感じるものとは別の圧をピリピリ感じる。
「神様?」
「お!鋭いねキミ。いや~滲み出る神々しさでバレちゃったかぁ」
「嘘臭いですね。どの宗教体系の神ですか?空飛ぶスパゲッティ・モンスター教?」
「こっちの子はひねくれてるわね。私たちはウマ娘の始祖、三女神よ」
「「二人しかいねぇし!」」
「そこはツッコまないで」
「もう一人は別行動中よ。あなたたちの大事な人の所に行ってるわ」
「マサキさんの所に!ズルい」
「夢枕に立ったということは、何か用件があるのですね。詳しくお聞きしましょう」
「では立ち話もなんだし、こっちで」
再びパンッ!と柏手が響く。
周囲の景色が入れ替わる。場所はどこかの庭園、ガーデンテラスに丸テーブルと椅子が四つ、テーブル上には人数分の紅茶とお菓子、アフタヌーンティーセットが用意されている。
「遠慮しないで飲んで食べて、スコーンにはジャムをつけるのがオススメだよ」
「夢の中で飲食しても大丈夫なんでしょうか?」
「朝起きた時、少しだけ胃もたれするわ」
「その程度で済むなら問題なし!いただきまーす。・・・お、結構いける」
テニアとクロちゃんがガツガツ飲み食いし始めた。
あのさぁ、紅茶ってもっとこう優雅に嗜むものでしてね・・・あ、いい香り。
「話を進めていいかしら、せめてあなたは聞いてくれると嬉しいんだけど」
「いいですよ。お互いアホの相方は放置しおきましょう。申し遅れました、私は・・・」
「サトノダイヤモンド、操者からもらった名はシロ」
「いい食べっぷりのキミはキタサンブラック、操者からはクロって呼ばれてるね」
「ご存じでしたか」
「これでも女神ですからね。後継者である、あなたたちことはずっと見ていたわ」
「見てたの!あれやこれや見てたの!(/ω\)イヤン」
紅茶を飲みながら説明を受ける。
マサキさんを含めた私たちは三女神の後継者に選ばれた。
正確には力を求めた私たちに女神が応えてくれたのだった。
「やたら大きな覇気が渦巻いているな~と思ったら、キミたちの操者、マサキだったわけよ」
「メルアが考えなしに飛びついちゃってね。まあ、そのおかげであなたたちを見つけたんだけど」
「ほう、私たちはマサキさんのおまけですか。おまけ上等です!」
「女神も軽く釣り上げるマサキさん、素敵過ぎる!」
「やだ、この子たち操者に心酔してる。狂信者の目つきだ」
「私たちもトーヤにはこんな感じだったらしいよ。知らんけど」
力をくれるというならください。
覇気が出せなくなったのは女神様のせいですか?
「明日の朝には覇気も元通り・・・いや、以前とは比べ物にならない程ボーボーボーだよ!」
「それを聞いて安心しました」
「やったねシロちゃん!覇気がまた使えるよ」
「満足するのは早いわ、物質化された覇気"オルゴナイト"を使いこなしてもらわないと」
「マサキはもう普通に使ってたね。因みにあいつ・・・仮面の、えっとル、ル」
「ルクスですか」
「そうマサキをボコった張本人!あいつもオルゴナイトの使い手なんだ。赤くて憎たらしい色の」
「ルクスを相手に戦うなら、オルゴナイトの使用は必須条件ね」
緑の結晶体、オルゴナイトの使用は今後の戦闘では人権スキルに該当する。
マサキさんにはできた、ならば私たちも続かなくては。
頷き合った私たちは二柱の女神に問いかける。
「どうすればいいですか?」
「私たちの真名を呼んでくれたらいいよ」
「オールドファッション」
「フレンチクルーラー」
「当てずっぽうで言ってもダーメ!それとドーナツから離れろ」
「あなたたちが真に力を望むなら、私たちの真名は自ずとわかる。そういうものよ」
力ならずっと前から望んでますよ。ですが、何も浮かんできません。
私たちに何かが足りないと、そういうのか。
「本当に望んでる?怖がってる癖に・・・また、同じ結果になったらどうしようって」
「テニア、あれは別世界の二人よ。この子たちは関係ないわ」
「そうだけどさ、並行世界の念をこの子たちが汲み取っていないとは思えない。ベーオウルフとルシファーの想いはマサキに、そしてこの子たちに受け継がれてる」
「一理あるわね。二人は無意識でオルゴナイトの使用を拒絶している。だから私たちの真名を呼べないのね」
女神二人で何やら思案し始めた。
ベーオウルフ、ルシファー、その言葉どこかで・・・何だろう、その名を聞くと胸の奥が締め付けられる。
私とクロちゃんは強くなりたい、強くなってマサキさんの力になるのだ。
だけど恐れているのか?強くなった結果またあの惨劇を繰り返・・・また?またって何だ?
