一仕事終えた後に、切羽詰まったシュウからの救援要請。
感染体の大群に襲撃されてピンチらしい。
もう手遅れっぽいけど、見過ごせない。というわけでシラカワ重工本社にイクゾー!
デッデッデデデデ(カーン)デデデデ!
シラカワ重工本社・併設工場区画への連絡通路にて。
十数人の騎神から逃走しつつ戦闘を行うのは、たった一人の騎神。
ウマ娘同士の戦闘だ。
数で劣る方の彼女は攻撃と移動を繰り返し、相手の戦力を着実に削っていく。
「ごめんなさい!」
「ぐぁ・・お、おのれ・・・」気絶
小柄な騎神の一撃でまた一人崩れ落ちる。
「強い、これが人間と契約した騎神の力」
「認めない、"愛バ"なんてふざけた存在に負けるなんて」
「事実は素直に受け入れた方がいいよ。だから現実見よう?」
「バカにしているのか!」
「そ、そんなつもりじゃないよ。ただ、ライスは頭の悪いあなたたちが可哀そうだなって」
「それがバカにしていると言うんだ!」
「ムカつく!思ったより口が悪くてムカつく!」
「お、怒らないで」
そうこう言っている間にも攻防が繰り広げられるが、怒られた方の騎神は未だ健在である。
シラカワ重工を襲った感染体の大群、無人機へのLウイルスによるパンデミックを引き起こしたのはUC。
ウイルスをUCに提供したのはルクスの一味で間違いない。
ウマ娘至上主義を掲げる彼女たちUC兵が、起動兵器生産プラントにウイルスを散布、感染体の出現で混乱する本社と工場を制圧したというのが、ここで起こった事件のあらましだ。
「ええい、ちょこまかと」
「今のライス、お兄さまとリンクしてないんだよ。それに苦戦するってどんだけざk・・ンンッ!修練不足だね」
「雑魚って言おうとしたな!笑ってんじゃねーよ」
「笑ってなんかない「全員モブ顔だなぁ」とか「男運なさそう」とか「契約"いらない"じゃなくて"できない"の間違いではww」なんて思ってないの、信じて!」
「「「「信じられるかぁぁ!!」」」」
「な、なんでこうなるの~」
無自覚に相手の神経を逆撫でする騎神の名はライスシャワー。
多数の敵を相手取りながら、彼女はその刹那にも思考を巡らせている。
(怒りでパワーアップ?してないね、あーダメダメ狙いが甘くなってる。そういう所が雑魚だってば)
(お腹空いた。ニンジンカレー特盛食べたい)
(お兄さまたち大丈夫かな。ちゃんと避難してくれたかな)
(この人たち本当にモブ顔だなぁwww)
「くっそぉー!たった一人に」
「いえ、二人です」
「「「「なっ!?」」」」
「ブルボンさん!生きてたの、感染体の群れに潰されてグチャグチャになったはず」
「なってません。早とちりしたライスさんが、私を放置して逃げただけです」
「ごめんなさいぃぃ!「あ、これ無理」って思ったから、お兄さまとの合流を優先したの」
「その判断は正しいです。少々薄情ではありますが」
「あう、いつもの無表情だけどキレてる」
本社側からやって来たブルボンが騎神たちの背後に現れた。
ちょうど、ライスとブルボンで襲撃者たちを挟み撃ちする形になる。
「ミホノブルボン、UCの裏切り者め」
「先にルドルフ会長たちを裏切ったのはあなた方でしょう。人間嫌いを拗らせてテロに加担するなど、落ちぶれたものです」
「愚図蒙昧の人間たちに誑し込まれた、貴様に何がわかる!」
「理解する気もされる気もありません。そこを通していただきましょか」
「なめるなよ!二人まとめて――」
「「遅い」」
UC兵が何事かを言い終わる前に攻めに出る。
同じ操者を持つ二人の相性ピッタリで、数頼みの輩などに後れは取らない。
5分後、立っている騎神は二人だけだった。
「ライスさん。マスターから何かを預かっていますね」
「うん。よいしょっと」
「今耳の中から!?」
「気のせいだよ。はいどうぞ」
「マスターが開発した対Lウィルス用のワクチンプログラム。奴らの狙いはコレですね」
渡されたUSBメモリはシュウ特製のカスタム品。
中には完成したワクチンのデータが入っている。
破損などがないことを確認したブルボンは、それを大事そうにしまう。
「今胸の谷間に!?」
「気のせいです。ミッションを確認します。勝利条件は工場区画にある管理サーバにワクチンを流すこと」
