俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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狙ってます

 マサキさんの実家で暮らすことにも、すっかり慣れ親しんだ今日この頃。

 無事に覇気を取り戻した私たちは、天級騎神たちの庇護下で修練の日々を送っていた。

 花嫁修業も兼ねているので、家事手伝いやご近所への挨拶回り、お義母様であるサイさんにいい嫁アピール(ポイント稼ぎ)も忘れずに行っています。

 インモーたちにつけられた差を埋めるべく精進あるのみです。

 仕事の合間を縫って父とハートさんも何度か様子を見に来てくれました。

 リモートで十分なのに、子離れできない両親で困りますよ。本当に親バカなんですから。

 愛されているのは誠にありがたいことですね。心配かけた分のご恩はそのうちお返しします。

 

 そんなこんなで、愛バ会議の当日がやってきた。

 

「準備オッケー。そろそろ出発しちゃおうよ」

「せっかちですね。そんな装備で大丈夫ですか?」

「一番いいのを頼んだからね。問題ないない」

 

 今日の服装はひと味違います。

 ここ最近のラフな普段着(ネオさんからもらった"うまむら"の服)ではない。

 サトノ家特製、黒色の戦闘服を着用しています。

 従者部隊の制服としても採用されているこの服は、フォーマルからカジュアルまで幅広く取り揃えておりまして、小物類やオプションも大変充実している。

 突発的な戦闘や冠婚葬祭にまで対応している。まさに"勝負服"

 レース選手が着ているヤツとは素材もかかった費用も桁違いなのですよ。

 恋敵に会うのだ、服装だって気合が入るってもんです。

 なにせこれから向かう戦場は正しく"修羅場"なのだからなぁ!

 

「サイズピッタリですよ。流石ハートさん」

「芸能人になる前のママはスタイリスト志望だったからね、これぐらい朝飯前だよ」

「一回のハグで全身を採寸するとは、恐れ入ります」

 

 クロちゃんの服装は肩と脇がモロ出しのミニスカートスタイル。

 なんだそれ誘ってんのか?胸元開き過ぎじゃね。

 私はフリルがあしらわれたドレスタイプを選びました。萌え袖?鬱陶しいので今回はオミットしました。

 戦闘も想定しているのでスカートの中はしっかりとインナーを着込んでいます。

 下着を見ていいのはマサキさんだけですから当然ですね。

 

「お、気合入ってるわね。まるでカチコミに行く前のヤーさんみたい」

「残りの二人がどんな子か気になるわ~。後でお話きかせてね」

「うむ。くれぐれも気を付けるのじゃぞ」

「お土産、ラーメン以外でお願い」

「ケンカするなら広い場所でね。そうだ!スマホ出してくれる、渡しておきたいものがあるから」

 

 天級の皆さんがお見送りをしてくれます。

 シュウさんと愛バお二人はお仕事で会社に戻りました。ルクスのせいで余計な仕事が増えたようです。

 師匠は「日帰り富士登山だっ!」と言って早朝ダッシュした姿を最後に見ていません。

 グラさん曰く「いつものことじゃ」なので問題ないのでしょう。

 

 私のスマホに手をかざすミオさん。

 

「今何をしたのですか?」

「元気が出る音声データを少々、暇な時にでも聞いてみて」

「ほう。流行りのASMRですか・・・ちょっと興味あります」

「シロちゃんズルい。私もほしい」

「ダメです。あなた私以上にスマホ壊すでしょうが!今何代目ですか?」

「27代目・・・今使ってるのは超合金製の特注品・・・あはは、そりゃダメだよね」

 

 元気が出る音声・・・期待していいですか!十中八九マサキさんの声ですよね。

 松岡修造さんの応援集だったらどうしてくれよう。

 もっと!熱くなれよぉぉぉーーー!

 

 玄関前には黒塗りの高級車がスタンバってました。

 こちらを見た運転手が深々とお辞儀をする。

 インモーの指示でファイン家が迎えを寄こしたみたいです。

 

「では行って参ります」

「行ってきます」

 

 手を振るサイさんたちに見送られラ・ギアスを出発。

 

「到着までしばらくかかります。ご要望があれば何なりとお申し付けください」

「ありがとう。運転よろしくね」

「安全運転でお願いします」

「はい、お二人を無事にお連れするのが私の任務ですから」

 

 これといった特徴の無い運転手と会話した後、窓の外を眺めながら今後について考える。

 どんな顔して会えばいいのだろう、インモーにもう一人の愛バ・・・

 オルゴナイトはまだ使えない、女神の真名なんてわかんねぇよ。

 

「・・・すぅ・・・すぅ・・・」

「あらら、もう寝てますよ」

 

