俺と愛バのマイソロジー   作:青紫

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葬送と覚醒

「ここどこ?」

「また夢ですか」

 

 女神と初めて会ったときの状況と一緒だ、私とクロちゃんが同時に見る妙な現実感を伴った夢。

 直前の記憶は真名当てに正解し、力を受け継いだ後で途切れている。

 なんだか知らないが、謎の異空間にご招待されたようだ。

 こんな所にいる場合ではないのですが、まだ戦わないといけないのに。

 

「見て、誰かいるよ」

「ここへ招き入れた犯人ですね」

「む、要警戒だね」

 

 第一村人発見。視線の先に二人いる。

 その顔、その姿はまさしく・・・

 

「嘘、私がいる」

「どうやらそのようです」

「リアクション薄っ!驚いてないの?」

「驚いてますよ。ですが、いつかこんな日が来るのではと、思っていましたから」

「ドッペルゲンガーに遭遇することを予測しながら生きていたの。シロちゃんってば、やっぱり変人」

「やかましいわ」

 

 変人で悪かったな!

 脳の演算領域に余裕があるのだから仕方ないでしょう、並列思考処理なめんなよ。

 ドッペルゲンガーとは言い得て妙だな。出会ったら死ぬという噂は本当でしょうか。

 ふむ。姿形もそうだが覇気の性質すらほぼ同一、父に隠し子が!・・・それはないですね。

 自分たちに瓜二つのウマ娘がこちらを見据える。

 何やら様子がおかしい、纏う雰囲気は暗く、虚ろな目をしている。寝不足かな?

 生気が感じられない、その目は酷く冷めていて、顔色も良くない。

 似ているけど、やっぱり違う。こんなのが自分たちだとは思いたくない。

 これでは、私たちが陽キャで向こうが陰キャですね。

 

「その面でマサキさんの前に立つ気ですか?冗談は顔だけにしてください」

「よくできた偽物さんたち、私たちに何か用かな」

 

 偽物の私が手を動かす。

 白一色だった景色が様変わりする。

 何ですかここは・・・瓦礫の山?

 かつて街だったであろう場所、崩れて倒壊した建物、人はおろか生命の息吹を感じられない。

 何もない、もうここには何もない。

 

『ここは終わった世界』

『私たちが終わらせた世界』

「な、あなたたちは!」

「その姿・・・何?」

『ベーオウルフ』

『ルシファー』

『『世界に牙を剥いた滅びの獣・・・破壊獣』』

 

 景色と共に偽物たちの姿も変化していた。

 全身を紅い結晶体で覆われた異形の体。

 一体は四肢に巨大なカギ爪を装備した化物。

 もう一体は肥大化し枝分かれした尾を広げる化物。

 化物だ、化物がいる。

 存在するだけで周囲を威圧し恐怖を植え付ける覇気を撒き散らす。

 破壊獣だと?正真正銘の化物じゃないですか。

 

「警告のつもりですか?オルゴナイトを使えば、私たちも化物になると」

「そんなことって!」

『もう二度と』

『繰り返す訳にはいかない』

「うっ!」

「な、にこれ・・」

 

 化物が言葉を発した時、知らない記憶が一気になだれ込む。

 ここでは無い別の世界1stを生きた私たちの記憶。

 何者かによって神核を弄られ化物に成り下がった自分。

 あらゆる命を貪り殺す。

 友を仲間を愛すべき人たちの命を無慈悲に刈り取る。

 あらゆる物をそこにあるだけで壊す。

 邪魔、邪魔、邪魔だ。全部いらない、イラナイ、壊れろ、キエロ。

 狂って狂い続けて暴れる回る。

 行きついた先は、何も無い、誰もいない、全てが終わった空虚な世界。

 

 こんな寂しい世界を誰が望んだというのだろう。

 

「なるほど、あなた方の無念が真名当ての邪魔をしていたのですね」

「ずっと引っかかっていたモヤモヤの原因は、別世界の私・・その後悔と懺悔」

『オルゴナイトは真の強者にのみ許された力』

『あなたたちには使いこなせない』

「だから、諦めてここで倒れろと?」

「嫌だよ。今、力を使わないとやられちゃう」

『それがあなたたちの運命』

『みんなを救う唯一の方法』

「だからって・・・」

 

 言いたいことはわかるが到底受け入れられない。

 反論しようとした矢先にシンプルな要求を突き付けられる。

 

『『死ね』』

 

「あ゛(# ゚Д゚)」

「お゛(#^ω^)」

 

 今の聞きました?直球ど真ん中ストレートですよ!