「UC兵と感染体の排除は二の次だね」
「はい、極力戦闘は避けていきましょう。優先すべきはワクチンです」
「お兄さまは?」
「放っておいてもマスターは大丈夫です。今頃サトノ家あたりに救援を依頼していると予想」
「キタちゃんにダイヤちゃん、来てくれるよね」
「・・・それは難しいかも知れません」
「どうして?二人は異常者だけど、いい子たちだよ。お願いすればきっと」
「それが今回の襲撃、これは同時多発テロです。今現在、ここシラカワ重工とメジロ家基地を含む7カ所が襲われています。彼女たちが既に別の現場に出払っていた場合、ここへの到着はいつになることやら」
「それが本当なら・・ううん、弱気になっちゃダメ。ライスたちだけでも頑張らないと」
「それでこそ、マスターが信じた愛バです。行きま――――ライスさん離れて!」」
「っ!?」
通路を薙ぎ払うような黒い閃光が走る。間一髪、反応することで回避が間に合った二人。
今のは砲撃された!?
「あーあー、期待してなかったけどUCもロボット君たちもダメダメだ。そんなんじゃフォロワー増えないよ」
場違いなほどの明るい声、地面スレスレを滑空しながらそいつは移動して来た。
黒いデバイスを纏った騎神、その姿は、何時ぞやの電波ジャック事件で見たことがある。
「ガリルナガン!どうして?」
「覚えてくれてどうもです。あなたも私のファンになっちゃったのかな?非公式だけどルクスや私たちを応援する方法は沢山あるから検索してみてね。クラウドファンディングとかもやってるよ」
「今回のテロはやはりルクスの」
「今回もが正解。私はワクチン?ってのを回収もしくは破壊して来いって言われただけ」
戦斧のついた長銃をくるくる回しながら彼女、ガリルナガンの使い手は問う。
その顔はバイザーに覆われて確認できない。
「どっちが持ってるの?」
「「コイツです!!」」
互いを指差して、自分はワクチンを持っていないと主張する二人。
こういう時、庇い合って黙秘するんじゃないの?何で睨み合ってるの?なんだこいつら。
「どっち!?え、何、仲間割れ・・この状況で?」
「ライス見たもん!無駄な脂肪の間にインするの確かに見たもん!」
「言いがかりはよしてください。あざといデカ耳にインしていたのはあなたです」
「あざといぃぃぃ!無知っ子サイボーグを装って、お兄さまと混浴する方が何百倍もあざといよ!」
「邪神に囚われた闇の王子クリストフは、少女騎士ブルーローズと運命の出会いをする。幾多の試練を乗り越えながら何度も戦場でぶつかり合う二人。やがて二人はお互いを特別な存在として認め合い意識するのであった。キャッチコピーは「それは世界を巻き込む恋物語!!」絵本作家よりファンタジー小説家を目指すべきですw」
「やめろぉぉぉぉっっ!!新作絵本のシナリオをバラすのはだめぇぇぇ!何で知ってるの?はっ!見たんだね。ライスのノート(ネタ帳)見たんでしょ!ひゃぁぁぁ恥ずかしいぃ!」
「はて?何のことやら。まあまあ、落ち着いてくださいコシヒカリ先生?」
「ペンネームはユメピリカだよ!絶対見てるよこのニセサイボーグ!」
「ちょっとちょっと、無視しないでよ」
罵り合いを始める二人の様子に困惑する襲撃者。
このふざけた感じは、まさかルクスが言っていたアレなのか。
「わかったぞ!あなたたち噂の変態操者の愛バでしょ。えーと、名前は確かクレイジーブラック?」
「「あんなのと一緒にすんな!!」」
「違った?じゃあ」
「もういいですよ。行きなさい」
誰?ここにはいない男の声が、備え付けのスピーカーから聞こえた。
「「はい!」」
「・・・ありゃりゃ、してやられた」
男の声がした瞬間、二つのことが起こる。
ケンカをしていたはずの二人が脱兎のごとく工場区画へ走り出す。
二人が通路を抜けた直後に隔壁が下り、追跡の妨害をした。
襲撃者は慌てた様子もなく、監視カメラで見ているであろう男に語りかける。
「なるほど、あなたの愛バだったね。社長さん」
「自慢の子たちですよ。演技力も中々のものでした」
「アレは演技じゃなかったような」
「喧嘩するほど仲が良いとも言いますので気にしません。それより、面白い術を使ってますね。あなたの姿は確かに見えているし映像記録も残せる。だというのに、あなたの正体に辿り着けない細工がされている」