 クロちゃんはイベントの前日に興奮して寝不足になるタイプ・・・私も少し仮眠を取った方がいいかも。

 到着すれば起こしてくれますよね・・・ふぁぁ。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「今しがた出発なさいました。私も後を追います」

 

 警護対象であるお嬢様が乗った車を見送りながら定期連絡を入れる。

 ステルスモードで待機させておいた車に乗り込む寸前、こちらを向けられた視線を感じる。

 

「やはり気付いてましたか。天級なら当然ですよね」

 

 煌めく白銀の髪を持つ女性、その視線を真っ向から受け止めた後に会釈をしておく。

 顔を上げた私に、彼女は何かを言っている。

 この距離では声は届かない、口唇術で唇の動きから意味を読みとる「お願いね」ですか。

 

「はい。この命に代えましても」

 

 あの方がマサキさんのお母様・・・今度はゆっくりとご挨拶したい所ですね。

 車に乗り込み発進させる。

 今、お嬢様たちの警護任務に当たっているのは私一人。

 世間の騒がしたルクスなる不審者のせいでサトノ家従者部隊も大忙しなのです。

 「単独任務だけど、君なら大丈夫」と任せてくれた頭首様の期待に応えるためにも頑張ります。

 車の免許ですか?ウォルターが内緒で教えてくれましたから何も問題ありません。

 走った方が速いのは百も承知してます。

 この世界、公道でのウマ娘による全力疾走はいろいろと規制があるのです。察してください。

 あぅ・・・見失っちゃう。安全運転で急がないと。

 

「綺麗な子だったわね、知り合い?」

「さあね。おそらくはサトノ家の従者部隊員でしょ」

「見たことない顔じゃが超級騎神かのう、かなりの強者じゃて」

「あの子ヤバイ、覇気に属性が宿ってる」

「うぇ!それって最早私たちの同類じゃん」

「「「「お前は違う!!!!」」」」

「えー私違うのかぁ。昔は頑張って地属性っぽい攻撃していたのになあ」

 

 最初からウマ娘ですらない上に、先日、アインストも辞めてしまった。

 こいつは一体何を目指して生きているのだろう?

 アインストじゃなくてアンノウン、正体不明のヒト型生命体の友人にジト目を向ける一同。

 

「そもそも地属性って何?意味わかんないんだけど」

「それ言っちゃう!地震を起こしたり、岩を出したりぶつけたりとか・・・いろいろだよ」

「地味」

「無駄に硬い」

「茶色か黄色」

「運動性悪そう」

「酷い!全世界の地属性キャラに謝って!」

 

 地属性が大活躍する作品って何かあったかな。知ってる人は是非教えてください。

 

「気のせいか・・・」

 

 今の覇気・・・一瞬だけど、マサキがヒョッコリ帰って来たのかと錯覚した。

 もしかして、マサキにドレインされた経験者では・・・微量だが覇気が混じることもあるって聞いてるし。

 うちの子、ああいう清楚系も好きなはず。

 クロちゃんやシロちゃんとは、また別の魅力と気品に溢れた子だったな。

 

「いや、まさかね」

 

 バカな妄想がよぎった頭を振る。

 従者部隊なら彼女たちの部下に当たる。そんなこと起こりえない。

 でも、あの子なら・・・いい勝負になる。

 クロシロちゃんと"真っ正面から殴り合い"が出来る子だと、そう思ってしまった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 車が停車し、ドアの開閉音がしたような気がする。

 どれぐらい眠っていたのだろうか、隣でクロちゃんが身動ぎする音が聞こえる。

 

「ふぁ・・着いたの?」

「そうみたいですね。運転手さ・・・あれ?」

 

 どこにいったのでしょう、姿が見えませんね。

 突然の便意にでも襲われたのでしょうか?だとしても、一言も告げずに下車するか・・・

 というかここは何処だ?周囲の景色からすると採掘場跡のように見えるが、インモーの指定した場所は都市部にある某ホテルのラウンジではなかったか。

 ガチャ・・・おう、扉にロックがかかってます。放置された上に閉じ込められました。

 

「運転手さん戻ってこないね~。これはアレかな」

「アレですね」

「「嵌められた!!」」

 

 インモー!愛バ会議とかハッタリかまして、私たちを亡き者にする算段か!!

