※この短編は自作、虹×夢カラフルデイズの番外編です。本編のキャラクターが登場しておりますので、未読の方はそちらをまず読んでからこの短編を読むことをお勧め致します。
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3時間目が終わった休憩時間。創一と廊下で談笑していると、突如愛が俺の前にやってきた。
「やっほーつむつむ! いっちーも!」
「おー愛か。やっほ」
「やぁ宮下さん。相変わらず太陽のように眩しい笑顔だね。あぁ……見惚れてしまいそうだ……」
「挨拶でナルシ発揮すんのやめろ創一。んで? どうしたんだ愛。珍しいじゃん」
普通科と情報処理学科の教室ってけっこう離れてるから俺が普段行くことはあんまりないんだけど、まさか愛がこっちに来るとは。何かあったんかな?
「つむつむ、愛さん今日誕生日なんだよね!」
「……んあ?」
「愛さん今日誕生日なんだよねっ!」
「わざわざ言い直さなくても聞こえてるよ! 誕生日か! そりゃあめでてーな! おめでとう!」
なんだと思えば誕生日アピールかい!! いや祝うけど。祝うんだけどさ。あまりにもアピールが露骨すぎやしねぇか……?
「さんきゅ! それでさ、つむつむ今日の放課後空いてる?」
「え? 今日同好会休みで普通に帰ろうと思ってたから特に予定はないけど」
「じゃあ愛さんと一緒に遊びに行かない? 久しぶりにつむつむと遊びたい!!」
「いや、今日誕生日なんだろ? 家族と過ごした方が良いんじゃないの?」
「えー? 愛さんつむつむが良いから言ってるんだけどなぁ〜?」
愛は腰に手を当てながらそう言った。俺ぇ……? 俺で良いのぉ……? うっそだろおい。絶対おばあさんと居た方が良いと思うんだが……。
「行って来なよ紡君。宮下さんがそう言ってるんだし、キミと放課後を過ごしたいんだろう」
「さっすがいっちー! わかってるねー! そういうことだから、行こう? つむつむ!」
「そこまで言うなら……一緒に遊ぶか」
「よしゃー! やっぱノリ良いねつむつむ! じゃあまた放課後にね!!」
「お、おう」
次の授業が移動教室なのか、用件を伝えた愛は颯爽と廊下を走って行ってしまった。
「宮下さんからも好かれてるなんて、人気者だね。紡君」
「バカ言え。あれはそんなんじゃねぇよ」
「そうかな? ボクにはキミに好意があるように見えるけどね」
「えぇ……創一にはそう見えてんのか……」
愛とはたしかに仲が良いって自覚はある。同じ2年生だし、よく話すし。たまにランニング付き合ったりもするし。仲良いことに変わりはないけど、好意とはまたちょっと違う気がするなぁ。
「うん。それに宮下さん、異性の友達を積極的に作りたがっていないみたいなんだ。運動部の男子からの告白も全て断ってるらしい」
「お前何でそんなん知ってんの? 怖いんだけど」
「噂話を小耳に挟んだだけさ。まぁ、ボクの耳は他の人と違って特別だから、そういう話はよく聞こえるんだよね」
「要は地獄耳ってやつだろ」
「ハイパーセンサーと言ってもらおうか」
「たまにそうやって頭悪くなるの好きだけど嫌いだよ。まぁいいや。とりあえず放課後愛と遊んでみる」
俺、噂話とかそんな気にしないから愛がそんなにモテてるとは気付かなかったな。……ん? よくよく考えると愛、モテる要素ありまくりじゃね? 明るくてノリ良くて、勉強も運動もできて料理も上手くて。凄ぇよな。そりゃ男子達からモテる訳だわ。告白全部断ってたってのも初耳だな。どうりで男っ気が無いと思った。ってか愛だけじゃなくて、同好会の面子から男子と仲が良いって話とか全然聞かねぇんだよな。何でだろ。一応どこのクラスにもそれなりに男子いるはずなんだけど。不思議なモンだな。
「なんなら創一も来るか? 大人数の方が楽しいだろうし」
「生憎今日はバイトでね。宮下さんと2人で楽しんでくるといいよ」
「あーそっか。まだ2人って決まった訳じゃないけどな」
「多分……2人じゃないかな?」
「どうかな。俺はその予想が外れるに賭ける。負けたらジュース奢ってやるよ」
「おっ、やったね。じゃあその時には四ツ矢サイダーを買ってもらおうか。今ちょうど『仮面リーダー』の限定ラベルで売られてるからね」
「抜かりねぇ……どっかの誰かさんかよ。良いぜ。その賭け、乗った」
そして迎えた放課後。歩夢に『愛と遊んでくる』と伝えると了承してくれたからそのまま校門に向かって、俺の方が愛の後に来た。俺ね、てっきり璃奈とかせつ菜さんとかも来るかと思ってたのよ。それで愛と一緒に俺を待ってるんだろうなぁって。そしたら……せーのっ、あらまびっくりィ〜!! 何故か誰もいないんですよねぇ愛の周りに!!