「今のご時世、個人情報は大事にしないとね。ルクスがちゃっちゃとやってくれたよ。顔認証システムにはもちろん引っかからないし、素顔の私が傍にいても誰も気づかないし気づけない」
「正体を暴こうとする者の認識を改変し外してしまう・・どこの世界の技術・・いや、呪いの類ですか」
「難しいことは知らないよ。やれやれ、邪魔されたから追いかけないと」
「あの二人を見逃してくれませんか」
「こっちも頼まれたお仕事中だから、それは無理。ルクスはあなたとは交渉しないよ」
「ルクスではなく、あなた個人にお願いしているのですが」
「何々?ファンからのプレゼントは大歓迎。私のお使いを阻止できるぐらいの貢物だといいな」
「凶鳥」
「・・・それが何」
「いえ、えらくご執心だと思ったものですから。生き残りを放置して大丈夫なのかなと」
「生き残り、そんなはずない!あいつらは全部破壊してやった」
「詰めが甘いですよ。エクスバイン・アッシュは生きています」
「その情報が本当だという保証は?」
「信じる信じないは自由です。アッシュとその使い手(デバイサー)の爪牙がルクスを脅かす日を楽しみにしていなさい」
「デバイス化させる気、どこにいるの?」
「おや、ルクスのお使いはよろしいので?」
「いいから教えろ!さもないと、周囲一帯を吹き飛ばすよ」
「・・・時間も稼げたことですし、いいでしょう。工場B区画の地下、通称「フォーゲルネスト」で覚醒の時を待っています」
「あなたがルクスの宿敵じゃないことにビックリなんだけど、嘘だったら許さないからね!シラカワ社長」
分厚い隔壁を無視して横壁を砲撃、通路に開けた横穴から飛び出していくガリルのデバイサー。
ふむ。防御隔壁以外にも神経ガスやとりもちトラップの採用も検討するべきでしたね。
彼女がなぜ凶鳥に固執するのかは不明だが、いい取引材料になったようだ。
ともかく、これでワクチン散布までの時間は稼げた。後は愛バに任せればいい。
去り際に面白いことを言っていた。
ルクス側ではアレと私を同レベルだと思っているらしい。
やれやれだ、何もわかっていない。本当にご愁傷様です。
「私がルクスの宿敵?ご冗談を。あなたたちが喧嘩を売った操者は、超が付くほどヤバイ男です」
テスラ研や我が社のエリート研究員、そしてビアン博士までも「ヤバイ、マジでヤバイ、ヤバすぎてヤバイのがヤバイ」と錯乱した結論に至るほどの規格外、理不尽の権化。
そんなのを敵に回したルクスとその一味には同情を禁じ得ません。
これは予感ではなく確定事項です。ヤバイ男はもっとヤバイ感じになって戻ってくるでしょう。
「もちろん、その愛バたちも例外ではありませんよ」
♦
「あーあーサボっちゃった。でも仕方がないよね、後で謝っておこうっと」
ルクスに頼まれたワクチンの回収は放棄した。
私たちには命令に対する拒否権を与えられているんだ。
ルクスには我欲を優先しても構わないと常日頃言われている、そういう所がポイント高いよね。
「やっと着いた。ここだ」
一目見てわかるほどに分厚く強固な扉にかかれたドイツ語は「Vogelnest(フォーゲルネスト)」
日本語で「鳥の巣」だと。まったく、不幸を呼ぶ鳥を保護するなんて理解できないな。
工場の地下は広く迷路のように入り組んでいたので時間がかかった。
「いる、ここにいる!私には嫌でもわかる!」
今度こそ根絶やしにしてやる。
「バスターアックスの威力、なめないでよね」
入室用のキーなど持っていないので扉を破壊して侵入することにする。
得物を数回叩きつけ、へしゃげた扉を蹴り飛ばして進む。
中は思いのほか広い、凶鳥以外にもEOTを使った超兵器やその試作機の補完庫になっているらしい。
おつかいをサボった代わりに、お土産をいただいてもいいかなと考えていると見つけた。
「いた!って・・・( ,,`・ω・´)ンンン?」
まだ組み上げの途中なのか、ハンガーに吊るされて破損個所を補強された包帯代わりのテープを所々に巻いた機体が見える。あれがエクスバイン・アッシュなんだけど・・・その傍に不審者が二名いる。
襲撃者で侵入者の私がいうのもなんだけど誰?