 後方から何か来てる。トラックか・・嫌な予感がする。

 

「ジタバタしても仕方ありません。ここは怯えてテンパっている振りでもしておきましょう」

「あ、トラックから誰か出て・・・わぉ、団体さんだ」

「囲まれましたね」

 

 猛スピードでこちらにやって来た数台の大型トラック。

 停車してすぐに、開け放たれたトレーラーからゾロゾロと人が降りて来た。

 ざっと30人って所か、それより何だこいつら?お揃いの妙な格好しやがって。

 変なゴーグルを装着し、腕部と脚部に重火器を思わせる機器がくっついている。

 

「明らかに友好的ではない様子。インモーの指示でしょうか?」

「どっちでもいいよ。邪魔するなら倒すだけだし。それよりも、姿だけじゃなく覇気も同じなんて気味が悪い」

「その様に造られたのでしょうね」

「まともな人間じゃなかったか、人造人間?」

「ミオさんに教えてもらった、戦闘用アンドロイド"量産型Wシリーズ"だと思いますよ。確かファイン家が所有しているのだとか」

「マサキさんが戦闘した奴らか、ファイン家産ならインモーの容疑が濃くなってきたね」

 

 無言の集団に取り囲まれるのはあまりいい気分がしない。

 ドアをぶち破って逃げるべきだろうか。

 

「ターゲット二名を確認。これより殲滅行動に移行する」

 

 聞こえました?殲滅行動ですってwww参ったね。

 ガシャンッ!とアンドロイドたちの腕がスライドし砲身が現れる。

 

「排除開始」

 

 豪快ですね~グレネードランチャーの集中砲火で車ごとドカン!ですか。

 着弾までの僅か、相棒の目を見て会話。はいはい、わかってますよ。

 

 私たちを乗せた車は予想通り大爆発炎上しましたとさ。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 1週間前。

 メジロ家が管理する特定犯罪者収容施設。

 

「バカな!脱走者だと。警備の者は何をやっていたんだ」

 

 緊急招集された人員の一人。カイ・キタムラは不測の事態に頭を抱えていた。

 外部からの侵入者によって凶悪犯罪者が一名脱走したとのことだ。

 

「口で説明するより、監視カメラの映像を見て頂いた方が速いです」

「こいつは・・・ルクス!」

 

 現在進行形で世間を騒がせているルクス(変態仮面)。

 そいつらしき人物が施設の正面から堂々と侵入、囚人の一人を伴いごく自然に退出していく様子が映し出された。

 

「何故だ?目の前で開錠されているのを黙って見ているだと」

 

 カメラに映る警備員は棒立ちで微動だにしない。

 まるで、ルクスと脱走者以外の時が停止しているかのようだ。

 ルクスのかざした手から一瞬光が発せられている。何かしているのは間違いない。

 

「施設全体の時が停止した訳ではないようです。止っていたのはルクスの付近にいた警備の者のみ」

「仕組みはわからんが、一定範囲内の相手を停止させる術か・・・ふざけているにも程がある」

 

 こんなものを自由に使えるのであれば、ルクスの捕縛など夢のまた夢ではないか。

 厄介だ、この力についても報告しておかなければ。

 

「ルクスについては後回しだ。奴が逃がした囚人は?」

「こいつです。やっとのことで逮捕出来たというのに残念です」

「クソッ!レーツェルに何と言えばいいんだ」

 

 逃げた囚人はマサキと因縁のある人物、その名をアーチボルド・グリムズといった。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 そして現在、人が寄り付かない採掘場跡にて、炎上する車を見ながら高笑いを上げる者がいた。

 

「ひゃははははははっっ!あ~開戦の狼煙としては些か派手でしたかねぇ!」

 

 奇声を上げながら楽しそうに顔を歪める男。

 Wシリーズを引き連れてトラックから降りた彼は血走った眼をギョロギョロ動かす。

 そうかと思えば、途端に冷静さを取り戻しアンドロイドに指示を出す。

 精神は既に破綻している、男はとある人物への復讐心のみで活動中の狂人。

 

「まだ生きている。警戒を怠るな」

「了か・・い・・」

 

 刹那「了解」と返答を試みたアンドロイドの内、一体の首から上が消失した。

 

「ひゃは!そうこなくては」

 

 頭部を失い崩れ落ちる者を尻目に、男はそれを視界に収める。

 黒い戦闘服に身を包んだ黒髪のウマ娘、紅い瞳を爛々と輝かせ戦利品の頭部を相棒へほうり投げる。

 

「シロちゃんパース」

「うわっ!生首なんていりませんよ!」

 

 と言いつつ律儀に受け取ってしまった。

 乱暴にもぎ取られた首からは機械部品や導線が露出して痛々しくもグロい。

 ロボでよかった。

 

 爆発した車の中から奇跡の生還!種も仕掛けもありありです。

 ただ単純に私が覇気で防壁を展開、爆炎を上げる車内からそっと退避。

 その後にアンドロイドの指揮をとっている人物を確認。

 我慢できなくなったクロちゃんが、敵の頭部をお持ち帰り~。

 それだけです。

 

 うーん、よくできてますね。これにもEOTが使われているはず、詳しく調査したい所です。

 もしアンドロイドが普及すれば、身の回りの雑用をお願いしたい。

 どら焼き好きのタヌ・・ネコ型ロボットはいつ実用化されるのでしょうか?