 思わず条件反射でメンチを切ってしまう私たち。

 

『世界のために死ね』

『みんなのために死ね』

『未来のために死んでよ』

『全てを救うために死んでほしいの』

 

 紅い化物たちが吠える。

 それはここにいる四人全員に向けられた呪詛の言葉。

 

『ねえ・・わかるよね、わかってるでしょう!』

『あなたたちは、私たちは皆ここで死ぬべきなんだよ!!』

『ダメなんだよ・・ここにいたらいけないの、許されないの』

『お願い、わかってよ・・・もう嫌なの・・殺すのも壊すのも嫌!!消えちゃいたい・・』

 

 それは魂の慟哭だった。

 二体の化物が泣きながら訴えかけてくる。

 私たちの存在は世界を危険に晒すと、許されない存在だと、だから死ねと。

 

 それに対する返答は既に決まっている。

 

「「断る!!」」

 

 私とクロちゃんの声が綺麗にハモる。

 フッ、ドヤ顔で言い切ってやりました。ポーズも決めれば尚よかったですね。

 シーンと場に白けた空気が漂う。おやおや、完璧な返答に唖然としているようですね。

 一拍おいて我に返った偽物コンビが慌てだす。

 

『あの、話聞いてた?ものすごーくシリアスで重要で緊迫していたはず』

『世界の命運が・・』 

 

「「知ったことかぁ!!」」

 

『『えー・・・』』

 

「よく聞きなさい!別世界の私たち!えーとですね」

「一緒にしないでっ!!」

「そうだ一緒にすんな!この陰キャどもが」

 

 ここからは私たちのターン!

 

「自分たちがやらかしたから、別世界の私たちも同じミスするよね。そうだ!そうに違いない!って」

 

「「大きなお世話じゃボケ!!」」

 

「必要以上のお節介は勘弁してよね」

「大体ですね~。私たちそんなに似てますか?」

「よく見たらそうでもないよね」

「私の目は誤魔化せません。ほほう、おぱーいのサイズが違いますね。私たちの方が説明不要なほどでかい!」ドヤァ

「ちゃんと栄養取ってる?勝手に同類認定されても困るよ」

「あなたたちに足りないもの、それは!」

「情熱・思想・理念・頭脳・気品・優雅さ・勤勉さ!そしてなによりもォォォオオオオッ!」

 

 さあ、言っちゃいますよ!合わせろクロちゃん!

 

「「速さが足りない!!」」

 

 決まったな!ここ最近の私たち冴えてるぅ!

 イエーイ!とテンション高めのままクロちゃんとハイタッチです。

 

『『は?』』

「は?じゃねぇよ!アンタらがダメダメだったの仕方ない。しかし!私たち優秀ですから、できる女ですからね!あなたたちと違ってw」

「無問題ってヤツだよ。余計な心配はいらないの!そういうのいいからぁ!」

『『・・・・』』

「別世界の私たちの罪?とかで責められてもねぇ。知らねぇとしか言えませんし責任とれませんよ」

「身に覚えないのに、そっちの嫌な記憶とモヤモヤを押し付けて来るし。妙な罪悪感がして不快なんだけど」

「あなたたちの残念無念はよーく理解しました。大変お気の毒だとは思いますよ」

「その上で言わせてもらうね」

 

「「私たちを嘗めるな!!」」

 

 一緒にするな、侮るな、見下してんじゃねぇ!2Pカラーの分際で!