呆気にとられた自分と不審者の目が合う。悪寒が走った。
両方ウマ娘、同族・・・なんだかわからないが、逃げた方がいい気がしてたまらない。
「「やべっ!!」」
いけないことをしているのがバレた子供のような反応をみせる二人。
ここで何をしていると言いかけて、長髪の方が腰から伸びる何かを機体の数カ所に打ち込んでいる!?
アレは何?触手?何をしてる、何をして・・・バカげているが直感的に思ったことを口にしてしまった。
「それ・・食べてるの?」
「バレちゃしょうがねぇ!シロ!一気にやっておしまい!」
「アイアイサー!丸呑みにしちゃいますよーーー!グラトニー(暴食者)発動!」
転スラ?そんなことはどうでもいい!
触手が、無数に増えた触手が!アッシュの全身を包んで込んだ。
奇妙な輝きとともに丸呑みにされた機体は徐々に小さくなっていく。
冗談抜きであのウマ娘はアッシュを食べて呑んで、その身に取り込んでいるんだ。
現実離れしたありえない光景を前に呆然と立ち尽くし、止めることができなかった。
待って、そいつをやっつけるのは私の・・
「ふぅーごちそうさまでした!ちょっと量が多かったですね」
「完食お疲れ、結局何味だったの?」
「ファミチキ」
「凶鳥だからね、鳥だけにね!ってやかましいわ!因みに私はLチキ派だよ」
ファミチキ?
私がずっと追いかけていた最後の一体がファミチキ・・・何よそれ。
自分が果たすべき事、晴らすべき恨みの対象を奪われた。ならば!
「何よ、何なのよアンタたちはぁぁぁーーー!!」
「「そっちこそ誰ですのん!?」
もう訳が分からないけど、とにかく許せない。
特に触手を使った長髪の方は、酷い目に合さないと気が済まない。
デッドエンドにしてやる!
♢
丸呑みする15分ぐらい前。
「スクランブル~ダァッシュゥゥゥッッ!」
「走れ~走れ~マキバオー」
「マキバオー?なんだか大先輩のような気がする!」
「おっと、妙な電波を受信してしまったようです。うんこたれ蔵様なんてお方知りません!」
「うんこってww小学生かwww・・・小学生だった!」
ただのギャグ漫画かと思ったら、メッチャ熱くて泣ける作品らしいですよ。知らんけど。
私ダイヤモンド、今秘密の地下道を爆走中なの。とメリーさん風に言ってみる。
シュウさんからの救援要請を受けた我々は、シラカワ重工本社までの最短ルートを模索。
なんとなんと!DCから救った街の地下には巨大な地下トンネルが建造されておりました(ご都合主義)
極秘裏に建造されたそれは、こんなこともあろうかとシュウさんが用意したそうです。
住民の避難と物資の輸送を兼ねたこのトンネルは、シラカワ重工と街の地下施設を繋いでおります。
目的地まで車で30分ぐらいか、私たちの足なら20分切れるんじゃね?
輸送機より早いってことで、私とクロの二人だけで走って向かっております。
サトノ家の部下たちは置いて来た、どうせついて来れないし、別の任務が追加されましたからね。
「同時多発テロだってさ。やってくれたよね~」
「ルクスのアホめ、マサキさんがいないからって調子に乗りおって」
イルムさんたちは事後処理をメジロ家に任せて、別の現場へすっ飛んで行きました。
皆さんご苦労様です!残業代出ないけど頑張ってください、仏像いる?