 

「戦闘続行不可能、コードATA発動」

「ん?なに・・」

 

 生首が何か呟いた。そして自爆しやがった!

 

「サトイモ爆殺☆」

 

 しとらんわ!嬉しそうに何てことを言うのだろうか、このキタサンは!

 ゲッホッ!うへぇ・・・三日前なら今ので死んでたぞ。

 ダメージ確認・・・ちょっとむせただけ、痛くも痒くもないわ!

 頭部や顔面にボールの直撃を受けたり、私こんなんばっかですよ。

 毎回同じネタで弄られる芸人のような扱い。

 

「なるほど、やられると自爆するんだ。注意しようねシロちゃん。」

「なるほどじゃないですよ!ちょっとコゲちゃったじゃないですか!私だからこの程度ですんでいますけどね」

「ああ、それだ!そのふざけた感じ・・確かにお前たちは奴の愛バだ!!」

「何このおじさん、情緒不安定で怖いんだけど」

「あなたは誰ですか?私たちがサトノ家の者だと知っての狼藉ですか」

「キミたちの操者に随分と世話になった者ですよ。ええ、本当に大きなお世話にねぇ!!」

「マサキさんの敵か、やっちゃっていいよね」

「名前ぐらい聞いてあげましょうよ。興味ないですけど」

「アーチボルドだ。アンドウマサキをぶち殺したくて仕方がないんだよ!この僕があんなアホな男に好き放題やられて・・・どれほどの苦痛を味わったことか!!」

「どうせ自業自得でしょ。性根が腐ってそうだし」

「覇気が汚ったねぇな。クズ特有のゲロ以下臭もします」

「ああ~ムカつくムカつくイラつくぅぅぅ!操者はゴミクズ!その愛バもゴミクズだぁ!!」

「ゴミにゴミって言われたww」

「マサキさんへの侮辱は許しませんよ。その口、二度ときけないようにしてやろうか」

 

 頭を掻きむしり、地団駄を踏んで怒り狂うクズ。

 

「それで?あなたを寄こしたのは誰ですか?」

「善意の協力者がいましてね。キミたちを自由にしていいそうだ」

「ルクスですね」

「アホの愛バにしては利口だな。そうだ、ルクスが私を解き放ってくれた」

「インモーの容疑が晴れた」

「本当なら奴を直接ブチのめしてやりたいが、いないなら仕方がない」

「「・・・」」

「聞いているぞ。別の世界に飛ばされたんだろうwwざまぁないなぁwwひゃははははははは」

「「・・・」」

「今頃、野垂れ死んでいたりしてなぁ!愛バのキミたちはどう思う?んんん?」

 

 私とクロちゃんは同時に動いていた。

 覇気弾を無言で射出!狙いはクズの顔面。笑うな!マサキさんをバカにするな!!

 あの人が、私たちを残して死ぬわけねーだろうが!

 

「おっと、危ない危ないw」

 

 ちっデバイスか!

 クズの腕に現れた白い装甲が覇気弾を防ぐ。

 

「ルクスから玩具をもらったようですね」

「僕のデバイス、グラビリオンですよ。防御性能は折り紙付きぃぃぃ!」

「それはよかった。時間をかけて痛めつけてあげる」

「こちらのセリフですよ。操者への恨みは愛バを苦しめることで晴らせるぅぅぅ!」

「悪趣味ですね。お前絶対モテないだろ!気持ち悪い性癖もっているだろ」

「楽しみだ!楽しみだなぁ!お前たちの亡骸を目にしたマサキはどんな顔をするのかなぁぁぁ!!」

 

 くそウゼェ・・・早く黙らせた方がいい。

 野放しにしておくのは精神衛生上よろしくない。

 こいつの存在でマサキさんが不快な思いをするのは嫌だ。

 

「んん?やる気になったかぁ!だが、僕は野蛮な獣を相手にする趣味は無い!」

「は?ふざけたこと言ってないでかかってこいや」

「玩具はまだあるんだよ!お前たちにピッタリな玩具がなぁ!」

「クロちゃん!一旦下がって」

「ちっ!」

 

 トレーラーの奥にまだ何かいる!?