 失敗したらどうする?知らん!その時はその時だ!

 希望的、楽観的、無謀、無責任!なのは百も承知よ。上手くいった場合を考えて何が悪い!

 世界の命運?そんなものより大事なことがある。大事にしたい人がいるんだ。

 あの人と一緒に幸せな時を過ごす。それこそが私たちの命題よ。

 そのために必要なら世界平和を維持してもいいし、邪魔する奴は排除する。

 ただそれだけ、実にシンプルでしょ。文句あるか?

 

 それでどうする?力ずくて私たちを殺す?

 

『『・・・・』』

「・・・・」(くしゃみ出そう)

「・・・・」(シロちゃんの耳大きいな~)

 

 は、鼻がムズムズして・・おいヤメロ!私のウマイヤーをお触りしたいなら、金を払え!

 あ、もちろんマサキさんは永久無料ですからね。ガンガン触って揉みくちゃにしてください!

 

『・・・そうだね。同じじゃない、違うよね』

『ならば違う結果も導けるはずです。フフッ、大変よい啖呵でしたよ。もう一人の私』

『これが操者を得た騎神、愛バってヤツなのか。いいね、凄くいい』

『私たちが成し得なかった可能性。眩しいですね』

 

 紅い結晶が消え、化物たちの姿が元に戻る。

 もうこちらに敵対する意思はないようだ。

 ふん、多少はいい面になったなPカラー。

 回りくどいことを、最初から私たちの覚悟を試すつもりだったようですね。

 

『直接話がしたかった。もう一人の自分が、あの優しい人の愛バがどんな子かって』

『予想以上に痛快でした。あの人が見せてくれた通りの子』

「マサキさんに会ったの!?」

『うん。とっても優しくて素敵な人だった』

「そうでしょう、そうでしょう!絶対にあげません!」

『横取りなんてしません。ただ、凄く羨ましくって・・いいなぁ』

『本当に・・・羨ましい』

 

 どこか遠くを見つめる2Pたち、マサキさんに会った時を思い出しているのかな。

 そうか、あなたたちを看取ったのはマサキさんなのですね。

 キラキラと粒子が舞う、一体どこから・・・はっ!2Pたちの体が足先から消えていく!?

 

「体が!?」

『あはは、もうお別れみたいだね』

『女神様にご無理を言って作ってもらった機会、しっかり目的は果たせたので満足です』

 

 う、自分と同じ顔の奴が成仏する瞬間を見るなんて、複雑すぎる気分だ。

 

「化けて出ないでね」

『さあどうかな。あんまり情けないとお邪魔しちゃうかも』

「この夢から覚めたらどうなります?」

『オルゴナイトの力を得た直後の状態で現実に戻るでしょう。くれぐれも力に飲まれぬようにお願いします』

 

 こうしている間にもどんどん消えていく。

 思い残すことがなければいいのですが・・・

 まったくおかしな経験だ、別世界の自分と言葉を交わし見送るだなんて。

 

『操者を大事にするんだよ』

「言われなくても大事にするよ。この命に代えてもね」

『1stの生き残りやファイン家の方々に心からの謝罪を・・その資格はありませんけど』

「ああ、それで初対面のインモーが殺気立っていたのか。まあ、それは上手くやっておきますよ」

『気を付けて、私たちをこんな風にした元凶はこの世界にいる。きっとよくないことを企んでいるはず』

「任せて、そいつに会ったらたっぷりお礼しておくから」

 

 元凶か、そいつの排除は重要項目に位置付けですね。

 マサキさんとの未来を邪魔する輩は始末するに限る。

 

『しっかりね。しっかり生きて幸せになるんだよ!私たちの分まで』

『人生を楽しみ謳歌してください。それが最高の供養になりますから』

『それで、できたら自分意外の誰かも幸せにしてあげて』

『みんな仲良く平和が一番です』

『正義の味方になれとか、世界を救えとか言ってるんじゃないよ』

『少しだけでいいんです。その力をどうか正しいことに、困っている人々の為に使ってあげてください』

『こんなところかな・・ふあ、なんだか眠たくなってきたよ』

『眠るように逝けるなんて、勿体ないです』

 

 もう背景が透けるぐらい薄くなっている。

 2Pたちの言葉を頷きながら聞く。

 

『マ・・サキ・・あの人は・・だから・・・生まれて・・・』

『みんなで支えてあげて・・・絶対・・・逃がしちゃ・・・ダメです』

 

 マサキさんのことはお任せください。あんないい男、逃がしてたまるか!