「ごめん、遅くなった」
「全然! 愛さんも今来たとこ!」
「一応聞くよ? 今日は他に誰も誘わない感じ?」
「うん! 今日はつむつむと愛さんの2人だよ!」
「……やっぱかぁ」
そうだよね、うん。そうですわ。まじかよ。普通に賭け負けたよ。ナチュラルに負けちゃったよ。創一にジュース奢ることになったじゃんこれでェ!! 約束は約束だからちゃんと買うけども! えぇ……? 愛良いのかそれで……俺と2人ってそんなに楽しいモンじゃねぇぞ……?
「良いのか? 俺だけで」
「良いのっ! なんかデートみたいでワクワクしない?」
「そうかぁ? でも愛と遊ぶの楽しいから、今回も楽しみ、かな」
「愛さんも! つむつむと遊ぶの、いつもめっちゃ楽しみなんだー! 今日はよろしく! つむつむ!」
「こちらこそ。さぁて、行くとしますか!」
「行くとしますかぁ!」
そんな訳で俺は愛と共に最近行ってなかったゲーセンや服屋に行ったり、デパートの中にあるアイスクリームショップで一緒にアイスを食べたりして過ごした。やっぱ、愛と遊ぶのは楽しい。なんというか、愛は良い意味で男っぽいというか、めちゃくちゃ接しやすいんだよな。だから話も弾むし、自然と笑顔になれる。まさかこんなに仲良くなるとは予想してなかったけど。
「んーっ! 楽しい〜っ! やっぱつむつむと遊ぶのサイコー!!」
「そいつはありがてぇ。こっちも楽しいぜ?」
「ホント!? やったぁ!!」
愛は屈託の無い笑顔で俺にそう言った。相変わらず眩しい笑顔なこって。愛がスクールアイドルとして知名度が上がってきてもこうして普通に遊べるの、当たり前なようで、当たり前じゃないんだよな。……よし、決めた。
「愛、ちょっと俺買いたい物あるからさ、しばらくそこで休んでてくれるか?」
「ん、良いよ! 買いたい物ってもしかして……えっちな本とか!?」
「ちげーよ!! 買う訳ねぇだろンなもん! 雑貨屋に用があるの!! ったく……ちょっと待っててな」
「りょ! あ、つむつむ! アイス溶けちゃうよ?」
「あー良いよそれ全部食って。ハメ外しすぎた。これ以上食ったら腹壊しそうだし」
このアイス屋に普段あんまりお目に掛からない『アイスケーキ』なるものがあって、愛の誕生日ってことでそれを奢って、俺もアイスケーキを頼んで食べたら予想以上に量が多くてなぁ……。
「マ!? ラッキー! ちょうどこれ味見したかったんだよね! ナイスっ! あ、『アイス』と『ナイス』って似てるね! アハハハハッ!」
「いやどうしたテンション……良いや。行ってこよ」
自分で言った言葉に1人ツボってる愛のテンションについていける気がしなかったので早歩きで店を出て雑貨屋へと向かった。良いの見つかるといいな。
「いやー、楽しい時間ってホントあっという間だよねー! もう夜になっちゃった」
「あんだけ遊んだからな。そりゃ日も暮れるわ」
日が暮れるまでデパートやらなんやらで遊び倒した俺達。疲れた……正直バッティングセンターが1番キツかった……。腕いてぇ。今はお台場にあるベンチで愛と休んでる。
「愛さんね、誕生日の日はつむつむと遊びたいなって、そう思ってたんだ」
「行く時から気になってたけどさ、何で俺なんだ?」
「……つむつむと一緒にいたいし。思い出いっぱい作りたいんだもん。ダメ?」
「な訳ねぇだろ。むしろ嬉しい。けど……俺でいいのかなって、たまに思っちゃう時があるのよ。愛にはもっと良い遊び相手がいるんじゃねぇのかって……」
「そんなこと思わなくていい! 愛さんはつむつむが良い! ってか、つむつむだから良いんだよ!!」
愛は強い口調で俺の言い分を否定した。え……愛……?