 危ねぇ!先程までクロちゃんがいた場所へ向け、ビームが照射された。

 続いてトレーラの外壁を内部から突き破った何者かが私の方へ突撃してくる。

 大きさ2mちょい、紅白の装甲・・・PT!しかもこいつは。

 右腕に装備されたアレを打ち込むそぶり!?それはちょっと困る。

 

「アルトアイゼン!無人機版が組み上げられていたとは」

 

 誰だ!ロボにする計画はあったけど許可してねーぞ!著作権どうなってんの?

 まずい、私が考えたスペック通りの性能ならステークを食らえばタタでは済まない。

 クロちゃんの方へ行ったのは・・・

 

「ぎゃーーー!!ビームと実弾の雨あられ!ヴァイスリッターだよ、シロちゃん!」

 

 ですよねー!二体での運用がデフォルトです。

 

「アンドウマサキの愛バを騙るなら、この程度の相手は楽勝だろう?ひゃはははははっ!」

「クソっ!」

「シロちゃん。コンビネーション!こっちも上手いことやらないとヤバイ!」

「わかってますよ!」

 

 クズ一人ならともかく、アルトとヴァイスのPT版は予想外だ。

 この短時間でわかった。このPTメチャクチャ完成度が高い!予想だがEOTも組み込んで私が想定した以上のスペックを叩きだしている。

 戦闘データは私たちのものを流用されているはずなのに、やりにくいったらありゃしない!

 どうする?二対二でやった方がいいのか?

 私とクロちゃんの連携を上回る動きしそうなんだけど・・・そうなった場合追い詰められるのはこっちだ。

 

「目の前のPTを私だと思ってぶっ飛ばせ!」

「了解!そっちの赤カブトムシは私ってことで」

「周りの雑魚も来るぞ」

「自爆にも注意」

 

 アンドロイドもチクチク攻撃してくるから面倒くさい。

 機械だけあって、アルトとヴァイスの攻撃の間を縫うように撃って来るから油断できない。

 

 足りない・・・これじゃあ、全然足りない。

 私たちは、マサキさんの愛バなのに、こんな奴らに手こずっている場合じゃないのに!

 畜生っ!

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「そこをどいてくださいませんか?」

「まあまあ、そう言うなって。暇ならちょっとお茶でもどうよ?」

 

 ヘラヘラと近づいて来た相手に蹴りを見舞うがヒラリと躱される。

 

 お嬢様たちが乗った車を追跡中だったアルダン。

 ファイン家が指定した目的地から外れて行く車を不審に思いながら追尾していた所、彼女は現れた。

 

 突然、車のボンネット上へと落下して来た彼女に驚き運転を誤る。

 お嬢様たちの車を見失しなったあげく、私の車は横転した。あぅ・・事故ってしまいました。

 「おーい、生きてる?」と声をかけてきたのは白い毛並みをなびかせた長身のウマ娘。

 誰のせいで事故ったと思っている!

 即座に立ち上がり臨戦態勢を取った。敵か?相手の意図がわからないが邪魔をしたのは事実だ。

 

「急いでいるんです。邪魔をするなら容赦しません」

「おお~。これがあいつの・・・へぇーほぅ~。いい趣味してんなぁ」

「ジロジロ見ないでください」

 

 無視して通り過ぎようとした所、先回りされて通せんぼ・・・イラっとしました。

 なんでしょう?この方・・・ものすごくものすごーく腹が立ちます。

 

「そりゃあ、同族嫌悪ってやつかもよ」

「何を・・心を読まないでください」

 

 何が同族だ!身内にこんな変な子は・・・いないですよね?

 

「サトノ家従者部隊の任務中なのです。あなたに構っている暇はない」

「こっちも一応仕事中なんで、構ってほしいぜ」

「誰の差し金ですか!」

 

 デバイス雷鳳顕現!雷を纏った蹴撃を放つ。

 

「ラーメン好きの上司だよっと。やれやれソウルゲインは修理中なのによぉ」

 

 この人強い!私の雷に怯むことなく蹴りを蹴りで相殺してきた。

 

「あの二人が心配なのはわかるけどよ。これも必要な試練ってことで、アルダンは私と遊ぼうぜ!」

「私を知ってる?あなたは一体」

「ばあちゃんから聞いたことあるぜ。1stでの二つ名は"割れないガラス"」

「そのような名を授かったことはありません。人違いでは?」

 

 会話中も拳と蹴りのラッシュは止まらない。

 初対面のはずですよね?この呼吸・・・マックイーンに似て・・き、気のせいですよね。

 

「人違いっちゃあそうだけど。近くて遠いご縁ってヤツがあるかもな」

「戯言に付き合う気はありません」

「そうかい。こっちも試してみるか、出番だぜ!アシュセイヴァー!」

 

 デバイスを出された。今まではお遊びでしたか・・・

 

「えーと何々・・・お、これいってみよう!それ行け!ソードブレイカーっ!」

「っ!?」

 

 何か飛ばした?来る!