 

 これでお別れのようだ。名残惜しいが最後の挨拶をしなくては。

 

「さようなら、キタサンブラック。会えてよかったよ」

『こちらこそ。じゃあね、キタサンブラック。いろいろ頑張るんだよ』

「お別れですね、サトノダイヤモンド。安心して眠ってください」

『はい。どうかお元気で、サトノダイヤモンド。・・・ああ、これでやっと』

 

『みんな・・ごめん・・ごめんなさい・・ごめん・・なさい』

『遅く・・なりました・・・今そちらへ・・』

 

 粒子となって消えていく二人。

 

『ねぇ・・キタちゃ・・ん』

『何・・ダイヤちゃん』

『ずっと・・・一緒にいてくれて・・・あり・・がと・・う』

『これからも・・一緒・・・だよ』

『・・・うれ・・しいな』

『うん・・・』

 

 最後にそんな呟きが聞こえた気がした。

 たった二人だけの親友、化物になり罪を犯しても、終わりを迎えた世界の中でも。

 二人の絆は確かだったのだ。

 行先は天国か地獄か・・・何処だろうと二人一緒だといいですね。

 

「仲良しさんだったね」

「ですね」

「逝っちゃった。なんだか寂しいや」

「ですね」

「泣いてるの?」

「別に」

「シロちゃんはさ・・・シロは一緒にいてくれる?」

「わかりきったことを聞きくんですね」

「ちゃんと聞きたいからね」

「嫌だって喚いても一緒にいてやりますよ。あなたみたいな狂人に付き合えるのは私ぐらいです」

「狂人って酷いなw」

「私だけじゃないですよ。マサキさんやそのご家族、サトノ家のみんなに、おまけのインモーともう一人もセットでついてきます」

「そっかぁ、それはとっても嬉しいね」

「そうですよ、だから心配しないで・・・クロ」

 

 ヤダッ照れる!ノリでちゃん付けをやめてしまったぞ。

 クロったら顔赤いぞ、多分私も赤くなってる。

 まあ、これもまた大人の階段を登ったということで。

 あーやめやめ!百合百合しくってよろしくない!女神様が見てるぅ!かも。

 

「これからもよろしくね、シロ!」

「よろしくしてあげますよ、クロ!」

 

 神の奇跡による邂逅が終わる。

 もう一人の自分から託された思いを胸に戦場へと帰還する。

 

「戻ったらすぐバトルだね」

「気合入れていきますよ」

 

 ♦

 

 「「アァァ・・・ウオォォォォッッッ!!」」

 

 ビリビリと大気を震わす咆哮が迸る。

 圧倒的な存在感を放つ化物たちが生まれた瞬間だった。

 そう生まれた、生まれてしまったのだ。

 私たちファイン家が、1stの生き残りとその流れを汲む一族が危惧した最重要警戒対象が!

 ここからはかなりの距離があるはず、それなにこの威圧感は何だ?

 嫌だ、逃げろ、アレの相手をしてはいけない!さもないと殺されるぞ!