紅茶のお代わりとスイーツの乗った皿も空になった頃。
「もう時間切れね。覚悟が決まったなら真名を呼んでちょうだい」
「く、わかりません・・・ヒ、ヒントをください」
「「人型起動兵器みたいっスねw」のジンクスからは、女神と言えど逃れられなかったよ」
「理解した、ロボだ!ロボみたいなんだね」
「キタサンブラック、あなたは私の、カティアの後継者とするわ」
「はい。よろしくお願いします」
「サトノダイヤモンドは、このテニアさんが面倒見ちゃうよ」
「了解しました。何卒よしなに」
へぇ、意外ですね。性格的に逆かと思いましたが、戦闘スタイルの相性で判断したのでしょうか。
「そろそろ起きる時間ね、また会いましょう」
「期待してるよ後継者たち。キミたちなら、あの竜姫様も味方してくれるかもね」
「またね~ばいばーい」
「真名当てですか・・・参りましたね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
復活!覇気が復活したぞ!
まるでマサキさんみたい、周囲一帯に覇気粒子を散布できるぐらいドバドバ出ちゃってますよ。
喜ぶのはまだだ、垂れ流すのはやめてコントロール・・・えっと、元栓をしっかり閉めるイメージ。
体の内から溢れんばかりの力を制御する。
マサキさんはこれを、直感とセンスで行っていたというのだから大したものだ。
なめないで頂きたい、私とクロちゃんもできますとも。
戸惑ったのは最初だけ、すぐに呼吸をするかのように覇気を完全制御下に置く。
ここまではいい、結晶体の形成はまだ無理だけど・・・
「ダメだ。ステークが煙噴いちゃった」
「こっちもですよ。オクスタンランチャーの砲身が焼き切れそうです」
事前に約束していた通り、父様に頼んで武装アルトアイゼンとヴァイスリッターを用意してもらった。
久しぶりに武装状態での模擬戦でもと思ったのだが・・・
「まさか、数発撃っただけで使えなくなるとは」
「デバイスだっけ?専用武装として改修してもらう予定だったけど、これじゃあ無理っぽいね」
「ちょっと、このミオさんに見せてごらん・・・ほうほう」
暇を持て余していたミオさんが立ち会ってくれていた。
ヴァイスとアルトをペタペタ触って何をを確認している。そんなのでわかるのですか?
「あーこれじゃダメだね。多分だけど二人はもう既存のデバイスを使えないよ」
「そんな~」
「結局、戦闘の基本は素手での格闘戦ですか」
「マサキもだけど、キミたちの覇気は凶悪すぎてデバイスの性能が追い付いて来ないんだよ。サイたち天級だってそう、使用武器は自分自身が長い年月をかけて鍛造した神格武装ぐらいだね」
「私たちのスペックに合ったデバイス、一から造ってもらうしかないね。パパにおねだりしよう」
「サトノ家の財政状況でそれは厳し・・・ああ、そうだ、アレとコレをああしてやれば・・・いけるな」
「お、シロちゃんが何か閃いたようだ」
デバイス・・・私たちにピッタリな素体・・・心当たりがある。
「アルトとヴァイスはどうする?」
「このままお蔵入りはもったいないですね。強化プランも一応考えてたのですが」
「はいはい!要らないなら、私がもらっていいかな」
「ミオさんにですか・・・ふむ」
「アインストの技術で魔改造してあげる」
「そのお話乗った!」
アルトとヴァイスは後日、正式にミオさんに譲渡することとなりました。
願わくばよき使用者に恵まれますように。
さて、私たちも自分用のデバイスを準備しないと・・・都合よく二つとも解体(バラし)作業が済んでいます。
一方その頃、リビングで駄弁っていたサイさんとガッさんは
「ねえ、今思い出したんだけど。私のディスカッター返してくれる?」
「なぜ私に聞く」
「しらばっくれんな!アンタが持ち逃げしたのは知ってるのよ、ガー子」
「持ち逃げじゃない、借りパク」
「一緒じゃボケ!それで、今どこにあるの」
「さあ?数年前、とある物好きに売った後どうなったかは知らない」
「こいつは・・・売る方もだけど、買う方もアホね」
「いい値がついたよ。ありがとう」
「満面の笑みが憎たらしい。アレはマサキか、その愛バに譲渡するつもりだったのに~トホホ」
「じゃあ、結果オーライ」
「何が・・・ああ、そういうことか。今の持ち主、剣は使えるの?」
「知らない。でも、ディスカッターをその場で軽々振り回していたのは見た」
「ふーん。私の得物を振り回したねぇ・・・なら問題ないか」
「そうそう。私の行動(借りパク)には意味があったの」
「その件は許してねーからな」
女神様の真名は浮かんできません。
思いつく限りのスーパーロボット名をあげてみたがダメでした。
そんなこんなで、愛バ会議開催当日を迎えるのであった。