 

「操作めんどくせぇ!オートでやれオートで!」

「無線誘導兵器」

 

 実体の刃が備えられた6機のビットが縦横無尽に動き回り、こちらを切りつけに来る。

 無線誘導によるオールレンジ攻撃!死角からの攻撃はズルいです。

 話は変わりますが、この前、従者部隊恒例アニメ鑑賞会でガンダムを見ました。

 そこにファンネルやビット、ファングといった兵器が出てきたのですが、まさにそれですね。

 

「おいおい!これだけやって全部躱すのかよ!イカれた空間認識能力だな!」

「レーザーによる射撃、実体刃とレーザー刃の使い分けもできる・・・よい兵装です」

「こいつはどうだい、ハルバートランチャーってなぁ!」

 

 長槍型の銃身を展開し、複数のレーザーを一斉発射する。

 直撃コース!?ソードブレイカーで着弾地点へと追い込まれたようだ。

 やりますね。気安い言動に反して、その攻めは精密で容赦がない。

 

「ですが・・・私と雷鳳の敵ではありません」

「のわっ」

 

 バチバチと青い放電をまき散らし、脚部のブースターを展開!

 全身をしならせた回転蹴りが宙に弧を描く。

 アルダンを中心に衝撃波のサークル(雷撃付き)が生まれた。

 発射されたレーザーを全てかき消し、周囲の木々をなぎ倒す。

 

「ひゅー!まとめて吹き飛ばしやがった。無茶苦茶するなアンタ」

「次は直接当てます。逃げるなら今の内ですよ」

「逃げたいのは山々なんだがなぁ。言っただろう、仕事なんでな」

「むぅ。思ったより真面目さんですね」

 

 無理難題を振られても職務放棄しないのは従業員として立派だと思う。

 信頼できる同僚や上司に恵まれているのだろうか?社畜?

 いけない、このウマ娘は敵だ。集中集中しないと。

 恐らく悪い人じゃない・・・でも、今は邪魔だ!!

 お嬢様たちに何かあればマサキさんが悲しむ。それは絶対にあってはならない!

 

「恩人の幸せを奪う輩は、私がすべて蹴り砕く!!」

「恩人と書いて、好きな男と読むってか。愛されてるなマサキの奴」

「マサキさんを知っている?か、彼はただの恩人です・・身も心も捧げたいぐらい愛しているなんて、言ってませんよ!!ええ、ホントにちょっと結婚して生涯を共に過ごしたいだけですから!」

「あ、はい(ヤベェな!納得のマサキの愛バ3号ww)」

 

 一人で勝手に惚気た上に照れながら攻撃を仕掛けてくる。

 そんなアルダンを見て安堵するゴルシ。

 自分で言うのもアレだが、私のハジケ具合は血筋の影響が大きいと思う。

 メジロの血・・・恐ろしいぞ!

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「おーい、見ているだけでいいのか?」

「まだ早いよ。みんなも指示するまで動かないでね」

「「「「御意!」」」」

「ゴルシは大丈夫かね。結構ヤベェ奴なんだろメジロの秘蔵っ子はよ」

「ゴルシちゃんなら何とかするよ。メジロ家にはメジロ家の末裔をぶつけてみましたw」

 

 少し離れた場所にて部隊を展開しつつ、採掘場で行われている戦闘を見守る一団がいた。

 ファイン家頭首とその参謀に十数人の部下たちだ。

 気配遮断の隠形術を周囲に張り巡らせているので、向こうはこちらに気づいていないだろう。

 キタサトちゃんを翻弄する二体のPTと数十からなる量産型W、二人ともピンチだね。

 

「過激派連中はどうなった」

「一網打尽にしてやったよ。面白いように釣られてやんのw」

「悪い女だ」

「そうだよ、知らなかったの?目的のためなら友人だってダシにしちゃう」

 

 第一回愛バ会議。その裏でファイン家は二つの作戦行動を取っていた。

 

 一つ目、かねてからの懸念事項であった1st過激派を炙り出し、一掃すること。

 1st出身者の中には2ndに馴染めず、ファイン家から離反していく者たちも少なくはない。

 それだけならまだいい、問題なのはベーオウルフとルシファーへの恐怖と憎悪に狂った者たちだ。

 破壊獣の幼体だとみなされた二人のウマ娘、キタサンブラックとサトノダイヤモンド。

 彼女たちの殺害を望む彼らは過激派と呼ばれ、2ndとの融和を図り、サトノ家の子らに手出しすることをよしとしない穏健派と対立関係にあった。

 一時期「メジロ家と組んでサトノ家を根絶やしにしろ!」なんて真面目に訴えてきたこともあったな。

 過激派の気持ちはわかる、しかし、何も知らない彼女たちをただ排除して「はい、世界は平和になりました」とはいかないだろう。

 ここは2ndだ、1stとは違う結果と歴史を歩む似て非なる別世界。

 ならば、彼女たちが彼女たちのまま生きている世界を望んだっていいはずだ。

 結果を急ぎ過ぎた悪い子たちは、このファインモーションが止めるから覚悟して!