「つむつむと一緒にいると心が暖かくなって、ドキドキして……それで……」
「愛……?」
「つむつむの笑った顔が見れるなら、愛さんなんでもする! そのくらいつむつむが愛さんにとって大事なんだよ! ああもうっ、つむつむニブすぎ!! ここまで言わなきゃ分かんないもんね!」
いきなり告白紛いの言葉を言われたかと思いきや急にdisられたんだけど。今愛どういう感情してんの!? あ、待て。これ……明らかに機嫌損ねてる。さっきとまるで態度が違う。
「愛、おーい愛。こっち向いておくれ。俺が悪かった」
「……やだっ」
「おいってば。愛。ねぇ愛。愛さーん?」
俺と頑なに目を合わせようとしない愛の肩が一瞬動いた。けどやっぱりこっちを向いてはくれない。うーん……こんな形で渡したくはなかったが、出すしかないか。
「せっかく今日愛に渡したいものがあったのに……これじゃ渡せないな」
「えっ!? マ!? ……あっ!」
もの凄い速さで愛がこっちに振り向いた。よし。やっとこっち見た。俺はカバンから取り出した小包を愛に差し出す。
「なんか釣ったみたいな感じになって申し訳ないが……はい、これ。俺からのプレゼント」
「つむつむ……それ、愛さんにくれるの?」
「ああ。開けてみ。俺なりに、愛が喜びそうなのを選んだつもりだ」
愛は丁寧に包みを開け、中に入っている物を取り出した。
「これ……シュシュ?」
「そういうこと。雑貨屋でこの向日葵みたいなシュシュ見つけてさ。愛が付けたら絶対似合うと思って、買ってみた」
さっき雑貨屋に行ったのは元々愛へのプレゼントを探す為で、プレゼント選んでるところを見られたくないから店で待ってるように言ったら普通に快諾してくれて安心した。おかげでちょっとしたサプライズにできた。
「さっきちょろっとしか言えてなかったからもっかい言う。誕生日おめでとう、愛。愛と出会えて……良かった」
出会いは些細なものだった。同じ学年で、同じ同好会に居たってだけ。趣味や嗜好がこんなにも違う俺達がこんなに仲良くなれて嬉しかった。いつも明るくて場を盛り上げてくれて、悩んだ時は相談に乗ってくれた。愛に助けられてた部分はたくさんある。だから恩返しも兼ねてのこのプレゼントだ。
「……つむつむっ!!」
「ん……うぉぉぉいっ!?」
名前を呼ばれた瞬間、愛に強く抱きしめられる。爽やかな香りが鼻腔を擽り、早く脈打つ鼓動が鮮明に聞こえる。夜だからか、人通りが少ないのが唯一の救いだな……いきなりそう来るとは思わなんだ……。
「ズルいよ。そんなつむつむだから……『大好き』なんだよ」
「え、ちょっ愛!?」
「つむつむ、もう少しだけ……このままで居させて」
「う……あ、ああ。もう少しだけ、な」
愛の腕の力がもっと強くなる。迷いはしたが、俺は愛の気持ちを受け止める決意をする。
「……まだ?」
「もうちょっと!」
「この状態で何分経ったよ……」
「……よしっ! これでおっけー!」
体感時間にして約6分。やっと抱きしめられた状態から解放された。
「つむつむパワー充填完了! これで愛さん満足! これからも頑張れる!!」
「なんだ? つむつむパワーって」
「暖かさと、優しさと、勇気! それと……愛も、かな! つむつむからプレゼント以上のモノ、たっくさんもらっちゃった! ありがとっ! つむつむ! ずっと……ずっーと大切にする!」
俺が渡したシュシュを胸の辺りに当てながら愛はにこやかに笑う。機嫌、戻ったっぽい……?
「こちらこそ。いつもありがとうな。愛は俺にとって、大事な親友だ。もしよかったら……これからもよろしく頼む」
「親友……うんっ! 愛さんとつむつむは『親友』! ズッ友だよ!!」
「……そうだ。ズッ友、だな」
「アハハッ! つむつむのおかげでサイコーの誕生日になったよ! ……愛してるよ。『愛』だけにっ!!」
「ッ!? は!? 愛、それどういう……」
頬が燃え上がるように熱くなるのを感じながらすぐに聞き返すと、愛は人差し指を唇に当てた。
「ヒミツ! ありがとね。つむつむ! またね!」
「あっおいっ……!」
愛の言葉の意味を聞く暇もなく、そいつはベンチから立ち上がって走って行ってしまった。頭を掻きながら俺も立ち上がると、遠く離れて姿を見失った筈の愛がまた俺の方に走ってきた。
「つむつむ……See you(シーユー)! 『親友』だけに! また学校で会おうね!」
最後の最後に絶対今思いついたであろうダジャレを言い残してまたしてもダッシュで帰って行った。しかもあんま上手くないし。愛が言ったダジャレと、それを言いに来る為だけに引き返してきた愛に笑いが込み上げてきて、人気の居ない夜の街で、俺は盛大に声を上げて笑った。
友&愛