ただ走るってもの芸が無いので小話を交えつつ急ぐ。
「見て、十傑集走り!」
「なんの!こっちはバック走です」
「デビルバットゴースト!」
「トライデントタックル!」
「ぐほぉ!いたた・・走るの止めちゃダメでしょーが!」
「そうでした」
個人的にはワンパンマンよりアイシールド21の方が好き。
アメフトのルール、未だにうろ覚えだけど面白いんだよなぁ。
「おやつ持ってないの?」
「ほらよ」
「チョコレート?あーん・・・苦っ!にっっっがぁっ!これ"チョコレート効果"じゃんか」
「72%で何言ってんだか。うーん、ビターなチョコは大人の味ですね~」
「86%食ってやがる、無理してない?高カカオポリフェノールの虜なの?」
「もうお子様なんですから。まあ、95%はちょっとエグいかなとは思いますね」
「お子様だもん!やっぱ甘ーいミルクチョコが一番だよ」
「こんなのもありますよ」
「つ、ついに出たーーー!ブラックサンダー!いやっっほぅ!」
「クロはコレ好きですよね。至福のバターと優雅なヘーゼルナッツ、どちらにします?」
「両方くれ!」
「却下です。早く選ばないと私が二つとも食べます」
「あー待って待って」
走りながら食べて大丈夫かって?喉に詰めないように注意しまーす。
※良い子のみんなはマネしちゃダメだぞ。
チョコで栄養補給完了!更に加速加速~。
そんなこんなで到着しました。
「着いた!」
「着きましたね」
「行き止まり?隔壁が下りて通れないよ。壊そうか」
「下がってなさい。バスカーモード」
「出た!触手」
「尻尾ですってば!こいつをここにブッ刺してと・・・ほい、ロック解除」
「ほう、便利じゃん」
並みの電子ロックならこんなもんです。オルゴンテイルはハッキングツールにもなる万能具合。
「シロが手にしていい力じゃなかったね」
「自分でもそう思いますよ。マサキさんに誓って悪事には使わないよう自制します」
「オープンセサミ!」
「言ってみたかったんですね」
クロがアーカードっぽい声色で「開けゴマ」したと同時に隔壁が上がる。
アレってなんでゴマなんでしょうね。
「今どの辺りにいるかわかる?」
「さっきハックした情報によると、ここは倉庫兼、特注品の補完庫が並ぶ・・・鳥の巣?」
「何か見つけたの、えーと、ふぉーげるね、ねすと?」
「ここに寄り道しろと、私の第六感が告げています。てなわけでロック解除~」
「上に急がなくていいのかなぁ」
「心配ないです。シュウさんたちは本社ビルのパニックルームに籠城中みたいなんで、まだ猶予があります。一瞬ですが、ボンさんとお米さんの元気な姿もチラッと見えました」
「ハッキングすげぇ!コンソールから施設内のカメラをジャックしたのか」
電子系統が繋がっているからこそ可能だっただけ。
本気で対策されるとこちらの演算能力では対処できないし、無理すると脳がショートします。
便利だけど過信は禁物。
「おお、宝の山ですね」
「新型デバイス。それに見たことがない機体たち、うわぁ特機もあるよ」
「目的の物は一番奥です・・・やはり、ここにいましたか」
最奥のハンガーには組み上げ途中で放棄された状態のPTがいた。
追加された装甲を補強するため全身に「CAUTION」と書かれたテープが包帯のように巻かれている。
それでも足りない部分にはビームと覇気エネルギーによる攻撃を軽減するマント「コーティング・クローク」により補うことにしたらしい、その姿は「仮面をつけた傷だらけの騎士」といった風貌だ。
装備に実体剣があるのもそれっぽい。
まるで負傷兵を無理やり戦わせるような痛々しさ・・・だがそれがいい!