 

 愛バ会議の日時をリークしてあげると、待ってましたとばかりに入れ食い状態。

 天級を恐れ、ラ・ギアスでは手を出せなかった過激派は、今日一気に動いた。

 それをまとめて潰した。

 今頃、ハゲが率いる元教団部隊(どう見ても毛狩り隊w)が後始末を完了しているだろう。

 

 二つ目はこれからだ。

 

「過激派の奴らめ。まさか、ルクスを頼るとはな」

「予定調和だよ。過激派だけの戦力じゃ蹴散らされて終わりだろうし、こっちの方が都合がいい」

「ファイン家頭首としては正しい判断だ」

「でしょ。何も問題ないよね」

「あいつらのダチとして、マサキの愛バとしてはどうなんだ?」

「それでもやるよ。汚れるのも罪を背負うのも私の役目、これは誰にも譲らない」

「付き合わされる方は堪ったもんじゃねぇな」

「無理強いはしないよ。嫌ならいつでも辞めていいからね」

「アホか、ラーメン食うしか能がねぇガキを残して何処へ行けってんだよ。そうだろお前ら」

 

 シャカが後方に控えた部下たちに声をかける。

 うんうんと、示し合せたかのように頷く部下たちは思いの丈を漏らす。

 

「そうっスよ!頭首様。もっと俺たちをアテにしてくださいッス」

「素はヘタレで根暗なんですから、ご無理をなさらぬように」

「極稀に醤油ラーメンと味噌ラーメンの区別がついてないの草www」

「マサキさんにデレデレなの可愛すぎる!」

「うどんを敵視するのやめてくれませんか?」

 

 みんなありがとう。

 何人かは不敬罪で、四葉のクローバー100本(野生)を収穫するまで野宿の刑だ。

 

「みんなデバイスは持ってきたかな。よしよし、ランドグリーズ隊!顕現しちゃってよ」

「「「「了解!!」」」」

 

 部下たちの内、デバイス持ちの10名がお揃いの腕輪に触れる。

 一瞬の輝きの後、緑色の武装を纏った姿に変わる部下たち。

 ランドグリーズは1stで運用されていた重装甲の砲戦型デバイス、左肩にマウントされたリニアカノンによる長距離砲撃が得意。

 

「いつでも撃てるように準備しておいて、勝手に撃ったらダメだよ。あれ?シャカは装備しないの」

「俺はこいつでいい。弾は例のアレだ」

 

 シャカは長方形のケースから長銃を取り出す。

 ブーステッドライフル、威力射程共に狙撃にはもってこいの武器だ。

 

「凄く似合ってるよ。一発勝負になるから外さないでね、スナイパーヤンキーw」

「うるせぇ、というかお前のデバイスは間に合ったのかよ」

「今出すからちょっと待って・・・うんしょ、ラーズアングリフ!セットアップ」

 

 ファインモーションが纏ったのは紅い武装。

 修理中のアンジュルグに代わり用意した新たなデバイス、ラーズアングリフ。

 部下たちが装着しているランドグリーズをベースに各種能力を強化したカスタム機。

 砲撃戦用の機体であり、武装は実弾兵器に纏めている。機動性は低いが厚い装甲と多彩な防御機構を有しており、長射程の武装で敵を近づけさせない事も相まって、堅牢な守りを誇る。

 強化分の重量や要求する覇気が増加しており、並みの騎神では動かすだけでも一苦労の問題児でもある。

 

「そいつをまともに動かせるとはな」

「これもマサキと契約した恩恵だね。重厚感がしっくりきて怖いぐらい」

 

 契約の恩恵は本当に素晴らしい。

 基本能力は上昇し、感覚が研ぎ澄まされ、視野も広くなった。覇気の流れもより深く感じ取れる。

 結果、デバイスとの親和性が向上し、以前は使えなかった武装を扱えるようにもなった。

 最高の操者であるマサキの愛バになった、その特典を嫌というほど感じてしまう。

 