 生物の本能が体の奥から危険信号を激しく点滅させる。

 

「オルゴンエナジー規定値以上を検出!破壊獣で間違いありません」

「あれがベーオウルフとルシファー?なんというプレッシャーだ」

「父さんに聞いた通りだ。アレはまともじゃない」

「ど、どうするのですか?このままじゃ」

「みんな落ち着いて。はい、深呼吸~」

「しかし、ファイン様」

「大丈夫だから、ね。パニックになったり、先走るのは禁止だよ!」

「「「「「は、はいっ!」」」」」

 

 キタちゃん、ダイヤちゃん、ようやく本性を現したね。

 やればできるじゃん。

 

「もう撃っちまっていいのか?」

「ダメ」

「覚醒直後で動きの鈍い今がチャンスだぞ。この機を逃せば後は無い」

「結晶体の色を見て」

「色だぁ?あー緑だな。緑?確かレポートでは鮮やかな紅だったはず」

「そう!緑なんだよ。マサキの覇気を同じ綺麗な緑色なの」

「だから何だよ色違いってだけでヤベェ奴らには変わりないだろ」

「1stの二人とは違う、2ndの二人は大事な人を手に入れている」

「操者か、操者の覇気があの化物を大人しくさせるとでも?」

「マサキの覇気で大人しく?うーん、そうは思えない」

「おいおい」

 

 マサキの覇気には強力なバフ効果があり、リンクした対象の全能力を底上げする。

 凄まじい効能はドーピングコンソメスープも目じゃないと評判だとか。

 最早劇薬の如きその覇気を長い間与えられ続けた騎神はどうなる?

 しかも、その中には天級と操者自ら選りすぐった騎神の覇気もプラスされる。

 更にその騎神は神ごときの力で世界滅亡シナリオを担当できる逸材だったとしたら。

 まっさかぁ!破壊獣を超える、新たな獣が生まれたり・・とか?

 ヤバいかも、真面目に逃げたくなってきた。

 

「と、とにかくまだ様子見でお願い」

「手遅れにならなきゃいいがな」

 

 後は二人次第・・・お願い、どうかオルゴナイトに飲まれないで。

 その力は正しい心で使ってこそなんだよ。

 うん。ここまで来たら信じよう、同じ操者をもつ仲間だもんね。

 

「お、動くぞ」

「さあ、どうな・・・へっ!?」

「何だ、あいつら何をやっているんだ」

 

 てっきり近場にいるアンドロイドやPTに襲い掛かると思ったが違った。

 目についたものを手当たり次第に破壊して回るそぶりも見せない。

 二体の獣は明確な意思を持って標的を定め攻撃している。

 

「どうなってやがる」

「わからない、こんなの知らない。予想外だよ」

「ベーオウルフとルシファーが、殴り合いをしてるじゃねーかよ!」

 

 周りの機械群には目もくれず、渾身を力を込めて互いを殴り飛ばす。

 狂える獣が二体、そこにいた。

 

 ♢

 

 アーチボルドは状況について行けず困惑していた。

 憎き男の愛バを追い詰めたはずが、その二人は見たこともない化物に姿を変えた。

 ハッタリか、それとも何か別の隠し玉でも使ったのか?あの男の下僕ならそれぐらやりそうだが。

 全身を緑の結晶に覆われた二体の化物がいる。

 表情は見えず、ピクリとも動かないが尋常じゃない威圧感を放っている。

 

「怯むな。そのまま囲んでやってしまえ!」

「「・・・・」」

「どうした?何をやっている。その化物を始末しろと言っているんだ」

 

 これはどういうことだ。

 今まで従順だったPTとアンドロイドが動かない、故障か?そんなはず無い。

 手元の懐から出したタブレットを確認。

 自分の手駒たちの情報が表示されている。AIに原因不明のエラー?

 何・・・ありえないことに気付く、化物を取り囲んだまま停止した機械どもが小刻みに振動している?

 

「何だそれは、冗談はよせ。まさか‥震えているのか?」

 

 そんなバカなこいつらはただの兵器だぞ!