壊れた体を押して奮戦するロボットの姿は美しい。エクシアリペアとか好きですわ~。
「ヒュッケバイン!?でも、なんかボロボロ・・包帯だらけでケガしてる」
「この子はエクスバイン、凶鳥最後の生き残りですよ。よく無事でしたね、私のことを覚えていますか?」
冷たい外装に触れてみる。
機械に語りかけるのはナンセンスですが、たまにはいいでしょう。
日本には大切にされた物に神が宿ると言われてるんですよ。兵器にそれがないとは言い切れないでしょう。
「この子の知り合い?」
「解体寸前だったこの子をテスト用に残せと進言したのは私です。ブラックホールエンジンが無くても優秀な機体なんですから勿体ないってね。ちょっと失礼」
「へぇーそんなご縁があったんだ。何してんの!」
オルゴンテイルを機体に接触させて情報を読み取る。
エクスバイン・アッシュ。灰(アッシュ)ですか・・・復活させる気満々の名前。
基礎フレームにもガタが来ている癖に、改修強化プラン案への期待値が先行しまくっているな。
最終的にはブラックホールエンジンとトロニウムエンジンの複合炉を搭載した化物に?
言うだけなら簡単ですよねー。
それで事故ったら前回の比じゃないぐらいバニシングするとわかっているでしょうに。
ああ、わかっているから止めたのか・・・うむ、英断でした!
もし、そんなPTがもし完成しても"情緒不安定で時折白目になる腋見せ少年"でないと扱えないと思う。
「結局、デバイス化することに路線変更して、ここに保管(放置)されたらしいです」
「ふーん。この子も苦労したんだね」
「おや、まだ情報が・・・」
■アッシュの炉心(疑似神核)へアクセスしたおバカさんへ
このメッセージを読んでいるということは、私の友人かその愛バである可能性が高いですね。
最低でも我々の味方であってくれることを願います。
もし違うのであれば、作業を中止して即刻家へ帰りなさい。
アッシュはあなたに扱える代物ではありません。
悪用はもってのほか、ほら、サッサと帰った帰った!帰って寝ろ!
マサキであると仮定して話を進めます。
エグゼクスな強化プランが盛り沢山だったのですが、色々あって中止しました。
デバイス化を予定していますが仕事が立て込んでおりまして、思うように進みません。
大変申し訳ないのですが、作業はそちらに任せたいと思います。
まずパーツをバラして、アレをコレしてからソレで・・ああ!口で説明するのめんどくさーい!
私が立ち会えない場合は、頭のいい知り合いを頼りなさい。
ビアン博士、テスラ研のアグネス、ファイン家のヤンキーあたりなら何とかしてくれるでしょう。
ではご武運を。
・サトノダイヤモンドへ
アクセスしたのがあなたの場合、なおさら話が早くて助かります。
我が社では持て余しておりますので、ご自由にお使いください。
Mk—Ⅲの設計に関わったあなたなら余裕でしょう?
マサキにプレゼントするもよし、ご自分で使用なさるのもいいでしょう。
敵の手に渡るようなヘマだけはしないでくださいね。
敵に利用されるぐらいなら破壊してください、パーツの一欠けらも残さずキレイさっぱりに!
頼みましたよ。
※おまけ
"クソ暑いのに汗だくで筋トレに励む半裸のマサキ(当時16歳)"の画像を添付しておきます。
ご自由にお使いくださいwww
なんで私はこんな写真を・・・こんなんだからホモ疑惑が湧くんですよ反省反省ww
以上、シラカワ重工社長からでした!
「パーフェクトだシュウ社長!」
「急に何?なぜ涎を垂らす。一体何を見た!」
「とても素晴らしいものですよ。あ~ウェへへへ、ちょっと若い、汗がムレムレして最高ですね~」
「マサキさん関連だな!ズルい私にもみーせーてーよー」
感謝しますよロリコニア大臣!
すぐに助けてあげますからね。だから、他のお宝画像があればお願いします!
さてさて、このアッシュどうしましょう。
持ち運ぶのも邪魔になりますし、今まさに襲われているここへ放置していくのはちょっとな~。
「勿体ないですが、せめて私の手で引導を渡してあげたほうが・・・」
「なんだ壊すの?どうせなら食べちゃったら、なーんて」
「なるほどクロにしてはいい案です。それでいきましょう」
「え、冗談だったのに」
ここにアッシュを放置していくのは危険だ。ルクスに奪われて悪用されるのは絶対阻止せねば。
それに・・・
マサキさんがデバイサーになったら、腋見せファッションになってしまう可能性がある。
「超重獄に・・・堕ちろぉぉぉ!!」と叫びながら脱ぎ散らかすマサキさん・・・ちょっと見たい。
いやダメダメ、操者の裸体を堪能していいのは私だけ、他の奴に見せるなんてとんでもない!