 右背部に折り畳まれて装着されている長身のリニアカノン。

 フォールディングソリッドカノンに、今日のために用意した特殊弾頭を装填する。

 砲身を採掘場にいるターゲットへ向けたまま待機姿勢。

 

「俺はどっちを狙えばいい?」

「キタサンブラックをお願い。私がサトノダイヤモンドを仕留める」

「優先すべきなのはベーオウルフじゃないのか」

「わかってないな~。1stに直接的な被害を及ぼしたのは確かにベーオウルフだよ。だけどね、本当に恐ろしいのはルシファーの方。あいつの狡猾さと残虐性が世界の滅びに繋がった」

 

 単純な破壊活動は本能のまま暴れ狂うベーオウルフが上だ。

 しかし、長引く戦火の最中、ルシファーは頭を使うように進化した。

 対象をただ捕食したり殺すのではなく、オルゴナイトの浸食により自身の手駒にすることを覚えた。

 人間、ウマ娘、無人機を自分たちの眷属化し軍団を編成し運用する。

 コンピューターや電子機器をハッキングし、こちらの裏をかいたり、重要拠点を優先的に攻撃する。

 戦略級の超兵器を支配下におき使用されたこともある。

 トライ&エラー楽しむかのように一つ一つ丁寧に経験し学習し、更なる攻め手を繰り出してくる。

 それをいつしかベーオウルフも模倣する始末。

 気付いた時、二体の破壊獣は手が付けられない存在と化していた。

 

 優先して殺すべきなのはルシファーの方だ。

 

「マサキが残してくれた力、こんな風に使うなんて・・・自分は本当に最低な女だよ」

 

 マサキが転移した後の教団神殿跡、クロスゲートと共に回収された物がある。

 それは、現場に残された僅かな緑の結晶体、オルゴナイトの塊。

 殆どは粒子化の後に風化していくはずなのだが、結晶化したまま形を維持している物を発見。

 ファイン家の技術部に運ばれたそれは二発の特殊弾頭に加工された。

 

 一発はブーステッドライフル用のライフル弾。

 もう一発は、ラーズアングリフのフォールディングソリッドカノン用の炸裂弾。

 

「殺傷能力はアングリフの炸裂弾がどう見積もっても上。だから、私がサトノダイヤモンドを狙う」

 

 緑のオルゴナイトは紅いオルゴナイトの浸食を跳ね除ける。

 そればかりか、逆に浸食を上書きした光景を確かに見た。

 マサキと女神の力が宿ったこの弾頭こそ、ベーオウルフとルシファーへの特効兵器だ。

 命中すれば破壊獣をきっと殺せる。

 もしこれが1stで量産されていたら・・・それは、考えても詮無きことか。

 

 今日、愛バ会議が開催されるのは、キタサトちゃんの二人が試練に打ち勝ってからの話だ。 

 ルクスでも過激派でもいい、何なら私がやってもいい。

 二人をギリギリまで追い込む、そして内に秘めた獣を解き放ってもらう。

 その結果、再び破壊獣と化すならば・・・責任をもって殺してあげる。

 二人が世界の希望になるか、絶望になるか、見極めさせてもらう。

 これが二つ目の作戦だ。

 

「恨んでくれていいよ。マサキに嫌われちゃうのはキツいけどね」

「なあ、あいつらが覚醒することなく、このままやられちまったらどうするんだ?」

「どうもしない。ここで倒れるなら、二人はその程度でしたってだけ」

「そこは厳しいんだな」

「ルクスと戦うつもりなら強くならないとね。それに、弱いウマはマサキの愛バ失格!」

「言ったな。その覚悟があるなら付き合ってやるよ頭首様」

「総員、待機状態を維持。もう少し戦況を見守るよ」

 

 ターゲットインサイト、この距離でも美しく成長した顔がよく見みえる。

 あらら、だいぶ切羽詰まっているねダイヤちゃん。

 できれば撃たせないでほしい。

 本当は、今だって体が震え出すのを必死に抑え込んでいる。

 二人は友人であり、同じ男を愛する同類だ。殺したくはない。

 でも、その時が訪れたら躊躇はしないと決めている。

 

 これでも二人のことを信じている。

 マサキが選んだ子たちだもの信じるに値する。

 だから・・・どうかお願い・・・信じさせて!私たちを世界を裏切らないで!

 

「マサキ・・・キタちゃんとダイヤちゃんを守ってあげて」

 

 ここにいない操者に思いを馳せる。

 そうやって叫びたくなるほどの焦燥を受け流す。

 守ってと言いつつ、殺そうとしている。

 矛盾にまみれた自分の醜さを飲み込んで、狙い撃つ姿勢は崩さなかった。

 

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