 命令に従い動くのみ、感情などあるはずが無い。

 それが恐怖しているとでもいうのか。

 

「危険!ベーオウルフ危険!」

「ルシファーを確認!戦闘領域からの即時撤退を進言」

 

「「「「危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険―――」」」」」

 

 その場にいる全アンドロイドたちが狂ったように警報を上げる。

 もし彼らに命令に背く権限があれば一目散に逃げだしていただろう。

 Wシリーズは元々1stの技術と部品で造られたものだ。

 基礎AIに宿敵であり最重要警戒対象のデータが残っていたとしても不思議ではない。

 アーチボルドは知らなかったが、二体のPTアルトとヴァイスにも1st製のAIが使用されていた。

 

「やかましい!また不良品か、ルクスの奴め」

 

 面倒だが直々に手を下す必要がある。

 苛立ちを隠そうともせずに立ち上がり、デバイスに手をやる。

 

「「アァァ・・・オオオォォォォォォォォォッッッ!!!!」」

「ひぃぃ!」

 

 突如として二体が咆哮した。

 膨大な覇気と化物の放つ圧倒的な存在感が衝撃波を伴い周囲一帯に拡散される。

 驚愕のあまり尻餅をつき後退るアーチボルド。

 マズい、あの二体の力は未知数だが自分一人では手に余る。

 くそ、ガラクタどもはまだ動かないのか・・・

 

「オオオオオッッ!」

「アアアアアツッ!」

「な、なに」

 

 次に起こった事態にまたしても驚く。

 叫びを上げた二体はこちらには目もくれず、隣にいる同胞に向かって攻撃を開始したのだ。

 もう訳がわからない。しかし、クズはクズなりに頭を使い状況の整理し、自信を納得させる。

 

「そうかそうか、そういうことかぁ」

 

 恐らくこの化物どもは暴走状態にある。

 どうやったのかは知らんが、己の姿を変容させるほどの力を使ったが失敗。制御不能に陥った。

 大きすぎる力に飲まれた、そう考えればこの状況も頷ける。

 何とも愉快だ!今奴らは、倒すべき敵を見失い仲間同士で殺し合っている。

 

「ひゃは、ひゃはははははは!いいぞ、その調子で殺し合え!」

 

 ここにアンドウマサキがいないのが残念だ。

 実に愉快だ!お前の大事な愛バたちが殺し合いをしているぞ。

 見せてやりたかったなあ、その時のお前の顔を見たかったなあ。

 

 状況が分かれば恐れることはない。

 幸いこちらには向かって来ないようだし、高みの見物としゃれこもう。

 その内ガラクタどもエラーも直るだろう。

 

 ピキッ・・・

 

 キャットファイトというには壮絶すぎる戦いが展開される。

 何度もぶつかり、殴り、蹴り上げ、組み合い、相手の全身を力任せに殴打し続ける。

 暴虐に狂った二体は互いの存在を認められない、二人を知らない者が見ればそう思っただろう。

 

 パキッ・・ビキ、バキ!

 

 全身に亀裂が入っていく。

 飛び散る破片、ひび割れていく結晶はその数を増していく。

 

「おおおおぉぉぉっっ!!!」

「ああああぁぁぁっっ!!!」

 

 一段と大きな叫びが轟く。

 二体が溜めに溜めた頭突きを繰り出し、互いの頭部から全身へと衝撃が駆け巡る。

 

「下劣で野蛮・・流石あの男の愛バ。ああ、もうウマ娘ですらないかぁ」

 

 額をくっつけたまま動かなくなる二体。

 

「もう終わったのか?今ので脳味噌が潰れでもしたかぁ!哀れ哀れだな!」

 

 終わったな。アーチボルトは心底可笑しそうに笑う。

 勝手に自滅した二体を嘲笑い、自身の勝利を確信する。

 頭の中では仇敵のマサキをどう料理してやろうかと考えていた。

 

 まだ何も終わっておらず、ここからが始まりだというのに。

 

 ビキッ、バキン、ビキビキビキビキィィィーーー!!!

 

 割れて、崩れて、剥がれ落ちて行く。

 ああ、鬱陶しい。邪魔だ、邪魔すぎる。硬いし重いし無駄にキラキラしてるし。

 まったくもう、せっかくの美貌(自惚れ入ってます)が台無しだ。

 あの人に可愛いって綺麗だって言ってもらうんだ。

 こんなドレス似合わない必要ない!全部引き千切ってやるわ!