「操者を露出狂にする訳にはいかない!いざ、いただきまーす!」
「うわぁ、触手地獄炸裂」
「よいしょーーー!えいしょーー!フゥーハハハはーーーん?ふぉぉぉーーー!」
「気色悪い声を上げるなww」
「失礼、思ったより情報密度が濃くて・・うーん、消化吸収に手こずりそうですね」
「よく噛んで食べなよ、焦ってお腹壊しても知らないから」
「わかってます。少々お待ちください」
複数に枝分かれしたオルゴンテイルをアッシュの内部構造にまで侵食させる。
尻尾に接触した部分に私の覇気流し結晶化、そして同化吸収していく。
安心しなさい、凶鳥たちの意思と力は私が受け継いであげます。
「思ったんだけど、これって火事場泥棒だよね」
「ど、ど、泥棒ちゃうわ!社長の許可は得ていますよ!」
「だったらいいけど」
「しばらく動けないので、周囲の警戒をよろしくお願いします。一人で逃げたら恨みますよ」
「はいはい、出会った時から一蓮托生ってね。早いとこ食べちゃってよ」
「唐突ですが、新たな能力に目覚めたようです。なんと!味がします」
「本当に唐突だな、味って何?」
「ほのかですが吸収中に味を感じたような気がします。恐らくこれは炉心に残っていたエネルギーの味!エナジーソムリエダイヤちゃんと呼んでください」
「気のせいじゃないの。本当だとして、それで何かいい事ある?」
「マサキさんの覇気を味覚で堪能できる。何味か楽しみですね~」ワクワク
「さっきからなんかズルくね!私にもやり方教えてよ」
「やり方なんて知りませんよ。閃くまで待てとしか」
「ちょっとクセのある名作RPGのようなシステム!?」
ジュージーな味わい、これは揚げ物でしょうか。
味はすれどもお腹が膨れないのが何とも残念ですね・・・何か来る。
覇気?誰か近づいてくるのを感じる。
破壊音がした。
「扉を破壊して無理やり入って来た!ということは、ここの人たちじゃない。まだ終わらないの?」
「待ってください、アッシュからぶんどったこのマントを使えばアラ不思議」
「それで隠れているつもりか」
どこぞのスネークは段ボール箱を被ってスニーキングミッションをやり遂げたという。
私もそれを見習ってコーティング・クロークを被ってみました。
「頭隠して尻隠さずの見本みたい、尻と触手がモロに見えてんだよなぁ」
「やっぱ無理か~。クロ、覇気を寄こしなさい、吸収スピードを上げます」
「ほいさ、もってけ泥棒」
だから泥棒じゃないですよって。
クロの手を握り、覇気を融通してもらう。スピードアップ!
頑張れ私の尻尾さんたちーー!
ぬぬぬぬぬぬぬぬぬーーーーーーん!
あら、もうここまで来ちゃうの?早い!
こっちに向かって来ているのは、ただの戦闘員や感染体じゃない、手練れだ。
スッと離れて行こうとしたクロの手を摑まえて逃がさない!
「今、自分だけ逃げようと思いましたね?」
「わかっているなら解放してほしいな」
「一蓮托生だって誓った仲じゃないですか」
「私が運命を共にするのはマサキさんであって、シロはおまけなんだけど」
「おまけだとぉ!メインのマサキさんを引き立たせる、おまけの大役しかと承りました」
「やだ、無駄に前向き」
離せ!離さない!おまけはそっちだろ!マサキさんが恋し過ぎて最近幻覚が見える!私もです!
やれやれ、言い合いで時間を消費してしまった。
はっ!・・・誰かこっちを見ている。侵入者はもう奥まで来てしまったようだ。
「「やべっ!!」」
見つかってから隠れても遅いですよね。
向こうがアクションを起こす前にアッシュを食べてしまわないと。
ここはクロに時間を稼いでもらって・・・
「それ・・食べてるの?」
む、直感で気づかれました。
「バレちゃしょうがねぇ!シロ!一気にやっておしまい!」
「アイアイサー!丸呑みにしちゃいますよーーー!グラトニー(暴食者)発動!」
私を庇うように前に出たクロに指示された通り一気食いにチャレンジする。
オルゴンテイルの数を増やせるだけ増やして、突き刺す、巻き付ける、呑み込む!
