中学バスケ界の炎上王が花咲川で頑張る話   作:A.may

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02羽沢珈琲店が水族館を兼営したらヒャッハーってなるよね

「明成の勝利を祝してー……かんぱーい!!」

 

こころの声に倣って俺以外のハロハピ全員が続く。

 

「いやこれ毎回やるん!?」

 

ハロハピの会議室になぜか連れてこられた俺は前回の練習試合の勝利の音頭に付き合うハメになった。

朝ウトウトしながらインターホンが鳴ったので出てみたら黒服の人が来ており、

今日は予定はありませんでしたよね?である。

 

「ボ○ガ博士、ちょっと来てください」ばりに乱暴な展開である。

何度見ても思う。見てたんなら助けに行けよと。

 

それにしても、お金持ちの子とは聞いてたけど、ここまで凄いと逆に何も言えない。

俺はこころと会ったおかげでお金持ちの子は嫌味な子というイメージは払拭され、

こころと会ったおかげでお金持ちはみんなぶっ飛んだやべーやつなんだというイメージを植え付けられた。

 

こころの家の前まで連れて来られて、でかい門と噴水を見た時点で「俺あいつに敬語で喋った方がええんちゃう?」

と漏らしたが黒服の人は嫌がるだろうからやめてあげてと言われたのだ。

 

そしてこの状況である。

嫌な気はしないけど、ヒールとして生きてきた俺にとっては応援されたりするのはちょっとだけ恥ずかしい。

 

 

「恥ずかしがることはないさ。君のシュートは相手から点を奪い、観客たちの心を奪うには十分すぎるものだ……儚い」

 

 

そう言いながら高そうなチーズとオレンジジュースを優雅に口に運ぶ薫くん。

絵にはなると思うけど、チーズとオレンジジュースは絶対合わないと思う。

ハロハピは非常に上下関係が薄いみたいで瀬田さんとか呼んでたらはぐみ達と同じように呼んでくれと言われた。

俺は別にファンでもないのに……。

この人かっこいいより美人じゃない?

こいつをいじれる人間がいるんだから世界は広いなと思わされる。

 

 

だが、と試合を思い返す。

ボールが重たい展開が続き、ロースコアの試合の割に点は取れた方だと思う。

 

『残念ながら、今夜は熟睡できそうにないね、先輩たち。練習試合とはいえ、今年の江戸北は黒星スタートなんて』

 

試合前に俺は相手チームにそう言った。

怒られた――チームメイトと審判と相手チームに。

結果は17PTS、4AST、3ST、6REB、1BS(※)でそれなりに活躍できたと思う。

 

 

 

 

 

 

 

ただ相手チームのエースに28点取られたのは絶対俺の所為だと思うけど。

今度からはマッチアップの相手を調べてから挑発しようと思いました、まる

 

 

「ま、勝ったから良かったじゃん。試合前にそういう事言うのってマイクパフォーマンスみたいなもんでしょ?」

 

「ゲン担ぎみたいなもんやね。……ていうか、美咲もお疲れ様です」

 

 

こいつも試合中ずっと暑苦しい着ぐるみの中で太鼓を鳴らし、こころが手すりの上で逆立ちしようとするのを押さえ付け、

迷子になる俺の花音さんを見つけ出し、裏方の作業を全部やってくれていたのだ。

余談だけど、クマから出てきた時の彼女は汗をかいており、非常に色っぽい。

汗ばんだ頬にぴたりとくっつく髪の毛、汗でじっとりと肌に吸い付いて離れないタンクトップ。

そこから狭いと言わんばかりに見える彼女の谷間。

すいません、俺ここで降ります。

脳裏に焼き付けようとしてたら空になったペットボトルを投げ付けられた。

お前、帰りの会で言うからな!

 

 

「ん、ありがと。もう慣れてる自分が怖いけどね」

 

 

そう言いながらもまんざらでもないからこのバンドに付き合ってるんだろうか?