 

「いっ」

「うう~」

「気のせいか?今何か・・」

 

「「いっっってえええぇぇぇぇぇッーーーー!!!!」」

 

 ひび割れた化物から似つかわしくない叫び声が上がった。

 先程までの雄叫びより甲高く感情の籠った声。

 涙目の少女が痛みを訴えて叫んでしまったような声。

 何度目かの驚きに今度こそひっくり返るアーチボルド。

 

「痛い痛い痛いーーー!もう!何するんだよこの石頭!ダイヤモンドヘッド!」

「こっちのセリフです!あがが・・消えた、今ので貴重なメモリーがいくつか消えた」

「どうせくだらない記憶でしょ、腐れサトイモが!」

「マサキさんメモリーかも知れないじゃないですか!!腐れはやめろっ!」

「しゃ・・・」

「あ、クズがこっち見てる」

「しゃ、しゃ、喋ったぁぁぁっっっーーー!?」

「「うるせぇよ!!」」

 

 なんかクズが一人で吠えてる。気安く指を指すなよ。

 暴走したと思った?残念!最初から正気を保ってましたよ。

 「おれはしょうきにもどった」の竜騎士と一緒にしないでください。

 うーん、体が真の意味で硬い。

 ようやく顔の辺りが剥がれた。まだいたるところにくっついてウザいな。

 

「そぉれぃ!」

「ナイス腹パン!って何してんだコラ!」

「やり返してきなよ。この石ころ取って!内側から取れないとか何なのこれ」

 

 石ころじゃなくてオルゴナイトですよ。

 クズはまだ「何?なんで」とか喚いて混乱中、今のうちにこの外装を取り払ってしまいましょう。

 おっふ!全方位を敵に囲まれているじゃありませんか、何故か棒立ちで動かないのが救いだ。

 痛っ!今のワザとだろ!腹パンじゃなくて胸パンしやがった。

 マサキさん専用おぱーいを潰すのやめてくれますか!

 急げ急げ、こんな時こそ慌てずゆっくり確実にってね。

 もういいか、手加減しつつのどつきあいで半分以上は取れた。

 

「頃合いですね」

「ねえ、私の顔面右半分まだ結晶まみれなんだけど」

「我慢しろ!後は一気に吹き飛ばすぞ」

「濡れたワンちゃんのようにだね。じゃあ、いっくよぉぉーー!!」

 

「「せーのっ!」」

 

 弾け飛ぶ結晶体。

 いくつかクズのいる方向へ飛んでいった「ぐほぉ!?」命中してやんのざまぁww

 私たちの全身が露わになる。

 といっても特に変化はして・・・おや、相棒が緑の手袋と靴を履いてますね。

 

「ありゃ、手と足の結晶が残っちゃった」

「賢い私にはわかります。それはあなたの武器です。上手く使って戦いなさい」

「おお、なんとなくわかる。これ消費してもすぐ新しいの出せるよ」

「爪はいらないのですか」

「出せなくもないけど、今はいいや」

 

 結晶体で出来たシンプルな手甲足甲。デバイスも基本は手と足を重点的に固めますし無難な形状ですね。

 インファイト好きのクロにはピッタリ。

 うん?よく見たら、耳にも結晶が残ってるな。何それ角?それともアンテナなの?

 耳の結晶、本人気付いてないしw黙っておこう。

 

「で、その触手がシロの武器?」

「触手言うな!どう見ても尻尾じゃ!」

「いや、パット見わかんないよ。うんw卑猥www」

「ハハッ、こいつ~」

「いやー!ごめんなさい、触手が首に絡みつい・・ぐぇ!」 

 

 尻尾を伸ばして首を絞めてやった。うむ、コントロールはバッチリできます。

 断じて触手ではない!これは尻尾ですよ尻尾!ウネウネ動いてますが尻尾なんです!