一緒に行きましょうアッシュ。私に力をかしてくれぃ!
皆さんご飯はよく噛んで食べましょう。私のマネをしてはいけません。
何とか完食!私の食べっぷりに侵入者さんも棒立ちするしかなかったようですね。(`・∀・´)エッヘン!!
「ふぅーごちそうさまでした!ちょっと量が多かったですね」
「完食お疲れ、結局何味だったの?」
「ファミチキ」
「凶鳥だからね、鳥だけにね!ってやかましいわ!因みに私はLチキ派だ」
アッシュの炉心、プラズマ・ジェネレーターはファミチキの味でした。
クロには言わなかったけど何故か最後の方は、唐揚げグランプリ最高金賞狙えるぐらいジューシーかつ美味だった。
旨味が跳ね上がった原因は何だろう、今はどうでもいいか。
おや、侵入者の方がプルプルしていますね。何か気に障る事でもあったのでしょうか?
「何よ、何なのよアンタたちはぁぁぁーーー!!」
「「そっちこそ誰ですのん!?」
いきなりキレて襲い掛かって来た。
もう、何なのよー!はこっちのセリフですってば。
先端に斧がついた長銃とは変わった武器で・・・おお、それを振り上げて私の頭に振り下ろすと。
いやースプラッター!う゛・・・アッシュが胃もたれ起こしてる。
溶け込んだのは胃ではなく、私の神核になので神核もたれが正しいですかね。
「出せ!凶鳥を吐き出せーー!」
「む、無茶言わないでください。うえっぷ・・食後の急な運動はキツい」
「あいつは私の獲物だったんのに!それをアンタみたいな奴が、死んで償え!」
「クローーー!突っ立ってないで助けて!じゃないとゲロ吐いちゃう、吐瀉物がバニシングしちゃう」
「ご指名ありがとうございます!」
「くっ、邪魔を・・するなぁーーー!」
「そう言われると余計に邪魔したくなるね」
消化不良な私に代わってクロがキレた侵入者と対峙する。
よーしよしよし、うちのバーサーカーと遊んでなさいな。
その間に私はおさらばでございます。
「待て!凶鳥を食ったアホな騎神」
「待ちません、今から食後のお散歩タイムですので、あばよ~とっつぁんwww」
「誰が"とっつぁん"だ!私はカ・・んん!・・・ベルス、そう、私の名はベルスだ!」
「どうせ偽名でしょ。まーたラテン語ですか、主の趣味に合わせたい気持ちは理解できますがね」
「ちょっと、今は私が相手だよ。こっち見て」
「お前に用はない!待てと言っているだろアホ、せめて名前を聞かせろぉ」
「ファインモーションです。みんなからはインモーって呼ばれています。好物は伸びたうどん!」
「そうきたかwwwインモー(偽)ここは任せて早く行けwww」
「ありがてぇ。ちょっくらシュウ社長を助けにイテキマース」
「ファインモーション!その名前覚えたからね、凶鳥への恨みはアンタを倒す事で晴らしてやるんだからーー!」
よかったですねココ。ストーカになってくれそうな方を見つけてあげましたよ。
面倒くさい相手を押し付ける。これぞ、愛バなりの連携プレー(ココの許可なし)ですね。
ベルスかぁ・・・ラテン語で「かわいい」を意味する言葉だったはず。
自分の可愛さに大層自信がおありのようで。
あのデバイスは確か"ガリルナガン"ヒュッケ大虐殺の張本人。そしてルクスの愛バ(自称)
遅かれ早かれぶつかる運命にある相手。
しかし、今はその時ではない!(ゲロしそうなんでやめてね)
さて、社長たちはどこでしょうか。
「隙だらけだよ、よそ見ばっかのベルスちゃん。オルゴーンナッコゥ!」
「ぐがぁ・・コイツ・・・緑のオルゴナイト!?そうか、お前がクレイジーブラックだな!」
「それ混ぜたらアカン」