俺の横ではぐみが持ってきたコロッケを食べる美咲を見てそう思った。

 

 

「明成!明日学校でハロハピが作った新聞を号外でみんなに配るわよ!」

 

 

やめろォ!もう嫌な予感しかしない。

 

 

「こころさんや、その新聞の内容を見せなさい」

 

 

はい!と家の中で黒い虫を嬉々として見つけて飼い主に見せつける猫のように新聞を手渡されると

そこには俺が相手選手からボールをスティールしている写真と共に

「花咲川男子バスケ部 練習試合圧勝!」と書かれていた。

 

圧勝じゃねぇし、練習試合に勝ったくらいでそんなもん配ってんじゃねぇ!

と言いたいのを堪え、どうやってやめさせようかと考えた。

いや、いきなり怒鳴ったりしてSPが出てきて射殺とかされたら怖いやん?

 

 

「いやー折角だけどこれは配るのやめ―――」

 

「花音がやろうって言って私たちみんなで作ったの!」

 

「ありがとう!俺これからも頑張るよ!」

 

 

そーゆーことは先に言いなさい。

俺が花音さんが言うことに異を唱えるとでも?

美咲が俺を見ながら、あーあ……みたいな顔をしている。

仕方がないんや、俺は心に誓った人を信じる!

 

 

「東山くん、おめでとう。ここが一番かっこいいと思って写真撮ったんだけど、シュートの写真の方が良かったかなぁ?」

 

「いえ、かっこ悪い俺を最高にかっこ良く撮ってくれてありがとうございます。花音さんに勝利を届けたくて、俺はやり遂げました!」

 

 

ちょっとだけ顔を赤くしながらふぇぇ……と声を漏らす俺の天使。

水色の髪の毛をサイドテールにしている茶道部でドラム。

俺より1つ年上で誕生日は5月11日のO型。

好きな食べ物は美味しいお菓子や紅茶で嫌いなものはキノコ。

趣味はカフェ巡りとクラゲ鑑賞である。

出会って1日で調べたにしては結構頑張ったやろ?

 

バスケをしている俺に惚れ込んだに違いない、少なくとも嫌われてはいない筈だ。

引いてるだけ?まっさかぁ!

 

 

「はぐみももうちょっと身長があったらバスケするのになぁ。アキくんは凄いと思う!」

 

 

口の周りにコロッケの衣をつけながら手放しで俺を評価してくれる……ここは天使の楽園なんだろうか。

はぐみは何でも肯定してくれるのか、短い付き合いの中で俺の中でこいつの評価はうなぎ登りである。

可愛いし、いい匂いするし、めっちゃ可愛いのに抱き付いてくるし、花音さんとつぐみさんの次に好き。

普通に最低である。

 

 

予選が始まるまで毎週練習試合を組んで、新1年生をチームに定着させる。

これが花咲川の監督が目論んでいること。

監督の目論見通り、俺は着々と力をつけている。

もう二度と全中のような試合も、昨日のような試合も繰り返さない。

俺は勝たなければ前に進めない!

その為には成果を出した時のご褒美が必要である。

俺にとってのご褒美……それは、

 

 

「花音さん、俺がインターハイで優勝したら、結婚してください!」

 

「か、考えとくね」

 

 

困ったように笑いながら花音さんは答えてくれた。

あんたそれ羽沢さんにも言ってたよね?という美咲の訴えは「え?なんだって?」と返しておいた。

なんだって、じゃねーよバカ。

 

翌日、週明けに学校に行ったら既に恐怖新聞が配られており、俺はますます居心地が悪くなり、

しかも部室のロッカールームにも貼られた所為で回りに散々いじられ、

しかもその号外はパン屋経由で羽丘にまで漏れており、泣きっ面蹴ったりの週明けであった。




※バスケットボールの試合におけるスタッツ。
PTS=得点、AST=アシスト、ST=スティール、REB=リバウンド、BS=ブロックショットの略称。
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