 腰下の辺りから緑の尻尾が生えてます。

 通常時のサラツヤ毛並みをオルゴナイトがコーティング。そして、なんやかんやでこうなった。

 自由に動かせるし、伸び縮み形状変化もある程度可能。

 それぞれに感覚が備わっているようで手足が増えたみたい。

 

「ゴホッ・・数はそれが限界?」

「どうでしょう、とりあえず4本でいきます。慣れたら増やしてみますよ」

「東京グールの赫子(かぐね)みたい」

「まさにそれです。しかも、鱗赫(りんかく)ですよ」

 

 メインウェポンの確認完了っと。

 まだ強化や拡張の余地はありそうですね。

 後は状況に応じてオルゴナイトを使っていきましょう。

 継承完了時に取説は受け取っている(直接脳内に)から何とかなりそう。

 今の状態は"バスカーモード"と呼称するのですね了解です。

 

「こ、このくたばりぞこないがぁぁ!!」

「いちいちうるさいクズだなぁ」

「多分発情期ですよ」

「うわキモ」

「違うわ!」

 

 クズが回復したみたいだ。

 もう少し時間がほしかったですが、まあいいでしょう。後は実戦で馴らす。

 

「お前たち!いい加減仕事をしろ!」

「エラー修正・・リカバリー・・再起動完了」

「敵騎神・・該当データなし。ベーオウルフ及びルシファーの亜種と仮定」

「対象の警戒レベルを引き上げ」

「敵を確認。任務遂行開始」

 

 クズの命令で棒立ちだった機械群が息を吹き返す。

 お、やる気か。

 これがバスカーモードでの初戦闘だ。

 しっかりと慣らし運転させてもらいましょうか。

 

「チュートリアルの的役ご苦労様ですww」

「まだ慣れていないからね、力加減はできないよ」

 

 強敵であるPTアルトアイゼンとヴァイスリッターも動き出す。

 来るか・・・あれ?あれれ、何か変だ。

 こいつら、こんなんだったか?もっと大きく見えていたのは気のせいか。

 あれだけ苦戦した相手を前にしているのに、不安や焦りは一切感じない。

 

「こんなのに手こずっていたんだ。恥ずかしい!恥ずかしいよ」

「マサキさん、不甲斐ない私を叱ってください。たっぷりネッチョリお仕置きして下さって結構です///」

「その"お仕置き"とやらについて詳しく!当方参加希望だよ」

「まあ焦りなさんな。その話はこいつらを片付けてからにしましょう」

「了解!俄然やる気が出て来たぞー」

「張り切り過ぎて"恥"をかかないようにしてくださいよ」

「そっちこそね」

 

 "恥"とは勿論ゲッター的な意味でいいましたよ。恥をかく=死です。

 

『どんなに離れていても、お前たちの傍には俺がいる』

 

 泣いてしまうほど嬉しい言葉をくれる人。

 愛しい人、マサキさん。

 信じています。今も支えてくれているのを感じます。

 女神様と私たちを結びつけてくれたのは、きっとあなたです。

 あなたがいたから、ここまで来れたんです。

 

 あなたの為なら化物になっても構いません。

 あなたがいてくれるなら、あなたがいてくれるから、どんな困難も乗り越えてみせます。

 

「スゥー・・ハァー」(深呼吸)

「ん・・いけるよ」(手足の感触をチェック) 

「やりますよ、クロ」

「頼りにしてるからね、シロ」

 

耳よし!尻尾よーし!覇気よし!結晶生成多分よし!

 準備万態、相棒もいけそうだ。

 

 敵はアルトとヴァイスに数十体のアンドロイド、そして後方に控えたクズ。

 相手にとって不足無し、むしろ物足りないかも知れません。

 

「アンドウマサキの愛バ。そして女神クストウェルの後継、キタサンブラック」

「同じく、マサキさんの愛バ。女神べルゼルートの後継、サトノダイヤモンド」

 

 マサキさん、女神様、もう一人の私たち、家族に恩人の皆様方。

 生まれ変わった私たちを見ていてください。

 

「「邪魔する奴はぶっ〇ロス!!」」

 

 

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